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( 社 ) 日本都市計画学会都市計画論文集 No 年 4 月 Journal of the City Planning Institute of Japan, No.45-1, April, 2010 ドイツにおける郊外型団地の改造計画に関する事例研究 CASE STUDY O

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1.研究背景と目的 これまで都市政策は拡大を前提に行われてきた。しかし ながら、日本では2005 年より人口が減少しはじめ、これま でのような経済成長をつづけることは困難であると考えら れている。今後は、拡大し続けてきた都市を適切な規模に 縮小していく必要があり、都市政策は転換期を迎えている。 旧東ドイツ地域では1990 年の東西ドイツの統一後、人口 が旧西ドイツへ流失し急激な人口減少を経験した。同時期 に出生率の低下や、戸建住宅志向による居住地の郊外化な どの現象もあり、国全体で将来の人口規模に見合った住宅 政策、都市政策を考えなければならなくなった。また、旧 東ドイツから旧西ドイツへの人口移動による都市の衰退だ けではなく、東側の統一に対する景気期待がもたらした過 剰投資や産業構造の変化、旧東ドイツ時代と旧西ドイツの 住宅環境・質などの格差や価値観の差なども背景にある。 このような状況により、旧東ドイツの諸都市は、都市再生 のために対策を取る必要に迫られることになった1)~10)。 旧東ドイツでの取組は、特殊な状況により生まれた政策 ではあるが、経済成長がかつてのような右肩上がりの状況 ではなくなり、人口が減少していく世界の都市において、 建物の規模を縮小する減築、建物自体の間引きなど、街を 縮小していくという政策は今までにはみられなかったもの として注目されている。 これは、都市が持続していくために「適正な規模」への 再編政策ともいえ、人口減少期を迎えている今後の日本の 都市、まちづくり政策においてそのような発想の転換と取 組は十分な示唆を得ることができると思われる。 ドイツの改造政策の概要については現在までに3 つの報 告書が出されている。2006 年の第 1 報告書では実施の背景 や選定された都市、改造計画の目標、主旨などについて述 べられている。2007 年の第 2 報告書では、都市の規模別の 分析やそれぞれの都市でのプログラムの内容や手法につい て整理されている。そして2008 年の第 3 報告書では改造計 画が進む都市について具体的な取組内容や関係している団 体などをまとめている。現在の状況では都市改造の展望は 見えてきているが、ダウンタウンや市街地などその立地・ 地域により差があること、都市センターの存在が改造に大 きく関わっていること、地域の再評価にはまだ時間がかか ることなどが報告されている。 そこで本研究はドイツの改造政策の概要とこれまでの報 告書を踏まえ現在の到達段階の把握と、特に郊外型団地で の取組を明らかにし、今後我が国が都市の適正規模化に取 り組む際の示唆を得ることを目的とする。 調査は2007 年 5 月と 2008 年 6 月に実施した。調査対象 は以下のとおりである。 表-1 調査対象 2007 年5 月【概要の把握】 ・都市計画家 フィリップ・オズワルド氏 ・ベルリン市都市計画局注1)担当者 ・ハレ市都市計画局担当者 ・ライプチヒ市都市計画局担当者 2008 年6 月【事例調査】 ・ライプチヒ市都市計画局担当者 ・グリューナウ地区コミュニティセンター担当者 ・ゲルリッツ市都市計画局担当者 ・ハレ市都市計画局担当者 ・GWG 社担当者 2.用語の定義 ドイツではこれまで国が補助する非営利住宅組織により 低所得者向けの住宅が供給・管理されてきた11)12)。海老塚 12)によると、これらの組織はかつて「公益住宅企業」と呼 ばれていたが、制度の廃止により旧公益住宅企業から構成 される協会の多くは「民間非営利組織」として住宅組織を ドイツにおける郊外型団地の改造計画に関する事例研究

CASE STUDY OF THE DEMOLITION PLANS FOR HOUSING COMPLEXES IN SUBURBS IN GERMANY

清水陽子*・中山 徹** Yoko Shimizu*, Toru Nakayama ** This research investigated the urban demolition policy in Germany, especially focusing on the old apartment complexes in the suburbs of three cities in what was once East Germany. The results of the investigation are as follows: (1) the demolition policy is still experimental, (2) the various alternatives that were provided as part of the demolition policy are utilized by the administration for control, (3) many of the houses being demolished are those owned by public cooperatives and have high vacancy rates, and (4) it is important to examine how the vacant lots should be used after demolition.

