がん薬物療法における薬剤師の「新化」するスキルと技能 ~有害事象を評価しマネジメントする次時代へのパラダイムシフト~
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(2) 第 28 回日本医療薬学会年会. 193. 23-2-S3-2 薬剤師に期待する抗がん薬の有害事象の捉え方と評価 田村 和夫. 1. 1:福岡大学医学部総合医学研究センター. 私は臨床医として 44 年間医療に従事し、その間、医師、看護師、薬剤師、その他の医療人がそれぞれの専門性を発揮して全人的な医療 を実践するチーム医療の発展をみてきた。 一方、40 年間がん薬物療法の勃興期からその確立に携わってきた腫瘍内科医として、安全 域の狭い抗がん薬の使用にあたり、薬剤師の存在を今ほど感じることは無い。なかでもフィジカルアセスメント(PA)、検査所見の評 価、さらにその情報をチームの中で共有・議論し、最適の医療を患者に提供しようとする姿勢に敬意を表したい。ただ、薬学は専門で あるが、解剖や生理学をはじめ人の正常な構造や機能、それから逸脱する異常=疾病について系統だった教育・研修が少ないなか、本 講演では PA について共に考え、抗がん薬の有害反応の診断・マネジメントにつなげていきたい。. PA は医師の診察と基本は同じである。まず、全身状態、臓器・局所症状と身体所見を客観的に得る。(1)摂取すべきもの(水分、食 (意識、呼吸、血圧、脈拍、体温)と体重(変化を含む)の測定、さらに(3)頭部から足先まで、システムレビュー、すなわち系統的に 皮膚、筋・骨格、神経、頭頚部、胸部、腹部、泌尿・生殖器と関連する症状・兆候を問診しながら患者を観察する。 抗がん薬は 100 %副反応がある。各抗がん薬には、時間軸に沿って予測できる特有の副反応と臨床経過がみられることが多い。殺細胞 性抗がん薬に伴う脱毛、骨髄抑制や分子標的治療薬の一つである EGFR 阻害薬による皮疹はその代表であり、また免疫チェックポイ. シンポジウム. 事、空気)、排出すべきもの(尿、便、呼気、分泌物)の出納バランスの確認。全身状態は PS で評価する。次に(2)バイタルサイン. ント阻害薬による免疫異常の予測は困難だが、チームで取り組んでいる施設が多い。薬剤師は、薬剤師外来や病棟訪問における PA か ら、有害反応の予防、早期発見・治療の示唆、臨床薬理学的見地から薬物相互作用、臓器機能に応じた PK/PD を検討し、抗がん薬の 用法・用量の変更や適切な支持療法の提言を行う。そのポイントは、安易な薬剤の減量や治療遅延は抗腫瘍効果の減弱を招き、過剰治 療は重大な有害反応をもたらすところにある。がん診療に従事する薬剤師には、診療方針検討時に、抗がん薬の安全で効果的な応用に 向けて積極的な発言をお願いしたい。. 1974 年 九州大学医学部卒業 1974 年 九州大学医学部第一内科 1975 年 マウントサイナイ病院系エルムースト総合病院内科 インターン、レジデント 1978 年 ロズウェルパーク記念研究所腫瘍内科学 フェローシップ ニューヨーク州立バッファロー大学医学部 助手. 1980 年 宮崎県立宮崎病院内科 1997 年 福岡大学医学部内科学第一 (現 腫瘍・血液・感染症内科学) 教授 2015 年 福岡大学医学部総合医学研究センター 教授 現在に至る. ▲ TOP.
