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Fintech 革命が保険監督,保険業界に 与える影響

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只今,ご紹介をいただきました金融庁で信用制度参事官を務めております 井上俊剛と申します。長い歴史と伝統を誇る日本保険学会におきまして,今 回のような機会を与えていただき,誠に有難うございます。特に今回,お声 掛けをいただきました学会理事長の福田先生,生命保険文化センターの鈴木 代表理事,大会の実行委員会の先生方,そして,大会をホストしていただい た滋賀大学の先生方にはこの場をお借りしまして,改めて厚く御礼申し上げ たいと思います。

⚑.はじめに

私は,先ほどご紹介いただきましたように,2015年⚗月から約⚑年間,金 融庁監督局で保険課長を務めておりました。その後,2016年⚖月から現在の 総務企画局で信用制度参事官というポストを務めております。このポストは,

そもそも銀行法とか,あるいは資金決済法,貸金業法,信託業法等のいわゆ る信用関係の法令の企画立案に携わるポストですけれども,私の時から保険 関係についても担当させていただいておりまして,そういう意味では私は,

監督サイドと企画立案サイドと双方を担当していたということになります。

現在の担当分野において,Fintech の進展を踏まえた対応は非常に重要とな っており,足下,その対応が大きな課題となっております。そのようなバッ クグラウンドを踏まえて,本日は Fintech が保険監督や保険業界に与える影

*平成29年10月28日の日本保険学会大会(滋賀大学)招待講演による。

/ 平成30年⚑月29日原稿受領。

井 上 俊 剛

【招待講演】

Fintech 革命が保険監督,保険業界に

与える影響

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響について,私見を述べさせていただきまして,今後の法制度のあり方等に ついて,皆様方と共に考えることができたらと考えております。なお,資料 にも書かせていただきましたけれども,資料及び講演中の意見に当たる部分 は私の個人的な見解でございまして,必ずしも金融庁等の見解ではないとい うことを初めにディスクレーマーとしてお断りさせていただければと思いま す。

今更,申し上げるまでもございませんけれども,Fintech はこの⚒~⚓年 で,目覚しく発展している分野だと考えております。金融庁では,利用者保 護とイノベーションの促進という一見二律背反するような,双方の要請を共 に満たしつつ,金融サービスの高度化,あるいは日本経済の成長につなげて いくための対応を進めていきたいと考えております。この⚒年間でも制度整 備を進めておりまして,まず2016年に資金決済法と銀行法が改正されました。

これは,仮想通貨交換業者に登録制を導入するとともに,金融グループ全体 で IT の進展を積極的に取り込んで,柔軟な業務展開を可能にするためのも のでございます。例えば,銀行で,その場の受託会社の銀行の役割を発揮さ せて,IT 子会社の技術を活かすことができるように改正がされたものでご ざいます。

また,⚒年続けて,2017年⚕月にも銀行法が改正されまして,この中では いわゆる電子決済等代行業者といって,顧客と銀行の間に立って,顧客側か らの委託を受けて,銀行から情報を取って,家計簿サービス等を提供するよ うな会社を対象として,登録制を導入致しました。他方,銀行との間では,

決済をできるようにオープン API(Application Programming Interface)を 銀行側が導入できるようにするための法改正がなされました。これによって,

金融機関と Fintech 企業とのオープン・イノベーションを進めていくという ことが期待されているところでございます。

さらに,証券分野におきましては2017年⚕月に金融商品取引法が改正され まして,いわゆる株式等の高速取引である HFT(High Frequency Trading)

の拡大など金融資本市場に巡る環境変化に対応するために,法改正がなされ

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たところでございます。

このように,Fintech を含む情報技術の発展を積極的に取り込むための対 応を立て続けに実施しているところでございますけれども,今申し上げまし た通り,これまでの制度的対応は銀行,あるいは決済関連の制度整備という のが主なものであったということだと思います。これはもちろん,昨今の Fintech と呼ばれるものが,そのまま DLT (Distributed Ledger Technology:

分散型台帳技術)等を背景にして,主に決済の分野で非常に進んでいたとい うことを背景にしているということではございますけれども,保険分野につ いてどうなっているかということも,我々としては非常に高い関心を持って,

フォローしているところでございます。海外のメディアを見ても,保険分野 を決済分野と比較をすると,若干遅れているという評価になっていたのでは ないかと思いますが,近年,その傾向というのは大きく変わってきているの ではないかというふうに見ています。Fintech が保険業界に与える影響とし ては,例えば,サイバーリスクに対する保険の需要が拡大するといったよう な従来型の保険のビジネスチャンスの拡大といった面も勿論あると思うので すけれども,ここでフォローさせていただきたいのは技術革新によって,業 務効率とか顧客利便性が向上するという面です。いわゆる Insurtech と呼ば れる部分に焦点を当てて,議論を進めさせていただきたいと考えております。

⚒.Insurtech の進展

資料の⚑枚目をご覧いただければと思います。左下にグラフがございます けれども,Insurtech 企業へのベンチャー投資を世界規模で表したものでご ざいます。棒グラフが,ディールの取引量でございまして,折れ線グラフが ディール数でございますけれども,グローバルに見て,Insurtech 関連のベ ンチャー企業というのが多くの資金調達に成功しているということがお分か りいただけるのではないかと思います。

金融庁でも,こういう分野について,調査研究を進めてまいりたいと考え

ておりまして,2017年⚙月から Fintech の調査研究のために私の部下を⚑名,

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米国のシリコンバレーに長期派遣しております。彼からのレポートによれば,

現在シリコンバレーでは決済や貸付の分野というのは一時期ほど注目されな くなっているようです。成功した企業はむしろ,既存の金融機関との連携を 模索するためにニューヨーク等に出て行ってしまって,シリコンバレーの方 ではどちらかというと,そういうブームは去った印象を受けているとのこと でした。逆に Insurtech の分野では,幾つかの有力なベンチャー企業に大手 保険会社からの出資が殺到しているというような状況で,一種のバブルのよ うな状況になっているという報告を受けているところでございます。

グローバルに見て,Insurtech 企業は相当数出てきておりまして,ベンチ ャーの Insurtech 企業の例というのを資料にご紹介させていただいています。

2010年にドイツで設立されました“Friendsurance”という会社は Peer to Peer 保険を提供している企業でございます。この Peer to Peer 保険の明確 な定義はまだないと理解していますけれども,例えば,利害の一致する方々 がグループを形成して,支払う保険料をプールさせておいて,一定期間,保 険事故が発生しなければ,保険料がディスカウントされるというような仕組 みがその一例ではないかと思います。

