小規模住民組織を単位とした住環境整備における計 画及び事業に関する研究―タイの都市貧困層コミュ ニティを事例として―
著者 川澄 厚志
学位授与大学 東洋大学
取得学位 博士
学位の分野 国際地域学
報告番号 甲第237号
学位授与年月日 2009‑03‑25
URL http://id.nii.ac.jp/1060/00003953/
第6章 結論
6.1本研究のまとめ
本研究では、2003年にCODIによりBMPの10パイロットプロジェクトに選定された地 域のうち、それぞれで異なる開発の特徴が見られたバンコク都・ボンガイ地区とソンクラ ー県・ガオセン地区を対象とし、小規模住民組織を単位とした住環境整備における計画及 び’カ’業について計画論的視,1慧から考察しその有効性を明らかにしたc
本研究のまとめは次の通りである、.
第・に、タイの都市貧困層に対する政策の変遷を明らかにし、住民参加によるコミュニ ティ開発のr・∫能性と課題について考察をした、これにより、従来の限られた財源をもとに
した政府}1導のトッフダウン型からコミュニティの自立的な開発を支援するコミュニティ 開発の日∫能性を明らかにした,
タイの都市貧困層コミュニティにおける都市貧困政策の変遷は、開発途上国の典型的な ケ…スといえる、1970年代にNHAの設立と伴に集合住宅建設を開始し、1970年代後半か ら1980年代にかけて、サイト・アンド・サービスや土地分有事業などの特徴的な事業を取 り人れ、1980年代後半には、コミュニティを対象とした開発に住民組織やNGOが参加す る仕組みが作られ、公共主導のハード整備重視から、住民参加による住環境改善における マイクロクレジットの導入にみられるようなインセンティブを活かしたエンパワーメン ト・イネーブル政策へという転換が見られた。1990年代には、インフラや住宅などのハー ド整備を行ってきたNHAに加え、 UCDOによる貯蓄グループを対象とした小規模無担保 融資事業が開始された。その後2000年、UCDOは農村コミュニティの開発基金と併合し CODIへと発展的に改組され、個々の貯蓄グループ形成やコミュニティ支援から、ネット
ワークへの支援に活動を拡大しており、住宅建設や住環境整備、生活自立支援などに向け た資金の貸付を行い、各種の情報の提供、訓練プログラムへの参加の促進を支援している。
一方、都市貧困政策の変遷に伴い、住民組織も変容した。松薗祐子(1999)は、発生期
(1970年代)を伝統1-ll助的組織、撤去移転策による増加期を対抗的闘争的住民組織、改善 事業の受け皿として定着した時期をプロジェクト協力型組織、コミュニティ開発として成 熟期を迎えた組織を住民自治型住民組織、社会開発全般を担う組織を自助的開発型住民組 織と呼び、開発の手法や過程に合わせた住民組織の形成がされてきたことを示している。
このようなtl]、 CODI及びNHAはタクシン政権時に、社会開発・人間の保障省下に置か れ、2003年から「バーン・マンコン・プログラム(BMP)1と「バーン・ウア・アートー
ン(BEP)」といった住環境整備事業が実施しており、従来のパッケージ型事業からオルタ
ナティブな選択型‘1†:業へと変化している。これにより住民はNHAのBEPか、またはCODI のBMPかを選べるようになった。
以上のように、都市化の過程で地方分権化や市場の拡大、民主化を背景に、さまざまな 開発の局面においてガバナンスの確ウニなど多様なi三体の参加が求められ、都市貧困層を対 象にした開発政策も、従来の限られた財源をもとにした政府一1:導のトップダウン型からコ
ミュニティの自、‘ノ1的な開発を支援する参加型の事業方式へ、施策の展開もみられるように
なってきた、,
住民参加による住環境整備において、政府、NGO、住民組織、コミュニティネットワー ク組織、などの開発アクター間の連携のもとで、住民参加を促進し、住環境整備を進めて いくことが求められており、そのための具体的な枠組みを構築していくことは課題である。
こうした中、CODIではいくつかのBMP実施地区において、コミコ.ニティ内に小規模住民 組織を組織化することを促して事業を実施しているc
第:に、CODIの住環境整備事業における住環境整備の特性を明らかにした。また、10 ハイロットプロジェクトの事例から、小規模住民組織をコミュニティ内で組織化する理由 の・つに、コミュニティの規模が関係していることが分かった。
