はしがき
消費税・地方消費税は、租税分類上〈一般消 費税〉と呼ばれる。一般消費税は、広範囲の財 貨・サービスに関する消費に課される。一般消 費税の最大の欠陥は、高所得者には軽い負担し か求めず、低所得者に重い負担をさせ、弱者の 生存権を侵害する反社会保障・違憲の税である 点にある。
安倍晋三政権の与党、自民党と公明党は 2019 年度の税制改定の大綱を決めた(2018 年 12 月 14 日)。大綱では 2019 年 10 月の消費税 率 10% への引き上げに伴う対策に重点を置い ている。安倍首相は、大綱に先立つ臨時国会 で、2018 年 10 月から消費税を 8% から 10% へ と増税するが、「経済に影響をおよぼさないよ う、あらゆる施策を総動員する」と所信表明し ている(2018 年 10 月 24 日)。
中西宏明経団連会長(日立製作所会長)は インタビューで、税率が高い欧州各国など他 の国々の水準に比べ日本の 10% は低いとして、
税率 10% を超えることも「有力な選択肢」だ とさえ述べている。この中西氏の「多国より低 い」との発言は誤りである。ヨーロッパでは、
食料品などの生活必需品と高級品・贅沢品と同 じ税率をかける国などないのである。
日本の消費税の国税収入に占める割合は 27.9%(2017 年度)となっている。イギリスは 消費税(付加価値税)の標準税率は 20% と日 本の 8% の 2.5 倍となっているが、国税収入に 占める消費税の割合は 26.3% と日本より少ない。
安倍首相がいう施策の主要なものは、10%
の痛みをやわらげるとする食料品や新聞などの 税率を 8% に据え置く、「軽減税率」制度である。
だが軽減税率は消費税の増税を推進するための 口実にすぎない。
軽減税率に先鞭をつけた山口那津男公明党代 表は、すでに同党が主張する食料品を主とする
「軽減税率」について 8% に据え置くことが「一 つの基準になる」と述べていた(BS フジ 2014 年 12 月 4 日)。
食料品の税率は、イギリスが 0%(標準税 率 20%)、ドイツが 7%(同 19%)、フランスが 5.5%(同 20%)と日本とくらべて低い。食料 品を 8% に据え置くことを軽減税率と称してい るが、食料品に 8% の税率を継続して適用する のであって、食料品への消費税率が諸外国とく らべても最も重いのが実態である。
総務省の家計調査報告(2 人以上の世帯)で は、2017 年 10 月のエンゲル係数(消費支出 全体に占める食費の割合)は 25.6%。9 月は 26.3%。8 月は 26.8% と高水準を示している。
食料品への高い課税は庶民生活を直撃する。軽 減税率は生活費に高税率を課す政策に他ならな い。
また、消費税増税施策として、個人識別番号
(政府は「マイナンバー」と称している)カー ドを示して買い物をすれば、購入価格に応じた ポイント(商品券)を与えるという。例えば、
上乗せ分が 2% なら、1 万円で買い物をすると 200 円のポイントをつける(上乗せ分は国が負 担する)。政府は、ポイントをさぐることによっ て、国民が何を買っているのかという私事を手 に入れるのである。
個人識別番号カードの交付実績は、現在、
1,534 万枚と日本の人口の 12% 分、すなわち 88% は交付に応じていない。
筆者は 10 月中旬、「不公平な税制をただす会」
の韓国税制調査団の一員として、韓国の中心税 務署の署長、韓国税務士(日本の税理士)会の 会長、韓国で著名な税務士事務所の所長、小規 模事業者から話を聞いた。
韓国では客は個人番号を告げて買い物をす る。店が誰に何を売ったかの情報は店に置かれ た端末で即座に国税庁に通知される。この通知 は 2000 年にクレジットカード、2005 年には現
消費税増税中止の論拠
浦野 広明
金での買い物に導入され、現在ではすべての取 引が国税庁に通知される。
韓国の個人番号制はスパイの摘発をめざし、
朴正煕(1963 年から 1979 年までの大統領)軍 事政権時代に始まった。国民全員に 13 桁の番 号をふり、名前や生年月日、性別、顔写真をデー タベースで管理する。17 歳になると指紋を登 録し、住民登録証(カード)を受け取る仕組み である。
朝日新聞は韓国が買い物を国税が細かく把握 することについて、「『共通番号で政府が行き過 ぎた監視をしている』。表現の自由を求めて活 動する『進歩ネットワークセンター』の張如景 さん(41)は指摘する」と報じている(古城博 隆記者 2013 年 4 月 4 日)。
与党の税制大綱は、消費税増税と同時に行わ れる食料品などの「軽減税率」導入の財源につ いて、昨年の所得税等の増税分と、増税 4 年後 に導入される「インボイス」制度などで賄うと 明記している。
2019 年 10 月からの消費税の 10% への増税 を「確実に実施する」前提で、売り上げに影響 するとされる自動車や住宅への減税措置などで、
業界やメーカーの要望に応えている。自動車や 住宅を買わない人には関係なく、庶民には消費 税増税に加え、「増税対策」と称して行われる 負担ものしかかる。消費の落ち込みが心配とい うなら、増税そのものをやめるべきである。
消費税を増税によらない財源確保こそ重要で ある。本稿は消費税の増税に不同意である理由 を述べるものである。
一 税制の基本は憲法
国が法律に基づいて課税権を行使することに なったのは、近代市民社会の成立による。近代 市民社会の成立前は、封建領主や国王が、国民 の自由や財産に対して勝手に干渉していた。こ のような封建社会を倒したのが市民革命(ブル ジョア民主主義革命)である(たとえば 1789 年のフランス革命)。市民革命の出発点は、封 建領主の一方的な課税をはじめとする権力行使 を制約するものであった。封建社会は、領主が
農民の労働生産物をただで取り上げ、商工業者 に一方的に税金かけていた。市民革命によって 国民を代表する議会が税法を作ることになった。
このような歴史を経て、日本国憲法にも法律に よる納税(30 条)と法律による課税(84 条)
の原則がうたわれたのである。
憲法は一国の法秩序の頂点に位置する基本法 である。憲法の目的は支配者の恣意的支配を抑 制することにある。法をめぐる一切の問題は理 論的にも、実践的にも憲法問題の中に集約され る。
