新世代ネットワーク研究開発の現状と今後
(独)情報通信研究機構 ネットワーク研究本部
ネットワークシステム総合研究室
増大し続けるネットワークの通信量と電力消費
総務省我が国のインターネットトラヒックの集計・試算(平成26年3月)我が国のインターネット通信量の推移
技術革新がない場合の
通信分野における年間消費電力予測
億kWh
「2020年におけるICTによるCO2削減効果」 グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース 地球的課題検討部会 環境問題対応ワーキンググループ より抜粋総
ダ
ウ
ン
ロ
ー
ド
ギ
ガ
ビ
ッ
ト
毎
秒
インターネットの破綻
• 1960年代にその基本的なアーキテクチャ、原理原則が設計されたインターネット
は、現代社会からの要求に応えられなくなりつつある
クラウドコンピューティングの台頭
所有から利用へ
• 情報サービスを実現する為の設備保有をアウト
ソースして、情報サービスを実現する“クラウド”
が台頭。クラウドを実現するためにコンピュー
タの仮想化が加速。
• ICTサービスの提供が“Agile”に。その結果、迅
速なネットワークサービスの顧客提供が必須。
• ネットワークの仮想化が必須
モバイルネットワークの急成長
固定から移動へ
• インターネットは、固定された端末の住所(IPアド
レス)を基本に情報を交換 (ロケーションベース)。
• センサー等の超多数のデバイスが移動しながら通信
を開始。増え続けるスマートフォンが網障害を引き
起こす。
• 移動がデフォルトな通信環境が現実化
新世代ネットワーク実現へのロードマップ
信頼性やエネルギー消費等の現在のネットワークが抱える様々な課題を解決する将来の社会基盤として、
新しいアーキテクチャに基づくインターネットの次の「新世代ネットワーク」の2020年頃の実現を目指す研究開発を推進
理想のネットワークを白紙から設計 産学官連携による研究開発の戦略的推進 新世代ネットワークに関する 国際的機運の高まり (FIND,FP7等) 初期段階からの国際連携・ 国際標準化の推進第1段階
NWGNとは何か
第3段階
NWGNをどう展開するか
インターネット 国際競争力強化へ 平成27年度にテストベッドJGN-X上に NWGNプロトタイプを実装 • 国際共同研究 • ITU-T 標準化 NWGNビジョンターゲット NWGN推進フォーラム ( 2007年~)第2段階
NWGNをどう創るか
既存技術の限界
新世代NW研究推進と産学官・国際連携
【新世代ネットワーク研究開発のミッション】
・産学官連携による戦略的研究開発の実施
・国際的な連携・競争の中で先導的・主導的役割を果たす
・長期的・国際的視野を有するICT関係の研究開発人材を育成
NICTの研究者
新世代ネットワーク研究開発
(多種多様な方策で効率的に研究開発を推進
)
産学の研究者
海外の研究者
• 年率1.4倍(日本)で増加するトラフィックの収容 • 「グリーンネットワーク」(消費電力の抑制)の実現 • 超大量な”ネットワーク化されたモノ”の出現 • 食物の生産履歴の“見える化”等リアルタイム な移動するモノのトラッキング実現 • 新規サービスやアプリケーションの柔軟かつ迅 速な導入 • 情報サービスやアプリケーションによるネット ワーク機能の制御 • ユーザの状況、サービスに合わせ適切なセ キュリティレベルの提供 • ネットワークを流れる情報のネットワーク内 監視と巨視的なセキュリティ対策 • 突発的な災害等による著しい通信状況の変化や、 ユーザ、サービスからの要求に柔軟に構成を変えら れるネットワーク機能の実現 • パス・パケット、有線・無線など様々な物理ネット ワークを統合し、仮想化する機能の実現
NWGNのデザインゴール
アーキテクチャ的に重要なNWGNのデザインゴール
• Agileなビジネス展開のサポート
• サービスのNW内への染み出し
• サービスからネットワークを制御
• 超大量なモノの出現
Agileなビジネス展開のサポート
• スタートアップの時間とコストを下げたい
– 昔のパラダイム
• ハードウェアを自前で調達。自前で回線を契約。サービスを開始。
• 顧客がつかなければハードウェアが無駄。大量に顧客が来ると捌
ききれない。
– クラウドのパラダイム
• データセンタで仮想マシンを借りる。VMにつけるグローバルなIP
アドレスは自前で調達。サービスを開始。
• 顧客がつかなければ、仮想マシンを返す。大量に顧客がきたら、
大量に仮想マシンを借りる
• このビジネスの決定スピードにネットワーク構築は
ついて行けるか?->NW仮想化の導入が必然的!
