中国国有企業の株式制転換
現 状 と課 題
川 井 伸 一・
中 国 は1979年 以 来 い ろ い ろ な 国有 企業 改 革 の 試 み を経 て き てい る。1979 年 か らの 企業 へ の 自主 権 賦 与 と利 益 の委 譲(「 放 権 譲 利 」)1),1983年 か ら の利 潤 上 納 制 か ら所 得 税 へ の転 換 に よ る利 潤 分 配 の 規 範 化(「 利 改税 」), 1987年 か らの 「 所 有 権 と経 営権 の分離 」論 に基 づ く経 営 請 負制2)と経 営 リー ス制,1989年 以 降 の 企 業 利潤 の 国家へ の配 分 に お け る所 得 税 と利 潤 上納 の 分 離(「 税 利 分 流 」)3),さ らに1992年 か らの 自主 経 営,損 益 自己 責任,自 己制 約 に 向 け ての 「経 営 メ カニ ズ ム転 換 」 の 試 み な どで あ る。 しか し,こ う した改 革 の試 み に もか かわ らず,国 有 企 業 改 革 は 大 き な成 果 をあ げ る に は至 って い な い。 多 くの赤 字 企業 の存 在,経 営 効 率 の一 貫 した 低 下,そ の 結 果 と して 国有 企 業 の 国 民経 済 に 占め る比 重 は 次 第 に低 下 して い る。 こ う した な かで1993年 末 以 降,い わ ゆ る株 式 制 企 業 を 中 心 内容 とす る 「現代 企 業 制 度」 確 立 の試 み が 開始 され,注 目を集 め て い る 。
本稿 で は中 国国 有 企業 の株 式 制転 換 にお け る 企業 再 編 の 現 状 と課題 にっ
いて 以下 の点 か ら検 討 しよ う とす るもの で あ る。 す なわ ち,第 一 に財 産 所
有 権 の再 編 の あ りか た,第 二 に経営 管 理 機 構 の再 編 の あ りか た で あ る。
1株 式制改 革と 「 現代企業制度」構想
1)株 式 制 改 革 の沿 革
株 式制 企業 の 試 行 は1980年 代 か ら始 ま り,そ の発 展 は い くっ か の時 期 に 分 け られ る4}。 第 一 期(・ ・ 年)は 一 部 の都 市で 株 式 制 の試 行 が 開 始 され た時 期 で あ る 。 例 え ば1984年 に株 式 制 の第 一 号 と され る北京 天 橋 百 貨 株 式有 限公 司や 上 海 飛 楽 音 響株 式 有 限公 司が 設 立 され た 。 いず れ も社 会 に 公 開発 行 され た株 式 を含 ん で いた。 その 後,株 式 制 の試 行 は,藩 陽,重 慶, 武 漢 な どで展 開 さ れ て い った。 この期 間 に設 立 され た 株 式制 企業 は主 に集 団所 有 制 企業 お よ び 一 部 の 小型 国営 企業 で あ り,株 式 の 発 行 方式 は 内 部 の 非 公 開株 を 主 と し,一 部 を 公 開発 行す る も ので あ った 。株 式制 の運 用 も規 範化 され て い な か った(例 え ば株 引 き上 げ の 自 由,株 式 配 当 と元 本 利 息 の 保証,譲 渡 売 買 と担 保 の 禁 止,調 達 資金 の消 費 基 金 へ の 転用 な ど)。
第 二 期(1986年 後 半 一1989年 半 ば)に 株 式 の 店 頭 販 売 業 務が 開 始,株 式 の 流通 市場 が 形 成 され,株 式制 企 業 の試 行 数 も増 加 し1988年 には 約6000余 りに な った。 株 式 制 の 試 行 企業 も大 中型 の 国有 企 業 を 含み,業 種 も拡 大 し た。 株 式制 の規 範 化 は 第 一 期 よ りもか な り進 ん だ が,依 然 と して多 くの 問 題 が発 生 した(例 え ば,株 式 と債券 と の混 同,株 式 の退 出,国 有 資産 の過 小評 価,高 い 株 式 利 息 と配 当率 な ど)。 この 時 期 は理 論 界 で 株 式 制 の是 非 にっ き熱 心 な論 争 が 展 開 され,株 式 制 支 持 派 は 経 営 請 負制 や リー ス制 に代 わ る企 業 改 革 の根 本 策(財 産権 の 明確 化)と して株 式 制 の 意義 を主張 した 。
