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What steps should be taken for HRTs to lead primary school English Lessons? A Focus on ELF

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(1)

小学校英語授業における HRT の T1 化を目指して

― ELFの観点から―1

猪井新一*・真歩仁しょうん**

(2019 年 8 月 30 日受理)

What steps should be taken for HRTs to lead primary school English Lessons? A Focus on ELF

Shin’ichi INOI* and Sean MAHONEY**

(Accepted August 30, 2019)

Abstract

The study aims at exploring possible measures to help Japanese primary school HRTs to lead team-taught (TT) English lessons. Interviews with seven Japanese Foreign Language Activity Assistants were analyzed mainly in terms of HRT roles in TT lessons. The interview analysis revealed three major HRT lesson involvement patterns: 1) little or no involvement as bystanders, 2) minimal involvement as third teachers (T3), and 3) active involvement as T1. Some concerns were raised about HRTs English proficiency including Japanese English pronunciation and ungrammatical English use. The concerns are discussed with special reference to Jenkins (2009) concept of English as a Lingua Franca (ELF). Finally, some possible suggestions are made to help Japanese HRTs to lead English lessons.

はじめに

日本の公立小学校における英語教育は正式には,2011 56年生を対象に,週一回の外国語 活動として開始された。その必修化の理由の一つに,当時総合的な学習の時間の中で行われていた 英語授業に関し,各学校における取組に相当ばらつきがあるため,教育の機会均等を確保する観点 から,国として共通に指導する内容を示す必要があった(文部科学省, 2008, p. 4)。2017年度に小 学校学習指導要領の改訂が行われ,2020年度に小学校56年生を対象に外国語が教科として,3        

*茨城大学教育学部英語教室(〒310-8512 水戸市文京2-1-1; Department of English, College of Education, Ibaraki University, Mito, 310-8512, Japan).

**福 島 大 学 行 政 社 会 学 類( 〒960-1296 福 島 市 金 谷 川 字1;Faculty of Administration and Social Sciences, Fukushima University, Fukushima, 960-1296, Japan).

(2)

4年生を対象には外国語活動が導入されることが正式に決定され,2018年度~2019年度はその 移行期として,対象学年児童に対して英語の授業が実施されることとなった(文部科学省, 2018)。

これまで,小学校の英語の授業は,学級担任HRT)と外国語指導助手(ALT)によるティームティー チング(TT)で実施されることが多かった。平成19年度の小学校英語活動実施状況調査(文部科 学省,2009)によると,6年生におけるHRTの指導割合が9割を超え,ALTの授業参加割合は6 強,地域人材の授業参加割合は14.7%程度となっている。地域人材の中には,外国語指導協力員,

外国語指導専門員,英語活動協力員,英語指導員,英語教育アドバイザー等の様々な名称で呼ばれ る方がおり,地方自治体あるいは学校独自でALTとは別に,それらの人材を雇用している実情があ る。学校によっては,HRTALT,外国語指導協力員23人体制によるTT授業,外国語指導協 力員がいわゆるALTとして,HRTとの2人体制によるTT授業となる場合がある。

小学校英語授業におけるHRTが欠かせない存在であることは,旧小学校学習指導要領(文部科 学省,2008p. 16)および新たに改定された小学校学習指導要領(文部科学省,2018p. 48p.

128)に明示されている。新旧小学校学習指導要領において,ほぼ同じ表現を用いて,HRTは児童 の不安を取り除き,新しいものへ挑戦する気持ちや失敗を恐れない雰囲気を作り出ために,豊かな 児童理解と高まり合う学集団作りが求められるとある。HRTALTや外国語指導協力員から協力を 得ながら指導計画の作成や授業の実施が求められており,さらにT1としてその役割を演じること を期待されている。日向端(2012p. 95)も,TTであっても児童をよく理解しているHRTが主導 する原則は変わらないと,同様のことを述べている。しかしながら,実際はHRTの英語力や英語指 導技術等の点から,HRTT1となることが困難なケースが多々報告されてきた(e.g., Mahoney &

