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新しい決済手段はどのように 普及していくのか?

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Academic year: 2021

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(1)

1. はじめに

小売店などにおいて対面で財・サービスを購入する際,多くの場合,わ れわれには複数の決済手段が選択肢として用意される。かつてその選択は

「現金・クレジットカード・デビットカード」のなかから行われていたが,

近年になって新たな選択肢として「電子マネー」が加わるようになった。

そして,マクロ統計で見る限り,電子マネーの決済件数は高いペースで増 加している。では,電子マネー決済はどのような要因に基づいて急速に普 及しているのであろうか。本論文では,この問いに対してミクロ経済理論 に立脚した仮説を提示し,その仮説の妥当性をデータによって検証するこ とを目的とする。

仮に消費者が合理的な経済主体であるならば,毎回の決済機会において,

各決済手段の行使に伴う取引費用を見積もり,その取引費用が最小になる 決済手段を選択しているはずである。この前提に立てば,電子マネーの普 及は,その取引費用の低さを評価した消費者が電子マネーでの決済頻度を 高めるかたちで進んでいくと考えられる。もっとも,実際の消費者がこの 仮説どおりに行動しているかどうかは直ちに明らかではない。この点を検

普及していくのか?

― 取引費用からのアプローチ ―

中 田 真 佐 男

本研究は,日本学術振興会科学研究費補助金(課題番号:22,20) 成城大学特別研究助成(研究課題:「電子小額決済手段の取引費用に関する研 究」)を受けて行われた研究成果の一部である。

(2)

証するためには,集計されたマクロデータではなく,個票調査ベースのミ クロデータによる実証分析が不可欠となる。

海外では,

Ching and Hayashi (2010)

Simon, Smith and West (2010)

どをはじめとして,個票データを用いた決済手段の選択要因に関する実証 研究が蓄積されている。これとは対照的に,日本ではミクロデータを用い たこの分野の実証分析は遅れている。そこで,本研究では,筆者が独自に 実施した個票調査の回答結果を利用し,消費者の電子マネーの利用頻度の 決定に影響を及ぼす要因を明らかにする。本分析の特徴として,個票調査 において,決済手段の取引費用に関係する設問にとどまらず,消費者が決 済手段に求める理想像(例:信頼性を重視するか,決済時間の短さを重視する かなど)に関する質問を設けていることが挙げられる。これにより,消費 者の選好を考慮した分析が可能になる。

個票調査を用いた分析からは,消費者の電子マネーの利用頻度の決定に は,アベイラビリティ・コストや決済時間コストが影響を及ぼしているこ とが明らかになる。この結果から判断する限り,消費者はミクロ経済理論 と整合的な決済手段の選択行動をとっており,近年の電子マネーの普及も こうした消費者の行動を反映したものだと解釈することができよう。もっ とも,現状の電子マネーは,使用金額や残高を把握しにくいという大きな 欠点があり,このことが電子マネー決済の取引費用を高止まりさせている。

今後,電子マネー決済がより浸透していくためには,スマートフォンのア プリケーションを高質化させるなどの改善を通じ,「使用金額・残高の把 握コスト」の低減を図っていく必要があろう。

以下では,まず第2節において,公表されたマクロ統計をもとに,近年 における電子マネーの普及状況を概観する。第3節では,決済手段選択の ミクロ理論のフレームワークを提示する。第4節では,筆者が独自に実施 した消費者向け個票調査の回答結果を分析し,理論仮説の妥当性について 考察する。最後の第5節は結論と今後の展望にあてる。

(3)

2. 電子マネーの普及状況

我が国において,電子マネーの普及状況をマクロレベルで把握すること は必ずしも容易ではない。少ない手がかりの1つとして,日本銀行が「最 近 の 電 子 マ ネ ー の 動 向 に つ い て」,あ る い は「決 済 シ ス テ ム レ ポ ー ト

2012-2013

」のなかで「電子マネーに関するデータ」として公表している 主要電子マネー・ブランドの集計データがある。ここでは,プリペイド方 式の電子マネーのうち,楽天

Edy

Suica

PASMO

ICOCA

Kitaca

SUGOCA

nanaco

WAON

の8ブランドを調査対象とし,発行枚数・

決済件数・決済金額・決済端末台数に関する集計データが収録されてい 1)

図1には,このうち決済件数と決済端末台数の時系列推移が示されてい る。なお,日本銀行は決済件数を「月間ベース」で公表しているが,月間

図1.主要電子マネーの決済件数・決済端末台数の推移

【出所】 日本銀行が公表した統計をもとに筆者が一部を加工

1) このうち交通系の電子マネーブランドについては,交通機関の乗車および乗 車券の購入に利用されたものはデータから除外されている。

【百万件】 【万台】

9 8 7 6 5 4 3 2 1 0

140 120 100 80 60 40 20 0 1日あたり決済件数(左軸)

端末台数(右軸)

11 月

2008

年1月3月 5月 7月 9月 11月 2009

年1月3月 5月 7月 9月 11月 2010

年1月3月 5月 7月 9月 11月 2011

年1月3月 5月 7月 9月 11月 2012

年1月3月 5月 7月 9月 11月 2007

年9月

(4)