1980年代後’Pから1990年代を境に、NGOや行政機関などの支援を受けて形成され拡大 してきたコミュニティネットワーク組織は、大きく「NGO支援組織」、「CODIなどの行政 支援組織」、「住民の自主組織」の3つに分類できる。政策策定への住民参加という点にお いては、特にNGOの支援を受けた住民ネットワーク組織が中心を担う傾向がみられ、行 政支援組織や住民自身による自主組織にっいては、事業の実施レベルでの住民参加と組織 強化を重視する傾向が強い(秦辰也、2005:pl88)。また、秦辰也(2005)によると、これ ら3つの異なるタイブの住民ネットワーク組織について、それぞれに共通するのは、NGO や行政関係機関などが、住民リーダーやコミュニティの住民組織が主導の住環境改善を財 政面や技術面で支援し、ネットワーク自体はそれぞれのスラム地区で行われている住環境 改善に関する諸活動を調整し、相互協力を促進させる働きを担っていることである。
CODIの活動は、貯蓄グループを対象とした小規模無担保融資事業、コミュニティネッ トワーク活動、BMPにおける小規模住民組織の組織化等にみられるように、受益者である 住民の1:体的な関与を不可欠としており、コミュニティ自体の可能性を発揮させるための 活動を通して貧困者の自立の・端を担っている。
貯蓄グループを対象とした小規模無担保融資事業は、都市貧困層コミュニティ住民の生 活全般の向上を、住民自体が選択的に実現する手段を提供するとともに、ネットワークを 通した貯蓄グループの集合体としての活動を担保する費用を利子分に該当させ、市場金利 に準じた融資システムを採用することで、自らをフォーマルセクターに重ねている。こう した貯蓄グループの活動は、強制撤去への対応をはじめとして、さまざまな生活向上機会
に対応したコミュニティ活動となっている、CODIは貯蓄グループKコそのコミュニティへ の資金貸付とともに、NGOなど他団体との援助活動とも連携し、ネットワークの組織化や これを通した地域間(都市と農村)の情報、技術支援に重点を移している、グローバル化 するフォーマルセクターに対し、ネソトワークを埋め込むことで、都市貧困層コミュニテ ィが自・▲ノ:的な社会参i}tlfを図る運動を支援する媒介的な役割を担うことを目的としている,
こうしたネットワーク化によるエンパワーメントは、経済的活動や開発プロセスにおいて も、都市貧困層とフォーマルセクターとの間をっなぎ、政治的にも関係団体と均衡ある関 係を構築することにつながるf’CODIの住環境整備事業におけるコミュニティネットワー
ク化の利点は次の通りである、第・に、個別の対応ではクレジットのリスクが大きいので、
住民の責任分配により信用や担保を強化する必要がある。第二に、連携することで対外的 な要求が実現しやすくなる(フォーマルセクターとの架け橋)、第三に、各グループ、コミ ュニティ相!1:に対等な関係で相互の技術・知識・情報を通した交流・連携が可能になるc 2003年から開始され都市貧困層コミュニティにおいて住環境整備事業を実施している、
N}IAの支援によるBEP .’1,i ti及びCODIの支援によるBMP事業の特徴は、まずBEPはNHA や委託された民間会社に任せているのに対し、BMPは主に低所得者向けの住宅で、住民が
、1^:案、計1由「、建設、評価といった連の開発プロセスへ参加し、建設後ローン返済のため の協同組合を組織化し、自分らでコミュニティ運営していく形をとっている。また、BMP が低所得者向けのセルフヘルプによる住宅改善であるのに対し、BEPは低所得者層から中 所得者層(少なくとも月収15,000バーツ以下の世帯)までと幅広い層への公共集合住宅建 設事業iであり、1970年代に見られていたような住宅供給事業の側面もみてとれる。また、
BMPにおいて注目すべき点は、いくつかのBMP実施地区でCODIの支援のもと、小規模 住民組織による計画参加の取り組みが実践されているという点である。
第三に、環境整備を目的としたコミュニティ開発方式における小規模住民組織の組織化 過程、役割、特性にっいて、事業が実施されたボンガイ地区の事例を中心に計画論的視点 から考察した、
小規模住民組織の役割について、これにより住民が主体的かつ自主的に事業へ参加でき、