私たちが税を負担する根拠は日本国憲法(憲 法)にある。税についても、当然のことながら、
憲法から出発し、憲法に帰着しなければならな い。
広義の納税者の権利は、「課税のあり方」と「税 の使途」に集約される。憲法は、「国民は、法 律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。」
(30 条)、「あらたに租税を課し、又は現行の租 税を変更するには、法律又は法律の定める条件 によることを必要とする。」(84 条)と規定し ている。法律の定めにより課税され、納税する のであるから、法律(税法)の内容が重要となる。
法は権利と義務に関するルールである。権利 は本来、社会的に弱い者の利益のためにある。
国家と国民の関係でいえば、国家は強大な権力 をもっており国民は弱い立場にある。弱い国民 はルールがなければ、強い権力をもつ国家から ひどい目にあう。それゆえ、租税の賦課・徴収 は国民を代表する議会の制定する法律によらね ばならない。日本国憲法の下においては、国民 が主権者であり、政府が行う国政は国民によっ て信託されているにすぎない。ここで保障され ている基本的人権は行政権および司法権はもち ろん、立法権に対しても保障されたものである。
租税の法律関係は権力と国民の関係である。
権力は多大な力を持つので、税法の解釈を権力 側に委ねると「公正な判断」ができないという 歴史的な認識から法に基づく課税という法的テ クニックが考案された。
憲法 13 条には、国民の権利として、生命、
自由とならんで「幸福追求に対する国民の権利」
がうたわれている。納税者の権利は外からやっ
てくるものではなく自分がつかみとる権利であ る。したがってわたくしたち国民は、あくまで も主体的に幸福を追求する精神をもち続けなけ ればならない。さらに、憲法は「基本的人権は、
人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」(97 条)とし、この自由と権利は「国民の不断の努 力によって、これを保持しなければならない」
(12 条)としている。納税者の権利を主張する ことは、積極的にみずからの主体的努力で幸福、
自由、権利をかちとることに他ならない。
1 課税のあり方(応能負担原則)
憲法が考えている課税のあり方は応能負担原 則(略して「応能原則」とか「能力税」)と呼 ばれる。税金は負担能力に応じて支払うものだ とする考えである。この原則は憲法 13 条(個 人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利の尊重)、
14 条(法の下の平等)、25 条(生存権、国の生 存権保障義務)、29 条(財産権の保障)などを 根拠としている。
憲法の考えからすると、国税、地方税、目的 税である社会保険料(注 1)などは、すべて応 能原則にかなったものにしなければならない。
応能原則は、①所得税の場合、高所得者には 高い負担を低所得者には低い負担を求める、② 同じ所得であっても、原則として、給与など勤 労所得は税の負担能力が低いから軽く、利子・
配当・不動産などの資産所得は負担能力が高い から重い負担とする。③最低生活費・生存権的 財産には課税しないという考えである。
2 税は全部が福祉目的税
現代社会は市場競争で勝ったものが多くの富 を手にする。競争の勝者と敗者との間に貧富の 差が生ずるのは必然の帰結であり、財産(富)
の偏在や所得の配分の不平等が避けがたい。こ の状態を放置すると、所得の不平等な分配が拡 がるので、富の再分配(所得再分配)が要請さ れることになる。
所得再分配は、租税・社会保障・福祉・公共 事業などによって、社会の中で富を移すことに なる。所得再配分は、多額の所得や資産に対し て累進的に課税することで得た富を、社会保障
や福祉などを通じて弱者に移すことである。公 共事業で雇用を創出し所得をもたらすのも一種 の所得再分配といえよう。裏を返せば所得再分 配は、社会に存在する富に対して個人が分け前 を請求する権利である(社会権)。
社会権は国民が人間らしい生活を営むための 保障を政府に対して要求する権利であり、政府 はその要求に応える義務がある、ということが 社会権の重要な位置づけとなる。
憲法は、全世界の国民が平和のうちに生存す る権利を有することを確認(前文)し、国権の 発動たる戦争の永久放棄・戦力不保持および国 の交戦権の否認(9 条)、生存権(25 条)をうたっ ている。このように平和と生存権を重視してい る憲法の下での税金使途原則は「全税が福祉目 的税」だということになる。国民が納税の義務 を負う(憲法 30 条)のは、払った税金が平和 に生存するために使われることを前提にしてい るのである(注 2)。
(注 1)主な社会保険料としては、①健康保険の 保険料、②国民健康保険の保険料・保険税、
③介護保険料、④雇用保険料、⑤公的年金等 の掛金、⑥公務員の共済掛金、⑦労災保険料 などがある。
(注 2)奥平康弘教授は憲法の精神について次の ように指摘している。
「憲法とは何か、そのなかでも、とくに国民の 権利とは何かという問題、あるいは民主主義 の中身とは何なのかという問題は、条文に書 いているかいないのかとは必然的な関係にあ りません。条文に書いているかいないかだけ を問題にする人たちは、実は憲法とは何かと いうことを理解していない。その意味でも、
彼らは煽動家(デマゴーグ)です。『知る権利』
にせよ『環境権』にせよ、それを憲法にどう 表現するかという問題は、なみなみならない 問題です。ただひとこと書けばよいというも のではない。ひとこと書けば、では例外条項 をどうするかといったことなど、次つぎと問 題が出てきます。大事なことは、その規定を バックアップするような憲法の体系が問題と なる。その国の民主主義の成熟度、あるいは 民主主義をいかしていこうとする意欲、民主
主義にかんする制度がきちんとしているかど うかが問われる。条文規定がなくても、憲法 のなかに『知る権利』などの個々の権利を滲 みだすような精神があるかどうかが問題なの です。そうしてはじめて、人びとが『知る権 利』とは何かということを議論しながら、そ の内実を固めていくことになる。いくら条文 で規定をつくっても、魂となるような憲法の 精神がなければ意味がありません。」(『前衛』
