博 士 ( 医 学 ) 鐘 0 江 香 久 子
学位論文題名
Comparison of MET ― PET and FDG ― PET for differentiationbetWeenbenignleSionSand I ●
lungCanCerlnpneumOCOn10S1S
(塵 肺患 者 にお け る良 性 病変 と 肺癌 の鑑 別 を目 的 とし た C ―11 標識メチオニンおよび F ―18 標識フルオロデオキシグルコースを 用いたPET の有用性の比較検討)
学位論文内容の要旨
背景
塵肺 か ら 肺 癌が 発 生 し やす い こ と は知 ら れ て いる が 、 塵 肺結 節 と 発生し てきた 肺癌を 区別する こ と は 、胸 部 単 純 写真 やCT等 こ れ ま での 画 像 診 断上 容 易 で はな い 。 悪性腫 瘍での 糖代謝 の亢進を 反 映 し た2ー匸l8F]−fluoro―deoxyーDーglucose (FDG)を用い たFDG−PETや 蛋白合 成を反 映したL
−methyl―[11C]―methionine (MET)を用 いたMET−PETは腫瘍検出に用いられるが、感染や肉芽といっ た 非 腫 瘍巣 へ の 集 積が 偽 陽 性 とし て 知 ら れて お り 、 臨床 的 に 肺 癌と 塵肺 結節の区 別が困 難で診 断 に苦 慮して いる施 設が多 い。
I.目的
METとFDGの 塵 肺 結 節 と 肺 癌 に お け る 集 積 を 定 量 的 にprospectiveに 比 較 評 価 し て 、 薬剤 集 積 の 定 量 評 価 が 塵 肺 結 節 と 肺 癌 の 鑑 別 に お け る 診 断 能 を 改 善 する か 、 そ の有 用 性 を 検討 す る 。
n.方 法
対 象 患 者 は 岩 見 沢 労 災 病 院 で塵 肺 の 評 価が な さ れ た患 者 よ り 選択 さ れ た26例 の 塵肺 患 者 で 、 prospectiveに 北 海 道大 学 病 院 で検 査 を 施 行し た 。FDGーPETとMET−PETを施 行 す る 際、 こ の26例 の 患 者 を2つ の グ ル ー プ に 分 け た 。 第1の グ ル ー プ は 男 性15例 の 肺 癌 の 疑 わ れ た 患者 群 で 、13 例 は 増大 結 節 、1例 は 血痰 が 認 め られ 、1例 は 喀 痰細 胞 診 陽 性で あ っ た 。第2は、 長 期 の 経過 観 察 で悪 性 の 疑 いの な い こ とが 確 認 さ れて い る 男 性11例 の 塵肺 患 者 か ら成 る グル ープで 、対照 群とし た。MET―PETとFDG−PETは 同 日に 施 行 し た。FDG投 与 まで 最 低6時 間 以上 の 絶食と した。MET−PET はMET投 与後15ー20分 後 から 撮 像 を 開始 し 、 終 了後FDGを 投 与し て40〜 60分 後 にFDG−PET撮 像 を 開始し た。
METとFDGの集 積 程 度 の指 標として は、maximum standardized uptake value (SUVヨェ )を使 用し た 。 結 節 の サ イ ズ はCT画 像 で 計測 し た 最 大径 を 用 い た。 対 照 群 の塵 肺 結 節 にお け るFDGとMETの 集 積 の違 い 、 ま た3cm以 下 の 結 節に お け る 肺癌 と 塵 肺 結飾 の 集 積 の違 い に 対 して ノ ン パ ラメ 卜 リ ックテ ストくMann−whitneyU一test)を用 いて有 意差の 検定を 行った 。P<O.05を統計学的に有意と した。
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III.結果
11例 の 対 照群 の39の 塵肺結 節のサイ ズとFDGとMETの集積 程度(suv″) を比較 した。FDGと MET共に結節サイズが大きくなるにっれ両薬剤の集積は強く認められ、有意な相関が認められた (MET;r=0. 771、FDG;rニニ0.903)。また両薬剤の比較では、塵肺結節でのMETのSUVtiaよはFDGと 比較し有意に低かった。
