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1 はじめに

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Academic year: 2021

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今日(今世紀に入って)の人類の宇宙空間の利 用や宇宙空間での活動の幅はますます広がり、

我々の日常生活が直接的・間接的に宇宙に依存す る度合いは高くなる一方である。IGY(国際地球 観測年)が始まった約 50 年前と比べ、日常的な通 信衛星・放送衛星の利活用や国際宇宙ステーショ ン等の人類活動、GPS 衛星による地上での測位な ど、宇宙空間の利活用は我々の生活に完全に根付 いており、これらの安定運用は社会生活の視点か ら必須であると言える。しかし、人工衛星や国際 宇宙ステーションが飛翔する宇宙環境は、太陽活 動の影響によって大きく変化することがある。宇 宙環境の擾乱によって、衛星障害や通信障害、測 位誤差の増大などが生じた場合には、我々の日常 生活への影響も大きい。

これらを背景に、宇宙環境の現況の把握と将来 の推移を予測するのが宇宙天気予報の役割であ る。情報通信研究機構(NICT)は、1965 年以来、

国連 UNESCO の下部機関の ISES(国際宇宙環境 情報サービス)の宇宙天気予報センターとして活 動し、定常的に宇宙環境情報を提供している。具 体的には、13 の加盟国間でデータ・情報交換を行 い、NICT 独自の宇宙天気観測ネットワークによ る観測データに基づいた太陽活動、地磁気活動、

太陽放射線活動、電波伝播に関する予報を日々実 施し、Web や電子メールなどにより国内外に情 報配信している。

前述のとおり、NICT は、宇宙環境の情報配信 を目的とした観測ネットワークを国内外に展開 し、宇宙天気研究と予報業務に活用している。国 内においては、宇宙天気現象の源である太陽の活 動(フレアや CME 現象など)のモニターを目的と して、H

α

線による太陽光学観測および広帯域の 電波スペクトル観測、太陽活動の F10.7 指数の観 測を実施している。さらに、GPS 信号を用いた測

位の誤差要因や電波伝播障害の要因となる電離圏 擾乱をモニターすることを目的として、国内 4 か 所でイオノゾンデを用いた電離圏の観測を長期間 実施している。

また、海外においては、放射線帯変動や中低緯 度電離圏擾乱の要因となる極域の地磁気やプラズ マ変動をモニタリングするため、国際協力の元で、

極東シベリア域を中心とした地磁気(10 か所)・

HF レーダ(1 か所)の観測網を展開している。さ らに、GPS の測位誤差の要因となるプラズマバブ ルのモニターと、発生・伝播メカニズムの解明を 目的として、国際協力の元で東南アジア域 8 か所 にイオノゾンデ、GPS シンチレーション・TEC モニター、磁力計による電離圏観測ネットワーク を展開している。

一方、これらの観測データを補い、または観測 データを利用した宇宙環境予測を目的として、

NICT ではスーパーコンピュータによる数値予報 を行っている。太陽と太陽風、地球磁気圏および 地球電離圏・熱圏をそれぞれリアルタイムにシ ミュレーション計算し、数日から数週間後の宇宙 環境の予測に利用している。それぞれのシミュ レーションコードは入力パラメータとして太陽、

太陽風の観測データや上流となる磁気圏シミュ レーションの内部境界データを入力パラメータと している。このような実観測または他のシミュ レーション結果をもとにしたシミュレーションを 行うことで、実用性の高い予測が可能となる。

さらに、近年、NICT では情報通信技術(ICT)

を活用したインフォマティックスによる宇宙天気 の研究を開始した。これは、JGN2plus などの高 速ネットワークや GPGPU などによる高速数値計 算・データ処理、大規模分散データストレージを 活用し、上記の観測データやシミュレーション データを統合的に処理することで、これまでには

1

特 集

宇宙天気予報特集

特集

1 はじめに

1 Introduction

村田健史

MURATA Ken T.

(2)

宇宙天気予報特集

2 情報通信研究機構季報Vol.55Nos.1- 4 2009 特集

ない手法による宇宙環境予測・予報を行う試みで ある。データの標準化、クラウドコンピューティ ングの利活用、セマンティック Web データベー スの導入などにより、これまでには困難であった 数値データのデータ統合化を進め、過去の事例か ら様々な因果関係を学習し、より高い精度での宇 宙環境予測の達成が期待されている。

本特集号では、NICT がこれまでに取り組んで きた、または今後も試みを進めていく観測・シ ミュレーション・インフォマティックスによる宇 宙環境研究および宇宙天気研究の成果をまとめ、

報告するものである。前回の宇宙天気特集号から 7 年が経ち、NICT の宇宙天気研究は飛躍的に発 展した。観測技術、数値計算技術および情報通 信・情報処理技術が更なる発展を遂げようとする 今、これまでの研究成果を特集号としてまとめる ことには意義がある。一方、残念ながら、これま での成果をもってしても、現在、実用性の高い宇 宙天気予報が実現したとは言い難い。本稿での 我々の取り組みが今後発展し、真の宇宙天気予報 の実現に結びつくことを願ってやまない。

むら たけ

村田健

電磁波計測研究センター宇宙環境計測 グループグループリーダー 博士(工 学)宇宙情報工学、福祉情報工学

参照

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