Inoi, 2015)。従来は,それらの課題に対処しようとして,小学校教員の英語力や指導技術力の向上

を目的とした校内外の研修の重要性が述べられてきた(高橋,2007;吉田,2008)。

本研究の目的は,7人の日本人の外国語指導協力員とのインタビューを通して,小学校の英語授 業の実情を報告し,HRTT1化に向けてどのような具体的方策が可能であるかについて考えるこ とである。具体的方策を考える際に,上述したように,英語の授業をする上でHRTの英語力が課題 の一つとしてこれまで取り上げられてきた。そこで,本論では,まず,HRTの英語力,とりわけ英 語の発音を議論する際に,ELF (English as a Lingua Franca) の概念を紹介する。次に,インタビュー 調査を分析し,HRTの授業への関わり程度からTT英語授業を3つに分類する。インタビュー調査 の中で,HRTT1になるために,有用と思われる具体策や課題等については,その都度言及する。

最後に,HRTT1化について,どのような方策が可能であるかを論考する。その際,Jenkins (2007,

2009) の提唱するELFの考え方を紹介することで,新たな視点から議論をする。

ELFの基本的な考え方

今や,世界のグローバル化が進み,人,物,情報がある地域・国に限定されるものではなく,英 語が世界の様々地域において,様々な目的のために国際語 (an international language) として使用 されている。Murata &Jenkins (2009, p. 2) は,このような国際語としての英語の呼び方に関して 様々な学術名を列挙している。global Englishes, global language, world Englishes, EIL (English as an international language), international English, ELF (English as a lingua franca ) などである。英語はも

(3)

はや英語母語話者だけにその使用が限定されるものではなく,世界のいたるところで使用されてい る。世界のいろいろな地域で使用される英語は,その土地特有の特徴があり,以前イギリスの植 民地であった国々の英語の例として,Indian English, Malaysian English, Singapore English, Nigerian

English と呼ばれる英語の種類があり,それ独自の発音・文法などをもっているとされる(Jenkins,

2009, p. 40)。日本における英語が,特有の特徴をもったJapanese Englishとして確立されたものか どうかは議論の余地はあるが,世界にはいろいろな種類の英語が存在し,それをWorld Englishes 呼ぶ。

英語母語話者の数は33000万~4億人である一方,第2言語や外国語としての英語使用者は 15億人に達する(土屋ら,2011pp. 4-5)。このような国際社会において,日本の子供たちは 将来英語の母語話者を相手にするよりも,非英語母語話者を相手にして英語によるコミュニケー ションする機会の方が圧倒的に多いことが十分予想される。Jenkins (2009, p. 41) は,ELF (English

as a lingua franca)という用語を用い,日本人英語学習者も含め,従来英語を外国語として学習して

きた国々の人々は,学術的な場面も含めいろいろな場面で,第一言語が異なる様々な人々と,共通 語としての英語,つまりELFを用いてコミュニケーションする必要性があると述べている。

Jenkins (2009) は,従来のEFL (English as a foreign language) ELFは根本的に考え方が違うと述 べ,表1のようにまとめている。Jenkinsによると,EFLELFの根本的違いは,EFLの学習者およ び指導者にとって,英語母語話者の標準的な英語(例えば,イギリス英語およびアメリカ英語)が 目標言語であり,それから逸脱するものはすべて誤りとみなされることである(同書,p .42)。表 1に示されているように,EFL学習者の誤りを引き起こすものは,学習者の母語の持ち込み(L1 transfer)であり,母語による干渉(interference)となる。EFL学習者がどれだけ練習しても誤り を起こしてしまうと,それは化石化(fossilization)となる。EFLにとって目指すものは英語母語話 者の標準的英語となる。一方,ELFは,様々な非英語母語話者がコミュニケーションの手段として どんどん英語を使用することで生じる英語の新しい変種であり,つまりWorld Englishesの一つとな る。従って,いわゆる標準的な英語から逸脱したものではなくなり,言語進化の一現象となる。

Jenkins (2009, pp. 43-47) は,非英語母語話者の中でも,英語力の高い非英語母語者(proficient / competent ELF speakers)の英語の特徴を特定しようとしている。本稿では,ELFの文法および発 音の代表的なものを取り上げる。文法的な特徴の1つとして,動詞の現在時制における3人称単数 の語尾(-s/-es)を省略すること(zero marking)である。この特徴は,EFLから見れば,英語母語 話者の英語の基準に照らすと,誤りとなる。この形態素はなくても意味は通じるため,誤答分析か