決済件数は1ヶ月の日数の影響を受けて季節変動が大きくなるため,筆者 が「1日あたり」の決済件数(月中平均値)に変換している2)。決済端末台 数は27年から22年にかけて5倍近く増加し(右軸),これに伴って1 日当たり決済件数も3倍以上に増えている(左軸)ことがわかる。

5年1月時点において,日本銀行からは22年12月までの電子マ ネー関連データしか公表されていない。より直近の状況を把握するため,

図2では,日経流通新聞が不定期に公表している主要電子マネーブランド の決済件数の推移が示されている。なお,やはりここでも,日経流通新聞 が「月間ベース」で公表したデータを筆者が「1日あたり」の決済件数(月 中平均値)に変換している。

図2に示されるように,大手の流通事業者や旅客運輸事業者が運営母体 となっている電子マネー

(nanaco・WAON・Suica・PASMO)

は直近におい ても順調に利用件数が増加している。これに対し,楽天

Edy

だけは決済 件数の伸びが鈍化している。楽天

Edy

は,もともとは21年にビットワ

図2.各電子マネーブランドの1日当たり決済件数の推移

【出所】 日経流通新聞が公表した統計をもとに筆者が一部を加工

2) 例えば,2月は28日間(ただし,閏年では29日間)しかなく,31日間ある 月と比べて3日も少ない。

【万件】

450 400 350 300 250 200 150 100 50 0

2008年6月 2010年6月 2012年6月 2014年6月

nanaco

Edy Suica+PASMO WAON

(5)

レット社が

Edy

としてサービスを開始したいわゆる「独立系」の電子マ ネーであった。国内の主要電子マネーブランドのなかでは最も長い歴史を もつ。当初こそ,航空会社のマイレージサービスとの連携などで順調に利 用者を増やした

Edy

であったが,流通系や交通系の電子マネーと違って 囲い込める顧客層をもたないこともあり,次第に利用が伸び悩むようにな った。その後,大手電子商取引事業者の楽天グループの傘下に入り,2 年からはブランド名を楽天

Edy

へと変更した。現在は,電子商取引と対 面取引の相互送客による利用拡大を図っている途上にある。

金融広報中央委員会が毎年実施している「家計の金融行動に関する世論 調査」では,調査対象を二人以上世帯と単身世帯に分割し,支払金額帯別 によく用いる決済手段を尋ねている3)。図3では,このうち「日常的な支 (買い物代金等)の主な決済手段に,電子マネー・デビットカードを使

図3.日常的な支払手段として電子マネー・デビットカードを使う比率

【出所】 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」(平成26年調査)

3) 直近の平成26年調査においては,2人以上世帯向けでは 全国8,0世帯 に調査依頼して3,1世帯から回答を得ている(回収率49.4%)。一方,単 身世帯向け調査では,全国で回収数が2,0世帯となるようにインターネッ トモニター調査を実施している。

【%】

35 30 25 20 15 10 5 0

単身世帯 二人以上世帯

1千円以下 1千円超

〜5千円以下

5千円超

〜1万円以下

1万円超

〜5万円以下

5万円超

(6)

う比率」が示されている。なお,この設問では電子マネーとデビットカー ドが一括りにされているが,日本ではデビットカードによる決済は消費者 に浸透していないことが知られている4)。よって,この設問への回答は,

実質的には電子マネーを用いた決済の比率を反映していると解釈できる。

図3から明らかなように,電子マネー決済の浸透度は,単身世帯と二人 以上世帯では大きく異なっている。具体的には,単身世帯では,千円以下 の決済機会では30% 超,千円超五千円以下の決済機会でも20% 超を電子 マネーで決済しているのに対し,二人以上世帯では,電子マネーが利用さ れる割合は支払金額の低いレンジでも10% 程度に過ぎない。ただし,支 払金額が高いレンジでは,単身世帯と二人以上世帯のいずれにおいても電 子マネーはほとんど利用されていない。前述の日本銀行が公表している電 子マネー関連の統計においても,20年以降の電子マネーでの1回あた り決済金額は,年末年始を除けば80円台で推移している。これらの統計 から判断する限り,電子マネー決済は小額の対面決済で利用される傾向に あるといえよう。

総務省が毎年実施している「家計消費状況調査」からは,世帯主の属性 別に電子マネーの利用状況を把握することができる5)。図4には,居住都 市の人口規模別に,電子マネーを利用する世帯員がいると回答した世帯の 割合が示されている。

このグラフからは,①大都市ほど電子マネー決済が浸透していること,

②都市の規模に関わらず,この5年間で電子マネーの普及が進んでいるこ

4)「生活意識に関するアンケート調査」(日本銀行)の第51回調査(22年9 月)によると,デビットカード決済を「よく使う」との回答は全体のわずか 0.8%,「ときどき使う」と「まれに使う」もあわせて6.5% の回答しかない。

5) 家計消費状況調査では,世帯主に対して「電子マネーを利用する世帯員の有 無」を尋ねる設問形式をとっている。よって,調査対象である世帯主がこの 設問に「はい」と回答した場合でも,世帯主本人が電子マネーを使用してい るとは限らない。その意味で,世帯主と実際の電子マネー利用者の属性が一 致しないことがありえる点に留意が必要である。