Keywords: Decrease in population,The suburbs,Housing complex ,Reduction plan

人口減少 郊外地 集合住宅 縮小計画

*正会員・奈良女子大学社会連携センター(Nara Women’s University Social Cooperation Center) **正会員・奈良女子大学人間文化研究科(Nara Women’s University)

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継続している。そこで、本研究においても公的支援を受け 住宅を供給している「Wohnungsbaugesellschaft mbH((有限)住宅会 社)」、「Wohnungsgenossenschaft(住宅組合)」などの総称を「民間非 営利組織」とする。また、旧公益住宅企業は公的な支援を 受け住宅供給を行っており、公的な側の意思の加わる企業 である 6)7)。現在ではこれらの民間非営利組織以外にも民 間企業や民間企業組合、個人なども住宅を所有している。 3.東の都市改造計画(Stadtumbau Ost)について2)~10)13) 旧東ドイツでは1990 年代初頭に統一後の社会不安の影 響もあり急激な出生率の低下がみられた。1989 年は 1.6、 1991 年に 1.45 へ、そして 1994 年には 1.24 へと減少してい る14)。そのため人口減少に対する住宅・都市政策の構築が 国の問題とされ、1990 年後半に連邦政府による人口減少に 関するコミッションが設立された。また、2000 年 11 月に 提出された「Wohnungswirtschaftlicher Strukturwandel in den neuen Bundesländern」においても旧東ドイツ地域での住宅 の余剰や都市の改善の必要性が指摘された。今後、出生率 が激減した世代が成人したときに再び出生率の低下が予想 され、2010 年に向けて社会の崩壊を防ぐために都市環境と 居住環境の改善が求められ、東の都市改造計画が行われる ことになった注2)。 東の都市改造の目的として、①「住宅マーケットの安定 化」では、政府は2010 年までに 35 万戸の減築を目標とし ている(2007 年時点では 19 万戸削減であり、計画は延期 の予定である注3))。また、②「人口と住宅のバランス」にお いては、住宅の質、数だけでなく交通、インフラの改修の ほか、新しいインフラ整備も求められている。③「都市の 魅力の再生」では、歴史のある街であるということは同時 に古さを伴うこととなり、環境面だけでなく都市交通や既 存店舗などの改善、また社会的サービス向上などが求めら れている。 2002 年に連邦交通建設住宅省が主催となり実施された 東の都市改造計画コンペには、6 州から 269 地域が参加し た。計画の実施期間は2002 年から 2009 年(今回の調査に おいては多くの自治体が期間内における計画の実現が難し く、期間の延長が予定されていた)である。 この東の都市改造計画の事業費は2002~2009 年の間に総 額で27 億€が投入される予定であり、連邦政府は 12 億€の 予算を立てているプロジェクトである。 その中で団地の再生事業に対し支援されるのは、住棟の 取り壊しに対する助成費用として60€/㎡である。この費 用は国と州とが1/2 ずつ負担している。また、統一後建物 を買い取った民間非営利組織などの所有者が旧東ドイツ時 代の建設時の負債を引き継いでいるが、補助を受けて取り 壊しをする場合その負債が免除される。 4.事例調査結果 今回の調査は東の都市改造計画コンペに参加し、支援の 対象となった都市の中から郊外型団地を含む都市を対象と した。対象としたライプチヒ市とハレ市はコンペ参加した 中でもモデル都市として選ばれており、地方都市としてゲ ルリッツ市を事例とした。これらの都市は報告書6)7)8) 具体的な取組が進行している都市として紹介されている。 今後の日本の参考とするため、人口規模の異なるこれら3 都市を対象とした。各都市の概要を表-2 にまとめる。 表-2 調査都市・地区の概要(市名の下段は市の人口) 4-1.ライプチヒ市グリューナウ地区15)16) 4-1-1.地区の概要 グリューナウ地区は旧東ドイツ時代の住宅不足解消のため に1976 年から開発が開始された地区である。ライプチヒ市 がグリューナウを開発した大きな理由は、①空気が良い、 ②余暇スペースがある、③職場に近い、という3 点である。 グリューナウ地区ではピーク時84,773 人の住民がいたが、 現在では約45,000 人とピーク時の53.1%まで減少している。 市の計画によると、この地区が機能を失わずに存続するた めには2020 年に 35,000 人は必要だと想定されている。 流出の理由の多くは、旧西ドイツへ仕事を求めての移住 や、若者の古い公益住宅企業供給の住宅のイメージを嫌っ ての転居、または、住宅の選択肢が広がったことにより他 のところに住宅を見つけたなどである。住民の流出により、 旧東ドイツ時代には様々な層の人が住んでいたが、1990 年 以降は転居できない人や貧しい人たちが集まるようになっ てしまい、ネガティブなイメージが形成されていった。 グリューナウ地区の強みはトラム(路面電車)が2 路線 とS バーン(鉄道)があり公共交通が充実していることと、 学校、ショッピングセンターなどへ徒歩で生活できる環境 があったことである。さらに湖などの余暇スペースが近く、 住民活動も盛んであったこともあげられる。これらを活用 し、都市改造は、市民生活の充実も併せて進められている。 4-1-2.グリューナウ地区の改造計画について グリューナウ地区では2002 年に地域住民や大学教員な ども参加し人口の変化などを踏まえたシナリオが検討され、 ライプチヒ市 (約51 万人) (約5.7 万人) ゲルリッツ市 (約23 万人) ハレ市 グリューナウ 地区 ケーニヒスヒューヘン地区 ノイシュタット地区 開発開始(年) 1976 1976 1966