1 EFL とELFの比較(Jenkins, 2019, p. 42)

EFL ELF

外国語の一つ World Englishes の一つ

英語母語話者の標準から逸脱するものは,誤り 標準から逸脱するものを正当な違いとみなす 母語の持ち込み,干渉,化石化の特徴 言語接触および言語進化が見られる L1とL2のコードスイッチは英語の知識が不足するた

めに生じる

L1とL2コードスイッチは話者の主体性や仲間意識を 表現する

(注)表は筆者による和訳である。

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らは局所的誤り(local error)となるが,ELFからはごく自然な言語進化のプロセスの一部(part of an entirely natural linguistic process)とみなされる。ELFの別な文法的特徴として,付加疑問文を挙げ,

語尾にその文の主語・動詞に関係なくisnt it?/ is it?”を使用することである。さらに,別なELF の特徴として,とりわけ,日本人,韓国人,中国人によってinformations, advices, furnitures”の ように,標準的な英語なら不可算名詞として扱われる名詞に,直接,接尾辞-s”をつけることで

ある。Jenkins (2009) は,これらのELFの文法的特徴は標準的な英語からは誤りとみなされるが,

言語の自然な均一化・規則化プロセス(a natural regularization process)であると主張する。

Jenkins (2009) は,ELFの発音に関して,意味が通じること(intelligibility)が損なわれないので あれば,わざわざ標準的な英語の発音でなくても良いとする。例えば,日本人英語学習者が苦手と してきたth”の発音[Ө]および[ð]を,[s]および[z]あるいは[t]および[d]で代用した としても,文脈がはっきりしている場合であれば,intelligibilityには支障はないとする。別な例と しては,日本人や韓国人の英語学習者が,語尾に母音を追加する発音である。日本人英語学習者 が,“change”を[tʃeindʒi]のように語尾に[i]を追加して発音しても,intelligibilityは損なわれ ないとする。ただ,intelligibilityを損なう発音として,日本人英語学習者が“birdbɛ:d3を[ba:d と発音することを挙げている。Jenkins (2009) はこのようなintelligibility問題を引き起こす発音は別 として,英語学習者の発音は,例えば,a Japanese English accent, a Chinese English accent, a Thai

English accent等の特徴のように,ELFの正当な発音の種類として認識されるべきであると主張す

る。

以上,Jenkins (2009) におけるELFの文法および発音の特徴を概観したが,Murata (2019)は,

EFL 学習者(大学生)は,日本人大学生を含め,あまりに英語母語話者の標準的な英語に注意を 払いすぎるため,自分の英語の発話に自信がもてず,誤りを犯すのではないかと,英語で自分の意 見を発表することに躊躇すると報告している。さらに,日本の英語教育そのものが,英語のネイティ ブスピーカーの標準的な英語(“SNSNs=standard native speaker norms,同書,p. 14)に深く根差 しており,日本人英語学習者は異なるL1学習者とELFを用いてコミュニケーションする機会を得 る必要があると主張する(同書, p. 21)。

本稿における小学校HRTの英語であるが,いわゆるSNSNs から逸脱したものとなることが多々 あると外国語指導協力員とのインタビューに見られるが,ELFの視点から必ずしもそうとは限らな いこととなる。HRTT1化のための具体策を議論する際に,この点について再度ふれることにす る。

データ収集

20173月~20183月(主に,2017年度)にかけて,外国語指導協力員10人と小学校の英 語授業について個別インタビューを実施した。当時,全員,東日本地区の公立小学校で英語授業に 携わっており,実際のインタビューは真歩仁しょうんが日本語と英語併用で実施し,録音をした。

インタビュー時間は一人当たり1時間程度である。そのうち,7人が日本人であり,本稿ではその 7人の外国語指導協力員(A, B, I, K, N, S, Y)のインタビュー内容を,主にHRTとの関わりから分 析し,小学校英語の実情を報告し,HRTT1化を図るためにどのような対策が必要かについて議

(5)

論をする。

7人の協力者のうちB以外は,全員女性である。以下の表は,7人の協力者の背景とインタビュー 時期である。

結 果

インタビュー調査から,まずHRTの英語授業への関わりの程度にもとづいて,英語授業を次の ように大きく3つのタイプに分類できる。(1HRTがほとんど関わっていない授業,(2HRT T3であり,役割が極めて限定的な授業,(3HRTT1の授業。(1)と(2)の分類の違いは,(1 ではHRTがほとんど授業に関わっていないが,(3)は限定的ではあるものの多少は関わっている授 業タイプである。もちろん,分類上,両者の間に明確な基準なようなものはなく,重なり合う部分 はあると思われる。同時に,それぞれの授業のタイプにおけるHRTの長所および課題等について も述べる。また,HRTT1化を促進するうえで,有益な対策になりうると思われる箇所には適宜,