(3) 第 28 回日本医療薬学会年会. 194. 23-2-S3-3 がん薬物療法に伴う有害事象のマネジメント 池末 裕明. 1. 1:神戸市立医療センター中央市民病院薬剤部. がん薬物療法において薬剤師は、処方監査、レジメン管理に基づく抗がん薬調製、服薬指導、副作用対策、緩和ケアなど様々な役割を 担っている。特に、多種多様な有害事象が高頻度に発現するため、適切な対策によって重篤化を未然に防ぐ必要がある。さらに近年、 抗がん薬によっては、有害事象が強いほど治療効果が高いとするエビデンスも増えている。有害事象のマネジメントによって、薬の有 効性を最大限に引き出すには、(1)レジメン毎にいつ、どの様な副作用に注意すべきか把握し、患者に分かりやすく説明したうえで、 患者を中心に慎重なモニタリングを行い、(2)発生した有害事象が投与した抗がん薬によるものか評価し、(3)科学的根拠に基づく適 切な支持療法を選択して、(4)チーム内の良好なコミュニケーションを前提に、適切な手段で処方および検査を提案するといった各要 素を、的確に実施することが重要である。. チェックポイント阻害薬は、広範な免疫関連有害事象が発現し得る。神戸市立医療センター中央市民病院(当院)では、ニボルマブの肺 がんへの適応拡大を契機として、呼吸器内科医を中心とした専門医、薬剤師、看護師、ソーシャルワーカーからなる多職種連携チーム を立ち上げ、安全に投与できる体制を構築した。現在では、有害事象の早期発見を目的として院内で策定した、薬剤師による検査オー ダー入力支援プロトコールを運用し、チーム内でも高い評価を得ている。院内横断的な安全管理の取り組みとしては、レジメン管理に. シンポジウム. 有害事象を早期に発見して適切に対応するには、チームで協働してマネジメントする体制を整えることが有効である。とりわけ免疫. よる支持療法の最適化、B 型肝炎スクリーニングもその一環と考えることができる。 患者個々の状態を理解したうえで、常用薬との薬物相互作用や、腎機能および肝機能に基づく用法用量の調整など、薬学を基盤とす る専門家として責任を果たすことが求められる。薬剤師同士、患者・家族やチーム内での議論をとおして、我々薬剤師が担うべき役割 を捉え、十分な知識と経験に加え、マインドを持った薬剤師の養成が必要だと考える。次世代へのパラダイムシフトを考えるにあたっ て、当院での取組みを中心に紹介し、議論できれば幸いである。. 1998 年 3 月 九州大学薬学部卒業 1999 年 4 月 九州大学病院薬剤部 2004 年 4 月 九州大学病院薬剤部 薬剤主任 2008 年 8 月 博士(薬学)取得 2008 年 10 月∼2009 年 2 月 米国ウィスコンシン大学病院で研修 2016 年 4 月 神戸市立医療センター中央市民病院薬剤部 副部長代行 神戸学院大学大学院薬学研究科 連携准教授 兼務 現在に至る. ▲ TOP.
(4) 第 28 回日本医療薬学会年会. 195. 23-2-S3-4 薬剤師が評価しマネジメントする高血圧 藤堂 真紀. 1. 1:埼玉医科大学国際医療センター薬剤部. 日々薬剤師外来で診察前面談を含む業務の中で多数の患者さんと接していて感じることは、薬剤師外来や薬剤師の在り方についての自 問自答と、この診察前面談で症状や有害事象を適切に評価して処方提案する「責任の重さ」である。薬剤師は臨床現場で、医師と同様 の「診断する」ことではないが、薬剤師として最大限「患者さんに起こっていることを発見し、その内容の結果を予測する能力」 、 「思考 し、職能のプロフェッションの中で意思決定する」ことが求められていると考える。薬の知識のみならず、目の前の患者から臨床推論 を通じて、「薬の効果を適切に判断する」、「薬の有害事象を判断する」、 「緊急性のある病態かを見極める」、 「医師・看護師に的確に情報 提供できるようになる」ことから、「真に有害事象をマネージメントしていくスキル」が求められる時代となっている。近年の抗がん薬 治療では、高血圧を引き起こす分子標的治療薬があり、スニチニブ、レゴラフェニブ、レンバチニブを代表とする小分子マルチキナー. り、不適切な休薬・減量をせずに、適切かつ安全に高血圧をマネージメントして治療効果を発揮することが極めて重要である。薬剤師 は高血圧と聞くと、かつての私がそうであったようにすぐに降圧薬の知識ばかりを思い浮かべてしまうかもしれない。