№ 715.1999 年 8 月号)
二 応能原則の具体化
応能原則による租税の中心に位置すべき租税 は、担税力の把握が容易な所得課税(国税では 所得税、法人税)となる。所得課税の適正化に は「総合累進課税」が最も適している(注 1)。累 進税率は、一律の比例税率ではなく、課税対象 額が多くなるに応じてだんだん高い税率で課税 する制度である。応能原則に適合するほか、所 得再配分の機能を通じて資源の最適配分に適し ている。累進税率には、一つの課税物件に対し 単一の税率を適用する単純累進税率と、一つの 課税物件を数段階に区分して各段階ごとに累進 する税率を適用、それらを合計して税額とする 超過累進税率とがある。日本では、所得税、相 続税などが超過累進税率を採用している。超過 累進課税は、高額所得者・高額所得法人から応 分の負担をしてもらいこれを社会保障財源に使 うから景気を安定させることになる。
「働いても半分も税金に取られるなら働く意 欲がなくなるのではないか」という向きもあ る。だが所得税の最高税率(45%)が適用され るのは課税所得が 4 千万円超の人である。しか も 45% の税率となるのは 4 千万円超の部分に ついてだけであり、課税所得の全額に 45% の 税率が適用されるのではない(注 2)。所得税は超 過累進課税を採用しており、働く意欲をなくす ことはない。
所得税の税率刻みは表のように 1974 年当時 19 段階の税率区分あり、所得税・住民税の最 高税率は 93% であった(注 3)。住民税は、国か ら地方へ税源移譲をするという名目で 3 段階の
超過累進税率(課税所得 200 万円以下 5%、同 700 万円以下 10%、同 700 万円超 13%)が廃止 され、2007 年度から一律 10% になった(フラッ ト化)。フラット化は累進税率をやめて単一税 率にすることである。住民税の 10% 化は富裕 層減税、低所得者増税をもたらした。
現行の法人税率はいくら所得があっても一定 率の税負担であり、所得の多い大企業ほど税負 担が少なくなる。応能原則からすれば、法人税 であっても累進税率を採用すべきである。わが 国でも所得税における 7 段階の超過累進税率
(5%、10%、20%、23%、33%、40%、45%) を 法人税でも採るべきである。大企業優遇税制 の利用によって巨大商社が実際に支払った税負 担は、法人実効税率が 35% から 40% であった 2010 年度から 2014 年度までの 5 年間において、
三菱商事(7.9%)、伊藤忠商事(2.2%)、三井物 産(マイナス 0.7%)と「ただ」同然だった(不 公平な税制をただす会の共同代表・税理士菅隆 徳氏調べ。『税制研究』№ 69)。
菅隆徳税理士は法人税の超過累進税率適用に よって、2016 年度で 29 兆 1,837 億円の法人税 収が見込めるとしている。ちなみに 2016 年度 の法人税収は 10 兆 4,676 億円である(全国商 工新聞 2018 年 10 月 15 日)。つまり、法人税収 は 29 兆 1,837 億 円 -10 兆 4,769 億 円、 約 19 兆 円の増収が可能となる。
また、2016 年度概算要求の申告所得税収入 は 2 兆 9,160 億円である。1974 年当時の超過 累進課税を適用することにより所得税は 12 兆 7,468 億円 -2 兆 9,160 億円、約 10 兆円の増収が 可能である(注 4)。合わせると約 29 兆円の増収 可能となる。
(注 1)宮本憲一教授(大阪市立大学名誉教授・
元滋賀大学学長・滋賀大学名誉教授)は、総 合累進課税を「人類の叡智」といい、「これ に代わる公平で民主主義的な税制がいまのと ころない」と述べている(宮本憲一
/
鶴田廣 巳編著『所得税の理論と思想』税務経理協会)。科学的社会主義の最初の綱領的文書である
『共産党宣言』(マルクスとエンゲルスの共著 1848 年)は、民主主義をたたかいとる項目の うち税について「強度の累進税」、「相続税の
廃止」を提起している(『共産党宣言 共産主義の原理』大月書店、国民文庫)。
(2)所得税の税率は、分離課税に対するものなどを除くと、5%から 45%の 7 段階に区分されている。次 の速算表により簡単に求められる。
(注 3)次の表は所得税の税率構造の推移である。
所得税の速算表(2015 年分以降)
課税される所得金額 税率 控除額
195 万円以下 5% 0 円
195 万円を超え 330 万円以下 10% 97,500 円 330 万円を超え 695 万円以下 20% 427,500 円 695 万円を超え 900 万円以下 23% 636,000 円 695 万円を超え 900 万円以下 33% 1,536,000 円 1,800 万円を超え 4,000 万円以下 40% 2,796,000 円
4,000 万円超 45% 4,796,000 円
(注)1974 年の住民税の税率区分(所得割)は、道府県 2・4% 市町村 2・3・4・5・6・7・8・9・10・11・12・13・14%
年 所得税率の刻み % 住民税の
最高税率 住民税と合わせ
た最高税率 住民税
の刻み数
1974 10、12、14、16、18、21、24、27、30、34、38、42、
46、50、55、60、65、70、75
(19 段階の累進税率) 18% 93% 13
(注)
1984 10.5、12、14、17、21、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70(15 段階) 18% 88% 14
1987 10.5、12、16、20、25、30、35、40、45、50、55、60(12段階) 18% 78% 14
1988 10、20、30、40、50、60(6 段階) 16% 76% 7
1989 10、20、30、40、50(5 段階) 15% 65% 3
1999 10、20、30、37(4 段階) 13% 50% 3
2007 5、10、20、23、33、40(6 段階) 10% 50% 1
2015 5、10、20、23、33、40、45(7 段階) 10% 55% 1