肺 癌の疑わ れた患 者群の19結 節中5例5結節で最 終的に 肺癌が確 認され た。2例が腺癌、1例 が 扁平上皮 癌、1例が小 細胞癌、1例 が大細胞 癌であ った。残 り10例の14結節は良性病変であ り、3結節は肺炎、11結節は短期間で増大した塵肺結節であった。
肺 癌と確定 された5例中3 cm以下でなおかつ集積亢進として認められた3例にっき、対照群の 同様の3 cm以下のサイズの塵肺結節の集積と比較した。METの肺癌への集積のsuv。よは3.48土1.18 (mean土SE)であるのに対して塵肺結飾では1.48土0.08 (P<O. Ol)、同様にFDGの肺癌への集積の SUVIヨェは7.12土2.36であるのに対して塵肺結節では2.85土0.24 (P<O. 05)と肺癌で有意に高かっ た。
悪性病変のなぃ対照群の塵肺患者の塵肺結節のsuv:ヨェの平均値を3cm以下とそれ以上のサイズ で分け、診断基準を作成した。3 cm以下の小さな塵肺結飾におけるFDGのsuvロョィの平均値は2.85 土0.93 (SD)、METでは1.48土0.31であった 。3cm以上のサイズではそれぞれ5.56土2.00、 2. 34土0.84であった。これに基づいたFDGとMETのsensitivityはそれぞれ60% (3/5)、80% (4/5), specificityは100% (14/14)、93% (13/14),accuracyは90% (17/19)、90% (17/19),positive predictive valueは100% (3/3)、80% (4/5)、negative predictive valueは88% (14/16)、93%
(13/14)であった。
IV.考察
FDGが炎症細胞へも腫瘍と同程度の強い集積を示すことは一般に知られているが、これまで動
物実験に よりMETは炎症への集積がFDGより少ないことが報告されている。塵肺結飾はゆっくり とした持続する線維性進行性の炎症性変化であり、マクロファージや結核に認められるような肉 芽腫で構 成され ている。故に、我々はまずこれらの2つのPET薬剤の塵肺結飾ーの集積が炎症、
肉芽細胞の量によると考え、サイズ依存性であると仮定した。この仮定にっき検討したところ、
対照群では塵肺結節のサイズとFDGおよぴMETの集積(SUv,ヨェ)との間に有意な相関が認められる ことが確認され、METの集積は悪 陛腫瘍だけでなく炎症にも認められること、今回の評価対象と なっている塵肺結節のような生涯持続し続ける慢性の肉芽腫性炎症性病変では結節のサイズが大 きいほどMETの 集積は強く認められ偽陽性の原因となること、その集積の程度はFDGより低いこ とが臨床症例から確認できた。次にこの対照群の塵肺結節への2つの薬剤集積程度を基として基 準値を作成し肺癌疑いの群の結節を評価したところ、両薬剤とも塵肺結節と肺癌ーの集積を区別 できる可能性が示唆された。
我々は当 初本研 究の対象とした塵肺患者の腫瘍の評価にはFDGよりもMETの方が優れると予測 していた。しかし今回の結果では、METも腫瘍への集積が認められるが、小さな肺癌の場合は肺 癌やりンパ節転移への集積程度はFDGより低く、所見が明瞭でないことも多いことからメリット は少ない事が判明した。しかしMET−PETには、FDG―PETとは異なり糖尿病による高血糖に起因す る腫瘍への集積低下の影響をうけなぃ利点があり、また1例のみではあるが結節のサイズが大き い場合はMETの 方が情報量が多くなる可能性が示唆された。それに対し、FDGは小さな肺癌やり ンパ節転移への集積はMETより強いので判別しやすく、遠隔転移や、合併する他の悪性腫瘍検出 でき、治療方針の変更がありうる利点があった。
V.結 語
今回の研究により、塵肺結節への両薬剤の集積にはサイズ依存性の傾向があり、定量的に評価 する ことによ って塵 肺結節のサイズ相応の集積以上のFDG、METの強い集積が認められた場合は 肺癌の存在が強く疑われることを明らかにした。
