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庄司 眞

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(1)

インフルエンザ抗原迅速検査における咽頭拭い液検体の 有用性に関する再検討

1)庄司内科小児科医院,2)独立行政法人国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンター

庄司 眞

1)

庄司 聡

1)

岡本 道子

2)

近江 彰

2)

西村 秀一

2)

(平成 20 年 3 月 16 日受付)

(平成 20 年 8 月 18 日受理)

Key words : Influenza virus, rapid diagnosis, adult, throat swab

咽頭拭い検体の迅速抗原検出キットによるインフルエンザ診断における検査材料としての適否を知る目的 で,インフルエンザが疑われた 439 例から採取した咽頭拭い検体について,ウイルス分離と迅速抗原検出キッ ト(Quick Vue ラピッド SP influ)を用いた検査を試み,ウイルス分離をもとに咽頭拭い材料にした場合の 迅速抗原検出キットによる診断精度を検討した.

その結果,全症例に対する成績では,感度が A 型で 87.8%(72!82),B 型で 80.4%(176!219),特異度 が A 型で 90.2%(322!357),B 型で 95.0%(209!220)であった.また,患者の年齢層によって精度に差が あるか検討してみたところ,15 歳以下(1〜15 歳 176 例)と 16 歳以上(16〜88 歳 263 例)として分けた場 合,感度!特異度は前者で A 型 85.4%!91.1%,B 型 80.9%!94.3%,後者で A 型 90.2%!89.6%,B 型 80.0%! 95.5% であり,これらの年齢群間で迅速抗原検出キットの診断精度に有意な差は認められなかった.

以上,今回のわれわれの咽頭拭い材料を用いた検査成績の結果から,インフルエンザ迅速検査の検体につ いては,検体採取から判定までの一連のプロセスが適切になされるのであれば,必要に応じて咽頭拭い材料 も臨床上,十分に検体としての使用に堪えうる可能性が示唆された.

〔感染症誌 83:19〜25,2009〕

インフルエンザ抗原迅速キット(以下,キット)は,

わが国の多くの医療現場で今やインフルエンザ診断の 大きな助けとなってきているが,その一方で検体の種 類やその採取時期や手技により診断における精度が影 響を受けやすいことが知られており,正確な診断のた めにどのように検査を実施するかは臨床現場にとって 大きな関心事である.

インフルエンザ迅速検査に供する検体としては,咽 頭拭い,鼻咽頭拭い,あるいは鼻腔吸引材料が各社の キットで臨床試験成績に基づき薬事承認されている.

どの検体がキット検査に適するか,検体間でキットの 性能比較がなされることが多いが,これまで比較に用

いられているデータは,それぞれ独立してインフルエ ンザ疑い患者から採取された咽頭拭い,鼻腔吸引及び 鼻咽頭拭い検体でのキット成績とウイルス分離との比 較によりキットの感度を調べたものがほとんどであっ た1).B 型で咽頭と鼻咽頭拭い検体で差がなかった2)あ るいは咽頭の方が鼻咽頭検体よりも有利であるとす る3)例外的な報告はあるものの,咽頭検体での感度は 鼻咽頭検体のそれにくらべて有意に低かったとする報 告も多いことから1)4)〜6)咽頭検体は一般的に鼻咽頭検体 や鼻腔吸引検体に比べて検出感度が低いとされ7),厚 生労働省の安全性情報8)にも,「咽頭検体は鼻腔検体に 比較して抗原検出率が低い傾向があるため検体の採取 方法に十分留意するように」との一文がある.またそ れを受け,全ての市販キットの添付文書にも「重要な 基本的注意事項」として注意喚起がなされている.現 状ではキット検査といえば鼻咽頭検体ということが無 条件に受け容れられている感が強い.

