OECD租税委員会を
京都で開催
∼ 第
92
回租税委員会本会合、第
1
回
BEPS
包摂的枠組会合 ∼
2016
年6
月30
日から7
月1
日の2
日間に渡り、OECD
の第92
回租税委員会本会合、 第1
回BEPS
包摂的枠組会合が開かれました。本会合がOECD
本部のあるパリ以外 で開催されるのは初めてのこと。本特集では開催の意義と成果について紹介します。 取材・文:向山勇 BEPS包摂的枠組会合が行われた瑞穂の間 会場となったウェスティン都ホテル京都 6月30日の夜には日本主催のレセプションパーティーも開催されたOECD租税委員会を京都で開催
∼第92回租税委員会本会合、第1回BEPS包摂的枠組会合∼ 特集 OECD(経済協力開発機構)が政策分野別に設 けている委員会の一つであるOECD租税委員会は、 租税分野における分析・提言等を幅広く行ってい ますが、特に、国際課税に関する国際的なルール 策定や各国共通の問題への対応策の検討において は世界をリードする機関です。この租税委員会の 最高意思決定機関である「本会合」は、通常1月 及び6月の年2回、OECD本部のあるパリで開催 されていますが、6月末に開催された第92回会合 は、以下の点で歴史的意味を持つものでした。即 ち、国家間の税制の違いを利用した多国籍企業に よる租税回避に対抗するべくOECDがG20と協働 して過去数年に亘り集中的に取り組んできた「税 源浸食と利益移転(BEPS:Base Erosion and Profit Shifting)プロジェクト」の実施フェーズの 幕開けとなる「BEPS包摂的枠組会合(Inclusive Framework on BEPS)」が開催されたこと、これ に参加すべくOECD加盟国、G20メンバーの新興 国及びこれ以外の途上国を含む合計80以上の国・ 地域の代表と、国際機関、地域協力機関の幹部、 さらには市民社会や産業界、労働界のリーダーが 一堂に会したこと、そして、その歴史的な会合の 場として京都が選ばれたことです。なお、OECD 租税委員会本会合がパリ以外の場所で開催された のは今回が初めてのことであり、この歴史的会合 をOECD租税委員会議長としてリードしたのは、 財務省の浅川財務官でした。京都会合に至るまでの経緯
近年、国際課税の分野では、上記「BEPSプロ ジェクト」及び、税務当局間における税務情報の 交換による海外への資産隠しによる脱税等への対 処、及び途上国への税関連支援の強化、という3 本の柱で取組みが進められてきました。 「BEPSプロジェクト」については、2年間に亘 る集中的な議論の末、2015年11月のG20サミッ トで15のBEPS対抗措置からなる「BEPS最終報 告書」が承認されました。以降、「最終報告書」 に盛り込まれた勧告を、各国が国内法・条約の改 正等を通じて実施すること、各国による一貫した 実施を確保するためのモニタリングの枠組みをつ くり上げること、そして、その枠組みに、可能な 限り多くの国や地域に参加してもらうことが課題 になっていました。 税務情報の交換については、2010年以降、税 務当局による個別の要請に基づく情報交換の取組 み状況を、各国が法制及び執行の両面からチェッ クしあう相互審査が、「税の透明性と情報交換に 関するグローバル・フォーラム」(以下、「グロー バル・フォーラム」)で行われてきました。併せ て、ここ数年、非居住者の金融口座情報を、 OECDがつくった共通の報告基準を使って、年 に一度交換し合う自動的情報交換のメカニズム に、全ての先進国及び金融センターを持つ途上国 や地域に参加することが求められてきました。 世界を揺るがした本年4月の「パナマ文書」の 流出は、こうした流れをさらに加速させました。 脱税や租税回避への取組み強化に向けた政治的機 運が高まる中、4月半ばに米国ワシントンD.Cで 開催されたG20財務大臣・中央銀行総裁会議で は、①「BEPS対応」、「自動的情報交換」のより 多くの国による着実な実施、②税の透明性向上の 取組みに「非協力的」な国・地域を特定するため の「客観的基準」を作って改善を促すこと、進展 が見られない場合に制裁措置(「防御的措置」)を 検討すること、③途上国の税制改善、税務執行の 強化に向けた支援をより有効なものにしていくこ国際租税の歴史の節目を飾る
OECD
租税委員会 京都会合
国際租税の歴史の節目を飾る
OECD
租税委員会 京都会合
ファイナンス 2016.83
めるべく議論が行われました。
BEPS
合意のより多くの
国による一貫した実施の確保
