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規制産業に対する独禁法の適用 : 独禁法と事業法 の関係に関する試論

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(1)

の関係に関する試論

著者 渡辺 昭成

雑誌名 静岡大学法政研究

巻 10

号 3‑4

ページ 132‑87

発行年 2006‑03‑01

出版者 静岡大学人文学部

URL http://doi.org/10.14945/00008851

(2)

規制産業に対する独禁法の適用一独禁法 と事業法の関係に関する試論

規制産業 に対す る独禁法 の適用

―独禁法 と事業法の関係に関する試諭

渡 辺 昭 成

I  本稿の目的

本稿 の目的 は、航空法、道路運送法 な どいわゆる事業法 と呼ばれ るも のに適合 しているとされた、ないし、事業法 に基づ く規制が行われてい ない行為 に対す る独禁法の適用可能性 を検討することにある。

現行独禁法では、 21条 において知的財産権の行使 として「著作権法、

特許法、実用新案法、意匠法 または商標法 による権利 の行使 と認 め られ る行為 に」、 また 22条 において一定の組合の行為 として「小規模の事業者 または消費者の相互扶助 を目的 とす る」行為 について所定の要件 を満た す場合 に、 23条 において公取委の指定する商品及び著作物 に関す る再販 売価格維持行為が行 われ る場合 について独禁法の適用が除外 され る制度 が存在す る。 また、一部、海運 カルテル、国際航空カルテルな ど、個別 の法律 に基づ く独禁法適用除外制度が存在する。

現行 の適用除外制度 は、平成 9年 、 11年 、 12年 の独禁法改正 により整

理 された ものである。改正前、旧21条 において自然独 占に固有の行為 と

して「鉄道事業、電気事業、瓦斯事業 その他その性質上当然 に独 占 とな

る事業 を営む者の行 う生産、販売又 は供給 に関する行為であってその事

業 に固有の ものについてはこれを適用 しない」 とされていた。 また、旧

22条 において「特定の事業 について特別の法律がある場合 において、事

業者又 は事業者 団体が、 その法律又 はその法律 に基 く命令 によって行 う

正 当な行為 にはこれを適用 しない」 とされ、 これに基づ き独禁法適用除

外法が存在 し、そこで は損害保険料率算定団体 に関す る法律 に基づ く損

(3)

害保険両料率団体 の算出 した保険料率の遵守等が規定 されていた。 さら に、旧 24条 の 3に おいて、不況 に対処するために一定の条件の下 に公取 委 の認可 を得て、生産業者な どが生産数量の制限及び価格の決定 を行 う ことを許容する不況 カルテル制度、旧 24条 の 4に おいて、企業の合理化 を遂行す るために特 に必要がある場合 において、一定の条件の下 に、生 産業者 な どが技術又 は生産品種の制限な どを行 うことを許容する合理化 カルテル制度が存在 した。 その他、個別の法律 に基づ く独禁法適用除外 制度が数多 く存在 していた。

これ ら適用除外規定が独禁法か ら削除 された現在、各種事業法 に基づ く認可 を受 けた料金 な ど、事業法 に基づ く行為 に対 し独禁法が適用 され る場面が増加 しつつある。平成 14年 9月 30日 には公取委 は、航空法 に基 づ く認可 を受 けた航空料金 につ き、私的独占の疑 いがあるとして問題点 を指摘 し、平成 15年 5月 14日 には道路運送法 に基づ く事業認可 を受 けた 高速バスの共同運行お よびその料金 につ き、私的独 占及び競争者 に対す る取引妨害に該当す る可能性があるとして注意 を行 っている。その他、

規制緩和 の進展が著 しい電気通信、電力・ ガス といった市場 において も 公取委 は独禁法の適用 を行 い、また、各省 と共同で各種ガイ ドライン (Dを 作成 している。

本稿では、独禁法適用除外制度が整理 された現在の独禁法制 を念願 に

置 き、事業法 と独禁法の関係、その中で も事業法 に則 った行為 に対す る

独禁法の適用 に関する考 え方について検討す る。次 に、検討の結果、採

用 した考 え方 に基づ き、運輸業 に属す る航空事業 を規制す る航空法、バ

ス・ タクシー業 を規制する道路運送法 に則 っているとされる行為 に対す

る各事業法・ 独禁法の適用の可能性、お よびそのあ り方について検討す

ることとする。

(4)

規制産業に対する独禁法の適用―独禁法と事業法の関係に関する試論

Ⅱ   事 業 法 と独 占禁止 法 の関係

以下では、事業法 と独禁法の重畳的な適用が可能な事例 につ き、事業 法 と独禁法 をいかに適用するか、つ まり、事業法の適用が行われなかっ た行為 につ き、あらためて独禁法の適用可能性が存在するか否か、 とい う問題 に関する各学説 を見てい くこととする。

1.事 業 法 と独 禁法 の関係 に関 す る学説

(1)独 禁法優先説

この考 え方は、一般法である独禁法 に加 えて、事業法 に基づ く競争促 進的規制が存在する場合 には、憲法上 の平等原則か らみて、 このような 規制が存在す る「必要性が明確 に示 され るべ きであ り、独禁法 による規 制が可能であれば これ を優先する という原則が採用 され るべ きであ」り、

「 その必要性が認 め られ る場合で も、一般法である独禁法 との間で、競 争法のルール としての統一性・ 整合性が担保 され るべ き」であるとす る

ものである②。この考 え方 は、事業法 に基づ く競争促進規定 は、一時的 に は必要であるが、長期的 にみて必要なのは「ネ ッ トワーク部門な どで自 然独占性が残存する場合 における料金規制、取引所 な どの市場制度の設 置・ 監督が必要な場合の規制な どに限 られ る」 ことや、事業法 に競争促 進規定 を置 くことによって対処 している問題 について、競争中立的な制 度 を設定す ることで対処可能 な問題が多 く存在す ること、従来の事業法 の必要性 の根拠 とされ る当該事業法がその対象 としている領域の特殊 性 についてはそれ を安易 に認 めると不必要 に過剰な規制が行われ る危険性 があることな どを理由 としている。ゝ

この考 え方の問題点 は第一 に、合理的な理由がないのに、事業法に基

づ き、当該事業法の規制対象 となる領域 にのみ独禁法以外の特別の規制

(5)

が行われ ることは、憲法の平等原則 に反す るとして独禁法 による規制 に 一本化すべ きであるとする点 にある。憲法上、確かに「法の下の平等」

により、 「形式的平等 とい う意味 において、等 しい法的取扱 を要求するも のであるが」、しか しそれは 「事実上の差異 に着 目するとき、平等原則 は、

等 しい者 は等 しく、等 し くない者 は等 し くな く取 り扱 うべ きだ とい う相 対的平等の意味 に理解 されなければな らない」のであ り、合理的な理由 があれば、区別 は正当化 され るの。事業法 に基づ く規制 は、安全性 の確保 の必要性、環境への影響の大 きさな ど、当該事業の特性 に応 じた もので あ り、当該事業 に対 し、独禁法 と事業法が重畳的に適用 された として も、

それが憲法上の平等原則 に反するとは思われない。第二 に、事業法 に規 定 された競争促進的な規定 について独禁法 との統一性・ 整合性が担保 さ れ るべ きであるとする考 え方について、両者の法 目的の差異 をどのよう に考 えるか という点 にある。事実上の問題 として、事業法 における競争 促進的規定がその文言お よび解釈 において、独禁法 とほぼ同一の もの と みなせ る場合 はあるが、本来事業法 と独禁法 は、その目的・ 趣 旨が異な るのであ り、両者 を統一化する必要性およびその根拠があるか とい う疑 間がある。