別刷請求先:(〒983―8520)宮城県仙台市宮城野区宮城 野 2―8―8

独立行政法人国立病院機構仙台医療センター臨 床研究部ウイルスセンター 西村 秀一

(2)

Table 1 Patientprofiles Total Female Male

Age

137 55

82 1― 9

54 33

21 10― 19

43 27

16 20― 29

77 46

31 30― 39

50 23

27 40― 49

31 23

8 50― 59

24 11

13 60― 69

18 12

6 70― 79

5 3

2 80― 88

176 82

94 1― 15

263 151

112 16― 88

439 233

206 Allages

だが,鼻腔材料が常に採取が容易あるいは適切であ るとは限らない.たとえば鼻腔吸引液採取には,特殊 な器具や装置や手技的な慣れが必要なため一般のクリ ニックでルーチンに実施することは容易ではない.ま た,咽頭反射が衰えている寝たきりの高齢者などでは 吸引操作を介し肺炎が起きる懸念を指摘する声もあ る9).また,鼻咽頭拭いをも含め鼻腔からの検体採取 では,成人特に高齢者においては小児に比べて鼻腔内 が乾いているケースも多く,採取に苦痛を訴える患者 もあり,鼻腔からの検体採取を拒否される事態も臨床 の現場ではしばしばである.このように鼻腔検体を適 切に採取することが叶わない場合を想定すれば,もし 検出精度的に特に大きな問題がないのであれば,咽頭 拭いも選択肢として有用であろう.

咽頭拭い検体についての検出精度の検討は,これま でにもいくつかあったが,それらも小児あるいは成人 の一方に偏ったものが多く,小児と成人双方について の十分な人数を対象とした同じ採取者による検体採取 とキット試験,判定ならびにひとつの検査機関での一 貫したウイルス分離,すべての条件がそろった試験で の検討は,これまでなされていかった.

本研究でわれわれは,キット検査において咽頭拭い 検体がどれだけの性能を示すかを知る目的で,地域の 一医療機関を訪れた幼児から高齢者にいたる幅広い年 齢層のインフルエンザ疑いの患者多数を対象に特定の 医師が一貫して咽頭拭い液を検体材料として採取し,

抗原検出キット検査を行い,さらにそれらの検体につ いてひとつの検査機関でウイルス分離を試み,それら の成績をひとシーズン通してまとめ,年齢因子も含め て検討したので報告する.

対象と方法

対象は,2005 年 1 月から 2005 年 3 月までの期間に 仙台市宮城野区の一内科小児科医院を受診した外来患 者のうちインフルエンザが疑われたために迅速抗原検 出キットによるインフルエンザの迅速診断を行った中 で,口頭での説明後に本試験への参加の同意が得られ た合計 439 症例である.対象は,年齢,性別,発症か らの時間等で特に選んではいない.Table 1にその内 訳を年代別,男女別に示した.1 から 88 歳まで平均 年 齢 30.2 歳 で,男 性 206 症 例(1〜81 歳,平 均 25.8 歳±標準 偏 差 21.4 歳),女 性 233 症 例(1〜88 歳,平 均 30.2 歳±標準偏差 21.4 歳)であった.

本試験は以下のプロトコールに準じて実施した.各 患者から,咽頭後壁を中心に 2 本の綿棒(ジェイ・エ ム・エス社製,軸綿棒,JI-APS1)を束ねた状態で拭 い,咽頭拭い材料を採取し,うち 1 本をキット検査に,

1 本をウイルス分離試験に供した.迅速検査は 2005 年 1 月に新たに市販されたディップスティックタイプ

のイムノクロマト法キット,QuickVue ラピッド SP influ(米国 Quidel Corporation 社製造,本邦では DS ファーマバイオメディカル社が販売)を用い,キット 添付の使用説明書の方法に従って検査を実施した.

