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マレイン酸一スチレン共重合体とアクリジン オレンジとの相互作用
大 野 進 通
Interactionoftl
AcridineOrange
theCopolymerofMaleicacidandStyrenewith
NobumichiOHNO (昭和49年10月31日受理)
(AmberliteCG‑120,CG‑400)を通過させ非解離水溶 液としたのち,実験に用いた。MASt濃度は, pH滴定 の半中和点より求めた。中和度は, マイクロリシンジよ
りアルカリ水溶液を所定量加えることにより調整した。
AO(MERCK)はエチルアルコール−水混合溶媒(10/1) を用いて再結晶により精製した。AO水溶液は,室温下 では,吸収曲線上に経時変化が認められるので冷暗所に 保存し,溶液調整後, できるだけ短時間内で測定した。
NaClは,特級試薬(和光)を, そのまま使用した。水 は,すべてイオン交換水を使用した。
1. 緒 言
生体高分子の水溶液中における分子形態を理解するう えで,側鎖間相互作用は, きわめて重要であるが, これ
らに関する情報は,充分であるとは言いがたい。
著者らは, このような側鎖間相互作用に関する情報を 得る目的で,一次構造の明らかなマレイン酸一スチレン 交互共重合体(MASt)をとりあげ,物理化学的方法によ り,その水溶液中における物性について検討中である。
本試料に関しては,すでに,JI滴定,粘性測定,デイラト メトリーなどの方法によって,低解離領域でのcompact fOrmから高解離領域のloose‑coilfOrmへの分子形態変 化(転移)が見いだされており, さらには,転移に伴う 物性値の評価や,転移の動力学的測定などがなされてい る。 1 4)この低解離領域でのcompactfOrmは,紫外部 吸収差スペクトルなどの結果より, おそらく側鎖フェニ ル基間の疎水相互作用によるものと思われるが,その確 証はまだ得られていない。
本研究は,MAStとアクリジンオレンジ(AO)との相 互作用を調べることによって, このcompactformが,
側鎖フェニル基間の疎水相互作用によるものかどうかを 明らかにすることを目的にしており,そのはじめとし て,AOの吸収曲線に対するMAStの濃度依存性につい て,実験を行なったので報告する。
2−2分光測定
分光測定には, 日立EPU‑2A型分光光電光度計,ま たは日立124型ダプルビーム分光光度計を用い, 25±0.1
。C,窒素気流中で測定した。セルは1cmガラスセルを 使用した。
3. 実験結果および考察
図1に,添塩系における, AOの吸収スペクトルの一 例を示した。AO濃度(Cd)は1.953×10‑smol/",NaC1濃 度(Cs)は0.0905mol/"である。波長492m似に,AO単 量体による吸収帯(α band)が見られるとともに, 470 m似付近に,AO二量体による吸収帯(β band)が見られ る。AO分子は,水溶液中において会合体を形成するこ とが知られており,濃度範囲10‑3〜10‑6mol/〃で,AO 濃度の増加に伴い, a=bandが減少し,二量体に基づく β bandが増大する。さらにAO濃度が増加するに伴い,
多分子会合体を形成し, このβ bandは,低波長側(約 450m",γ一band)にシフトする5)。また,AO吸収スペク トルは,添加塩濃度によっても影響を受け,塩濃度の増 加に伴って二量体が形成され, β bandが増大すること が報告されている。6,7)
秋田高専研究紀要第10号 2. 試料および実験方法
2−1試 料
MAStは,前報2)と同じ方法により重合した無水マレ イン酸一スチレン交互共重合体を,アセトンより二回再 沈殿して精製したのち,無水マレイン酸残基を加水分解 して得られた未分月賦料(平均重合度,約5600)を使用 した。試料水溶液は,混合ベッドイオン交換樹脂カラム
マレイン酸一スチレン共重合体とアクリジンオレンジとの相互作用 59
0 6 0.7
0.6 5
0
樫蝦曹
00
0.5 443
C■00DC題鍜曹
3
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210