下線部を施す。

1 .小学校英語授業の分類

(1)HRTがほとんど関わらない英語授業(外国語指導協力員Nさん, Yさん, Aさん)

外国語活動は2011年に正式に小学校教育において必修化され,上述したように,授業における HRTの重要性が学習指導要領で述べられているが,本インタビュー調査を実施している時点におい て,依然としてALTや外国語指導協力員に英語指導をほぼ任せきりの学校あるいはHRTが存在して いる。

Nさんは,1年生から6年生まで担当している。授業の半分はほぼ一人で実施ししている。多く HRTは授業計画・実施にほとんど関わらず,ALTや外国語指導協力員にほぼ丸投げの状況である。

NさんはALTと半分半分程度で授業を展開する。ALTには発音の部分やゲームの説明などをお願い することが多い。ALTの来校は月2回程度であり,外国語指導協力員が休む場合は,授業はキャン セルとなり,HRTが一人では授業を実施することはない。打ち合わせは,ほとんど無く,あった

2 外国語指導協力員の背景的情報およびインタビュー時期

外国語 指導 協力員

資格,その他 インタビュー

時期 A 女 英検2級,中高英語教員免許 2018 3 B 男 専科教諭,小学校教員免許,理科・体育も担当,英検準2 2017 3

I J-shine上級指導者,中英語教員免許 201711

K J-shine, TESOL(MA),通訳資格,アドバイザー 2017年 7

N J-shine 2017 9

S 女 中高英語教員免許,帰国子女 2017 9

Y 女 中英語教員免許 2017 9

(6)

としても授業開始直前に,Nさんの方から2分程度でHRTにその日の授業内容を説明する。HRT とても忙しいので,できるだけHRTに負担をかけないように指導案・教材作成し,授業を展開す る。Nさんによると,HRTは授業をやろうとする気が見られず,ALTや外国語指導協力員がいれば,

HRTが授業をする必要がないという姿勢である。HRTの意識を変えるのは教育委員会であり,協力 員の立場からはHRTに何も言えない。TTによる授業をする際は,3人(外国語指導協力員,ALT HRT)の仲の良さが大切である。そうだと子供が安心するとのことである。

Yさんは,ある小学校1校を担当し,「授業はすべて私が考えて,準備をする」と言い,上記N んとほぼ同じで,HRTはほとんど授業の準備及び実施に関わらない状況である。ALTが来校した時 も,指導案作成・教材準備はYさんが担当する。HRTの役割は,授業中子供が手を挙げたとき,指 名してもらう。理由は子供の名前をわかっているからとのことである。HRTの中には,打ち合わせ はしていないが,積極的に関わってくれるHRTもいるが,ほとんどはYさんがT1である。

Aさんの勤める町には4つの小学校があるが,1か月のうち3週を町教育員会雇用のALTが,1 週を外国語指導協力員のAさんが担当している。4つの学校に共通の年間指導計画はあるようだが,

ALTが指導内容を決定しており,Aさんが授業をする時は,ALTの決めた内容に沿ってT1として 授業を実施していた。

Nさん,Yさん,Aさんとも,それぞれ異なる市や町の小学校外国語指導協力員であるが,指導 案作成,授業展開等をほぼ一人で実施をし,HRTは実質的にはほとんど授業に関わらない状況であ ることがわかる。

(2)HRTはT3 としての役割 (外国語指導協力員Bさん, Sさん)

今度は,限定的ではあるがHRTが授業に関わるタイプのパターンである。BさんがT1として指 導案作成をし,ALTT2HRTT3として授業を実施する。授業の打ち合わせはBさんがALT e-mailで行う。HRTは子供をほめることや,todays main pointの時に,参加する。Bさんが一人で 授業を実施する場合があり,HRTが教室にいないことがある。ただし,2018年度はHRTT1にな る予定である。Bさんによると,HRTは英語力は低くないけど,自信がなく,英語を使うチャンス がないとのことである。HRTは,ALTがいる時に子供と一緒に学習し,ALTがいない時に指導でき たら良いと話す。Bさんによると,HRTT3の役割がよく,発音練習はALTが良いとのことである。