(7)

と,③普及のスピードは大都市よりもむしろ小規模な都市のほうが速いこ とがわかる。特に注目されるのは③であり,電子マネーの普及度の地域間 格差が縮小する傾向にあることが窺われる。

図5では,同じく「家計消費状況調査」において,世帯主の年収別に,

電子マネーを利用する世帯員がいると回答した世帯の割合が示されている。

この図から明らかように,世帯主の年収が高い世帯ほど電子マネーをよく 利用する傾向が見られる。

これまでに示したマクロレベルの統計から,第1に,電子マネー決済は,

①居住地が大都市,②単身世帯,③年収が高いという属性をもつ経済主体 の間で普及していることが示唆された。第2に,電子マネーは,支払金額 が小さい決済機会においてよく利用されていることが示された。

では,なぜこうした属性をもつ消費者は電子マネー決済をより選好する のであろうか。また,なぜ現状における電子マネーの普及は支払金額が小 さいレンジに限定されているのであろうか? これらの問いに対して説得 的な回答を提示するため,次節では,消費者の決済手段選択行動を理論的

図4.都市規模別に見た「電子マネーを利用する家族がいる世帯」の割合

【出所】 総務省「家計消費状況調査」

人口100万人以上 人口15万〜100万人 人口5万〜15万人 人口5万人未満

【%】

60

50

40

30

20

10

2008年 2013年

(8)

に整理することにしたい。

3. 決済手段の選択理論

電子マネーの普及のメカニズムを明らかにするため,ここでは伊藤・川

本・谷口

(1999)

が提示した取引費用アプローチの理論モデルを拡張し,

消費者の決済手段の選択行動について分析する6)

消費者が決済手段を行使する際には様々な費用(取引費用)が発生する。

これらの取引費用は,①支払金額の多寡とは無関係に生じる「固定費」と,

②支払い金額の多寡に応じて変化する「変動費」に別れる。

固定費として,まず「アベイラビリティ・コスト」が考えられる。これ は,当該決済手段が利用可能な状態になるまでに要する手間を機会費用と して認識したものである。第1に,登録手続きの手間の有無がある。現金

図5.世帯主の年収別に見た「電子マネーを利用する家族がいる世帯」の割合

【出所】 総務省「家計消費状況調査」

6) 本節における理論分析の説明は中田

(2015)

を参考にしている。

【%】

70 60 50 40 30 20 10 0

2009年 2013年

200万円未満200万円台 300万円台

400万円台 500万円台

600万円台 700万円台

800万円台 900万円台

1,000万円以上1

,250万円未満

1,250万円以上1

,500万円未満

1,500万円以上2

,000万円未満 2,000万円以上

(9)

はもちろん登録なしで利用が可能である。デビットカードに関しては,日 本ではキャッシュカードに予め機能が付されていることが多い

(J-Debit)

この意味で,アベイラビリティ・コストは低い。他方,クレジットカード は,登録の申請が必要なことに加え,カード会社の審査に合格しなければ カードが発行されない。よって,アベイラビリティ・コストは高い。電子 マネーに関しても,最初に利用申請手続きが必要になる。第2に,利用可 能店舗を探索する手間の大小がある。どこでも支払に利用できる現金には アベイラビリティ・コストは発生しない。これに対し,クレジットカード,

デビットカード,電子マネーに関しては,サービスに加盟する小売店の数 が少ないほどアベイラビリティ・コストは高くなる。第3に,金銭価値の 準備に要する手間の大小がある。十分な残高のある預金口座の保有を前提 とした場合,デビットカードとクレジットカードに関しては,はじめから 金銭価値が準備されている。しかし,現金決済では,財やサービスの購入 に必要な資金を事前に預金口座から引き出さねばならない。プリペイド型 の電子マネーを決済に用いる場合には,これに加えて

IC

チップに金銭価 値をチャージする必要があり,さらに大きなアベイラビリティ・コストが 発生することになる。

固定費として考慮に入れるべきもう1つの機会費用は「決済時間の長 さ」である。電子マネーでは,非接触型

IC

チップをかざすだけで決済が 完了する。この意味で決済時間コストは極めて小さい。これに対し,現金 決済ではつり銭のやりとりに時間を要するため,決済時間コストは相対的 に高い。こうしたつり銭のやりとりにかかる時間は,支払金額の大小とい うより,つり銭として必要になる小銭の枚数の多寡に依存する。換言すれ ば,小額の買物であっても,つり銭として多数の硬貨が発生するケースで は決済に時間がかかる。よって,ここでは現金の決済時間コストを(決済 金額の多寡とは相関しない)固定費とみなす。この他,クレジットカード決 済では,小売店がカード会社に消費者の信用情報を確認し,さらに消費者

(10)

が伝票へ署名することではじめて決済が完了する。よって,やはり一定の 決済時間コストが発生する。

次に,変動費としては,第1に,当該決済手段の携行に要する手間があ る。これをハンドリング・コストと呼ぶ。クレジットカード,デビットカ ード,電子マネーの場合,カードないしは携帯電話やスマートフォンに取 り込んだアプリケーションを介して決済を行う。よって,携行に伴う負担 は小さく,ハンドリング・コストはほとんど生じない。だが,現金決済の 場合,金額の大きな買物をしようとするほど多額の現金が必要になり,重 量・体積が増して運搬負担が重くなる。ゆえに,現金決済のハンドリング

