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一. 中国最新法令 (2016 年 12 月中旬 ~2017 年 1 月中旬公布分 ) 1. 中央法規 1 (1) 環境保護税法全国人民代表大会常務委員会 2016 年 12 月 25 日公布 2018 年 1 月 1 日施行 1 背景中国において 環境を保護するため 1979 年に 環境保護法 (

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TMI 中国最新法令情報

―(2017 年 1 月号)―

TMI 総合法律事務所

〒106-6123 東京都港区六本木 6-10-1 六本木ヒルズ森タワー23 階 TEL: +81-(0)3-6438-5511 E-mail: chinalaw@tmi.gr.jp 〒200031 上海市徐匯区淮海中路 1045 号 淮海国際広場 2606 室 TEL: +86-(0)21-5465-2233 〒100020 北京市朝陽区朝外大街乙 12 号 昆泰国際大厦 2412A 室 TEL:+86-(0)10-5925-1200 皆様には、日頃より弊事務所へのご厚情を賜り誠にありがとうございます。 お客様の中国ビジネスのご参考までに、「TMI 中国最新法令情報」をお届けします。記事の 内容やテーマについてご要望やご質問がございましたら、ご遠慮なく弊事務所へご連絡下さい。 バックナンバーについては、弊事務所のウェブサイトに掲載させていただきますので、併せて ご利用下さい。(http://www.tmi.gr.jp/global/legal_info/china/index.html) 目次 一.中国最新法令 1. 中央法規 (1) 環境保護税法 (2) 企業簡易登記抹消改革を全面的に推進する改革に関する指導意見 (3) インターネット上で購入した商品の 7 日間無理由返品暫定弁法 二.連載 中国企業法実務/第十一弾:外商投資企業の各種手続 (第 2 回 役員の選任と変更) 三.中国法務の現場より 1. VPN 規制の強化

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一.中国最新法令(2016 年 12 月中旬~2017 年 1 月中旬公布分)

1.中央法規 (1) 環境保護税法1 全国人民代表大会常務委員会 2016 年 12 月 25 日公布、2018 年 1 月 1 日施行 ① 背景 中国において、環境を保護するため、1979 年に「環境保護法(施行)」が制定され、大 気、水、固形廃棄物、騒音等に対して汚染物質排出費2の徴収が定められた3。その後、中 国の環境汚染問題の深刻化に伴い、2014 年に汚染物排出費の徴収基準を高め、地方政府が 地方の状況に合わせて国家基準より高い徴収基準を定めることができるよう改革がなされ たものの4、地方政府が地方経済の発展のため、企業誘致の優遇政策として、企業が支払う べき汚染物質排出費を免除又は軽減することが可能となっていたことから、汚染物質排出 費の徴収による環境保護効果が損なわれていた。このような背景の下、環境保護を推進す る観点から、2016 年 12 月 25 日に「中華人民共和国環境保護税法」(以下「本法」とい う)が公布され、汚染物質排出費制度に代わり、新たに環境保護税という税目を導入する という抜本的な改革がされることとなった。 環境保護税法は、環境保護税に関する概要のみが定められており、制度のより具体的な 内容は今後本法の下位法令にて定められるのを待つことになる。 本法は全部で 5 章、28 条であり、総則、税金計算の根拠及び納税額、税金の減免、聴取 管理、附則に分けられるが、本稿では、本法の概要を簡単に紹介する。 ② 内容 ア 納税義務者 中国の領域及び中国が管轄するほかの海域において、直接環境に本法の別紙である 「環境保護税税目税額表」5及び「課税対象となる汚染物及び当量値表」6に定められ ている大気汚染物質、水の汚染物質、固形廃棄物及び騒音を排出した企業、機関及び その他の生産経営者が環境保護税の納税義務者である7 イ 税目及び税額 環境保護税の税目及び税額は、基本的には「環境保護税税目税額表」に定められて いるが、地方政府が地方の状況に合わせて、「環境保護税税目税額表」に定められてい る範囲内で税額を調整することができる8。そのため、地方政府は、実情に応じて国家 基準より高い税額を定めることができる。 1 《中华人民共和国环境保护税法》(主席令 61 号) 2 中国語で「排污费」 3 《环境保护法(试行)》第 18 条 4 《关于调整排污费征收标准等》(发改价格[2014]2008 号) 5 《环境保护税税目税额表》 6 《应税污染物和当量值表》 7 本法第 2 条、第 3 条 8 本法第 6 条第 1 項

