244 児童精神医学とその近接講域 VOIJ.4,No.4
精神科外来 ・入 院患児 (児童 ・生徒) の実態調査
‑ 学校保健へ の精神医学的寄与 ‑
弘前大学医学部神経精神医学教室暮
和 田 豊 治,桜 田 撤,本 間 定 子
近時,児童福祉の問題 に開通 して,児童精神医学の発展は精神医 学の分野において大きな地位を しめつつある. しか し,わが国の学 校保健 とりわけその精神衛生面の現状をかえ りみ るとき,やは りい まだ しの観があることは否めない.われわれは,かねてか らこの面 に強い閲心を抱いていたのであるが,こん回,青森 ・秋田県内にお ける精神科外来 ・入院患児計1779例の実態を調査 し,え られた資料 を もとに, これを主 として精神 ・社会的な面か らの検討を くわえか つ若干の考察を試みた.
もとより本報告は精神医学の立場か らみた児童精神衛生の1断面 であるが,かかる面か らの検討 さえ も数少ないわが国の現状を考え るとき,その実態を把握 して児童精神医学のひとつのあ りかた も考 察 し,あわせてその指針を兄いだす ことも意義あることと思い, こ こに発表す る.
L い と ぐ ち
近時,児童福祉の問題に開通 していわゆ る児 童精神医学の面がおおいに発展 し7‑‑9)っっある
ことは,たとえば1960年の世界精神衛生年の各 国共通主題 として児童のそれが第1位にとりあ げられた ことや, またわが国で も同年に日本児 童精神医学会が医学の1分科 として発足 し,い くたのす ぐれた業練が発表 されていることか ら も明 らかであろう.
われわれは, このように精神医学の大きな分 野を占めつつある児童精神医学に強い関心を抱 き, じゅうらいより努力をか さねてきたのであ るが,ひるがえ ってわが国の学校保健 とりわけ その精神衛生面の現状をかえ りみ るとき,やは りいまだ しの観があることは否めないところで ある. これには旧来の慣習や啓蒙不足その他 の +主任 :和田豊治教授
Jab.ChildPsychiqL,4(4):244‑255,L963・
理 由もあるであろうし,またいっば うではわが 国の精神衛生行政の多岐性 もあげなければなら ないであろう. しか し,他の面では教育に直接 問は にたず さわる側にもやは り考えるべ き問題 が多々あるようにも思われ る. とい うのは,精 神衛生の進展は種 々の面の担当者が一致協力 し て こそ実現するはずの ものであるか らである.
われわれは, このよ うな観点にた って,まず 青森県 ・秋田県内の精神 々経科関係の病院にお ける18才未満の児童 ・生徒患児の実態を調査 し てみた.つぎにその結果のあ らま しについて報 告す る. ともあれ,かかる面か らの検討 さえ も 数少いのか, 2・8)わが国の現状であるが, その 実態を把握 して児童精神医学のひとつのあ りか たを考案 し,あわせてその指針を確立 したいと 思 ったか らで もある. もとよ り,本報告は精神 医学の立場か らみた児童精神衛生の1断面にと
‑ 54‑
栴 1轟 慎重対象曽一驚 トJ 読
年令区分 施 設 名
弘 大 病 院 神 経 科 県立中央病院神経科
県立八戸構神病院 青 森 精 神 病 院 弘 前 料 神 病 院 十 和 m 掃 神 病 院 健 生 病 院 (弘前) 浪岡町立柄院神経科
+年令別棟成人口数 (年令区分人口比)形 県立中央柄院神経科 来 大館公立病院神経科
暮年令別構成人 口数 (年令区分人口比)%
捷 計
(%)
年令別構成人口数 (年令区分人口比)形
48 46
a 16
14 23
・3
0
1
0
0 0
6 6
0 1
74 92 (7.2) (9.0) 114,000 68.000 (0.07) (0.12) 35 23
6 14
10 8
51 45 (9.4) (6.6) 65,000 35,000
(0.08) (0.L3) 126 137 (7.▲) (乱丁)
・L79,000 103,000
仝 患 者 総 数
普EE昏⁚希書丑半淋・^節紳iR(ie肺・特許)o淋鰭試料
246
(%)右貨
'LJJinJさ(Tnlcoや)・7!17議.fJi一〃1.蓋豆r!I芸Y′K.