血圧測定を適切 に実施していない患者が案外多くいることも経験した。高血圧は結果かもしれないが、「過程や原因」を考えず、降圧薬で降圧すること ばかり考えていると、落とし穴に陥ってしまうことも痛感した。血圧・脈拍を含めたバイタルサインから、OPQRST による評価、 「高. シンポジウム. ゼ阻害薬や、抗体薬のベバシズマブ、ラムシルマブ、さらにアフリベルセプトが上市した。この高血圧は治療のバイオマーカーでもあ. 血圧という結果の奥にある患者背景」 、 「病態」 、 「抗がん薬による高血圧の機序および対処法」を理解し、真に高血圧を評価し、高血圧を 適切にマネージメントすること、チームの中で適切に患者教育をして、「安全かつ効果的ながん薬物療法」を薬剤師が推進していくスキ ルをこのシンポジウムでは事例も含めてともに考えたい。私たちがこのスキルを磨くことで患者の声を聴く一人として、「責任の重さ」 を感じながら、現場でより必要とされる薬剤師の在り方を一緒に考えたいと思う。. 2004 年 3 月 名城大学薬学部卒業 2004 年 4 月 藤田保健衛生大学坂文種報徳会病院 薬剤部 2007 年 4 月 愛知医科大学病院 薬剤部 2014 年 3 月 博士(医学) 2014 年 6 月 埼玉医科大学国際医療センター 薬剤部 2015 年 8 月 埼玉医科大学国際医療センター 薬剤部 主任 現在に至る. ▲ TOP.
(5) 第 28 回日本医療薬学会年会. 196. 23-2-S3-5 薬剤師が評価しマネジメントする下痢 大橋 養賢. 1. 1:国立病院機構東京医療センター薬剤部. 2004 年に米国臨床腫瘍学会(ASCO)より「がん治療における下痢の治療ガイドライン」(GL)が発出されて久しいが、この十数年 の間に汎用される抗がん薬は細胞障害性抗がん薬から分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬と大きな変貌を遂げている。細胞障害 性抗がん薬の投与後に発現する下痢は、抗がん薬それ自体あるいはその代謝物により腸管粘膜が傷害されて生じる遅発性下痢(概ね投 与数日∼2 週間程度に発現)が多くを占めると考えられている。例として、イリノテカンやパクリタキセルに代表される微小管阻害薬、 フッ化ピリミジン系の代謝拮抗薬などが挙げられる。一方で、分子標的薬においては明瞭な発現メカニズムが全てにおいて判明してい るわけではないが、前者とは異なる機序も想定されている。例えば EGFR 阻害薬では腸管への Cl 分泌亢進による腸管内の水分量の増 加、mTOR 阻害薬では腸内細菌叢の変化、ボルテゾミブでは自律神経障害が影響している等の機序が考えられている。. 多くのがん薬物療法が原因と考えられる下痢に汎用されている。しかしながら、この GL に記載されているロペラミドの投与量は本邦 の添付文書を大きく逸脱しており、下痢を止めたいという患者や他の医療スタッフからの相談を受けて、GL 通りの提案をして良いも のかと躊躇した経験を多くの薬剤師が経験しているものと思われる。 がん薬物療法中に発現した下痢の評価は、排便回数として数値化はできるものの、性状や血性有無、また腹痛等の随伴症状の有無や最. シンポジウム. 発現した下痢に対する治療としては、前述の ASCO GL においても Grade 1-2 程度の中等症までにはロペラミドが推奨されており、. 近摂取した食事の内容など、その全体像を評価しようとすると患者から聞き取るべき情報は多岐にわたる。しかしながら、それを正確 に聴取することはとりもなおさず、「その下痢は本当に抗がん薬に起因しているのか?」という我々薬剤師に常につきまとう根源的な 不安をある程度払拭することにもつながる。本シンポジウムでは、膵臓がんにて GEM+nab-PAC 療法を外来で治療中の患者へのアプ ローチを通して、がん薬物療法中に発現した下痢への対応について考えてみたい。. 2001 年 3 月 東邦大学 薬学部 衛生薬学科 卒業 2003 年 3 月 富山医科薬科大学大学院 薬学研究科 博士前期課程修了 2003 年 4 月 静岡県立静岡がんセンター 薬剤部 2012 年 7 月 国立病院機構東京医療センター 薬剤科 2017 年 2 月 国立病院機構東京医療センター 薬剤部 がん薬物療法研修マネージャー 現在に至る. ▲ TOP.