“Driveway”という会社は2010年にアメリカで設立された会社ですけれど も,いわゆるテレマティクス保険というのを扱っています。テレマティクス というのは一般的にはテレコミュニケーションとインフォマティクスから作 られた造語ということで,移動体通信システムを利用して,サービスを提供 する,いわゆる携帯電話等を通じて,サービスを提供するようなものですけ れども,この例のように自動車にドライブレコーダー等を設置して,運転者 の運転特性や運転技術を計測して,保険料に反映させるという仕組みだと思 います。実際の走行距離に比例する形で,保険料を設定するものですとか,

あるいは急ブレーキ,急発進が少ないような場合に,運転手が安全に運転を 行っていると認めて,保険料を安くしているというビジネスモデルがござい ます。

2012年に設立された“Oscar”という会社ですけれども,これは健康増進

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型医療保険というものを扱っています。これはどういうものかといいますと,

ウエアラブル端末等を通じて,歩数などの日々の活動情報とか,あるいはい わゆる BMI 等の生体情報を記録して,健康増進に努めていると評価した場 合には保険料を安くするといったビジネスモデルでございます。

これらのような Insurtech を巡る環境変化というのは,ベンチャー企業を 中心に起こってきているところでございまして,既存の保険会社もかなり危 機感を持って,この Insurtech 企業との連携・協働を進めているというふう に理解しています。PWC の調査(Global Fintech Report 2017)によります と,⚘割以上の保険会社が⚓年から⚕年以内に,Fintech 企業とのパートナ ーシップを増やすと回答しています。あるいは実際に Fintech 企業と連携し ているというふうに回答した保険会社は2016年度の28%から2017年度は45%

に増加してきているという状況がございます。

⚓.IAIS⽛保険業界における Fintech の発展①⽜

資料の⚒ページにお進みいただけますでしょうか。Fintech が保険業 界に今後及ぼし得る影響につきまして,保険監督者国際機構(IAIS)が 2017年⚓月に公表したレポートがございます。Fintech Developments in the Insurance Industry というタイトルですけれども,それを元に考えていきた いと思います。IAIS のレポートでは,Insurtech について保険ビジネスを一 変させる可能性を持つ新技術または革新的なビジネスモデルと定義した上で,

Insurtech の例として,デジタルプラットフォーム,IoT,あるいはテレマ ティクス,ビッグデータ,データアナリティクス,機械学習,AI 人工知能,

そしてシェアリングエコノミーをあげております。また,分散型台帳技術と スマートコントラクト,あるいは P 2 P 保険,オンデマンド保険というよう なものもあげられています。

先ほどテレマティクス保険について,若干説明させていただきましたけれ

ども,テレマティクス自体は自動車保険だけに及ぶ分野が限定されているも

のではございません。例えば,盗難保険等の損害保険にも応用できるものだ

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と思います。例えば,物品に端末を取り付けて,位置情報を追跡することで,

保険事故の認定が容易になるということが考えられますし,従来であれば,

盗取物と同程度の金銭的価値を補償していたものが原状回復費用程度で対応 可能となるようなことも想定されているところです。日本でもいわゆるロー ドバイクにそういうものを付けて,保険会社と組んで,ビジネスモデルをつ くっておられる会社があると聞いています。

また,AI につきましては,例えば,顧客から寄せられた問い合わせ内容 を分析させて,分析結果に基づいて,ウエブでの情報発信の変更ですとか,

あるいは要員の適正配置を実施して,問い合わせ件数の削減や応答率の向上 を図るといったことに利用しているところもあると承知しています。また,

ブロックチェーン技術等の分散型台帳技術というのは,情報連携の高速化で すとか,あるいは契約情報の整合性の維持などのために,銀行分野だけでな くて,保険分野でも今後活用が進むのではないでしょうか。特に,保険と銀 行の分野の双方にまたがるような分野において活用が考えられます。例えば,

貿易金融などというのは一番いい例だと思いますけれども,そういう分野で,

非常に関係者が多いところで,情報を効率的かつ低コストで共有する技術と して,非常に注目されていると思います。

⚔.IAIS⽛保険業界における Fintech の発展②⽜

これらの Insurtech が保険業界にどのような変化をもたらすかということ について,⚓ページをご覧いただければと思います。この IAIS のレポート では,Insurtech が保険業界にもたらすインパクトについて,破壊的なイン パクトの大きさに従って⚓つのシナリオが設定されています。⚑つ目のシナ リオは,保険ビジネスの各機能,いわゆるバリューチェーンが既存の保険会 社に残るというケースでございます。このシナリオでは,伝統的な保険会社 というのは生き残っていますけれども,これは保険ビジネスに大きな変化が 起きないということではありません。新たな技術は保険料の設定ですとか,

あるいは危険選択,不正請求の発見等に大きなインパクトを与えて,新たな

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技術に対応できない保険会社は利益を失うであろうと記載されています。

その時,顧客にどういう影響があるかということですけれども,このレポ ートの中では,商品開発に係るデータの利用が拡大することによって,顧客 の需要に応じた商品の個別化が進行して,テーラーメイド型の商品が増加す る。それに伴って,保険料は低額化するのではないかと分析しています。加 えて,商品間の価格も比較可能性が低下するのではないかという指摘もござ います。

⚒つ目のシナリオは保険ビジネスの各機能が分解されまして,保険会社は リスクの引受けだけに専念していくというケースでございます。このシナリ オでは,Tech firm が顧客との関係構築に成功して,保険は多様のサービス の一部分に過ぎないという位置付けになってくるということでございます。

データ分析は,顧客と相対しているこの Fintech 企業が行って,保険会社は あくまでリスクの引受けだけを行うというものでございます。その場合には 保険会社の機能は縮小されていって,誰が保険リスクを引き受けているかと いうことを顧客は知ることがなくなっていくのではないかと指摘されていま す。また,保険は各種サービス・商品に組み込まれていくということですの で,顧客の立場からは保険商品の比較可能性は大きく低下する可能性がある のではないかという指摘がございます。

⚓つ目のシナリオは,最もドラスティックだと思いますけれども,既存の 保険会社が退出してしまうというケースでございます。このシナリオでは,

大手テクノロジー系企業が保険の仕組みをシームレスに組み込んだ商品を提

供していって,保険ビジネスの全ての企業を代替していくと記載されていま

す。保険業は他のサービスの料金に完全に組み込まれてしまうという未来予

想図でございます。この場合,保険機能を提供する事業者の数というのは減

少することになりますけれども,大手テクノロジー系企業の強みであるデー

タ分析等を活用して,商品の種類がむしろ増えるのではないかとレポートで

は分析しています。また,⚓つのシナリオに共通する点として,例えば,健

康増進型医療保険のようなものが開発されてくると,リスク細分化がより進

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むというようなこともあると思います。逆に,その副作用として,高齢者や 健康リスクの高い方が保険に加入できなくなるという。いわゆる保険排除と いうような可能性も指摘できるのではないかと思っています。