第 三 期(1989年 半 ば 一1991年)は,1988年 秋 以 降 の経 済 の調 整 ・引 き締
め,1989年 の天 安 門 事 件 以 降 の政 治的 引 き締 め の 影響 を う け て,株 式 制 改
革 も停 滞 した。 証 券 取 引所 が設 立 され た 上 海 と深f川で の株 式 制 の試 行 は継
続 され たが,そ の 他 の地 域 の株 式制 試 行 は 停 止 した。1990年 か ら1991年 に
か け て株 式 制 試 行 企 業 の 数 は減 少 した 。 この 間,理 論 界 で は株 式制 へ の批
判 的 論 評 が 多 く提 出 さ れ,株 式 制 支持 派 の 見 解 は ほ と ん ど公 表 され なか っ
中国国有企業 の株 式制 転換
た。
第 四期(1991年 後 半 一)は,再 び株 式制 の試 行 企 業 が 増 加 に 転 じ,1992 年 初 の郡 小 平 の 「 南 巡 講 話 」 を 受 け て試 行 企業 は大 幅 に拡 大 した。 特 に93 年 以 降 は試 行 企業 が 急 増 して い る こ とが 注 目 され る。 株 式 制 企 業 の増 加 数 は92年 約400件,93年9440件,94年 で12800件 余 で あ った(表1)。 同 時 に 株 式 制 の 法 規範 化 が進 み,1992年5月 には 「株 式制 企業 試 点 弁 法 」 「 株 式 有 限公 司規 範 意 見 」 「 有 限 責 任 公 司規 範 意 見 」 が 公 布 され,こ れ を 改編 集 大 成 した も の と して1993年12月 に は 「公 司法 」(会 社 法)が 公 布 され た
(1994年7月1日 施 行)。
表1.中 国 の 株 式 制 企 業数
企業数 有限公司 株式公司 鷲 葦 法欝 公難 行(上 場 企業)
1988年 4750
1990年 3800十 3200十500十60十(20)
1991年 3220 275138089
1992年 3600十 (69)
1993年 13000十 98003210 (122)
新 規 分 9440 64722968
1994年 25800 1070015100 (290)
(出 典1988年:『 中 国 証 券 市 場(1991)』 中 国 金 融 出 版 社 、64頁.1991年:『 人 民 日 報 』1992年6月23日,劉 鴻 儒 論 文.1992年:『 中 国 通 信 』1993年2月24日.
1993年:『 経 済 参 考 報 』1994年2月28日.1994年:『 中 国 通 信 』1995年2月9日)
2)「 現 代企 業 制度」 の構想
1993年ll月 の中 国 共 産党 第14期3中 全 会 で 採 択 さ れ た 「 社 会 主 義 市場 経
済 体 制 を確 立 す る うえ で の若 干 の 問題 にっ い て の 決 定 」 に お い て国 有企 業
の経 営 メ カニ ズ ム転 換 の た め 「 現代 企 業 制 度 」 を確 立 す る課 題 が 初 め て公
式 に規 定 され た。 現 代 企業 制 度 とは要 す るに 資 本 主 義 世 界 に お け る会社 制
度 を中 心 とす る近 代 的 企業 制 度 の ことで あ り,そ の 主 な特 徴 は① 国 家 の国
有 資 産所 有 権 と 企業 の法 人財 産権 の 区別,② 企 業 の 有 限 責 任 制 と 自主経 営,
損益 自己負 担,③ 出 資 者 の所 有 者 権 益 と 有 限責 任,④ 企 業 の 市 場競 争 と優 勝 劣敗,政 府 の 企 業 生 産経 営 へ の不 介入,⑤ 科 学 的 な企 業 指 導 制度 と組 織 管理 制 度 の確 立,と さ れ て い る。 企業 形 態 の面 で いえ ば,国 有 企業 を基 本 的 に会 社(株 式 制 企業,具 体 的 には有 限 会 社 と株 式 会 社)に 転 換 す る こ と で あ り,そ の 他 補 助 的 に個 人 企 業,合 名 企 業,組 合 企 業,外 資 企業 な どへ の転 換(リ ー ス,経 営 請 負,改 組 売 却 な どに よ り)を 含 め て考 え られ て い る5)。