9)競 合説

大阪バス協会事件

(り

において、独禁法 と道路運送法の関係 につ き、被審

人 は、 「事業法である道路運送法 は一般法である独 占禁止法 に対 し特別法

の関係 にあ り」、「道路運送法に基づ く競争制限的規制 によって自由競争

の余地 を否定 している範囲、領域 においては、特別法である同法が優先

し、一般法である独 占禁止法の適用の余地 はない」 と主張 し、両者 は一

般法・特別法の関係 にあると主張 した。 しか し、公取委 は、「本件のよう

に運賃等が現実 に主務官庁 による認可 を経ている場合 において事業者団

体の行為 に対 して独 占禁止法所定の排除措置 を命ず ることがで きるか ど

うか を検討すべ きときに、明示的な適用除外規定がないにもかかわ らず、

(6)

規制産業に対する独禁法の適用―独禁法と事業法の関係に関する試論 当然 に独 占禁止法の適用が排除 されて終わ る、とい うことはで きない し、

また、 この問題 を検討する場面で道路運送法の関係規定が当然 に独 占禁 止法の関係規定の内容、趣 旨を規定 し、拘束するものではな く、 この間 題 は、専 ら同法の見地か ら判断すべ きであると解するのが相当である」

として、被審人の主張 を認 めなかった。この考 え方の根拠 として、 「道路 運送法の定 める運賃等の認可制度が独 占禁止法の規律す る競争秩序 を規 定、拘束することはない という意味 においては、双方の一般法 と特別法 との関係 はな」 く、道路運送法 は、公共の福祉 を増進す るために道路運 送の総合的な発達 を図 ることを直接の目的 とし、道路運送事業の分野 に おいて公正 な競争 を確保す ることを目的 としているのは、その手段 とし て掲 げ られているにす ぎないのであって、独禁法 と異な り、道路運送法 において公正な競争の確保 は、道路運送 に関する秩序位置のための規則 と並んで公的な規制の手段 として採用 されているに過 ぎず、 「保護法益 と しての公正な競争の確保の扱い方に差異があ」 ることを挙 げている。

この考 え方は、独禁法 と事業法の関係全般 に置 き換 えると、事業法に 明示的な適用除外規定が存在 しない限 り、両者 はその目的を異 にしてい ることか ら、両者 は重畳的 に適用 され るとするものである。

13)独 禁法 と事業法の「調整」説

この考 え方は、従来事業法 に基づ く事前規制がお こなわれてきた分野 につ き、規制緩和 によ り事業法 に基づ く規制が事後規制型 に転換 された こと、競争促進的な規制の導入が行われた ことか ら、事業法 と独禁法が 競合す る場合があ り、その場合 には独禁法 による規律が基本 となるとす る ものである。 しか し、独禁法 に加 えて、事業法 による規制の必要性が 認 め られ る場合 には、独禁法 との整合性が必要であ り、公取委 との調整 が必要であるとするものである

)。

この考 え方は、事実上の問題 として、事業法 に基づ く規制 を受 ける事

業者が、事業法 と独禁法の「板 ばさみ」 になることを避 け、事業法・ 独

(7)

禁法双方 に基づ く考 え方 を一本化する必要性があるとす るのであろう。

例 えば、電気通信市場法 に基づ く料金の届出 を同法 に基づいて行 い、そ れに対 し同法 に基づ く料金変更命令が下 されないにもかかわ らず、独禁 法 によ り当該価格設定が私的独 占ない し不当廉売 として規制 され ること を避 けようとする意図があるもの と思われる。 しか し、 この考 え方の間 題点 としては、事実上事業法 における競争促進的な規定が独禁法 と同様 の もの と考 えられ る側面 はあるが、両者の法 目的・ 趣 旨の差異 をどのよ うに考 えるか とい うことが挙 げられ る。独禁法優先説 と同様 に、両者 を 統一化する必要性 およびその根拠があるか とい う疑間がある。

141 事業法 と独禁法の「棲み分 け」説

この考 え方は、事業法 に基づ く規制がお こなわれている分野 につ き、

競争上の問題が生 じた場合 には、事業法、独禁法双方の規制 を適切 に組 み合わせて柔軟 に対処す る必要があるとする。具体的には、 「事業法規制 が用意 されている場合 は一旦 はそれにより、それ以外の自由な事業活動 の領域での競争 リスクに対 しては独禁法 を適用すべ きである」 として、

事業法 と独禁法の棲 み分 けを提唱 している。 しか し、公益事業分野での 技術革新、規制改革が事業法規制 に「時代遅れや抜 け穴等」 を生 じせ し めることか ら、 「規制改革 によって開かれた自由な事業活動の領域 に対 し 適用 され るのはもちろんの こと、事業法規制が風化 して しまった り技術 革新 により乗 り越 えられた結果生 じている、妥当であると是認で きる競 争の場 においてそれを妨 げた り歪 めた りす る行為 に対 して も適用 され る べ きである」とし、「各々の事業の特性 に見合 った形で、事業法規制 と独 禁法規制の最適選択」 を求める必要があるとしている 0。

この考 え方の背景 には、事業法 に基づ く規制 と独禁法 による規制が重 複す る場合、明確 な調整ルールが存在せず、 したが って現実的にみて、

事業法 に基づ く規制が専門性・ 技術性 に優れ るな どの利点が存在す るこ

とか ら、事業法 に基づ く規制が有効 であるとの考 えがあると思われ る。

(8)

規制産業に対する独禁法の適用―独禁法と事業法の関係に関する試論 しか し、現実的な側面か ら見て も、事業法 を運用する監督官庁が競争促 進的な規定の運用 につ き、専門性 を有 しているか とい う疑間がある。 こ の問題 については、独禁法優先説か らも疑間が述べ られている。し また、

理論的 にみて も、事業法 と独禁法 はその法 目的・ 趣 旨を異 にしているの であ り、両者が「棲 み分 け」 をする理 由が明 らかではない。

G)独 禁法限界説

この考 え方は、上記「調整」説か ら、適用除外規定のない事業法の存 在、各事業の監督官庁の存在か ら公取委 と監督官庁が連携 をとってガイ ドラインを作成する必要があることな どを指摘 されていることか ら、公 取委が施行す る独禁法の内在的限界が存在することを指摘す ることを出 発点 とす る。つ まり、独禁法の理論的根拠である「価格理論モデルが示 す資源配分の効率性」 には、理論上「静態的性格 に由来す る限界 を抱 え るものであ り、動態的な問題 に対す る最善の解決が独 占禁止法内在的な 考 え方によって与 えられ るという保証がない」 ことか ら、従来の適用除 外制度が存在 し、各監督官庁がその判断 をお こなって きた とする。また、

公取委 は「準司法的機関 として職権行使の独立性 を保障 されて」お り、

そのような機関が、動態的な資源配分状態の望 ましさとい う政治的・ 行 政的な判断 を下す主体 としては適当ではな く、む しろ公取委が事業法が 適用 される分野 に独禁法 を適用することは、「事業法的世界への侵入」で あるとす る。 L

この考 え方の背景 には、動態的効率性の達成 こそが市場の本来の機能 であ り

(10、

その動態的な資源配分状態の望 ましさについて、公取委 はそ の判断を行 う主体 として望 ましくな く、政治的意味 を持つ秩序形成 にか かわ る判断 は、政治的な責任 を負 うことが可能である各監督官庁が行 う べ きであるという考 え方がある。

この考 え方の問題点 は、独禁法の「静態的性格」か ら事業法 と独禁法

が交錯する領域 については、公取委 は介入すべ きではない とする点であ

(9)

