• 検索結果がありません。

論文審査の結果の要旨 氏名:市

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "論文審査の結果の要旨 氏名:市"

Copied!
3
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

1

論文審査の結果の要旨

氏名:市 川 智 史

博士の専攻分野の名称:博士(総合社会文化)

論文題名:日本における環境教育の史的展開に関する研究 審査委員:(主査) 教授 北 野 秋 男

(副査) 教授 竹 野 一 雄 教授 田 中 堅一郎

1.本論文の構成

環境教育とは、1972 年の国連人間環境会議(ストックホルム会議)において、その重要性が唱えら れたものであり、国際的に推進されてきた経緯を持つ。同じく、日本の環境教育も 1970 年に

“Environmental Education”の訳語として「環境教育」が用いられて以降、国際的動向と呼応しつつ 40 数年間の歴史を刻んでいる。本研究の課題は、日本において環境教育が登場する 1970 年から 2010 年頃までの約 40 年間を対象とし、小・中学校における全国的調査結果を踏まえつつ、国内外の環境教 育の史的展開を解明するものである。

本論文の具体的な研究課題としては、第一には、環境教育登場以前の日本の環境問題・環境保全の 概略史、および環境教育の源流とされる公害教育、自然保護教育の成立を解明することである。第二 には、約 40 年間の環境教育の史的展開について、時代を区分して解明することである。第三には、全 国的調査結果や実践事例に基づく、小・中学校の環境教育における実践状況や特徴を解明することで ある。本論文の特徴は、我が国の環境教育の進歩・発展を「創成時代」(1970 年代)「普及時代」(1980-90 年代)「拡大時代」(2000 年代以降)の3つの時期区分を行い、それぞれの時代の特徴や課題を解明し たものである。

本文はA4版(40 字 X34 行 )で 236 頁である。また、本文以外にも「資料」として小中学校の学 習指導要領における環境教育関連内容も 34 頁にわたって収録されている。本論文の構成と概要は、以 下の通りである。

序章 本研究の課題と構成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

<第Ⅰ部 環境教育の国際的展開>

第1章 国際的な環境教育の創成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

第2章 国際的な環境教育の普及・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

第3章 国際的な環境教育の拡大・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<第Ⅱ部 日本における環境教育の展開>

第4章 環境教育の登場以前・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

第5章 環境教育の創成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

第6章 環境教育の普及・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

第7章 環境教育の拡大・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

終章 本研究の総括・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2.本論文の概要

上記の構成に従って、本論文の概要を紹介する。序章は、本研究の目的及び意義と方法、先行研究 の紹介と批判がなされている。第Ⅰ部は「環境教育の国際的展開」と題して、主に 1970 年代以降にお ける国際的な動向が詳細に紹介されている。

第1章では、用語「環境教育(Environmental Education)」の登場について、これまでの通説であ った「1948 年トマス・プリチャード使用説」に対し、「1947 年グッドマン兄弟使用説」の方が早期であ ることを指摘し、「人間環境の質」「人間の環境への影響」、「人間と環境のかかわり」に関する教育と いう今日的意味での“Environmental Education”が 1960 年代後半に登場したことを解明する。また、

ベオグラード会議(1975 年)、トビリシ会議(1977 年)において、日本政府は代表を派遣していなか

(2)

2

ったこと、国際的合意とされるトビリシ会議の成果が日本国内では取り上げられなかった点を指摘し ている。

第2章では、1970 年代終わりから 80 年代にかけて、国際的な環境教育普及の時代を迎え、そうし た国際的な環境教育の普及・推進の中心的役割を担ったユネスコと「国連環境計画」による「国際環 境教育プログラム(the International Environmental Education Programme=IEEP)」の活動(研究 開発プロジェクト、人材育成活動、情報交流のためのニュースレターの発行、教材、用語集、人材・

団体名鑑等の発行物)、ならびにモスクワ会議(1987 年)、地球サミットで採択された「アジェンダ 21」

(1992 年)の内容解明が行われる。

第3章では、国際的な環境教育の拡大時代として、地球サミットから「持続可能な開発のための教 育の 10 年」(2005~14 年)の開始までの展開を解明している。とりわけ、1997 年に UNESCO とギリシ ャ政府の主催により、「トビリシから 20 年」としてテサロニキ会議が開催され、同会議の宣言におい て、環境教育は「環境と持続可能性のための教育」と位置づけられていく。この間、IEEP という中核 的な組織(国際的なセンター機能)が消失し、環境教育独自の展開が低調となっていく様が描かれる。