このような,国際的な分析がございますけれども,この IAIS の想定する ようなシナリオのうち,どのシナリオが現実のものとなるかということでご ざいます。これらのシナリオが現実に待ち受けている可能性も勿論あるとい うことでございます。Insurtech が保険業界に与える影響を現時点で正確に 予測することは非常に難しいのですけれども,この Insurtech による保険業 界の変化というのは当局としても十分にモニタリングしていく必要があると 考えています。

⚕.Insurtech への取組状況(生命保険)

金融庁では2017年⚕月から⚖月にかけまして,保険会社の Insurtech への 対応状況について調査を実施させていただきました。調査は全ての国内生・

損保会社,生命保険会社41社と損害保険会社52社を対象と致しまして,全社 から回答をいただきました。各社の国内の取組み状況に加えまして,海外の 動向を把握するために外資系の保険会社につきましては,本社ですとか,あ るいは他国のグループ会社の取組みについても可能な範囲でご回答いただい たところでございます。

調査における Insurtech の分類につきましては,11ページ以下に参考資料 を付けておりまして,その中で12ページにこの分類と質問項目等について,

ご紹介してございます。基本的には先ほどご紹介致しました IAIS のレポー トの分類に従って,Insurtech の分類を設定させていただいたところでござ います。詳細については11ページ以下の参考資料をご覧いただければと思い ますけれども,ここでは概要を資料の⚔ページと⚕ページを使って,ご紹介 していきたいと思います。

まず,資料⚔ページをご覧ください。生命保険会社についてでございます

けれども,自社における取組みということで,いわゆるネット系の生保を中

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心にデジタルプラットフォームが普及しているということでございます。例 えば,ウエブサイト上で見積もりとか,契約申し込みに対応しているものが ございます。あるいは,メッセージアプリを利用して,保険プランナーが保 険相談に対応しているというようなものもございます。さらに,ウエアラブ ル端末を用いて計測した活動データに応じて,保険料を割り引くというよう な商品も扱われています。

例えば,ある社が2017年⚘月から発売しておられる商品ですけれども,大 手通信会社と共同で開発した健康増進型医療保険で,ウエアラブル端末を保 険加入者に貸与し,⚑日の平均歩数目標8ó000歩が達成されたかどうかとい うのを判定した上で,支払期間満了時に達成状況に応じてキャッシュバック をするというような商品が日本でも出始めているというところだと思います。

さらに,AI とかビッグデータを用いた取組みも進行しているというふう に思います。AI,ビッグデータは主に日本ではコールセンター業務におけ る顧客からの問い合わせ内容の分析に利用されているということですけれど も,保険請求の査定の場面でも,このような人工知能を活用していらっしゃ る例がございます。

外資系の会社につきまして,お伺いした本国における取組みというのも書 かせていただいています。基本的には国内生保会社と同程度の取組状況だと 思っていますけれども,特色ある取組みとしては,例えばシリコンバレーを モデルとしたイノベーション拠点というのを上海に設立していたり,あるい は保険,資産運用,Fintech,ヘルスケア産業向けのベンチャーキャピタル ファンドを香港に開設しているものがございます。あるいは,データアナリ ティクスの研究拠点をパリ,シンガポールに開設しているというような例が 報告をしていただいているところでございます。

⚖.Insurtech への取組状況(損害保険)

続きまして,⚕ページ目でございますけれども,損害保険会社の方の取組

状況を説明させていただきたいと思います。全体として,こちらの方の参考

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資料も後でご覧いただければと思いますけれども,損保会社における Fintech の取組みというのは生命保険会社と比べると,一部に限られている というか,全体としては進展していないような印象を受けます。これは私見 ですが,テレマティクス保険というのは,複数の保険会社で取り組んではお られるのですが,外国と比較して,自動車保険の運転特性に応じた割引が,

あまり普及していないのは等級別の料率制度というのが広く普及していると いうことが一つの要因としてあるのではないかと考えています。各論は今申 し上げたテレマティクス保険について15社程度はやっておられるということ です。海外では主に保険引受けの判断とかを保険料の割引にテレマティクス を活用されているということですけれども,国内では主に事故対応防止とか,

安全運転支援というような方向で商品開発が行われているところでございま す。

また,ブロックチェーン技術を保険分野において活用しようとする動きが 自社あるいは外資系の保険会社の本国等における取組みの⚔社に見られると ころです。例えば,国内での取組みとしましては,2016年12月に大手損害保 険会社が大手情報サービス事業者と共同で開始した実証試験があげられます。

これは,外航貨物の海上保険における電子化した保険証券にブロックチェー ン技術を利用することで,人的コストとか,あるいは書類の送達コスト等の 削減効果を検証しようとするものでございます。貿易,金融の領域でブロッ クチェーン技術の活用を検証するような試みというのは,銀行のいわゆる L/C において見られましたけれども,このような実証実験は外航貨物海上 保険について,ブロックチェーン技術の効果を検証するというものでござい ます。

海外の取組みとしては,世界の保険会社や再保険会社の15社が共同で開発 したブロックチェーン保険イニシアチブというのが挙げられるところです。

このイニシアチブは2016年にスイス・リーなどの欧州の保険会社の⚕社で実

施されたものですけども,その後,我が国の損害保険会社も参画していると

いうことでございます。

(11)

⚗.Fintech サポートデスク

次に,金融庁の対応について,若干関係するところをご紹介していきたい と思います。資料の⚖ページでございますけれども,金融庁では保険会社が Fintech を巡る環境変化にどう対応していくのかということをモニタリング するとともに,Fintech 企業に対する支援という視点からも取り組んでいる ところでございます。Fintech ビジネスを始めようとする方は,往々にして テクノロジー出身の方が多く,どういうテクノロジーが金融ビジネスをより よいものにするかといったことや,こうしたら両者のニーズによりよく応え ることができるのではないかというような,ビジネスアイデアは素晴らしい ものをお持ちだと思うのですけれども,それを実現させていくためにどのよ うな法令が関係するかということについて,その方たちにとって必ずしも明 確でないということがございます。