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ウ 税金の計算 環境保護税の計算は、汚染物の排出量等に基づいて行うものの910、以下のように、 排出する汚染物の種類によって計算方法が異なる。 (a) 大気汚染物質、水質汚染物質  汚染物質の排出量/汚染当量値11×税額=環境保護税額 (b) 固形排気物質  汚染物質の排出量×税額=環境保護税額 (c) 騒音  国家基準を超えたデシベル数×税額=環境保護税額 エ 税金の免除及び軽減 本法上、以下の場合には、課税対象となる汚染物質を排出しても、環境保護税の納 税義務が免除されている12 (a) 農業生産により課税対象となる汚染物質を排出した場合 (b) 自動車、鉄道機関車、非道路移動器械、船、航空機等流動汚染源が課税対象となる 汚染物質を排出した場合 (c) 適法に設立された汚水集中処理場、生活ごみ集中処理場が、国家及び地方基準を超 えない範囲で、課税対象となる汚染物質を排出した場合 (d) 納税義務者が利用した固形廃棄物が国家及び地方の環境保護基準に合致している場 合 (e) 国務院が認可した税金を免除すべきその他の場合 また、以下の場合には、環境保護税の納税義務が軽減されている13 (a) 納税義務者が排出した大気汚染物又は水の汚染物質の濃度値が国家及び地方基準の 廃棄物排出基準の 30%より低い場合には、環境保護税の 75%を軽減 (b) 納税義務者が排出した大気汚染物又は水の汚染物質の濃度値が国家及び地方基準の 廃棄物排出基準の 50%より低い場合には、環境保護税の 50%を軽減 オ 課税当局 従前、汚染物排出費の徴収機関は環境保護主管部門であったが、環境保護税の課税 当局は税務機関である。環境保護主管部門は、汚染物を測定し、税務機関と情報を共 有する14 9 排出量等とは、大気汚染物質、水の汚染物質、固形廃棄物の排出量、かつ、騒音の場合、国家基準値を超えた 騒音のデシベル数を指す。 10 汚染物の排出量は、以下の順位で決めることになる。(a)納税義務者が国家の法令に従って取り付けた廃棄 物自動測定器により測定された数値、(b)納税義務者が廃棄物自動測定器を取り付けなかった場合、測定機関が 国家の法令に従って測定した数値、(c)廃棄する汚染物の種類が多いため、測定することができない場合、国 家環境保護主管部門に定められている汚染物排出係数等の方法により算出した数値。 11 廃棄物質の当量値は、「課税対象となる汚染物及び当量値表」に定められている。 12 本法第 12 条第 1 項 13 本法第 13 条 14 本法第 14 条

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(2) 企業簡易登記抹消改革を全面的に推進する改革に関する指導意見15 国家工商行政管理総局 2016 年 12 月 26 日公布、2017 年 3 月 1 日施行 ① 背景 中国において、2014 年 3 月 1 日より登録資本制度の改革が全国範囲で行われたことによ って、市場への参入管理が緩和され、会社を設立するハードルが大いに下がった16。その 一方で、会社が撤退をするにあたっての登記抹消に関しては、依然として手続が煩雑であ り、容易ではない。そのような中、2015 年、一部の地域において、企業簡易登記抹消制度 が制定された。同制度は、企業の登記抹消手続を簡略化し、企業の市場撤退の効率を高め る一方で社会資源の利用効率、政府効能を高めるものであり、商事制度の改革に重要な意 義を有すると認識された。 このような企業簡易登記抹消制度の有益性に対する認識のもと、更に同制度の発展を促 進するという観点から、2016 年 12 月 26 日に「工商総局による企業簡易登記抹消改革を全 面的に推進する改革に関する指導意見」(以下「本指導意見」という)が公布された。 本指導意見において、簡易登記抹消手続の適用要件、登記抹消手続、審査要求、審査期 限などが定められている。本稿では、本指導意見の概要について簡単に紹介する。 ② 内容 ア 簡易登記抹消手続の適用要件 営業許可証を取得した後に経営活動を行っていない会社、登記抹消を申請する以前 に債権債務が発生していないか、発生した債権債務を処理し終えた有限責任会社17 非会社企業法人、個人独資企業、パートナーシップ企業は、一般登記抹消手続又は簡 易登記抹消手続を選択することができる18 但し、以下のいずれかに該当する企業又は該当する場合は、簡易登記抹消手続が適 用されない。 15 《工商总局关于全面推进企业简易注销登记改革的指导意见》(工商企注字[2016]253 号) 16 2014 年以降、登録資本最低限度額の廃止、発揮人の貨幣出資金額が登録資本に占める割合に関する規制の廃 止や発起人の全額出資期限に関する規制の廃止等、登記に関する規制緩和が図られてきている。 17 裁判所の決定に基づく強制清算又は倒産の場合、当該企業の清算委員会又は管財人が裁判所の強制清算又は 倒産に関する決定をもって、当該企業が登記した工商局に簡易登記抹消手続を行うことができる。 18 本指導意見二(一)