(注 4)1974 年の超過累進税率を適用して 2016 年分所得税額を概算計算すると次の結果となる。
2016 年分所得税額の概算計算(1974 年の累進税率適用)
所得階級 人数(人) 所得金額(A) 税率 % 控除額 税額 A ×税率−控除
70 万円以下 182,064 964 億円 10 0 96 億円
100 万円〃 291,729 2,508 〃 12 35 億円
(291,729 人× 12,000 円) 265 〃 150 万円〃 710,077 8,947 〃 14 255 億円
(710,077 人× 36,000 円) 997 〃 200 万円〃 783,175 1 兆 3,689 〃 16 563 億円
(783,175 人× 72,000 円) 1,627 〃
250 万円〃 682,081 1 兆 5,273 〃 16 491 億円
(682,081 人× 72,000 円) 1,952 〃 300 万円〃 543,462 1 兆 4,882 〃 18 652 億円
(543,462 人× 12 万円) 2,026 〃 400 万円〃 775,511 2 兆 6,850 〃 21 1,628 億円
(775,511 人× 21 万円) 4,010 〃 500 万円〃 514,575 2 兆 2,960 〃 24 1,698 億円
(514,575 人× 33 万円) 3,812 〃 600 万円〃 359,125 1 兆 9,647 〃 27 1,723 億円
(359,125 人× 48 万円) 3,581 〃 700 万円〃 267,791 1 兆 7,323 〃 30 1,767 億円
(267,791 人× 66 万円) 3,429 〃 800 万円〃 197,699 1 兆 4,770 〃 34 1,858 億円
(197,699 人× 94 万円) 3,163 〃 1,000 万円〃 261,784 2 兆 3,327 〃 38 3,298 億円
(261,784 人× 126 万円) 5,566 〃 1,200 万円〃 167,792 1 兆 8,333 〃 42 2,785 億円
(167,792 人× 166 万円) 4,914 〃 1,500 万円〃 169,720 2 兆 2,710 〃 46 3,632 億円
(169,720 人× 214 万円) 6,814 〃 2,000 万円〃 175,464 3 兆 0,278 〃 50 4,807 億円
(175,464 人× 274 万円) 1 兆 0,332 〃 3,000 万円〃 143,712 3 兆 4,710 〃 55 5,374 億円
(143,712 人× 374 万円) 1 兆 3,716 〃 5,000 万円〃 87,637 3 兆 3,113 〃 60 4,592 億円
(87,637 人× 524 万円) 1 兆 5,275 〃 1 億円〃 44,101 2 兆 9,673 〃 75 6,279 億円
(44,101 人× 1,424 万円) 1 兆 5,975 〃 2 億円〃 12,515 1 兆 6,957 〃 75 1,782 億円
(12,515 人× 1,424 万円) 1 兆 0,935 〃 5 億円〃 4,376 1 兆 2,751 〃 75 6,231 億円
(4,376 人× 1,424 万円) 3,332 〃
10 億円〃 919 6,241 〃 75 130 億円
(919 人× 1,424 万円) 4,550 〃
20 億円〃 315 4,273 〃 75 448 億円
(315 人× 1,424 万円) 2,756 〃
50 億円〃 147 4,417 〃 75 209 億円
(147 人× 1,424 万円) 3,103 〃
100 億円〃 44 3,075 〃 75 6 億円
(44 人× 1,424 万円) 2,300 〃
100 億円超 17 3,929 〃 75 2 億円
(17 人× 1,424 万円) 2,944 〃
合計 6,375,832 40兆1,298億円 12 兆 7,468 億円
注 1 所得階級、人数、所得金額「申告所得税標本調査」(国税庁)により浦野が計算。
注 2 端数切り上げと所得階級の若干の調整により若干の異同が生ずる。
注 3 2016 年度概算要求の申告所得税収入は 2 兆 9,160 億円である。
三 消費税の問題点
次の事項は消費税の主な問題点である。
1 選択の余地がない
消費税(間接税)が直接税と根本的に違うの は、間接税は意に反して税金を取られる点であ る。消費税導入前まであった料理飲食等消費税
(料飲税)のような個別間接税の場合、ぜいた くしたければ高い料飲税を覚悟して高級料理を 食べる、それがいやなら普通の料理でがまんす るというように、個人の意思で選ぶことができ た。ところが、消費税はあらゆる物やサービス について一律の税率で課すので、選択の余地は ない。生存権を原点とする経済的自由権の侵害 をする(憲法 25 条、29 条違反)。一律の税率は、
高所得者が有利で、貧しい者が不利となる。
2 実質的な賃下げ
消費税は実質的な賃下げとなる。現代資本主 義の下では、国会代表や使用者代表のトップ交 渉によって、全国家規模での賃金水準がコント ロールされる。雇用についても、国家は各種の 雇用政策をつうじて市場の拡大または規制をす る。それゆえ、労働組合(労組)の運動は、個 別資本家との交渉だけではなく、国家の労働政 策・各種労働立法と向き合い、労働者に有利な 労働立法をかちとり、不利な立法を阻止すると いう課題に取り組まざるをえない。
さらに、この段階では、社会保障運動も労組 にとって避けられない課題となる。雇用保険、
公的扶助、老人生活保障、各種年金 ・ 手当など の資金(税金や社会保険料)をだれがどのよう に負担するか、それをどのように使うか(使途)
をめぐる運動は、労働者の生活に大きな影響を 与える。社会保障運動は単に労働者だけの課題 ではなく、広く国民一般の生活にかかわる。そ れだけに、労組の社会保障運動は、労働力商品 所有者集団である労組の利己的要求に留まらず、
広く国民一般の生活にかかわる。そのため、労 組の社会保障運動は、広く国民一般の利益を代 表し、組織されていない国民の代理人として組 織労働者がたたかうという、一種の代理運動と
