PC 有ヒンジ箱桁橋の長期たわみ解析の精度検証
(株)建設技術研究所 正会員 ○光川 直宏 正会員 山崎祐貴子
阪神高速道路(株) 正会員 福島 誉央 正会員 甲元 克明 正会員 杉岡 弘一
1.はじめに
PC 有ヒンジ箱桁橋は,構造設計の容易さや経済的優位性から 1960 年から 1980 年代にディビダーク工法に て多く架設されている.しかしながら,有ヒンジという構造形式から,コンクリートの収縮やクリープ等によ る時間依存変位が大きく,中央ヒンジでは建設時に予測した変形やたわみを上回ることが報告されている.
この PC 有ヒンジ箱桁橋に見られる長期たわみの現象は同じ配合コンクリートであっても箱桁断面での上床 板,側壁,下床板のクリープ,乾燥収縮ひずみの差が生じ,これにより変形を促進する断面曲率が増大したた めと考えられている.そこで,本検討では上床版,側壁および下床版,それぞれの断面寸法や形状,相対湿度,
鉄筋および PC 鋼材による拘束度の違い等による時間に依存するひずみを考慮した解析を行い,設計予測値以 上のたわみ進行の原因を把握するとともに,長期たわみ解析の精度の検証を行ったものである.
2.対象橋梁
本橋梁は,昭和 39 年に架設された橋梁である.橋梁一般図を図-1に示す.
・橋長:L=166.000m(48.000m+70.000m+48.000m)
・幅員:w=21.837~16.909m
・上部構造形式:3 径間連続 PC 有ヒンジ 箱桁橋(ディビダーク橋)
・下部構造形式:RC ラーメン橋脚(P1,
P2,P3),RCT 型橋脚(P4)
3.解析条件
P1 側の張出 PC 箱桁部をモデル化した.図-2 に示すとおり,長期変位の解析においては,箱桁 断面をその主要な構成部材である上床版,側壁,
下床版の部位に分けて,3つの線材として断面を モデル化した構造解析モデルを用いる.解析条件 を表-1に示す.
解析手法 コンクリート標準示方書1)を参考に,上床版,側壁および下床版,それぞれの断面寸法や形状,相対湿度,鉄筋 および PC 鋼材による拘束度の違い等による時間に依存するひずみを考慮した解析.
使用材料 および 材料特性
コンクリート 設計基準強度σck:40N/mm2,単位セメント量 C:447kg/m3 単位水量 W:170kg/m3,水セメント比 W/C:38%
PC 鋼材・鉄筋 A 種 2 号φ26(SBPR 785/1030),SD345
環境条件 年間平均相対湿度:64%(気象庁観測データ(大阪)より求めた 1965 年から 2013 年までの平均相対湿度)
初期 断面力
クリープによって発生する長期変位は完成直後に作用している持続荷重によるものとして取り扱う.設計計算で 算出された構造系完成直後の持続荷重断面力を上床版,側壁,下床版毎の分担断面力として直接入力する.
施工工程 竣工図書より張出し架設の日数(構造系完成時:142 日)を考慮する.
キーワード PC 有ヒンジラーメン橋,クリープ,乾燥収縮,長期たわみ解析,線材モデル
連絡先 〒541-0045 大阪市中央区道修町
1
丁目6-7 (株)建設技術研究所
大阪本社 TEL 06-6206-5653 図-1 橋梁一般図(単位:mm)図-2 解析モデル(単位:mm)
表-1 解析条件
ヒンジ
下床版 上床版
側壁
47,650 35,000
P1
P2
ヒンジ
土木学会第70回年次学術講演会(平成27年9月)
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4.長期たわみに対する各パラメータの感度分析 クリープと乾燥収縮における長期変形予測式で は,各パラメータ(水セメント比,コンクリート 圧縮強度,相対湿度,体積表面積比)を設定する 必要がある.各パラメータの感度分析結果を図-3 に示す.ここでは,下側の数値となっている項目 が長期たわみに与える影響が大きいことを示して いる.相対湿度(RH)において上床版のみ橋面か ら水分供給があるものとして 95%と設定すること が長期たわみに影響を与える割合が高いことが確 認された.
5.長期たわみ解析
収縮ひずみとクリープ係数の経過日に対 する値の変化を図-4 に示す.乾燥収縮ひず みについて,コンクリート標準示方書1)の計 算例では,上床版の相対湿度 95%に対して,
乾燥収縮ひずみを 0 と仮定しているが,本検 討では,道路橋示方書に示される乾燥収縮ひ ずみの値を参考に上床版は側壁,下床版の収 縮ひずみの 20%に設定した.
長期たわみの算出結果を図-5 に示す.各 パラメータの感度が確認できるように各々 のケースを累積した結果を示している.これ より,上床版の体積表面積比(V/S)や部材 館のクリープ係数の違いは長期たわみに大 きく寄与しておらず,上床版と側壁,下床版 の乾燥収縮ひずみに違いがあることが大き く影響していることが確認される.つまり,
上床版と側壁,下床版との間に収縮差を考慮 することで,実橋梁の長期たわみとほぼ一致 することを確認できた.
6.まとめ
本橋梁に対して,新しい知見を取り込んだ クリープ解析を行い,長期たわみの再現計算 を実施したところ,PC 箱桁断面を部材毎(上 床版,側壁,下床版)に相対湿度や体積表面 積比を想定する環境条件で差別化すること により,クリープ,乾燥収縮ひずみに差が生
じ,実橋梁の長期たわみを精度よく再現することができた.また,各パラメータの感度分析も行い,長期たわ みに大きく影響するパラメータの設定が解析精度の向上に重要であることを確認した.
参考文献
1)2012 年制定 コンクリート標準示方書[設計編] 土木学会
図-4 乾燥収縮ひずみとクリープ係数の経時変化
図-5 長期たわみの解析結果 図-3 各パラメータの感度分析結果
0.0 1.0 2.0 3.0 4.0
0.000 0.001 0.002 0.003 0.004
1 10 100 1000 10000 100000
クリープ係数【□】
収縮ひずみ【△】
コンクリート打設からの経過日数(日)
上床版(V/S=244mm)×20%
側壁(V/S=235mm) 下床版(V/S=73mm) 上床版(RH=95%) 側壁,下床版(RH=64%) 構造系完成時
‐150
‐100
‐50 0 50 100 150 200
たわみ(mm)
相対湿度(RH) 体積表面積比
(V/S) 圧縮強度
(σck) セメント量(C)水(W)
σck=30N/mm2 σck=50N/mm2 部位全般RH=95%
部位全般 RH=40%
上床版のみ RH=95%
ボックス内 表面積無視
上表面積無視 W/C0.5
水200kg/m3 に増加
‐80
‐60
‐40
‐20 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220 240
0 5000 10000 15000 20000
完成時からの鉛直変位(mm)
完成時からの経過日数(日)
解析値(上床版V/S×50%)
解析値(上床版V/S×50%+クリープRH95%)
解析値(上床版V/S×50%+クリープRH95%+乾燥収縮ひずみ×20%) 計測値
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