(6) 第 28 回日本医療薬学会年会. 197. 23-2-S3-6 薬剤師が評価しマネジメントする甲状腺機能低下症 土手 賢史. 1. 1:京都桂病院薬剤科. 甲状腺機能低下症が発現する抗がん薬として、古くはサイトカイン(インターフェロンやインターロイキン)製剤、スニチニブに代表さ れるマルチキナーゼ阻害薬が挙がる。とりわけ、近年急速に使用頻度が高まっている免疫チェックポイント阻害薬(ICI)投与に伴う内 分泌障害のなかで、甲状腺機能低下症は最も頻度が高い免疫関連有害事象である。抗がん薬による甲状腺機能低下症の機序は大きく 2 つに大別することができる。すなわち、1) 甲状腺に対する自己抗体ができることによる免疫反応と、2) VEGF(Vascular endothelial. growth factor: 血管内皮細胞増殖因子)経路を遮断することで生じる甲状腺濾胞細胞へのヨード取り込み障害と甲状腺ホルモン分泌障 害である。サイトカイン製剤や ICI は 1) の機序で甲状腺機能低下症を発現するため、一過性の甲状腺炎とそれに伴う甲状腺機能亢進 症の時期を経たあとに、甲状腺機能低下症に至ることが多い。2) について、VEGF は甲状腺濾胞細胞への血管新生(ヨードの取り込み. 経路に関わる抗がん薬投与により甲状腺機能低下症が発現する。例えば、よく知られているスニチニブやアキシチニブ以外でも、オフ・ ターゲット分子に VEGF 受容体があるチロシンキナーゼ阻害薬や VEGF 産生を抑制するサリドマイドやレナリドミドが重要である。 甲状腺機能低下症の臨床症状は非特異的であり、がん患者がしばしば訴える倦怠感や疲労、便秘などから甲状腺機能低下症を疑って診 断することは実際には難しいことが多い。よって、臨床試験で過小評価され、実臨床で見過ごされている可能性がある。そのため、投. シンポジウム. に重要)と有窓性毛細血管の機能維持(ホルモン分泌に重要)に重要な役割を担っていることから、報告頻度の高低はあるが、VEGF. 与されている抗がん薬の薬理作用を踏まえて甲状腺機能低下症を来たす可能性があれば甲状腺刺激ホルモンをモニタリングすることが 肝要だろう。特に、臨床試験で倦怠感や疲労が高頻度に報告されている抗がん薬について、甲状腺機能低下症との関連性を明らかにし ていくことが今後の課題と考えられる。 本シンポジウムでは、ICI 以外の抗がん薬投与によって甲状腺機能低下症を来たした症例を提示する。明日からの臨床薬剤師業務に活 用できる勘所を共有したい。. 2005 年 3 月 京都薬科大学薬学部生物薬学科卒業 2006 年 3 月 京都桂病院薬剤科入職 2013 年 6 月 副主任 2014 年 1 月 日本医療薬学会認定がん専門薬剤師取得 2016 年 5 月 主任 現在に至る. ▲ TOP.
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