しての意味を持つ。
現代資本主義の下で、国家は、各種政策をつ うじて、労働者の実質賃金を操作しうるように なっている。国家は通貨管理政策によるインフ レ政策、あるいは公共料金等の独占価格につい て一定の価格政策を展開する。
労組が使用者との交渉によって、若干の「名 目賃金」を上げることをかちとっても、国家は、
賃金上昇分を上まわるインフレ政策や高物価政 策をとることによって、労働者の「実質賃金」
を引き下げる。あるいは、重い大衆課税によっ て、賃金上昇部分を国家に吸い上げることがで きる。また貧弱な住宅政策によって、賃金のう ちのかなりの部分を不動産・金融資本に振り向 けることも行う。
要するに労働者の生活を左右する実質賃金は、
国の政策によって決定され、名目賃金と実質賃 金の開きはいちじるしい。
国の諸政策は、労働者の利害のみならず、広 く国民一般の利益にかかわるから、労組が他の 国民各層の運動との共闘を組織し、その中で力 量をいかに発揮し、国民全体の信頼をいかに獲 得するか、という課題を抜きにして、現代の労 働組合運動を語ることはできない。
見逃せないのは、他方において、組合幹部を 権力の側にひきつけ、全体として運動を右傾化 する政策も進んでいる。
このように、複雑にゆれうごく現代の運動に おいて、税の負担と税の使途についての憲法に 立脚した認識が必要とされる。
3 社会保障を切り捨て借金を増やす 消費税を増税しなければならないとする向き はその根拠として、社会保障の財源と多額の借 金(国債)をどうにかしなければならないなど を掲げる。この根拠と裏腹に消費税の増税は国 債費の増加による社会保障を切り捨てと所得課 税の総合累進化の軽視により借金を増やす。
人間は、欲しいものを手に入れる(消費)た め自然に存在する物に働きかけ、自然物を使用 価値のあるものにつくりかえる。人間が目的を もって自然に働きかける営みが生産であり、生 産過程における人間の行為を労働という。
人間の歴史の発展とともに、生産の形態は、
採取・狩猟から農耕へ、さらに機械生産へと発 展してきた。この発展は生産技術の進歩による 生産力の上昇がもたらした。と同時に生産手段 をだれが所有するか、また生産力の上昇の結果 もたらされる余剰な生産物をだれが取得するか という生産関係によって、生産の社会的意味は 大きく変わってきた。
資本主義社会においては、生産手段(資本)
を所有する資本家と、生産手段を所有せず労働 力を資本家に売ることによって賃金を得て生活 する労働者の二つの階級が現れる。
資本主義社会は、誤った決定をした資本家は 市場競争で敗北し、市場競争で勝ったものが多 くの富を手にする。必然の帰結として競争の勝 者と敗者との間に貧富の差が生ずる。
マルクス(注 1)は、このような資本主義社会 において労働者が人間の尊厳をもたらすのは困 難だと考え、生産手段の私的所有と労働力の商 品化を止揚した新しい社会、社会主義社会を提 唱した。ケインズ(注 2)は、マルクスとは違っ た立場から、資本主義を批判し、私的な決定に すべてを任せる自由放任主義に修正を求めた。
財産(富)の偏在や所得の配分の不平等が避 けがたい。この状態を放置すると、所得の不平 等な分配が拡がるので、富の再分配(所得再分 配)が要請されることになる。国の財政のはた らきで重要な位置を占めるのは所得の再分配で
ある。
安倍政権が決定した 2019 年度の一般会計予 算総額は 101 兆 4,564 億円であり、7 年連続で 過去最大を更新している。とりわけ軍事費は 7 年連続で増加の 5 兆 2,574 億円となり、一般会 計総額と同様に過去最大となっている。
2019 年 度 の 予 算 案 の 税 収 は 62 兆 4,950 億 円、国債費を除く支出は 77 兆 9,482 億円であ る。国債費を除く支出が税収より 15 兆 4,532 億円多い(赤字)。赤字を穴埋めする新規国債
(国の借金)発行額は 33 兆 6,598 億円と税入の 52% を超える。借金があれば元金と利息を支 払わなければならない。国債の元金支払償還と 利息の支払は「国債費」という歳出となる。予 算の「国債費」は 23 兆 5,082 億円と税収の約 38% を占める。これではとても社会保障費に 回す金など出ない。この予算構造こそが社会保 障費削減の元凶なのである。
安倍首相が政権に復帰してから進めてきた税 財政政策では経済の立て直しは進むはずもな い。消費税が 2014 年 4 月から増税され、国民 の暮らしは苦しくなっている。財政は完全に破 綻している。安倍政権は 2020 年度までには国 の財政のうち国債の返還などに充てる費用を除 く経常支出を借金に頼らず税収で賄うようにす る「プライマリーバランス黒字化」を目標に掲 げていたが 、 今では所信表明演説などで口にも できなくなっている。
表は 2019 年度一般会計予算案である。2019 年度一般会計予算案(2018 年 12 月 21 日閣決定)
歳入 歳出
税収入 所得税 法人税 消費税 その他 税外収入 国債発行
62 兆 4,950 億円(61.5%)
19 兆 9,340 億円(19.6%)
12 兆 8,580 億円(12.6%)
19 兆 3,920 億円(19.1%)
10 兆 3,110 億円(10.1%)
6 兆 3,016 億円( 6.2%)
32 兆 6,598 億円(32.1%)
社会保障 公共事業 文教科学振興 軍事費 その他
地方交付税交付金 国債費
返済(償還)
利払い
34 兆 587 億円(33.5%)
6 兆 9,099 億円(6.8%)
5 兆 6,025 億円(5.5%)
5 兆 2,574 億円(5.1%)
10 兆 1,347 億円(9.9%)
15 兆 9,850 億円(15.7%)
23 兆 5,082 億円(23.1%)
14 兆 82 億円(13.8%)
9 兆 5,000 億円(9.3%)
合計 101 兆 4,564 億円(100%) 合計 101 兆 4,564 億円(100%)
パーセントが一致していないのは端数切捨てによる
4 軍事費の拡大