京都会合前までの間、「BEPSプロジェクト」は、 OECD加盟国34 カ国に加盟申請中の4ヶ国(うち 2ヶ国はとりまとめ段階で参加)及びOECD非加盟 のG20諸国8カ国を合わせた46 カ国により進めら れてきました。しかし、国際的な課税逃れへの対 策は、抜け穴となる国があっては効果が損なわれ てしまいます。その意味で、より包摂的な枠組み を立ち上げる必要がありました。この点、京都で 立場でBEPS最終報告書に盛り込まれた勧告にコ ミットし、プロジェクト参加国・地域数は合計 85ヶ国・地域になりました(7月26日現在)。この 他にも、来年1月の次回会合までにコミットを検討 する国として、19カ国がオブザーバーとして京都 会合に参加しました。「BEPSプロジェクト」は、 OECD・G20という枠組みを越え、真にグローバ ルな取組みへと変化しつつあるのです(下図参照)。 こうして拡大した「BEPSプロジェクト」にお ける現在の最大の課題は、各国による勧告の実施 をいかに実効性あるものにしていくかであり、京 都会合では、着実な実施を確保するための各国に よる相互審査の方法等の議論が開始されました。◆
BEPS
実施フェーズ(Inclusive framework on BEPS
)参加国・地域(2016.7
∼)◆
BEPS
プロジェクト参加国(2016.6
まで) アルバニア アゼルバイジャン バングラデシュ クロアチア ジョージア ジャマイカ ケニア モロッコ ナイジェリア ペルー フィリピン セネガル チュニジア ベトナム 計 14カ国 マレーシア シンガポール ウルグアイ 計 3カ国 ニュージーランド チリ ノルウェー アイスランド イスラエル オランダ ベルギー ルクセンブルク フィンランド スウェーデン オーストリア デンマーク スペイン ポルトガル ギリシャ アイルランド チェコ ハンガリー ポーランド スロヴァキア エストニア スロベニア スイス 計 34カ国 コロンビア ラトビア コスタリカ リトアニア 計 12カ国 (注)下線はCFAビューロプラスメンバーを、◎は議長国を、●は議長代理国を、○は副議長国をそれぞれさす。 オーストラリア カナダ フランス ○ドイツ ○イタリア ◎日本 ●英国 ○米国 韓国 メキシコ トルコ アルゼンチン ブラジル 中国 インドネシア インド ロシア サウジアラビア 南アフリカ 【京都会合で参加】 アルバ バングラデシュ ベナン ブルネイ ブルガリア ブルキナファソ カメルーン コンゴ クロアチア キュラソー コンゴ民主共和国 エジプト エリトリア ガボン ジョージア ガーンジー ハイチ 香港 マン島 ジャージー ケニア リベリア リヒテンシュタイン マルタ モナコ ナイジェリア パキスタン パプアニューギニア パラグアイ ルーマニア サンマリノ ●セネガル シエラレオネ シンガポール スリランカ ウルグアイ 【京都会合後に参加】 アンゴラ セーシェル ジャマイカ 計 39カ国 ニュージーランド チリ ノルウェー アイスランド イスラエル オランダ ベルギール クセンブルク フィンランド スウェーデン オーストリア デンマーク スペイン ポルトガル ギリシャ アイルランド チェコ ハンガリー ポーランド スロヴァキア エストニア スロベニア スイス ラトビア 計 35カ国 アンドラ カンボジア コートジボワール ギニアビサウ ガイアナ マカオ マダガスカル マレーシア モーリタニア モーリシャス ミャンマー パナマ ペルー サントメ・プリンシペ タイ トーゴ アラブ首長国連邦 ベトナム ザンビア 計 19カ国 Invitee 個々の会合ごとにアドホックに出席 コミット・議決権なし Participant 全会合に出席 コミット・議決権なし OECD非加盟国= BEPS Associate全会合に出席、コミット・議決権あり OECD加盟国 コロンビア コスタリカ リトアニア 計 11カ国 オーストラリア カナダ フランス ドイツ イタリア ◎日本 ●英国 米国 韓国 メキシコ トルコ アルゼンチン ブラジル インド ●中国 インドネシア ロシア サウジアラビア 南アフリカ BEPS正式メンバー国 46カ国 Invitee 2017年1月までに、 正式に参加するかを決定 OECD非加盟国= BEPS Associate
OECD加盟国 正式メンバー国・地域 85カ国 従来から参加していた国 京都会合および会合後に参加した国・地域 G20 メンバー G20 メンバー OECD 加盟申請中 OECD加盟申請中
OECD租税委員会を京都で開催