最近,我々は,シンガポールで,世界最大規模の Fintech ハブを運営され ている方と話をさせていただく機会がございました。この方は,⽛通常,金 融機関であれば,ある種,当然のこととして当局とコンタクトを持っている けれども,当局との関係を維持することは,そういう金融機関の方であって も簡単なことではない。その点,スタートアップのような小さな存在の方は 最初,当局のどこがコンタクトパーソンですら分からない⽜ということをお っしゃっておられましたけれども,日本の Fintech 企業においても,同様の ことが言えるのではないかと思っています。このようなことも踏まえまして,

金融庁では2015年12月から,Fintech サポートデスクというものを開設致し まして,Fintech 事業者が相談・情報交換できる体制を整えています。資料 の右上の電話番号にかけていただければ,窓口の人間が対応して,分かるこ とは即答させていただくなり,即答できないことであれば,担当部署の者に 相談して,できるだけ速やかに回答するという仕組みでございます。

開設以来,2017年⚖月末までに問い合わせ総数は222件ございまして,回

答に要した時間は平均しても⚑週間程度でございます。内容を拝見致します

(12)

と,法令解釈に係る問い合わせが約⚘割であり,そのうちの⚘割弱が開業規 制に関するものとなっておりまして,相談終了済みの案件の内訳を拝見致し ますと,約半数で規制対応は不要というような回答をしているところでござ います。保険分野でもいくつかお問い合わせございまして,代表的な例では Peer to Peer 保険の法令解釈に対するお問い合わせというようなことも受け ています。

⚘.Fintech 実証実験ハブ

次に,資料の⚗ページの方をご覧いただければと思います。金融庁では 2017年⚙月21日に東京で開催致しました Fintech サミットの際に,Fintech 企業に対する支援体制の整備の一環として,Fintech 実証実験ハブの創設を 発表させていただきました。この Fintech 実証実験ハブは只今,ご説明致し ました Fintech サポートデスクをさらに進展させたようなものと位置付けて おりまして,個々の実証実験の組成に伴う具体的な課題について適切にアド バイスすることによって,前例のない実証実験を行おうとする事業者が抱き がちな躊躇とか懸念,コンプライアンスとか監督対応上のリスクの払拭を図 ろうとするものでございます。

先ほどの Fintech サポートデスクはどちらかというと,弁護士も雇えない ようなベンチャー企業の方を念頭に置いているのに対して,こちらはむしろ,

社会インフラ的な大きなプロジェクトを大手の金融機関も交えてやりましょ

うというものにも対応できるというものでございます。実験ごとに庁内に必

要なチームを組成致しまして,例えば,本人確認に関するものであれば,犯

罪収益移転防止法のような話の論点は,金融庁以外の関係省庁にもお声掛け

をするというようなものでございます。⚙月21日にこの発表をして以来,か

なりのお問い合わせをいただいておりまして,現在,第⚑号案件について検

討中という段階でございます。

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⚙.機能別・横断的な金融制度のあり方

最後に,Fintech の進展を踏まえた今後の金融制度の在り方について,若 干私見も交えながら,ご説明をさせていただきたいと思います。資料の⚘ペ ージ目をご覧いただければと思います。

2017年⚖月に閣議決定されました未来投資戦略2017,いわゆる政府の成長 戦略ですけれども,その中で,Fintech の推進の部分を一部抜粋させていた だいたものでございます。

Fintech 企業等による金融サービスのイノベーションを促進するとともに,

金融業における新たな技術の活用ですとか,あるいは金融機関が IT 等によ りサービス,能力を機動的に開発・展開し,周辺領域も含めて事業機会を拡 大していく必要性等を十分に踏まえまして,決済業務等を巡る横断的な法制 の整備等,金融機関等を巡る法制の在り方について,さらに検討を進めると いうことでございます。この,いわゆる横断的な法制の整備と金融機関を巡 る法制の在り方というのをぜひ今後,学会の皆様とも一緒に考えさせていた だきたいというふうに考えています。

先ほど,Fintech が保険業界に与える影響について,IAIS が設定した⚓

つのシナリオというのをご紹介させていただきました。シナリオの分岐点と なる重要な問いの一つというのが,保険ビジネスの各機能が保険会社に残る のかということだと思います。金融機関以外の主体が従来,金融機関が担っ てきた機能を分解して,個別の機能に特化させていくよう,いわゆるアンバ ンドリングというような動きというのは,銀行分野では広がりつつある現象 だと思います。例えば,冒頭にご紹介致しました銀行法の改正というのは従 来,銀行が担ってきた決済機能というものの一部をアンバンドリングして,

Fintech 企業が担うというオープン・イノベーションを可能とするものでご ざいます。

現状,既存の伝統的な金融機関にとっては店舗網ですとか,あるいは巨大

な IT システム,バランスシートですとか,それを支えるための自己資本と

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いうのが競争力の源泉になっていると思います。そうした力が,供給側の論 理によるマス定形型商品の提供というような,B to C 型のビジネスモデルを 支える場になっているのではないかと思います。また,資本集約型の膨大な 生産要素を確保するような固定費を,資本集約型の参入障壁によって超過利 潤を確保できる業務と,利潤は薄いけれども品揃えのために提供しているよ うな業務を全体で負担していって,フルライン型のビジネスモデルを成り立 たせている状況にあるのではないかと考えています。

しかし,現在,進展しつつある変化というのは,こうした状況を根本から 変えていく可能性があると考えています。すなわち,スマートフォンの普及 や分散型台帳技術の発展というのは,これまで金融機関の本部と店舗に集中 していた機能を分散化して代替し,あるいは低廉なコストで提供するという ことを可能にする技術ではないかと思っています。この変化が進展していけ ば,将来的には従来は伝統的なフルライン型の金融機関の力の源泉だった巨 大なメカニズムが,レガシーアセット化してしまう可能性というのもあるの ではないかと思います。

この辺りの分析は,今日は簡単に申し上げただけですけれども,10月25日 に金融庁の方で公表させていただきました⽛金融レポート⽜の第⚓章に Fintech への対応として,分析を掲載しています。このレポートは,金融庁 のウエブページからダウンロードしていただけますので,お時間のあるとき にご参照いただければ幸いです。

こうした中で,金融制度や規制がどのように変化すべきか,ということを

少し考えていきたいと思います。資料の⚙ページをご覧いただければと思い

ます。金融システムを取り巻く環境の変化ということで,今申しましたよう

に,IT の進展等,Fintech の進展等によって,金融サービスがアンバンド

リングされて,それがさらに顧客視点でリバンドリングされるような動きと

いうのが拡大しているということが一つ挙げられると思います。これはどち

らかというと,銀行分野を想定したものですけれども,⚒つ目のところがフ

ァンド等の主体によるシャドー・バンキングが拡大していることを記載させ

(15)