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(a) 参入特別措置の対象となる外商投資企業 (b) 企業経営異常リスト又は重大違法信用喪失企業リストに掲載された企業 (c) 持分が凍結され、又は質権等が設定された場合 (d) 立件調査され、行政強制措置、司法共助の措置が取られ、又は行政罰が科された場 合 (e) 企業が法人格を有しない支店等の登記抹消手続を行わなかった場合 (f) 簡易登記抹消手続を中止されたことがある場合 (g) 法令により、登記抹消する前に許可を要する場合 (h) 簡易登記抹消手続を適用することができないその他の場合 イ 簡易登記抹消手続 簡易登記抹消手続の流れは以下のとおりである。 (a) 国家企業信用情報開示システムにおける「簡易抹消公告」欄に、簡易登記抹消及び 全ての投資者の承諾等の情報を公告する(公告の期間は 45 日)。  当該企業の登記機関は、簡易登記抹消に関する情報を税務局、人力資源社会保 障などの部門と共有する19  公告期間中、利害関係者及び政府関係部門は、国家企業信用情報開示システム における「簡易抹消公告」の「異議伝言」機能を通して、異議及びその理由を 述べることができる (b) 公告期間満了後、後述ウに掲げる申請資料と共に、簡易抹消登記申請を行う  登記機関は、公告期間中に異議の申し立てを受けた企業に対しては、3 営業日 以内に簡易登記抹消することができない旨の決定をし、他方、公告期間中に異 議の申し立てを受けなかった企業に対して、3 営業日以内に簡易登記抹消する ことができる決定をする ウ 提出資料の簡略化20 簡易登記抹消の申請資料も簡略化されており、「申請書」、「指定代表又は共同委任代 理人の授権委託書」、「投資者全体による承諾書」、営業許可証の正本と副本のみを提出 すれば足りる2122 エ 虚偽の簡易登記抹消申請をした場合の責任23 企業が簡易登記抹消手続を行う際に、虚偽の情報を提供した場合、登記機関は、登 記抹消を取り消し、当該企業の法人格を復活させ、重大違法信用喪失企業リストに掲 載し、国家企業信用情報開示システムでの開示をすることができる。利害関係者は、 民事訴訟を通して、その権利を主張することができる。 悪意で企業簡易登記プロセスを利用して債務を逃れ、又は他人の権利を侵害した場 合、利害関係者は、民事訴訟を通して、投資者に対して民事責任を追求することがで 19 外商投資企業の場合には、商務委員会を含む。 20 本指導意見二(二) 21 したがって、清算報告、投資者決議、税務登記抹消証明書、清算委員会届出証明書、清算を公告した新聞等 の資料は提出する必要がない。 22 もっとも、本指導意見は、あくまでも工商局が単独で公布したものであるため、簡易登記抹消を行う場合に、 税務局で清算手続等についてどのように進めるかについては、まだ明確になっていない点があるといえる。 23 本指導意見二(三)