∼第92回租税委員会本会合、第1回BEPS包摂的枠組会合∼ 特集「税の透明性に関する非協力的地域を
特定するための客観的基準」を策定
国際課税の第二の主要課題である「税の透明 性」についても、京都会合で大きな前進がありま した。上述した4月のG20ワシントン会合にお いてOECDに作成が命じられた「客観的基準」 の具体案が策定されました。この案は7月23、 24日に四川省成都で行われたG20財務大臣・中 央銀行総裁会議に報告・承認され、これに基づ く、税の透明性が不十分な国・地域のリストを 2017年のG20サミットまでに作成する方向で作 業を進めることとなりました。基準の具体的な内 容は、下図を御参照下さい。途上国向け税関連支援の強化
京都会合では、「本会合」に先立ち、新たに BEPSプロジェクトに参加した途上国を中心とす るメンバーに対して、プロジェクトの意義や内容 を説明する丸一日の「導入セッション」が設けら れたほか、今後、関連する国際機関や税に関する 地域機関等との連携した地域別のセミナー等を精 力的に実施していくことが合意されました。ま た、「BEPSプロジェクト」の勧告内容を超えて、 途上国が直面する税に関する課題への対応をこれ ま で 以 上 に 効 果 的 に 支 援 す る た め に、IMF、 OECD、世銀、国連によって立ち上げる「税に関 する協働のためのプラットフォーム」の活用方法 等についても議論が交わされました。浅川議長の貢献
今回の租税委員会本会合は、「BEPSプロジェク ト」を中心に過去5年にわたり租税委員会の活動 をリードしてきた浅川議長が、議長として参加す る最後の会合となりました。会合が終りに向かう につれ、各国や国際機関の代表から、浅川議長の これまでのリーダーシップを称えるとともに、日 本政府の財務官とOECD租税委員会議長という二 足のわらじを履きながらの奮闘を労う声が次々と 寄せられました。また、浅川財務官が5年半の任 期を終え、この12月に議長を退任することを踏ま え、2017年1月からの後任の議長として、ドイツ のMartin Kreienbaum氏が選出されました。 以上のように、京都会合では国際課税分野にお ける3つの主要な取組みを大きく前進させる成果 が得られました。しかし、BEPS合意の実施はま だ始まったばかりです。その他の取組みもまだま だ途上にあり、本当に重要なのはこれからです。 その意味で京都会合は「公正・公平・透明な国際 課税システムを目指す旅路の第一歩」として、国 際課税の歴史の1ページに残る会議となりました。 ◆「税の透明性に関する非協力的地域を特定するための客観的基準」について 【経緯】●2016年4月: G20財務大臣・中央銀行総裁会議(於:ワシントンDC)において、OECDに対してG20と協力しながら、「税の透明 性に 関する非協力的地域を特定するための客観的基準」を作成することが要請される ●2016年6月:OECD租税委員会本会合(於:京都)において同基準について議論、以下を次回G20に報告することについて合意 上記の客観的基準に基づきOECD事務局が作成する「税の透明性に関する非協力的地域」のリストが、2017年7月にG20首脳に示さ れる見込み。 (注)「グローバル・フォーラム」の評価によって進捗が見られなければG20諸国による非協力的地域に対する防御的措置が検討される。 ■□■税の透明性に関する非協力的地域■□■ ◆下記の3つの基準のうち、2つ以上を満たさない国・地域、あるいは ◆「要請に基づく情報交換」に関する「税の透明性と情報交換に関するグローバル・フォーラム(以下「グローバル・フォーラム」)による ピア・レビューにおいて不遵守(Not-Compliant)相当*1と見なされた国・地域 *1:【不遵守相当】①法制・執行両面を踏まえた総合評価が「Not-Compliant」、②法制審査を通過できていない、あるいは③法制審査の通過に時間を要し、 未だ執行審査の結果が出ていない、のいずれかに該当する国・地域 (注)今後、上記の基準の見直し及び追加がありうる。 「グローバル・フォーラム」が実施する「要請に基づく情報交換」に関するピア・レビューにおける総合評価が「概ね遵守(Largely Compliant)」あるいは「遵守(Compliant)」「共通報告基準(Common Reporting Standard)」に基づく税務当局間での金融口座情報の自動的交換を、遅くとも2018年までに 実施することを約束 「税務行政執行共助条約(多国間条約)」への署名 (注)代替的基準:グローバル・フォーラムの「要請に基づく情報交換」に関するピア・レビューにおいて、幅広い情報交換ネットワークがあると判定され、 且つ当該ネットワークを通じて「自動的情報交換」が可能であること 基準1 基準2 基準3 ファイナンス 2016.8