・コストは決済金額と正相関する。

第2に,決済手段の盗難・紛失のリスクがある。これをセキュリティ・

コストと呼ぶ。現金を盗難・紛失した場合,失われた金銭価値を回復させ ることは困難である。したがって,多額の現金を携行しているときほど盗 難・紛失に細心の注意を払う必要があり,セキュリティ・コストが高くつ く。すなわち,現金決済のセキュリティ・コストは決済金額と正相関する。

他方,デビットカードやクレジットカードは盗難・紛失時に機能を停止で きる7)。この意味でセキュリティ・コストはより低い。電子マネーに関し ては,初期登録時に氏名・生年月日・連絡先等の個人情報を決済事業者に 知らせれば(いわゆる「記名式」,盗難・紛失時に電子的な金銭価値(報告 時点で確認できた残高)が回復される。しかし,記名式を選択しなければ,

現金と同様に,チャージ残高(予定される取引の規模)と正相関するセキュ リティ・コストが発生することになる。

第3に,使用金額・残高の把握に要する手間を考慮する必要がある。日 本ではもともと,小額決済おいて現金の利用を選好する消費者が多いこと が知られている。現金決済で物理的かつ視覚的に支出金額・残高を把握す

7) クレジットカードの場合,機能停止前にカードが不正に利用されても,一定 の手続きを経れば事後的に損失分が回復できるケースも少なくない。

(11)

ることに慣れている日本の消費者は,これと同等の使用感が得られない各 種の電子決済に不満を感じているからだと考えられる。例えば,クレジッ トカードの場合,商品購入から1ヶ月程度後に預金口座から資金が引き落 とされるケースが一般的である。クレジットカードを非割賦方式で利用す る限り,この支払いの「先延ばし」に対して手数料が発生するわけではな い。それにも関わらず,預金口座の残高がしばらく減らないために「いく ら使ったかわからない」という不安が生じ,これを嫌う消費者が少なくな いようだ。もちろん,事後的には利用明細書が発行される。しかし,これ も一定期間内にカードで決済された複数の買物の明細が1ヶ月程度後に一 括して通知されるものであり,即時性に欠けることは否定しがたい。デビ ットカード

(J-Debit)

決済の場合,購入代金が即時的に預金口座から引き 落とされるため,支出金額に関する錯覚は起こらない。しかし,使用金額 を正確に把握するためには,いちいち預金口座を確認しなければならない。

この意味で,クレジットカード決済と比べると小さいとはいえ,現金決済 と比べると「使用金額・残高の把握コスト」は高くなる。

さらに,電子マネーの場合,クレジットカードのように利用明細が発行 されず,

J-Debit

のように預金口座に取引履歴が残るわけでもない。スマ ートフォンや携帯電話に

IC

チップを搭載したタイプ(いわゆる「おサイフ ケータイ」ではアプリケーション経由で履歴を確認することも可能である が,現在主流のカードタイプの電子マネーでは,チャージ機等で確認する か,専用のリーダーをパソコンに接続するなど非常に手間がかかる。この 意味で,使用金額や残高を把握するために要する手間はかなり大きい。本 稿では,各種の電子決済手段が抱える「使用金額・残高の把握の不便さ」

は決済金額が増加するほど深刻化するとみなし,使用金額・残高の把握に 要する手間(使用金額・残高の把握コスト)を支払金額と正相関する変動費 として扱う。

(12)

本節でのこれまでの議論をまとめると,現金・クレジットカード・デビ ットカードの取引費用関数を図6のように図示することができる。

図6では,縦軸に各決済手段の行使にかかる取引費用,横軸には決済金 額がとられている。決済金額がゼロのときに発生する取引費用,すなわち,

図6における各決済手段の取引費用関数の「切片」は,決済金額の多寡と は無関係に発生する固定費(アベイラビリティ・コストと決済時間コストの合 計)の大きさを反映する。また,各決済手段の取引費用関数の「傾き」は,

決済金額の多寡と相関する変動費(ハンドリング・コスト,セキュリティ・コ スト,使用金額・残高の把握コスト)の大きさを反映する。以下では,現金 決済の取引費用関数をベンチマークに設定したうえで,各決済手段の固定 (切片)と変動費(傾き)について検討していこう。

図6.既存の小額決済手段の取引費用

【出所】 中田(2015)より引用

取引費用

【A】現金

【C】デビットカード

【B】クレジットカード

決済金額

現金 クレジットカード デビットカード

(13)

① 固定費

A

】現金

預金口座からの現金の引き出しに手間がかかるものの,どこでも利用で き,事前の登録も不要であるという大きな利点があるため,総合的に見る とアベイラビリティ・コストはごく小さい。一方で,決済時にはつり銭の やり取りに時間がかかることから,無視できない決済時間コストが発生す る。これらをあわせると,図6に示されるように,現金決済の取引費用関 数は一定の正の切片をもつ。

