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引当金勘定について

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Academic year: 2021

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(1)

引 当 金 勘 定 に つ い て

龍 家 勇 一 郎 一

︑ 序 言 二

︑ 引 当 金 制 度 の 現 状 と 問 題 点 三

︑ 商 法 計 算 規 定 に お け る 引 当 金 四

︑ 税 法 上 の 引 当 金 五

︑ 会 計 上 の 引 当 金 六

︑ 引 当 金 の 本 質 と 純 化 七

︑ 結 語 一

︑ 序 言 引 当 金 勘 定 は 企 業 会 計 上 問 題 の 多 い も の で あ り

︑ 従 来 か ら 盛 ん に 議 論 さ れ て い る に 拘 ら ず 必 ず し も 定 説 と い う も の が あ る と い え な い よ う に 患 わ れ る

︒ 昨 年

︵ 膚 和 三 十 五 年

︶ 八 月 に 法 務 省 民 事 局 か ら

﹁ 株 式 会 社 の 計 算 の 内 容 に 関 す る 改 正 要 綱

︵ 以 下 単 に 試 案 と 呼 ぶ

︶ が 公 表 さ れ て か ら

︑ こ の 間 題 に 関 す る 論 議 が 再 燃 さ れ た よ う で あ る

(2)

経 営 と 経 済

五 六

今日実務界では随分多くの引当金勘定が設定されているのが見られるが︑これは会計原則中の引当金勘定の概念規

定が暖昧なためである︒引当金勘定は税務会計との関聯もあり︑更らに乙の誌案との関係で吟味されなければならな

い問題である︒本稿ではこの試案との関聯を考慮しつつ︑引当金勘定はいかなる場合に設定すべきか引当金とは何か

その本質について検討したいのがその要旨である︒

二︑引当金制度の現状と問題点

引当金勘定の設定された本来の目的は期間的損益計算の正確性公平性を期するものであると思う︒しかし引当金勘

定が実務界において設定されている現状をみると︑そ乙には︑あまりにも便宜的な不純物が混入されており︑引当金

制度を濫用し︑期間損益計算を誤らせるような経理が多く行われている乙とである︒乙乙で筆者が引当金勘定の実務

というのは︑勿論財務諸表規則の定めによって作成されている貸借対照表上にみられるものの乙とであるが︑そうし

た実例が各社の有価証券報告書あるいは︑有価証券届出書にいくつも見られるととである︒

例えば昭和三十四年九月三十日決算期の日立製作所株式会社における引当金勘定は次の如きものが設定され又その

監査報告書における引当金に関する意見も次のように述べられているのが注目される︒

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賠 奇

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(3)

4. 

輸出損失準備金

56.038 4. 45.330  5. 

輸出振興引当金

763.472 5. 415.650  6. 50

週年記念引当金

200.000 6. 

1. 

その他の引当金

58.

47. 

日,

404

固定負債

8. 

退職給与引当金

1.785.243 8. 1.566.400 

合計 c7 

.620.86

0)  合計

(6.660.458) 

上記引当金に関する監査報告書の意見

(l)価額変動準備金は第

74

期残高と同様

.600

000

円を第

75

期に繰入れ計上し税法改正により限変超過額

527

百万円となり、

その金額は利益利余金に当ると思われる。

(2) 

納税引当金残高

833

百万円、輸出振興引当金残高

763

百万円、引当金の性格なく本質的には利益剰余金である。

(3)

会社創立日週年記念事業に対する引当金

200

百万円は、引当金の性格な心不

l

監を剰余金と考えられる。

上記各項目計上の意図は経蛍上の堅実化のた b 必要見込額を計上するものであるが、一般に公正妥当と認められる企業会計

の基準からいえば、引当金ではなく利益剰余金に当るものと考えられる。

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(4)

経 営 と 経 済

外、

更らに問題となるような引当金勘定が企業別により多少異なるが︑多く見られる乙とである︒例へば災害填補基金

引当金︑原木単価調節引当金︑販売諸掛引当金︑資金利息引当金︑特約庖経費引当金︑試験研究準備金︑設備拡張引

当 金 等 で あ る ︒

アメリカでもこの現象が多くみられ︑利益剰余金の処分という形で積立てる任意積立金の項目が非常に少く︑引当

金というものが多いのである︒

A‑A

A

の会計原則では公表する財務表においてレザ

l

ブ (

22

︿ ⑦ ) と い う 分 類

( 註

1)