軍事費は、消費税導入前の 1988 年には 3 兆 7 千億円だったのが、消費税導入後増額につ ぐ増額である。1989 年の消費税導入以来、消 費税の税収は累計 349 兆円であるのに対して、
2017 年度までの法人 3 税の減税額は累計 280 兆円で、消費税収の大部分が法人税減税の穴埋 めと軍事費に消えたのである。
安倍政権は、日本の新たな軍事方針「防衛計 画の大綱」(大綱)と、2019 年度〜 2023 年度 の武器調達計画を示す「中期防衛力整備計画」
(中期防)を閣議決定した(2018 年 12 月 18 日)。
5 年間で過去最大の 27 兆 4,700 億円を計上し、
前中期防の 24 兆 6,700 億円から 2 兆 8 千億円 増額した。日本の軍事費は、安倍首相が 2012 年末に政権復帰してから増加に転じ、2016 年 度には史上初めて 5 兆円を突破し、その後も拡 大し続けている。政府は今後、海上自衛隊の「い ずも」型護衛艦を改修し、戦闘機が発着艦でき るようにする。安倍内閣は、米国製の戦闘機 の F35 を将来的に 147 機体制とする方針を閣 議で了解した。現在取得中の 42 機からさらに 105 機を追加購入する。また、政府が従来、違 憲の敵基地攻撃能力の一つとしていた長距離巡 航ミサイル(スタンド・オフ・ミサイル JSM、
JASSM、LRASM)の導入をするとしており、
F35A へ搭載しようとしている。こうした違憲 の兵器を湯水のごとく購入することで、安保法 制 = 戦争法の具体化を加速している。
トランプ米大統領は、2018 年 9 月の国連総 会の際、安倍首相に対し「私のために尽くさな ければならない。われわれは巨大な(貿易)赤 字を欲しない。もっと(米国製品を)買わなけ ればならない」と迫ったことを明かし、「彼ら は膨大な量の軍事装備品を買うことになる」と 語っている。菅義偉官房長官も、首相が日米首 脳会談(2018 年 9 月 26 日)で「米国装備品を 含め高性能な装備品を導入することがわが国の 防衛力強化にとっては重要だ」と大統領に伝え たことを認めている。
5 景気に関係なく税率上げる
消費税法が 2012 年 8 月 10 日に改悪され、そ れまで 17 年間上がらなかった消費税率が 5%
から 8% に上がった。しかし、この改悪は単純 に税率の引上げを認めたのではなく、「消費税 率の引上げ施行前の経済状況を勘案して税率引 き上げを停止する」(増税法附則 18 条 3 項、い わゆる「景気条項」)を置いていた。
安倍首相は 2014 年 11 月 18 日の記者会見で、
消費税 10% への増税(15 年 10 月)を 17 年 4 月まで、先延ばしすると発言した。この先延ば しは「景気条項」の適用であるから法改定を要 せず実施できた。ところが、安倍自公政権は、
2015 年度税制改定で「消費税増税法」を次の ように改悪した。消費税導入から 27 年間存在 していた「景気条項」を投げ捨てる暴挙である。
「消費税率(国・地方)の 10%への引上げ等の 施行日を平成 29 年 4 月 1 日とする」
「附則第 18 条第 3 項〈生存権配慮規定〉を削 除する」
6 世界一高い食料品の消費税
消費税の税率は、ヨーロッパの国々と比べて 低いといわれるがそれは偽りである。安倍政権 は消費税増税では食料品などの税率を据え置く
「軽減税率」を導入するといいう。食料品の税 率は、イギリスが 0%(標準税率 20%)、ドイ ツが 7%(同 19%)、フランスが 5.5%(同 20%)
である。これらと比べると、日本の食料品 8%
課税の実態は、軽減税率ではなく過重税率であ る。
事実、消費税(付加価値税)の標準税率が 20% であるイギリスの国税収入に占める消費 税の割合は 26.3% だが、日本の 8% 消費税の国 税収入に占める割合は 27.9% であり、イギリス より高い(2017 年度)。
そもそも、10% に上げても食料品を 8% に据 え置くと言うが、これは食料品にも 8% の税率 適用を続けるもので、世界的にみても負担の重 い食料品の消費税率の維持である。
先述したように総務省の家計調査報告(2 人 以上の世帯)では、2017 年 10 月のエンゲル
係数(消費支出全体に占める食費の割合)は 25.6%。9 月は 26.3%。8 月は 26.8% と高い水準 となっている。食料品への高い課税は生活を直 撃する。
2018 年以降の値上げは、缶詰、納豆、パッ クご飯、菓子、パン、チーズ、外食品、ビール、
宅配料、理美容、クリーニング、小麦粉など数 多である。値上げされた価格に過重税率がかか るのだから、生活が成り立たない人が続出する。
7 輸出製造業に巨額の還付
財界・大企業は、2019 年 10 月からの消費税 率 10% 引き上げを確実に実施するよう安倍政 権に求めている。それには訳がある。消費税は 輸出製造業に巨大な利益をもたらすからである。
消費税・地方消費税の納税額は原則として、(課 税売上 - 課税仕入)× 8% で計算する(現行)。
ところが、輸出した課税売上の消費税率は 0%
となっており消費税がかからない(消費税法 7 条)。しかし、0% の課税売上に対応する(課 税仕入× 8%)の金額は全額還付(控除)される。
たとえば、トヨタ自動車の 2017 年 3 月期の単 独決算によれば、図のように消費税を 1 円も払 うことなく 4,076 億 4,000 万円の還付を受けて いる。
この制度は、輸出業者が国内で商品を仕入れ て輸出する場合、仕入れ時には消費税が課せら れるが、輸出先からは日本の消費税を徴収でき ないため、仕入れ時の消費税が還付されると説 明される。消費税は徴収するものでなく価格そ のものである。価格のなかに含まれていると強 弁し事業者に負担させているにすぎない。日本 の消費税を徴収できないという虚構に惑わされ てはならない。
トヨタ自動車株式会社の消費税計算(自 2016 年 4 月 1 日至 2017 年 3 月 31 日)
① 課税売上 11 兆 4,673 億円
ⅰ 輸出売上 7 兆 3,908 億円× 0% 0 円
ⅱ 国内売上 4 兆 0,855 億円× 8% 3,268 億 4,000 万円
ⅰ + ⅱ 3,268 億 4,000 万円
② 課税仕入
9 兆 1,810 億円× 8% 7,344 億 8,000 万円
