教育舞踊における今日的な中心課題 について〈その2>
一松本式舞踊課題学習法に関する〈対極的動き等>
の再検討を中心として 堀 野 三 郎*
(平成2年10月31日受理)
On the Current Main−Problems in Educational Dance 〈2>
Focusing on Reexamination of〈Contrasted Limitational Moving and Others>in Matsumoto s Dance Leaming Method of Problem Solving
Saburo HORINO
(Recieved October31,1990)
1 序論と研究目的
本論は,既報の小論「教育舞踊における今日的な中心課題について」〈その1>一松本式 舞踊課題学習法に関する〈まるごと体験・運動課題・極限的動き>の再検討を中心として 一(長崎大学教育学部教科教育学研究報告第14号 1990.3)で特に中心課題の一つであっ た「極限的動き・表現質の授業活用」に関連する課題の継続的・発展的研究である。
前論では,VTRによる公開授業記録からの授業分析法による理念的・実証的考察を中心 として検討を行った。その結果,前記の課題については,「極限的動き・表現質に関する学 習課題は,(ここで研究対象とした公開授業での授業展開で観られた,〈極限的な動きの意 味を物理的拡大の動きと解する限り>においては,)毎時常に必ず必要とはいえないこ
と」1)を見出だした。
しかし,物理的拡大の意味での極限的運動課題が毎時常に必要ではないにしても,松本 の意図する「二つ以上の対極の性質を含む運動の連続性」2)を拡大しての極限的な運動課題 は,単に物理的拡大の動きのみを意味するものではないと思われる。また,松本のいう「対 極の性質をもつ二つ以上の動きのよい連続体」3)での「対極の動き」の意味についても筆者
にとっては不明な点(詳細は後述)が多い。
従って,本論の研究目的は,次の2点に集約される。即ち,
*長崎大学教育学部
[目的1]
[目的II]
松本式舞踊課題学習法(以下「松本式課題法」と略す)における極限的動き・
対極の動き等に関する舞踊用語の普遍性やその具体例の妥当性等についての 検討考察を行うこと。
舞踊の効果的表現要素に関する実証例について,本主題との有意な接点を見 出だすこと。
II研究方法
前述の2つの研究目的の中で,[目的1]に対応するものとして下記の主に[方法1]に よる検討を,[目的II]に対応するものとして主に1方法2]による検討を行い,それらの 検討結果を援用して集約的考察を行った。
[方法1]:下記の文献資料等に基づいて,「極限」「対極」「よい連続」等に関連する語 句の語義的抽出と普遍的総括を行い,次いで,松本が例示した「対極の動き」
の具体例のいくつかについて理念的な検討考察を行った。
(1)新村出編「広辞苑」岩波書店1969.
(2)松本千代栄編著「ダンス表現学習指導全書」大修館書店1982.
(3)V.プレストン著・松本千代栄訳「モダンダンスのシステム」大修館書店1976.
(4)V.PRESTON著「A Handbook for Modem Educational Dance」Macdonald&
Evans LTD.1963.
励㊦の鋤窃ゆ
[方法2]
︵1︶︵2︶
竹内敏雄編修「美学事典」弘文堂1985.
松本千代栄著「舞踊表現の構造と要素化」女子体育 Vo1.21−4,1979.
松本千代栄著「舞踊課題と課題解決学習」女子体育 Vol.24−3,1982.
松本千代栄著「舞踊の技術論」女子体育 Vo1.14−8,1982.
松本千代栄著「おどり・つくり・みる」女子体育 VoL29−3,1987.
堀野三郎著 「教育舞踊における今日的な中心課題について」〈その1>一松本式舞 踊課題学習法に関する〈まるごと体験・運動課題・極限的動き〉の再 検討を中心として一長崎大学教育学部教科教育学研究報告第14号 1990.
舞踊の効果的表現要素に関する既報の下記の3つの研究資料結果に基づいて 実証的な検討考察を行った。(なお,下記の各研究方法に関する具体的な詳細 については,各原資料を参照されたい。)
堀野三郎著 「舞踊観照における効果的表現の要因について」〈その1>一舞踊運動・
内容の印象に関する量的分析を中心として一長崎大学教育学部教育科 学研究報告第23号1976.より,
「4つの大学生ソロ舞踊作品の各作品における214名・計856例の作品 評価に関連する項目の傾向と作品間の傾向比較」についての総括的な 図と総括的な考察結果とを援用して,本主題との接点を検討した。
入江昌敏著 「舞踊の効果的表現に関する一考察」一VTRによる同一舞踊作品の観 照と分析一長崎大学教育学部昭和63年度卒業研究論文1988.より,
「3人のプロ・ダンサーによる同一舞踊作品『ボレロ』から同一抜粋 部分のVTR観照における13名・計39例の観照結果の比較分析」の内で,
(3)堀野三郎著
特にく表現内容の感じと動きの感じとの関連比較>についての各図と その考察結果とを援用して,参考的に本主題との接点を検討した。
「舞踊表現における効果的表現の要因について」<その2>一舞踊運動 過程の質的分析一長崎大学教育学部教育科学研究報告第24号1977.よ
り,
前論(1)より更に精選抽出したr3つの大学生ソロ舞踊作品の各作品に おける115名・計345例の作品評価の内,特に〈動きの過程の感じに関 する有意相関項目〉,〈作品支持順位第一位作品(作品II)を中心とし た各作品の実態と傾向比較〉,更に〈各作品の運動過程を有意性の高い 3つの対比的な運動要因からフィルム・カウント法により,分析と連 合を行った連合型>についての例示図及び総括的な図表と総括的な考 察結果とを援用して,本主題との接点を検討した。
皿 結果の考察
[1] 「極限的動き」「対極の動き」等に関する舞踊用語の普遍性について:
<1〉「極限」「対極」等に関連する語句の一般的語義と対極的動きについての考察に関し て:
『広辞苑』より本主題との関連箇所を抽出列記すると次の通りである。
(1〉「極限」一①かぎり.はて.極度。
②[数]・ある量が一定の規則の下に,ある確定しだ量に限りなく近づ く場合,後者を前者の極限という。
(2)「極」一一①物事の最上・最終のところ.きわまり.きわみ.はて.かぎり。
<以下②一⑥を略す>
(3)「対極」一反対の極。
(4)「対称」一一①つりあうこと.かなうこと。
③[数]定点0を通る直線上で,0に関してそれぞれ反対の側にあっ て0から等距離の二点を,0に関し互いに対称な点といい,0を対 称中心という。〈以下,他の軸・面に関する説明を略す>
〈その他②,④を略す>
(5)「対照」一一①他と照らし合わせること.見くらべること.くらべ合わせること。
②互いに対立する二つの要素がはっきりすること。
(6)「対比」一一①二つのものをくらべること.比較すること。
②相対すること。
③[心](contrast)ちがった性質(または量)のものを並べると,そ の差異が著しくなる現象。
同時的な対比の他に,時間的に前後した継時対比(筆者註:
異時対比)ある。
(7)「対応」一一①互いに向き合うこと.相対すること。
②相等しいこと.っりあうこと。
③相手に応じて事をすること。
(8)「対語」(たいご;ついご)
(①向かい合って懇談すること.面語。)
②熟語で,事物が相対するように構成されたもの。
大小(対比).桃李(類似).花鳥(接近)の類。
③意味の上で相対応する語。
④アントニム(反義語)。[C.F.シノニム(同義語)]など。
以上の各語句で,特に「極限」や「対極」に関連が深いと思われる語意説明にアンダー・
ラインを付した。これらの視点から語義を次のように集約した。
1.「極限とは,ある基準(基点)から極度に(最大限に)離れた物事の最終のところ(状 態)のこと」であり,「対極とは,対応する事象がある基準(基点)を中心としてそれぞ れ反対側に極度に離れあった二つの最終点のこと」と規定できる。
2.松本のいう「対極の質を拡大しての極限的動きへの挑戦」4)は,単に一方側のみへの極 限化だけでなく,他方側への挑戦も同様に重要であることは論を倹ない。と同時にこの 両面的極限化の活動こそが,より拡大化された極限感覚を体得できる道であるともいえ る。その意味からは,前論で採り上げた公開授業時での〈連手した円形密集隊形から,
集団としての極大的な外方拡大の隊形移動や,個としての各人各部位での極大的な外方 伸展の動き>は,その一面を示すものではあるが,同時に,連手した円形隊形から,集 団としての求心的やある焦点へ向かっての極小的な密集移動や,個としての内方収縮的 な縮小の動きや,また単に空間的な大・小のみならず,高・低,速・遅,強・弱,全身 的・部位的,急激的・漸次的等々のその他の対比的な性質を含む空間的・時間的・力性 的・身体的・美的形式的な視点での両側面にわたる課題化も論理的には必要である。
3.これらの対極的動きは,論理的には予測し,また学習内容に取り入れたとしても,松 本のいう「常に毎時の授業ごとに,舞踊運動の表現質として内観・感受・習熟させるこ と」が両面にわたる極限的動きの知覚という視点で,短時間内で実践可能か,またその
学習効果も実現可能かという点に関しては問題点も多いと思われる。
前述の公開授業においても,活動メニューとしては拡大・密集,速・遅,強・弱,全 身的・部位的等々の前述の対比的な,両面的な運動要素を採り入れての活動展開がなさ れたことは事実である。しかし,それらが学習効果として,自律的な表現としての極限 的動きの実現や両極の動きの定着として結実(内観・感受・習熟)しなかったのは何故 か。その理由としては前論⑩で触れた多くの視点が考えられるが,その他に,根本的な 理念的課題として,「対極的動き」を原拠とし,しかも「運動課題」からの課題化を主軸 とした展開視点そのものに無理・困難性が存在するのではないかと思われる。
①例えば,極限的な大・小の動きについて,外方への極大的伸展の動きは,一般には 後者に比して,踊り手の筋肉運動感覚の覚醒が容易であり,その場での動きや移動を 伴って感受され易い。他方内方への極小的縮小の動きは,身体構造上前者に比して著 しく可動性が小さく,特に運動課題のみで実施する場合は,とりわけ初心者にあって は上肢・上体中心の縮小に止まる場合も多い。これらの傾向改善への方策の一つとし ては,<外敵の攻撃を受けたイソギンチャクが,一瞬にギュッと小さく縮む>とか,〈擬 足を伸ばしたアメーバーが,餌を見つけて触手をヒューウと伸ばし,次第にジワジワ
と餌を体内に取り込むように捻れ縮む>等のイメージ課題・場面設定と共に課題化す る際は,上肢・上体以外の頭・肩・手指・肘・膝・足首等のより微細な身体部位の使 用や微妙な時間的・力性的・美的形式的等の要素を複合した動き等もより自覚的イメー ジを伴って,内方への縮小が実現され易い。
このように,「一のように…」というイメージ(表現内容)を伴った,即ち「イメー ジ課題」による課題展開の有効性が再認識される。
②また,一般に,エフォート性格における内在的性格傾向(強く・直線的で・素速い 等)に関連する動き,即ち俗に〈スポーティーな動き>等は,初心者にとっても実現 容易な動きの一つであり,他方その内在的性格傾向(弱く・曲線的で・ゆっくりとし た等)に関連した動き,俗に〈ソフトリーな・デリケートな動き>等は,前者に比し て一般にはより多くの学習経験を要することが多い。従って,短時問内で対極的動き が強調される場合には,とかく踊り手にとって実現容易な,いつも外方拡大的な動き やスポーティーな動き・ポーズ等のワン・パターンなステレオ・タイプな表現のみに 終始するケースもよく見かけられる。