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本日、京都は、BEPS実施フェーズの入り口と して、国際課税の歴史にもその名を刻むことにな ります。この特別な機会に、世界中から、80以 上の国・地域の代表が集まっています。 私たちは、この場において、「税源浸食と利益 移 転(B E P S:B a s e E r o s i o n a n d P r o f i t Shifting)」の問題に取り組むことを通じ、より 公正・公平・透明な国際課税システムを目指す旅 路の第一歩を踏み出すのです。我々の共通の目標 は、税制に対する人々の信頼と、経済活動に関わ る全ての主体にとって公平な競争条件とを確保す ることにあります。 ■
BEPS
プロジェクトの沿革 BEPSプロジェクト以前も、税源浸食と利益移 転から生じる問題は長く認識され、議論されてき ました。しかし、各国の財務大臣はこれに対する 対策を取れず、必要な改革を行うために協調する ことが出来なかったのです。これは、主に政策担 当者の「課税権は国家主権の中核であり、他国は これに干渉することは出来ず、すべきでもない」 という考えから来るものでした。税制の「ずれ」 により、多国籍企業は本来負担すべき税負担を回 避することが出来てしまっていました。 ターニングポイントは2013年でした。英国の バッキンガムシャーで行われたG8財務大臣・中 央銀行総裁会議において、私は、「我々は一致し てこの問題に取り組む必要がある」、と強く訴え ました。各国の財務大臣はこれに共鳴してくれま した。そして、我々は続く G8 ロックアーンサ ミットで、この問題を最重要課題として取り上げ ることに合意したのです。あれが、3年にわたる 我々の集中的共同作業の出発点になりました。こ の作業は、昨年の11月にG20アンタルヤサミッ トで支持された15本のBEPS対抗措置として結 実しました。 ■BEPS
プロジェクトの意義 私は、BEPSプロジェクトが歴史的であることの 理由として、3つの特徴が挙げられると思います。 1点目は、「包摂性」です。国際課税は、長ら く、OECDのような国際会議の場で、先進国に よって議論されてきました。BEPSプロジェクト によって、この慣行は変わりました。プロジェク トの成果は、OECD加盟国と非加盟G20メンバー 国が対等な立場で参加し作り上げたものです。他 の多くの途上国も、議論に参加しました。 第2に、BEPSプロジェクトは、国際課税におけ100
国際機関が参加
100
国際機関が参加
2016
年6
月30
日に行われた第1
回BEPS
包摂的 枠組会合では、冒頭、浅川雅嗣OECD
租税委員会 議長、麻生太郎財務大臣、パスカル・サンタマンOECD
租税センター局長が開会の辞を述べました。 ここでは、その内容を抜粋して紹介します。公正・公平・透明な国際課税システムを目指す
旅路の第一歩となる
………
麻生太郎財務大臣
BEPS
プロジェクトコミット国は
85
ヶ国・地域に拡大
OECD租税委員会を京都で開催
∼第92回租税委員会本会合、第1回BEPS包摂的枠組会合∼ 特集 る「国際的協調」へ大きな一歩を踏み出しました。 課税権は国家主権の中核であったため、以前は、 税分野における国際的政策協調など、想像もつか ないものでした。この点、BEPSプロジェクトにお いて、各国が実施すべき「ミニマム・スタンダー ド」が作り上げられたのは、驚くべきことです。 プロジェクト参加国は各々の国内法制の改正によ るものを含め、この「ミニマム・スタンダード」 の実施に同意しました。BEPSプロジェクトは、 「競争」から、公平な競争環境を確保するための 「協調」へ、税に関する国際的議論の風景を一変 させたと言っても過言ではないでしょう。 3点目として、「二重課税の防止」から「二重 非課税の防止」への焦点の移動を挙げたいと思い ます。これは、課税利益が認識される場所と、経 済活動及び価値創造の場を、より一致させること によって達成されるものです。 これら、「包摂性」、「競争から協調」、「二重課 税から二重非課税の防止」という3つの特徴が、 BEPSプロジェクトが歴史的である所以です。 さてここで、BEPSパッケージは多くの途上国 にとっても極めて重要であることを強調しておき たいと思います。