て頂きました。特に,リーマンショック以降,世界的にも規制が整備されつ つある点だと思います。

⚓番目はこれも銀行分野で特に顕著だと思いますけれども,少子高齢化や 人口減少,あるいは銀行ではマイナス金利環境を踏まえて,金融機関のビジ ネスモデルの再構築が行われているのですけれども,それを阻害しないよう な規制整備も必要ではないかと思います。現行規制の中で,例えば業務範囲 規制のようなものが,そのようなビジネスモデルの再構築の障害になってい ないかどうかというような視点でございます。さらに,将来的にはデジタル 通貨の出現というものが金融システムを根本から変えてしまう可能性という のもあるのではないかと考えています。

このような中で,現行の金融関連法制の特徴をまとめてみました。ここで は例えば,類似のサービスでも業態によってルールが異なるのではないかと 書かせていただきました。現行の法律体系,金融法の中でも銀行法,保険業 法,あるいは金融商品取引法という形で,縦割りになっているところがござ いまして,同じビジネスをやっていて,同様の機能・リスクであっても,主 体が異なることによって,適用ルールが大きく異なる可能性があると考えて います。このようなことが,先ほどのような,IT の進展によって,金融機 関と非金融機関の垣根が下がってきている,あるいは,金融機関の中でも業 態ごとの垣根が下がってきているという中で,今後とも妥協していくべきな のかというようなことが一つの論点になるのかなと思っています。

⚒つ目として,金融に関する統一的・基本的概念,ルールが存在しないの ではないかという視点を挙げさせていただきます。例えば,多くの金融関連 法制では金銭という概念が当然基礎になっているわけですけれども,例えば,

この金銭の中に仮想通貨が含まれるかどうかということについて明文で定義

されている法令は2016年に手当てされた資金決済法しかないという状況でご

ざいます。資金決済法の場合は,ご存じの方も多いと思いますけれども,マ

ウントゴックスというビットコイン交換所の破綻事件と,G 7 サミットにお

ける国際的な要請を踏まえまして,利用者保護とマネー・ローンダリング防

(16)

止の観点から,緊急に対応する必要があるということで,資金決済法で手当 てされたということでございます。最近見られるケースでは,イニシャル・

コイン・オファリングという仮想通貨のようなトークンを利用して,資金調 達を行うビジネスモデルが出てきておりますけれども,それと金融商品取引 法との関係はどう考えるかという論点が次に出てまいります。現在の金銭の 概念というのは,業法ごとに個別に解釈が違うという状態になっていまして,

もし仮に仮想通貨を各業法に入れていくということですと,資金決済法だけ ではなくて,金融商品取引法を手当てして,さらに貸金業法はどうなのかと いうことが問題になります。次々に全ての法律を改正していくというような 作業が必要になるわけですけれども,むしろ金融に関する統一的な概念やル ールを考えていった方がいいのではないかというのが⚒つ目のポイントでご ざいます。

⚓点目は,各業法に環境の変化に対応していない規制が存在する可能性が あるのではないかということでございます。これは改めて説明の必要はない かもしれませんけれども,インターネットが普及して,オンラインで様々な 契約が完結する時代に,紙の方法を前提としているような規制など,時代遅 れになっている規制が残っていないかというところを検証していく必要があ るのではないかということでございます。

これらの規制体系というのは,先ほど申し上げたような,特定のエンティ ティーがフルラインの金融サービスを提供するようなことを想定した場合に は有効であったと言えますけれども,アンバンドリング,リバンドリングが 進んで,金融取引の境界がよりあいまいになっていくような時代に,現在の 規制体系というのがそもそも最適なものといえるのかどうか。さらに,将来 的にデジタル通貨が広く普及するようになった場合,金融機関のビジネスモ デルとか,あるいは金融システムの根本から再考が必要になるかもしれない という問題意識がございます。

現在の金融関係の規制体系は先ほど申し上げましたように,銀行,保険,

証券等の業態ごとに構築されているため,必ずしも,横断的な観点から規制

(17)

がつくられてきたわけではございません。今後,多様な主体に多様な機能を 果たすことを認めるということであれば,エンティティベースの規制ではな くて,規制自体も機能別に整理することが望ましい方向なのかもしれないと いうことを考えております。

⚙ページと,あとでご覧いただきます10ページ目にいくつか論点を記載さ せていただいております。現在の規制を機能別・横断的に整理するためには いくつかの原則的な視点が必要ではないかと思っておりまして,⚑つ目は同 一の機能・リスクには同一のルールを適用することが必要ではないかという ことでございます。⚒つ目は先ほど申しましたように,金融に関する基本的 なルールを横断化していくことではないかということでございます。⚓つ目 は,環境の変化に対応していく規制を点検していく必要があるのではないか ということが,今後の検討課題ではないかと考えています。

ただ,機能別というふうに申しましても,いくつか難しい問題があると考 えております。例えば,機能をどのように分解して,検討するのか。銀行法 で申しますと,銀行法には為替取引,預金の受け入れ,融資,そのいずれか をやる場合は銀行業の免許を取得してくださいという規定がございます。銀 行の機能の分解は,この⚓つの機能でいいのかどうかが問題になります。ま た,預金の受け入れと融資を同時に提供するものがあれば,それは信用創造 機能という,もう一つ,別の概念で捉えられるかもしれません。いわゆるシ ステミックリスクが生じるということとなり,単純にそれぞれの機能に対す る規制で十分かどうかというようなことが議論になり得るのかなと考えてい ます。

保険分野でも,リスク移転というようなところが一つの大きな機能である のかと考えています。しかし,隣接する分野,例えば,今日も少しお話が出 ていましたけれども,保険デリバティブと言われるものとどういうふうに機 能が違うのかというようなことも,今後検討していく必要があるのかなと考 えています。

10ページで保険ビジネスの各機能を書かせていただきました。どちらかと

(18)

いうと,バリューチェーンをベースに分解してみたものです。商品開発,募 集,販売,引受,リスク管理,保険金の支払いというふうに一応,分類して いますけれども,こういうような機能別の分類がそもそも適当かどうかとい うことについては,いろいろなご意見があると思います。学会の先生の中で も,いろいろなご意見があると思いますけれども,例えば,募集,販売とい うところの機能というのを考えていったときに,そもそも保険特有の部分は 何なのかと。顧客との間の仲介ということを考えると,いくつかの金融商品 仲介業とか,あるいは銀行代理業,電子決済等代行業との関係をどういうふ うに考えていくのかというところも,一つの論点になっていくのかなと思っ ています。10ページにございますように,そのときに規制で守るべき機能は 何か。あるいは,多様な形態間の競争条件の公平をどう確保していくのか。