B

】クレジットカード

つり銭のやりとりが生じないというメリットはあるものの,決済にあた って信用情報の確認・署名等のプロセスを要するため,一定の決済時間コ ストが発生する。また,現金と比べると利用可能店舗が限定され,かつ,

そもそもカード発行に際して登録・審査を要することからアベイラビリテ ィ・コストはより大きい。これらをあわせ,図6に示されるように,クレ ジットカード決済の取引費用関数の切片は現金決済よりも大きくなると想 定した。

C

】デビットカード

デビットカード決済では,つり銭のやりとりが生じないことに加え,ク レジットカード決済のような信用情報の確認プロセスが不要であり,決済 時間の短さの面では優位性をもつ。しかし,現状において,日本のデビッ トカードの主流である

J-Debit

は利用可能店舗がかなり限られている。本 分析では,後者の要因でアベイラビリティ・コストが高くなると想定した。

この結果,図6に示されるように,デビットカードの取引費用関数の切片 は,既存の決済手段のなかでは最も大きくなる。

(14)

② 変動費

A

】現金

ハンドリングやセキュリティに関する変動費が生じることから,図6に 示されるように,取引費用関数は一定の大きさの正の傾きをもつと想定し た。

B

】クレジットカード

クレジットカードは,ハンドリングやセキュリティの面では現金に対し て大きな優位性をもつ。しかし他方では,既に述べたように無視できない

「使用金額・残高の把握コスト」が発生する。これらの利点・欠点を比較 し,本分析では,図6に示されるようにクレジットカードの取引費用関数 の正の傾きは現金よりも小さくなると想定した。

C

】デビットカード

デビットカードの変動費の構成はクレジットカードと類似しているが,

即時払いである分だけ「使用金額・残高の把握コスト」はクレジットカー ドを下回ると考えられる。このことをふまえると,図6に示されるように,

デビットカードの取引費用関数の正の傾きはクレジットカードよりは小さ くなる。

消費者は,自らが直面する支払金額のもとで,総取引費用が最小となる 決済手段を選択することが合理的な行動となる。このことは,図6におい て,所与の支払金額のもとで取引費用関数が最も下方に位置する決済手段 が選択されることを意味する。その結果,図6の横軸に表示されたように,

決済金額の小さなレンジでは現金,中間のレンジではクレジットカード,

大きなレンジではデビットカードが支配的な決済手段となる。

(15)

ただし,このような決済手段の使い分けは,あくまでも「代表的な消費 者」を想定したケースに過ぎないことに注意が必要である。消費者はそれ ぞれの立場に応じて,各決済手段の固定費・変動費を主観的に評価する。

例えば,もともと時間に余裕がある消費者は,決済時間を短縮することに それほどの価値を見出さないであろう。その場合,取引費用関数の「切 片」はもっぱらアベイラビリティ・コストによって決定されることになり,

現金決済の優位性が強まる。また,決済手段の選択にあたって「使用金額

・残高の把握の容易さ」を重視する消費者は,この点に関するクレジット カードやデビットカードの不便をことさら問題視するであろう。こうした 消費者の場合,クレジットカード決済やデビットカード決済の取引費用関 数の「傾き」は,むしろ現金決済よりも大きくなるかもしれない。したが って,時間にゆとりがあり,かつ,使用金額・残高を把握しやすい決済手 段を好む消費者に関しては,あらゆる支払金額レンジで現金決済の取引費 用関数が最下方に位置することも十分に考えられる。結果として,こうし た消費者は決済に現金しか用いない。もっとも,現実には複数の決済手段 が並存して利用されていることから,以下ではこうした極端なケースは除 外し,図6のような状況を前提として分析をすすめていく。

次に,新しい決済手段である電子マネーの取引費用関数について検討し,

図6で示された既存の決済手段の「棲み分け」構造に重ね合わせることを 考える。まず,電子マネーの登場時の状況を想定する。電子マネーの最大 のメリットは決済時間が短い点にあり,これは決済時間コストが微小であ ることを意味する。しかし,電子マネーの登場当初は,利用可能な店舗が 極めて限られていた。また,利用可能な店舗でも,特定の1種類の電子マ ネーブランドしか使用できないことが一般的であった。これらの点をふま えると,当時の電子マネーのアベイラビリティ・コストは非常に大きかっ た。結果として,「決済に時間がかからない」という利点を「使える店が

(16)

少ない」という欠点が大きく上回り,図7に示されるように,登場当初の 電子マネーの取引費用関数の「切片」はかなり大きいものだったと考えら れる。また,電子マネー決済の「使用金額・残高の把握コスト」は,先に 述べたようにクレジットカードやデビットカードと比べても大きい。加え て,「無記名式」の電子マネーの場合には,現金と同様のセキュリティ・

コストも発生する。つまり,電子マネー決済には無視できない変動費が発 生する。この点を考慮に入れると,電子マネーの取引費用関数は,図7に 示されるように大きな正の傾きをもつと考えられる。

これを出発点として,電子マネーが普及していく状況を考える。電子マ ネーの普及は2つの経路から取引費用関数の形状を変化させる。1つは,

固定費の下落による切片の低下である。例えば,電子マネーの利用可能店 舗が増加し,アベイラビリティ・コストが下落していく場合がこれに相当 する。もう1つは,変動費の低下による正の傾きの縮小である。電子マネ ーの「使用金額・残高の把握コスト」が非常に高いのだとすれば,技術進