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400 420 440 4㈹ 480 鋤 520 540 知
波長(m脚)
図‑3 AO‑MASt水溶液の吸収スペクトル Cd ; 2.370×10‑smol/3,Cs ; 0.143mol/", Cp/Cd;@1.23×103,@4.81,@3.76×10‑2, 測定温度;25。C
0 0
4uO 420 440 4鋤 480 鋤0 520 540 560
波長(m〃)
アクリジンオレンジ水溶液の吸収スペクトル Cd; 1.953×10‑5mol/J,Cs ; 0.0905mol/", 測定温度; 25oC
図−1
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0 α】=0.2
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波長(m") ]0 420 440 4閲 450波長(m餌)麺 3劃 包机
図‑4 AO MASt水溶液の吸収スペクトル Cd; 2.370×10‑5mol/",Cs ; 0.143mol/", Cp/Cd;@1.23×103,@9.61,@3.76×10‑2, 測定温度;25°C
AOMASt水溶液の吸収スペクトル Cd; 2.370×10‑5mol/8,Cs;0.143mol/",
Cp/Cd;@1.23×103,@9.61,03.76×10‑2, 測定温度;25°C
図−2
図2に,MAStの第一カルポキシル基の中和度(",)が 0.2のときのAO‑MASt系の吸収スペクトルを示した。
Cd=2.370×10 5mol/",Cs=0.143mol/"で一定である が,MASt濃度(Cp)は, 2.918×10‑2〜8.900×10‑7 monomol/'の範囲で変化させている。この測定条件下で は,MAStは, compactfOrmである。MASt濃度がAO 濃度にくらべて非常に高いとき(Cp/Cd=1.23×103),吸 収曲線上には, α bandとβ bandが現われているが, ど
昭和50年2月
ちらの吸収帯も, AO単独の吸収スペクトルにくらべ て,長波長側に約10m似シフトしている。このような傾 向は,ポリメタクリル酸‑AO系にも認められており,8) AO分子とMAStとの相互作用を反映していると考えら れる。cp/cd=10@〜20の範囲では, Cp/Cd値の減少に伴 い,"=bandが減少し, β bandが増大する傾向を示す。
Cp/Cd=20〜1の範囲では, γ bandが支配的であり,
AOの多分子会合体とMAStとの相互作用が考えられる。
60 大 野 進 通
0.3
248
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Cp/Cd
図‑5 502m'におけるAOの分子吸光係数sとcIJcdとの関係 CI ; 2.370×10‑5mol/",C, ;0.143mol/",測定温度; 25。C
1000
この領域の一例として,Cp/Cd=9.61のときの吸収スペ クトルを図に示した。cI/c('=1〜10‑2の範囲では,cI,/cd 値の減少に伴い, 492m似のa‑bandおよび470m似付近の β一bandが増大してくる。これは,MAStと結合しない AO分子が水溶液中に増加してくるためであろう。この 領域の一例として,Cp/Cd=3.76×10‑2のときの吸収ス ペクトルを図に示した。
図3に,",=0.4におけるAO‑MASt系の吸収スペクト ルを示した。Cd,およびCs値は,図2と同様である。
この測定条件下では,AOを含まない系でのMAStは,
転移領域にあり,compactfOrmならびにloOse‑coilform の両形態が存在する。しかし,図に示された吸収スペク
トルは,α,=0.2の場合にくらべて,吸収極大値の減少 は認められるが,その定性的傾向は, ほとんど同じであ る。これより,AO‑MASt系では,AOカチオンがカルポ キシレートイオンに結合することにより電気的中和がお こり,MASt鎖上の固定解離基間の静電斥力が減少する ため,転移領域が,高解離側にシフトしている可能性が 考えられる。