サービスのNW内への染み出し
• サービス目線で見ればできる限り顧客の近くに
サービスを移動させたい
– 遅延時間の減少、それに伴うアプリの反応速度(QoE)、
TCP的なスループット
– アクセス網に近いところ、あるいはアクセス網の中
にクラウドリソースを配置→超分散のクラウド
– ユーザの移動に伴うアクセス回線の変化に追従した
サービスマイグレーション
新世代ネットワークの基盤:サービス指向NWを実現するアーキテクチャ
• “超分散クラウド”+ “ SDN”
– データセンタの中から網の中へ染み出すクラウドコンピューティングリソース
• エッジルータ近傍、アクセスルータの中にあるマイクロデータセンタ (計算、記憶リソース)
– サービスのためのプロセスはデータセンターの中だけでなく、網の中に溶け込み
• 端末とサービスの反応時間を最小化し、通信の局所化。データセンタ内、エッジ、アクセス、
宅内のリソースも使いながら分散協調してサービスを実行
– 端末やサービスプロセスの移動
• サービスオリエンティッドモビリティ
• 今までのロケーションIDベースの通信から、新たなIDをベースとした通信へ
マイクロ データセンタ 大型 データセンタ 大型 データセンタ 大型 データセンタ サービス プロセス サービス プロセス サービス プロセス商用サービス
(エッジコンピューティング)今の研究開発
サービスからNWを制御
• 複数のサービスをイベントドリブンに連携させたい
• 今のSDNはフローテーブルの書き換えに過ぎない
• OTTからみれば、ネットワークの組み替えではなく、
サービスの組み替えがしたい
– フローテーブルの書き換えとサービスの組み替えには大き
なギャップが存在
• OTTからSDNなインタフェースを通じてネットワー
クを制御する仕組みが必要
Service-Controlled Networking
時空間総合 データ可視化 イベントに応じてデータの収集・解析 を動的に変更 社会センサー データ収集 物理センサー収 集 センサーデータ処理 <“天気”, “位置” > 中央処理サー バー VM センサーゲート ウェイ センサーデータ処 理 イベント分析 <“天気”, “位置” > イベント分析 気温、湿度、 気圧、風力、 雨量、日射HvyREvent :- Event Detection (Normal Sensing)
HvyRSens :- [HvyREvent] RRradar Collect : Sampling (High Resolution)
HvyRVisualization :- Alignment (HvyRSens1, ……, HvyRSensN) : Sticker Visualization
HryRQuality :- Delay (HvyRSens1, HvyRsens2, ……., HvySensN, HvyRVisualization) < δ データ収集 データ処理 可視化 ノード発見 パス生成
SCNミドルウェア
各種ネットワーク機能の呼び出しに変換
宣言的サービスネットワーク記述
ネットワーク制御プロトコルスタック
アプリケーションの要求を宣言的に記述
QoS設定様々な分野のセンサーデータやソーシャル
データを横断的に分析し、新たな価値を見い
だすサービスをNW上で動的に構成する技術
超大量なモノの出現
• ネットワークにつながるデバイスの爆発的な普及
• デバイスがつながったネットワークの増加
• オープンデータ化の進展により、データソースも
多様化
• それぞれのセンサーネットワークを“都合の良い
ように”どう連携させるか?
→P2PベースのセンサーネットワークPF PIAX
PIAXによるセンサーネットワーク統合モデル
センサー
NW1
センサー
NW2
センサー
NW N
…
センサーネットワークに閉じた
センサーの検索・利用
センサー
NW 1
センサー
NW 2
センサー
NW N
…
広域センサーネットワーク
異なるセンサーネットワークに
接続されたセンサーの検索・利
用
設定
変更
のみ
P2P型接続
異なるセンサーネットワーク
コンテンツ流通という観点から
サービス制御機能 (検索エンジン・ クローラ) 消費者 生成者・データ 保存機能 コンテンツ コンテンツ 複製データ 保存機能 データセンタ コンテンツ 複製データ 保存機能 コンテンツ 複製データ 保存機能 サービス制御機能 (検索エンジン・ クローラ) マップサービス 機能(DNS) サービス制御機能 (検索エンジン・ クローラ) ネットワーク 消費者 生成者 マップサービス 機能 サービス 制御機能 データ保存機能 ネットワーク ネット内処理機能 複製データ保存機能 ネット内処理機能ポイント
○従来のダムパイプだけでなく、網の高度
化により、端末側の負担を軽減
○網内での処理によりサービスレスポンス
の改善
○データの地産池消によるビットマイルの
低減
インターネット(+CDN 、P2Pを含む)
新世代ネットワーク
新しい考え方:データ指向ネットワーキング
Location IDを用いた
経路
Location ID V:W:X:Y:Z
コンテンツ配信元
Location ID Z:Y:X:W:V
Contents ID : abcdef1
ローカルキャッシュ
Contents ID : abcdef1
Contents IDを
用いた経路
Cache誘導
