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密集市街地における

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Academic year: 2021

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芝浦工業大学工学部建築工学科

2014年度卒業論文・卒業設計梗概

研究指導:赤堀 忍 教授 青島啓太 特任助教

Tomonori Wada

密集市街地におけるCLT(Cross Laminated Timber 直交集成板)を用いた防災対策

-CLT普及にみる都市木造化の可能性-

Keywords

木造

CLT 密集市街地

防災 街区整備 まちなみ

AK11124

和田 朋憲

1.

はじめに

2000年の建築基準法改正によって木造での耐火建築が

認められるようになり、木造建築による都市の不燃化が 可能となった。さらに、2010年「公共建築物等における 木材の利用の促進に関する法律」が制定され、公共建築 物の木造化が進むと考えられる。木造建築の可能性は拡 大され、都市と建築の木造化が進行していく。今後数年 間でおこる木造建築の普及は都市の景観を一変させ、日 本独自の景観を生む可能性がある。

1.1.

背景

1.1.1.

密集市街地とは

密集市街地とは、建築が密集して建てられている地域 であり、住環境の悪化や防災性能の低下などの問題があ る。特に木造建築が密集している木造建築密集地域は、

防災機能の低い地域であり、災害時には多くの被害が予 測される。国土交通省は密集市街地のうち、「延焼危険 性又は避難困難性が高く、地震時などにおいて最低限の 安全性を確保することが困難であり、著しく危険な密集 市街地」(国土交通省HPより抜粋)を重点密集市街地 としている。現在、重点密集市街地は全国に約8000ha、

東京都と大阪府にそれぞれ約2000ha存在する。こうした 密集市街地では老朽化した住宅など既存不適格建築の存 在以外にも避難困難な地域、緊急車両の侵入不可、建て 替えが困難であることなど様々な課題があり、こういっ た現状を少しでも改善することは早急の課題である。

図1 東京の重点密集市街地地域図(国土交通省HPより抜粋)

1.1.2.

木造建築への評価の変化

2000年の建築基準法改正により、性能規定が加わった。

燃えしろ設計や防火被覆などにより性能規定を満たすこ とで耐火木造が認められるようになり、木造建築普及の 起点となった。さらに、2010年「公共建築物等における 木材の利用の促進に関する法律」が制定され、木造公共 建築物が増加する。建築着工統計によると、医療、福祉 用建築物の着工数は2009年では2838棟、2013年では

4609

棟と年々増加している。木造での耐火建築物は、今 後の木造公共建築物の増加を押し進める。

1.2.

研究目的

A)

都市の防災対策:十分な防耐火性能をもった木造住 宅によって密集市街地の更新を行う。

B)

既存街区の特徴を継承する整備:木造建築普及によ る都市の不燃化を前提とした、未来の密集市街地整 備像を検討し、防災と地域性継承の両立を目指す。

1.3.

研究方法

現在の日本での防災対策や解決すべき問題を把握する。

さらに、木造建築の可能性が拡大してきた中で、その普 及の可能性を考察する。特に新しい木造パネル工法をも ったCLT(Cross Laminated Timber 直交集成板)の 工法に注目し、調査していく。これらの調査をもとに、

都市の木造化によってどのようなことが可能であるのか、

対象街区を選定し街区整備を検証する。

2.

日本の市街地における防災対策

2.1.

市街地の不燃化

現在行われている市街地火災への対策として大きく2 つに分けられる。1つは、延焼遮断帯で市街地を区画し、

街区から街区への延焼を防止する。区画された市街地を 防災生活圏という。2つ目は、防災生活圏内部での建築 の建て替えや道路整備などによる不燃化である。密集市 街地の災害危険性は後者であり、本論文では防災生活圏 の不燃化を木造建築によって行おうとするものである。

2.2.

