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訪問介護員の労働環境と人材養成に関する研究 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)訪問介護員の労働環境と人材養成に関する研究 キーワード:ホームヘルパー、労働環境、人材養成、介護保険法、高齢者 発達・社会システム専攻 高橋 幸裕 序章 研究の課題と方法 (第 1 節)問題の所在 今日の日本を取り巻く社会環境は高齢化の速度が速く、 その影響が徐々に社会へと広がりつつある。特に高齢化 に伴う労働力不足は深刻であり、社会基盤の崩壊が予見 される中で、即時対応しなければならなくなった。 また、高齢者を抱える家族は介護の負担が重く、介護. 1956 年に長野県上田市は、同市に住む女性が独力で生 活できない家庭を対象に行っていた活動をホームヘルプ 事業として制度化した。その後、この事業は大阪府、東 京都へと波及していくことになった。 大阪市では中高年母子家庭の女性の雇用を行っている。 また、派遣対象は高齢者だけでなく障害者等に広げてい き、制度を発展させていった。. 地獄と言われるようになったことから、それを解決する. その一方で、東京都で制度の導入直後に国庫補助がな. ことが急務となった。そこで、国は福祉に関する社会基. され、 その 2年後の1963年には老人福祉法が制定された。. 盤の整備を目指したゴールドプランを施行した。また. そして、 派遣対象が低所得者にも広げられたが 1982 年に. 2000 年 4 月には福祉を措置としてではなく、権利として. 廃止され、社会的弱者は福祉から遠ざけられることにな. 利用できることを謳った介護保険法が導入された。. った。. しかし、福祉の充実が求められると同時に、介護労働 者が抱える問題も複雑化し始めることになってしまった。. (第 2 節)日本における社会福祉法制度の現状と問題点. とりわけ低い社会的地位や評価、そして職務範囲の曖昧. 日本には福祉六法と呼ばれる生活保護法(1946 年) 、. さから来る専門性の無さが問題である。こういった問題. 児童福祉法(1947 年) 、身体障害者福祉法(1949 年) 、精. が今後解決しなければならない課題である。. 神薄弱者福祉法(1960 年) 、老人福祉法(1963 年) 、母子 福祉法(1964 年)がある。. (第 2 節)研究の目的と方法. 特に老人福祉法は、高齢者の社会参画が理念に盛り込. 高齢社会が進んだことで、ホームヘルパーの社会的役. まれていることから、関連施設等が整備され福祉の発展. 割は大きくなった。しかし、ホームヘルパーは家政婦並. に貢献した。しかし、福祉関連施設が充実したが、従来. みの低い社会的評価と劣悪な労働条件を強いられている. の措置制度では人権が配慮されてこなかったことが問題. のが現状である。. とされてきた。. これらの問題を明らかにし、解決を目指すために以下. その問題は介護保険法が施行されてからは解消され、. の視点で研究を進めた。これまでの研究は労働問題を中. 福祉は措置から権利として福祉サービスが受けられるよ. 心としたものが多かった。しかし、本研究ではホームヘ. うになった。しかし、同時に介護保険法は新たな問題を. ルプ制度開始の動向を始めとして、労働環境(低賃金・. 生み出すことになった。それは個人負担の増加と介護認. 重労働等の雇用条件、 派遣方法、 健康問題等) 、 福祉政策、. 定制度の欠陥である。特に保険料負担は低所得者に重く. 養成制度と賃金制度、労働組合の諸活動等の検討を幅広. のしかかり、高所得者には軽くなると言う矛盾が生まれ. く行った。. てしまった。. つまり、本研究と先行研究の違いは、複数の視点を持. この制度が求められた理由は女性の高学歴化による社. って対象を検討していることである。また、養成段階か. 会進出と産業基盤の変化等が要因であった。何故なら、. ら入職直後、そして現場での問題を総合的に検討するこ. これまで日本では高齢者の介護を家族(女性)に依存し. とでホームヘルパーの抱える課題の解決を目指している. ていたため、 介護者が家庭から姿を消したからであった。. ことが特徴である。. その為、高齢者の介護を担うホームヘルパーの活躍が 期待されたが、介護保険法の影響で労働環境が著しく悪. 第 1 章 ホームヘルパーの歴史及び関係法. 化したため離職者が激増した。そして、身分が不安定な. (第 1 節)ホームヘルパーの歴史的経緯. 登録ヘルパーの存在が社会問題化したのである。.