ウイルス分離試験は,咽頭拭い液検体を採取した綿 棒を 3mL の専用の輸送培地中で洗い,その輸送培地 を国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルス センターへすみやかに搬送し 3,000 回転!分で遠心操 作を加え,その上清を Madin-Darby canine kidney

(MDCK)細胞に接種し,行った.その培養細胞を 34℃

の二酸化炭素ガス存在下で培養後,細胞変性効果が確 認されたものについて分離陽性とし,最終的にインフ ルエンザウイルスに対する抗血清を用いた赤血球凝集 阻止反応(HI)試験にて同定した.なお,本プロト コールは仙台医療センターの治験審査委員会にて承認 されたものである.

統計学的有意差の解析は,カイ 2 乗検定法を用いて 実施した.

1.咽頭拭い検体でのインフルエンザ迅速抗原検出 キットでの診断精度

今回試験を実施した全 439 症例のうちウイルス分離 が陽性を示した症例は 301 例(69%),陰性は 138 例

(31%)であった.陽性症例の内訳は A(H1)型が 13 例(陽 性 例 中 4%),A(H3)型 が 69 例(同 23%),

B 型が 219 例(同 73%)であった(Table 2).

全 439 症例におけるウイルス分離の結果とキットの 結果の相関性を Table 3(A 型インフルエンザ)およ び Table 4(B 型インフルエンザ)に示した.ウイル ス分離をもとにした場合のキットの診断精度は,A 型に対する感度が約 88%(72!82),特異度が 90%(322!

357),B 型に関する感度が 80%(176!219),特異度 が 95%(209!220)であった.型別の感度は,B 型に 比べて A 型が高い傾向が見られたものの統計学的な 有意差は認められなかった(p=0.13).また A 型の

(3)

Table 2 Influenza virusisolation

Total Negative Positive

Age

Subtotal Type B

(H1,H3) Type A

137 37

100 65

(7,28) 35

1― 9

54 20

34 26

(0,8) 8

10― 19

43 21

22 13

(1,8) 9

20― 29

77 20

57 46

(2,9) 11

30― 39

50 15

35 29

(1,5) 6

40― 49

31 7

24 19

(1,4) 5

50― 59

24 10

14 8

(1,5) 6

60― 69

18 6

12 11

(0,1) 1

70― 79

5 2

3 2

(0,1) 1

80― 88

439 138

301 219

(13,69) 82

Total

Table 3 Resultsfortype A influenza

Sensitivity:87.8% (72/82)

< 80.7― 94.9%>

H1:76.9% (10/13) H3:89.9% (62/69) Specificity:90.2% (322/357)

< 87.1― 93.3%>

CellCulture Test

Total Negative Positive

AH3 AH1

107 35

62 10 Positive QuickVue

Rapid SP influ Negative 3 7 322 332 439 357

69 13 Total

< > :95%CI

Table 4 Resultsfortype B influenza

Sensitivity:80.4% (176/219)

< 75.1― 85.6%>

Specificity:95.0% (209/220)

< 90.1― 97.9%>

Total CellCulture

Negative Positive

187 11

176 Positive

QuickVue

Rapid SP influ Negative 43 209 252 439 220

219 Total

< > :95%CI

亜型別の感度は,A(H1)型に対して 77%(10!13),

A(H3)型に対して 90%(62!69)と,A(H3)型で 高かったが,同様に統計学的有意差は認められなかっ た(p=0.19).

2.患者の年齢層と咽頭拭い検体でのキットの診断 精度の検討

Table 5にキットの検査成績(感度,特異度)を,症 例 10 歳刻みに分けた年代ごとに計算した数値を示し た.個々の症例数が 5 例以下は統計的解析(カイ 2 乗 検定)に足る症例数に満たない年齢群であるが,そう したものを除いた成績を見ると,各年代層間でキット の診断精度に特に差は認められていない.また,Table 6に示すように,患者を小児科の対象年齢である 15 歳 以下と 16 歳以上の 2 群に分けて解析した場合も,両 群に差を認めなかった.さらに幼児年齢(6 歳)以下 と 7 歳以上,学童年齢(12 歳)以下と 13 歳以上の分 け方にした場合でも,B 型インフルエンザでの感度が

6 歳以下 72.2% と 7 歳以上 82.0% と後者で高い傾向 が見られたものの,いずれの群間においても有意差の ある違いは認められず,年齢群間で感度・特異度に差 はなかった.