密集市街地の現状と課題

密集市街地の問題として、老朽化した木造建築が高密 度に建築されていることによる火災危険性が高いことや、

道路幅が狭いことによる災害活動(避難、緊急車両の侵

入など)が困難であることなどがある。しかし、大きな

問題は住宅の建替えが不可、または困難という現状であ

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芝浦工業大学工学部建築工学科

2014年度卒業論文・卒業設計梗概

り、要因として接道義務などの敷地の問題や住民の高齢 化、建て替え資金不足といったものがある。密集市街地 の整備では、防災面や社会的な面、経済的な面など様々 な方面から考えることが必要である。

写真1 老朽化した住宅と狭隘道路

2.3.

従来の市街地を継承した再生-法善寺横丁

大阪府大阪市中央区難波にある法善寺横丁では、従来 の市街地を継承した再生が行われた。法善寺横丁は、幅 員約2.6mの道路に飲食店が並び、風情あるまちなみが残 る地域であるが、2002年9月と2003年4月の火災により、

多くの店舗が被害を受けた。2度の火災の後、2004年2月 に全ての店舗が完成した。法善寺横丁の再生は、連担建 築物設計制度(以下連担制度)と建築協定を用いて行わ れ、再生後も火災以前のまちなみを維持した。連担制度 とは、既存の建築物を含み複数の敷地と建築物を一体と みなし、合理的な設計を行うものである。その際、特定 行政庁の認定により当該敷地を1つの敷地として扱い、

建築基準法を適用していく。密集市街地においては建て 替えが不可、または困難である未接道敷地や狭小な敷地 での建て替え促進が期待できる。法善寺横丁では特に、

連担制度を用いることにより各規制を緩和・強化し、地 域の事情に柔軟に対応した防災性能の確保を可能とした ことが大きい。例えば、再生後の道路幅を2.7mにするか わりに、面する建築を耐火構造とすることや、最高高さ を10m以下と制限することなどよって防災性能を向上さ せた。

道路幅員と建物の関係は、まちなみを考えるうえで重 要なことであり、両者の関係はまちなみの姿に直結する。

法善寺横丁では、連担制度によりまちなみの骨格、つま り道路と建物の関係は継承され、建築協定により建築物 の基準が上乗せされることにより再生に成功した。地域 の事情に柔軟に対応した地域の再生であり、従来の地域 の継承を考慮した更新・再生の手法として参考にすべき 点が多い。

3.

木造に関する新工法の可能性

3.1.

木造建築の特徴とメリット

木造建築の特徴として、炭素固定などによる地球環境 への寄与や、増減築・更新(解体)が比較的容易である こと、躯体施工に関わる専門職種が少ないことなどが考 えられる。世代交代や家族形態の変化などから、住宅へ のニーズが頻繁に変化する住宅地において、木造建築の 持つ柔軟性はメリットとなるだろう。

3.2. CLT(Cross Laminated Timber 直交集成板)

CLTとはひき板を並べた層を、板の向きが直角になる

ように集積させた集成材である。プレキャストコンクリ ートの木造版であり、従来の木造建築との大きな違いは 壁式構造ということである。CLTは1995年ごろオースト リアを中心として普及してきた新木質構造用材料であり、

現在では、ヨーロッパ各国やカナダ、アメリカでも普及 し始めている。日本では2013年12月にJAS(日本農林規 格)が制定され、2016年には実用化される予定である。

2012

年には、高知県長岡郡大豊町に

CLT

造の社員寮(

3

階建て267㎡)が建築された。CLTは、高知県産のスギ を銘建工業本社工場にて加工・生産したものを用いた。

3.3. CLTの特徴

CLTの特徴として、①在来木造の約3倍木材を要し、

多くの木材需要を生む②間伐材や端材が利用可能であり、

森林の整備が進む③工場生産による高い生産効率、安定 供給④容易かつ短期施工が可能⑤高い防耐火性能を有す るなどがあげられる。

これらの中でも、特に防耐火性能に注目する。CLTは 集成材であるため、防耐火性能を確保することが可能で ある。また、従来の集成材との相違点は、面材という点 である。従来の集成材の防耐火性能は構造に対するもの であるが、CLTであれば従来の性能に加え延焼防止にも 寄与することが可能であると考える。

4. CLTを用いた密集市街地における街区の整備

4.1.