この 決 定 お よ び1993年12月 採 択 され た 公 司 法(会 社 法)に 基 づ き,同 年 末 以 来,国 務 院 は 「 一 部 国有 大 中型 企 業 を選 ん で 現 代 企業 制 度 テ ス トを行 う ことに 関す る方 案 」 を作成,国 家 経済 貿 易委 員会 お よ び 国家体 制 改革 委 員 会 が 分 担 して 「現 代 企 業 制 度 」 の具 体 的 計 画 を作 成 した。 現 在,国 務 院指 定 の100企 業,省 ・直轄 市 指 定 の1300余 企 業,地 区 ・市指 定 の 企業800余 社, 併 せ て 全 国 の2200余 企 業 が 現 代 企業 制 度 の実験 試 行 企 業 と され て い る6)。
改組 の方 針 は 以 下 の とお り。① 一 般 の 国有 大 中型 企 業 は 有 限会 社(大 多 数) か株 式 会 社 に転 換 す る。② 主 力産 業 や 基 幹 産業 にお け る中 堅 国有 企 業 は国 が 支 配 的 な 株 式 所 有 者 と な り,非 国有 資 本 の 参 入 を 認 め る。 ③ 特 殊 業 種 (国 防 ・航 空 ・先 端 技 術 ・金採 掘,造 幣,鉄 道,エ ネ ル ギ ー な ど)や 重 要 製 品 を生 産 す る 独 占 的 国 有 企 業 は 国家 単 独 資 本 の 有 限会 社 に 転 化 す る 。
④ ま た全 国範 囲 の 業 種 別r総 公 司」 は持 ち株 会 社 と し,当 該 業 種 の 企 業 グ ル ー プ形 成 の 中核 とす る。⑤ 一 般 の 小型 企 業 は,従 来 の リー ス制 ・経 営 請 負制 を継 続 す る か,「 株 式合 作 制 」 企業 や 有 限 会社 へ の改 組 個 人 ・集 団 企業 ・外 資 企 業 へ の 売却 を認 め る。 こ の よ うに,企 業 制 度 の改 造 方 法 は企 業 規 模 の ほか に業 種 別,製 品 別,市 場 競 争 度,企 業 効 率,さ らに は 産業 政 策 との 関 連 か ら判 断 され る こ とに な る7)。
この 改 革 構 想 は 企業 の法 人財 産権 の保 証,そ して法 人 財 産 権 に基 づ く企
業 の 自主 経 営 権 と 有 限責 任 制 を明 記 してお り,そ の点 で 所 有 権 と経 営 権 の
両 権 分 離 に関 す る 従来 の議 論 の あ い ま い さを 克服 して い る。 同時 に,そ れ
は西 側 世 界 にお け る資本 主 義 的 企業 編 成 を 踏襲 す る もの で あ る。
中 国国有企業の株 式制転 換
2株 式 制 企 業 の 経 済 パ フ ォ ー マ ン ス
株 式 制 企 業 の経 済 効 率 パ フ ォー マ ンス は そ の他 の 企 業(国 有 企 業,集 団 所 有 制 企 業,外 資 系 企 業)と 比 較 す る と,比 較 的 良 好 で あ る 。 例 え ば, 1993年 にお け る単 位 当た り純 生 産 額,資 金利 潤 率,資 金 利 税 率,販 売 利 潤 率,付 加 価 値 労働 生 産 率 の いず れ にお い て も株 式 制 企 業 は 国 有 企 業 お よ び 集 団所 有 制 企 業 よ りも大 幅 に 上 まわ って い る(表2)。
表2.中 国 工 業企 業 の類 型 別経 済 効率(1993)
単位純生産額 資金利潤率 資金利税率 販売利潤率 労働生産率
万 元 元/人
国 有 903.5 3.2 9.7 11.6 16187
集 団 所 有 制 112.8 4.9 10.9 10.1 22645
株 式 制 1782.4 11.6 17.4 16.7 69438*
外 商 投 資 679.3 8.7 13.1 12.6 108103*