区分を使用してはならないと勧告されている程である︒

レ ザ

l

ブなる語は多く用いられているようでニユラグ・ガ

l

ナーはその著作の中で八

O

のレザ

l

( 註 2

)

の例を揚げるとともに︑その性質を明瞭ならしめるためにレザ

l

ブを九種に分って検討している︒又ペイトンの編集

しているアカウンタン卜・ハンドブックにもキュリーの七十二の大会社の引当金の調査結果︑三十数種あることを例

( 註 3

)

挙 し

て い

る ︒

し か

し 実

践 上

このように引当金勘定は実務界の現状においては︑その設定に企業の怒意性に近いまでに自由性をもっていること

である︒財務諸表を見て繰延勘定と引当金勘定を比較し︑繰延勘定が多くて引当金勘定が少ない会社は︑その会社の

経理内容が悪く︑反対に繰延勘定が少なくて引当金勘定が多い会社は︑企業の経理内容が良いと判断されるという人

があるぐらいである︒これは企業がその内部留保を手厚くすることによって︑配当平準化乃至期間利益の平準化を行

なわうとするものである︒その財務方針は適当と判断されても︑引当金勘定を濫用し︑期間損益計算を誤らしめるよ

うな経理はこれを認めることができない︒引当金を用いて資金の内部留保を行うという方法に類似した経理に利益処

分から生ずる各種の積立金がある乙とは周知の通りである︒乙の利益留保は手続の上では費用引当という手続きより

は制約の少ない理論上当然の内部留保であるに拘らず引当金の計上による方が使い心地がよいのである︒それは引当

(5)

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(itt!~) A. A. A, Committee on Concepts and Standards Underlying Corporates Financial Statements, 

Supplementary Statement No.1Reserves and Retained Income," Dec, 1950. 

(itt!

N) Newlove Garner, Advanced Accounting, Vo

1. 

1950. (PP148‑177) 

1. Pure Budgetary (or opera ting) Reserves 

2. Pure Valuation (or offset) Reserves 

3. Budgetary‑Valuation Reserves 

4. Valuation‑Budgetary Reserve 

5. Valuation‑Accrual Reserves 

6. Liability‑Accrual Reserves 

7. Budgetary

LiabilityReserves 

8. Unrealized Surplus 

9. Appropriated Earned Surplus Reserves 

(棋の)

Accountants' Handbook (Third Edition, W. A. Paton Editer) PP.1034 

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同キミ

(6)

曜畑A)'出規

Reserve for Accident Compensation 

'/ '/ Capital Expenditures 

'/ Collection Expenses 

'/ '/ Common Dividends 

'/ '/ Contingencies 

'/ '/ Deprecia t ion 

'/ '/ Depreciation and obsolesence 

'/ '/ Employee Benefits 

'/ '/ Employee Compensa tion 

'/ '/ Expansion 

'/ '/ Fire Loss 

'/ '/ Foreign Exchange 

'/ '/ General Contingencies 

'/ '/ Impronements 

'/ '/ Insurance 

'/ '/ Inventory Losses 

general Reserves  ‑1

(0 

Reserve for Investments 

ゲゲLossesin closed Banks 

Operating Reserves 

Reserve for pensions 

ゲゲPremiumon preffered Stock 

ゲゲRedemptionof Preffered Stock 

ゲゲReliningand Rebuilding Furnaces 

グゲReplacements

ゲゲRetirementof Bonds 

ゲゲShrinkagein Receivables and Inventory 

ゲゲTaxes

ゲゲWorkingCapital 

Special Reserves 

Sundry Reserves 

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thesignificance of the Reserve

とし、寸う註がついて

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い、必る。

J

(7)

( 註

4 )

高橋吉之助稿﹁引当金制度の本質と政策﹂ (産業経理引巻

14 )

このように企業会計上最も問題の多い引当金勘定について︑現行商法には全然規定がなく︑財産評価の原則に従っ

1

( 註

)