広さ 401ha 101ha 666.729ha 最大戸数 35,000 6,380 35,500 現在の戸数 29,500 5,294 32,500 計画戸数 (~20,000) 24,000 4,246 30,000 以前の人口 (1989 年) 84,773 2003 年) 10,245 (1990 年頃)94,000 2008 年の人口 約45,000 9,624 約47,000 予測人口 (2020 年) (中位予測)36,400 6,834 44,000(2015 年) 最大の小学校数 8 3 (ハレ市全体で60) 8 現在の小学校数 6 1 (ハレ市全体で41) - 計画小学校数 5 ― 6 過去の住民 平均年齢(歳) ― 39.7(1995 年) 36.9(1993 年) 現在の住民 平均年齢(歳) ― 51.1 46.0

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政府の目標よりも長期となる2020 年を到達目標とした計 画が組まれた。現在は2012 年までの行動計画が公開され、 2007-2008 年の取り組みが示されている。 図-1 は 2007 年 5 月に発表されたグリューナウ地区の都 市改造計画図である。計画では地区を大きく2 つに分けて いる。グレーの網がかかっている地区は今後も継続的に残 し、施設や資金を投資しインフラ整備や住宅の改修が積極 的に進められる地域である。実線で囲まれた地区は、状況 を見ながら建物の取り壊しが積極的に進められ、部分的に 建物を残していくことで縮小を進めていく地域である。そ の中にさらに商業や公共施設などを充実させ地域の核とな るゾーンや取り壊しを進めながらも継続的に残すゾーンな どが計画されている。 縮小計画について住民からは住宅の取り壊しは過剰に建 てられたものを減らすので空地が増え、空間に余裕が生ま れるため住環境として望ましいと考えられている。住宅所 有者にとっても空室率の高い建物の管理には費用がかかる ため、行政の支援を受けての取り壊しはメリットがあると して概ね受け入れられている。 住宅戸数は1990 年の 35,000 戸から現在は 29,500 戸へと 減少している。現在の空家率はおよそ20%であり、これを 2020 年までに更に 5,500 戸少ない 24,000 戸まで減少させ、 空家率を10%程度にする予定である。住宅の取り壊しに関 しては、これまでの5,500 戸(約 300,000 ㎡)に対し、取り 壊し費用として1,800 万€が所有者に支給されている。 これまでに取壊された住宅の約 90%が旧公益住宅企業 である民間非営利組織所有であり、行政の意向が反映され にくい民間企業や個人所有のものは難しいのが現状である。 グリューナウ地区での住棟の取り壊しは、初期は空家率 が高かったため、「点」での取り壊しは比較的容易に進めら れた。しかし、市としては虫食い的な取り壊しは望ましく ないため、「点」ではなく、街区全体の取り壊し、「面」と してある程度まとまった形での取り壊しを進めたいと考え ている。 取り壊しの実施は、市からも地域の将来プランとして示 されているが、行政の意向を民間に強要できるものではな く、空家状況などを考慮した所有者からの申し出により行 われている。取り壊しの補助費には公的資金が投入される ため、補助を受けるには市の許可が必要になる。そこで、 市はこれらのコントロールを補助金の有無により行ってい る。