華 人 投 資 437.1 5.6 8.6 9.6 76965*
*付 き の労 働 生 産 率 は推 計 値(従 業 員 数 を それ ぞれ66万,53万,66万 と した場 合) (『 中 国統 計年 鑑1994』374,378‑381頁 よ り作成)
ま た1994年2月 時 点 で の 全 国株 式制 企 業 に 対 す る ア ン ケ ー ト調 査 集 計 (回収 サ ンプル 数371社)に よれ ば,株 式制 企業 の 経 済 効 率 パ フ ォー マ ン ス は,株 式制 転 換 の前 後 にお い て大 き く伸 び て い る。 す なわ ち,サ ン プル 企業 全 体 の伸 び率(転 換 の 前 年 に対 す る転換 後1年 の伸 び 率)は,労 働 生 産 性 で57.3%,販 売 利 潤 率 で49.2%,資 金利 潤 率 で39.3%,一 人 当た り利 税 額 で85.2%で あ る。 国有 企 業 か ら株 式 制公 司に 改 組 され た 企 業 で の 伸 び 率 は,そ れ ぞれ61.8%,49.1%,42.7%,87.8%で あ り,全 体 平 均 よ り概 して高 い伸 び 率 を 示 して い る8)。 これ は 全体 の状 況 を示 す も の で は 必ず し も な いが,株 式制 転 換 後 の 企 業 のパ フ ォー マ ン スの 良 さ を示 してい る。
この 背 景 要 因 と して,一 っ には 一 般 に 国 有 企業 の 約3割 が 赤 字 企 業9), 約3割 が 潜 在 的赤 字 企 業 と いわれ る よ うに大 多 数 の 国有 企 業 の パ フ ォー マ
ンスが 悪 い 状 況 の なか で 株 式 制 企業 と して認 可 さ れ 成 立 した 企 業 が 元 来 経
営 成 績 の 極 め て よ い 黒字 企 業 で あ った こ と,ま た株 式 制 転 換 に よ り経 営 自 主 権 の 拡 大 と一 定 の 経営 合 理 化 努 力が す す ん だ こと,な どが 考 え られ る。
3企 業財産権の再編問題
政 府 の財 産 権 主 体 の多 元化,分 散 化 の 方 針 は第 一 に出 資者 所 有権(株 式) と法 人 財 産 権(「 産 権 」)1°)と の 分離 第 二 に株 式 所 有 構 成 の多 元 化 ・分 散 化 の 内 容 が 含 まれ て い る。 他 方,政 府 は社 会 主 義 の 建 て 前 か ら公 有 制 の主 体 的 地 位 を 維 持 す る こと を原 則 と して い る。 公 有 制 の 主 体 的地 位 の具 体 的 内容 に っ い て は さ ま ざま な議 論 が あ るが,個 別 企 業 の 株 式所 有 にお け る公 有 株 の 支 配 的 地 位 で あ る と把 握 すれ ば,そ れ と前 述 の 株 式所 有構 成 の多 元 化 ・分 散 化 との 関 連 が 問題 に な る。 も し,公 有 株(中 国 で は 国家 株 と法 人 株 を 指 す)の 支 配 的 地位 を保 証 す る枠 内で 株 式 所 有 構 成 の 多 元化 ・分 散 化 を求 め るの で あ れ ば,所 有 構 成 の 多元 化 ・分 散 化 は 自ず か ら大 き な制 約 が あ る こ と に な る。 も し,株 式 所 有構 成 の多 元 化 ・分 散 化 を優 先 させ 徹 底 さ せ るの で あ れ ば,公 有株 の支 配 的地 位 の維 持 は困 難 に な る だ ろ う。 この 意 味 にお い て,両 者 は トレー ド ・オ フの関 係 に あ る とい え る。
実 際 の株 式 所 有 状 況 は如 何 な る状 況 に あ る のか 。1991年 の統 計 によれ ば, 株 式 制 企 業 の う ち非 公 開 の株 式 制(内 部 従 業 員 持 株 ・法 人持 株)企 業 が98
%を 占め,公 開 発 行 の 株式 制 企 業 はわ ず か2%に す ぎな い。 そ して 株 式所