て解釈するよりほかはないとされている︒それによると固定資産の評価は時価すなわち処分価格によらないかぎり︑

その取得価格または製作価額から適正な減価償却額を控除した価額によらなければならない︒減価償却引当金は固定

資産の原価から減価償却額を直接控除する代りに︑間接控除の方法をとったものであるから︑表示方法の問題に過ぎ

ず︑従って商法の解釈としても認められる乙とになる︒同様に貸倒引当金は取立不能の見込額を債権額から直接控除

する代りに設定したものであるから︑これも商法上認められることになる︒従って商法上では評価性引当金は問題と

ならない︒改正試案で問題としているのは負債性引当金とそれ以外の引当金の計上についてであると思ふ︒

改正試案の第九に﹁負債たる引当金﹂なる見出で﹁債務の発生または︑債務の金額が不確定であって︑債務の発生

原因が決算期前にある場合には︑相当の金額を負債として計上すること﹂に定めている︒そしてその理白書には﹁現

行法は負債性引当金については︑直接の明文を設けていないが︑法律上の債務でないものを負債とする乙とは許きれ

ないし︑法律上の債務であるものを負債として計上しない乙とは許きれないと解される︒又債務でない負債性引当金

を負債とすることは︑配当可能利益を減少せしめ︑株主の利益を害し︑また債務である負債性引当金を負債として計

上しない乙とは︑配当可能利益を増加せしめ債権者の利益を害する乙とになる︒

試案においては︑債務の発生または︑債務の金額が不確定であって︑債務の発生原因が決算期前にある場合には相

当の金額を負債として計上しなければならないものとし︑将来発生する債務で債務の発生原因が決算期後にある場合

引当金勘定について

'

/

(8)

経 営 と 経 済

‑L.. 

には︑引当金として負債に計上してはならないのは当然である︒通常退職給与引当金および納税引当金は負債たる引

当金であり︑修繕引当金および渇水準備金は負債たる引当金にならない﹂としている︒

このように試案によると前者に述べられている乙とは法律上の債務であって︑ その内容は確定債務に近い項目であ

る︒乙れに対して後者はすべて利益留保の積立金としなければならず︑乙れを負債として貸借対照表に計上する乙と

は︑商法違反となるととが予想される︒従って乙の試案通り適用すれば︑修繕引当金の知きものまで利益留保の積立

金としなければならないととになる︒

乙の点について太田教授は次のように説明されている︒すなわち﹁修繕引当金は修繕なる事実があって債務が発生

するのであるから︑それ以前にあっては債務の発生原因があったとはいえないとみるのである︒乙れを具体的に解す

れば貸借対照表の貸方勘定は資本勘定を除いた残余のすべては負債であり︑負債には特定の債権者がなければならな

いという乙とに帰するようである︒ ﹁負債たる引当金﹂の考え方にも︑ 乙れと同様な思考が底流にあるのではない

かと思われる︒それで退職給与引当金については︑従業︑が債権者であり︑納税引当金については国家が債権者であ

2 ( 註

)

る︒:::乙乙に会計学的思考と全く異なった立場がある﹂と︒

引当金勘定を設定する理由は︑会計学上では繰延勘定を資産の一種として借方計上する理由と同一である︒すなわ

ち繰延勘定はその負担を事後の期聞に配分するに対して引当金勘定はその負担を事前に配分する場合に設けられる︒

修繕すべき事実が当期に発生しているが︑何等かの理由で当期に必要な修繕を行わなかったために︑次期以後に修繕

を行わなければならないことが明確である場合には︑その修繕費を見積って︑当期の費用に計上し︑修繕引当金を設

定するのである︒従って修繕引当金は修繕という事柄に対して準備するものであり︑退職給与引当金は従業員の退職

に際して行われる一時給与に対して準備するものであるということができる︒

(9)

一定時点における財産在高の計算を行なうことを目的とし︑

時価を基準として評価するという立場をとるものとするならば︑ともかく︑商法も改正試案では︑乙の財産評価に

ついては時価以下主義をすてて︑原価主義を原則的に採用する方向になっている現在︑正しミ期間損益計算をするた

めには︑たとえ債権者そのものが未確定であっても︑将来における支払額が︑ほぼ確実に見積り得る限り︑乙れが当 商法が財産計算的立場をとり︑貸借対照表をもって︑

期の収益に負担せしめるべき部分を︑当期の費用に計上するとともにその額を同時に負債性引当金として貸借対照表

3 ( 註

)

に計上する必要がある︒

しかし改正試案が以上の如く﹁負債性引当金﹂の否定に近づいたのも︑要は従来の会計学が引当金の内容について

暖昧不明確で各論者によって異なったま冶済ましていたことにも︑一部の責任があるように思われる︒その結果企業

における会計慣行上の引当金勘定の範囲が次第に拡大し︑他方税法も亦きわめて多種類の引当金計上を容認するなど

試案の引当金勘定に対する過度の厳格性も︑いわばこれらの事態えの反控といえないとともない︒

( 註

1)