このように,単純明快な・原色的な運動表現課題は,初心者への導入的課題の一つ として,あるいはその第一歩としては,有意な側面も多いが,反面,「対極的動き」即 ち両面にわたる極限的動きは,前述のように,一面的な極限的動きに止まったり,・対 比的運動感覚の範囲で体得される場合も多く,その両面にわたる実践や習熟には困難 性が高いといえる。他方,複雑微妙な・重層的な・中間色も含んで明暗多彩的な舞踊 表現を期待し,その関連的課題化を展望する視点からは,「対極的運動課題」そのもの についての再検討も必要である。
4.つまり次段階への発展的課題化の視点からは,「対極的動き」を原拠とした展開よりも,
「対応的(異質的な対比的対応と同質的な類似的対応の両方の性質を含む)動き」を原 点とした方が,前者に比してより許容量豊かな概念故に柔軟性と変化に富み,現段階で の実践経験が次段階へと発展し易い課題化への道ではないかと思われる。これが筆者が 本論主題についての主張骨子である。これらに関する詳細な検討は,残された問題点に ついての次項での論理的検討や,更に後述の実践例からの実証的結果等に基づいて追求 したい。
〈2〉松本式課題法にみられる「二つ以上の対極の性質を含む運動」「対極の性質をもつ 二つ以上の動き」「よい連続」等.に関連する用語の検討とその具体的運動例につい ての考察に関して:
1.「二つ以上の対極の性質を含む運動」は、「二つ以上の対極的な運動」と要約でき,「対 極の性質をもつ二つ以上の動き」は,「対極的な二つ以上の運動」と要約できる。即ち,
前者では,「対極的な要素が二つ以上ある」意となり,例えば〈極限的な大・小や極限的 な速・遅の要素を伴って走る>ということになり,後者では,〈二つ以上の動きが対極的 な関係にある>意となり,例えば〈極度な動・静の関係にある疾走と急停止の動き>と いうことになり,両者間の意図する点に相違が生じ得る。
2.では,松本著の本課題に関連深い4つの論考では,如何に意図され,また具体的に用 いられているかについて以下のように要約提示し,各事項について要点を抽出した。
[A]松本は(8)「舞踊の技術論」の論考の中で,「身体一運動課題」では,〈動きの単語を もち,語彙を増やすための技術〉5)であり,具体的には〈歩走,跳躍,捻転,作業をする,
くぐる,投げる,攻防,伝承的ステップ等>をくその場の動き・移動の動き>〈拍子・間 拍子>の時空的変化を伴った律動的表現運動であり,舞踊運動以前の課題とし,次の段 階としての「運動一変化r連続課題」からが舞踊運動に入る課題だとして,その骨子に 「『二つ以上の対極の性質をもつ運動の連続体』として課題化するとき,舞踊運動として の表現質をもったひとまとまりの運動が出現する…」と述べ,また,r文の情調のように,
やさしく,あるいは激しく出現させるために,レガートースタッカート,はやく一ゆっ くりなどの発想強化を極限にして行う法則を加える。極度に微速度な動きから,極度に 急激的な動きまでの振幅を大きく課題化する原則に立つ」6)と述べている。
[B]松本は(6)「舞踊表現の構造と要素化」の論考の中で,「変化の要素」として〈拡大一縮 小>〈速い一遅い>〈動く一止まる>等を挙げ,「連続の要素」としてく漸次的・持続的・
急激的>の3つを挙げている。
[C]松本は(7)r舞踊課題と課題解決学習」の論考の中で,r運動一変化一連続課題」の舞 踊課題例としてく走一止>〈走一止一走一止一走一止・止・止>〈振挙一回一見>〈捻一回 一見>等を挙げ,「極限への助言の言葉かけ」としてく壁にとどくように…反対の方へも ・・等〉を,「多様化への助言の言葉かけ」としてく外にもできるかな…速度も変えられる よ…等〉を例示している。
lD]松本は(9〉「おどり・つくり・みる」の論考の中で,「課題は『対極の性質をもつ二つ 以上の動きのよい連続体』(ねじる一まわる,あるいは洗う一しぼるなど)として設定さ れ,指導はこれらの基本的な運動・表現質を『極限』にひろげ,より『多様』に咀囑す ることによって,個を豊にめざめさせるようにはこぶ原則をすでに見出している。」7)と 述べ,「極限への助言の言葉かけ」としてく精いっぱい><大きく思いきり><すばやく高 く(跳ぶ)…>〈ゆっくり,スローモーションに…>など一中略一「表現のすべての段階に 通じるべ一スとして,拡大縮小の誇張の方向におどる特質をひきだす。」8)と述べている。
また,「多様化への助言の言葉かけ」として〈もう一つ違った動き(身体の部分)><背中 で…足先で…>〈高く見る一低く見る一遠く見る>〈走って見る一集まって見る>など「
動きの空問 個と群 動きのクレッセンド など表現の構造機能の観点から,より新し いチャレンジヘと,個の創意・群の創意を引き出すことばをおくる。」8)と述べている。
以上のことから,次の諸点が考察される。
(1)前論(1①で採り上げた公開授業は,授業担当者は「運動課題〈捻る一回る一見る>」と記 しているが,前記[A]より,これは「身体一運動課題」ではなく「運動一変化一連続 課題」として設定していると思われること。
(2)対極的動き等の具体的動き・助言事例は,次の通り分類できる。
①「両面にわたる極度な(対極的)動き・助言に関する運動要素」としては,[A]のく極 度な速(急激的).遅(微速度な)一ただし,両者とも松本式課題法での「連続の要 素」と重複した要素>のみであり,それに次ぐ感じを予測させるものに[C]のく精 いっぱい>がある。
②「一面的な極限的動き・助言」では,[C]の〈壁にとどくように…>,[D]のく大き く思いきり>等であり,それに次ぐものに[D]のくスローモーションに… 「変
化・連続の要素」と重複>がある。
③「異質対応的(対比的)動き・助言」では,[B]の〈走一止>,[C]のく反対の方へ 一>,[D]の〈すばやく(速)高く…>,〈ゆっくり〉等があるが,これらは何れも「変 化の要素」と重複している。
④「同質対応的動き・助言」では,[B]の〈振挙一回>,[B・D]の〈捻一回>等があ る。
⑤「対極的・一面極限的・異質対応的・同質対応的要素が不明な動き・助言」では,[C]
の〈……,走・止・止・止〉,〈……,回一見>,[D]のく洗う一絞る>等がある。
(3)以上より,次の通り考察した。