る。 この点 につき、従来事業法 によって規制 されてきた分野 は、市場の 失敗 に関連す る問題であ り、 この分野 にカルテル規制 をはじめ とす る独 占禁止法 に基づ く規制 を行 う場合、 この「市場 の失敗 に関連す る諸問題 をどう独 占禁止法解釈の中に取 り込むのか という課題が発生」するとさ れ、 2条 6項 における「公共の利益」 を自由競争秩序 を意味すると解釈 し続 ける場合 にはもとより、「公共の利益」を 2条 6項 において積極的に 位置づ けた として も、 「 コス ト Jが 発生す るとしている

(11ヽ

しか し、独禁 法が「静態的性格」のみを有するものなのか疑間であ り、 また仮 に「静 態的性格」 を有す るものだ として も、それにより事業法が独禁法 に優先 する根拠 とはな らない。独禁法 において、動態的効率性 は 「公共の利益」

ない し「競争の実質的制限」の解釈 として取 り入れ ることは可能である。

また、それが現状 において行われてお らず独禁法 にそのような限界があ るとした場合 には、すべての独禁法 に基づ く規制が無意味な もの となる。

さらに、「 コス ト」の意味 について もそれが発生す ることにどのような問 題点があるかが不明である。私見では、 2条 6項 における 「公共の利益」

とは、原則 として自由競争秩序 に反することを指すが、例外的に、 自由 競争秩序の維持 と当該行為 によって守 られ る利益 とを比較衡量 して、 「一 般消費者の利益の確保」「国民経済の健全で民主的な発達の促進」という 究極の目的に実質的に反 しない と認 められ る例外的な場合 を独禁法の適 用か ら除外する趣 旨であ り、その違法性 を阻却す る意味があると考 えら れ、当該行為が独禁法の究極 目的に合致す るか否かは、被審人 ないし被 告側 に証明責任が存在す ると考 える

(12、

この場合、事業者 は、当該行為 が「公共の利益」 に反 しないことの証明 を求 められ ることとなるが、そ の場合 にも「 コス ト」が発生することとなるのであろうか。

16)事 業法優越説

この考 え方は、平成 13年 6月 に改正 された電気通信事業法 に関す るも

のであるが、同法 には、「公正な競争の促進」がその目的 として掲 げられ

(10)

規制産業 に対す る独禁法の適用―独禁法 と事業法の関係 に関す る試論 ていることか ら、同法 は独禁法 と「その趣 旨を同 じくする法律であるこ とが明確 になった」とし、「電気通信事業法 は広義の競争法の うち電気通 信事業分野 の規制 を担当す るもの」であることか ら、「『一般競争法』で ある独 占禁止法 との関係ではいわば『特別競争法』の地位」 にあるとす るものである。つ まり、電気通信事業法 においてその正当性が認 め られ た行為 は、同時 に独禁法上 も合法 と認 め られるべ きであ り、そこに独禁 法の介入の余地 はない とす るものである

(13ゝ

しか し、 この考 え方には次のような問題がある。電気通信事業法 は、

その目的 として「電気通信事業の公共性 にかんがみ、その運営 を適正か つ合理的な もの とす るとともに、その公正 な競争 を促進することにより、

電気通信役務 の円滑な提供 を確保す るとともにその利用者の利益 を保護 し、 もつて電気通信 の健全 な発達及び国民の利便 の確保 を図 り、公共の 福祉 を増進す ること」 を挙 げているが、 この目的 によ り電気通信事業法 が、独禁法の特別法の地位 にあるとす るには論理の飛躍がある。 この目 的規制が どのように解釈 され るものなのか、特 に独禁法の最終 目的であ る「一般消費者 の利益の確保」「国民経済の健全で民主的な発達の促進」

との統一性がみ られるものなのか、 ということについて明 らかにす る必 要がある。 また、個別 に見て も、例 えば電気通信事業法 19条 では事業者 が届 け出た料金 につき、電気通信回線設備の使用の態様 を不当に制限す るものであるとき、特定の者 に対 し不当な差別的取扱いをす るものであ るとき、他の電気通信事業者 との間に不当な競争 を引 き起 こす ものであ り、その他社会的経済的事情 に照 らして著 しく不適当であるため、利用 者 の利益 を阻害するものであるときな どには、その変更 を総務大臣は事 業者 に命ず ることがで きるとしているが、 これ らの規定が独禁法の内容 をすべて含む もの といえない ことは明 らかである。両法 は、その目的に おいて、また個々の条文の内容 においても、同一性があるとは認められず、

したがって、電気通信事業法が独禁法の特別法であるとすることはできな

(11)

いであろう。

また、事業法 と独禁法の関係一般 につ き、 「独禁法 は、各事業法の規制 の目的 と趣 旨に矛盾 しない限度で適用 されるべ きであ」り、「独禁法 はわ が国の法秩序 を前提 として解釈す ることが要請 されている」 ことか ら、

「事業法で、競争制限行為 を強制又 は許容 し、競争制限行為 を前提 とし てある種 の法政策 を実現 しようとしていることが立法者の意思であるこ とが判断で きれば、独禁法 はその立法者の意思 に従 うことが要請 されて いる」 とし、両方が交錯する領域 については、独禁法の適用はない とす る考 え方がある

(14、

また、 この考 え方 は、同様 に、事業法 において独禁 法 と同様 の もの と思われる条文が存在する場合、 「裁判所 における規制実 態法の競争概念の解釈 において、事業法の解釈 は独禁法か らだけ導かれ るものではな く、又行政 レベルにおける解釈 においては、事業官庁の解 釈 を公正取引委員会 は尊重すべ きである」 とする

(10。

この考 え方に対する疑間 として、次の点が挙 げられる。第一 に、前者 の意見 について、その理 由 として、独禁法の目的規定 を考慮することが 必要であ り、事業法 に基づ く行為 については独禁法でいうところの「保 護 に値 しない競争」であるとしているが、事業法 において許容 される競 争 そのすべてが独禁法 において「保護 に値 しない競争」である、つ まり

は独禁法の適用対象外であるとしていることである。つ まり、なぜ、事 業法が、「わが国の法秩序」を形成 しうるかが不明である。 また、監督官 庁が当該事業法 を適切 に運用 していない場合 にも、独禁法 は適用 されな いのであろうか。第二 に、後者の意見について、その理由 として、事業 法の解釈 とエ ンフォースメン トは、事業官庁がその権限 と義務 を有 し、

かつ、公取委 は各種事業法 に基づ く行政責任 を期待 されてお らず、 また

その専門的能力・ スタッフを有 していない ことをその理由 として挙 げて

いるが、実態面 としてそのような見解 もあ りうるが、両者の法 目的の差

異 はどのように考慮す るのか とい うことである。 この点 につ き、事業法

(12)

規制産業に対する独禁法の適用―独禁法と事業法の関係に関する試論 と独禁法の秩序 は、 「当然 に異なることがあ りうる」 00と しなが ら、事業 法 に基づ く解釈 を独禁法 に優先 させ るべ きとすることに矛盾があるよう に思われ る。

2.事 業 法 と独禁 法 の 関係 に関す る私 見

上記の検討か ら、私 は事業法 と独禁法の性格の差異か ら、両者 はその 条文 に同様 の規定が存在す る場合であって も、重畳的 に適用 され る、つ ま りは競合説 と同様 の考 え方 を採用す る。

上記の各意見か らみて、事業法 と独禁法の関係 を結論付 ける理由 とし て、二つの側面がある。ひ とつは、事業法 と独禁法の法 目的の差異・ 性 格か ら、 もうひ とつは法の適用の実態・ 運用の側面か らである。