大 住

達 雄

稿 ﹁

引 当

金 の

限 界

( 註 2

)

太 田

哲 三

稿 ﹁

引 当

金 勘

定 の

再 吟

味 ﹂

( 産 業 経 理 引 巻

14

号 )

( 産 業 経 理 引 巻

11

号 )

( 産 業 経 理 引 巻

19

号 )

( 註 3

)

坂 本

安 一

稿 ﹁

会 計

上 の

引 当

金 と

準 備

金 ﹂

‑引当金に関する税法上の取扱いは従前においては引当金勘定への繰り入れは︑すべて利益の留保と考えて課税利益

の計算に加えられていた︒固定資産から直接控除した減価償却費は法定の範囲内で損金として認めていたが間接法に

よった場合すなわち減価償却引当金を設定した場合は理由の如何に拘らず引当金は利益の留保であるとして減価償却

引 当

金 勘

定 に

つ い

L... 

/

(10)

経 営 と 経 済

/

、 四

費を損金として認めない矛盾した時代があったが︑しかしシャープ勧告以後はか︑ることはなく青色申告法人に対し

ては多くの引当金乃至準備金が設定される乙とが認められた︒現在において税法が引当金への繰り入額を損金として

認めている項目は︑貸倒準備金︑渇水準備金︑違約損失補償準備金︑異常危険準備金︑特別修繕引当金︑退職給与引

当金であり︑租税特別措置として価格変動準備金︑輸出損失準備金がある︒このように税法が多くの引当金乃至準備

( 註

1)

金を設定することを認めたが︑か﹀る事例は各国の税法にも例をみないとされている︒

しかしこれらの引当金乃至準備金が︑その繰入額を税法上損金として取扱はれでも︑乙れがわれわれの会計理論上

そのま︑容認される引当金勘定に該当するものではないのである︒例えば価格変動準備金は棚卸資産と有価証券とを

対象として︑これらの将来の価格の低落に備えるために特定額以下の金額を価格変動準備金勘定に繰り入れた時には

その繰入額を損金として認めるものである︒従って会計理論上の立場からは︑その費用性を認めることができない︒

あくまでも利益の留保である︒乙の乙とに関し﹁税法と企業会計原則との調整に関する意見書﹂にも次の知く述べて

い る

﹁価格変動準備金は︑その会計上の性質は貸倒準備金のととき評価勘定ではなくて︑明白に利益剰余金に属するも ︒

のであるから︑準備金繰入時に損金に算入した場合においても︑本来の会計上の性質から見れば︑それは損益計算書

に計上されるべきではなくして︑利益剰余金に負担せしめるべきである

o

﹂と︒このように価格変動準備金はその期間

費用としての合理性から判断して︑利益の留保による利益剰余金と考えるべきである︒税法上の引当金乃至準備金と

せられるものの中にも︑乙れ以外にも利益剰余金と考えられる項目がいくつかある︒これらは税務上︑政策的に損金

算入を認められたものである︒企業経理においては剰余金の処分として︑乙れを計上する方法を認めるのが︑会計理

論としては当然なことと主張したいのである︒

(11)

しかし引当金勘定が積立金としばしば混同される理由は両者がきわめて類似した性質をもつからである︒すなわち

ともに決算前後における単なる帳簿上の科目の振替によって設けられること︒

ω ともにその期間の総牧益の一部であること︒

等があげられる︒そして引当金にはむしろ特定の債権者のないものが多く︑したがって事業を解散するとすれば︑そ

2

( 註

)

れ r け純財産を増加するものとなるが故に資本勘定に属すると解せられたからである︒特にわが国の税務当局がこの ともにその設定によって不特定の資産の留保されることョ

見解を支持したのである︒乙の点に関しては企業の継続を前提とする今日の企業会計においては︑必ずしも企業の解

散を予想する必要はない︒のみならず引当てられる特定目的に関する負担の原因が既に発生している以上は︑それへ

の繰入金を損失と認めることは各年度の損益計算を正確公平にする立場から︑絶対的に必要であるからである︒

故に両者は以上の如き類似性を有するに拘らず︑厳格に区別する必要がある︒

( 註

1)