対象街区の概要

東京都足立区千住柳町内の街区を検証対象地とする。

千住柳町は、足立区南部の荒川と隅田川に挟まれた地域 である(図2の矢印の位置)。東京都市整備局が行った、

地震に関する地域危険度測定調査(第7回、2013年9月公 表)において、火災危険度が東京都で最も高い町丁目と された。千住柳町は建築が密集している密集市街地であ り、当然、老朽化した建築が多ければ危険度は高くなる。

さらに、千住柳町は延焼遮断帯で区画された防災生活圏 の中央部に位置するため、周辺も同じような危険な密集 市街地に囲まれている。これらが火災危険度を著しく高 めている要因であり、戸建て住戸の防耐火性能の向上と、

延焼遮断帯よりもさらに小さなスケールでの延焼防止、

2つの火災対策が必要である。対象街区は、千住柳町の

中でも特に住戸が密集している街区を選定した。

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芝浦工業大学工学部建築工学科

2014年度卒業論文・卒業設計梗概

図2 東京都の火災危険度地図上における足立区千住柳町位置図 出典 東京都市整備局HP上の図をもとに作成

図3 対象街区

出典 国土地理院,基盤地区データより作成

4.2.

対象街区の諸問題

A)

災害時の危険性

対象街区の危険性について見てみる。この街区では多 くの住戸が密集しているため、個々の火災に加え延焼の 危険性も高い。街区の北・西側に面している住戸以外は、

4方の隣棟間隔が狭いため、延焼の危険性は高い。

また、特に中央部分の住戸では、災害時の活動も困難 である。災害時に緊急車両が侵入可能であるのは北・西 側の道路である。東・南側の道路幅は狭いため侵入は不 可であり、当然、街区の中にも侵入は不可である。さら に、中央部分の住戸の玄関は道路ではなく、住戸間の隙 間に面しているため、避難活動も困難である。特に中央 部分の住戸は、外周道路までの通路は狭く、避難も1方向 にしかできないものもある。

B)

劣悪な住環境

住環境についても多くの住戸に問題がある。建蔽 率

60

%の指定があるが、建て替えが行われていないためか、

満たしている住戸は見られず住環境も劣悪なものとなっ ている。現在の街区の建蔽率は約70%である。

街区外周部の住戸は、外周道路に面しているファサー ドもしくは天井から採光を行う必要がある。隣棟との間 隔は狭く密接しており、背後にも住戸が密接しているた めである。また、外周部の住戸であっても幅の狭い道路 に面している住戸では、ファサードからも十分な採光を 行うことは不可である。これらより、街区外周部の住戸 であっても現状では十分な採光は困難である。中央部分 の住戸にいたっては、4方が隣棟と密接しているため採光 は困難である。当然、住戸は道路に面しておらず、住戸 までのアプローチも住戸間の隙間を通っていく他ない。

実際にこの街区を訪ねると、街区の中は昼間でも暗い。

4.3.

街区整備計画の提案

街区整備は、現在の姿、地域性を継承するようにし、

前述した災害時の危険性や住環境の改善を目的とする。

戸建て住戸と集合住宅を再配列することによって街区の 整備を行う。戸建て住戸を配列した際、現在存在する戸 数分配列できない場合は、不足分の戸数を集合住宅に吸 収する。戸建て住戸の規模と敷地の規模はあらかじめ想 定し、街区内において戸建て住戸の再配置を行う。

想定する戸建て住戸の敷地規模は短辺4m×長辺とする。

住戸を短編方向いっぱいに建築するとした場合、住戸の 規模は、間口4m×奥行きとなる。階数は3層、防耐火性 能は準耐火建築を想定する。住戸密度の高さに伴い、敷 地は狭くなり、街区の指定建蔽率も