事業が円滑に進められたといえるだろう、、事業後の主な小規模住民組織活動をみてみると、
D定例会で問題点とその対策を話し合う、2)一一一日5バーツセービング活動、3)住宅ロー ンの回収、などを担っている。協1司組合リーダーによると、今後は、徐々にコミュニティ における内発的発展のための機能として活動を行っていくとの説明であった。この小規模 住民組織を媒介した内発的発展は、コミュニティや地域の発展をより主体的かっ自発的な ものにし、白律的な意思決定のもとに推し進めていくための方法論として位置づけられる。
住環境整備事業の過程において、内部で小規模な住民グノレーブを組織して実施していく ボンガイ地lx:の事例から次のような点が指摘できる。
①小規模住民組糸i伐メンバー問における相隣関係の構築によって、開発情報などが身近に 共有され、これによって、コミュニティの環境整備がより実効性を増す結果につなが
つている、,
②住環境整備‘1}:業(BMP)は、タイの都r}f貧困層30万世帯を対象に5年間の期限を[1艮っ た大規模なプロジェクトであるが、この事業を円滑に推進するために、経験と実績の ある小グループを対象にした都市貧困者の生活lhl上のためのマイクロクレジソトの方 法を屯ね合わせている。ボンガイ地区では、コミュニティが直面する危機を乗り越え られた要因として、セービング活動が挙げられる。
C①小規模住民組織を単位とした住環境整備計画及び事業は、共通の問題意識をもって、
収人や身分は関係ない’ド等の、’f.場で、自らのニーズの自己実現のための活動を展開し、
結果的にコミュニティ全体へと広がっていくものと考えることができる。このような 小グループを形成して活動を展開している事例として、バングラデシュのグラミン銀 行における5人・組でグループを形成し、スクォッターに対しマイクロクレジットの 信川貸付けが展開されているが、この方法に合わせ、ボンガイ地区開発では、コミュ ニティ全体と整合していることが特徴である。
③小規模住民組織を通したコミュニティ活動への参加機会によって、住民がエンパワー メントされ、コミュニティ全体としても改善活動の展開が可能になった、
⑤開発過程において小規模住民組織がk体的な役割を担うことで、計画の確実な実践と 連続的な活動を実施していくことが可能であることを示した。
ボンガイ地区は火災からの復興という事情や経済的制約から、段階に分けてそれぞれの フェーズで画一的な住棟配置が選択されているが(部分的な開発の推進)、第5章で示すガ オセン地区のように環境条件次第では、小規模住民組織ごとに、それぞれの事情に合わせ た整備方針の立案が可能となる、
小規模住民組織を単位とした住環境整備計画及び事業の実施に際して、当地区の事例か ら課題として次の点が指摘できる。第一コに、ハード面の環境整備においては、組織ごとに 意見が分かれて調整に時間がかかり、なかなかまとまらない局面もみられた,第二に、単 位が小さいため活動が制約される場合は、相互の関係性を統括するコミュニティ全体の方 向づけが課題となる。
第四に、ガオセン地区における馨}:業実施までの開発プロセスは、①協同組合による住民 の特定一・②財務省(地D、ソンクラー県庁・市役所、CODEによるBMP実施の承認→③ ブロックグループリーダーを中心とした小規模な区分→①ブロック内の貯蓄グループ住民 や相隣関係の小規模住民組織として組織化→⑤小規模住民組織を単位としたワークショッ プ形式により戸べつ0)住宅建設・改善計1由1の立案→⑥各ブロックの住民会議において計画 方針が決定→⑦コミュニティ全体の住民会議で言沖]i決定一・⑧住宅建設及びインフラ整備の
実施、となる。ガオセン地区の‘}}:例から、小規模住民組織を単位とした住環境整備におけ るll卜画及び事業についてド記の四点が明らかになった。
第・に、小規模住民組織が開発の単位となるに際して、そこには次のkうな様々な要因 が関係している。①CODIの支援するセービング活動に参加している住民であること。こ のセービング活動の日的は多様であるが、この場合は住宅改淳・インフラ整備に参加する ll的でセービング活動を行っている住民が対象となる。②日常的な相隣1掲係が成立してい る集団である。当地区は、移住等の歴史的な過程や宗教的(ムスリム:仏教=6:4)にも
kとまっていることが多い。③計画の単位として、あるいは実施の容易さから意見のまと まりゃすい小規模住民組織が求められたこと。