湊良之助稿﹁税務会計﹂(黒沢清編会計学の学び方六三六頁)

2 ( 註

)

太田哲三著﹁新版会計学﹂百 O 九頁以下

︑ 会 計 上 の 引 当 金

企業会計上一般に引当金勘定として用いられているものの中には︑その意義や内容を異にし︑あるいは極めて暖昧

な性格を有するいくつかの概念を包含していることは既に述べた通りである︒従って論者の中には︑か冶る意味にお

( 註

1

)

いて統一的な定義を与えることはできないとするものもある位である︒そもそも引当金なる文字は昭和九年の商工省

﹁財務諸表準則﹂において従来の﹁準備金﹂に代る用語として︑またしかも利益留保として設定される積立金とは区

引 当

金 勘

定 に

つ い

六 五

(12)

六 六

( 註 2

)

別するものとして用いられたのが最初である︒その後会計原則においては引当金に関する定義を掲げず︑ただ貸借対

照表上︑引当金を評価性と負債性│それも流動負債と固定負債に分属せしめて記載すべきことが定められているに過

( 註 3

)

ぎない︒た Y 財務諸表規則取扱要領の第百三十七に負債性引当金について説明している︒すなわち﹁引当金とは将来

における特定の支出に対する準備額であって︑その負担が当該事業年度に属し︑その金額を見積る乙とができるもの

﹂と規定されている︒従ってわれわれとしては︑引当金の性質を考える場合には︑評価性引当金を含めて︑考慮する

経 蛍 と 経 済

必 要

が あ

る ︒

近代の企業会計の最大の基本的課題は︑企業の継続性を前提として︑企業の期間損益を算定することにある︒その

期間損益算定の方法としては︑実現した期間収益に対して︑その期聞に発生した費用を対応せしめる損益法の立場を

とるのである︒このように期間損益を算定する計算要素は費用及び収益であるから︑正確な期間損益を算定するため

には︑一定の会計期聞に属する費用と収益とを︑乙とととく計上するとともに︑その期聞に属しない費用と枚益とを

期間損益計算に含めない乙とが必要である︒とくに近代の企業会計においては︑当該期間の収益に対応せしめるべき

費用のうちで︑その基礎となる支出︑もしくは支出を要する事柄が将来確実に起る乙とが予想される場合には︑たと

え︑それが現実化される時期や金額ないし債権者が未確定であっても見積負債を計上して︑その費用額を決定しなけ

ればならないことは珂白である︒乙こに問題とする引当金勘定はその典型的なものなのである︒

従ってわれわれは︑﹁引当金とは継続企業を前提とした場合︑期末の損益計算を正確に行うため︑発生主義︑費用

配分の原則︑費用︑牧益対応の原則などを基礎として費用を見積り計上した場合︑それに見合う金額をもって設定さ

れる負債に準ずる貸方項目である

o

と し

た い

その考え方の根拠としては︑ いうまでもなく繰延勘定を資産として繰越す乙とを認める立場と同様である︒費用を

(13)

期間的に公平に配分せしめるために︑次期以降に費用を配分する場合に繰延勘定が生じ︑今期に費用を配分する場合 に引当金勘定が発生するのである︒資産も負債も継続企業という点からは︑大部分は費用︑枚益を期間的に正しく配 分することから生ずるものである︒したがって︑引当金勘定は費用の見越計上によって生ずる結果にすぎないのであ る︒問題はむしろその原因たる費用の見越計上の妥当性の如何にある︒引当金勘定が貸借対照表負債の部に記載され るから︑引当金勘定は負債でなければならないとか︑あるいはまた法律上の債務でない引当金勘定は負債として計上 することは許されないと断定するのは︑引当金勘定の本質に関する理解を欠ぐものといえる︒

さらに引当金勘定の本質を吟味するために︑評価性引当金と負債性引当金について検討してみることとする︒

( 註

1

)

繭 一

都 勇

庫 講

一 共

著 ﹁

会 計

学 新

講 ﹂

一 一

O 入

( 註 2

)

昭和九年入月財務管理委員会の財務諸表準則の貸借対照表準則幻﹁引当金勘定は特定の損失に対する準備として︑その負

担が当該会計年度に属し︑その金額が見積に依りて定られるものそ示す︒﹂

( 註 3

)