1) 「対極的動き」では,他の要素と重複しない独自の運動例は皆無であること。
2) 「一面極限的動き」での前記二例は,何れも「外方拡大的助言例」であり,それらに 対応する〈壁から離れるように…>,〈出来るだけ小さく>等と共に「変化の要素」や 「対比的動き」の課題としても十分に展開できること。ましてや〈スローモーション に…>は,「変化の要素」でも「連続の要素」でも十分活用・展開され得ること。
3)それに比して,前記③・④の「対応的動き」では,この分類区分の中で最も多くの運 動事例を包括している。と同時に,前述のように①・②に関しても包括し得るし,⑤に ついても「対応的動きの多様化の視点」に立てば,運動要素的展開については,全て の課題例を包括し,実践することが可能であること。
4)⑤での<……止・止・止>のく止>は,ポーズやその場のみで連続的に変化するポー ズを指す簡略表記ではないかと思われるが,その利点は評価するとしても,明確な運 動概念としては,例えば〈その場での動一止一動一止一動一止>等の方がより的確で あること。
5)前項と同様な意味で,⑤での〈…一回一見>の〈見>は,運動概念としては異質で あり,前二者と同類の運動用語に置き換えて課題化するのが適当と思われること。
何故なら,〈捻一回一見>の課題で,例えば〈一点を見つめたまま捻れ寄り一その焦点 を見つめたまま渦巻状に遠く回り離れ一見る>場合の〈見>は,注視点が同一の場合 〈見>は,前二者のような独自の運動質は伴わない故に不明になり,課題設定の意図 を失うことになる。従って,その際はく見>に替わるものとして〈止>とか〈屈(伸)>
とか〈回>とかの他の運動用語に置き換えて,それぞれの運動質を明確にした上で,
イメージ課題「見る;視る」との接点的課題の一例として,焦点・方向・向き・面・
空問移動等の視点を伴って課題化すべきではないかと思われる。即ち,〈見>は本来的 には〈見・聞・話・感〉等のイメージ語・イメージ課題として扱うのが適当と思われ ること。
以上を総括すると,「対極的動き」の概念は,論理的には成立しても,独自的な要素 に欠け,実践的な適応性も乏しい故に,「対応的動き内での極限化」や「対応する運動 要素の両面にわたる変化の要素の中での明確化(極大化・極小化等)の一つ」として 捉える方が,多様な変化に対応した表現質の明確化が図れ,有効な面が多いと思われ る。
3.しかし,前述1.に関して,松本式課題法では,「運動・変化・連続の要素」の中にく運
動の質の拡大>〈空間的拡大・縮小><漸次的・持続的・急激的流れ>等の関連要因の設 定はあるが,対極的・極限的動きそのものに関する用語が見出せないこと9)鋤や松本編著 の(2〉「ダンス表現学習指導全書」資料8〈舞踊用語>の全用語内にも見出だせないこと により,「二つ以上の対極的な運動」ではなくて,「対極的な二つ以上の運動」を指向し
ているのではないかと思われる。
従って,この予測に基づき,「二つ以上の運動が,どんな対極的関係にあるか」に関し て,次の通り考察した。
1)〈走一止>での対極関係とは,前述のように極度な動・静の関係にある〈疾走と急停
・ 止>はその一例に該当すると思われるが,逆にく微速度な走と急激な停止>は,極限 感覚の感受・習熟にとって有効な活動とは思われない。それよりも前述(2)の総括的視 点と同様に,「変化・ 連続の要素」等を用いて〈出来るだけ大きく(小さく)走ったり,
急に止まったり,だんだん強く走ったり,急に低く(小さく)止まったり…>等の多様 な運動変化の中で二つ以上の極限的動きを一方的に・対比的に・多面的に挑戦する活 動の方が有効と思われること。
2) 〈振挙一回一見>では,「三つの動き」の対極的な共通性は不明であり,求めること 自体が無理と思われること。また,〈振挙一回>の関係では,〈振挙>を曲線的とか回 旋的な動きと観る場合は,両者の問に曲線的や回転的な共通因子が予測され得る。し かし,これは類似的関係であって,両者の対極的関係やその具体的動きについては,
予想することすら困難といえること。
3)〈捻一回一見>の場合でも,前記2)のケースと同様である。く捻一回〉についても,
両者間に類似的関係は見出し得ても,対極的関係は見出し難い。
4)〈洗う一絞る>では,運動課題的な視点で対極的関係を見出すのは不可能かつ不要な ことであり,イメージ課題的な視点では,ある作業における類似的対応・展開が予測 され得るが,前述(3)一5)と同様に,イメージ語・イメージ課題であって,本来,運動 課題としての対極的動きと直接的に(間接的には別として)対応するものではないこ とは論を侯たない。
5) これらの経緯より,「対極的な二つ以上の運動」として捉えることもまた適当ではな いと思われること。
以上を総括すると,「極限的動きとは,本来,変化する動きの度合の中で最大度(ある いは最小度)の動きの意」であり,松本式課題法でいう「極限化への方向と多様化への 方向を分化的な二大原則として課題化を図ること」ではなくて,「多様化の中での極限化 として両者の融合的・包括的な課題化を図ること」が重要である。従って,松本のいう 「対極の質を拡大しての極限的動きへの挑戦」は,「対応する課題の変化の中での極限的 動きへの挑戦」と捉えた方が,前述の考察経過におけるような誤解や混乱を招くことな く,適切にその意図を伝達できると思われる。
4.次に,「二つ以上の(動き)」とそれに続く文章としての「……運動(動き)の連続性 (連続体;よい連続)」との対極的な関係については,単なる動きの「連続」に関しては,
二つの動きでも,三つの動きでも,四つ・五つ…の動きでも「連続」可能であるが,そ れらの動きが常に対極的関連を持ちながら,「ひとまとまりの流れとして連続」し合う課
題を設定することは,大変制約的であり,実行困難や実行不可能な場合の方が多いと思 われる。
他方,「二つ以上の_連続体」と捉え,かつ「対極的動きに拘らない」場合には,
前述の多くの問題点・困難点が解消される。即ち,「対応する課題の両面にわたる変化の 中で,極限的動きも含む,二つ以上の動きの連続体」として一連の変化とまとまりに主 眼を置いた「連続課題」としての指向である。