有 構 成 比 で は 一 般 に国 家所 有 株 が70%以 上 の圧 倒 的 多 数 を 占め てい た 。公
開 発 行 の株 式 制 企 業 の株 式 構成 は,国 家株47%,法 人株29%,個 人 株14%,
外 資 株9%で あ った11)。ま た1994年 の ア ンケ ー ト調 査(371社)で は 国家
株34%,法 人 株45%,個 人 株19%,外 資株2%で あ るiz)。 国 家株 の所 有 比
率 は 多 少 の 変 化 が み られ る も の の,法 人 株 と 国家 株 を あわ せ た 公 有株 の比
率 で は いず れ の 場 合 も絶 対 多数 を 占め て い る。 この 実 際状 況か ら言 え ば,
政 府 の 公 有 制 の 主 体 的 地位 の確 保 方針 は現 実 の もの とな って い る。
中国国有 企業の株式制転換
1)企 業 財 産の 所有 帰 属問 題
さて 既 存 の 国有 企業 が 株 式 制 企 業 に転 換 す る場 合 に,ま ず 最 初 の 課 題 は 企 業 財 産 の所 有主 体 お よび そ の 間 の権 利 関 係 を如 何 に確 定す るの か とい う 点 で あ る。 この点 の 明確 化 が 従 来 大 き な課 題 と され てお り,現 在 も事 情 は 基 本的 に 変 わ って な い。 現 在,こ の 点 に 関す る主 な論 争 的 な 問題 点 は 以 下
の とお りで あ る。
第 一 に,国 家 の 財産 所 有 権 を具 体 的 に どう よ うに 確 定 す る のか と い う問 題 で あ る。 既 存 の 国 有企 業 の 財 産 は 「全 人 民所 有 制 」の 名 の下 にす べ て国 家所 有 の もの で あ ると考 え られ て きた 。 この場 合,問 題 は 具体 的 に いか な る国家 機 関 が 国 有 資 産所 有 権 の 代 表 なの か と い う点 で あ る。実 は こ の点 こ そ 従 来十 分 検 討 され て こ なか った 問 題 で あ り,理 論 的 に も実践 的 に も不 明 確 なま まで あ った 。 現状 で は 多 くの 場 合 国有 財 産 権 の主 体 は 事実 上,業 種 別 行政 主 管 部 門 また は業 種 別 総 公 司で あ った13)。
どの機 関 が 国有 資 産 財産 権 の主 体(代 表 者)で あ るべ きか に 関 して は さ ま ざ まな 見解 が 出 され て い る。 例 え ば,1988年 に制 定 され た 「国有 資産 管 理 局 三 定方 案 」 で は 国 有 資産 管 理 局 が 代 表 者 と して 規定 され て い る。1990 年 の 「国 有 資産 管 理 活 動 の強 化 に関 す る国 務院 の通 知 」 で は 国有 資産 管 理 局 と と もに財 政 部 が 財 産権 代 表 と され た 。 そ の他 全 国人 民代 表大 会,従 来 の行 政 主管 部 門,財 政 部 門,国 有 資 産 経 営 投 資公 司,さ らに 企業 法 人 な ど さ ま ざな 見解 が 出 され て い る1%
株 式 制 企業 経 営 者 の あ い だ で も表3に み られ る よ う に,国 有 資産 の転 化 され た もの と して の国 家株 の所 有 主 体 に っ い て さ ま ざ ま な見 解 が あ る。
表3に よれ ば,国 家 株 の所 有 主体(代 表 者)と して 国有 資 産投 資 公 司,
国有 資産 管 理 局,企 業 自身 が 比較 的 多 く考 え られ て い る。後 述 す る よ う に,
政 府 レベ ル で は,従 来 の 行 政 主 管 部 門 で は な くて 専 門 の 国 有 資 産 管 理 局
(委 員会),さ らに は 国 有 資 産 経 営 機 構 を 国 有 資 産 の 所 有 権 代 表 とす べ き
だ と の考 え(「 政 資 分離 」)が 主 流 と な って い る。
表3.国 家株の所有主体に関す る株式制企業経営者の考 え (%)