その理由は,デジタル教材はあるが,生の声はやはり違うとのことである。

Sさんは,昨年度ある市内の小学校20数校を回り,1年生~6年生を担当していた。そのため,

同じ児童に会うのは年数回であった。Sさんが学校を訪問するときは,SさんがT1となり,ALT HRTとの3人体制で授業を実施した。活動のやり方をデモンストレーションする時は,Sさんは ALT,あるいはHRTと行なった。Sさんによれば,HRTが児童と一緒に活動に参加し,HRTが楽し いと児童も楽しいとのことである。

(3)HRTがT1 である場合の課題と長所(外国語指導協力員Aさん,Iさん,Kさん,Sさん,Yさん)

3つ目の授業パターンは,HRTT1の場合である。小学校のHRTT1として英語を指導するる がゆえの課題及び長所等がインタビューから見えてきた。

1)で述べたように,AさんはT1として4つの小学校で英語授業を担当していた。しかし,

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20172月頃,町の教育委員会から,次年度は56年生は年間50時間の英語の授業になるから,

半分はHRT一人で教えるようにとの指示があり,さらに町教育委員会雇用のALTからも同様の話が あり,HRTの意識がとても変わったという内容である。次年度からT1になれるようにHRTが必死 に練習をしているとのことである。今では前に出るようになり,T1である。今まではALTがいた からHRTは遠慮をしていたかもしれないという話である。HRTは子供を動かすのが上手で,授業 の構成もわかっている。授業な上手な先生ほど,学ぼうとする気持ちが強い。Aさんによると,T1 としてのHRTの課題は,TTのクラスで,全部一人でやろうとするHRTがおり,活動の適切なやり 方がわからない方がいることである。TTによる授業展開が課題という話である。

2)で言及したSさんは,別な市の学校も担当しており,その学校は2学期(2017年)からHRT T1となり,SさんはT2として教室の脇か後ろに位置している。文科省の研究校の指定を受けた とのことである。Sさんは次のような課題を挙げていた。「HRTの英語が課題であり,単数・複数 のも含め,中1レベルの英語が課題である。従って,HRTがメインになるのは疑問に思う。HRT は意欲はあるけど,カタカナ英語であり,児童がまねる恐れがある。英語の免許を持った専科教員 の方が教えたほうが良く,HRTは授業の展開をすればよい。無理に英語を言わなくてよい。スタン ダードな英語が必要であり,HRTは英語力は要らない。ALTが言う英語をまねたほうが良い。英語 専科教員が教えたほうが良い。日本人(HRT)の変な英語をだめという人がいない。」というよう HRTの英語の課題を挙げた。Sさんは,表1にあるように帰国子女として長年の海外滞在経験が あり,そのことがHRTの英語を課題としてふれた可能性が高い。

Yさんは上述したように((1)を参照),ほぼT1として授業を実施しているが,たまたまHRT T1である授業を見学し,Sさんと似たようなHRTの英語の課題に言及し次のように述べた。「小学 校の先生は今まで英語を教えなくてよかったため,英語が得意なHRTでも,聞いていると,結構文 法的間違いがある。教科になった時,評価ができるかという課題がある。ある程度英語力は必要で ある。子供たちが不幸である。カタカナ英語の人もいるのでよくない。会話教室に行っている子供 もいるので,そのようなHRTは信頼されない。HRTT1になるにはしっかり研修する必要がある。

発音は大事である。HRTはわざわざ苦労する必要がなく,専門性のある外部講師の人材,例えば海 外滞在経験した人などを活用した方がよい。」とのことである。

Kさんはその地域のアドバイザーであり,実際の授業はHRTALTが実施をし,HRTT1とし て指導しているとは明言はしなかったが,HRTの英語の課題についてふれた。HRTはあまり英語 を理解していないので,子供の英語の評価ができないことに言及した。

以上のように,Sさん,Yさん両名とも,HRTの英語力,とりわけ英語の発音を課題である述べ ているのがわかる。英語を教えるには,ある程度専門性が必要であり,その意味で英語専科教員あ るいは外部講師が教えた方が良いと述べているのがわかる。KさんとYさんは,HRTの英語力から 児童の英語を評価できるかという疑問を抱いている。