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きる。 (3) インターネット上で購入した商品の 7 日間無理由返品暫定弁法24 工商局 2017 年 1 月 6 日公布、2017 年 3 月 15 日施行 ① 背景 2013 年の消費者権益保護法25の改正において、消費者がネットワーク、テレビ、電話、 通信販売等の方式で商品を購入する場合、商品を受領してから 7 日間は理由を説明するこ となく返品する権利を有すると定められた26。ところが、この規定が抽象的なものである ため、7 日間無理由返品の適用範囲及び返品時における商品の完全な状態の意義に関する 見解が定まっておらず27、また、返品手続に関する具体的な定めがないため、商品の返品 を巡る紛争が多発している。 このような状況に鑑み、2015 年、「国務院による E コマースを大いに発展させ、経済成 長活力を育成することに関する意見28」(以下「本意見」という。)が公布された。そして、 本意見において、工商総局が 7 日間無理由返品に関する実施細則を制定するとされたこと を踏まえ29、2017 年 1 月 6 日、インターネット上で購入した商品の 7 日間無理由返品暫定 弁法(以下「本暫定弁法」という。)が公布された。 本暫定弁法において、7 日無理由返品が適用されない商品の範囲、商品の完全な状態に 関する定義、返品手続等が定められている。本稿では、本暫定弁法の概要について簡単に 紹介する。 ② 内容 ア 7 日間無理由返品が適用されない商品の範囲 以下の商品については、7 日間無理由返品をすることができない30 (a) 消費者が特注したもの (b) 生もの、腐りやすいもの (c) オンラインでダウンロードし、又は消費者が開封した音響映像製品、コンピュータ ソフトウェア等のデジタル商品 (d) 引き渡された新聞紙、定期刊行物 その他、以下の商品については、消費者が商品を購入する際に、その性質を確認し た場合、7 日間無理由返品規定を適用しないことができる31 24 《网络购买商品七日无理由退货暂行办法》(工商行政管理総局 90 号) 25 《中国人民共和国消费者权益保护法》 26 消費者権益保護法第 25 条第 1 項 27 消費者が返品をする商品は「完全な状態」でなければならないとされている(消費者権益保護法第 25 条第 3 項)。 28 《国务院关于大力发展电子商务加快培育经济新动力的意见》(国发[2015]24 号) 29 本意見第 11 条 30 本暫定弁法第 6 条。これらは消費者権益保護法第 25 条第 1 項但書きで列挙されたものと同一である。 31 本暫定弁法第 7 条

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(a) 開封した後、人身安全又は生命健康に影響のある商品、又は開封後、商品の品質が 変わる商品 (b) アクティベート又は試用すると、価値が大幅に下がる商品 (c) 販売する際に、提示した品質保証期間が迫っている商品、瑕疵のある商品。 イ 商品の完全な状態の意義 商品が本来の品質、機能を有し、商品本体、付属品、商標が全て揃っている場合、 商品が完全な状態にあるとみなされる32。また、消費者が検査のため、商品の包装を 開けた場合、又は商品の品質、機能を確認するために行った合理的な開封は、商品の 完全な状態を損なわないものとされる33 他方で、以下の場合には、商品の品質、機能の確認の範囲を超えて使用することに より、商品の価値が大幅に下がったものとして、商品は完全な状態ではないとみなさ れる34 (a) 食品(健康補助食品)、化粧品、医療機械、計画生育用品について  必要となる一時的密封包装が破れた場合 (b) 電子電器類  授権を得ずに修理、変更、破壊、強制認証標識、ラベル、機械の序列番号等の変 更を行い、外観の原状回復が困難な使用痕跡があり、又は、アクティベート、授 権情報、不合理な個人使用データ保存等データ類使用の痕跡がある場合 (c) 服装、靴と帽子、スーツケースと鞄、おもちゃ、ホームテキスタイル、家庭用品  商標標識等が取られ、商品が汚れ、又は欠けた場合 ウ 返品手続 消費者権益保護法の文言上は、消費者は商品を受領してから 7 日間は無理由での商 品返還が可能とされているが35、本暫定弁法では、更に具体的に、消費者は商品を受 け取った日から 7 日以内に販売者に対して返品の通知をしなければならず、7 日の期 間は、消費者が商品の受け取りサインをした翌日より起算するものとされた36 返品する際には、商品本体のみならず、付属品及びおまけも返品しなければならず 37、返金については、販売者と消費者との間に返金に関して別途約定がある場合、約 定した方法で返金をすれば足り、約定がない場合は、商品を購入した際に用いた方法 で返金するものとされ、販売者は消費者の同意なく異なった方法で返金してはならな い38 (楊小萍・中国法顧問) 32 本暫定弁法第 8 条第 2 項 33 本暫定弁法第 8 条第 3 項 34 本暫定弁法第 9 条 35 消費者権益保護法第 25 条第 1 項 36 本暫定弁法第 10 条第 1 項、第 2 項 37 本暫定弁法第 12 条第 1 項 38 本暫定弁法第 14 条

