線形代数 I ・演習問題ヒント
(2020年度版)
はじめに
この資料はホームページ掲載の演習問題
http://www.sci.osaka-cu.ac.jp/%7Eshinkato/senkeidaisuu1 2020.pdf
のヒント集です。
この演習問題は長年にわたって出題して来たレポートまたは試
験問題のほとんど全てを集めたものなので、かなりたくさん類題
が並んでいます。この問題を利用して学習したい人は、全ての問
題に解答する必要は全くありません。どれとどれが同じタイプ
で、どれとどれが違うタイプか、見極めながら問題を選んで解答
してみて下さい。
(ただし、式が似ているからと言って同じタイプ
とは限りません。そこは注意が必要です。
)この演習問題の中で、特に重要もしくは典型的と思われる問題 については、講義ノートでも取り上げ、その解き方や解答につい て解説しますが、残りの問題にについては、解答例は公開しない 方針をとっています。
実際、皆さんがこれから大学で取り組む研究課題や、世の中に 出て直面する問題には解答例はありません。そう言った課題に直 面した時、自分の出した解答がその過程も含めて正しいと言える かどうか、問題を様々な角度から眺めて自ら検証して行く工夫を する必要があります。
その練習台として、講義のオプションであるこれらの演習問題 を活用してほしいと言うのが、解答例を公開しない理由です。
(
たとえば、一旦解けたら、次に他の解法を考えてみるとか…。
その方が、類題をたくさんこなすより、余程効果的です。
)と言っても、ほとんどの問題は、教科書
(今回指定のものとは限
りません
)またはインターネット上の解説頁に出ているような例 題の類題なので、それらを参考にすれば解答できると思います。
また、難しめの問題には既にヒントをつけてありますが、今回は
WebClass
による遠隔講義と言うことで、通常の講義の際やその後
の休憩時間、或いはオフィスアワーなどでの皆さんからのご質問 に対応する代わりとして、もう少しだけ、解答のヒントをあらか じめご提供しておこうと思います。
なお、講義ノートの方にも書きましたように、演習問題に関す
る質問も、掲示板で受け付けます。
教科書との対応
演習問題の項目 教科書 行列の演算
§1,§2行列式
§7-§11逆行列
§6連立方程式1
§3-§5空間ベクトル
§11空間ベクトル+連立方程式
§5行列の演算
行列の演算自体は、規則を覚えてしまえば、後は足し算、引き
算、掛け算を実行するだけですから、わざわざ練習問題にするの
も気が引けます。そこで同じ計算練習をするにしても、意味のあ
る計算をしてもらおうと思いました。
1 正方行列
(行と列の数が同じ行列
)の中でも、特に重要な行列
として、対称行列
( tA = A, aij = aji,教科書
8頁参照
)と交代行列
( tA = −A, aij = −aji,教科書
14頁参照
)があります。実は任意の
正方行列は対称行列と交代行列の和として表せるので、この分解
を具体的に公式を用いて求めてみましょうと言う問題です。
2 一般の
m × n行列は、自分自身との積が考えられるとは限り ませんが、正方行列の場合には、何回でも繰り返しかけることが できます。これが行列のべき乗です。
一般に正方行列
Aの2乗
A2を計算することは難しくありませ んが、任意の自然数
kに対して
k乗
Akを求めることは、必ずし も容易ではありません。ここで出題した行列は、何回かかけてみ れば、周期性がある
(同じ行列が繰り返し現れる
)または少なくと
も規則性が読み取れるものばかりです。とにかく
4乗まで計算し
てみて、予想を立てましょう。後は数学的帰納法を用いて、その
予想が正しいことが示せれば完璧です。
ちなみに、正方行列の
k乗を求めることは、連立漸化式から複 数の数列の一般項を同時に求めるのと同じことです。たとえば連 立漸化式
xk+1 = a11xk + a12yk yk+1 = a21xk + a22yk
は、
A =
a11 a12 a21 a22
, xk =
xk yk
とおくことにより
xk+1 = Axkと表せます。等比数列の一般化で
あることは一目瞭然で、一般項を表す公式は
xk = Ak−1x1です。
3
a〜3
c今度は行列の平方根を求める問題です。実数の場合に は正の数は常に