第一 の側面 について、例 えば電気通信事業法 は、 1条 でその目的 とし て、 「電気通信事業の公共性 にかんがみ、その運営 を適正かつ合理的な も の とするとともに、その公正な競争 を促進す ることにより、電気通信役 務 の円滑な提供 を確保 す るとともにその利用者 の利益 を保護 し、 もつて 電気通信の健全な発達及び国民の利便の確保 を図 り、公共の福祉 を増進 す ること」 を挙 げてお り、各種事業法 と独禁法の目的は、一見重な り合 うと思われ る部分 も確かに存在す るが、その一方で異なる側面 も存在す ることが挙 げられ る。電気通信事業法 は、「公正 な競争 を促進す る」によ り「利用者の利便」「電気通信事業の健全 は発達」す ることをその目的規 定 しているが、独 占禁止法がその目的 としている「公正且つ自由な競争 を促進」することにより「一般消費者の利益」「国民経済の健全で民主的 な発達」す ることとい う文言 との関係が明 らかではない。 また、実体規 定、例 えば事業者が届 け出た約款 に対す る変更命令の基準 において も、

電気通信事業法 と独禁法 は必ず しもその基準 が二致す るわけではない。

他の事業法 において も同様 の ことが言 える。

(13)

第二の側面 について、事業法の運用 に関す る実態、公取委の実状か ら、

両者の関係 を結論付 けるべ きではない と考 える。監督官庁 について、事 業法 に基づ く規制 において専門性・ 技術性 に優れ るな どの利点が存在す るといった ことについて も疑間が呈 され、両者が「棲 み分 け」 を行 う理 由は見当た らない。 また、事業法 に基づ く規制 を受 ける事業者が、事業 法 と独禁法の「板 ばさみ」になることを避 けることの必要性 について も、

それは憲法上 において も合理的な理由があれば許 されるものであ り、事 業法 に基づ く行為であって も、それに独禁法の適用が行われる場合があ

ることを認識することで足 りるとい うべ きである。

Ⅲ   航 空法 にお け る運賃認 可 と独禁法

上記の事業法 と独禁法の関係 についての検討 に基づ き、以下では、航 空法 に基づ く認可が行われた航空運賃の設定行為 に対 し、独禁法の適用 可能性 を検討することとす る。

平成 11年 航空法改正 により、航空事業 について事業免許 を許可制 に改 め、また、運賃 について も届出制 とした。ただ し、航空法 105条 2項 によ り、事業者が届 け出た料金が「一   特定の旅客又 は荷主 に対 し、不当な 差別的取扱いをするものであるとき     社会的経済的事情 に照 らして 著 しく不適切であ り、旅客又 は荷主が当該事業 を利用することを著 しく 困難 にするおそれがあるものであるとき   三   他の航空運送事業者 との 間 に、 不当な競争 を引 き起 こす こととなるおそれがあるものであるとき」

には、国土交通大臣はその変更 を命ずることがで きると規定 された。航 空法 においては、 109条 に基づ く事業の継続が困難 な路線 に関す る協定、

国際運輸協定・ 国際運賃カルテル以外、独禁法の適用除外 は認 め られて

いない。現在、平成 11年 改正航空法 に基づ き、各航空会社 は、国内路線

について、予約 日な どを基準 として様々な運賃設定 を行 っている。

(14)

規制産業に対する独禁法の適用―独禁法と事業法の関係に関する試論 その中で平成 14年 9月 30日 に公取委 は、東京・ 九州間の国内航空路線 に関 し、新規参入者が運行 している路線 につ き、大手航空 3社 の運賃設 定が私的独 占に違反す る疑 いがある として、問題点の指摘 を行い、 自主 的な改善措置 を採 るよう求 めた

(1つ

。本件 における大手航空 3社 が届 け出 た運賃 は、航空法 105条 に基づ き届出を行 った ものであ り、それに対 し、

105条 2項 に基づ く変更命令 は下 されていない。

この事例 は、公取委 は勧告・ 警告・ 注意 といった独禁法 に基づ く措置 を とった もので はないが、航空法 と独禁法の抵触 とい う問題が具体的に 生 じた ものである。本件では、大手航空 3社 の運賃設定 に対 し、航空法 には違反 しない と判断 された、ない し、 まだ具体的な措置が とられてい ない状態 において、独禁法の適用の可能性が検討 されている。

これ まで航空法 105条 2項 に基づ く運賃変更命令 は下 された例 はない。

しか し、航空法 に則 つた行為であって も、今後 はそれに対 し、独禁法 を 適用する可能性がある。上記で検討 した ように、事業法 と独禁法の関係 につき、競合説 を採 る場合 にはその可能性が高 まる。

以下では、具体的に、現在 の航空運賃の設定 につ き、航空法 と独禁法 の適用がいかなる関係 にあるか、 ということにつ き、上記大手航空 3社 の運賃設定 に対する独禁法・ 航空法の適用可能性 と新たなる問題 として 単独路線 にお ける運賃設定 に対す る独禁法・ 航空法の適用可能性 につい て検討することとす る。

1。 大 手航 空 3社 に よる新規参入者 に対 す る運賃設定 に対 す る 独 禁法・ 航 空法 の適 用

上述 した大手航空 3社 による新規航空会社への対抗的価格設定の概要 は、以下の ものである。

東京・ 宮崎間の平成 14年 8月 に新規参入 したスカイネ ッ トアジア航空

(15)

は、普通料金 21,000円 、 2回 回数券の場合片道 あた り 18,500円 とい う運 賃設定 を行 っていた。それに対 し、大手航空 3社 は、それ まで 31,000円 であった普通料金 を平成 14年 10月 か ら 27,900円 に引下 げ、かつ、 ほぼ全 便 に関 し、特定便割引料金 を平成 14年 10月 まで は 23,500円 、 10月 は2,2000 円、 11月 は 18,500円 に設定 した。 また、大手航空 3社 は、同様 の行為 を スカイマークエアラインズが就航 した東京・ 福岡間、東京・ 鹿児島間に おいて も行 っていた。

この ような事態 に対 し、公取委 は、 「大手航空 3社 の市場 における地位・

状況。総合的事業能力、当該運賃水準、新規参入者 に対する影響等か ら みて」、当該対抗的価格設定が私的独 占に該当す る可能性があるとして、

大手航空 3社 に「 自主的な改善措置」 をとることを求めた。大手航空 3 社 は、 この要請 を受 けいれ、平成 14年 12月 か ら当該 3路 線 の特定便割引 運賃 を引 き上げた。

以下では、このような大手航空 3社 の対抗的価格設定 に対する独禁法・

航空法の適用の可能性 について検討す ることとす る。

(1)独 禁法適用の可能性

公取委 は、本件 において「特定便割引 として、新規参入者の設定 して いる割引運賃等 と同等又 はこれを下回る割引運賃 を設定 している事実」

を指摘 し、併せて、他の特定便割引運賃 と比較 して、 「新規参入者 と競合 がある路線 の割引の程度が大 きく、一部 の路線 の運賃水準がコス トか ら 見て も低 い もの となってお り、 さらに、東京―宮崎・ 鹿児島路線のみを 対象 としたマイレージの優遇 を行 うな どの事実」が認 められた としてい る。 これ らの認定事実か ら、大手航空 3社 の対抗的価格設定 について、

私的独 占 として規制す ることは可能であろうか。

私的独 占の成立要件 は、手段 を問わず、他の事業者の事業活動の支配・

排除 を通 じ、一定の取引分野 における競争 を実質的 に制限することであ

る。 これ らの要件の うち、「排除」については、違法 となる排除行為 と正

(16)