図7.電子マネー決済の取引費用関数

【出所】 中田(2015)より引用

取引費用

電子マネー登場時

変動費の低下

固定費の低下

電子マネーの普及

決済金額

(17)

(例:決済端末やスマートフォンのアプリケーションの高質化)によって使用 金額の把握がより容易になれば,変動費用の低下につながる。図7には,

固定費および変動費の低下による電子マネーの取引費用関数の形状の変化 が図示されている。

いま,電子マネーの取引費用関数の傾きが現金の取引費用関数の傾きよ りも大きい状態が維持されると仮定しよう。つまり,電子マネーの「使用 金額・残高の把握コスト」が高止まりするケースである。この状態で,利 用可能店舗の増加によって固定費(アベイラビリティ・コスト)が下落し,

その結果として切片のみが小さくなっていくと,図6において現金決済が 支配的となっている支払金額レンジの左側が電子マネーによって侵食され る。より厳密に言えば,現金決済が支配的となっている支払金額レンジの 左側において,電子マネー決済の取引費用が現金決済の取引費用を下回る。

すなわち,このケースでは,電子マネーはごく小額の取引の決済手段とし て普及していく

次に,最初の仮定を外し,変動費用が低下しながら,同時に固定費用も 下落していくケースを考えてみよう。この場合,電子マネーの取引費用関 数の正の傾きが縮小しながら切片が低下していく。このケースでは,図6 において,現金決済が支配的となっている支払金額レンジの右側が電子マ ネーによって侵食される。ただ,これは同時にクレジットカード決済が支 配的となっている支払金額レンジの左側が電子マネーによって侵食される ことをも意味する。すなわち,現金決済とクレジットカード決済の「棲み 分け」の境界が電子マネー決済によって代替されるのである。

では,現実に起こっている電子マネーの普及は,上に挙げた2つのケー スのうちどちらで解釈することが妥当であろうか。第2節で紹介した「家 計の金融行動に関する世論調査」(金融広報中央委員会)や「最近の電子マ ネーの動向について(22年)(日本銀行)のデータからも明らかなよう に,電子マネーはごく小額の支払金額帯でよく利用されている。このこと

(18)

から判断する限り,現状における電子マネーの普及は,図8に示されるよ うに,もっぱら固定費(特にアベイラビリティ・コスト)の下落を反映した ものだと解釈できる。

図8で示された決済手段間の新しい「棲み分け」は,第2節のマクロデ ータによる分析で指摘した電子マネーをよく利用する経済主体の3つの特 徴とも整合的である。

第1に,首都圏をはじめとする大都市に居住している消費者は,電子マ ネーが利用可能な小売店舗(コンビニエンス・ストアなど)や公共交通機関

(JR各社や大手私鉄)へのアクセスが容易であり,地方の小規模の都市に居 住する消費者と比較して電子マネー決済のアベイラビリティ・コストが低 い。

図8.電子マネーの普及と決済手段間の新しい「棲み分け」

【出所】 中田(2015)より引用

取引費用

電子マネー導入時 電子マネーの普及

決済金額

現金 クレジットカード デビットカード 電子マネー

(19)

第2に,単身世帯者は,就業しながら衣食住に関する買物を全て自分で 済ませなければならない。これに対し,二人以上世帯では,共働き世帯で あれば買物の負担を分散させることができるし,どちらかが主婦(主夫)

となり,より賃金が高いパートナーを就業に専念させることもできる。こ のように考えると,他の条件が等しい限り,単身世帯は二人以上世帯と比 べて買物1回あたりの決済時間を短縮してその分を労働時間などに振り向 けるインセンティブがより大きく,したがって,電子マネーの決済時間コ ストが小さい点を高く評価すると考えられる。

第3に,年収が高い消費者ほど,決済時間の機会費用が大きい。換言す れば,年収が高い消費者ほど,決済にかかる時間を短縮してその分を労働 にあてればより多くの所得を得ることができる。よって,決済時間コスト が小さいことを高く評価し,支払手段として電子マネーを選好することは 当然だと言える。

もっとも,マクロデータは多数の個人の行動が集計(あるいは平均化) れたものに過ぎず,その意味で,上記の議論はあくまでも「推測」の域を とどまらない。よって,実際の電子マネーの普及と消費者の決済手段の選 択理論との整合性を厳密に確認するためには,個別の消費者の行動が反映 されたミクロデータを用いた分析が不可欠となる。第4節では,筆者が独 自に実施した消費者向け個票調査の回答結果をもとに,理論仮説の妥当性 についてより詳細な考察を試みる。

4. 個票データによる分析

我が国では,電子マネーの普及が経済に及ぼす影響に関する実証研究の 蓄積が進んでおらず,マクロデータを用いた分析は中田

(2007)

や北村・

大森・西田

(2009)

,ミクロデータを用いた分析は

Fujiki and Tanaka (2009)

に限られていた。しかも,これらはいずれも電子マネーの普及が貨幣需要 に及ぼす影響が検証されており,第3節で示したような消費者の決済手段

(20)

