膳 所 亜 由 美

成人を対象とした感' 清の覚知と言語化を促す「試み 一心の天気を用いて

人 間 教 育 専 攻 臨床心理士養成コース 膳 所 亜 由 美

1.問題の背景と目的

近年，ストレスと呼ばれる心理・社会的要因 杭身体に影響するとし、う考え方は広く 一 樹台 となりつつあり ，また心身症研究も近年多く進 んでいる。

S並leos(1973)

は，心身症患者に おける感情の言語化障害を 「 失感情言語化症=

アレキシサイミア

(Alexithymia)J

と提唱し 自己の内面に対する覚知とその言語化表現が制 約された状態であるとしている。アレキシサイ

ミア傾向のあるクライエント協議情の言語化が 難しく，言語を媒介とする心理治療ではその困 難さが指摘 されている ( 前 田 ，

1980)

。

また，様々な研究や定義から ，自己の感情を 覚失けることの重要性が指摘されている。自 己 の心の状態に気づき，精神的健康を増進する手 法のーっとしてフォーカシング(

Gendlin

， E . T . ， 

1978)

があるが，その困難さも指摘されている ことから，今日ではしばしば，コラージュや絵，

箱イメージ書き込み法など何らかのイメージを 活用したフォーカシングが実践されており，そ の一つに心の天気(土江，

2008

など)がある。

心の天気とは，その時の自分の中の実感を天気 で表すと どうなるか自分に問いかけ，クレヨン などを使って描く方法であり，特に子どもに対 してのフォーカシングにおいて今日多く用いら れている。

本司 F 究では面接の中で 「 心の天気」をイメー

指 導 教 員 今 回 雄 三

ジ表現として用い，それを 自 分の感情守唄在の 状態に目を向けるきっかけとして，内省や自己 の感情への覚知を促しそれを言語化につなげ る試みを 行っ た。また，すべてのセッションの 後には対象者同蔀慢な どを尋ねた。面 接で心の 天気を措くことでl 樹青を言語化することにつな がったのか， また対象者にどのような心的変化 が起こったのか，対象者にとって心の天気の実 践がどのような作用や意味を持っていたのか検 討することを本研究の目的とした。

2.

方法

大学院生を対象に質問紙を配布し，スクリ ー ニングおよび対象者を募った。ス クリーニング にはアレキシサイミア傾向を測定する

TAS‑20

(小牧・久保，

1997)

を使用 した。 合計点の平 均得点を基準に高群の方

5

名，低群の方

3

名 の計

8

名(男性

5

名，女性

3

名)に面接調査へ の協力を依頼し，半構造化面接を行った。

面接は

1

人

2

回，間隔を開けて行い，①感情 に気づくことの大切さの説明②心の天気の説明

③インストラクション④心の天気を描いてもら う ⑤質問や，やりとりを通して連想を 広げる⑤

「 あなたの気持ちのグラフ

J

を書いて 説明をし てもらう， と し 、う手続きで行っ た 。

2

回目の面 接訴麦には感壁、 等を尋ねた。

3.

結果と考察

スクリーニングの結果，

TAS‑20

得点にほ性

‑99‑

差は見られず，主主S^明20においては合計点と 3 因子の間にいずれも高し1相関が認められた。ま た外的志向」因子は， .1感情の同定困難J.1感 情の伝達困難」因子のいずれとも相関が認めら れず外的志向」因子は他2つの因子とはやや 異なる性質の因子である可能性が考えられる。

面接調査においては3 個別の対象者ごとに質的 な検討を行ったO

4.総合考察

(1)高群と低成の比較

対象者の中で心の天気に取り組みにくさを示 した方はし、なかった。連想や感情覚知や言語化 が進みにく1，‑、のではなし功ミという点では3 ある 程度仮説と一致した結果が得られた。このこと は9 アレキシサイミア特性の高し'1j1.J土自分の内 面よりも外的なことについて想像しかっ具体的 レρヤレのものを想換しており3 そこから新しい 意味を生み出すことが少ない(一木， 2002)と いう特徴に関連しているものと患われる。また9

高詳の方には心の天気の説明をして

I

晶、た後に3

実施者側の理解や感じ方大きく変化したが，

このこともアレキシサイミアの断設が関連して し百るものと思われる。

(2)『心の天気』の役割

面接において心の天気は 第3の対象"(中井3

1976)として介在したり2 橋渡し機能η(寺沢，

2010)を3 果たしてし、たものと考えられる。そ して 天安'を描くと1/、うことも9 面接におし、亀 て重要な要素であ、ったものと思われる。ま7E9

『あなたの気持ちのグラフ』との比較から，心 の天気はグラフに比べより無防備な表現として 措かれたものと思われる。そしてν 今の自分の 感情や状態について『心の天気』としづ絵に描 し、てそれを見ることにより，それを大切に受け とり² またそれを面接索It[.者に伝えるとし1った 過程を通して{月間雨盈程の照合が進んだものと考

える。さらに描画という義見点からみてみるとヲ 心の天気という絵に表現して自分で見ることに よって^q 外在化や明確化が進み³ 自分自身の感 情や状態に注目したり向きあったりしていくこ とにつながり，対象者の洞察や感情覚知に大き な影響をもたらしたのではなし泊吃考える。絵 画の「樹度し機能Jには「絵画と言葉の檎度しj

「心とからだの橋渡しJとしづ現象もときにみ られる(寺沢， 2010)ことから，本研究では「心 の天気Jが9 感情の言語fとやフォーカシングに おけるブエノレトセンスを掴むといぜったことの橋 渡しになったとも考えられる。

さらに 2田の面接において措いた心の天気 やグラブを振り返ることも洞察を深める上で有 効で司あったものと思われる。また，ブオーカミ/

ングの要素である『間を置くjW受け取る』とし、

うステップがP それらを振り返ることで進んだ のではな1，‑¥かと考えられる。そして実施者との やりとりや相互作用を通しても，心の天気そ れを{齢、た自身に対する対象者のT瑚平や洞察を 深めるきっかけとなったのではないだろうカミ

(3)研究の問題点と今後の課題

面援を行う前のj段階で，内省を進めるべき、で ない人の見極めの段階を入れておく必要があっ た。また，中井 (1976)は，因果関係の

i

府主を 必要としなし、ことが芸術療法の治涼上有益な点 であると述べている。 Genclli.n(1978)は3 フ ォーカシングにおいてはりスニングが基本で・あ ると1{、うこと， リスナーが自身を表現し7，;(11¥方 が良い場合があるとし三うことも示しており3 対 象者が表現し，たものに対して戚思を述べたりそ こから言語化を促すとし、うことについてはp 細 心の注意が必要である。さらに、本研究は時間 の関係や対象者の負担を考え，面接を 2回とし たが，臨関手を対象とした場合² さらに回数を 増やし検言守していく必要があるだろう。

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