第:に、改;1ξ型の開発は既存のストックや住民の意向が反映されることから、①大規模 な集落をブロック(街区)に分割してそれぞれに住環境整備の方針を設定し、さらにその ブロック内に小規模な住民組織を形成していること、②小規模住民組織はセービング活動 の基本単位であるが、この場合は改善型であるので、基本的に一一体としての強制力はない
こと、などが特色となっている,
第:に、小規模住民組織がコミュニティ開発の単位として機能することで、コミュニテ ィ全体の合意を取り付けなくとも、事業の実施が容易になり、街路などの共的空間の整備 においては住民にとっても小規模単位でまとまることで住民の意向を反映させやすくなる.
’方で、この場合、個別の意見の反映はコミュニティとしての全体的なまとまりを損なう ことになる可能性もある。
第四に、この開発方式は住宅改善へ参加しない住民も開発区域の中に包含する方式であ り、そのプロセスにより地域全体の底一ヒげに繋がる可能性がある。
6.2小規模住民組織を単位としたコミュニティ開発の有効性
6.2.1 住環境整備における小規模住民組織の特性
(1)住環境整備における小規模住民組織の特性
2つの対象地域からみる小規模住民組織の共通の特性は、①相隣関係をもとに組織化さ れていること、②マイクロクレジットを基調とした事業参加であること、③事業参加の満 足度が高い、④’li:業以前よりも事業実施後の方が住環境に対する満足度が高くなっている、
⑤小規摸住民組織を通した「}業実施の満足度が高い、⑥事業実施以前はインフラ整備など のハード面の環境整備問題について指摘する住民が多かったが、事業実施後は麻薬問題、
環境問題などの社会問題への指摘が多くなっており、住環境問題へ対する意識が高くなっ ている、⑦小規模住民組織をコミュニティの中で組織化するといった重層的な開発アクタ
v-一一フ設定がみられること、などである、
一方、相違点については、基本的に開発形態によるところが大きいが次の通りである。
第・に、小規模住民組織の形成について、ボンガイ地区は路地単位に形成されているが、
ガオセン地区は既存のブロックごとに形成されたため小規模住民組織の組織化が複雑にな
っている、
第:に、小規模住民組織による事業計画とこれを単位とした開発プロセスにっいて、ボ ンガイ地区では火災からの復興という事情や経済的制約から画一的な住棟配置が選択され、
準備できた/l三民から事業をフェーズに分けて部分的に開発が進められた。一方、ガオセン 地区では、改善型の場合に見られるケースであるが、事業実施以前にすでに個人でリフォ ームしていた世帯もあり、こうしたBMPのセービングによる住宅改善に参加しない住民 も小規模住民組織のメンバーに組み込むことで、インフラ整備に関しての共同作業を可能 にするとともに、住戸建設でも、各世帯が経済事情に合わせ個別にマイクロクレジットに よるローンを組み込むことで対応している。ブロックごとでも、インフラ整備に関してそ れぞれ違う特徴が指摘できる。
第=1に、事業への住民の参加形態について、ボンガイ地区では事業に参加しない住民や 合意しない住民は、他の地域に移転するといった排他されるという課題があったが、参加
した住民は組織的にまとまっており、事業後も小規模住民組織が機能している。ボンガイ 地区ではすべての小規模住民組織で住宅建設やインフラ整備に参加しているが一方、ガオ セン地区は、①インフラ整備/住宅改善、②インフラ整備のみ、③全く参加していない、
の:.っの類型に住民を分けることができる。このことは、小規模住民組織導入の動機の一 つとして挙げられるマイクロクレジットへの参加が、修復型の開発ではメンバー個々の事 情による開発の選択に委ねられることを示している,
第四に、事業後における小規模住民組織の活動展開であるが、ボンガイ地区では、①一・
日5バーツのセービング活動が住宅ローン返済と並行して開始、②路地の安全について2 つのグループでそれぞれ街灯を設置、③住宅ローンの返済に際して、それぞれの小規模住 民組織内に集金係りを設けて、グループごとに協同組合へ返済、など新たな活動の展開が 見られた。 ・方、ガオセン地区では、個別の返済システムを切り替えて小規模住民組織に 組み込もうとする動きはみられるが、2008年9月現在、小規模住民組織の活動はない.