これに関連して松本は,舞踊課題に対する実験授業の結果として,「発達的にみると,……
〈中略>……小学校四年位からは,三つの質の連続体(走一跳一転など)も可能になり,
高学年から中学校以上では,一連のまとまりをもつ形(伸一縮一伸一縮一廻一見・見・
見など,終止形を持つ連続)も可能になる。」11)と述べており,上記の主張点と軌を一にす るものと思われる。あるいは更に,「対応する課題の両面にわたる変化の中で,二つ以上 の極限的変化を含む,二つ以上の動きの連続体」を指向しているともとれる。
なお,「よい連続性」の「よい」に関しては,舞踊用語としては不要と思われること。
何故なら,あらゆる舞踊課題が「よい舞踊表現」を目指して展開されるものであること は自明の理であり,「よい連続」を用いるなら,他にも「よい変化」「よい構成」「よいリ ズム」等々を付け加える必要が生じるからである。
ちなみに,V.PRESTON著(4)「A Handbook for Modem Educational Dance」の7
ぺ一ジの原文では, (c)αs6g%6η66where rising movement led by the chest are con−
trasted with deeper movement led by the pelvic girdle. 12)と「連続」とのみ記されて いるが,その対訳に当たるV。プレストン著・松本千代栄訳(3)「モダンダンスのシステム」
の同箇所では,「一連のよい連続一そこでは,胸がリードするのび上がる動きが,骨盤が リードするより低い動きと対比される。」13)とされており,同書のその他の箇所や,松本の 他の著作においてもしばし ば観られる用語法である。
<3>「対応」に関連する用語の一般的語義・美学的語義等の検討と舞踊課題としての段階 的な課題化の視点に関して:
『広辞苑』より関連箇所を「」付きで,『美学事典』より利光功著14)の同一用語には『』
付きで,その他の資料より同義語に☆印を,筆者が他の同義語・類似語等を比較検討し た結果,結論的に適切と思われる用語に★印を付して,抽出列記すると次の通りである。
(1〉「均斉・均整」一つりあいがとれて整っていること。
『均斉』……Symmetrie;狭義には左右両半部が,その構成要素の数量・大きさ・形 状・色彩などにおいてもなどにおいて完全に合致しながら反対の方向に 向かって展開される場合、すなわち左右相称(bilaterale S.;[筆者註]:両 側均斉)をいう。広義には『均衡』の意。
☆「ダンス表現学習指導全書」によれば,同義語に「対称symmetry」15)を挙げている。
★[筆者考:同量的つりあいの意で,「対称synmmetry」]
(2)「均衡」一二つ以上の物・事の間に,つりあいが取れていること.つりあい.平衡.
平均。
『均衡』……『均斉』の広義として,左右両半部あるいは多数の部分が,大体におい て相等しい分量・形状・印象効果などを有する場合,即ちいわゆる均衡
(Gleichgewicht:平衡・均斉・釣合,balance)の意味で用いられる。
★[筆者考:等量的なつりあいの意で、「均衡balance」]
(3)「釣合」一①つりあうこと.平均をたもつこと.均衡。
②[理](balance;equilibrium)二つ以上の力が一物体に作用しても,
その物体の運動状態に変化を生じない状態。
『釣合』……Proportion;全体における部分相互または一つの部分と全体ならびに 二つの個別のものの間の直観的に快適な比例関係をいう(例:黄金分割 など)。
均斉や釣合は,本来視覚的空間関係を支配する原理であって,おもに造 形芸術に適用されるが,類似的意味では時問的芸術にもおし及ぼされる。
☆「ダンス表現学習指導全書」によれば,同義語に「釣合proportion」16)を挙げている。
☆「新ポケット英和辞典」によれば,同義語に「均整proportion」を挙げている。
★[筆者考:同質的・等質的つりあいの意で,「均整proportion」]
以上のことから,次の諸点が考察される。
1)(1)から(4)までの語句の語義で,共通する言葉は「つりあい」の概念であること。
2)(3)では,利光のいう美学用語としての『釣合』と,松本らがいう舞踊用語としての 「釣合」は,共通しているが,前項のように,他の語句とも語義に共通性があるので,
誤解を生じ易い。従って,他語と明確に区別し得る独自語として「均整」を舞踊用語 として採用したこと。
3)前項と同様に,(1)では,「均斉」と「均整」とは,一般的な語句概念としては共通に 用いられているが,美学用語では「均斉;相称」に限定されており,また前二者は何 れも「きんせい」と同音異義で誤解を生じ易い。従って,「対称」を採用したこと。
4) 「対応」の概念を舞踊課題として,段階的に課題化する、ことに関しては,<明確から 不明確へ>〈単純から複雑へ><量的対応から質的対応へ>〈異質的対応(対比)から同 質的対応・類似的対応へ>等の視点から位置づければ,〈対称的課題→均衡的課題→均 整的課題>の順に段階的課題かが図れると思われること。
5) と同時に,「対応的舞踊課題」は、単に運動課題の視点のみならず,イメージ課題の 視点からや,更にイメージ・運動課題の接点・融合点としても柔軟で,許容量に富ん だ共通概念を持ち易いので,課題化する上で大変有効と思われることなど。
以上,[研究目的1」の「松本式舞踊課題学習法における極限的動き・対極的動き等につ いて」検討した結果,その要点を次の通り総括した。
1.「対極的動き」の概念は,論理的には成立しても,独自な要素に欠け,実践的な適応に も乏しい故に,「対応的動き内での極限化」や「対応する運動要素の両面にわたる変化の 中での明確化の一つ」として捉える方が,多様な変化に対応した表現質の明確化が図れ,
有効な面が多いこと。 (〈2〉・2・(3)の総括を参照.)