国家株所有主体 全 体 状 況 上 場 公 司 非上場公司 新 設 公 司 改 組 公 司
国有資産管理 局 30.3 16.9 33.1 28.6 31.1
元の行政主管部門 7.2 8.8 7.1 10.2 6.2
国有資産投資公司 31.9 43.5 29.4 37.8 29.7
国家 財政部 門 3.3 2.1 3.7 5.1 2.9
企 業 自 身 27.3 28.7 26.7 18.3 30.1
有 効 サ ンプル数371企 業 (『管 理 世 界 』1994年4期,150頁)
第 二 に行政 レベ ル と の関 連 で は 国 有財 産 所 有 権 の 代 表 が 中央 政 府(国 務 院)な の か地 方 政 府(省 ・自治 区 ・市)な のか とい う 問題 が あ る。 これ に 関 して はい わ ゆ る 「国 有 資 産 の 分級 所 有 」 論が 一 部 で 提 起 され てい る正5)。
こ の主 張 は,地 方 政府 が そ の 管 轄下 に あ る 国有 企 業 の収 益 権 を事 実 上 も っ て い る,ま た地 方 政府 が 投 資 して 設 立 した企 業 財 産 の売 却 収 入 は 地 方 政府 に帰 属 して い る な どの現 実 を踏 まえ た も ので あ る。 しか し,こ れ に 対 して は 国有 財 産 の 「国 家 の統 一 所 有,政 府 に よ る級 別 監 督 ・管 理 」 の 考 え に 基 づ き,国 有 資産 は 国家 機 関 が 統 一 的 に所 有 す べ きで あ り,分 割 す べ きで は な く,国 有 資産 の 管理 ・監 督 に っ い て は各 級 政 府(国 有資 産 管理 当 局)が 委 託 一受 託 関係 を通 して 行 うべ き だ と の 主張 も多 い且6)。 この 「国家 の統 一 所 有,政 府 に よ る級別 監 督 ・管理 」 の方 針 は1993年11月 の党 中 央 委 員 会総 会(14期3中 全 会)で 規 定 され て い るが,そ の 具 体 化 をめ ぐって解 釈 が 分 か れ て い る状 況 だ とい え る。 市場 経 済 化 と地 方 分権 化 の進 展 の なか で ます ます 地 方 政府 が 自立 的 な経 済 利 益 主体 と して 自 らを形 成 させ て い る ことか らいえ ば,「 国 有 資産 の分 級 所 有 」論 は地 方 政 府 の利 益 を強 く反 映 して い る と考 え られ る 。 いず れ にせ よ,国 有 財 産 権 の 確定 は 国家 の 諸機 関 の あ い だ の財 産 所 有権 の 再 配 分 を意 味す る だ け に,当 該 関係 機 関 に と って は極 め て重 要 な問題 で あ ろ う。
第 三 に,既 存 の 国有 企業 に一 定 の財 産 所 有 権 をみ とめ るべ き だ と の 見解
が 提 出 され て い る。 この 見解 に よれ ば,国 有 企 業 は独 自の 所 有資 産 を も っ
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てお り,従 って,そ れ は 当然 に 企業 法 人株 に 転 換 で き る とい う こ とにな る。
具 体 的 な論 点 は 以 下 の とお りで あ る。 す なわ ち,1983年 以 降 の 行 政 の資 金 給 付 制 か ら銀 行 の 貸 付 制 へ の転 換(「 機 改 貸 」)に お い て返 済 後 に形成 され た 資産,お よび1984年 の 第 二 歩 「 利 改 税 」(利 潤 上 納 制 か ら所 得 税制 へ の 転換)以 降 の留 保 利 潤 か ら形 成 され た 資 産 は い ずれ も 国家 所 有 資 産で は な くて 企業 所 有 の 資 産(「 企 業 株 」)と す べ きで あ る,と す る もの で あ る1η 。 また この延 長 線 上 に あ る論 点 と して,い わ ゆ る 「企 業 資 金」 の性 格 も議 論 の 対 象 に な って い る。 