60%

であるため、建 築面積は小さくなる。建築面積が小さい分は、階数を3層 とすることによってカバーする。平面としては大きな空 間とはならないため、CLTパネルによる壁式構造でも建 築可能である。小さな平面を重ねる住戸は、CLTを使用 することに適しているだろう。

本計画では、各戸建て住戸にCLTの防火壁を設けるこ とによって密接することを可能とさせる。つまり、各戸 の防耐火性能に加え、各戸の界壁によって防災性能を向 上させる。隣棟への延焼など、小規模の延焼を防ぐため に、CLTパネルの有する防耐火性能、遮炎性能と断熱性 能を活かし、住戸の前後・上部に外壁を延長させるよう に防火壁を設ける(図4)。防火壁は、各住戸の前後・上 部に500mm突出させる(建築基準法施行令第112条第2 項より)。平面で見た時、前後面に突出した防火壁に囲 まれている部分は、建築面積に算入されないものとする。

戸建て住戸は、中層化することと密接させることで、不 燃化や住環境を考慮した高密度化を行う。

また、集合住宅の規模も周辺環境に調和するよう、建

築面積を大きくとり、高さ・層数ともに戸建て住戸と同

程度のものとする。

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芝浦工業大学工学部建築工学科

2014年度卒業論文・卒業設計梗概

図4 提案住戸イメージ

4.3.1.

住戸配置提案

本論文では、街区整備の住戸配置案を2つ提案する。1 つ目(図5)は、街区内を東西に横断するように道路を設 ける。現在、正方形に近い街区を2つの短冊形に分けるよ うにし、集合住宅と戸建て住戸を配置していく。2つ目

(図6)は、街区の形は現在のまま維持し、外周道路に面 するように、集合住宅と戸建て住戸を配置していく。整 備後の街区は、防災性能・住環境ともに良好なものとな る。

図5 住戸配置提案1

図6 住戸配置提案2

4.4.

形成されるまちなみ

図7は、戸建て住戸と道路の関係(提案1の場合)であ る。各戸建て住戸敷地の非建蔽地を住戸の背面に設ける ことで、既存の住戸と道路の関係に近いものにする(図

7のA)。非建蔽地を前面に設けた場合(図7のB)、住

戸間の水平距離は10m以上となり、既存の市街地とは大 きく異なるものになってしまう。

図7 街路と住戸の関係

整備後のまちなみは、特徴的な防火壁が一定の調和を 生み、防火壁が前面に500mm突出することによって生 まれるスペースと、戸建て住戸であるが故の個性あるフ ァサードによって形成される。住戸の増減築・更新が行 わるごとにファサードは入れ替わりながら、特徴的なま ちなみは継承されていくだろう。

図8 住戸がつくりだすまちなみ

ファサードは赤堀研究室の課題における学生のプランを参考にした

5.

結論

近年、木造建築の可能性は拡大している。CLTをはじ めとした木造建築物のさらなる普及により、林業活性化 による地方創生など、日本全体への有益性も生まれるだ ろう。本論文では、木造建築への評価の変化、CLTとい う新木材の普及の可能性より、それらを用いた密集市街 地の整備を、街区という単位で検証した。住宅地を長期 的な視点で見た場合や、街区単位での問題の解消、既存 の地域の継承など、市街地の更新を様々な面から考えた 場合、木造建築・CLTを密集市街地の整備に用いること が有効であるだろう。

参考文献

1. 「地震時等に著しく危険な密集市街地」について,2012.10.12,国土交 通HP,http://www.mlit.go.jp/report/press/house06_hh_000102.html 2. 国交通省HP,建築協定活用事例,

www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn0368pdf/ks0368030.

3. 森林・林業・木材産業の現状と課題,2014.07,林野庁HP, http://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/genjo_kadai/index.html 4. KLH HP,http://www.klhuk.com/

5. 銘建工業株式会社HP

6. 三宅 理一・林 明夫著,1998,『次世代街区への提案 安全で環境に やさしい街づくり』,鹿島出版会

参照

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