(2) (第 3 節)福祉社会実現のために実施されたゴールドプ ラン. それと同時に、ホームヘルパーとその他の介護職との 賃金格差を行った。その結果、時間給には差が無いが経. ゴールドプランは 1989 年に施行された画期的な政策. 費の負担の問題を考えると、ホームヘルパーの賃金水準. であった。この政策の目的は介護労働者の増員と施設の. は最低レベルであった。そして、ホームヘルパーの就労. 充実、寝たきり老人ゼロを目指したものとなっている。. 上の問題は雇用上の不安要因の多さである。今後求めら. その後、施行された新ゴールドプランでは期待されただ. れるのは保険加入等、 安心して働ける環境の整備である。. けの効果は得られなかった。 そしてゴールドプラン 21 では、 高齢者の在宅生活の実 現を目指しているが、高齢社会は深刻化し目標の達成は. 第 3 章 ホームヘルパーの職務内容及び就労意識 (第 1 節)ホームヘルパーが可能な介護の範囲. 困難である。また、介護保険法の整合性を保つ為に目標. ホームヘルパーの主な職務は生活援助と身体介助、そ. 値を見込み量としたことで目標値の引き上げが可能とな. してそれを合わせた複合型がある。生活援助は利用者の. ったが、地域間格差を生むことになった。. 体に触れない家事全般の行為であり、身体介護は利用者 の体に触れ体位変換等を行う行為を指す。. 第 2 章 ホームヘルパーの資格制度及び労働環境に関す. しかし、これらの介護サービスは利用者の理解が進ん. る問題点. でいないことから、無理な要求をされることがある。生. (第 1 節)ホームヘルパーの養成及び問題点. 活援助では、ケアプラン外の要求をされる場合がある。. ホームヘルパーの養成制度は 3 段階あり、2 級の資格. その一方で身体介助では、爪切り等の医療行為を要求さ. 取得者が最も多い。各資格には役割があり、3 級では家. れる場合がある。これらの問題は、ホームヘルパーが行. 事援助、2 級では家事援助と身体介護が求められる。そ. える介護サービスの可能な範囲が曖昧なことから現場は. して、1 級はホームヘルパーを統括する能力が求められ. 混乱に陥ってしまっているのである。. ている。 また、福祉の関心が高まったことと介護保険法の施行. (第 2 節)ホームヘルパーの就業意識. が契機となり、資格取得を目指す者が増加していった。. ホームヘルパーの多くは使命感に燃えているが、経済. しかし、資格の取得には講習のみを受ければよいことか. 不況によって入職してきた者もおり、入職の動機は大き. ら、質の低いホームヘルパーを養成する原因となってし. く異なっている。また、若年世代は経済的理由を入職理. まった。. 由として挙げている一方で、中高年世代では生きがいや. そこで養成制度にも問題が指摘されている。カリキュ. 社会参加を目的とした者が多いのが特徴である。. ラムと講師の質の低さである。前者は、現場を知らない. しかし、この仕事は職業上、健康問題を抱えやすい。. 者がカリキュラムの立案やテキスト等を執筆しているこ. 身体的な問題では、無理な作業姿勢によって腰痛等を抱. とで現場との乖離が生じている。後者では、現場経験の. えやすい。また、精神的な問題では複雑な人間関係によ. ない者が教壇に立っている問題である。また、医療行為. ってストレスが溜まりやすいことである。しかも、それ. に関する問題をどの範囲まで学ばせるのかが課題となっ. を派遣方法の問題によって、同僚にも相談できない問題. ている。. がある。 その結果、健康管理が難しく、体調を崩しやすいこと. (第 2 節)労働条件等の考察 ホームヘルパーは性差、年齢、所属先(法人)によっ て大きな雇用上の差がある。