企 業 資 金 と は,1988年2月 の 国有 企業 請 負 経営 責 任 制 暫 定 条例 が,請 負 企業 の 経 営 リス ク を保 障 す る 「リス ク基 金 」 の源 泉 と して 規 定 した も の で あ る。 そ れ は具 体 的 に は,請 負 期 間 の 留保 利 潤,留 保 利 潤 を 投 入 して形 成 され た 固定 資産 及 び 補 充 した 流 動 資 金,請 負期 間 に銀 行 か らの 借 入 金 を 利用 して形 成 した 固定 資 産 で 留保 利 潤 か らす で に 借入 金 を返 済 した も の,な どか ら構 成 され る。 暫 定 条 例 で は 企 業基 金 は国 家所 有 に属 す る と規 定 して い る。 しか しなが ら,株 式 制 転 換 に あ た り,企 業経 営 者 の 側 か ら企 業 基 金 は 企業 所 有 に属 す べ き もの との 主 張 が提 出 され た。
以 上 の 主 張 に 対 して は,企 業 留保 利 潤 か ら形 成 さ れ た 資産 にせ よ,貸 付 返 済 後 に 形 成 され た 資産 にせ よ,企 業 自身 の 所 有 と す べ き で は な く国 有資 産 とす べ きで あ る と の強 い批 判 が あ る。 す な わ ち,留 保 利潤 は全 面 的 出資 者 で あ る国 家 の投 資 に対 す る成 果 で あ って 当 然 に も 国家 の所 有 に帰 すべ き で あ る とす る18)0ま た 銀 行 の 貸付 にっ いて は 形 式 的 に は 貸 借 関 係 で あ るが 実 質 的 には 政 府 の 企 業へ の直 接 投 資で あ る と し,従 って 国家 所 有 に 帰す べ きで あ る とす る見 解 と,銀 行 貸 付金 を銀 行 の 企 業 に 対 す る投 資 とみ な し, 従 って株 主 で あ る銀 行 に 帰 属 す べ き で あ る とす る 見 解 が あ る19)。 いず れ に せ よ,現 実 には,国 有企 業 に一 定 の財 産所 有 権 を 賦 与 し,そ れ を 「企業 株 」
に転 換 す る動 き が 多 くの 企業 で広 が って い ると いわ れ る。
2)資 産評 価 の 問題
所 有 権 主 体 の 確 定 問題 と と もに,重 要 な 課題 と な って い る のが 資 産評 価
問 題 で あ る。 国 有 資 産 の 評 価 は 評価 基 準 とな るべ き市 場 価 格 が 未 だ 十 分 に 形 成 され て い な い た め に,資 産 の過 大 過 小 評価 が 日常 的 で あ るが,一 般 的 には 資産 の過 小 評 価 の 問 題 が顕 著で あ る。 この基 本的 原 因 は 国有 資 産 市場 や 株式 市 場 が 未 整 備 で あ ると と も に,国 有 資産 市 場 で の取 引 が 圧 倒 的 な 買 い手市 場(売 り手 〉 買 い 手)に な って い るた め で あ る2°)。 ま た 国家 株 は株 式 市場 にお い て 流 通 が 禁 じられ て い る こと も,国 家 株 の適 正 な評 価 を妨 げ て い る要 因 に な って い る。
この過 小 評 価 の 問 題 は 国 有 企業 の 株 式制 転 換 に お い て 国有 資 産価 値 が 国 家 か ら企 業 団 体 や 個 人 に 移転(流 出)す る こ と を引 き起 こ して い る。 具 体 的 に以 下 の事 例 が 数 多 く報 告 され て い る'll)。 ① 資産 評 価 方法 が規 定 に よ ら ず安 価 に 評価 さ れ(例 え ば 時 価 に よ らず 簿 価 に よ る な ど),株 式 に換 算 さ れ る。 ② 国有 資 産 を 無 償 で 企業 株 と し,さ らに企 業 株 の なか か ら安 価 また は 無償 で 「内部 従 業 員 株 」 に転 換 す る。 ③ 非 経 営 性 資 産 や 無 形 資産 が 評 価 の対 象 外 と され 株 式 に 換 算 され な い。