Iさんは4つの小学校を担当している。すべての学校でHRTT1であり,外国語指導協力員と ALTT2である。ただ,指導案はIさんが担当している。Iさんの場合,HRTの課題というよりは むしろ,HRTが指導する長所にふれている。Iさんによると,外国語指導協力員はHRTT1になる ように援助することを教育委員会から求められており,HRTが英語を話す姿に,子供が驚くと言う。

続けて次のように言う。「HRTが間違っても英語を話すことで,子供もがんばろうとします。HRT

(8)

は子供のことを一番よく知っていて,週1回あるいは月1回しか行かない協力員では,子供理解は 無理です。協力員はHRTT1になるようにHRTに役割を与えて,例えば,Greetingとか天気とか,

簡単な英語による指示などをHRTにお願いしてきたので,すごくHRTが協力的です。○○小学校 1年生~6年生全部のHRTが英語授業に関わるので,学校として協力的です。特に,6年生の HRT5年の時の経験があるのでとても協力的です。HRTの先生は『私できないです』という先 生が多いんですけど,小学校の先生をやるくらいなので,皆さん能力が高くて『お願いします』と 言うとできるんです」と言う。さらに「〇〇小学校の6年生のHRTは,昨年『私は英語が苦手です』

とおっしゃっていたんですが,6年生になって英語の授業を英語で行うことができるようになった と言っていたので,『どうしてですか』と聞いたら『必死でやりました』と。それくらい力がある んです。」と言う。

HRTT1としての長所は,子供を動かすのが上手であり,それは子供理解が豊かであると思わ れる。さらに,HRTが英語を話すことが子供に勇気を与え,いわゆる英語を学ぼうとする学習者モ デル(直山,2008, p. 27)を子供たちに示しているのである。一方,課題としてはHRTの英語,と りわけ,英語の発音とTTの進め方に関するものである。TTの進め方に関しては,研修が必要だと 思われるが,英語のカタカナ発音に関しては,意味が通じれば許容するような態度が必要かと思わ れ,むしろ,課題と捉えなくてもよい可能性がある。なぜかについては,ELF (English as a lingua franca)の考え方から後述する。

 以上,小学校英語授業におけるHRTの関わりに関するばらつきに関してして,大きく3つのパ ターンを示した。(1)のように,HRTが授業にほとんど関わっていない場合,(2)のようにHRT の関わりが極めて限定的である場合,(3)のようにHRTT1として積極的に授業に関与している 場合である。HRTT1として授業を進める場合は,HRTの英語力(とりわけ英語の発音)および 指導方法が課題として挙げられた。

HRTのT1 化を促進するために

1 .HRTの英語力に関する考え方

小学校英語授業においてHRTT1として授業を展開する場合,HRTの英語がカタカナ英語,文 法的に間違っているように外国語指導協力員から指摘されることを述べた。従来型の英語教育で は,HRTは校内外の研修等に参加することにより,英語力(発音を含めて)を向上することが求 められている。某県では,英語検定2級未修得の小学校教員は,夏季休業中に県の英語講習に参加 することを求められている。これらの対策は,Murata (2019)の言うSNSNs Standard native speaker

normsに沿うものである。HRTは何らかの手段で,英語のネイティブスピーカーの英語に少しで

も近づくことが求められているが,ある程度,英語研修に参加したとしても,極めて多忙な学校教 員には限界がある。

小学校HRT自身も英語母語話者の標準的な英語(SNSNs)を強く意識していると思われる。

Butler (2007) は,112名の日本人小学校教員を対象にアンケート調査を実施した結果,そのうち約

6割が英語は英語母語話者が教えるのが最善であるという考えに賛同しており,とりわけ,自分の 英語力が低いと感じていたり,英語に対して否定的な態度を持っている教員ほど,その傾向が強い

(9)

と報告している。英語が苦手と感じ,英語に対し否定的な態度を持つ小学校教員は,SNSNsを強 く意識し,自らが教えるよりも,ALT等の英語母語話者が教えた方が良いと考えている。