2.「極限的動き」の概念は,本来,変化する動きの度合の中で最大度(あるいは最小度)
の動きを意味しており,松本式舞踊課題学習法での「極限化への方向と多様化への方向 を分化的に課題化する視点」よりも,「多様化の中での極限化として,両者を融合的・包 括的に課題化する視点」の方が有効な面が多いこと。 (〈2>・3の総括を参照.)
3.松本式舞踊課題学習法でいう「対極の性質をもつ二つ以上のよい動きの連続体」につ
いては,特に「対極的動き」にあまり拘わらず,「二つ以上の・・…漣続体」として,一連 の変化とまとまりを主眼とする「連続課題」として捉える方が,実践的展開において有 効な面が多いこと。また,その際,前述の記述を「対応する課題の両面にわたる変化の 中で,極限的な動きも含む,二つ以上の動きの連続体」あるいは「対応する課題の両面 にわたる変化の中で,二つ以上の極限的動きを含む,二つ以上の動きの連続体」と句読
点を用いた表記法の方が,記述意図がより明確になると思われること。
(〈2>・4を参照.)
4.「対応する舞踊課題の視点」は,運動課題,イメージ課題,イメージ・運動連合課題と しても柔軟な共通概念を持ち易いので,有効な面が多いこと。
また,「対応する課題の段階的課題化の視点」は,〈同量的対応としての「対称」課題一等 量的対応としての「均衡」課題一同質的・等質的・類似的対応としての「均整」課題>
への発展的設定が,課題化上有効と思われること。 (〈3〉・4)・5)の考察を参照.)
[2]「舞踊の効果的表現要素に関する実証例」について:
〈1>「作品支持順位と作品傾向」に関して:
[註]:
①次頁の〈図1>は「4つの大学生ソロ舞踊作品」を214名の高校生・大学生がVTR による観照の結果得た856例のデータに基づく資料の一つ17)である。
②次頁の〈図2>は,「3人の異なるプロ・ダンサー(各ソリストはPatrickDupon,
SchonachMirk,JorgeDom)主演によるM.ベジャール作『ボレロ』作品のVTR から,同一ソロ場面を中心に特徴的な一連の動き5箇所を抽出し,VTRに編集・収 録した3つのモデル作品」(オリジナル作品の時問は各々14m16sllf,14m44s20 f,14m18s10f→各モデル作品の時間は各々8mll s10f,8m46s20f,8m50s26 f)を大学・高校での舞踊指導者(男子1名,女子4名),何らかの創作舞踊経験を持 つ大学生女子(8名)の計13名がVTRによる観照の結果得たデータに基づく資料の
一つ18)である。
③〈図1>では,対比的な要素を中心とした各項目に関する各作品の全体的な感じに ついて,5尺度中、3(基点)を中心として,(+)側(左側)は外向的作品傾向を,
(一)側(右側)は内在的作品傾向を示している。 ([1]・<1>・3・②を参照.)
④〈図2>では,7尺度中,4(基点)を中心として,(+)側と(一)側とに別れ,前 項のく図1>の場合と同様な作品傾向を示す。
なお,〈図1>とく図2〉とでは,〈表現内容の感じ>の項目と〈動きの感じ>の項 目との記入位置が逆転していることに注意。
〈図1>4つの異なる舞踊作品の観照における印象比較
①,②…作品支持順位が 全体として1位,2位・・
(項目No)
1 5
大学生
一一一・ 校生
543215432 432154321
律、1く/評 ︑・︑価 / 7 4︶ ¥ 一1︑ ︑ ﹂3
作品の出釆1映 ¥
品順位37 1作品の個性2度 ・ ¥作品密度3(舩度)ノ表現技能度4(動き)・ ノノ﹃ ¥ 5 1
、︑ノノ 〆
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すばやい 8ゆっくりした スタッカート9レガート
作が大きい10動作が小さ5 》 一・、空間心動が大11空間心動が小、 高 い 12 低 い
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じ 全身的 14 部分的一 、
、) 、 、、、軸 アクセントがある15ア姥ントがな・
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/ 動 的18静 的
活発な21不活発な
はぎれがよい23だらだらしが 鋭 い24鈍 い
︑1 !イ 、 、 、膠 ノ , ︑ノ8
の 6 きぴしい27やさしい1!1 甲
一 F はげしい28おだやかな ノ
じ のぴのびした29窮屈そうな 蝋
) ノ ノ
く 力強い30ひ弱な ノつ!