③ 納税額
① - ②(納税ではなく還付) ▲ 4,076 億 4,000 万円
課税仕入額は売上高の 80% と推算した。
トヨタ自動車株式会社の消費税計算(自 2017 年 4 月 1 日至 2018 年 3 月 31 日)
① 課税売上 12 兆 2,014 億円
ⅰ 輸出売上 8 兆 1,260 億円× 0% 0 円
ⅱ 国内売上 4 兆 0,754 億円× 8% 3,260 億 3,200 万円
ⅰ + ⅱ 3,260 億 3,200 万円
② 課税仕入
9 兆 7,611 億円× 8% 7,808 億 8,800 万円
③ 納税額
① - ②(納税ではなく還付) ▲ 4,548 億 5,600 万円
課税仕入額は売上高の 80% と推算した。
8 インボイス(消費税の内容記載伝票)
消費税法は、2019 年 10 月 1 日から消費税率 を 10% にするが、飲食料品や新聞は 8% のま まにする(複数税率適用)、また 2023 年 10 月 1 日から適格請求書等保存方式を導入する、と の改定がされている(2016 年 11 月 18 日改定)。
事業者が納める消費税額は〔(課税売上 - 課 税仕入)×税率 〕で求める。課税仕入は、事 業者が商品や資産の購入代金やサービスを受け た代金である。
課税仕入は「仕入税額控除」という。「適格 請求書等保存方式」はこの仕入税額控除の方式 である。
消費税の増税を許すなら仕入税額控除は、4 年間の予行期間を経て、2013 年 10 月 1 日から、
下記内容の「適格請求書等保存」が義務となる。
インボイスを発行する義務者は事業者である。
事業者はインボイスを発行するためには税務署 に登録をしなければならない。税務署は、登録 が済んだ事業者の氏名、名称、登録番号等を公 示する。適格請求書を発行する事業者として登 録できるのは課税事業者だけに限られる。全国 で約 500 万存在する小規模事業者は消費税の不
申告認可業者であるが「免税業者」と呼ばれて いる。これら事業者は仕入に含まれる消費税を 支払っており免税などの適用はされていない。
不申告認可業者は適格請求書を発行できない。
買い手である事業者は、売り手から消費税伝票 をもらわなければ仕入税額控除ができないから、
伝票を発行できない事業者は取引を断られる。
また、課税事業者を志願しても複雑な消費税伝 票を発行する電算機やその維持費を払う余力は ない。
複数税率の適用事業者は、売り手も買い手も 10% か 8% かを区分した帳簿をつけなくてはな らない。飲食料品の税率は 8% にするというが、
生きた家畜(肉用牛、食用豚、食用鳥)は「食品」
に該当せず 10%、家畜の枝肉は食品となり 8%
が適用されるなど税率ごとの区分は簡単でない。
医師、弁護士、税理士、司法書士、社会保険 労務士、行政書士などは、法律上、業務上知り 得た情報を外部に漏らしてはいけない(守秘義 務)。
たとえば、弁護士法 23 条は、弁護士の秘密 保持の権利及び義務について、「弁護士又は弁 護士であつた者は、その職務上知り得た秘密を 保持する権利を有し、義務を負う。但し、法律 トヨタ自動車株式会社の消費税計算(自 2017 年 4 月 1 日至 2018 年 3 月 31 日)10% なら
① 課税売上 12 兆 2,014 億円
ⅰ 輸出売上 8 兆 1,260 億円× 0% 0 円
ⅱ 国内売上 4 兆 0,754 億円× 10% 4,075 億 4,000 万円
ⅰ + ⅱ 4,075 億 4,000 万円
② 課税仕入
9 兆 7,611 億円× 10% 9,761 億 1,000 万円
③ 納税額
① - ②(納税ではなく還付) ▲ 5,685 億 7,000 万円
課税仕入額は売上高の 80% と推算した。
適格請求書の記載事項
1 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号 4 税率ごとに合計した税抜又は税込対価の額及び税率
2 取引年月日 5 消費税額等
3 取引内容(低い税率の対象となる場合はその旨) 6 書類の交付を受ける者の氏名又は名称
に別段の定めがある場合は、この限りでない。」
と規定している。そして弁護士職務基本規程 23 条は、弁護士の秘密の保持について、「弁護 士は、正当な理由なく、依頼者について職務上 知り得た秘密を他に漏らし、又は利用してはな らない。」と定めている。このように弁護士法 23 条は、秘密の対象者を「依頼者」に限定せず、
広く「第三者」の秘密をも保護の対象としてい るほか、弁護士職務基本規程では「漏示」する ことのみならず「利用」することも規制の対象 としている。依頼者は弁護士に秘密を含めたす べての事実を打ち明けて法律事務を委任し、ま た弁護士は依頼者の正当な利益を実現するため にすべての事実を把握する必要がある。仮に弁 護士が職務上知り得た秘密を他に漏らすようで は、依頼者は弁護士を信頼して法律事務を依頼 することができない。そうであるから、弁護士 の守秘義務は、弁護士倫理の中で最も重要な権 利・義務となっている。
また、医師、薬剤師、助産師なども業務上知 りえた秘密を守る義務がある。職務の性質上、
他人のプライバシーや公益と深くかかわる機会 が多いから当然である。守秘義務が存在するの で、患者は医師に包み隠さず話し、安心して診 療を受けることができるのである。
報道機関は取材源を秘匿する職業上の責務が ある。守秘義務のない企業においても取引先に ついては一種の企業秘密である。
医師、弁護士、税理士などは、適格請求書と いう名のインボイスには、医師、弁護士、税理 士などは、客の名前や相談内容を記載するので あるから、秘密を暴露せざるをえない。守秘義 務のない企業においても取引先については企業 秘密である。インボイスの前では守秘義務など
「どこ吹く風」となりかねない。
適格請求書義務下で仕入税額控除は、「適格 請求書発行事業者」から受け取った「適格請求 書」(インボイス)の保存がなければできない。
登録事業者は、適格請求書の交付義務とその写 しの保存が義務となる。税務署が消費税伝票の うっかりミスを意図的に偽ったと判断すると、
10 年以下の懲役もしくは 1 千万円以下の罰金 またはこの両方がかかる(消費税法 64 条)。