遥
義損!JW□YYrrfJ.LtrlJrf串牡VT老翁責議完封胃●
児童精神医学 とその近接音域 VOL.4,No.4
ど ま る もの で は あ るが, こ 与に え られ た資 料 か ら, 痛 感 され る精 神 ・社 会 面 の諸 問題 を若 干 と らえて み る こと もあ なが ち 無 意 味 で は あ るまい. か か る面 の様 相 もま た児 童 精 神 医学 の 現 実 的 な1側 面 と も思 わ れ るか らで あ る.
ⅠⅠ. 調 査 対 象 被横 着
比較的さいきんの実態を把握 しよ うと考え,青森県内8カ所 (県 内 全地域のおよそ8割にあたる), 秋 田県内3カ所 (およそ5割にあた る)の計11カ所の総合病院精神科および椿神病院で,1960年(昭35)4 月より翌年3月までの1年間に扱 った18才未満者を一括 して対象とし た (第1表参照). また0‑3才までの乳幼児, 4‑5才の幼稚薗児 相当者, さらに高校年令屑などの社会人なども検討 したのは,学童 ・ 生徒との タテの相関を把握 しよ うと念 じたからである.なお,児童相 談所や種 々の公的児童収容施設を除外 したのは,あ くまで も精神科医 の立場からの調査を確立 したか ったからである.
1ⅠⅠ. 調 査 成 績 1.学校離別 (年令区分)成績
調査対象となった患者を一括 してみ ると第1表のようである.すな わち,外来患児は1,564名で,成人患者を含めた捻数7,667名のおよそ 20%をしめている.入院患児では215名で,総数3,223名のおよそ7%
である.いま,小学生 ・中学生 ・高校生のみをとりあげてみると,外 来では1,101名で14%,入院では1且5名で4%である.
つ ぎに,学校種別年令にそれぞれの構成人口 (第1表参照)にたい す る比率をとってみると,第1図にしめ したように,年令が高 くなる
0.1 Q2 0.3 0.4(メ)
第 1図 年令学校別構成人口比による被横着の比率
Ⅰ:0‑3才;E:4‑5才;P:′ト学生;班:
中学生;Ⅱ :高校生;Ⅱ′:高坂生相当年令 者 (以下,各図表 とも同じ分類).下は平均.
につれてその比率 も階段的に高 くな り, 全休の平均はおよそ0.2%で ある. ところで,児童 ・生徒患者絵数にたいする学校種別の比率をみ ると,第2図のどと くであって,外来では小学生が40%をしめて最多 数であ り,中学生 と高校生がこれについでいる. しか し,高校生年令 相当者を高校生に合算すれば,小学生>高校生>中学生>未就学児の 傾 とな る.また,入院では高校生 と相当年令者が もっとも多 く56%を しめ,中学生 と小学生がこれについでいる.すなわち,高年令届にな
‑ 56̲
1963 和田他 :精神科外来 ・入院患児 (児童 ・生徒)の実態調査
外 采
K P M H' H' J K P M H+ H '
第2回 学 令 別 恩 児 分 布
第2豪 診 断 名 別
248 児童精神医学 とその近接領域 VOL.4,No.4
るにつれて入院す るものが増加 してい ることがわか る. 4. 治療成績とその期間
2. 疾患別成績 これ ら疾患者の治療成績 はどうであろ うか.外来治
つ ぎに,疾患別 にながめてみ ると第2表 と第3図の 療者1,108名,入院治療者215名の成績は第3表の とお りである.すなわち,全疾患
第 3図 疾患別息児分布 (略図は第 2表参照)