性差に関しては、女性は男. が問題となっている。そして、ホームヘルパーは雇用条 件が不安定なために解雇されることを恐れ、仕事が休め ないという問題もある。. 性よりも地位が低く、雇用条件も不安定な状態である。 例えば、男性は事業所の経営を担っている場合が多く、. 第 4 章 事例研究−ホームヘルパーの仕事・養成に関す. 賃金等も高い傾向にあった。. る調査. また年齢に関しては、20 歳代より世代が上がれば正社. (第 1 節)聞き取り調査の概要. 員の割合が下がり、非正社員の割合が高まる傾向が明ら. 調査研究を行うに当たり、聞き取り調査の概要を記し. かになった。そして、所属先では医療法人は正社員の割. ている。調査は、福岡県内 3 か所の事業所で合計 8 名の. 合が 80%近くあるのに対し、 農業協同組合では 15%しかな. ホームヘルパーに聞き取り調査を行った。質問内容は 3. い格差も浮き彫りとなった。. つのテーマ(講習会の問題、仕事上の問題、今の仕事で.

(3) 感じている問題)を設定した。. 業所の経営体力の弱さが浮き彫りとなる結果であった。. そこで明らかになったことは、 「講習会の問題」 では実. この原因として、介護報酬単価の低さと生存競争が厳し. 習期間の短さを感じると回答する者が多かった。 「仕事上. いことであると回答する事業所が多いことから、介護保. の問題」では、講習会では基礎しか学んでいないので、. 険法の影響が現れていると言える。. 入職直後に戸惑うことが多いと答える傾向があった。そ して、 「今の仕事で感じる問題」では、資格制度そのもの に問題を感じており、何らかの形で制度を変更すべきと 言う回答が多かった。. (第 3 節)介護労働者を支える労働組合の活動 日本介護クラフトユニオンは、介護労働者の雇用条件 の向上を目的とした企業の枠を超えた労働組合である。 主な活動内容は、政府と雇用者に労働条件の向上を求め. (第 2 節)ホームヘルパーの事例研究−世代で異なる就. ることと、 組合員の情報交換や研修活動等の機会を提供、. 業意識. 教育活動を行うことである。. ここでは 8 名の聞き取り調査を行った中で、2 名のホ. しかし、組合としての活動は、組合員の働き方が多様. ームヘルパーを事例研究として取り上げた。対象とした. 化している中で活動が限界に達しつつあることから、当. のは 20 歳代の男性と 50 歳代の女性である。. 面の対応として法的保護をする必要があると考える。. 男性の場合、ホームヘルパーを仕事として選んだ理由 は人間的成長を目指しており、使命感に溢れているのが 特徴である。その一方で、女性の場合、経済的理由で入 職したが、仕事に対する誇りが高いのが特徴である。. 終章 本研究のまとめ及び今後の課題 まとめとして、ホームヘルパーは雇用条件、養成制度 等数多くの課題があることが明らかとなった。雇用条件. 調査結果として「講習会の問題」では、実習先の経験. の改善に関しては、国の政策が不十分であったことを認. が仕事の姿勢を決める要因となっていることが明らかと. め、介護労働者の法的な保護を早急に行う必要がある。. なった。また「仕事上の問題」では、男性は労働条件に. その一方で、養成制度では制度そのものの見直しも視. 不満は無いが、女性は賃金や保険加入の面で大きな不安. 野に入れつつ、資格取得の方法やカリキュラム等制度の. があると述べている。そして「今の仕事で感じる問題」. 改善を目指す必要がある。そして、最終的には、ホーム. では、人生観や価値観に基づいて利用者との接し方が違. ヘルパーの資格を国家資格として位置付ける必要がある. うのでその難しさを語っていた。. と考える。 今後の課題としてホームヘルパーは、この仕事に対し. 