会計原則注解一七

引当金について(貸借対照表原則四ノ同の A の 3 項及び B の 2

項 )

引当金には評価勘定に属するものと負債的性質をもつものとの区別があるが︑後者については︑流動負債に属するものと

固定負債に属するものとを区別する必要がある︒

川納税引当金︑修繕引当金︑渇水準備金のように将来における特定の支出に対する引当舗が比較的短期間に使用される

( 2 )  

見込のものは流動負債に属するものとする︒

退職給与引当金︑船舶等の特別修繕引当金のように相当の長期閉そ経て︑実際に支出が行われることが︑予定されて

いるものは固定負債に属するものとする︒

引当金勘定について

(14)

経 営 と 経 済

六 入

六︑引当金の本質と純化

( 註

1)

引当金勘定は通説上︑評価性引当金と負債性引当金との二分説がとられる︒評価性引当金の代表的なものとして貸

倒引当金︑減価償却引当金があげられる︒これらは貸借対照表の資産の部に記載して特定の資産項目から差引く形式

でもって表示せられる︒すなわち評価勘定の性質をもっと考えられるからである︒

( 註 2

)

しかしながら坂本安一教授も指摘せられるようにこれらの評価性引当金が評価勘定の性質をもつからといって︑そ

れが資産評価の過程から生ずるものではなくして︑期間費用の配分見積りの過程から発生するものである︒例えば減

価償却引当金が設定せられるのは︑固定資産の評価の過程によって設定せられるのではなく︑固定資産の減価償却費

を計上する過程によって設定せられるものだからである︒同様なことは貸倒引当金についても︑いいうる乙とであっ

て貸倒損失の計上は︑期末現在における売掛債権をその現在価額で評価することによって行なわれるものでなくて︑

将来発生する可能性ある貸倒損失を予め当期に見積り︑これを当期の収益に負担せしめることを妥当と認めることに

よって生ずるのである︒

このように評価性引当金の性質を理解するときには︑それは当期の費用に見積り計上せられた資産原価の部分を意

( 註

3

)

味し︑特定の資産項目から差引形式で表示することを適当とするものである︒

負債性引当金の代表的なものとして修繕引当金︑納税引当金︑退職給与引当金等がある︒これらは将来に必要とす

る支出を見積りて︑乙れらが当期の収益の実現に対して因果関係をもっとか︑あるいは既に当期に費用として発生し

これを当期の費用に計上したものである︒そしてこれらは将来における支出を必要とす

る意味において負債的性質をもつものとせられ︑負債性引当金といわれるのである︒その会計上の性質は負債と周じ ているとかの理由によって︑

(15)

く企業の所有する全体としての資産の中から差引かるべき性質のものである︒このことが貸借対照表貸方に記載され

る 所 以 で あ る ︒

修繕引当金のように︑ これは負債性引当金でなく︑評価性引当金であるという説もあるが︑ 一般に認められていな

い︒これらは将来の必要とする修繕費用のための引当を意味するものであり︑将来修繕費として支出せらるべき資金

に対する引当を意味する︒すなわち修繕費は実際に修繕が行われるときにおいて発生するのであるが︑将来の修繕費

の発生は︑設備の現在の使用に原因するのであって︑相当期間の間隔をもって大修繕が行われるような資産について

は︑当該修繕費の見積額の割当額を当期の費用に算入して修繕引当金を設定することは︑発生主義会計の立場から当

然承認さるべきである︒もし修繕費が実際に修繕が行われた期のみの費用とすることは︑修繕の行われた期に過大の

費用を負担せしめることとなり︑適正な期間損益計算が行われ難いからである︒その財政的性質は全く負債の存在と

同一と考えられる︒退職給与引当金︑納税引当金についても︑同様なことがいえると思う︒

このように負債性引当金をみるとき︑評価性引当金とともに︑両者いづれも費用の見積計上の過程において発生す

るものであり︑正確な期間損益計算を目的として設定せられるもので︑しかもそれらはいづれも︑広く資産の中から

差引く乙とによって︑企業資本の現状を示すという意味において︑負債性をもつものといって差支えなく︑その本質

的︑発生的に異るところがない︒又これらの引当金が企業財政上におよぼす効果についても同様であって︑企業内に

おける将来における支払資金の準備をせしめるものとする坂本教授の所論に対し︑引当金の本質を示すものとして共

( 註

4

)