規制産業に対する独禁法の適用一独禁法と事業法の関係に関する試論 当な事業活動 との差異 をどのように捉 えるかが問題 となる。私的独 占に おける排除行為 については、「人為性」に存在の有無がそのメルクマール とされ るカメ

1助

、 この「人為性」 とはいかなる場合 に認 め られ るかは明 ら かではない。それでは、本件 において、当該行為が、不当廉売な ど不公 正な取引方法 に該当 しない とした場合

(19、

この「人為性」は認 め られ る であろうか。° ヽ

既存大手会社であつて も、新規参入者 に対抗す るための価格設定 は、

原則 として自由である。良質・ 廉価 な商品・ サー ビスを提供す ることに よ り、新規参入者 を排除 した として も、それは正当な事業活動であ り、

その結果 として消費者が不 U益 を受 けることとな り、独禁法 1条 に規定 さ れている本法の目的を達成す ることとなる。本件 における大手航空 3社 の対抗的運賃設定 について も同様 の ことがいえる。 しか し、本件 におい ては、対抗的価格設定の水準およびその他の方法 に問題がある。本件特 定便割引 は、新規参入者 と競合がある路線の割引率が他 と比較 して大 き

く、 また、マイレージに関 して も東京・ 宮崎間、東京・ 鹿児島間のみを 優遇 している。 したが って、原則 として、既存 3社 が対抗的価格設定 を 行 うことは自由な行為、つまりは反競争的な行為ではない と認 め られ る ものの、他路線 と比較 して、新規参入者 との競合路線 のみ割引率が低 く、

また、マインージに関す る優遇 を行 っていることか ら、新規航空会社 を

「狙 い撃 ち」 した運賃設定であることが認定 され る。 また、当時 におい

ては、大手 3社 は、便数の多 さや空港設備の利用状況、機内サー ビスな

どの面か ら、実質的には新規参入者 と比較 してより安 い運賃 を設定 して

いた もの とみなす ことがで きる。 さらに、大手 3社 は共同で市場 を支配

しているもの とみなす ことが可能である。 3社 間 に意思の疎通が行われ

ていな くとも、 1社 の行動 に他社が追随することはこれ までの同調的な

運賃設定か ら明 らかである。 1社 が新規参入者 に対抗す る運賃設定 を行

うことに他社が追随 した運賃設定 を行 うことは明 らかであ り、そ こに共

(17)

同の市場支配力が認定 され、その共同の市場支配力 を通 じた、新規参入 者の排除が行われている。以上のことか ら、総合的に大手 3社 の対抗的運 賃設定 には、新規参入者 を排除する 「人為性」が認 められると考 えられる。

私的独 占の成立要件 としては、他 に「一定の取引分野 における競争の 実質的制限」 を満たす ことが必要であるが、本件 においては、新規参入 者 と既存大手 3社 の競合路線 において、新規参入者が排除 される可能性 が認 められ ることか ら、 この要件 を満たす。

したがつて、本件大手航空 3社 による対抗的価格設定 は、私的独 占に 該当す るもの と考 えられる。

(2)航 空法適用の可能性

次 に、本件大手 3社 の運賃設定 に対 して、航空法 に基づ く運賃変更命 令 を下す可能性 について検討する。

航空法 105条 に規定 された基準 については、「旧航空法で規定 されてい た認可運賃のあ り方に競争導入 とい う現実 を加味 した上で運賃 について の許容 される幅 を示 した もの と思われ」、「変更命令の基準 は多 くは独 占 禁止法 (正 確 には公正取引委員会告示 による『不公正 な取引方法』 )で 指 定 された事項 と重複する」 とし、独禁法の規定 と同様 の趣 旨を規定 した

ものであるとする見解がある

121、

しか しヽ航空法 は 1条 における目的規定か らす ると、独禁法 とは必ず しもその趣 旨が同 じであるとは言 えない。特 に、勝 U用 者の利便 の増進」

を図ることがその目的のひ とつ として挙 げられてお り、独禁法の目的に ついて通説がい うところの独禁法の執行 による競争秩序の維持 による一 般消費者の利益 とは差異があるように思われ る。また、航空法 105条 の文 言か らみて、その内容 は必ずしも独禁法 と重複する内容 を規定 していない。

また、平成 11年 航空法改正 にあた り、航空局長の私的諮問機関である

「航空輸送サービス懇談会」では、航空法 105条 に基づ く運賃変更命令制

度の在 り方について、次のように論 じられている。

(18)

規制産業に対する独禁法の適用―独禁法と事業法の関係に関する試論

「特定 の旅客又 は荷主 に対 し、不当な差別的取扱いをするものである とき」 (105条 2項 1号 )に 該 当す る場合 とは、「届出された運賃・料金が、

合理的かつ正当な理 由無 く、特定の旅客又 は荷主 を優遇又 は冷遇す るも のであるとき。なお、合理的かつ正当な理由の妥当性 については、個別 具体的な事例毎 に判断 され るものであるが、基本的 には運賃・ 料金体系 全体での整合性、社会政策上 の観点、社会通念等 を勘案 し、総合的に判 断す る。 」「社会的経済的事情 に照 らして著 しく不適切であ り、旅客又 は 荷主が当該事業 を利用す ることを著 しく困難 にす るおそれがあるもので あるとき」 (105条 2項 2号 )│こ 該 当す る場合 とは、 「届出された運賃・

料金が、合理的かつ正 当な理 由無 く、旅客又 は荷主の利用 を著 しく困難 にす るおそれのあるものであるとき。なお、合理的かつ正当な理由の妥 当性 については、個別具体的な事例毎 に判断されるものであるが、基本 的には当該路線 における路線特性、運賃の多様性、 コス ト等の状況、他 路線 との比較、社会通念等 を勘案 し、総合的に判断する。」「他の航空運 送事業者 との間 に、不当な競争 を引 き起 こす こととなるおそれがあると

き」 (105条 2項 3号 )│こ 該 当す る場合 とは、「届出された運賃・料金が、

航空会社間の公正な競争 (筆 者注―条文でい うところの不正な競争 を言 い換 えた もの と思われ る )を 阻害す るおそれのあるものであるとき。な お、公正競争阻害性 については、個別具体的な事例毎 に判断されるもの であるが、基本的には当該路線 における路線特性、当該航空会社の市場支 配力、当該運賃・料金設定の意図、当該運賃・料金の継続性、当該運賃・

料金設定が競争事業者 に与 える影響等 を勘案 し、総合的に判断する。幼。」

本件 において適用 され る可能性があるのは、 105条 2項 3号 である。上 記懇談会 は、その例 として、 「当該路線 においてプライス リーダーたる一 定の市場支配力 を有する航空会社の路線 に他の航空会社が新たに参入 し、

価格競争 を開始 した場合 において、市場支配力 を有する航空会社が当該

市場支配力の維持等 を目的 として、不当に運賃・料金 を引 き下 げる場合」

(19)

を挙 げている。 この考 え方にしたがって考 えた場合、本件大手 3社 の運 賃設定 は、その共同で有する市場支配力 を維持する目的 をもって、行わ れた もの とみることがで き、 また、航空法 に基づ く運賃設定 に関 しては 実施 月の 2カ 月前 まで にその届出を行 うことか ら、少な くとも 1カ 月は その運賃が継続 され、その後 も継続す ることが見込 まれ、それにより新 規参入者 の経営に打撃 を与 えることが予想 され、「総合的に」 勘案 した場 合、本件 は、 この例 に該 当す るとみ ることがで きる。 したがって、本件 運賃設定 に対 しては、 105条 2項 3号 に基づ き、運賃変更命令 を下す こと が可能であった と結論付 けられる。