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学位論文審査の要旨
学位論文題名
Comparison ofMET − PET and FDG ― PET for differentiationbetWeenbenignleSionSand ● ●
lungCanCerlnpneumOCOn10S1S
( 塵 肺患 者 にお け る良 性 病変 と肺 癌 の鑑 別 を目 的 とし た C −11 標識メチオニンおよびF ―18 標識フルオロデオキシグルコースを 用いたPET の有用性の比較検討)
本研 究 の 目的 はMETとFDGの 塵 肺 結節 と 肺 癌に お け る集 積 を 定量 的 にprospectiveに比較 評価 して、 薬剤集積 の定量評 価が塵 肺結節と 肺癌の 鑑別にお ける診 断能を改 善するか 、その 有用性を検討することである。
対象 患 者 は岩 見 沢 労災 病 院 で 塵肺 の 評 価が な され た患者よ り選択 された26例 の塵肺 患者 で、prospectiveに 北海道 大学病院 で検査を 施行し た。FDG―PETとMET―PETを施行する際、こ の26例 の 患 者 を2っ の グル ー プ に分 け た 。第1の グル ー プ は 男性15例の 肺 癌 の疑 わ れ た患 者 群 で、13例は 増 大 結節 、1例は血痰 が認め られ、1例は喀 痰細胞 診陽性で あった 。第2は、
長 期 の経 過 観 察で 悪 性 の疑 い の な いこ と が 確認 さ れている 男性11例 の塵肺患 者から 成るグ ルー プで、 対照群とした。METとFDGの集積程度の指標としては、maxlmum standardized uptake value (SUVロョェ)を使用した。結節のサイズはCT画像で計測した最大径を用いた。対照群の塵 肺 結 節に お け るFDGとMETの 集積 の 違 い、 ま た3cm以 下の 結 節 にお け る 肺癌 と 塵肺 結飾の集 積の 違いに 対してノ ンパラメ トリッ クテスト(Mann−WhitneyUーtest)を用いて 有意差 の検定 を行った。P<O. 05を統計学的に有意とした。
11例 の 対照 群 の39の 塵肺 結節のサ イズとFDGとMETの集積 程度(SUVmaエ )を比 較した。FDG とMET共 に 結節 サ イ ズが 大き くなるに っれ両 薬剤の集 積は強く 認めら れ、有意 な相関 が認め られ た(MET;r=0. 771、FDG;r=0. 903)。また両薬剤の比較では、塵肺結飾でのMETのSUV:axは FDGと 比 較 し有 意 に 低か っ た 。 肺癌 の 疑 われ た 患 者群 の19結 節 中5例5結 節で 最 終的に肺 癌 が 確 認さ れ た 。2例 が 腺癌 、1例 が扁 平 上 皮癌 、1例が小細 胞癌、1例が 大細胞癌 であっ た。
残 り10例 の14結 飾 は良 性 病 変 であ り 、3結 節 は 肺炎 、11結 飾 は 短期 間 で 増大 し た塵肺結 節 で あ っ た 。 肺 癌 と確 定 さ れた5例 中3 cm以 下 で なお か つ 集 積亢 進 と して 認 め られ た3例に っ き 、対 照 群 の同 様 の3 cm以下の サイズの 塵肺結 節の集積 と比較 した。METの肺 癌への集 積 のSUV:aエは3.48土1.18 (mean土SE)であるのに対して塵肺結飾では1.48土0.08 (P<O. Ol)、 同様にFDGの肺癌への集積のSUVmヨェは7.12+2. 36であるのに対して塵肺結節では2.85土O.24
治
樹
良
正
博
長
村
土
木
西
白
玉
授
授
授
教
教
教
査
査
査
主
副
副