3.咽頭拭い液検体を採取する人の手技とキットに よる診断精度の検討

本研究では,咽頭拭い液検体を採取する人によって キットによる診断精度に差が出るか,出るとしてどの 程度かを知る目的で,患者からの検体採取及び迅速 キットの判定を 2 人の医師によって実施した.

それぞれの医師が診察した患者の数は,医師(#1)

が 242 例,医師(#2)が 197 例であり,患者の男女 比も前者が 1 : 1.2,後者が 1 : 1.1,診療した患者の年 齢(平 均±SD)も 前 者 が 30±22 歳,後 者 が 26±20 歳と,いずれも大きな偏りはなかった.

Table 7に医師ごとにウイルス分離をもとにした キットの診断精度をまとめて示した.

(4)

Table 5 Clinicalperformance ofthe QuickVue Rapid SP Influ in each age bracket Type B Influenza Type A Influenza

n Age

Specificity (%) Sensitivity (%)

Specificity (%) Sensitivity (%)

(68/72) 94.4

(51/65) 78.5

(93/102) 91.2

(31/35) 88.6

137 1― 9

(26/28) 92.9

(23/26) 88.5

(40/46) 87.0

(6/8) 75.0

54 10― 19

(30/30) 100.0

(11/13) 84.6

(27/34) 79.4

(8/9) 88.9

43 20― 29

(29/31) 93.5

(33/46) 71.7

(64/66) 97.0

(9/11) 81.8

77 30― 39

(20/21) 95.2

(25/29) 86.2

(39/44) 88.6

(6/6) 100.0

50 40― 49

(11/12) 91.7

(14/19) 73.7

(25/26) 96.2

(4/5) 80.0

31 50― 59

(15/16) 93.8

(8/8) 100.0

(14/18) 77.8

(6/6) 100.0

24 60― 69

(7/7) 100.0

(10/11) 90.9

(17/17) 100.0

(1/1) 100.0

18 70― 79

(3/3) 100.0

(1/2) 50.0

(3/4) 75.0

(1/1) 100.0

5 80― 88

(209/220) 95.0

(176/219) 80.4

(322/357) 90.2

(72/82) 87.8

439 1― 88

Table 6 Clinicalperformance ofthe QuickVue Rapid SP Influ in variousage groups Type B Influenza Type A Influenza

n Age

Specificity (%) Sensitivity (%)

Specificity (%) Sensitivity (%)

(82/87) 94.3 (72/89)

80.9 (123/135)

91.1 (35/41)

85.4 176

1― 15

< 89.4― 99.1%>

< 72.7― 89.1%>

< 86.3― 95.9%>

< 74.5― 96.2%>

(127/133) 95.5

(104/130) 80.0

(199/222) 89.6

(37/41) 90.2 263

16― 88

< 92.0― 99.0%>

< 73.1― 86.9%>

< 85.6― 93.6%>

< 81.2― 99.3%>

(44/46) 95.7 (26/36)

72.2 (54/62)

87.1 (18/20)

90.0 82

1― 6

< 89.8― 100%>

< 57.6― 86.9%>

< 78.8― 95.4%>

< 76.9― 100%>

(165/174) 94.8

(150/183) 82.0

(268/295) 90.8

(54/62) 87.1 357

7― 88

< 91.5― 98.1%>

< 76.4― 87.5%>

< 87.6― 94.1%>

< 78.8― 95.4%>

(78/83) 94.0 (68/84)

81.0 (115/127)

90.6 (34/40)