2.単 独路 線 に お け る運賃 設定 に対 す る独 禁 法・ 航 空法 の適 用 上述の公取委 による問題点の指摘 は、大手航空会社 と新規参入者が競 合 している路線 についての ものであった。公取委 の指摘 に対 し、大手航 空会社 は平成 14年 12月 か ら、新規参入者が存在す る路線 に設定 した特定 便割引運賃の引 き上 げを行 っている。現在、東京・ 宮崎便では、スカイ ネッ トアジア航空が設定 している割引運賃 と比べ、大手航空 2社 が設定 している事前購入運賃 はその価格 を上回つている状態である。つ。その他、

大手航空 2社 と新規参入者が競合 している路線 について も、同様 の運賃 設定が行われている。

現在、 これ ら競合路線 については、私的独 占、不当廉売 といつた問題 はない と思われるが、新たな問題 として、 1社 のみが運行 している単独 路線の運賃設定 とその他の競合路線 との運賃設定の格差がある。 この間 題 は、 日本航空 と日本エアシステムの事業統合 の際 にも懸念 されたが、

それ に対 し、統合後 は「他の航空会社 とのすべての競合路線」及び「現

在 JAL及 JASの みが競合 している路線」の全便 に、特定便割引、事前購

入割引 といつた割引運賃を設定するとの対応を当事者は行 うこととした。 う。

(20)

規制産業に対する独禁法の適用一独禁法と事業法の関係に関する試論 この状態 は、現在で も対象 となる席数の多寡 な どの問題 はあるが、ほぼ 継続 されている。

ここで問題 とするのは、大手航空会社が従来か ら単独で運航 している 路線 に関す る運賃設定である。 このような路線 は、いわ ゆる地方路線 に 多 く存在す るものであ り、 この ような単独路線 には往復割引・ 高齢者割 引 は設定 されていて も、特定便割引・ 事前購入割引 といった割引運賃 は 設定 されていない。無論、使用する飛行機の大小・ 数、搭乗率、空港使 用料、飛行距離 といった合理的な理 由か ら割引運賃 を設定す ることがで きない路線 もあろう。 しか し、上記の条件か らみて、乗客一人当た りを 運送す る費用がほぼ同一である路線 おいて、競合路線 については様々な 運賃設定 を行い、かたや単独路線では合理的な理由な く単一の運賃設定 をすることは、独禁法・ 航空法か らみて許 され るのであろうか。 また、

合理的な理由が当事会社 に存在す る場合で も、両法の適用可能性 はない のであろうか。

(1)独 禁法の適用の可能性

この ような場合、独禁法上、設定 された運賃がいわゆる原価割れでは ない場合、第一 に、当該行為が差別対価 に該当す るか否かが問題 となろ う。差別対価 は、一般指定 3項 において「不当に、地域又 は相手方によ り差別的な対価 をもって、商品若 し くは役務 を供給 し、又 はこれ らの供 給 を受 けること」 と規定 されている。差別対価 は、不公正 な取引方法 と

して指定 されている他の類型 と異な り、相手方は事業者 に限定 されてい ない。しか し、差別対価が不公正 な取引方法 として指定 されているのは、

「一方市場で高価格設定 をおこなってお り、他方市場で低価格設定 を行っ ていること自体 にあるのではな」く、 「不当廉売 と同様 に低価格販売 によっ て競争業者の『事業活動 を困難 にさせ ること』が必要である」とされる。つ。

ただ し、他の事業者が現実 に市場か ら退出す ることまでは要 しない。 し

たがって、当該価格設定行為 によ り、低価格が設定 された市場 において、

(21)

競争業者が市場か ら退出する可能性があること、 または新規参入者の参 入 を妨 げる蓋然性がある場合 には、差別対価 に該当す ることとなる。

また、当該行為 に対 しては優越的地位の濫用 に該当す る可能性がある。

優越的地位の濫用 は、 2条 9項 5号 に基づいて指定 されているものであ るが、 2条 9項 5号 は「不当な事業能力の格差の排除の規定が削除 され た ことにより、大規模事業者が、その地位 を濫用 して、中小企業 を不当 に圧迫するおそれ もあ り、そのような事態に対処するために、新たな類 型 として追加 され ることとなった もの」と説明 されている● 0。 そのため、

取引の相手方が事業者である場合 には、適用可能性があるが、相手方が 消費者である場合 には、 その適用の可否が問題 となる。 しか し、立法過 程 においては、事業者対事業者 の取引が想定 されていた として も、当該 行為 において問題 となるように、事業者が消費者 との取引において優越 的な地位 にある場合 にその適用対象外 とす る理 由はない。

優越的地位 の濫用の成立要件 は、第一 に「 自己の取引上の地位が相手 方 に優越 していることを利用」す ることである。単独路線 においては、

取引の相手方 は、他 に容易 に代替手段 を持たない場合、つ まりは当該路 線 を利用せ ざるを得 ない場合 には、当該路線 を運行す る航空会社 の地位 が優越 しているとみなす ことがで きる。第二 に、一般指定 14項 各号 のい ずれかに該当す ることであるが、当該行為 は 3号 「相手方に不利益 とな るように取引条件 を設定」することに該当す る。第二 に、公正競争阻害 性 を有することである。 優越的地位の濫用の公正競争阻害性 については、

現在多 くの学説 において自由競争基盤 の侵害 に求 め られ るとされ

(2つ

、市

場 における具体的な影響 を認定する必要 はない。本件 において、当該行

為 によ り、航空会社 の取引の相手方である事業者・ 消費者 は、合理的な

理由な く割引運賃が設定 されていな くとも、当該路線 を利用せ ざるを得

ず、取引条件の諾否 について自由な判断 をな しえない ことか ら、 これ ら

の要件 を満たす と考 えられる。

(22)

規制産業に対する独禁法の適用丁独禁法と事業法の関係に関する試論

(2)航 空法の適用の可能性

上記運賃設定に対 し、航空法の適用 により、運賃変更命令 を下す こと は可能であろうか。

航空法 105条 の中で、単独路線の運賃設定 に係 る条文 は、 105条 2項 2 号である。 105条 2項 2号 に該当する例 として、上記懇談会報告書は、正 当な理 由のない「旅客又 は荷主の利用 を著 しく困難 にするおそれのある 高額 な運賃・ 料金」 として、 「 当該路線 と路線特性等が同等程度の他路 線 との比較 な どか ら判断 して、合理的かつ正当な理由無 く、旅客又 は荷 主の利用 を著 しく困難 にす るおそれのある高額 な運賃・料金の場合」、勝 U

用者 に不当かつ過大な負担 を強いる運賃・ 料金」 、「抱 き合わせ運賃・

料金 (例 :往 復便運賃のみの設定 )等 の運賃・ 料金であって、合理的か つ正当な理由に基づかない と認め られ る場合」 を例 として挙 げている。

このような解釈 については、 「 この種 の考慮が変更命令基準 に入 り込む こ とは、自由運賃への移行期 における措置 として理解で きるものであるが、

事業者の市場行動の制約 となる可能性 もあることか ら、将来 における再 検討の余地 を残 しているように思われ る。助」とす る見方 もあるが、航空 法 105条 に独禁法 とは異なる視点が含 まれていることが見て とれる。