第’,1に、合意形成について、ボンガイ地区は小規模/ll民組織リーダーを中心に井戸端会 議で品:報を共有した,、決定工1}:項や議題に不満を持っている住民に対しては、まず小規模住 民組織リーダーが対応するが、ここでも話しがまとまらない場合は、協同組合リーダーや コミュニティリーダーが対応し全体の合意をしている。ガオセン地区は、コミュニティの 定例会議で合意形成をしているが、まず小規模住民組織リーダーやメンバーで話し合いや 情報を共有している点は共通である。
第六に、開発方式の相異であるが、ボンガイ地区は再開発であり、ガオセン地区は改善 型開発であった。どちらの事例もコミュニティの中で小規模住民組織を形成し、住宅改善 やインフラ整備が実施できた.再開発は全体で行っていくため小規模住民組織のまとまり が維持され、事業後においても新たな展開が見られた。
・方、改1年型開発は既存のコミュニティの社会構造を基盤として開発を進めていくため 個別に対応しなければならず、事業参加への形態も様々であったが、こうした選択を住民 がそれぞれに行うためにも相隣でのフェイスツーフェイスでの話し合いが担保された小規 模住民組織が有効であった一t
(2)小規模住民組織の位置づけ
本研究では、それぞれの事例で異なる小規模住民組織の特性が見られた.小規模住民組 織は、小さな単位で話し合いが行われ最終的に協同組合に提案していくことで住民の意向 がコミュニティの形成においても反映しやすいシステムである。特にガオセン地区のよう な改善型開発は、メンバー個々の事情による開発の選択に委ねられるため、小規模住民組 織を形成し柔軟な開発プロセスで住環境整備を実施していく必要があった。
本研究では、タイのCODIが実施する住環境整備事業を研究対象として、コミュニティ の開発プロセスにおいて小規模住民組織が1三体的な役割を担うことで、計画の確実な実践
と連続的な活動を実施していくことが可能であることを示した。
6.2.2小規模住民組織を単位とした住環境整備計画及び事業の特性
本論文の結論として、小規模住民組織を1.V一位とした住環境整備における計画及び’}渓の 特性について、バンコク都のボンガイ地区とソンクラー県のガオセン地lxlの軒列を中心に 計画論的視、点から考察した結果、ド記の点が明らかになった。
第一一・に、「コミュニティ全体との整合性」について、
ボンガイ地区とガオセン地区のそれぞれの事例に示す小規模住民組織を単位とした住環 境整備の展開は、コミュニティ全体の計画とも整合していることを示した.この点は、小 規模住民組織を組織化して住環境整備を実施する際に重要な点であり、個別でやるべきこ ともあるが、最終的にはヒ層グループへの報告と議論をしていく必要があった。
第二に、「相隣関係による組織化と構築」について、
小規模住民組織メンバー間における相隣関係の構築によって、開発情報などが身近に共 有され、これによって、コミュニティの環境整備がより実効性を増す結果につながってい る 小規模住民組織は、日常的な相隣関係が成立している集団であり、移住等の歴史的な 過程で宗教的にもまとまっていることが多い.しかし、ガオセン地区の事例では宗教や民 族が様々であるのにも関らず、ゾーンごとにフェイストゥフェイス型や廊下型といった相 隣関係を機軸とした居住空間により小規模住民組織が形成され事業が実施された、計画の 単位として、あるいは実施の容易さから、合意形成において意見のまとまりやすい小規模 住民組織が求められたことが分かった.