財界 3 団体の一つである日本商工会議所でさ え適格請求書保存方式に反対している。恐ろし い適格請求書保存方式を実施させないためには 消費税増税を中止させるしか方策はない。
9 消費税の経理処理
事業者(個人事業者や法人)は、国内におい て事業として商品の販売、サービスの提供、資 産の貸付など消費税等の課税対象となる取引を 行うと、消費者に代わって消費税等を申告・納 税することになる。
消費税の課税売上は、国内取引(課税資産の 譲渡等の対価の額)と輸入取引(関税の課税価 格 + 個別消費税額 + 関税額)である。消費税 の納付税額は、課税売上× 8% マイナス課税仕 入× 8% で求める。課税仕入とは商品・製品・
材料の購入代金、外注費、工場経費、交際接待費、
交通費、広告宣伝費、事務用品、固定資産の購 入代金など消費税が課される支出すべてである。
次の取引は消費税等の性格上の理由・政策的 理由から「非課税」とされている。①土地の譲 渡・貸付け、②有価証券等の譲渡、③貸付金の 利子、保険料等、④郵便切手、⑤印紙等の譲渡、
⑥行政手数料等、⑦医療保険各法等の医療、⑧ 社会福祉事業法等に基づく資産の譲渡、⑨学校 教育法に定める一定の収入、⑩教育用図書の譲 渡、⑪住宅の貸付け。
非課税取引は、売上には課税しない一方でそ の売上に対応する仕入税額を控除しないので、
厳密には非課税ではない(見せかけの非課税)。
課税取引のうち、輸出取引に該当するものに ついては、消費税等が免除される。輸出取引と は、商品の輸出や国際輸送、国際電話、国際郵 便などである。輸出取引等については、売上に は課税されない(ゼロの税率適用)のに加え、
その売上に対応する課税仕入には消費税等の額 が含まれているとして控除され、ゼロ税率の適 用により完全非課税が実現する。
消費税等の会計処理の方法は、①税込経理方 式→売上や仕入を総額で表示する方法と②税抜 経理方式→売上や仕入から消費税等額と仮定し た額を 「 仮受消費税等 」、「仮払消費税等」と して区分表示する方法、とがある。いずれを選
択するかは事業者の任意である。輸出免税制度 によってトヨタなど世界中に輸出しているわが 国の巨大企業は消費税等の巨額の還付・減免と いう優遇措置を受けている。こういうと、「企 業は売上時の仮受消費税と仕入時の仮払消費税 との差額が還付されるだけで、収益には貢献し ておらず優遇税制ではない」という論者がいる。
これは税抜経理方式からくる会計処理のマジッ クを利用した言い分に他ならない。税込経理 方式を採用すれば、仮払消費税等に計上された 金額は費用や資産などに吸収され消えてなくな る。一方、仮受消費税等に計上された金額は収 益として損益計算書に浮上する。仮払消費税が 戻ってきただけという主張は雲散霧消し、輸出 巨大企業に巨額の還付金が転がり込む構図が明 らかになる。仮払金とか仮受金というのは会計 上、内容があいまいで会計を不明瞭とする科目 である。税抜経理方式は、転嫁の有無に関わら ず売上と仕入に一律に消費税等が入っていると し、輸出巨大企業の消費税等による巨額の利益 を隠ぺいするのである。
10 弱小事業者を直撃
課税庁は間接税について、税負担が、納税義 務者である課税物件の製造者等から、その物品 の販売価格を通してだんだん消費者へ転嫁する 税だと説明する。しかし、この税負担の転嫁が 円滑に行われるかどうかは経済的力関係によっ て決まる。力の強い事業者は転嫁が容易である が、力の弱い事業者は消費税等の転嫁が困難で 自腹を切るしかない。それにも限界があり滞納 事業者が続発している。消費税の最大の被害者 は末端の消費者と消費税等を転嫁できない中 小・零細企業である。
(注 1)
マルクス【 Marx, Karl Heinrich 】(1818 〜
1883)は、ドイツの経済学者、哲学者、革命 家、科学的社会主義の創始者。1848 年エンゲ ルスとともに『共産党宣言』を執筆。1867 年『資本論』の第 1 巻を発表。第 2 巻
,
第 3 巻 は彼の死後エンゲルスの手で編集され、1885、1894 年に刊行された。マルクスの社会科学理 論上の最も重要な貢献は
,
剰余価値論を中核 とした資本主義の経済分析にあるが,
その透徹した社会分析は政治学
,
歴史学,
社会学,
哲 学などをも包含する壮大な思想体系であるマ ルクス主義理論を形成している。(注 2)
ケインズ【John Maynard Keynes】(1883 ︲
1946)は、20 世紀前半を代表するイギリスの 経済学者。『雇用・利子および貨幣の一般理 論』(1936)によって経済学にケインズ革命 と呼ばれる変革をもたらした。資本家が望む 生産物の売上を得るには、国民が一定の所得 のもとで消費したいと考える額と資本家が投 資のために残しておきたいと考える額との和(有効需要)が、国民所得に一致していなけ ればならない。しかし、その条件が満たされ たときに、働きたい人々がすべて雇用に機会 を見つけている(完全雇用)とはかぎらない。
そこでケインズは、失業者が多くなったとき には、政府が公共事業により投資を増やせば よいと考えた。第 2 次世界大戦後アメリカを はじめとする資本主義国はそれぞれの国に応 じたケインズ政策を採用した。しかし、1970 年代にはいり、インフレと不況が併存するス タグフレーションや財政破たんが進行する なかで、ケインズ的政策に反対し市場競争に よる価格の自由なうごきに信頼をおく新自由 主義(新保守主義)の経済学(ハイエク、フ リードマンがその代表)が優勢になり、保守 政府の経済政策として採用されてきた。1980 年代のアメリカのレーガノミクス、イギリス のサッチャリズム、日本の臨調「行革」路線 がその代表的な例である。たとえば、イギリ スのサッチャー首相は、「ゆりかごから墓場 まで」といわれた同国のすすんだ福祉制度の 解体をはかり、公営企業や公営住宅を民営化 し、企業規制を大幅緩和、付加価値税の増税 と抱き合わせで所得税や法人税を減税、大衆 の税負担をふやした。この結果、失業者が急 増し、貧富の差が拡大。国民の反撃をよびお こし、退陣を余儀なくされた。
四 真の税制改正
生活必需品を含め原則としてあらゆる商品や サービスに課税される消費税は、低所得者ほど