図4に,α,=0.8におけるAO‑MASt系の吸収スペクトル を示した。CdおよびCs値は,図2,3と同様である。この 条件下では,MAStは1oose‑coilfOrmである。cp/cd=
1.23×103のときの吸収スペクトルは,α,=0.2, 0.4の場
合とまったく異なり,"‑bandが小さく, β‑bandが大き い。CIJC,i=103〜20の範囲では,Cr/Cd値の減少に伴い,
a−bandがさらに減少し, β‑bandは低波長側にシフトし γ bandを示すようになる。また,cp/cJ=1〜10‑2の範 囲では,Cr/Cd値の減少に伴い,",=0.2, 0.4の場合と 同様に492m似のa‑bandおよび470m〃付近のβ‑bandが増 大する。
図5に,α,=0.2, 0.4および0.8におけるAOの分子吸 光係数ミのCp/Cd依存性を示した。CdおよびCs値は,図 2〜4と同様である。測定波長は, 502m とした。 eの
cp/cd依存性は,おおむね,A;Cp/Cd<1,B;1<CIJCd
<20,C;Cp/Cd>20の三領域に分けて考えられる。A領 域での, eのcp/cJ依存性は,α,値によらず,ほぼ一定 の傾向を示しており, Cp値の非常に小さいときの吸収ス ペクトルが,AO単独の吸収スペクトルに一致すること から,Cr/Cd値の減少に伴うsの増加は,MAStと相互 作用をもたないAO分子が,溶液中に増加するためと考 えられる。B領域は,AOが多分子会合体としてMAStと 相互作用している領域であり, eのCIJCd依存性,ならび にこのα,依存性は,ほとんど認められない。C領域では,
sのCp/Cd依存性は,α,値で箸るしく異っており, この領 域が,MAStのpH変化に伴う転移現象を反映していると 考えられる。すなわち, この領域ではcompactfOrmと 秋田高専研究紀要第10号
マレイン酸一スチレン共重合体とアクリジンオレンジとの相五作用 61
た北海道大学理学部,須貝新太郎教授ならびに新田勝利 氏に深謝致します。また,実験にお手伝い頂いた須藤祐 幸氏に深く感謝致します。
Ioose‑coilformとでは,AO分子との相互作用が明らか に異なり, 1oose‑coilfOrmでは静電引力によってMASt のカルポキシレートイオンに結合したAOカチオンに他 のAOが会合し,二量体以上の会合体を形成しているモ デルが考えられる。また, compactfOrmでは,荷電量 が少ないため,静電的相互作用よりも疎水相互作用が支 配的であることが考えられ,疎水領域に大部分のAOが 単量体または二量体として, とりこまれている可能性が
あげられる。
文 献
1)大野進通,新田勝利,須貝新太郎;高化, 28, 671
(1971).
2) N.Ohno,K.Nitta, S.Makino, S. Sugai;J.
Poノ[email protected]・PoJy".P"ys.〃. ,11,413(1973).
3) N.Ohno,K.Nitta, S. Sugai;R.P・P.P.J. , 16, 659(1973).
4) N・ Ohno,K.Nitta,S・Sugai;M""O"0JeC"んs,
投稿中
5) V.Zanker;Z.P"yS.C"e"Z.199,225(1952).
6) G・ Barone,L.Costantino,V・Vitagliano;R".
Scj. , 34, 87(1964).
7) Y. Sato,M.Hatano,M・Yoneyama;B"〃・
Chgw@. Soc.ノ α", 46, 1980(1973).
8)G.Barone,V.Crescenzi.R,Quadrifoglio,V.
2. 結 言
AO‑MASt系の分光測定の結果から,AOとMAStとの 相互作用がcp/cd値によって異なることが判った。また,
Cp/Cd値が20以下の領域において,吸収スペクトル上に中 和度依存性はほとんど見られないが,Cp/Cd値が20以上 の領域においては,AO単量体の吸収帯が,MAStの中和 度に強く依存することが確認された。これより,低解離 領域におけるMAStとAOとの相互作用として,側鎖フェ ニル基に基づく疎水領域に, AO分子が,単量体または 二量体として, とりこまれているモデルが考えられた。
終りに,本研究を行なうにあたり,御指導を頂きまし
Vitagliano;RjC.SCj.,36,503(1966).
昭和50年2月