選択行動に焦点をあてたものではない。こうした状況をふまえ,筆者は 9年から23年までの毎年,合計5回にわたって「電子マネーの利用 実 態 に 関 す る ア ン ケ ー ト」を 実 施 し,中 田

(2009)

・中 田

(2010)

・中 田

(2011a)

・中田

(2011b)

・中田

(2013)

において,消費者がどのような要因に

基づいて電子マネー決済を選択しているのかを個票データで分析してきた。

本稿では,直近に実施された第5回調査(23年3月実施)のうち,福岡 県に在住する消費者から得た回答を分析に利用する。

「電子マネーの利用実態に関するアンケート」は,

NTT

コムオンライン

・マーケティング・ソリューション株式会社に調査を委託し,同社のネッ トリサーチサービス「

goo Research

」にモニター登録している消費者に回 答を依頼したインターネット調査である。調査では,男女別に年齢階級を 5つ設定し(16〜19歳,20〜29歳,30〜39歳,40〜49歳,50歳以上),原則と して各階級で同数の調査票を送信した。ただし,16〜19歳はもともとモ ニター登録者が少ないため,補完的に20〜29歳への送信数を多めにした。

第5回調査では,最終的に福岡県に在住する1,2名の消費者から回答が 得られた。表1には,回答者の年齢構成が示されている。

本調査では,電子マネーを「金銭価値を電子化して

IC

カードや携帯電 (おサイフケータイ)などに収納し,この電子化された金銭価値を使って 買い物をする決済手段のことです。具体的には,いわゆるプリペイドタイ プ と し て 楽 天

Edy

Nanaco

WAON

Suica

SUGOCA

PASMO

Nimoca

など,ポストペイタイプとして

iD

QUICPay

などが挙げられ ます。なお,

BitCash, WebMoney

などのようにネット上でのみ利用でき るものも,ここでは電子マネーに含まれるものとします。」と定義してい る。このもとで,消費者に1週間あたりの電子マネー決済の利用頻度を尋 ねたところ,表2に示されるような回答結果が得られた。

およそ35% の消費者が電子マネー決済を週に2〜3回以上利用している。

その一方で,いまだ電子マネーを利用しない消費者も全体の25% を占め

(21)

ている。なお,「電子マネーの利用実態に関するアンケート」では,電子 マネーを週に1回以上利用する消費者に対してよく使う電子マネーのブラ ンドを3つまで挙げてもらっているが,大半は楽天

Edy

nanaco

WAON

といった流通系のプリペイド型電子マネーか,

Suica

SUGOCA

Nimoca

Pasmo

といった交通系のプリペイド型の電子マネーのブランドを挙げて

いる。その一方で,

iD

QUICPay

などのポストペイタイプのブランド を 挙 げ る 消 費 者 は 多 い も の

(iD)

で も5.2% に と ど ま り,

BitCash

WebMoney

などのネットワーク型のサービスを挙げる消費者も約3% に

過ぎない。

第2節の集計データによる分析からは,電子マネー決済が小額の支払金 額帯でよく利用されていることが示唆された。「電子マネーの利用実態に 関するアンケート」でも,消費者に対して電子マネーでの支払い1回あた りの決済金額を尋ねている。ただし,この調査ではあわせて他の小額決済 手段を用いた場合の1回あたりの支払金額も尋ねているため,決済手段間

表1.回答者の年齢構成 標本

(人) 0歳未満 20〜29歳 30〜39歳 40〜49歳 50歳以上 構成比 1, 0.9% 6.8% 5.0% 8.2% 9.1%

【出所】「電子マネーの利用実態に関するアンケート」(第5回調査,23年3月実施)

表2.電子マネーの利用頻度 全体 ほぼ毎日 5日/週

程度

2〜3日/週 程度

1日/週

程度 利用しない 1,2名 3名 3名 7名 7名 2名

(5.9%) (9.8%) (20.6%) (38.7%) (25.0%)

【出所】「電子マネーの利用実態に関するアンケート」(第5回調査,23年3月実施)

(22)

での比較が可能となっていることが大きな特徴である。表3にはその回答 結果がまとめられている。

この表からは,電子マネー決済が競合しているのは現金決済,とりわけ 硬貨を頻繁に用いるような小額の現金決済であることがわかる。特に「中 央値」で見た場合,電子マネーでの決済金額は硬貨のみを用いた現金決済 での支払金額を下回っており,現状における電子マネーの普及が図8に示 されるようなかたちで進行していることを支持する結果が得られている。

参考として,表4には,電子マネーを週1回以上は利用すると回答した 0名の消費者を対象に,買物の規模(支払金額)別に決済手段として電

子マネーを選択する比率が示されている。

表4.買物の規模(支払金額)別に見た電子マネー決済の利用割合 0%〜

5%未満

5%以上〜

0%未満

0%以上〜

0%未満

0%以上〜

0%未満

0%以上〜

0%未満

0%以上〜

0%未満 0%以上 0円未満 9.9% 9.0% 9.5% 7.2% 5.2% 4.6% 4.7%

0円〜

1,0円未満 1.1% 3.9% 0.1% 9.9% 7.1% 9.9% 8.0%

1,0円〜

0,0円未満 6.6% 4.6% 8.7% 7.2% 5.2% 0.8% 7.0%

0,0円超 5.7% 5.4% 2.9% 2.3% 1.4% 6.5% 5.8%

【出所】「電子マネーの利用実態に関するアンケート」(第5回調査,23年3月実施)