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第 2 回 役員の選任と変更

1.はじめに 先月号では外商投資企業の設立についてその概要を解説したが、今月号では、設立された外 商投資企業を運営管理する主な機関である役員に焦点をあてて紹介をする。 中国法上の役員は日本の会社法上の役員、会社機関とパラレルに捉えることができる部分も あれば、必ずしもパラレルに捉えられない部分もあり、また、設立する外商投資企業の企業形 態(独資企業、合弁企業、合作企業、以下ではこれらの三形態を総称して「三資企業」とい う。)39に応じても法令上求められる機関構成が異なっていることなどから、日系企業の中国現 法で勤務されている駐在員においてすら、中国法上の役員の役割や職務を完全に理解すること は必ずしも容易ではない。 本稿では、外商投資企業の会社形態に応じて求められる役員構成及び各役員の役割等を説明 しつつ、役員の選任、変更に係る手続について説明する。 39 各企業形態の異同については、先月号(2016 年 12 月号)を参照されたい。

二.連載 中国企業法実務

第十一弾:外商投資企業の各種手続(第 2 回/全 9 回)

第 1 回 2016 年 12 月号 外商投資企業の設立 第 2 回 2017 年 1 月号 役員の選任と変更 第 3 回 2017 年 2 月号 定款変更の各場面 第 4 回 2017 年 3 月号 増資・減資 第 5 回 2017 年 4 月号 持分譲渡 第 6 回 2017 年 5 月号 持分出資 第 7 回 2017 年 6 月号 持分質権設定 第 8 回 2017 年 7 月号 企業買収 第 9 回 2017 年 8 月号 解散・清算

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2.企業形態ごとの機関設計 (1) 概要 企業形態ごとに法令上求められている役員構成等に関するルールを整理すると以下のと おりとなる。 独資企業 中外合弁企業 中外合作企業40 最高決定機関 株主会41 董事会 董事会の設置 原則必要的42 必要的 法定代表者 董事長、総経理又は執 行董事の内定款で定め る者 董事長 董事の任免 株主会による任免 各合弁当事者による任 免(合弁契約・定款の 定めによる) 各合作当事者による任 免(合作契約・定款の 定めによる) 董事長の任免 定款の定めによる 合 弁 当 事 者 の 協 議 又 は 董事会 合作当事者の協議又は 董事会 董事の人数 3~13 名の範囲内43 董事長(董事)の任期 3 年以下 4 年 3 年以下 董事長と総経理の兼任 可 総経理の設置 任意的44 必要的 総経理等の人数 総経理は 1 名、副総経 理については特段定め なし 総経理 1 名、副総経理若 干名 総経理 1 名、副総経理 については特段定めな し 総経理等の任免 董事会 監事(監事会)の設置 原則必要的45 監事の任免 株主会 各合弁当事者による任 免(合弁契約・定款の 定めによる) 各合作当事者による任 免(合作契約・定款の 定めによる) 監事の人数 原則 3 名以上46 監事の任期 3 年 40 本稿では中外合作企業が法人格を有する場合を前提としている。 41 但し、持分権者が 1 名のみの一人会社においては、当該持分権者(株主)が最高決定機関であり、株主会は 設置されない(会社法第 61 条)。 42 但し、執行董事を設置した場合は除く(会社法第 50 条)。持分権者の人数が比較的尐ない有限公司か規模の 比較的小さな有限公司においては、董事会の代わりに執行董事を置くことができるが、ここにいう「人数が比 較的尐ない」とか「規模の比較的小さい」といった要件について、法令上明確な規定はないため、董事会を設 置するか、執行董事を置くかについては、会社設立の定款作成の段階で当該企業の裁量によって決められてい るのが実情である。 43 独資企業で執行董事を置いた場合を除く。 44 会社法第 49 条。但し、実務上は、実態のある会社で総経理職を置かない例はみられない。 45 但し、持分権者の人数が比較的尐ない有限会社か規模の比較的小さな有限公司においては、監事会を置かな いことが可能(会社法第 51 条第 1 項)。 46 但し、持分権者の人数が比較的尐ない有限会社か規模の比較的小さな有限公司においては、監事会を置かな い場合、監事の人数を 1 人か 2 人とすることが可能(会社法第 51 条第 1 項)。