蘭 ④ ①作品への35関心度 、 ②
麿 作品1 作品皿 作品皿 作品四
〈図2>3人の界なるソリストを中心とした同一作品「ボレロ」(抜粋)
の観照における印象比較
内容・動きの感じ 動 的一静 的 的一理性的 明るい一暗い 外面的一内面的 速 い一遅 い 強 い一弱 い 直線的一曲線的 断続的一連続的 急 的一漸次的
[モデルA]
く外向的〉く内在的>
7 6 5 4 3 2 1
[モデルB]
く外向的〉く内在的〉
[モデルC]
〈外向的>く内在的>
7 6 5 4 3 2 1 7 6 5 4 3 2 1
II口III蓼1
1
IIi邑監IIII奮一塵
1.〈図1>に関して,左端側の「作品1」は,4作品中で作品支持最下位(4位)の作品 であり,その右側の「作品II」は,同最上位(1位)の作品である。4位の「作品1」
では,<動きの感じ>〈表現内容の感じ>の各項目は共に殆ど(+)側のみに偏り,かつ基 点寄りである。それに対して,1位の「作品II」や同2位の「作品IV」(右端側)では,
他の低位二作品に比して,(+)側だけでなく(一)側の要素もより多く含み,かつ基点か ら左右への振れ幅も大きい。
換言すれば,作品支持順位が上位の作品では,特に〈動きの感じ〉の項目については より特徴的に,外向的因子と内在的因子との両面にわたる「多面さ」を示すか,または 基点からの振れ幅を大きくした「明確さ」を示す場合が多い。従って,効果的表現とは,
各要素間の多様化と明確化にあるといえる。
2,く図2>に関して,サンプル数が少ないという難点はあるが,〈図1>の場合と同傾向 を示している点では有益な示唆を有すると考えられる。左側の「モデルA」(P.デュポ ン主演)は,3モデル作品中,支持順位最下位(3位)の作品であり,右側の「モデル C」(」.ドン主演)は,同最上位(1位)の作品であり,中間の「モデルB」(S.ミ ルク主演)は同2位の作品である。
3位の「作品A」では,(+)側のみに偏っており,<動きの感じ>が〈直線的・強い>
を主調とした明確な外向的な動きの場合は,<表現内容の感じ>としても同様に外向的な 印象を与えることを示している。これはまた,観照者の内省記録の中の「モデルAは,
明るく,すっきりと,スポーティーな力強い感じはあるが,作品の深みや表情の陰影に 欠ける」等の記述と対応するものである。即ち,一面的(各要素間が同質的)な極大化 は,単純明快ではあるが,内面性に欠けたワン・パターンな表現質に陥り易い傾向があ
ることにも留意する必要がある。
他方,1位の「モデル作品C」では,〈動きの感じ>が(+)側を主調としながらも(一)
側の要素も明確に含み,特に〈強い・速い>の外向性と,その反面として〈連続的・曲 線的>といった内在性も含む動きは,〈表現内容の感じ〉においても〈情熱的・動的>を 主調としながらも〈内面的・暗い>かげりを含んだ印象を与えることを示している。こ れもまた次のような内省記録からも窺える。即ち,「モデルCは,動物的,轟惑的で,し かも内面的な暗い,不気味さ,深さをもつ生命力の燃焼と死」等の記述とも一致してい る。即ち,運動課題・イメージ課題とも,対比的対応要素における(各対比項目内での)
両面にわたる変化と共に,更には,各要素問の異質的対応(巨視的にみて(+)側の因子 もありかつ(一)側の因子もある関係)が,多様な内面性や訴求力を高める上で効果的で
あると思われる。
<2>「一連の変化とまとまり」に関して:
[註]:
① 次頁のく図3>は,前記の〈図1>に関する調査の発展的課題として,精選した 3作品(作品1・II・IV)に関して,各作品の運動過程における(作品全体の感じ を結果としで総体的に捉えるのではなくて,個々の過程における一連の動きのフ レーズとして)前回調査で有意性の高かった3つの対比的表現要因(強・弱,全身・
部位,非相称・相称)を分析視点として,「フィルム・カウント法による連合」19)を示
<図3>3つの舞踊作品の運動過程における3つの舞踊要因による 分析と連合(主観的有意運動のフイルム・カウント分析)
画強
強 い 弱 い 身的 部分的
相称的
相称的 相称直
圃強 L強 い弱 い
身的 部分的相称的
相称的
(強)
(弱)
全)
(部)
(相)
2
15
5 10
0馴強 い0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50弱 い
全身的
非相称的分的 相称的
〈表1>3つの舞踊作品の運動過程における3つの舞踊要因による 主観的運動分析の連合型
IV
ロロ口
作
II
作 品
1
作 品
、作品 型\
身的一一非相称的
磯た
しし黛OQ鼻
吻息
㏄識㎡騨肋
した一部分的一非相称的
)い 13/60 (26
口
■ 弱い
■ 0
8/50(16
口
口 強い
■
5/50(10
■
くりした一部分的一非相称的
口 ■/強50 ㈱一 脇融 O 陵 囎 卜 禰 的
4■ ﹈ 口
4/50(8.0%)
ロ S3
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3/50 (60%)
1弓郵…濫りした一全身的<ll欝
的 称 相 非
紫
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50 26㌔■/
2/50 (4 0%)
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・ (相称的)
零り . 零り㌦鵠uゆ識躍蟻鵠聾蔚α舗親
4 5
やい一一部分的一非相称的 くりした
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的 称 相 非
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ゴグ レ 財相欝
分 眠
欄た亀射
やい一部分的一相称的
くりした 30/68 (41
■
ロ 強い一
■ O/
13/68 (19
■
■ 強い一
■
8/68(11
ロ
ロ 弱い一
■ O/
7/68(10
]
ロ 強い一1
㌔ 01
3/68(44 0
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0
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0 ーロ
ロ■︒ 弱
1/68 (1 5%)
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駿 く 全梛 辮 仁
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昌o強い一ゆっくりしたく翫雛1一相称的 2/50(40%)
1/50(20%) ロ Q2
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暑・強い一灌錦《襯齋・