第三に、「マイクロクレジットへの参加」について、
住環境整備事業(BMP)は、タイの都市貧困層30万世帯を対象に5年間の期限を限っ た大規模なプロジェクトであるが、この事業を円滑に推進するために、経験と実績のある 小グループを対象にした都市貧困者の生活向上のためのマイクロクレジットの方法を重ね 合わせている。どちらの事例においても、CODIの支援する住宅・住環境整備に参加する ll的でセービング活動に参加している住民が対象となる。よって、小規模住民組織メンバ ーは返済について共lrf」責任を負っており、ボンガイ地区の事例で見られたように返済率の 向Lにつながる可能性があるn
第四に、「部分的な開発から始められること」にっいて、
小規模住民組織を住環境整伐}沸業の単位として捉えることでコミュニティ全体の合意を 取り付けなくとも、事業の実施が容易になる、、これは、いわば住民組織の最小の単位とし てボンガイ地区でみられたような部分的な開発を推進するものであった。また、街区単位
の共的スペースの提案に示されるように住民にとっても小規模な単位でまとまることで開 発の意向を反映させやすくなる。
第五に、「開発プロセスにおける重層的な開発アクターの設定につながる単位」として、
コミ:Lニティ開発としてみると、小規模住民組織が形成された区域を中心に住環境整備 の単位とし、それぞれの状況に応じて参加住民の住宅の建設・再配置を行う柔軟なプロセ スが組み込まれている、,Ijl:業実施までのプロセスは、①協同組合による住民の特定(第5 iltl:参照)、政府、 COD1によるBMPの計画決定→②プロソクグループリーダーを中心とし たカラ…による小規模な区域区分→③ブロック内の貯蓄グループ住民や相隣関係の小規模 住民組織としての円:組織化(重層的な開発アクターの設定)→④小規模住民組織を単位と した、ワークショップ形式による各区域の改善型開発と住宅建設・改善計画の立案→⑤各 ゾーンの住民会議において計画方針が決定一⑥コミュニティ全体のBMP会議で承認され 計1由iが決定一・⑦住宅建設及び路地の整備の実施、である.
第六に、「柔軟な計画プロセスと地域全体の底上げを可能にする方法」として、
ガオセン地区の軒列にみられるように、共的スペースへの計画参加で、BMPに参加しな い住民を排他していないことが明らかになった。この開発方式は、ガオセン地区事例の共 的スヘースへの計画参加をみると、事業へ参加しない住民も開発区域の中に包含する方式 であり、そのプロセスと連続的な活動展開により地域全体の底上げに繋がる可能1生を有し ている。小規模住民組織を通したコミュニティ活動への参加機会によって、住民がエンパ ワーメントされ、コミュニティ全体としても改善活動の展開が可能になった,
以ヒより、小規模住民組織を単位とした開発手法は、住民の多様な意向を組み込みこむ ことで、事業への参加形態を選択することを可能とする柔軟な開発プロセスであり、都市 貧困層にとって住環境整備の実現性を高める開発手法として有効な示唆を与えている、
6.3 今後の課題
ソノ、小規模住民組織による住環境整備の課題については、以ドの3点あげられるr」
(1)インフラ整備などハード面の住環境整備においては、意見がうまくまとまらないため、
従来のコミュニティ単位の住民組織で開発をitt一めた方が良いr.
(2)ワークショップ形式の定例会において、計画する段階で何が問題点を把握するために、
外部からのアドバイザーを確保していくこと。
(3)コミュニティ全体ではなく ・部の選択的な展開で開発が終rしてしまうFI∫能性もある,
以Lに加え、本研究の課題として、①小規模住民組織間の比較分析、②本研究の対象地 域と同じ規模のコミュニティの住環境整備において、小規模住民組織を形成しないで事業
を実施した地域との比較分析、③事業問の比較分析、などが課題であり、タイの都市貧困 層コミュニティだけではなく、日本のまちづくり、他の発展途上国のコミュニティ開発へ 適応できるかどうかを検討していく必要がある、
参考・引用文献一覧
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