第Ⅱ部は「日本における環境教育の展開」と題して、主に 1970 年以降における我が国の環境教育 創成、普及、展開が詳細に紹介される。

第4章では、日本における「環境教育」の登場を 1970 年とし、環境教育登場以前の環境問題・環境保 全の概略史、および、環境教育の源流とされる公害教育、自然保護教育の成立を解明する。また 1967 年の「公害対策基本法」制定から、1970 年の公害国会の経緯と環境関連諸法の制定・改正、ならびに

「公害対策基本法」の改正と「環境庁」の発足についても言及される。さらには、1971 年の「公害と 教育」研究会設立による公害教育が開始されたことも合わせて解明されている。

第5章では、用語「環境教育」の登場、および国内の研究者が「環境教育」を使用し始めた創成期を三 区分し、第一期(1970~73 年)は、1970 年9月 14 日付けの日本経済新聞「本立て」(コラム)の「進 む米の“環境教育”」が、今日的な意味での「環境教育」の最初の使用例であることが指摘される。第二 期(1974~75 年)は、「環境教育」という名の下に研究や実践を開始した組織・団体の活動内容、第三 期(1976 年から 80 年代初頭)は、学習指導要領改訂の改訂や環境教育の学校現場への浸透状況など が解明される。

第6章では、1980 年代に入って、環境保全より経済成長を優先する経済界の巻き返しによって環境 行政の後退が見られるだけでなく、環境問題への関心も薄れ、環境教育が低迷したことが指摘される。

しかしながら、そうした環境教育の後退は、1986 年の環境庁『環境保全長期構想』、1988 年の環境庁

『環境教育懇談会報告』の発行、1990 年の「日本環境教育学会」の設立や自然体験型環境教育の拡大 などにより、歯止めがかけられ、環境環境普及の時代に入ったことが指摘される。こうした影響は、

学校現場にも影響し、小・中学校における環境教育実践率が 1990 年代の前半から中盤にかけて上昇し た実態にも言及される。

第7章では、1999 年の中央環境審議会答申で「持続可能な社会の実現」が環境教育の目的とされ、

我が国の環境教育が概念的・内容的にも拡大された 1990 年代末から 2010 年頃までを考察している。

学校現場では、2002 年度の「総合的な学習の時間」導入により、横断的・総合的な学習課題として「環 境」に関する学習実践が行われたこと、2006 年の教育基本法改正で、生命・自然の尊重、環境の保全 が教育の目標として明記されたことなどが言及される。学校現場の実践内容については、「総合的な学 習の時間」を対象として、全国調査の比較分析が行われ、小学校に比べ、中学校における環境教育実 践がやや低調であること、実践率の高い実践内容・活動が 1990 年代とあまり差異がないことなどが指 摘される。

終章は、本論文の総括ならびに今後の研究課題が挙げられている。

3 本論文の成果と問題点

本論文の学術上の成果としては、主に以下の三つの点を指摘できる。

第一には、用語「環境教育(Environmental Education)」の登場と各種国際機関や国際会議におけ る環境教育に関する理念や活動内容の変遷を実証的に解明した点である。とりわけ、用語「環境教育」

に関しては、通説では「1948 年トマス・プリチャード使用説」が一般的な見解であったが、本研究で

(3)

3

は「1947 年グッドマン兄弟使用説」の方が早期であることを指摘し、「人間環境の質」、「人間の環境へ の影響」、「人間と環境のかかわり」に関する教育という今日的意味での“Environmental Education”

は、1960 年代後半に登場したことを明らかにしている。

第二には、我が国における環境教育の学説史、ならびに実態研究を時期区分して整理したことであ る。本論文では、膨大な資料を駆使しながら、我が国の環境教育の 40 年間の歴史的展開を3期に区分 して、各時代の節目となる事象や研究成果に着目しつつ、環境教育の史的展開を試みている。第 1 期 の「創成時代」における小・中学校の環境教育は、公害・環境問題を扱った実践、身近な環境の状態 や環境問題の調査、人間の環境への影響を扱った実践であったことが解明される。第 2 期の「普及時 代」の小・中学校の環境教育は、地球環境問題、環境に配慮した生活という当時の社会情勢を象徴す る実践に加え、地域の自然・社会環境に直接接し(体験し)、環境の状態(問題状況も含む)をとらえ、

