On t h e P r a g m a t i c s o f E n g l i s h N e g a t i v e Y e s
圃NoQ u e s t i o n s
教科・領域教育専攻
言語系(英語)コース吉 金 裕 之
1.
序論
記述的解釈によって言語構造を捉えようと する流れの中で、近年、語用論の視点を中心に 英語の否定 yes‑no疑問文(NegativeYes‑No Questions: N‑Y二N‑Qs)に関する議論が活発で ある。本論文は、こうした背景を踏まえ、肯定 yes‑no疑問文 (PositiveYes‑No Questions: 子千N‑Qs)とN‑Y‑N‑Qsを同等である、と解釈
しうる意味論(例えば、 Hamblin,1973)から 需猷し、あくまで語用論の視点からN‑Y‑N‑Qsの 談話的特教を研究しようとする立場をとる。
語用論的に N子N‑Qsは、 p・Y‑N‑Qsとは異 なり、特殊な談話機能を備えているといえる。
例えば、 Romero
&
Han (2004)はN・Y‑N‑Qs: τsn't she taking an exam?'は基底命題(否定 疑問文の命題から否定を除いた命題{she is taking an exam} )が真であるとする話者の予 期・信念を必ず備える、と主張する。とはいえ、この話者の予期・信念に関して確立された理論 は今のところなし
L
またN・'Y‑N‑Qsには基底命 題のpと‑‑‑rpを確認する場合があるとする多義 性の問題(例えば、 Ladd,
1981)、基底命題が 真であると断定・主張する機能(例えば、Kosbik,
2002)の問題などが談話的特敷として述べられ てきた。一方、付加部が否定形式の付加疑問文 (Tag‑Qs, ex: Karl is coming, isn't he?)は、話 者の命題が真である予期・信念を表すため、N予N‑Qsと同じ働きをするとされ、 Bolinger
指導教員 薮 下 克 彦
( 1
957)、大江 (1978)は二つの形式を同等と した。しかし、 N子N‑Qs.とTag‑Qsの談話機 能的相違、または相関関係を見るような対照研 究はほとんど見当たらない。こうした背景を踏 まえ、本研究は以下の二点を主要目的とした。( i) N‑Y二N‑Qsに関するこれまで、の仮説を、
話者の予期・信念に焦点を当て、修正、改良し 新たな理論を導く。
( 並 )N‑
Y‑N‑QsとTag‑Qsの談話機能におけ る相関関係、相違点を明示する。第2章以下で、これらの目的は実証的研究によ って果たされ、また理論的解釈が与えられた。
2.概要
第 2章では、 1) 話者の予期・信念、 2) 断 定の機能、 3) Romero
&
Hanの法則、 4) Tag‑Qsとの関係、に焦点を当て、 N‑Y‑N‑Qsに ついての先行研究の概観を行い、本論文の方向 性が示された。第 3章では、英語母語話者 7人に対して行わ れたN子N‑Qsの使用に関するアンケートの結 果をもとに、話者の信念を中心にN‑Y‑N‑Qsの 使用を誘発する文脈などが論じられた。第一に、
Reese (2005)のしづ話者の願望 desidθra白'Vjθ
hiasがN子N‑Qsを誘発する、としづ結果から
~子N-Qs は話者の基底命題が真であるとし 1
う信念的含意 ξpistθmicimphcatllliθを必ず表 す』としたRomero& Hanの法則は必ずしも 信念的である必要はないという点で修正される
‑ 288‑
べきだとした。ここで重要なことは、話者は N子N‑Qsを発するとき必ず基底命題が真であ るとする何らかの志向を備えているか、前もっ て備えていた事実がわかった点で、ある。また話 者の肯定的信念と受信者の否定的示唆、つまり 信念の隔たり・摩擦が顕著であればあるほど、
N・Y‑N‑Qsはより使用されることが明らかにな った。第二に、調留吉果はReese の ~N-Y-N-Qs は話者の信念に反する手がかりが有るとき、ま た無いときにおいても使用される』とし、づう理論
が
Celcωeらの『話者の{信言念に反する手カが3効か瓦吟りがあるとき にのみイ使吏用される』とし、づう理論より適当でで、ある こ と を 立 証 し たo 第 三 に 、 調 査 結 果 か ら N子N‑Qsの多義性、断定の機能が確認された。
またP‑Y‑N‑Qs、Tag‑Qsとの横断的研究の必要 性が示唆された。
第4章では、第5章の P子N‑QsとTag‑Qs との対照研究に備え、それぞ、れの談話機能につ いて先行研究が概観された。特に同等とみなさ れることが多々あるTag‑QsとN‑Y二N‑Qsを同 時に扱う研究が少ないことがわかり、改めて対 照的研究の必要性が示唆された。
第5章では、コーパスを用いて、 N子N‑Qs (218 例)
、
P帽子N‑Qs( 1
78 例)、
Tag‑Qs (159 例)の実使用データを収集し、それらの疑問文 に対する応答を分析・比較することで、それぞ れの疑問文の鞘教を浮き彫りにする対照的研究 がなされた。第一に、 P‑Y‑N‑Qsと比較することでN・Y‑N‑Qsの談話機能の新敷が主に5点示 され、特に、 N子N‑Qsにおける1)話者の答 えに対する肯定的志向、 2)断定・主張の機能、
が確認された。第二に、 N子N‑QsとTag‑Qs の応答を比較・検討することで、それらの相関 関係を明らかにした。話者の答えに対する志向
性を備える共通点は確かに認められたが、以下 に挙げるこつの相違点も同時に示された。 1) N‑Y二N‑Qsのみが断定・主張の機能を備える、
2) N・Y‑N‑QsはTag‑Qsほど聞き手の応答を 求めない。これらの結果は、 N子N‑Qsと Tag‑Qsを同等とみなすBolinger、大江の仮説 は誤りであることを証明している。
第6章では、これまでの結果、考察をもとに、
1) N¥N‑Qsの意図、 2)断定・主張の機能、
3) N
¥N‑Qs
とTag‑Qsの相違、についてそ れぞれ論じられた。 1) において、多義性に関 連して、preadingと‑‑p‑readingの二つの意図 があることを実証し、それぞれの構築を試みた。2)において、 N‑Y‑N‑Qsが断定の機能を備え るのはそれがpreadingとみなされたときだけ であることを論じ、また全体の 8割ほどの N・Y‑N‑Qsがpreadingであり、それゆえ断定 的であるとする仮説を提言した。また 3) にお いては、N子N‑QsとTag‑Qsの二つの相違点、
( a )
N子N‑Qsのみが断定・主張の機能を備える、(b)N・Y‑N‑QsはTag‑Qsほど聞き手の応答を求 めない、がなぜ生じるのかとしづ問題に対し、
Schegloff(1996)の『文頭の重要性』 signi
五
cance of turn beginning'、 『 隣 接 の 優 先 性 』preference for contigui句'rの理論をそれぞれ に適用することによって角杯穴を試みたO
3.終わりに
本 研 究 は 、 語 用 論 の 観 点 か ら こ れ ま で の N子N‑Qsに関する理論を要約、改善し、新た な理論を構築した点、これまで光の当たらなか ったN・Y‑N‑QsとTag‑Qsとの相関関係を実証
した京において意義のあるものと思われる。
今後の一課題として、 N子N‑Qsにおけるイン トネーションの果たす役割、外国語教育への示 唆などを考慮した研究の必要性が挙げられる。
ハHUORU
つ 山