とお りであ る.すなわち,過半数 ちかいてんかんが王 位 を しめ,精神薄弱,清神 々軽症,脳性麻痔後遺症, 脳腫湯,駄膜炎,頭部外傷後遺症な どの脳 器質性疾患, 精神分裂病 がそれにつ ぎ,いわゆる問題児 はがい して 少ない.ただ しここでい う問題児 は狭義の ものであっ て,行為問題の主 因がむ しろ精神医学 的に明 白にされ ない もの とい う消極的な意味の ものであ る.*
3.学校種別 と疾患別との中開
以上,A ・B項の成練 を両者 との相 関において しめ したのが第4図である. これか らわか るように,てん かんが各年令層 に広 くかつ多 く分布 してお り,小学生 が もっと多 く,中学生が これ についでい る. そ して, 入院 も精神病 についで多いのは, その大部分が2‑3
週 間の精査のための ものであ って, と くに大学病院に おいては, ほとん どがそ うであ る. これは,てんかん を治療す るにあた って, もっとも適切な方法であ ると い う,われわれの方針 にもとづ くものであ る.残 りの 1部のてんかん児 は精薄,性格異常な どを ともな った もので, そのため に入院保護 を うけてい るもの と思わ れ る. ここで注 目しなければな らないのは,神経症が 小 ・中 ・高校生にほぼ同 じぐらいに分布 してい るのに, 精神病なかんづ く精神分裂病が中学生 において, かな
り発現 し,高放生 にいた って他疾患の上位 にた ってお り, しか も′J、学生 に4名み られ ることである.手書
を平均 しての有効率 は外来 ・ 入院治療 とも80%強のてんか んを中心 に して,総計で70% 台であ り, その うち著効のみ られた ものはおよそ半数であ る.治療期 間 もてんかんが長 期間にわたることは,本病の 治療が薬剤を主休 とす るもの であるか ら当然であるが,・清 神病がやや長期間を要す る反 面,神経症 はがい して短期間 に好転 してい ることがめにつ
く.
S.主要開溝行為
小児は成人 とちが って,みず か らの意志 によって受 診を求めない. また愁訴 もあ くまで主観的であるとい う特徴 を もってい る. したがって,客観的主症状 は行 動の異常が前景 にたつはあいが多い.そこで,近縁者 とい う第3者の客観的主訴が来院の動機 に大 きい比重 を もつ ことにな る.その よ うな主症状ない しは主 問題 の うち,比較的明瞭でかつ具体 的な ものをあげると第 4表のとお りであ る. しか し, かかる主問題が診察の 結果,すでに しめ した第2表の どとき診断名 にそれぞ れふ りわけ られたわけであ る.
6.頼介者
小児の来院 はほ とん どが保護者の意志 による. しか し,保護者が気づいて も清神 々経疾患 と考えないばあ ‑ い もあるし,なかには異常 その ものに気づかない こと
もけっ して少な くない. そのような場合には受診をす すめ る細介者が中間にたつ. そのよ うな意味での紹介 者をあげてみ ると,第5表の とお りである.すなわち, 全患児のおよそy3が紹介患者であ り, それ らの うち医 師の紹介が過半数 を しめ る反面,教育の現場か らのそ れが案外少ない ことがめにつ く. ちなみに,縫合病院 他科 よ りの細介 は第6表の とと く小児科が主体 をな し てい るのは当然で あるとはいえ,かな りの変異 がみ ら れ る.
* したが って, たとえば神経症やてんかんな どと診断 し得, その疾患 によって異常行動が把握 され るものは含 まれていない.原因 ・主 因不明 とい う意味の問題児である.
●暮ただ しこの4名 は確定診断ではな く,分裂病圏にぞ くす るとい うてい どの ものであ る.