85.0 167

1― 12

< 88.9― 99.1%>

< 72.6― 89.3%>

< 85.5― 95.6%>

< 73.9― 96.1%>

(131/137) 95.6

(108/135) 80.0

(207/230) 90.0

(38/42) 90.5 272

13― 88

< 92.2― 99.0%>

< 73.3― 86.7%>

< 86.1― 93.9%>

< 81.6― 99.4%>

(209/220) 95.0

(176/219) 80.4

(322/357) 90.2

(72/82) 87.8 439

1― 88

< 92.1― 97.9%>

< 75.1― 85.6%>

< 87.1― 93.3%>

< 80.7― 94.9%>

< > :95%CI

Table 7 Comparison ofperformance ofthe rapid testbetween two different physicians

Accuracy Specificity

Sensitivity Physician

Influenza

(219/242) 90.5%

(176/194) 90.7%

(43/48) 89.6%

#1

Type A

< 86.8― 94.2%>

< 86.6― 94.8%>

< 80.9― 98.2%>

(175/197) 88.8%

(146/163) 89.6%

(29/34) 85.3%

#2

< 84.4― 93.2%>

< 87.2― 92.0%>

< 73.4― 94.2%>

(394/439) 89.7%

(62/69) 90.2%

(72/82) 87.8%

Total

(219/242) 90.5%

(121/127) 95.3%

(98/115) 85,2%

#1

Type B

< 86.8― 94.2%>

< 91.6― 99.0%>

< 78.7― 91.7%>

(166/197) 84.3%

(88/93) 94.6%

(78/104) 75.0%

#2

< 79.2― 89.3%>

< 90.0― 99.2%>

< 66.7― 83.3%>

(385/439) 87.7%

(209/220) 95.0%

(176/219) 80.4%

Total

< > :95%CI

感度は A 型 B 型ともに医師(#1)の方が高い傾向 が認められた.しかし,これらの差には統計的有意差 はなかった.

われわれの今回の試験では,臨床の現場で無作為に

遭遇した,1 歳から 88 歳という幅広い年齢の 439 例 という多数のインフルエンザ疑いの患者に対して,2 人の医師が一貫して,咽頭拭い材料を検体として採取 し,そこからキット検査から結果判定にいたるまでを 行い,さらにすべての検体について 1 施設でウイルス

(5)

分離試験を行うという条件で試験が実施できた.そし てその結果が,咽頭ぬぐい液検体でもウイルス抗原を 8〜9 割の感度で検出でき,しかも年齢層間で見ても 特に有意差がなかったという成績である.

これまで検体種間の検出精度の比較に供されてきた データのほとんどは小児を対象とした試験に基づいた ものであり2)〜6),それぞれ同一患者,同一時期でない インフルエンザ患者から採取された咽頭拭い,鼻腔吸 引及び鼻咽頭拭い検体での成績を集めたものがほとん どである.同一患者,同一時期での検体間の比較の報 告もあるが,その中で鼻腔吸引液検体の優位性を主張 する報告10)は対象が小児のみであり,母数も少ない上 に統計学的有意差も認められていない.また小児での もうひとつの報告も,咽頭に比べ鼻咽頭検体の方が優 位とするものの対象者の数がやはり少ない上,インフ ルエンザの型も検体採取日もまちまちである11)

一方,成人での同一患者,同一時期での検体間の比 較をした報告もあったが,それでも年齢層ごとの解析 に十分な対象人数ではない上,結果も報告によって成 績は相反していた12)13).また,これまでの成人での報 告を見ると,咽頭拭い検体では感度は約 60% にしか ならないとするもの14)と約 80%13)とするものがあり,

また鼻咽頭検体においても,感度 100%6)とするもの がある一方で,救急外来を訪れる成人で感度は約 50%

しかなく十分な感度が保障されないとする報告もあ る15).このように成人では報告ごとに成績に大きな差 があり,年齢層,検体採取のタイミングも含め,キッ トの感度の問題は今後も検討の余地があると見るべき であろう.