2個の平方根を持ち、負の数も複素数まで範囲を 拡げて考えれば、やはり
2個の平方根を持ちました。
しかし正方行列の場合には、一般には平方根を持つとは限りま せんし、持つときも個数は
2個とは限りません。
うまい解き方が思いつかないときは、とりあえずは、たとえば
2
次の場合なら
A =
a11 a12 a21 a22
または
a b c d
とおいて、
A2 = · · ·を、その
4個の成分に関する連立方程式と考
え、解いてみましょう。
ちなみに
k乗の予想が立てにくい一般の正方行列についても、
後期に線形代数
IIで学ぶ対角化
(教科書
§21参照
)及びその一般化
であるジョルダンの標準形を用いると、
k乗の一般項を求めるこ
とができます。
また、これらを使えば平方根も全て求めることができますし、
平方根を持つ
(持たない
)ための必要十分条件を求めることもでき
ます。
連立方程式1
教科書の順番に合わせて、演習問題
No.5から先にコメントし
ます。
7 ただの3元連立方程式で、加減法、代入法などを用いてただ 解くだけなら、皆さんにとっては簡単なことです。折角、線形代 数を学んでいるのですから、逆行列または行列式を用いるクラー メルの公式
(教科書ではクラメル、
87頁参照
)を使って解きましょ
うと言う問題にしています。でも、もちろん掃き出し法
(本質的に
は加減法ですが…
)の練習にも、利用してもらって構わない訳
です。
空間ベクトル+連立方程式 さらに飛んで
No.10です。
16
これは
“Ax = b”
の一般解
= “Ax = b”の特殊解
+“Ax = 0”の一般解
の練習問題です。講義ノートでは、2元連立方程式が式1本に なってしまった場合に例をとり、お話しましたが、文字通り1ラ ンク上げて、3元連立方程式で式2本の場合です。行列表示した とき、階数は
2のままで
1には落ちない問題になっていますか ら、どの小問も、解全体の集合は
3次元空間
R3内の
2枚の平面
の交わりとして得られる直線です。
(1)
非斉次
(つまりそのままの
)方程式の特殊解を、何でもよいの で一つ見つけて下さい。そのためには、
x, y, zのどれか一つに
0を代入して、残りの変数について解くのが手っ取り早いでしょう。
(2)
斉次
(つまり右辺を全て
0に替えた
)方程式の一般解を求める ために、その方向ベクトルを求めて下さい。
2枚の平面のどちら
とも直交するのが注意点です。
後で学ぶ外積
(教科書
112頁参照
)を使うと便利なのですが、知 らなくても求めるのは難しくありません。
(3)
公式に従って、
(1)(2)の答を代入するだけです。
逆行列
6
a〜6
bとりあえず、基本変形を使って求めてみて下さい。
(4)(5)
は成分が分数で、一見面倒そうに見えますが、結果を見れ
ば、その理由が納得してもらえるはずです。
この問題は、余因子行列を用いた逆行列の公式
(教科書
86頁参
照
)を学んだ後で、もう一度試してみて下さい。
行列式
4 教科書
§7で扱った置換を互換の積で表す基本問題で、レ ポート課題第3回でも符号の問題として出題しました。
5
a〜5
d3次の行列式はサラスの方法
(教科書
73頁参照
)、4次
以上の行列式は基本変形によって、それぞれ求めてみて下さい。
(3)(4)
は6
a (4)(5)の関連問題です。
(6)
は4次交代行列の行列式を求める教科書
98頁の問
10.4(2)と同じ問題で、答はある2次式の2乗になります。
5
cは3次交代行列の固有値を求める問題で、詳しくは後期に
学びます
(教科書
§19参照
)。
空間ベクトル
3次元ベクトルに関する問題をいろいろ集めてあります。ここ ではベクトル
aの長さを
||a||ではなく
|a|で表していることに注
意して下さい。なお 8
cと
11は後期の内容ですので、飛ばして 下さい。
8
a〜8
b空間内の直線や平面を、ベクトルを用いて表す問題で す。与えられた条件
(何と何が垂直とか平行とか
)を、ベクトルの
内積や外積を用いた等式によって表します
(教科書
§11・
5参照
)。
9 定義に戻って確かめてみて下さい。
10a
〜
10b与えられた条件を満たす回転を表す直交行列を外積を 利用して求める問題です。問
9が最大のヒント。
12
定義に戻って直接計算してみて下さい。
13a