このような解釈 を採用 した場合、乗客一人当た りを運送する費用がほ ぼ同一である路線おいて、競合路線 については様々な運賃設定 を行い、

かたや単独路線では合理的な理由な く単一の運賃設定 をすることは、運

賃変更命令の対象 となろう。た とえ当該行為 により、競争業者が市場か

ら退出す る可能性がな く、 また、新規参入者の参入 を妨 げる蓋然性がな

い場合であ り、差別対価や優越的地位の濫用に該当 しない場合であって

も、他路線 と比較 し、単独路線 において合理的な理由な く単一の運賃設

定 を行 うことは、「旅客又 は荷主の利用 を著 しく困難 にするおそれ」があ

ると評価 され る可能性がある。ただ し、 この解釈 を採用する際の問題点

として、 「著 しく」という文言 をいかに解釈するか とい う問題がある。 「著

(23)

しく」 という文言 を厳格 に解釈 した場合、当該価格が量的に同等程度の 他路線 よ り非常高い場合 にのみ、 105条 2項 は発動 されることな りそうで ある。 しか し、航空法 は 1条 が法 目的 として、勝 J用 者の利便の増進」を 図ることがその目的のひ とつ として挙 げていることか ら、 「利用者の利便」

を害す るような価格設定である場合 には、「著 し く」の要件 に該 当す るも の として理解すべ きである。

3.航 空法 における運賃変更命令 と独禁法の関係

上述 したように、上記大手航空 3社 の運賃設定に関して、 105条 2項 3 号に基づき、変更命令を下すことは可能であった。 このような事態にお いて独禁法の適用が検討されたのは、事実上、航空法 と独禁法の棲み分 けが行われていたが、国土交通省が航空法を適用する意図が元々ない、

または、その発動をためらったがために、公取委が「いたしかたな く」

独禁法を適用することを検討 したものと考えられる。

しかし、 航空法 105条 における運賃変更命令を発動する基準 と独禁法に

おける不公正な取引方法 とはその趣 旨が同一ではない。 したがって、競

合説を採る場合には、国土交通省および公取委は、航空法、独禁法それ

ぞれに基づき、その権限を発動することを求められる。その結果、航空

事業者が、航空法 と独禁法の「板ばさみ」になるが、それは航空事業者

が両者の規制の趣旨が異なることを認識することで足 り、それは、合理

的な理由があることから憲法上においても許されるものである。

(24)

規制産業に対する独禁法の適用 =独 禁法と事業法の関係に関する試論

Ⅳ   道路 運送 法 にお け る運賃認 可 と独 禁法 一高速バ ス料 金 、 タクシー運賃 の事例 か ら

以下では、道路運送法 に基づ く運賃認可 に関 し、独禁法の適用の可能 性、お よび、道路運送法 における運賃認可基準の解釈 について検討す る こととする。 この問題 を検討する題材 として、実際に事業法 と独禁法の 適用関係が問題 となった高速バス料金、タクシー運賃 に関す る事例 を以 下では検討することとする。

1.高 速 バ ス料 金 にお け る運賃認 可 と独禁法

平成 16年 8月 、仙台 を発着する高速バスに新規参入 した富士交通が民 事再生法 を申請 した。富士交通 は、平成 14年 道路運送法改正 を受 け高速 バス事業 に参入 したが、 この道路運送法改正が当社には逆に作用するこ ととなった。改正 により、高速バス料金 をはじめ とする乗合バスの運賃 に関 し、確定額認可 を原則 とするいわゆる強制運賃制度が上限価格制度 に変更 され、その上限の範囲内での運賃変更は届出制 となった ことか ら、

既存業者が大幅な運賃引下 げを行い、熾烈 な価格競争の結果、新規参入 者である富士交通が体力 を消耗することとなった。

このような価格競争 に対 し、国土交通省 は既存業者 に対 し、運賃変更 命令 を発す ることはなかった。 しか し、公取委 は、平成 15年 5月 14日 に 仙台発着の高速バスを運行 している既存業者に対 し、注意 を行っている。 9L

以下では、当該事例 に対 し、私的独 占に該当す ると判断することが可

能であったか否か、 また、道路運送法 に基づ く運賃変更命令の基準 を解

釈することにより、当該事例 に対 し、運賃変更命令 を下す ことが可能で

あつたか否かを検討す ることにより、道路運送法 に基づ く運賃変更命令

と独禁法の関係 を考察することとす る。

(25)

(1)仙 台発着便の高速パス料金に対す る独禁法、道路運送法の適用 仙台発着便の高速バス料金の経緯 は仙台―福島間 を例 とすると次の よ うな ものである。の。

東北地方の都市間交通 は、新幹線、在来線、高速バス とあるが、 その 値段、所要時間、便数 な どか ら、高速バスが非常 に大 きな役割 を果た し ている。従来、仙台一福島間では、 JRバ ス、宮城交通、福島交通が共 同でその路線 を運行 し、その価格 は片道 1,000円 であった。平成 14年 10月 、 富士交通 は片道 900円 で仙台一福島間の高速バス事業 に参入 し、その後、

富士交通 に対抗 して 3社 が値下 げすれば、富士交通がそれに追 って値下 げし、最終的には片道 800円 、 10枚 つづ りの回数券 を使 う場合 には、両者

とも片道 500円 までその価格 を下 げた。

この ような事態 に対 し、平成 15年 5月 14日 公取委 は、既存 3社 の価格 設定 を含 めた行為が私的独 占につながるおそれがあるとして、 注意 を行 っ た。 その際既存 3社 が、運賃プールを行 っていた こと、新規参入者 と同 等の水準 まで運賃 を引 き下 げた こと、停留所 を設置す るバスプールの利 用に関 し、新規参入者がその利用 を管理者 に申請 した ところ 3社 の同意 を得 ることを条件 として提示 されたために、 3社 に同意 を求めたが速や かに同意 を得 られなかった ことが私的独 占につなが るおそれがあると指 摘 されている。 その後、富士交通 は民事再生法適用 を申請 し、現在では 桜交通 と共同で同路線 を運行 している。 その中で、平成 17年 2月 3日 公取委 は本件 について、 「高速バスの共同運航 に係 る独 占禁止法上の考 え 方 (31」 を踏 まえて、共同運航の運営のあ り方について改善 を図った とし て、審査 を終了 した。幼。現在、富士交通・桜交通、既存 3社 とも片道 800 円、専用回数券 (2枚 綴 り )を 使用す る場合 には片道 550円10枚 つづ り の回数券 を使用する場合 には片道 500円 と同料金 を設定 している。

①独禁法の適用の可能性

平成 17年 2月 3日 公取委報道発表資料によると、仙台一福島間の共同

(26)

規制産業に対する独禁法の適用―独禁法と事業法の関係に関する試論 運行 を行 っている 3社 は、従来運賃収入 をいったんプール した上で、各 社の運行回数比 に応 じて配分す る方法 を採 っていたが、それを「各社が 発行 した乗車券で利用者が 3社 が運行す るいずれのバスにも乗車で きる こととして、運賃収入 を着券清算するなどの方法に変更するとともに、

運賃の設定、回数券の割引率、運行回数等 は、各社が独 自に決定するこ と」、「運賃の設定、回数券の割引率、運行回数等について、運輸局への 認可申請又 は届出の前 に 3社 間で協議 を行わないこと」としたことをもっ て、私的独 占及び不当な取引制限に該当 しない と判断 している。しか し、

このような公取委の判断には疑間が残 る。

公取委 は、上記ガイ ドラインにおいて、「運賃・料金、運行回数又 は運 行系統 を制限す る協定及び路線分割、市場分割 を行 う協定 は、原則 とし て独 占禁止法上問題 となる」 として、運行回数等に応 じて配分する形態 の運賃 プール、その他運賃・ 運行回数 を制限することとなる運賃プール を例 として挙 げている。 しか し、 このような例 に該当す る場合であって も、高速バスの特性 として、 「着地が事業者の営業区域か ら遠隔地 にあ り、