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(2) 企業形態ごとの役員、機関の役割 ① 独資企業 ア 概要 独資企業における役員、機関の関係は以下のとおりである。 イ 株主(会) 独資企業においては、株主(会)が最高決定機関となり、会社の定款の変更、登録 資本金の増減、董事及び監事の更迭、その他法令及び定款で定められた、会社に関す る最も重要な権限を行使することができる47 ウ 董事会又は執行董事 そして、株主(会)に責任を負う形で董事会は株主会決議の実行、会社の内部管理 機構の設置、総経理の選任・解任、その他法令及び定款で定められた権限を行使する 48。人数又は規模の比較的小さな会社においては、董事会を置かずに執行董事を 1 名置 くことも可能である49 董事会を構成するのが、董事であるが、董事会での決議を行うことが中心的な役割 となることから、現地に駐在する必要性は必ずしもなく、実務上は、日本在住で日本 本社における役員や関係事業部の責任者が董事を兼ねていることが多い。 エ 総経理50 更に、董事会に対して責任を負う形で総経理ほか高級管理職員が置かれることにな るが、総経理は生産経営業務の主宰、董事会決議の実施の組織、年度経営計画及び投 資案実施の組織、その他法令又は定款で定められた職責を担う者であるとされ51、日 常経営管理に責任を負っており、会社のオペレーション上の責任者といえる。現地で 47 会社法第 37 条 48 会社法第 46 条 49 この際注意するべきことは、董事会を置く場合には 3 人以上の董事が必要となるのに対し、執行董事を置く 場合には 1 名の執行董事のみ置くことになるので、例えば、2 名の董事を選任するということは不可能である ということである。 50 董事長は原則として対内的、対外的に代表権を有する者であるという点で法的に重い職責を負っているが、 現地におけるオペレーションを取り仕切るのは総経理であることから、企業の運営管理という観点からは総経 理の権限、責任の方が、実際上相対的に大きいということができる。 51 会社法第 49 条 監督機関 監事(会) 最高決定機関 株主(会) 執行機関 董事会又は執行董事 日常経営管理 総経理ほか高級管理職員

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のオペレーションを取り仕切る者であり、中国における日系企業の総経理の多くは、 日本本社からの駐在員である52 オ 監事(会) 会社の財務検査、董事や総経理等の役員の職務執行に対し監視・監督を行う機関で ある53。監事会は持分権者代表の監事と従業員代表の監事とで構成され、従業員代表 の監事は従業員代表大会等の民主的な手続により選任される54。そして、監事会の中 では、監事の過半数の同意により主任が選任され、主任が監事会会議の招集及び主宰 を担当することになる55 ② 合弁企業56 ア 概要 イ 董事会 合弁企業においては、董事会は、会社の最高意思決定機関として、会社の一切の重 要事項に対する意思決定を行う機関として位置付けられている57 董事会を構成する董事の人数は、合弁契約及び定款によって定められ58、各合弁当 事者が派遣する董事の人数は、出資比率を参考として協議によって定められることと なっている59 なお、合弁企業の董事会は独資企業におけるものと異なり、年に最低 1 回以上の開 催が必要とされており、また、定足数が定められている他、合弁企業の法定所在地に て開催しなければならないといったルールが置かれている60。そのため、普段は名義 のみ董事となっている日本在住の日本本社の董事兼任役員は中国での董事会に参加す るため、出張をすることが必要となる61 52 ただ、「現地化」が進んだ日系企業では、中国人の総経理を置く場合も増えつつある。 53 会社法第 53 条 54 会社法第 51 条第 2 項 55 会社法第 51 条第 3 項 56 合作企業については、近時例が尐ないため、説明を割愛する。 57 合弁企業法第 6 条第 2 項、合弁企業法実施条例第 30 条 58 合弁企業法実施条例第 11 条第 5 号、第 13 条第 5 号 59 合弁企業法実施条例第 25 条 60 合弁企業法実施条例第 32 条 61 マネジメント上も、合弁会社の場合で、特に日常の経営を中国側合弁当事者が主導している場合には、実際 に董事会の場に参加して、中国側と経営に関する協議をすることが、経営コントロールのために不可欠である と考えられる。 監督機関 監事(会) 最高決定機関 董事会 日常経営管理 総経理、副総経理ほか高級管理職員