あるいは,グループ内の利益相反というのをどう防いでいくのか。あるいは,

規制しない機能から守るべき機能へのリスク遮断をどう確保するのかといっ た点はいずれも難しい問題だと思っています。さらに,機能を仮に整理でき たとしても,例えば,エンティティを前提としたような従来の規制との関係 をどう考えていくかという論点は残ると思っています。

一例を挙げますと,現行のセーフティーネットの規制が,例えば預金保険 や保険契約者保護機構といった規制は,倒産法との関係もあって,当然エン ティティをベースを前提にしているわけですけれども,それと機能別法制と の関係というのをどういうふうに考えていくかというような論点はあるのか なと思っています。

さらに,それと多分,密接に連携する形で,各免許業種,銀行ですとか保 険には業務範囲規制というのがございますけれども,これを緩和できるかど うかというようなことも,エンティティ別の規制と機能別の規制というもの のバランスをどういうふうに考えていくかということにも及んでいくのでは ないかと思います。

さらに,むしろ私どもの方の問題なのかもしれませんけれども,機能別法

制の下で,監督というのはどういうふうにやるべきか,というような論点も,

(19)

無視できないものだと思います。

これらは,いずれも大変難しい課題を含んでいるというふうに考えており まして,今後,数年かけて,行政のみならず,学界,業界の皆様の視点も参 考にしながら,中長期的に検討していく必要があるのではないかと考えてお ります。特に,この検討に当たりましては,日本保険学会の先生方のご協力 もぜひいただければと思っております。本日,この前のセッションで,若手 研究者の育成について,大変熱い議論を拝聴させていただきましたけれども,

中長期的な課題となることを考えれば,ぜひ若手の先生にこの検討にも積極 的に参画していただけるということを期待しているところでございます。引 き続き,金融行政へのご協力,ご支援をお願い致しまして,私からのお話を 終えさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。(拍手)

(筆者は金融庁勤務)

(20)

Fintech革命が保険監督、保険業界に与える影響

平成29年10月

金融庁信用制度参事官 井上俊剛

※本資料の意見にわたる部分は、講演者の個人的な見解であり、必ずしも所属する 組織の見解ではございません。

128 108

586

329 582 2,624

2,230

18 17

32 48

69 100

128

0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000

0 20 40 60 80 100 120 140

2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

ディール数(件)

Insurtechの進展

 近年、Insurtech(インシュアテック)の分野で、世界的に起業が活発化。

 既存の保険会社は、Insurtechをめぐる環境変化に危機感をもつとともに、Insurtech企業との連携・協働 等を進めている。

1

(百万ドル)

Insurtech企業へのベンチャー投資(グローバル)

ディール取引量(右軸)

(出所)FT Partners

本社:米サンフランシスコ 設⽴:2010年 特色:テレマティクス 本社:米サンフランシスコ 設⽴:2012年 特色:オンデマンド保険 本社:独ベルリン 設⽴:2010年 特色:Peer to Peer保険

本社:米ニューヨーク 設⽴:2015年 特色:システム効率化 本社:仏パリ 設⽴:2013年 特色:AI、ビッグデータ Insurtech企業の例

本社:米ニューヨーク 設⽴:2012年 特色:健康増進型医療保険

(出所)各社ホームページ

【講演資料】

(21)

IAIS「保険業界におけるFintechの発展」(2017年3⽉)

 保険監督者国際機構(IAIS)は、本年2月、「保険業界におけるFintechの発展」を公表。同レポート で、Insurtechは保険会社のビジネスモデルに重大な影響を及ぼすとされている。

 Insurtechの主要な例としては、以下が掲げられている。

2

(出典)IAIS「Fintech Developments in the Insurance Industry」 2017年3月公表

デジタル・プラットフォーム、IoT

-スマートフォン上のアプリやウェブサイトで、保険の加⼊や保険⾦の請求等を⾏う

テレマティクス

-通信情報端末から収集したデータをもとに保険料等を算出

ビッグデータ、データアナリティクス

-ビッグデータ技術(ライフログ等)を利⽤して、保険商品の開発、保険料の算出、保険⾦の不正請求の 発⾒等を⾏う

機械学習、AI

-データから特定のパターンを⾒つけ出し、保険料の算出、保険事故の発⽣防⽌、保険事故の認定等を

⾏う。

分散型台帳技術(DLT)、スマートコントラクト

-分散型台帳技術等を利⽤することで、情報連携の⾼速化、契約情報の整合性の維持、事務コストの 削減等を⾏う。

P2P保険、オンデマンド保険

-利害の⼀致する者がグループを形成し、⽀払う保険料⾦の⼀部をプール。保険請求が⼀定期間ない等 場合には、保険料がディスカウント。(P2P保険)

-必要な物に対して必要な期間だけ保険をかける。(オンデマンド保険)

IAIS「保険業界におけるFintechの発展」(2017年3⽉)

 レポートでは、Insurtechが保険業界・市場に与える影響について、3つのシナリオに分けて分析。

3

○テクノロジーの進展に対応できた保険会社が⽣き残る。

○顧客の需要に応じた、商品の個別化(individualization)が進⾏。業務の効率化に伴い、保険料は低額化。

保険ビジネスの各機能が既存の保険会社に残存するケース

1

(出典)IAIS「Fintech Developments in the Insurance Industry」 2017年3月公表

○保険は、各種サービスや商品の中に組み込まれ、保険会社はリスクの引受け・分散等に専念。保険会社の機能が 縮小化され、保険会社の選別が進む。

○保険商品はサービス・商品に組み込まれているため、保険商品間の比較可能性は減少。

保険ビジネスの各機能が分解され、保険会社はリスクの引受け等に専念するケース

○大手テクノロジー系企業が、各種サービスや商品の中に保険をシームレスに組み込んで提供。

○個人データの取扱い(SNS上の個人プロフィール等)が課題になる可能性。

既存の保険会社が退出するケース

(22)

■ ネット系生保を中心に、デジタルプラットフォームが普及

・ ウェブサイト上で、見積り・契約申込み・契約内容照会・保険金請求手続き等に対応

■ ウェアラブル端末を用いて計測した活動データ(歩数・心拍数等)に応じて保険料を割り引く 商品を取組中(10社程度)

・ 平成29年8月、業界初の商品が販売

■ AI・ビッグデータを用いた取組みが進行中

・大手テクノロジー会社が開発した意思決定支援システムを導入し、顧客がウェブサイトに入力した質問に対して的確な回 答を表示

・ 保険金支払業務に大手テクノロジー会社が開発した意思決定支援システムを導入。請求書類の受付・支払査定・支払漏 れの点検等において、情報のデータ化・業務の自動化等により、迅速な支払いを実現