「人間と環境のかかわり」を認識するという実践、自然とのふれあい活動、飼育栽培活動、環境美化・

清掃活動といった「活動」を取り入れた実践であったことが解明される。第 3 期の「拡大期」では、

2000 年代における日本における環境教育の拡大が研究対象となる。2000 年代の環境保全の動向、国・

研究者レベルの展開と理念の変化、環境保全活動・環境教育推進法(2003 年)、改正・教育基本法(2006 年)の内容、学習指導要領改訂(1998 年)の内容、全国的調査結果と実践状況に基づく小・中学校環 境教育の展開、および、「総合的な学習の時間」における環境教育実践の変化、現状と問題点の解明が 行われる。いずれにせよ、我が国における先行研究では環境教育の創成、普及、拡大に関する 40 年間 の歴史的展開を正面から取り上げた研究は皆無であり、本研究の独創性と学術的価値は高く評価され るものである。

第三には、本論文が学位申請者自身による全国的調査結果を踏まえた上で、我が国の小・中学校に おける環境教育の特徴と変化が理念的にも実証的にも解明されている点である。とりわけ、普及時代 の小・中学校の環境教育は、地球環境問題、環境に配慮した生活という当時の社会情勢を象徴する実 践に加え、地域の自然・社会環境に直接接し(体験し)、環境の状態(問題状況も含む)をとらえ、「人 間と環境のかかわり」を認識するという実践、自然とのふれあい活動、飼育栽培活動、環境美化・清 掃活動といった「活動」を取り入れた実践であったことが解明される。また、拡大期においては「総 合的な学習の時間」では、学校間に格差があり、環境教育に熱心ではない学校では、小学校は「飼育 栽培・生産体験」、中学校は「美化清掃・回収体験」に偏っており、横断的・総合的な環境教育は低調 であること、中学校の実践の低調さが目立つこと、との問題点も解明される。以上の指摘は、我が国 の学校教育における環境教育の特徴と課題を浮き彫りにするものであり、その実証的な研究手法とと もに多角的・総合的な研究内容としても高く評価されるべき内容となっている。

本論文の研究内容や研究方法は高く評価されるべきことを述べてきたが、本論文に残された課題が ないわけではない。第一には、各種国際機関や国際会議における環境教育に関する理念や活動内容の 変遷を報告書、議会議事録などの一次資料を用いて多角的に分析する必要がある。もちろん、本論文 でも、報告書などの一次資料は用いられているものの、実態解明にはより詳細な資料収集と分析が必 要となろう。第二には、日本が 1970 年代のベオグラード会議やトビリシ会議へ政府代表を派遣しなか ったことが日本の環境教育の遅れとなった要因として指摘されている。しかし、日本側が政府代表を 派遣しなかった理由や事情は述べられてはいない。日本の環境教育の遅延をもたらした要因でもあり、

政府関係の資料をもとに実証的な解明が必要となろう。

本以上、本論文に残された課題があるとはいえ、我が国の環境教育の歴史的展開が詳細に分析され、

かつ全国的調査による小・中学校における環境教育の特徴と変化も実証的に解明されている。本論文 が日本の環境教育の発展と課題を明確にした体系的な研究であることは疑いない。

よって、本論文は博士(総合社会文化)の学位を授与されるに値するものと認められる。

以 上 平成27年1月31日

参照

関連したドキュメント

一部の電子基準点で 2013 年から解析結果に上下方 向の周期的な変動が検出され始めた.調査の結果,日 本全国で 2012 年頃から展開されている LTE サービ スのうち, GNSS

年度まで,第 2 期は, 「日本語教育の振興」の枠組みから外れ, 「相互理解を進 める国際交流」に位置付けられた 2001 年度から 2003

■2019 年3月 10

この大会は、我が国の大切な文化財である民俗芸能の保存振興と後継者育成の一助となることを目的として開催してまい

● 生徒のキリスト教に関する理解の向上を目的とした活動を今年度も引き続き

● 生徒のキリスト教に関する理解の向上を目的とした活動を今年度も引き続き

今回のアンケート結果では、本学の教育の根幹をなす事柄として、

SGTS の起動時刻と各シナリオの放出開始時刻に着目すると,DCH では SGTS 起動後に放出 が開始しているのに対して,大 LOCA(代替循環)では