BEPS対抗措置を実施すること により、その国の税制及び税務行政は、より予見 可能かつ一貫したものとなるでしょう。こうした 変化は、投資環境改善に役立ち、これにより、そ の国に投資を考えている企業に安心感を与えるこ とになるのです。また、BEPS合意を実施するこ とによって、その国で操業する多国籍企業の実態 を、税務当局がより詳細な形で把握することも可 能となります。BEPSリスクへの対処及びインバ ウンド投資の促進に苦慮してきた途上国にとっ て、これらの点は重要だと考えています。 BEPSプロジェクトの真の価値は、グローバル に協調して実施することによって、初めて実現さ れるということを、再度強調しておきたいと思い ます。これには、強く、息の長い政治的機運が不 可欠です。 忘れないで下さい。「団結すれば則ち立ち、分 裂すれば則ち倒れる」です。 これほど多くの国・地域が対等な立場でプロ ジェクトに取り組むために、OECDの委員会が その門戸を開くことはOECD史上初めてのこと です。しかし、租税委員会は本年1月に拡大会合 開催という大胆な決断をしました。それは、 BEPSがグローバルな課題であり、グローバルな 解決が求められること、そして参加を更に拡大す ることがこの取組にとって利益になると認識した ためです。 租税政策は国家主権の究極の形態の一つである ことは周知のことです。しかし、我々が共に連 携・協力して対応していかなければ、各国の経済 に打撃を与える税源侵食・利益移転に効果的に対 処することはできません。だからこそ、我々は今 日ここにこのようにして集まったわけです。我々 が効果的に対応しなければならないのは、BEPS が国家の歳入に損害を与えるからだけでなく、世 界全体が見守っているからなのです。 最近まで、国際課税は、この分野の専門家が議 論するに留まっていました。今日、経済危機、ル クスリークス、パナマ文書、その他のスキャンダ ルを受け、国際課税の問題は一般人も議論するこ ととなり、テクニカルなレベルでなく公平性とい う基本的な問題として取り上げられるようになり ました。この包摂的枠組みを通して技術的作業を 共に行うことにより、BEPSパッケージを効果的 な方法で実施し、現在可能な制度の濫用に終止符 を打つことが我々に託された役割です。我々の取 組みは、低所得国が実施に当たり直面するであろ う特定の課題も考慮する必要があり、本会合では このトピックにも十分な時間を割いていきます。 税の専門家として、我々は、BEPSが突き付け各国の連携・協力なくして税源侵食・利益移転への
効果的対処はできない
………
浅川雅嗣
OECD
租税委員会議長
ファイナンス 2016.87
我々は、この新たな包摂的枠組みを通して、 38のOECD加盟国及び加盟申請国、8のOECD 非加盟G20メンバー、既にコミットした35の途 上国・地域、そして国際機関・地域機関のパート ナーシップを構築することで、BEPSが我々の国 家経済を損ねるために利用されるようなことのな い未来を確保します。その他の多くの国・地域 も、将来的にコミットすることを視野に入れて、 今回の会合に参加しています。 麻生大臣が仰ったとおり、我々は、政府や税制 に対する人々の信頼や信任を取り戻さなければな りません。本日は、多くの途上国が参加してお り、嬉しく思います。 低所得国は、歳入を法人税に大きく依存してい ることから、BEPSによる打撃を先進国より大き く受けています。そのため、低所得国に関して は、地域の税関連機関との更なる連携とともに、 国際機関が新たな枠組みである「Platform for Collaboration on Tax」を通じて提供できる支援 に関して議論します。 包摂的枠組みの第一回目であるこの会合では、 今後の作業と体制の検討を行います。例えば、 BEPSミニマムスタンダードの実施状況をモニター するためのピアレビューや他のメカニズムに関し て議論を始めます。これは効果的な実施、一貫性、 公平な競争条件を確保するためには必須です。 我々は現在積み残しになっている、移転価格や 国別報告書、紛争解決を含めた多くの技術的事項 に関しても取り上げ、租税条約に係るBEPS対策 の実施を促進するための多数国間協定の開発に関 する進捗状況もレビューします。 ルでの切迫感ある認識は新しいものです。だから こそ、私の上司であり、G7、G20及びその他の 政治的会合においてBEPS課題に対する最も先鋭 高められなければ、我々は、これほど短期間で、 これほど大きく前進することはできなかったで しょう。