診断精度を少しでも上げるという意味では,検体の 相対的優劣比較は大事なことではある.しかし,臨床 の現場では,患者の検査の受け容れも含め,診断のた めの使用に十分に堪えるか否かも大切なことであり,

その意味で,個々の検体材料でどこまで性能を引き出 せるのかを知ることも必要であろう.本当に迅速抗原 検出キット検査に供する検体として「ふさわしくない」

のか否か,この問題はまだ解決していないというのが われわれの立場であった.

同一患者の同一時期での検体種間の比較はできな かったものの,本研究で結果として,咽頭拭い液材料 で,A 型,B 型インフルエンザそれぞれのウイルス分 離をもとにした検出感度で,約 88%,80%,特異度 で 90% および 95% という成績が得られたという事実 は評価できるものと思われる.これらの値は,患者の 母集団や検体採取者の手技および比較の対象であるウ イルスの検出感度等,試験の諸条件が異なるため厳密 な比較にはなっていないという制約はあるものの,今 回用いた迅速キットの添付文書に記載されている鼻咽

頭検体での感度(A 型 81%,B 型 83%)や本キット の先発品であったラピッドビューインフルエンザ A! B に関して本邦ならびに米国で報告5)されている同種 検体での感度(84% ならびに 78%)とほぼ同じかそ れより高いものである.また WHO のまとめによる キットの性能表1)に掲載されている世界各社のキット の鼻咽頭検体での成績ともほぼ同等である.さらに,

われわれは翌シーズン仙台市内の別医療機関で本試験 に用いたものと同じキットを用いて同種検体で同様の 試験を行っているが,そのときの成績は B 型の流行 が小さかったために A 型のみのものではあるが,感 度 79%(53!67),特異度 89%(72!81)という成績で あり(論文未発表),それとの比較でも今回の成績は 勝るとも劣らないと言える.

よって通常の診療の場で,咽頭拭い検体が,インフ ルエンザ抗原迅速検査の上で,小児,成人,高齢者ど の年齢層の患者においても,絶対的に不利というわけ ではなく,十分に使用に堪えうる可能性が示唆された.

その一方で,これまで咽頭拭い液検体については,

Gavin ら7)のように著しく感度が低いとする成績を示 し,デメリットを強調する論文があったことも確かで ある.こうした成績の違いについては,以下の 3 つの 可能性が考えられる.1)キットの性能の違い:これ まで咽頭拭い材料での感度が極端に低く発表された多 くのスタディは,当時いわゆるキットの第一世代とい われる開発市販後間もないものを使用しており,今回 用いたキットはそれらと比べて感度が上がっている可 能性.2)キットの結果の判定技術:今回の試験者た ちの目が非常に鋭敏で,極めてかすかで陽性・陰性ぎ りぎりのところを読んで陽性判定をしている可能性は 否定できない.だが単に許容範囲が甘いだけの場合に は,感度が上がっても偽陽性が増え,特異度が大きく 損なわれることが予想されるが,今回の成績はそのよ うなものとはなっていない.しかし,陽性・陰性ぎり ぎりの判定は主観の問題であり,ややもすると名人芸 頼りといった,一般性に欠ける危険性がある.よって 今後は,判定を人の目だけで行うのではなく,器械で 読み取り数値的に示すような客観的判定システムを確 立し,そのシステムで確認する必要があろう.3)検 体採取の手技の問題:これは,どれだけ適確にインフ ルエンザウイルスを含む咽頭粘液ならびに同ウイルス に感染した細胞を採取してくるかの問題であり,それ によって感度は左右されるはずである.ウイルス抗原 が多量に存在する部位を的確に捉え,十分な量を採取 できれば確実な診断につながることは,ウイルス分離 もキットも同じである.細胞成分について言えば,in

vitroの実験で,インフルエンザウイルス感染細胞を

2016)〜50 個程度17)回収できればキットが陽性を示すこ

(6)

とが示されている.これからすれば,咽頭拭いでも最 低限それだけの感染細胞を擦取できれば,キットの性 能を十分に発揮させられるはずである.