‑ 58 ‑
1963 和田他 :精神科外来 ・入院患児 (児童 ・生徒)の実態調査
50403020700 0 10 20304050 60708090
1 (
氾110(名) 249(3)
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⊂]370
□ 156
第4図 学校年令別,疾患別分類の相関
ただ し ( )値 は実数.EP.・てんかん;OL:精神薄弱 ;BPC:問題児 ;PS:精神病 ;NS:神経症
・ , C
OD:頭部外傷後遺症ならびに中枢神経系脳異 質 的 疾 患 (後者は狭義の神経疾患 と録 されたい).‑ 59‑
250 児童精神医学 とその近接領域
第3蓑 治療患児の成練と期間
VOIJ.4,No.4
逮 入
第4表 来院患者の主訴とな った主要問題行為
計
第5蓑 招介者の区分 紹 介 者 t 例 数
1
%計
和田他 :精神科外来 ・入院患児 (児童 ・生徒)の実態調査 251
1958年 1959年
7 9 6
0年 (B6337 (Ds34)( 肥 3
5)弘前大 学病院
神経
科第S国 外東泉児の年度別推移
第6表 総合病院での細介区分
I958年 7959年 T960卑 し陀33」 ) (.好3.‑4̲.)(.̲̲̲̲̲甜3J5)
∧UnU04っJ2 ち
(8833)(托ヨ34)り泊35) 弘 荊大学病晩神経科 弘 前 楕神病 院
第6図 入院患児の年度別推移
院 内 他 科 、例 数 .}J
IV.捲 括 的 考 棄
以上,調査結果のお もな ものをのべたが, そ れを もとに して臨床精神医学の面か ら若干 の問 題 を考察 し, 日ごろ考えさせ られてい る事項 に ついて簡単 に付記 してみたい.
まず,児童 ・生徒患者の実数を考えてみよ う.
今 回われわれのえた成績では,小 ・中 ・高校生 だけを対象 とす ると,全患者数 にたい して外来 では14%,入院で4% に しかす ぎなか った. ま た18才未満者 に一括 して も,前者で20%,後者 で7%である. この傾 向は,青森 ・秋 田両県の いずれで も差異が ない.そ こで,青森県のはあ いを例 にとってみ ると,1960年(昭,35)5月現 在の青森県の児童 ・生徒数 は, 小学校232,063 負,中学校98,795名,高等学校(全 日制)30,681 名であるとい うが, その総数 にたいす る比率を み ると,小学生 は外来0.17%・入院0.015%, 中学生は外 来0.2%・入院0.04%,高較生は外 来0.35%・入院0.08%であ る.以上を合算す る と,青森県の児童 ・生徒数361,539名 にたい し, 外来714名0.2% ・入院94名0.03%である. この 数値 は,以下 にのぺ る理 由によって,予想 され る経穀的発現確率 よ りは るかに低いのであるが, とにか くこの実数 は学校保健 の問題,そ してそ
‑ 61‑
252 児童精神医学とその近接額域
のあ りかたにたい し考慮の余地をあたえるもの ではあるまいか. しか も第3表 に しめ したよう に,30‑40%が治療 によって著効をえているの であるか ら,いわゆる治療教育の面ではけっし て無視できないところである.
また, こん回の調査で特徴的な点のひとつは, 調査 した各病院の患児の比率が異な ることであ
って,大学病院だけが患児が全患者のおよそ鴇 を しめていることである. そこで,弘前大学神 経科外来における患児の実態を各年令区分別比 率 に分けて,他大学神経科のそれ と比較 してみ ると (比較の便宜上中学生以下 とす る),まず弘 前大学のばあいは,5才以下28%,小学生51%,
中学生21%で,1959年 (昭,29)における大阪市 大精神科児童相談部の成績2)はそれぞれ13%, 73%,14% とな り,後者 において小学生息児の 比率がはるかに高い. これはこの児童相談部の 特殊性 によるものと思われ る. これ に反 して, 京大精神科児童 ク リニ ックの1956年 (昭,31) か ら1960年 (昭,35)までの成績6)はそれぞれ 17%,53%,30% とな ってお り,小学生のそれ はわれわれの成績 とほぼ同 じであるが,やは り 乳幼児期患児の比率は大阪市大のそれ と同 じく とも低率である. したが って,われわれのとこ ろでは乳幼児の患者を扱 う件数が他 よ り多いと い う特徴を もっている. この ことはこん回の青 森 ・秋田県を総合 した成績でそれぞれ21%,52
%,29% とい う比率か らもある程度 うかが うこ とができる.
ちなみに,弘前大学病院で取扱 った児童 ・生 徒の過去3年間の推移をみ ると,第5 ・6図の
ごとく,年 々徐 々に上昇 していることがわかる.
