厚生労働行政推進調査事業費補助金(健康安全・危機管理対策総合研究事業)
分担研究報告書
大槌町における東日本大震災被災者健診結果から 見えてきた復興住宅入居者の健康状態
研究分担者 鈴木 るり子(岩手看護短期大学 専攻科地域看護学専攻 教授)
研究分担者 坂田 清美(岩手医科大学 衛生学公衆衛生学講座 教授)
研究協力者 下田 陽樹(岩手医科大学 衛生学公衆衛生学講座 助教)
研究要旨
【目的】本研究では,2018 年度の被災者健診データから健診受診者の健康状態と居住形態別の分 析を行い,また大槌町の災害公営住宅に居住する高齢者を対象に,面接調査を実施することで,健康 状態悪化の分析と支援方法について検討することを目的とした.【方法】2018 年度の被災者健診
受診者
5,638
人を対象として,居住形態と健診所見,生活習慣,心理社会的問題の関連について解析
した. また,2018 年度の大槌町健診の受診者のうち,災害公営住宅に居住しており,高血圧,脂質異 常症の所見,精神的健康度,睡眠の問題,運動不足,社会的支援の不足のいずれか
1
つ以上の項目にチ ェックのあった
54
人中,高齢者
44
人に協力を依頼して,2019 年
12
月
25-28
日にかけて面接調査 を実施した.質問項目は,入居年及び入居までの転居回数,2018 年度健診結果後の治療状況,住環境, 家族構成も含めた生活状況などである.倫理的配慮は対象者にはいつでも調査への同意を撤回で きることを説明し,同意を得た.本研究は,岩手医科大学医学部倫理委員会の承認(H23-69 )を得 ている. 【結果】
2018
年度被災者健診受診者において,災害公営住宅の居住者を震災前と同じ住居 に居住している者と比較した結果,男性においては,精神的健康度の問題,運動量の不足,社会的支援 の不足,がある者の割合が有意に高く,女性においては,不眠症の疑い,運動量の不足,社会的支援の 不足が高かった.面接調査は, 協力を依頼した
44
人中,死亡
1
人,長期不在
2
人,拒否
2
人を除いた
39
人を対象者として実施した. 39 人中独居高齢者は
29
人(76.9%)であり,調査した
39
人はす べて,現在の災害公営住宅を「終の住処」と考え転居予定はないと回答している.また,災害公営住 宅にはマンションタイプ(5 階建)
,長屋タイプ,戸建タイプがあるが,最も多くの入居者がいるマン
ションタイプには
18
人(46.2%)おり,運動不足と社会的支援が不足していた.【考察】発災から
9
年経過し,被災者の住環境には多くの問題が残されていた.特に,高齢者にとっては①住み慣れた 地域ではない,②転居回数ごとにつながりが立たれた,③高齢者にとっては新たな関係性の構築は 困難と考えていた,④現在の災害公営住宅を「終の住処」と考えていることなどが明らかとなった.
【結論】今回の結果から,災害公営住宅入居者の今後の支援方法として,①災害公営住宅入居者同士 の「ドアノッキング」活動の展開,②行政・民間の見守り活動の徹底,発災当時行われていた活動の 再開,③つながり活動の展開.特にマンションタイプは「鉄の扉が,津波の波のように怖い」と話し た高齢者がいたことから,入居者への配慮は重要と考えられた.
A.研究目的
被災地域においては災害公営住宅への集約 化が進む一方で,近年の調査では仮設住宅だ
けではなく,災害公営住宅居住者においても
健康問題が多くみられる傾向がある.本研究
では,2018 年度の被災者健診データから健診