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ウ 総経理、副総経理 総経理は、合弁企業の生産経営管理業務を主宰し、董事会決議の実施を組織し、合 弁企業の年度経営計画及び投資案の実施を組織する等の職責を担う者であり、合弁企 業の日常経営管理に責任を負う。総経理は董事会から与えられた権限の範囲内で、対 外的に会社を代表し、対内的に董事会が選任又は解任を決定すべき者以外の責任者を 任免し、董事会から委託されたその他の職権を行使する62 副総経理は、総経理の職責を補佐する役割を有しており、総経理が重大な問題を処 理するにあたっては、副総経理との協議をすることが必要とされている6364。 エ 監事(会) 独資企業におけるものと同様、会社の財務検査、董事や総経理等の役員の職務執行 に対し監視・監督を行う機関である65 ③ 法定代表者 法定代表者とは、対外的に会社を代表する者であり、契約締結権限、訴訟遂行権限を有 することから、日本の会社法上の代表取締役と同様に考えられる6667 三資企業における法定代表者は、原則として董事長と考えて良いが、独資企業において は、執行董事又は総経理を法定代理人とすることが可能であることとの関係で6869、執行董 事又は総経理が法定代表者として選任された場合には、董事長は法定代表者としての代表 権を持っておらず、他の一般の董事と権限上殆ど差異がない70 3.役員の選任、変更 (1) 独資企業 独資企業における役員の選任、変更は以下のとおり行われる。 ① 董事及び董事長 董事(執行董事を含む。)の選任及び変更は株主(会)の決定によって行われる71。他方、 62 合弁企業法実施条例第 36 条 63 合弁企業法実施条例第 37 条第 3 項 64 したがって、例えば中国側合弁当事者の者が総経理に就いた場合、外国側合弁当事者の者を副総経理として 派遣し、且つ、定款上、副総経理との協議をしなければならない事項を増やしておくことにより、総経理に対 する牽制効果を発揮することができる。 65 監事会については、合弁企業法に規定がなく、従前、合弁企業には、監事は不要と解されていたが、会社法 改正後の 2006 年 9 月 22 日に国家工商行政管理総局が公表した規定(《关于外商投资的公司审批登记管理法律 适用若干问题的执行意见》重点条款的解读)により、合弁企業を含む、すべての外商投資企業に対して、監事 の設置が必要であることが明言された。 66 そのため、日本人が董事長に就任する場合は、日本本社の代表取締役(社長、会長)がこれに就任すること が多い。 67 ただし、中国では法定代表者は 1 名しかおらず、この点、複数名存在し得る日本の「代表取締役」とは異な る。 68 会社法第 13 条 69 執行董事と総経理を兼任する場合(会社法第 50 条)は、同人が法定代表者ということになる。 70 もっとも、董事会の招集、主宰という役割を負っている。 71 会社法第 37 条第 1 項第 2 号