(P〈0.05)と肺癌で有意に高かった。悪性病変のない対照群の塵肺患者の塵肺結節のSUV‥の 平均 値を3cm以下 とそ れ以 上 のサ イズ で分 け、 診断 基準 を作 成し た。3cm以 下の 小さ な塵 肺 結節 にお けるFDGのSUkエの 平均 値は2.85土0.93(SD) 、METで は1.48土0.31であった。
3cm以上 のサ イズ では それ ぞ れ5.56土2.00、2.34土O.84であ った 。こ れに 基づ い たFDG とMETのsensitivityはそれぞれ60%(3/5)、80%(4/5),specificityは100%(14/14)、93%
(13/14),accuracyは90%(17/19)、90%(17/19),positivepredictivevalueは100%(3/3)、
80% (4/5) 、negativepredictivevalueは88% (14/16) 、93%(13/14) であ った 。 FDGが 炎症 細胞へも腫瘍と同程度の強い集積を示すことは一 般に知られているが、これまで 動物 実験 によ りMETは 炎症 へ の集 積がFDGより 少な ぃこ と が報 告さ れて いる 。塵 肺結 節は ゆ っく りと した 持続 する 線維 性進 行性 の炎症性変化であり、マ クロファージや結核に認められ るよ うな 肉芽 腫で 構成 され てい る。 故に 、我 々は まず こ れら の2つのPET薬 剤の 塵肺 結節 へ の集 積が 炎症 、肉 芽細 胞の 量に よる と考え、サイズ依存性で あると仮定した。この仮定につ き検 討し たところ、対照群では塵 肺結節のサイズとFDGおよぴMETの集積(SUvnaエ)との間に 有意 な相 関が 認め られ るこ とが 確認 され 、METの集 積は 悪性 腫瘍 だけでなく炎症にも認めら れる こと 、今 回の 評価 対象 とな って いる塵肺結飾のような生 涯持続し続ける慢性の肉芽腫性 炎症 性病 変で は結 節の サイ ズが 大き いほ どMETの集 積は 強く 認め られ偽陽性の原因となるこ と、 その 集積 の程 度はFDGよ り低 いこ とが 臨床 症例 から 確認 でき た。次にこの対照群の塵肺 結節 への2つ の薬 剤集 積程 度 を基 とし て基 準値 を作 成し 肺癌 疑い の群の結節を評価したとこ ろ、両薬剤とも塵肺結節と肺癌への集積を区別できる可 能性が示唆された。今回の結果では、
塵肺 結節 への 両薬 剤の 集積 には サイ ズ依存性の傾向があり、 定量的に評価することによって 塵肺 結節 のサ イズ 相応 の集 積以 上のFDG、METの強 い集 積 が認 めら れた 場合 は肺 癌の 存在 が 強く疑われることが示唆された。
口頭発表の後に、白土教授より塵肺結節のサイズとSUv皿ヨェとの相関にっいてこれまで報告 され てい るの か、 直線 関係 なの か、 部分 容積 効果 の影 響 はど うか、METの集積が低いのに核 種の 違い によ る影 響は ない のか 、小 さな サイ ズの 結節 の 診断 にはMETは不要と考えてよいか に つ い て 、 西 村 教 授 よ り な ぜMETを 含む2核種 で検 討し たの か、 なぜMETに よる 評価 が期 待 とは 異な ったのか、肺癌における サイズとSUnヨェの関係はど うか、肺門あるいは縦隔リンパ 節に つい ての 検討 はな され たの かに ついて、玉木教授より今 回の診断基準を用いた場合の前 向き 研究 の可 能性 につ いて 、小 さい サイズの結節にはどの薬 剤を使うのが妥当かについての 質問 があ った 。い ずれ の質 問に 対し ても、申請者は、臨床結 果や病理、薬剤動態、文献を引 用し、概ね妥当な回答を行なった。
こ の論 文は 、塵 肺結 飾の 集積 程度 に初めて一定の傾向を見 出し塵肺患者に合併してきた肺 癌の 評価 の基 準と なる デー タを 示し たものであり、画像診断 上の問題を解決する一助となる ことで高く評価され、今後肺癌の早期検出への利用が期待される。
審 査員 一同 は、 これ らの 成果 を高 く評価し、申請者が博士 (医学)の学位を受けるのに充 分な資格を有するものと判定した。