しか し,他の病院で も1960年 (昭35)はその前 年に比 して上昇 している. また,疾患別では, 頭部外傷後遺症などの脳器質性疾患が増加の傾 向にある. これ らのことは,他病院にも患児が ど しどし赴 くようになったことを しめす もので, これはなによ りも児童を中心 とす る青少年の精 神衛生面の開発を ものがたるものと思われ, こ の傾向か らしょうらいのよ り充実 した進展が期 待 され るところである.
VOL.4,No.4
つ ぎに,各疾患別の問題 について考察 してみ よう. まず児童 において もっとも問題 となるの は精神薄弱である. こん回のわれわれの調査で は全患児の13%であるが,てんかん発作を合併 した ものをふ くめると17%である. これに反 し て,大阪市大の成績2)は41% ときわめて高い比 率を しめている.京大の成績6)は28%強である が, これは中学生期までの全患児にたいす る比 率であるので,比較のためわれわれの成績を補 正 して も20%強であ りやは り,低率である. こ のことは,われわれの地域では医師の診療を受 ける精神薄弱児がまだ少ないことを しめす もの であろう.精神薄弱の出現率は,全国的な統計 資料1・4)によると小学生4%, 中学生6%, 高 校生0.1% ぐらいとな り, その平均をおよそ4
% とみて も,青森県のばあいでは学童中におよ そ1万人以上は存在す るものと推定 され る. し か もその大半が特殊教育の対象 になるはずであ るが,その対策はいまようや く緒についたばか りである.特殊教育の対象にす らな らない重症 精神薄弱は, 人 口の0.5%であるとして も,軽 症 と重症 との中間の痴愚級は精神薄弱全体の30
% ちか くを しめ る. これ らが深刻な表情の保護 者にともなわれて精神病院をおとずれ る. しか
し,それに して もその他はいったいどこに赴 き, どのよ うに取扱われているのであろうか.義務 教育 としての特殊教育にわれわれが多大の関心 をいだ くゆえんである.
他の疾患 に比 して圧倒的に多か ったのは,て んかんである.その数は児童患者の約半数を し めていた.大阪市大の15% 2)は意外に低率 と し て も,京大のそれ6)は38%強でわれわれの成績 にはぽちかい. もともと,てんかんの発生率は 人 口の0.5%, したが って,青森県 にはおよそ 7,500名のてんかん者が潜在す るものと予 想 さ れ る. しか し本疾患は%以上が思春期の間に発 病す るもので,乳幼児期 につ ぐ山は思春期 (12
‑14才)である11). したが って推定 され る患児 の1‑ 2割程度のみが受診の うえで治療 されて いるといえよう. ちなみに,てんかんの現在の 治療段階では, 内外の薬剤治療の成績はおよそ
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1963 和田他 :精神科外来 ・入院患児 (児童 ・生徒)の実態調査
50%が完全 に発作が抑制 され,残 りの20‑30% は発作半減以上 に好転 しているとい うのが大略
である. ll)てんかんは精神薄弱 と直結 していな
い し,服薬治療 によって知能 ・精神障害 もかな り除去 しえるものである.早期発見な らびに早 期治療が望 まれ るところである.
問題児が僅少である (3%)ことも意外であ るが, これは前 にもふれたよ うに,小児では症 状の主休が行動異常 として第3者 に把握 され, したが ってある意味では小児の精神 々経疾患は 多かれ少なかれ問題児的性格をおびているとい いえるわけである. ところで京大の成績6)は8
%弱で,われわれの成績の2.5倍であるが, 小 学生 にやや多い点は共通 している.そ して問題 行為の内容 として,興奮 ・粗暴 ・攻撃性,不安 定 ・落 ちつきなさ ・わがまま,非社交 ・かん黙
・自閉,登校拒否 ・長欠 さらに睦言癖 ・家出, 非行 などがあげ られ,がい して男子 に,学童後 期か ら中学生期 にかけて多い傾 向にある. しか し,われわれはその仮面の下 にある疾患の診断 名を付 したために少 なか った ものと思われ 号.