■ 基本的には、国内生保会社と同程度の取組状況

■ 特色ある取組みは以下のとおり

・ シリコンバレーをモデルとしたイノベーション拠点を上海に開設

・ 保険・資産運用・FinTech・ヘルスケア産業向けのベンチャーキャピタルファンドを香港に開設

・ データアナリティクスの研究拠点をパリ,シンガポールに開設 自社における取組み

本国における取組み

 本年6月、⽣・損保会社に対して、IAISのレポートにおけるInsurtechの分類に従って、取組状況を調査

(自社での取組みに加えて、外資系保険会社については本国での取組みを調査)

 ⽣命保険会社の取組状況は以下のとおり。

Insurtechへの取組状況(生保)

4

■ 主として安全運転を促進する観点から、テレマティクス保険を取組中(15社程度)

・ 平成29年度に複数の損保が商品を取扱開始

■ ペーパーレス化・手続きの迅速化・セキュリティ強化の観点から、ブロックチェーン技術の活用を 検討する動き

・ 外航貨物海上保険における、保険申込・証券発行・保険金請求手続き等

・ 損害調査における、保険会社と鑑定会社の資料の共有

■ 基本的には、国内損保会社と同程度の取組状況

■ 特色ある取組みは以下のとおり

• 保険会社15社(※)が、共同プロジェクト「ブロックチェーン保険イニシアチブ(Blockchain Insurance Industry Initiative

「B3i」)」を企画。グローバルに展開する保険事業でのブロックチェーン技術の活用、業界共通プラットフォームの構築を検討

※ 15社:Tokio Marine HD(日)、SOMPO HD(日)、Liberty Mutual(米)、RGA(米)、Allianz(独)、

Hannover Re(独)、Munich Re(独)、Swiss Re(瑞)、Zurich(瑞)、Aegon(蘭)、 Achmea(蘭)、

Ageas(ベルギー・蘭)、XL Catlin(英)、SCOR(仏)、Generali(伊)

自社における取組み

本国における取組み

Insurtechへの取組状況(損保)

 損害保険会社の取組状況は以下のとおり。

5

(23)

FinTechサポートデスク (フィンテック企業に対応する金融庁のワンストップ・サービス) について

【法令解釈類型別】 【相談終了済案件の内訳】 【相談終了済案件の対応期間】

平均5営業日

 開設(15年12月14日)以来、17年6月30日までの約1年半で、問合せ総数は222件

 法令解釈に関する問合せ179件の内、開業規制(事業開始にあたっての許可・登録の要否)に関するものが8割弱(137件)。業務規制・⾏為規制に関するもの は2割強(42件)

 相談終了済案件(119件)の内、規制がかからないことを伝達したものは5割弱(大宗は、1週間程度で回答)

○ フィンテック企業の相談にワンストップで対応する相談・情報交換窓口。

○ 既存の法令に触れないこと等の法令解釈の明確化や、個別事案のガイダンスについて、平均5営業日で対応。

○ IT技術の進展が⾦融業に与える影響を前広に分析するとともに、⾦融イノベーションを促進。

tel:03-3506-7080

「FinTechサポートデスク」の概要

51

33

17 18

0 10 20 30 40 50 60

当日 1日~1週間以内1週間~2週間以内 2週間~

(件) (計119件)

規制対応 不要 47.1%

規制対応 46.2%

他省庁案 6.7%

(計119件)

開業規制 77%

業務規 制・行為 規制 23%

(計179件)

6

 新たに⾦融庁に「FinTech実証実験ハブ」を創設し(29年9月21日)、個々の実証実験の組 成に伴う具体的な課題について適切にアドバイスを⾏うことにより、前例のない実証実験を⾏おうと する事業者が抱きがちな躊躇・懸念(コンプライアンスや監督対応上のリスク)の払拭を図る。

 実験毎に、庁内に必要なチームを組成。論点があれば、他省庁も担当チームに参加。

 相談する事業者がベンチャー企業である場合、連携・協働する⾦融機関へのアプローチ等に困難 があることも想定されるため、⾦融分野の主要業界に「FinTech実証実験ハブ」のカウンターパート 窓口の設置等を要請。⾦融機関等の実証実験への参画等のため、相談者に当該窓口を紹介。

⾦融庁 実証実験を

⾏おうとする事業者

関係省庁

個々の実証実験

に係る相談 具体的な課題に 係るアドバイス

担当チーム

窓口等の紹介 担当チームへの

参加の声掛け

実証実験を通じた イノベーションの促進

⾦融関係業界 参画

実現

参画

FinTech実証実験ハブ

7

(24)

機能別・横断的な⾦融制度のあり⽅

8

未来投資戦略2017(平成29年6⽉9⽇閣議決定)(抜粋)

第2 具体的施策 Iー5.Fintechの推進等

FinTech 企業等による⾦融サービスのイノベーションを促進するとともに、⾦融業における新 たな技術の活⽤や、⾦融機関がIT 等によりサービス・能⼒を機動的に開発・展開し、周辺 領域も含めて事業機会を拡大していく必要性等を十分に踏まえ、決済業務等をめぐる横断 的な法制の整備等、⾦融機関等をめぐる法制の在り⽅について、更に検討を進める。

同一の機能・リスクには同一のルールを適⽤

② ⾦融に関する基本的概念・ルールを横断化

③ 環 境 の 変 化 に 対 応 す べ く規 制 を 点 検

①類似のサービスでも、業態によってルールが異なる

②⾦融に関する統一的な基本的概念・ルールが存在しない

③各業法に環境の変化に対応していない規制が存在する可能性

 ITの進展等により、⾦融サービスのアンバンドリング・リバンドリングの動きが拡大

 ファンド等の主体によるシャドー・バンキングが拡大

 ⾦融機関のビジネスモデルの再構築を阻害しないような制度整備の必要

 さらに、将来的には、デジタル通貨の出現等が⾦融システムを大きく変⾰させる可能性

⾦融システムを取り巻く環境の変化

現⾏法制の特徴 課 題

機能別・横断的な⾦融制度のあり⽅

9

(25)

機能別・横断的な⾦融制度のあり⽅

 機能のアンバンドリング・リバンドリングを可能にするにはどうしたらいいか。

⇒ エンティティ単位の規制から、機能別の規制へ重点を移すべきではないか。

-規制で守るべき機能は何か。

-多様な形態の間の競争条件の公平をどう確保するのか。

-グループ内の利益相反をどう防ぐのか。

-規制しない機能から守るべき機能へのリスク遮断をどう確保するのか。

10

商品開発 募 集 販 売 引受け リスク管理 保険⾦

支払 インシュアテック企業 IT企業

保険ビジネスの各機能

参考資料

(26)