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%肋︒一
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0ー口■ 聞
19/34 (55 9%)
口 Q5・S2
ロ 弱い一すばやい一一都分的一非相称的
■ orゆっくりした 14/34 (41 2%)
■ Q8
■強い一すばやい一一全身的一相称的
口
1/34 (2 9%)
■
■ 強い一ゆっくりした一部分的一非相称的
■
〔註〕
①19/34は,
19の下記の連合型が作品1における,主観的有 意運動の全項目数(34〉の中で,19ケあること を示す。
② (55.9%) 昏よ,
前記の連合型の全項目における占有率。
③Q=すばやい ≦12sec.の動作。
④S=ゆっくりした≦235ec.の動作。
⑤Q5・S2は,
その連合型において,
すばやい三5ケ,ゆっくりした=2ケあることを
.5のば先全註1919意を︵前QSQそす示﹁﹂
⑥「全身的」の観点は,
1.有意な大筋(大関節)部位が3部位以上加 わった その場での動作。
2.歩・走・跳等で自然な(正常な)動作。
3.坐位・臥位等で自然な(正常な)動作。
⑦「部分的」の観点は,
前者と対比的で,局部的な特殊部位・状態での 身体使用による動作。
﹁強いー弱い﹂を中心とした運動過程における連合型
している。
②前頁の〈表1〉は,〈図3>の視点に,更に速・遅の時問的分析の視点も加えて,
各作品毎に分析・集積したもので,「各舞踊作品の運動過程における『強い一弱い』
を中心とした主観的有意運動の分析による連合型」20)を示している。
1.作品支持順位1位の「作品II」では,主観的有意運動が68で,3作品中で最大であり,
一連の動きのフレーズとしての連合型においては「選択的多様型」を示している。
2.同2位の「作品IV」は,同有意運動が50で,3作品中で中位を示し,量的多様性は一 応見られるが,質的には,「無作為的多様型」であり,まとまりに欠けるといえる。
従って,運動課題による多様化への方向は,たとえ多様な展開はみられても,質的に 「何を表現するか」についての内的イメージを欠く故に,まとまりとしての表現質の感
受・定着を図る上で,漏出・浪費に終わる危険性も内包していると思われる。
3.同最下位3位の「作品1」は,同有意運動が34で,3作品中で最小であり,3タイプ 中,2タイプに集中しており,質的には,「選択的単調型」または「単調型」であり,多 様性に乏しいといえる。
4.前記の1−3項までのこれらの考察は,何れもセンテンスの中のフレーズとしての視 点分析の結果といえる。松本のいう「ひと流れの動きとしての,一連の変化とまとまり (連続体)」としての「表現質を持つ最小単位としての動きのフレーズ」の視点とでは,
問題の如何によっては,その視野と強調点において相違点を生じる場合もあり得るが,
大局的には,多くの一致点と示唆を含んでいると思われる。
以上,[研究目的II]の「舞踊の効果的表現要素に関する実証例における対応的動き,
対応的課題,変化とまとまり等について」検討した結果,その要点を次の通り総括した。
1.効果的舞踊運動とは,各運動要素間の外向的因子と内在的因子の両面にわたる多面的 動きか,または一面拡大的(極大的)な明白な動きといえる。従って,効果的表現とは,
各要素間の多様化と明確化にあるといえること。 ([2]・<1>・1を参照.)
2.運動課題にあってもイメージ課題にあっても,共に各要素間の異質的対応の設定は,
多様な内面性や訴求力を高める上で効果的であること。 ([2]・〈1〉・2を参照.)
3.「一連の変化とまとまり」は,「選択的多様化」が重要であること。従って,運動課題 のみによる多様化の視点よりも,イメージ課題を伴った視点の方が,まとまりとしての 表現質を感受・定着する上で効果的であること。 ([2]・〈1〉・2を参照)
4.その他,今後の課題として,対応する運動的・イメージ的な舞踊課題・要素内での両 面的な変化とまとまり(多様と統一)に関する検討等も必要と思われること 以上。
参考=引用文献・資料
1)堀野三郎,「教育舞踊における今日的な中心課題について」<その1>一松本式舞踊課題学習法に 関する〈まるごと体験・運動課題・極限的動き>の再検討を中心として一長崎大学教 育学部教科教育学研究報告第14号1990.P.106.
2)松本千代栄,「舞踊課題と課題解決学習」女子体育 Vo1.24−3,1982。P.8。
3)松本千代栄,「おどり・つくり・みる」女子体育 VoL29−3,1987。P.10.
4)松本千代栄,「舞踊課題と課題解決学習」女子体育 Vol。24−3,1982.P.8.
松本千代栄,「舞踊の技術論」女子体育 VoL14−8,1982.P.5.
松本千代栄,「舞踊の技術論」女子体育 Vol.14−8,1982.P.6・
松本千代栄,「おどり・つくり・みる」女子体育 Vol.29−3,1987.P.10.
松本千代栄,「おどり・つくり・みる」女子体育 Vol.29−3,1987.pp.10−11.
し 松本千代栄,「舞踊表現の構造と要素化」女子体育 Vo1.21−4,1979.P.4.
松本千代栄,「ダンス表現学習指導全書」〈舞踊表現の構造と要素>大修館書店
1982.pp。66−7.
11) 松本千代栄,「舞踊課題と課題解決学習」女子体育 Vol.24−3,1982.P.10。
12)V。PRESTON,「A Handbook for Modem Educational Dance」Macdonald&Evans LTD.
1963.P.7.
V.プレストン;松本千代栄訳,「モダンダンスのシステム」大修館書店1976.P.9.
利光攻,「美学辞典」〈美学形式〉弘文堂 1985.pp.194−5.
松本千代栄,「ダ≧ス表現学習指導全書」〈舞踊用語>大修館書店 1982.P,。512。
松本千代栄,「ダンス表現学習指導全書」〈舞踊用語>大修館書店 1982.P.512.
堀野三郎,「舞踊作品観照における効果的表現の要因について」〈その1>一舞踊運動・内容の印 象に関する量的分析を中心として一長崎大学教育学部教育科学研究報告第23号 1976。P.122.
18)入江昌敏,「舞踊の効果的表現に関する一考察」一VTRによる同一舞踊作品の観照と分析一長崎 大学教育学部昭和63年度卒業研究論文1988.pp.39−40,42.
19)堀野三郎,「舞踊作品観照における効果的表現の要因について」〈その2>一舞踊運動過程の質的 分析一長崎大学教育学部教育科学研究報告第24号1977.P.300.
5)
6)
7)
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10)
13)
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15)
16)
17)