事実,問題児は精神医学的診断名ではない し, われわれはそのなかにある主休疾患を兄いだ し て対策をたてなければな らない. しか しそれ に して も,問題児の大 きな部面を しめるものは神' 軽症であろ う. この神経症 は小 ・中 ・高校生 に 大差な く分布 していることは,神経症児がどこ にで も存在 していることを しめ しているであろ う.一般 に/Jヽ児神経症は治癒 しやすい場合が多 いので, これ も早期治療を必要 とす るもののひ とつであることにはかわ りがない.
つぎに精神病であるが,今回の調査成績では 中学生にいたってあ らわれは じめ,高校生 にお いて大分発病 しているし,その率 は高校にはい らない高校年令者 に多い. この精神病のほとん どは精神分裂病であるが,それが高校生 におい て発病をみ ることはさ して珍 らしくないとして ち,中学生の発病は注意を要す るところである.
かかる早期の発病はわが国 において も最近指摘 されつつあるが)・5), こん回の調査 において も けっして少な くないことがわか るであろ う.本
253
病 は周知のよ うに進行性で予後の不良な精神病 のひとつであ り,初期 には神経衰弱状態を呈 し た り,活気がな くなって欠席 した り,学業不振
・成績低下 などの問題を もた らす.長欠児 に本 病が兄 いだ され ることはさして珍 らしくない も のと思われ るが,高校生はもとより,中学生 に おいて もじゅうぶんに注意す る必要があろ う.
とのよ うに,児童,生徒 において も本来の精神 病の発現の可能性があることをと くに指摘 した い.
以上,おもな問題を若干考察 してみたが,本 調査をおこなった うえで痛感 したことを,終 り
に付記 してみたい.すなわち,調査成績か らみ て も精神 々経疾患児の数はけっして少な くない こと,またその実数は予想よ りも低 くて,なお 以上 に潜在す ることが推定 され るところである が, これ らの精神医学的な問題を しょうらいど のよ うに処理 してゆ くかが当面の課題であろ う.
精神衛生 に.おける精神医学の立場は,まず医学 的診断を くだ し,その うえで しょうらいの治療 ない しは指導の指針をあたえることである.小 児の異常行動のなかには多 くの<病気>が原因 していること,それはただ単なる精神指導のみ丁 によっては解決 され うるものではないことなど を考慮 にいれて,児童の精神を多角的に各分野 で協力 しなが ら,少な くともわれわれはそれを 眺めかつ進んでゆきたい ものである.
Ⅴ .
ま と め青森県 ・秋田県 内の精神 々経科関係の病院11 カ所において,1960年 (昭,35)4月か ら翌年
3月 までの1年間に扱 った,18才未満者の児童
・生徒患児の実態を調査 し,つぎのよ うな成績 をえた.
1)外来診療を受けた患者 は総数 7,667名で あるが, その うち児 童 ・生 徒 (18才未満) は 1,564名 (20%), また入院患者では3,223名中 215名 (7%)であった. これを小 ・中 ・高校 生だけに限 ってみると,外来患者で14%,入院 患者で4%を しめている.
2)学令別 にたいす る構成人 口比をみ ると,
‑ 63‑
254 児童精神医学 とその近津領域
年令が高 くなるにつれてその比 も階段的に上昇 し,全体の平均ではおよそ0.2%である. また 外来では小 ・中学生が きわめて多いのに反 し, 入院では高校生が多 くな っている.
3)疾患別では各年令層 ともてんかんが もっ とも多 くて過半数 ちか くを しめ,精神薄弱>神 経症>脳器質性疾患>精神病の順 とな り, いわ ゆる問題児はがい して少 なか った.
4)これ ら患児の治療成績をみ ると,全体 と して効果のみ られた ものはおよそ70%台であ り, うち著効は30‑40%である.てんかんと精神病 が比較的長期間を要す るのに反 し,神経症では がい して短期間に好転 している.
5)来院の直接動機 とな った主要問題行為で は, てんかん発作が主位を しめ (41%), 多動
・排掴 ・暴行 ・盗癖 ・弄火 などの反社会的行為 もかな りみ られた.