• これまでのLocation ID(例えばIPアドレス)を用いた情報取得
から、他の識別子を用いた情報取得へ。
新世代ネットワークの全体俯瞰
将来にわたって更に多様化するサービス、情報アクセス手段を統合的に収容できる、持続進化が可能な新しいネットワーク 放送光パケット・光パス統合技術
低遅延/非常時即時立上げ・中断/高信頼/省エネ/高品質/セキュリティ/低コスト等 、アプリケーションからの要件アプリケーション層
仮想化基盤層
ネットワーク仮想化技術
光アクセス技術
仮想化基盤
衛星通信新世代セキ
ュリテ
ィ
技術
・ ・ ・ 新たな アプリケーション 緊急 災害対応 スマート グリッド 教育 コンテンツ 配信 医療 電子 商取引 移動体 サービス 公共 超臨場感 通信 環境 センシングM2Mネットワーク
有無線統合ネットワーク技術
クラウド M2M IoT ビッグデータ超大規模情報流通技術
グリーンネット ワーキング情報指向ネットワーク技術
低消費電力指向コンテンツ配信技術
認証プラットフォーム層
名前(ID)空間ID/Loc分離技術
新世代ネットワークプロトタイプ構築
さらにサービス開発のための利活用へ
NWGNのプロトタイプ
• 新世代ネットワークのプロトタイプとして2種類の
実証基盤を構築
• ボトムアップ型:新しいNW技術の研究開発のため
の極めて自由度の高いプログラム性を有するネッ
トワーク仮想化テストベッド
• サービスからのトップダウン型:新しいサービスの
研究開発のためのセンサー+広域SDN+分散クラ
ウドインフラを提供する、大規模スマートICT
•
前中期計画で開発した仮想化ノードα版をJGN-X上に展開し平成23年度末よりテストベッド
として運用中
•
平成25年10月より、今中期で開発した仮想化ノードβ版(2台) を展開し、さらにプラット
フォームを更新し高機能化
•
平成26年夏に最終版の仮想化ノード(2台)を導入し、全体をアップデートし高速・安定化へ
東京
北陸
VN
NC
NC
名古屋
岡山
NICTけいはんな
AGWVN
VN
VN
AGW AGW福岡
札幌
仙台
大阪
AGWVN
NICT
大手町
NICT
白山
AGW VN 仮想化ノードα版 (2009-2011年開発) アクセスゲートウェイ ネットワークコネクタNC
GK
AGWNICT
小金井
AGWNW仮想化技術の研究開発成果展開
VN 仮想化ノード最終版 (2013-2014年開発) AGW AGW VN VNGK
ゲートキーパー(フェデレーション用)JOSEの全体構成
脳情報
(大阪)
データセグメント Internet セグメント 管理セグメント FW/IPS ・ファイルサーバ ・ポータルサーバ ・VPNサーバ データ種別毎 の処理・解析けいはんな
M2Mデータセンター
横断的なデータアーカイブ ・マイニング プライバシ情報を除外した センサデータをアーカイブ FW/IPS小金井
10サーバ北陸
400サーバ/4000VM OpenFlowスイッチ 10サーバけいはんな
400サーバ/4000VM 10サーバYRP(横須賀)
400サーバ/4000VM 10サーバ 10サーバ 専用回線/VPN 大規模スマートICTサービス基盤テストベッド M2Mデータセンター ロケーション毎の センサーデータの 蓄積 JGN-X / RISE 実験毎に専用の入り 口を用意 観測値の解析モ ジュールを実験毎に 組み込み 解析モジュール NW収容モジュール センサデータ 環境 観測データ 振動 観測データ 生体 IEEE1888によりセン サーデータ転送広域に分散配置されたVMとそれを接続するオープンフローベースのSDNを接続し、
サービス資源の配置、サービスの連携をOTTから制御できる仕組みを提供
新世代ネットワーク実現へのロードマップ(再掲)
信頼性やエネルギー消費等の現在のネットワークが抱える様々な課題を解決する将来の社会基盤として、
新しいアーキテクチャに基づくインターネットの次の「新世代ネットワーク」の2020年頃の実現を目指す研究開発を推進
理想のネットワークを白紙から設計 産学官連携による研究開発の戦略的推進 新世代ネットワークに関する 国際的機運の高まり (FIND,FP7等) 初期段階からの国際連携・ 国際標準化の推進第1段階
NWGNとは何か
第3段階
NWGNをどう展開するか
インターネット 国際競争力強化へ 平成27年度にテストベッドJGN-X上に NWGNプロトタイプを実装 • 国際共同研究 • ITU-T 標準化 NWGNビジョンターゲット NWGN推進フォーラム ( 2007年~)第2段階
NWGNをどう創るか
既存技術の限界
最も新陳代謝が著しい
ネットワークはどこか??
“携帯電話網”
携帯電話進化論
進化の度合い
時間
4G
1982
1985
1987
1992
1999
標準化 開始2G
標準化 終了 商用化 開始GSM1987
2001
3G
標準化 開始IMT2000
標準化 終了 商用化 開始新技術開発、標準化、製品化、市場投入のチェーン
第五世代携帯電話網
欧州での次世代モバイルアクセス
通信技術(5G)研究開発の立ち上げ
欧州FP7のMETISの考える5G
5Gの無線アクセス技術
実現には無線技術だけでなく、
ITU-R WP5DワークショップでのARIB 2020 and Beyond Ad Hoc Group 講演資料 (2014年2月)よ り