感を禁じ得ない︒

引当金は本来今期の費用とされるものを︑将来における支出額が確定しない場合に︑その支払見込額に基づき計上

( 註

5 )

し︑または今期の収益控除と予測されるものを見積額に基づき計上することによって生ずるものである︒換言すれば

引 当

金 勘

定 に

つ い

/

(16)

経 営 と 経 済

経済的効果が今期に属する費用であるが︑支出が後期になされる場合のうち︑後期になされる支出は正確に定められ

その金額も発生の時点も推算しうるものであって︑またときには支出が実現されないことすらあるという場

合︑乙の推算される支出のために今期の費用とするとともに貸借対照表貸方に設けられる科目が引当金である︒

PL1

えしカ 従ってわれわれとしては︑偶発損失引当金や自家保険引当金の知く︑未だ発生もしていない偶発損失に備えて引当

金を設けるとか︑万一の危険発生に備えて保険会社へ保険料を支払うのと同一の理由のもとに自家保険の引当金を計

上するのは︑あまりにも引当金制度の濫用であり保守主義の原則を適用し過ぎるものと思うのである︒若し企業会計

上必要というならば︑そのための積立金を設定すべきであって︑引当金勘定を用うべきでない︒企業会計上は勘定科

目の意味する内容は︑ できるだけ純粋単一なものでなければならない︒いわゆる混合勘定は排除すべきものであるか

らである︒モントゴメリーもいう如く︑引当金は確固たる根拠に基くものでなければならない︒将来生ずべき恐れあ

りぐらいの漠然たる危険に対しては︑剰余金(積立金)を留保すべきで引当金の問題でないのである︒

企業会計原則注解一七では︑納税引当金修繕引当金のほかに︑流動負債に属する引当金として渇水準備金を認め︑

税法もまた損金の算入して渇水準備金を設けることを認めている︒これは理実と妥協して会計原則中の引当金に入れ

たと︑いわれるけれども︑渇水準備金は豊水期における費用が低いために︑これによって生ずる利益を積立て︑渇水

期におゆる高い費用をカバーせんとする趣旨の準備金であって︑本質的には︑利益留保による積立金とみるべきであ

価格変動準備金もすでに述べたやうに税法にて損金の算入が認められているのである︒ る ︒

定せられるのは︑棚卸資産や有価証券などの価格は︑まだ変動しておらず︑単に将来の値下り損の発生に対する危険

を見越して︑これに備えて︑利益の中から若干の留保を行う場合である︒それ故に価格変動準備金は純然たる利益留 一般に価格変動準備金が設

(17)

保の積立金とみなければならないのである︒従って貸借対照表の表示上からは引当金勘定の分類に入れるべきでなく 利益処分によるべきである

D

現在の企業会計において引当金勘定の純化こそ必要な乙とと思ふのである︒

( 註

1

)

二 分

説 が

通 説

で あ

る が

三 分

説 を

と る

学 者

も あ

る ︒

佐藤孝一教授1評価性引当金 l 貸 倒 引 当 金 滅 価 償 却 引 当 金

2

負 債 性 引 当 金

l

修 繕 引 当 金 ︑ 納 税 引 当 金

p

退 職 給 与 引 当 金 ︑ 船 舶 等 修 繕 引 当 金

3 そ の 他 の 引 当 金

l

自 家 保 険 引 当 金 ︑ 偶 発 損 失 引 当 金

( 註

2

)

坂 本 安 一 稿 ﹁ 会 計 上 の 引 当 金 と 準 備 金 ﹂ ( 産 業 経 理 引 巻

19

号 )

( 註

3

)

( 註

4

)

同 ( 註

5)

丹 波 康 太 郎 稿 ﹁ 引 当 金 の 設 定 原 因 と 性 質 ﹂ ( 産 業 経 理 情 巻 l5

号 )

七︑結

三五

ロ ロ

保守主義は近代の企業会計においても実務的要請から︑その必要性が認められ︑わが企業会計原則中にも︑保守主 義の原則の下に︑予想の損失の計上は認められている︒しかし正確な期間的損益計算を誤らしめる恋意的な方法で会

一般に認められているところである︒従って引当金勘定の設定についても同様な乙とが 計処理すべきでないことは︑

いえるのであって︑期間損益計算を誤らしめるような方法で企業の懇意性に近いまでに放任すべきことではない︒

一般的な会計基準特に実務界においては︑すでに述べたように︑引当金勘定がもちいられている種々の場合を観察

すると︑それは将来特定の支出或るいは特定の資産の減少や費消が現実に生じ︑それが費用の増大ないし︑損失の負

引 当 金 勘 定 に つ い て

(18)