猪井(2010)は168名の小学校教員を対象にアンケート調査を実施したが,そのうち約6割が 外国語活動は負担であり,その最大の理由は自分の英語力に関するもの(英会話力,発音,文法に 対する不安や苦手意識)であると報告した。このような不安や苦手意識は,ある意味では,小学校 教員が受けてきた日本の英語教育が長年SNSNsに沿って,実施されてきたことを反映しているの ではないかと思わざるを得ない。Murata (2019)で指摘されているのと同様に,文法や発音の正確 さを意識しすぎてしまい,間違ってもよいから英語でコミュニケーションしようとする態度を持っ ていない小学校教員が相当数存在すると思われる。ある小学校英語の研修会に参加していた一人の 小学校教員は,自らが英語を使う姿勢を児童に示すことは必要であるとの理屈は理解しているが,

気持ちがついていけないと言っていた。英語に対する苦手意識は,短期間ではなく,相当長い年月 にわたり徐々に形成されたものであるから,払拭するのは容易ではない。このような英語に対して 苦手意識を持つ小学校教員には,本稿で紹介したJenkins (2009) ELFWorld Englishesの考え方 を受け入れ,とりわけ発音に関しては,Japanese Englishでよいとすることを提案したい。小学校 HRTには,いわゆるNative Speakerの標準的な発音を求めないことである。HRTに求めるのは,他 の人と英語でコミュニケーションを図ろうとする態度を第一義とすることである。

2 .HRTがT1 となるための具体案

外国語指導協力員とのインタビューデータの分析からは,以下のような対策がHRTT1化に有 効であると思われる。とりわけ,小学校HRTの中でも,英語が苦手で,自らの英語の発音に自信が もてないために,依然として,ALTや外国語指導協力員等の外部人材にほぼ授業をお任せにしてい たり,あるいはT1として英語授業に携わっていない教員にとっては,特に有効と思われる。

・教育委員会,管理職等からのHRTへの指示は必要である。

HRTは子供の前に立つ。Greeting,簡単な英語の指示(クラスルームイングリッシュ)から始める。

・外国語指導協力員やALTHRTを活動に巻き込みながら,活動のやり方,授業の展開の仕方を HRTに示す。

HRTの英語の発音はJapanese Englishであっても自信をもつ。発音は通じればよいとする。

1点目であるが,新旧学習指導要領においてHRTの役割が明示され,2011年度から英語授業 が必修化されているにもかかわらず,HRTT1化が進んでいない小学校があるとすれば,トップ ダウン方式でHRTT1となるように指示する必要がある。それがないと,ALTや外国語指導協力 員に授業はお任せとなり,HRTが英学習者モデルとして英語を使ってみようとする意欲及び指導力 がいつまでたっても向上しない。

2点目は,教室で行う具体的対策である。児童の前に立つというのはT1化の第1歩である。

いわゆる定型表現(挨拶,クラスルームイングリッシュなど)を実際に児童の前で使ってみること である。使用する英語の量を徐々に増やすようにすればよい。教卓の上に,クラスルームイングリッ シュ一覧のようなカードを置いて,授業してもよいと思われる。

(10)

3点目は,外国語指導協力員Iさんのように,HRTに授業の展開の仕方,活動の進め方等を示し,

HRTT1の役割を演じることができるように援助することである。外国語指導協力員は,自分が T1として教えたほうが,効率的であろうが,HRTT1となるように育てていくというような姿勢 が必要であろう。

4点は,「HRTの英語力に関する考え方」で示した通り,英語の発音は通じればよいとHRT みならず,英語教育関係者が認識することである。文法に関しても,意味が通じればよいとし,動

詞の3単元の”-s/-es”等,意味的になくても通じるものについては,あまり着目しなくてよいの

ではないか。従来の日本の英語教育は「正確さ」(Accuracy)に重点を置きすぎるあまり,積極的 にコミュニケーションをしようとする態度を十分育むことができなかった。正確さについては,中 学校英語科で,徐々に指導すればよい。

謝 辞

本研究は,科学研究費助成事業・基盤研究(c)課題番号: 16K02952(代表: Sean Mahoney)の 助成を受けております。インタビュー調査にご協力いただきました外国語指導協力員の皆様に,御 礼を申しあげます。

1)本論文は,全国英語教育学会第45回弘前大会(2019817日~18日,弘前大学にて開催)において口 頭発表したものを修正・加筆したものである。

2)「外国語指導協力員」以外にも,いろいろな名称はあるが,本稿では便宜上,この表現を用いる。

3)“bird”のアメリカ式発音では[bə:rd]と表記される。

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参照

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