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董事長の選任方法については定款で定めることができ72、実務的には董事会の多数決によ って選任するものとされることが多い。 ② 総経理 董事会が設置されている場合は董事会によって総経理が選任されるが73、董事会を置か ず、執行董事が置かれた場合には執行董事が総経理を選任することになる。 ③ 監事 監事の選任は株主(会)の決定によって行われる74 (2) 合弁企業 合弁企業における役員の選任、変更は以下のとおり行われる。 ① 董事及び董事長 前述のとおり、合弁企業における董事の人数は合弁契約及び定款によって定められ、各 合弁当事者が派遣する董事の人数割合は、それぞれの出資比率を参考にして協議によって 定められることになる75 そして、具体的な当時の選任、変更は、各合弁当事者において行うこととなる。日本側 の合弁当事者においては、取締役会決議等、自社の内部手続に基づいて派遣ないし変更す る董事を決めることとなる。 董事長については、合弁当事者の協議又は董事会決議によって選任、変更をすることに なる76。実務上は、合弁契約及び定款においていずれの合弁当事者が董事長を派遣するか を定めていることが多い。そして、その上で具体的な人選及び選任は当該合弁当事者の内 部手続によってなされる。 ② 総経理 総経理の選任、変更は董事会決議によって行われる77 ③ 監事 監事の選任、変更に関し、明文はないものの、董事と同様、各合弁当事者の協議又は董 事会決議によって選任、変更をするものとされている。実務上は、合弁契約及び定款にお いていずれの合弁当事者が監事を選任するかを定めていることが多い。そして、その上で 具体的な人選及び選任は当該合弁当事者の内部手続によってなされる。 [応用編] 本文でも触れたとおり、董事長は三資企業の法定代表者であることが通常である。そし て、合弁企業、合作企業でも、董事長を日本側合弁当事者から派遣するとなっている場合 であれば、日本側当事者の日本本社の代表取締役が董事長に就任することも多い。また、 一般の董事についても、日本本社の役員が就任することも多い。ただ、日本において、日 本の代表取締役、取締役を務めているのと異なり、中国の現地法人で董事長、董事として 72 会社法第第 44 条第 3 項 73 会社法第 49 条第 1 項 74 会社法第 37 条第 1 項第 2 号 75 協議の結果として合弁契約、定款で、ぞれぞれの派遣する董事の人数が明記されるのが通常である。 76 合弁企業法第 6 条第 1 項 77 合弁企業法実施条例第 37 条第 1 項。実務上は、いずれかの当事者の推薦する者を董事会で総経理として選任 すると合弁契約や定款で定めることが多い。

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登記されていても、実際に中国現地で何らかの活動を行うということは実際のところあま りないため、実際には現地で指揮命令をしている総経理の方が実際上の権限を握ることが 多く、現地法人の「社長」という位置づけになるが、他方で、総経理は、日本本社におい ては、役員レベルの方ではないことも多い。 特に独資企業についていえば、あくまで株主会が最高決定機関であることや、董事会を 中国で開催する必要すらないといったことも相まって、社内の一部門として現地法人の経 営をとらえる傾向があり、法律上の董事会、総経理の権限分配の認識が希薄になりがちで ある。そこで、例えば、独資企業であれば、定款によって董事会での決定事項を増やすこ とも可能なのであり、そうすれば、董事長、董事の当事者意識も、多尐は強まるだろう。 現地の総経理に現地を任せきりにせず、日本本社にいる董事長、董事がより現地法人の経 営に主体的に関与することも、昨今、中国市場から撤退する日系企業が増える傾向もある 中で、勝ち残っていくための方法の一つとなるかもしれない。 (包城偉豊、呉竹 辰・弁護士)

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三.中国法務の現場より

1.VPN 規制の強化 2017 年 1 月 22 日、工業情報化部は、VPN サービスの提供を許可制とする旨の通知を出し た78 。 中国では、「グレート・ファイアーウォール」という検閲システムが採用されているといわ れており、政府にとって不都合な情報へのアクセスができないようになっている。そのため、 グーグル(Gmail の一部機能を含む。)、フェイスブック、ツイッター、LINE、YouTube 等に アクセスするために、VPN が利用されている。 私自身、仕事で用いるメールを送受信したり、事務所内のイントラネットにアクセスした りるためには VPN への接続が必要であり、プライベートでも Gmail の送受信やウェブサイト の閲覧に VPN を利用している。中国で暮らしている日本人にとって、VPN はほぼ必須の存 在と言っても過言ではないと思われる。 これまでも、年に複数回、VPN への接続が不可能になることがあったが、今回の通知に伴 う規制強化により、ある日突然利用していた VPN が利用不可能になり、復活させることがで きなくなるのではないかという不安の声が挙がっている。 「全面禁止」ではなく「許可制」であることから、理論上は中国政府が許可した VPN サー ビスを利用すればよいということになるが、当局がどこまで通知を徹底して実行し、日本人 駐在員及びその家族の生活にどの程度の影響が及ぶのか、現時点では不透明な状況にある。 公私ともに VPN が必須という人も尐なくないと思われることから、今後も動向を注視してい きたい。 (中城由貴・弁護士) TMI 中国最新法令情報―2017 年 1 月号― 発 行:TMI 総合法律事務所 監 修:何連明・外国法事務弁護士 編集主幹:山根基宏、包城偉豊・弁護士 発 行 日:2017 年 1 月 26 日 78 「工业和信息化部关于清理规范互联网网络接入服务市场的通知」 http://www.miit.gov.cn/n1146290/n4388791/c5471946/content.html

参照

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