経 蛍 と 経 済 七 二

担となることが予測される場合である︒更らにそればかりでなく将来に現実化するその費用︑損失というものは︑そ

れが現実化する年度の吹益に或るいはその枚益にのみ対するものでなく︑経営活動の状況に鑑みて︑当年度が負担す

べきものであると判断される場合に︑その金額において引当金が設定されている︒従って︑引当金勘定として従来か

ら使用されていな・かった多くの引当金勘定︑例えば五十週年記念引当金︑損害填補引当金等の如きものが設定されて

O

t u‑ ‑

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このように未確定で将来に現実化する事実の予測による費用計上が引当金勘定の設定の原因であると広範囲に解せ

られているようであるが︑これでは引当金勘定と積立金との混同を来たし︑企業の怒意性に任す結果となることを恐

れるのである︒

従って筆者としては引当金設定の基準に関する試案として次のようなものが考えられる︒ ω 正確な期間損益計算を行うために︑当期に属する費用であって︑その発生原因が決算期前にある場合︒ ω 損費の実現は予想し得る将来のうちに発生することが確実性があること︒ ω 損費の見込は︑その金額が合理性ありと証明できるものである乙と︒

乙の三つの条件のうちで ω は費用の実際の実現が予想される将来において確実でなければならないという意味で ω は費用の見積りは期間的損益計算を歪曲するような方法でなされては︑ならないという乙とを意味してお

り︑両者に関しては引当金設定の基準としては異論はないと思われる︒問題は川にあると思われるが︑ ω の基準

のように引当金勘定設定の発生原因を決算期前にある場合と限定することによって︑企業の怠意によって設定される

引当金勘定がある程度抑制されるものと思うのである︒ あ

り ︑

近代会計は発生主義会計の立場により︑当期において実現した蚊益に︑それに関聯する原価を賦課して期間損益計

(19)

算を正確にしようとするものである︒か︑る意味においても ω の基準は設定する要ありと思うのである︒又きうす

る ζ とにより商法改正試案との接近も可能となると思う︒渇水準備金をはじめ︑税法上認められている幾多の引当金

乃至準備金は貸倒準備金を除いて正確︑期間損益計算を行なわんがために︑費用の期間的帰属を考慮したものではな

く︑全く税務政策上から設定したものであるから︑会計理論とは全く別個のものと考えるべきである︒

なお引当金勘定は今後検討すべき問題が残されていると思うが他日を期す乙ととする︒

その他の参考文献

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句 ユ ロ 己 主 何 回 ︑

= A U ω

沼田嘉穂積﹁引当金について﹂(産業経理引巻

l5

号 )

丹波康太郎稿﹁引当金の設定原因と性質﹂(産業経理情巻 l5

号 )

関口重之稿﹁引当金の境界線﹂(産業経理引巻

14

号 )

関口重之稿﹁引当金の本質﹂(産業経理引巻

l

叩 号 )

江村稔稿﹁引当金と利益利余金﹂(産業経理引巻叩号)

( 会

計 別

3 巻

号 )

江村稔稿﹁期間費用の確定と引当金﹂

高松和男稿﹁引当金および積立金の本質﹂

高橋吉之助稿﹁引当金制度の本質と政策﹂

近山仁郎稿﹁引当金の純化﹂(産業経理引巻

14

号 )

渡辺近稿﹁商法改正要綱試案と税法上の引当金﹂

引当金勘定について

( 会

計 加

巻 l3

号 )

10 

( 産 業 経 理 引 巻

4

号 )

11 

12 

( 産 業 経 理 引 巻 l2

号 )

(20)

太田哲三稿﹁引当金勘定について﹂(企業会計氾巻

l

但 )

座談会﹁商法の考え方︑会計の考え方﹂(企業会計市

l

但 )

引当金の実態をさぐる座談会(企業会計但

l 7 )

有 価 証 券 報 告 書 総 覧 大 蔵 省 印 刷 局 発 行

木村重義稿﹁引当金の本質と表示﹂

近代会計学第三巻特分会計 経営と経済

13 

14 

1 5  

16 

17 

18 

七 回

(産業経理加巻│吃号)

参照

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