6)来院患児のおよそy3は他 よ りの紹介であ り,それ らの うち同一病院他科よ りの紹介が も っとも多 く過半数を しめていたのに反 し,一般 開業医 ・教育関係 ・特殊施設などか らのそれが 比較的少なか った.
1
7)以上の資料を もとに,精神 ・社会的な面 か ら若干の考察を加えた.
VOIJ.4,No.4
輔 筆 す るに あ た って資 卦 の提 供 に よろ こん で協 力 し て くだ さ った 閑伴者 各位 に心 か らの謝意 を表 す る. ま た本 稿 の要 旨は1961年 (昭36)児童精神 医学 会捨 金並 びに全 国学 校 医 大会 にお い てそれ ぞれ発牽 され た.
〔
弘前市相長町2 弘前大学医学部 神経精神医学教室内
文 献
1)厚生競計全編 ‥厚生の指標.特集 ・国民衛生の動 向,147,1960.
2)黒丸正四郎,小西輝夫,村野貞雄,長尾意彰 :過 去 1年間に於ける当教室児童相談の経験.阪市大 医誌,4:347‑351,1955.
3)黒丸正四郎 :児童の精神分裂病. 精神医学,1:
71‑81,1959.
4)三木安正監修 :精神薄弱児の実態一精神薄弱児の 出現率.東京大学出版会,1956.
5)品川浩三 :小児精神病に関する路床的研究.精神 経誌,61:152‑207,1959.
6)高木隆郎 :大学病院精神科における児童 ク リニ ッ ク運営の経験 と問題点.児童精神医学 とその近接 領域,1:257‑269,1960.
7)高木四郎 ;児童精神医学.内村 祐 之 他 編 :梼 神 医学最近の進歩‑第1集‑,265‑278,医歯薬出 版,1957.
8)高木四郎 :わが国児童精神医学の展邑 精神医学, 1:599‑607,1959.
9)高木四郎 :わが国児童精神医学の将来.児童精神
・医学 とその近接領域,1:2‑ll,1960.
10)和 田豊治 ‥てんかんの臨床一最近の治療成績を中 心 として‑.精神経誌,62:339‑356,1960.
PATIENTSIN CEILDE00D AND ADOLESCENCE TREATED IN NEUROPSYCEIATRIC CLINIICS:A STATISTICAL SURVEY
ToyoJIWADA,M.D.,SEO SAKURADA,M.D.,&
TEIKO HoNMA,M.D.
Dcba〆me71tOfNewobsychiaLyy,HI'rosakiUniversitySchoolofMedicine (Di'rector:Pyof.T.Wada)
ABSTRACT treatedduring thepastyear(1961)atll neuropsychiatricinstituteslocatedinAomori Tbe1567out・patientsand215in‑patients・ andAkitaPrefecturesweresurveyedstatis・ both below 18yearsofage,having been tically'and the followlng COnClusions or
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1963 255
results were obtained :
1) Compared with the total number of the patients treated, they were 20% in the out- patient and 7% in the in-patient ; as the patients of primary, middle and high schools were concerned, these numbers shift to 14%
and 4%.
2) Although the rate of incidence of these patients per the constructive or comparative population wasO.2% in average value, there were many patients of primary and middle schools among the out-patient (due to epi- lepsy in main) and many patients of high school among the in-patient (due to psycho- sis in main) ; among disorders, in fact,
the incidence followed as epilepsy
>
oligo- phrenia > psycho-neurosis > brain organic disease> psychosis (comparatively, the so- called behavior problem child was few).3) Clinical effecacy in these patients trea- ted was estimated as ca. 70%, including ca. 30% with significant improvements, especially in epilepsy and child-neurosis.
4) Not only the behayioral problems found as the motive to deal with medical therapy, but the ways of introduction to neuropsy- chiatric clinics were investigated case by case.
5) Based upon these findings, the impor- tance of child-psychiatry, as well as the ignorance in social pattern, was deeply impressed anew, and, therefore, the social attitude upon the school neuropsychiatry should be more intensified in our country.
c/o Department of Neuropsychiatry Hirosaki Univ. School of Medicine Sagara-cho 2, Hirosaki, AOMORI
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