鼻咽頭拭いの採取は,いったん鼻腔口から綿棒を挿 入できれば,慣れれば,検体採取の望ましい部位まで 到達させ,時間的余裕を持って検体を採取することが 比較的容易である.それに比べ咽頭は領域が広い上,

かつ採取は咽頭反射の起きるまでの短時間で行う必要 があり,そこからの適切な検体採取には熟練が必要で あろうことは大いに想像され,そのことが,これまで 咽頭検体での成績が芳しくなかった理由の大きな部分 を占めている可能性は十分に考えられる.もし,今回 咽頭拭い検体でも良い成績が得られた理由にも,こう した検体の取り方の因子が大きくかかわっているとす れば,それは,咽頭拭い検体のインフルエンザ検査の 検体としての使用の適否は検体の種類そのものという より,むしろ検体採取者の適切な採取手技の習得次第,

ということを意味することになろう.

謝辞:本論文を書くに当たり適切な文献をご紹介いただ きご指導いただいた三田村敬子博士(永寿総合病院小児科)

ならびに高下恵美,菅原勘悦両博士(山形大学医学部感染 症学講座)に深謝いたします.

文 献

1)WHO : Annex 1. Commercially available influ- enza rapid diagnostic tests. In WHO recommen- dations on the use of rapid testing for influenza diagnosis. July 2005.

2)Agoritsas K, Mack K, Bonsu BK, Goodman D, Salamon D, Marcon MJ:Evaluation of the Quidel QuickVue test for detection of influenza A and B viruses in the pediatric emergency medicine setting by use of three specimen col- lection methods. J Clin Microbiol 2006;44:

2638―41.

3)進藤静生,高崎好生,山下祐二,芝尾京子,西 村秀一:インフルエンザの診断―小児科領域に おける臨床診断と迅速診断キットによる診断に ついて.インフルエンザ 2004;5:227―324.

4)三田村敬子:酵素免疫法による A 型インフルエ ンザウイルスの迅速診断.日本臨床 2000;58:

2229―33.

5)山崎雅彦,三田村敬子,木村和弘,韮澤真理,込 山 修,市川正孝:イムノクロマトグラフィー 法によるインフルエンザ迅速診断キットの臨床 的検討.感染症誌 2001;75:1047―53.

6)三田村敬子,山崎雅彦,市川正孝,木村和弘,川 上 千 春,清 水 英 明,他:イ ム ノ ク ロ マ ト グ ラ

フィー法と酵素免疫測定法を組み合わせた原理 によるインフルエンザ迅速検査キットの検討.感 染症誌 2004;78:597―603.

7)Gavin PJ, Thomson RB Jr:Review of rapid di- agnostic tests for influenza. Clin Appl Immunol Rev 2003;4:151―72.

8)厚生労働省医薬食品局:インフルエンザウイル ス抗原の検出を目的とする体外診断用医薬品の 自主点検結果及び適正使用について.医薬品・

医療用具等安全性情報 2003;194.

9)Leonardi GP, Leib H, Birkhead GS, Dmith C, Costello P, Conron W:Comparison of rapid de- tection methods for influenza A virus and their value in health-care management of institution- alized geriatric patients. J Clin Microbiol 1994;

32:70―4.

10)原三千丸,清水浩志:発熱を伴う冬季の小児呼 吸器感染症の原因ウイルスの検索.日小児会誌 1998;102:29―33.

11)川上千春,三田村敬子,木村和弘:迅速診断キッ トの基礎研究.インフルエンザ 2003;4:317―

24.

12)加地正英,渡邊 文,福田孝昭,相澤久道:イ ンフルエンザ迅速診断キットの臨床的問題点の 検討.臨床と研究 2003;80:956―9.