事業者が単独では運行 しに くい場合が多い」ことか ら、「 そうした特性 に 応 じた必要な範囲を超 えない形で行われ る」 「単独では参入 しに くい場合 において、新規路線 と開設するために行われる協定」、当該「協定 を既 に 行 っている事業者が単独では当該協定 にかかる路線 を維持することが困 難 な場合 に行われている当該協定」 については、路線分割、市場分割 を 行 う協定 を除 き、独禁法上問題 とな らない とする。

公取委 は、当ガイ ドラインに照 らし合わせ、本件運賃 プールが運賃、

運行回数 について制限 しない と 3社 が した ことか ら、独禁法上問題 ない

もの と判断 している。 しか し、ガイ ドラインでは問題がない とされてい

るが、単独で当該路線 を運行することが可能 と思われる複数の事業者が

形式は ともあれ、運賃 プール を継続 し、当該路線 を共同運行す ること及

び新規参入者 に対する対抗的価格設定 は、不当な取引制限及び私的独占

(27)

に該当 しないのであろうか。

共同運行が行われ る高速バ ス路線 において、また消費者の利便性か ら、

事実上、その運賃が各社 によ り異なることはない と思われる。 また、共 同運行 である以上、そ こに参加す る事業者間 において運行回数 に関す る 情報交換が行われることが通常であ り、 その際 には、乗客が多い時間 を 除いて、同時の出発が行われないようす る等運行 回数 について参加事業 者の話 し合いが行われ る。新規参入者が当該路線 に単独で参入で きない 場合以外、共同運行が行われることにより、事実上 カルテル と同様の行 為が行われ、その効果が発生す ることは明 らかである● 3ゝ したが って、

そのような場合、当該共同運行 は、不当な取引制限に該当する。

また、既存業者が新規参入者への対抗的価格設定 を行 うことについて も、独禁法上問題 とな りうる。 このような場合、当該行為が私的独 占に 該当す るか否かが問題 となる と思われ る。 しか し、その前提 として当該 価格設定が、不当廉売 に該 当しない場合 に、それを私的独 占 として間疑 しうるか、 とい う問題がある。 この問題 は、上記大手航空 3社 の対抗的 価格設定 について も同様であるが、 この問題 につ き、公取委 は「大手航 空 3社 の市場 における地位・ 状況、総合的事業能力、当該運賃水準、新 規参入者 に及ぼす影響等か らみて独 占禁止法第 3条 (私 的独 占の禁止

)

の規定 に違反するおそれがある」 とするのみであ り、明確 な判断を下 し ていない。

私的独 占の成立要件 は、手段 を問わず、他の事業者 の事業活動の支配・

排除 を通 じ、一定の取引分野 における競争 を実質的に制限す ることであ る。 これ らの要件の うち、「排除」 については、上述の ように「人為性」

に存在の有無がそのメルクマール とされ るが、 この「人為性」 とはいか なる場合 に認 められ るかは明 らかではない。

本件 における対抗的価格設定 に関 し、 この「人為性」 は認 め られ るの

であろうか。平成 15年 5月 14日 の公取委の注意 においては、対抗的価格

(28)

規制産業に対する独禁法の適用一独禁法と事業法の関係に関する試論 設定 と併せて、バスプールの使用 に関 し既存利用者の同意 を得 ることが 条件 とされ、それに対 し既存大手 3社 が それに同意 しなかった こと、運 賃 プール を行 っていた ことをもって、私的独 占に該当す るおそれがある

とされている。上記で検討 したように、現在の既存大手 3社 の運賃 プー ルは、独禁法上問題がない もの と公取委 は判断 しているが、単独で運行 可能であるにもかかわ らず、運賃 プールを継続 している場合には、不当 な取引制限に該当 し、そ こには新規参入者 を排除する意図が認められる。

現在共同運行 を行 っている既存業者が、単独運行す る場合 には、新規参 入者 とほぼ同様 の競争条件 となる。 したがって、その市場支配力がな 々 なることを防止するために、共同運行・ 運賃プールを継続 しているとす れば、そ こに「人為性」 を認 めることがで き、私的独 占にいうところの

「排除」 に該当すると考 えられ る。

私的独 占の第二の成立要件 として、 「一定の取引分野 における競争 を実 質的に制限す ること」が必要であるが、既存 3社 が対抗的設定、共同運 行 0運 賃 プール により、新規参入者 を排除する可能性が高い と認 められ れば、 この要件 を満たす こととなる。平成 15年 5月 14日 の公取委の指摘 以降、独禁法上不当 とみなされ うる共同運行・ 運賃プール (運 行 回数比 に応 じて運賃収入 を配分するもの

)、

対抗的価格設定が継続 され、実際 に、

新規参入者 は民事再生法の適用 を申請 している。 このような事態におい て、新規参入者の経営上の問題等が生 じていなかったのであれば、明 ら かにこの時点 において も私的独 占の適用が可能であった と言 える。

②道路運送法の適用の可能性

道路運送法 9条 は、高速バスを含む乗合バスについて、総括原価方式

による運賃の上限を認可 し、その上限の範囲内で事業者は運賃設定を行

い、当該運賃を国土交通大臣に届出を行 うことを定める。また、 5項 に

おいて、届け出された運賃が、 「 1.社 会的経済的事情 に照 らして著 しく

不適切であり、旅客の利益を阻害するおそれがあるものであるとき、 2.

(29)

特定の旅客 に対 し不 当な差別的取扱 いをす るものであるとき、 3.他 の 一般旅客 自動車運送事業者 との間に不当な競争 を引 き起 こすおそれがあ るものであるとき」 には、国土交通大臣は変更命令 を下す ことが定め ら れている。

本件 における既存業者 による対抗的価格設定 との関連 において問題 と な りうるのは、当該対抗的価格設定が、 「他の一般旅客 自動車運送事業者

との間に不当な競争 を引 き起 こすおそれがあるものであるとき」 に該当 す るか否か とい うことである。この条文 につ き、 「公正 な競争 を阻害する か否か (お そ らく不当な競争 と同様の意味 と考 えられる一筆者注 )に

いては、個別具体的な事例 ごとに判断 されるものであるが、基本的には 届 け出た運賃等について、原価 を償 うことが可能 か どうか、路線 の特性、

その設定又 は変更の意図、継続性及び届 け出た運賃等が他の一般乗合旅 客 自動車運送事業者 に与 える影響の度合等 を勘案 し、 総合的に判断するも の とする」との考 え方が表明されている●0が、その内容 は明 らかではない。

道路運送法 1条 は、 「道路運送事業の運営 を適正かつ合理的な もの とす ることにより、道路運送の利用者の利益 を保護するとともに、道路運送 の総合的な発達 を図 り、もつて公共の福祉 を増進す ることを目的 とする」

としている。 この目的規定 においては、「道路運送の利用者の利益」が法 目的のひ とつ として挙 げられてお り、 この法 目的 を反映 した「不当な競 争」の解釈が求められ る。利用者の利便 と言 った場合、二つの側面があ るように思われる。 ひ とつは、運賃 の低下であ り、 もうひ とつは運送の 安全性・利便性である。利便性 には、バス輸送であれば、定期的な運行、

必要最小限の遅延 といつた ことが挙 げられ る。前者 について言 えば、本

件 においては、既存業者 と新規参入者 との間で激 しい価格競争が行われ

た ことによ り、運賃が低下 し、その利益 を利用者 は享受 している。 それ

に対 し、後者 については、新規参入業者の参入 により利用便の数が増加

した ことにより、その利便性 を享受 している。 しか し、届 け出 られた実

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