第 5 章 労働条件の改善と充実した雇用環境. て誇りを持つ必要がある。つまり、意識改革が求められ. (第 1 節)ホームヘルパーの派遣に関する諸課題. る。また、国に対しては、現場の労働者の意見をこれま. ホームヘルパーの派遣方法は直行直帰型であり、関係 者の人間関係を断ってしまうことが問題とされている。. で以上に聞く等、より現場に即した政策を策定する配慮 が求められる。. その為、仕事上の問題を相談することができず悩みを抱. そして、我々の問題としてホームヘルパーや介護、福. えてしまっている。また、派遣に伴う諸経費の負担や交. 祉に関する意識を変える必要がある。それを実現するに. 通事故の危険等に対する補償は無い状態である。. は、幼少の時から身近な問題として触れさせる為に、教. そして、健康被害に関する問題は休業した場合の所得. 育現場に取り入れる方法が考えられる。その他の手段と. 保障は無く、感染症対策も不十分な状態である。また、. して、マスコミ等の媒体を通してこれらの問題に対して. 精神的ゆとりが持てないのも問題とされ、事業所内には. の理解を進める動きが求められる。. 休憩室等の設置が必要であると指摘している。 〔主要引用文献〕 (第 2 節)事業所に関する問題 事業所の経営は都市部以外では不安定と言うことが明 らかとなった。 法人別では協同組合の赤字率が最も高く、. 1. 伊藤周平『介護保険と社会福祉 福祉・医療はどう 変わるか』ミネルヴァ書房,2000 年 2. 財団法人介護労働安定センター『介護労働者の労働. NPO 法人は黒字率が高いという結果であった。そして、. 環境改善に関する調査研究報告書』財団法人介護労. 赤字にもかかわらず事業の拡大を目指している事業所が. 働安定センター,2001 年. 多いのが特徴であった。 また、ホームヘルパーの雇用管理の実施率は低く、事. 3. 財団法人介護労働安定センター『介護労働ガイダン ス 介護労働者の働く意識と実態』財団法人介護労.

(4) 働安定センター,2002 年 4. 篠崎良勝[ 編著] 『どこまで許される?ホームヘルパ ーの医療行為』 一橋出版,2002 年 5. ミネルヴァ書房編集部[ 編]『社会福祉小六法 2003[ 平 成 15 年版] 』ミネルヴァ書房,2003 年 6. 百瀬孝『日本福祉制度史 古代から現代まで』ミネ ルヴァ書房,1997 年 7. 百瀬孝『日本老人福祉史』中央法規,1997 年 〔主要参考文献〕 1. 伊藤周平『介護保険を問いなおす』ちくま新書, 2001 年 2. 宇和川邁「介護保険施行 2 年 ホームヘルパーの劣 悪な諸条件の実態−実態の中に見える諸条件改善の 展望」 『総合社会福祉研究』総合社会福祉研究所,第 20 号,2002 年 3 月号 3. 小川栄二「いまホームヘルパーに求められている専 門性とは−介護保険の下で、本来の『ホームヘルプ』 のあり方を考える」 『福祉のひろば』かもがわ出版, 2000 年 12 月号 4. 小川栄二「政策的につくられたヘルパーの低い地位 制度の変遷と家事援助への評価から考える」『月刊 ゆたかなくらし』萌文社,No. 232,2001 年 6 月号 5. 財団法人長寿社会開発センター『2003 年改訂版 ホ ームヘルパー養成研修テキスト 2 級課程』財団法人 長寿社会開発センター,2003 年 6. 日本労働研究機構『ホームヘルパーの仕事・役割を めぐる諸問題−ホームヘルパーの就業実態と意識に 関する調査研究報告−No. 153』日本労働研究機構, 2003 年 7. 民間病院問題研究所『介護事故−その予防と解決策 を探る−』日本医療企画,2000 年.

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