13)久保徳彦,池松秀之,鍋島茂樹,山路浩三郎,鍋 島 篤 子,近 藤 浩 子,他:イ ム ノ ク ロ マ ト グ ラ フィーを原理とした イ ン フ ル エ ン ザ 迅 速 診 断 キットの成人における有用性の検討.感染症誌 2003;77:1007―14.

14)池松秀之,鍋島篤子,鍋島茂樹,角田恭治,前

田尚康,鄭 湧,他:一般成人および高齢者

におけるインフルエンザ迅速診断キットの有用 性についての検討.感染症誌 1999;73:1153―

8.

15)Landry ML, Ferguson D:Suboptimal detection of influenza virus in adults by the Directigen Flu A+B enzyme immunoassay and correlation of results with the number of antigen-positive cells detection by cytospin immunofluorescence.

J Clin Microbiol 2003;41:3407―9.

16)Ryan-Poirier KA, Katz JM, Webster RG, Kawaoka Y:Application of Directigen FLU-A for the detection of influenza A virus in human and nonhuman specimens. J Clin Microbiol 1992;30:1072―5.

17)Landry ML, Cohen S, Ferguson D:Impact of sample type on rapid detection of influenza vi- rus A by Cytospin-Enhanced Immunofluores- cence and membrane enzyme-linked immuno- sorbent assay. J Clin Microbiol 2000;38:429―

30.

(7)

Re-evaluation of Clinical Utility of Throat Swab Specimens for a Rapid Influenza Diagnostic Test

Makoto SHOJI1), Satoru SHOJI1), Michiko OKAMOTO2), Akira OHMI2)& Hidekazu NISHIMURA2)

1)Shoji Clinic,2)Virus Research Center, Clinical Research Division, Sendai Medical Center

Throat swab specimens collected from 439 patients with influenza-like symptoms visiting a clinic in the 2004-2005 influenza season were subjected to cell culture virus isolation and viral antigen detection using a rapid diagnostic kit, QuickVue Rapid SP influ (Quidel Corporation, San Diego, CA, U.S.A.). The sensitivity and specificity of diagnostic kit results were analyzed based on cell culture results, considered the diagnos- tic standard.

Kit sensitivity was 87.8% (72!82) and specificity 90.2% (322!357) for type A influenza, and 80.4% (176!

219) and 95.0% (209!220) for type B influenza, roughly comparable to results reported so far for nasopharyn- geal swabs and!or nasal aspirates.

Sensitivity and specificity calculated separately dividing patient age but no significant difference was seen.

The antigen-detection kit thus appears clinically useful in diagnosing influenza, provided that is col- lected and processed properly.

Tabl e 1 Pat i ent pr of i l es Tot alFemaleMaleAge 137 55821― 9 54332110― 19 43271620― 29 77463130― 39 50232740― 49 3123 850― 59 24111360― 69 1812 670― 79  5 3 280― 88 176 8294 1― 15 263 151 112 16― 88 439 233 206 Allagesだが,鼻腔材料が常に採取が容易あるいは適切であるとは限らない.たとえ
Tabl e 2 I nf l uenza  vi r us i s ol at i on Tot alNegativePositiveAge Subt ot alType B(H1,H3)Type A 137 37100 65(7,28)351― 9 54203426(0,8) 810― 19 43212213(1,8) 920― 29 77205746(2,9)1130― 39 50153529(1,5) 640― 49 31 72419(1,4) 550― 59 241014 8(1,5) 660―
Tabl e 5 Cl i ni c al per f or manc e  of t he  Qui c kVue  Rapi d  SP  I nf l u  i n  eac h  age  br ac ket Type  B  I nf l uenzaType A Influenza nAge Spec i f i c i t y  ( %)Sensitivity (%)Specificity (%)Sensitivity (%) ( 68/72) 94.4(51/65) 78.5 (93/102)

参照

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