④ 配 当分 配 時 にお い て 国家 株 よ り も 社 会個 人株,社 会 個 人 株 よ りも 内部 従業 員 株 の 配 当率 を 高 め に設 定 してい る。 例 え ば,武 漢 に お け る株 式 企 業 の株 式 配 当 率(1988〜1992年 平 均)は 国家 株 が11.5〜13.7%,社 会個 人 株 が17.0〜17.5%,内 部 従業 員 個 人 株 が 20%で あ った 膨)。また 国 家 株 へ の 配 当 を いわ ゆ る株 式 配 当形 式 で 行 い 現 金 配 当 を実 施 して しな い 。⑤ 外 国資 本 と の合 弁,合 作 に お い て 中 国側 の 公 有 資産 を安 価 また は 無 償 で提 供 す る。1992年 には 全 国 で約5000余 企 業 が そ の 資産 を 評 価せ ず に 外 資 と合 弁 す るに至 った とい う鴉1。
国有 資 産 の 流 出 問題 は 国有 企 業 の株 式 制 転 換 に か ぎ った こ とで は な く,
国有 地 の 使 用 権 譲 渡,国 有企 業 や 資産 の売 却 や 出 資 な どさ ま ざ ま な形 で 出
現 して い る。 国 有 資 産 当 局 の評 価 に よれ ば,「 過 去13年 来,国 有 資 産 は少
な くと も5千 億 元,1日 あ た り約1億 元が さ ま ざま な経 路 を通 じて 流 出 し,
個人 と団体 の ポ ケ ッ トに 入 った 」 と い う鋤。 国家 国 有 資産 管 理 局 に よれ ば,
1993年 末 の 国 有 資 産総 額 は3兆4900億 元(う ち営 利 国有 資 産 は2兆6000億
元)と され て い る死 従 って,国 有 資 産 総 額 に 占 め る 流 出額 の比 率 は約14
中 国 国 有 企 業 の 株 式 制 転 換
%(営 利 国 有 資 産 に 占 め る 流 出 額 比 率 は19%)と な る 。 あ る 中 国 の 経 済 学 者 は こ う し た 事 態 を 指 し てpoketizedeconomy(経 済 の 私 物 化)と 名 づ け て い る濁 。
4企 業 管 理 機 構 の 再 編 と 課 題
株 式 転換 に伴 う企 業 管理 機 構 の再 編 は 二 っ の レベ ルに 分 けて 考 え る こ と が で き る。す なわ ち,国 家 と 企 業 と の関 係 の 再編 お よび 企業 単 位 にお け る 管 理 機 構 の 再編 で あ る。
1)国 家 一企 業 関 係 の 再 編
株 式制 企 業 の 株 式構 成 にお い て 国 家株 が 支 配 的 な位 置 を 占め る こと は, 最 大株 主 と しての 国家 当局 の企 業 経営 に対す る統 制 介 入 を許 す こと に な る。
実 際 に,株 式 制 企 業 に対 す る国 家 当局 の統 制 はか な り強 い もの が あ る。
例 え ば,第 一 に株 式制 企 業 の 代 表(董 事 長 お よび 総経 理)選 出 に 対 す る 統 制 が あ る。
表4に 見 られ る よ うに,調 査 企 業(317社)の う ち董 事 会 が 規 定 どお り 董 事 長 を選 出 して い るの は60%で あ り,他 の40%の 企 業 は政 府 上 級 機 関 が 直接 任 命 して い る。 政 府 上級 機 関 の介 入 の 度 合 い は 国 有 企業 か ら改 組 され
表4.公 司董 事 長 と総経 理 の 任 命 状 況 (%〉
董 事 長 総 経 理
董 事 会 選 挙 上 級 の 任 命 董 事 会 選 挙 上 級 の 任 命 全 体 状 況
新 設 公 司 改 組 公 司 国有 改組公 司 非国有改組公司
60.539.5 62.637.4 59.640.5 5545 78.421.6
65.634.4 70.429.6 63.536.5 58.641.4 82.417.6
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