1.御社における取組状況

※ 以下の各項目について、御社の取組状況に当てはまる番号をご記⼊いただき、①②に該当する場合には、関連資料・URLを回答欄に 貼 り付ける形でご提供いただけますでしょうか。

 デジタルプラットフォーム(インターネット、スマートフォン等)

 テレマティクス、テレメトリー

 ビッグデータ、データアナリティクス

 AI

 ブロックチェーン、スマートコントラクト

 P2P

 その他

[選択肢]

① 既に商品・サービス・システムを導⼊済み

② 現在、商品・サービス・システムの導⼊に向けた取組み(実証実験、業務提携等)を実施中〔導⼊予定時期を記載願います〕

③ 今後取組予定〔可能であれば取組開始予定時期を記載願います〕

④ 取組予定はない

2.外資系保険会社における、本社・他国グループ会社における取組状況 同上

InsurTechの取組状況

 2017年5月、全ての⽣損保会社(⽣保41社・損保52社)にアンケートを実施。

 アンケート項目は以下のとおり。

12

InsurTechの取組状況(生命保険会社)

目次

■ デジタルプラットフォーム・・・・・・・・・・・・・・・・・・

■ テレマティクス、テレメトリー・・・・・・・・・・・・・・

■ ビッグデータ、データアナリティクス・・・・・・・・

■ AI・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

■ ブロックチェーン、スマートコントラクト・・・・

■ P2P・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

■ その他・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

P14 P15 P16 P17 P18 P19 P20

13

(27)

デジタルプラットフォームの取組状況

自社における取組状況

■ ウェブサイト上で、見積り・契約申込み・契約内容照会・保険金請求手続き等に対応

■ 自動査定システムを導入し、告知後すぐに医的査定結果を提示することにより契約成立までの日数を短縮

■ LINEトーク上で、保険プランナーが保険相談に対応

自社における取組状況 本社・他国グループ会社

における取組状況

本社・他国グループ会社における取組状況

■ ソーシャルネットワークツールを通じて、保険申込み・決済・保険金請求手続き等を行う

■ アプリ経由で、自動車保険・生命保険を販売

既に商品・サービ ス・システムを導入

済み

現在、商品・サービス・システムの導入に 向けた取組みを実施中2.4%(1社)

今後取組予定 取組予定はない

48.8%(20 社)

36.6%(15 社)

12.2%(5社)

既に商品・サービス・

システムを導入済み 取組予定はない

20.0%(3社)

80.0%(12 社)

14

テレマティクス、テレメトリーの取組状況

自社における取組状況

■ ウェアラブル端末を用いて計測された健康増進活動(歩数・心拍数等)に応じて、保険料の一部をキャッシュバ ック

■南アフリカの金融サービス統括会社および大手通信会社との業務提携を通じた健康増進型医療保険を開発中。ウェアラブ ル端末を用いて収集したデータを活用し、新たな商品・サービスの開発等を検討中。

本社・他国グループ会社における取組状況

■ ウェアラブル端末と連動したアプリで運動状況を把握し、保険料を割り引く

現在、商品・サービス・システムの導 入に向けた取組みを実施中

今後取組予定

取組予定はない 80.5%(33 社)

12.2%(5社)

7.3%(3社)

既に商品・サービス・システムを導入済み

今後取組予定

取組予定はない

6.7%(1社)

13.3%(2社)

80.0%(12 社)

本社・他国グループ会社 における取組状況 自社における取組状況

15

(28)

ビッグデータ、データアナリティクスの取組状況

自社における取組状況

■ 日本医療データセンターがもつ健診データや診療報酬明細書(レセプト)等のビッグデータを使用し、過去の健診結果等から、

将来の疾病発生率等を分析した「健康年齢」に応じて保険料を見直し

■ 健診・医療ビッグデータを解析して、保険引受能力の向上を検討。これまで持病や病歴等を理由に保険に加入で きなかった者、特別条件にて加入していた者についても、リスクをより詳細に把握することで、保険に加入できる 仕組み等を構築

■ 「声分析システム」により、コールセンター等に寄せられる照会・意見・要望・不満等の申し出情報から、苦情に あたるものを自動で判別し、不満要因の迅速な特定や社内共有に活用

■ 引受・支払査定時等に、ビッグデータ・AI等の活用を検討すべく概念実証を開始

本社・他国グループ会社における取組状況

■ データアナリティクスの研究拠点をパリ、シンガポールに開設

既に商品・

サービス・

システムを 導入済み

現在、商品・サー ビス・システムの 導入に向けた取組 みを実施中 取組予定はない

17.1%(7社)

26.8%(11 社)

29.3%(12 社)

26.8%(11 社)

今後取組予定

既に商品・

サービス・

システムを 現在、商品・サー 導入済み ビス・システムの 導入に向けた取組 みを実施中 今後取組予定 取組予定はない

46.7%(7社)

33.3%(5社)

13.3%(2社)

6.7%(1社)

本社・他国グループ会社 における取組状況 自社における取組状況

16

AIの取組状況

自社における取組状況

■ 大手テクノロジー会社が開発した意思決定支援システムの言語分類機能、検索・ランク付け機能を活用し、顧客が ウェブサイトに入力した質問に対して、的確な回答を表示するサービスを提供

■ 保険金支払業務に大手テクノロジー会社が開発した意思決定支援システムを導入。請求書類の受付・支払査定・

支払漏れの点検等において、情報のデータ化・業務の自動化等により、迅速な支払いを実現

■ 大手テクノロジー会社が開発した意思決定支援システムの診断書査定自動コード化システムを導入し、診断書か ら疾病・手術等を自動で判別し、該当コードを提示

本社・他国グループ会社における取組状況

■ AIをカスタマーサービスセンターでの電話対応に活用し、顧客との会話から照会内容や対応を学習

■ AIを通して保険金請求を分析・分類し、保険金不正請求を検知するシステムを導入

既に商品・

サービス・

システムを 導入済み

現在、商品・サービ ス・システムの導入 に向けた取組みを実

施中 今後取組予定 取組予定はない

39.0%(16 社)

26.8%(11 社)

19.5%(8社)

14.6%(6社)

既に商品・サービ ス・システムを導入

済み

現在、商品・サービス・システ ムの導入に向けた取組みを実施

今後取組予定 取組予定はない

60.0%(9社)

6.7%(1社)

26.7%(4社)

6.7%(1社)

本社・他国グループ会社 における取組状況 自社における取組状況

17

参照

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