表3.各小額決済手段を利用した場合の平均的な決済金額

中央値

クレジットカード 4,2円 3,0円 電子マネー 7円 0円

硬貨のみ 8円 0円

硬貨と紙幣を併用 2,6円 2,0円 注)「平均値±標準偏差の2倍」を超えるサンプルについては,外れ値として除外した。

【出所】「電子マネーの利用実態に関するアンケート」(第5回調査,3年3月実施)

(23)

第2節で紹介した「家計の金融行動に関する世論調査」(金融広報中央委 員会)の結果と同様に,小額の決済機会であるほど,電子マネー決済の割 合が高くなっていることが確認できる。

前節では,大都市に居住している消費者を念頭に,電子マネーが利用可 能な小売店舗(コンビニエンス・ストアなど)や公共交通機関(JR各社や大手 私鉄)へのアクセスが容易であるほど電子マネー決済のアベイラビリティ

・コストが低く,結果として電子マネーの利用頻度が高まるという理論仮 説を提示した。この仮説の妥当性を検証するため,表5には消費者の日常 の買物場所(1位回答)と電子マネーの利用頻度の関係,表6には消費者 の日常の移動手段と電子マネーの利用頻度の関係がまとめられている8)

8) 表5では,日常の主な買物場所(1位回答)として,「規模の大きい専門店」

(9名)「百貨店」(5名)「インターネットでの通信販売」(49名)「その 他」(40名)と回答した消費者(計89名)が除外され,表6では,日常の 移動手段として「その他」と回答した2名が除外されている。このため表中 の人数の合計はアンケートへの回答者の合計(1,2名)と一致しない。

表5.日常の買物場所(1位回答)と電子マネー決済の利用頻度 全体 週5回以上 2〜3日/週

程度

週1回以下 及び 利用しない コンビニエンスストア・ドラッグストア 5名 6.3% 8.2% 5.4%

規模の大きいスーパーマーケット 9名 1.9% 2.8% 5.2%

小規模の専門店・小売店・飲食店 9名 6.4% 5.6% 7.9%

【出所】「電子マネーの利用実態に関するアンケート」(第5回調査,23年3月実施)

表6.日常の移動手段と電子マネー決済の利用頻度 全体 ほぼ毎日 5日/週

程度

2〜3日/週 程度

1日/週

以下 利用しない 鉄道・地下鉄・バス 4名 6.0% 3.4% 4.2% 9.1% 7.4%

車・バイク 9名 2.6% 6.3% 8.9% 1.2% 1.0%

自転車 5名 2.6% 5.8% 0.6% 9.4% 1.6%

徒歩 2名 5.4% 2.7% 9.6% 7.3% 5.0%

【出所】「電子マネーの利用実態に関するアンケート」(第5回調査,23年3月実施)

(24)

なお,これらの表では横方向の合計が10% になるように比率が計算され ている。

日常の買物場所として(電子マネーが利用可能であることが一般的な)コン ビニエンスストアを選び,日常の移動手段として公共交通機関(鉄道・地 下鉄・バス)を利用している消費者は,他と比べて電子マネーの利用頻度 が明らかに高い。これらの表から判断する限り,アベイラビリティ・コス トの大小が電子マネーの利用頻度に影響を及ぼしているという仮説は妥当 性の高いものだといえよう。

前節ではもうひとつ,単身世帯や高所得層を念頭に,決済に要する時間 の機会費用が高い消費者は,決済時間を節約するインセンティブが大きい ために電子マネーの利用頻度が高くなるという理論仮説を提示した。次に,

この仮説の現実妥当性について検討する。「電子マネーの利用実態に関す るアンケート」では,消費者に対して理想的な決済手段が満たすべき条件 を尋ねていることが大きな特徴である9)。表7には,この設問において,

各条件が消費者から1位回答として選ばれた割合が示されている。

最も多くの消費者が決済手段に求める条件として挙げているのが「アベ イラビリティ」である。ただし,「アベイラビリティ」を重視する消費者 が特定の決済手段を選好するわけではない。なぜなら,コンビニエンスス トアが近くにある消費者は「アベイラビリティ」を理由として電子マネー をよく利用するかもしれないが,コンビニエンスストアが近くにない消費 者はやはり「アベイラビリティ」を理由として現金決済を選好するかもし れない。これに対し,表7に挙げられたその他の条件を重視する消費者は,

特定の決済手段の使用を選好(ないし回避)する傾向があると考えられる。

例えば,決済手段の選択にあたって「ポイントの付与」を重視する消費者

9) 調査票では,「あなたにとって理想的な支払い手段とは,次のうちどの性質 を満たしているものでしょうか? 重視するものから順に3つ選んでくださ い。」という設問形式をとっている。

参照

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2 保健及び医療分野においては、ろう 者は保健及び医療に関する情報及び自己