補助対象地域であっても、行政が優先的に撤去する方 針を示していない建物については撤去しても補助金が得ら れない。撤去を優先的に進めたいところは補助対象として いる。また、取り壊しを進めたい地域では道路や緑地など の公共施設の改修を行わないなどをして、住民や所有者の 意向を誘導している。グリューナウ地区では図-1 に取壊 が予定されている住棟の撤去は補助対象であるが、改修予 定の住棟を撤去しても補助は得られない。 グリューナウ地区の地域改造のポイントは、①市民生活 の質の向上(学校の質を高める、幼稚園の整備(子育て世 図-1 ライプチヒ市グリューナウ地区 都市計改造計画図(2007 年)15) 0 100 200 500(m) N

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代を呼び込む))、②病院・クリニックを整備する(職場の 確保にもつながり、高齢者を呼び込める)、③空家になった 時に若い人を呼び込めるような仕掛けづくり(劇場、スケ ート場などのレクリエーション施設をつくる)、を行ってい くことである。 ライプチヒ市ではグリューナウ地区には住宅の密な部分 と疎な部分をバランスよく配置する必要があると考え、住 宅が地域全体に均等に散らばっているのではなく、地区内 にいくつかの密な部分を形成することを目指している。そ のため、小学校の配置についても、規模は小さくなるかも しれないができるだけ統合せずに存続するよう計画されて いる。 グリューナウ地区 に対してこれまでに、 年間150~200 万€が 公共整備に使われて いる(学校、住宅の 改修は含まない)。こ れらの資金計画については、その年の重点項目を優先して いくので、全体の投資計画は作成されていない。 4-2.ゲルリッツ市ケーニヒスヒューヘン地区17)18) 4-2-1.地区の概要 この地区は、1976 年から市街地の北側に郊外型団地とし て旧東ドイツの住宅供給政策により開発された。当時は郊 外型団地建設が優先され、中心市街地(旧市街地)への対 策がなされなかった。そのため、郊外型団地の建設後は市 民約8 万人中約 2 万人が移り住み、旧市街地には約 4,000 件の空き家が発生した。 しかし、東西統一後はゲルリッツ市全域において住民の 流出が発生し、不要になった住宅をどうするのかというこ とと、市を継続させるためにどのような改善をするのかと いうことが問題になった。 そして、ゲルリッツ市では歴史的建造物の多い旧市街地 を保存・改修することが経済的にも成長する可能性が高い という政策を打ち出し、旧市街地の住環境改善を優先的に 進めた。その結果、旧市街地の住宅と郊外型団地が競合す ることとなり、住民が歴史的価値の高い旧市街地を選択し たため近年では郊外型団地の空家率が上がることとなった。 これからの市の方針では旧市街地に更に人を集めたいと 考えているため、郊外型団地をどのように減らしていくの かが課題となっている。しかし、30 年以上前に郊外へ移り 住んだ人はそのまま継続して暮らしたいという要望を持っ ているため取り壊しは容易ではない。 4-2-2.ケーニヒスヒューヘン地区の改造計画について ゲルリッツ市では人口減少と同じく世代構成の変化も大 きな問題となっている。ケーニヒスヒューヘン地区は2015 年には80%以上が40 歳以上になると想定されているため、 1990 年の戸数を 100%とすると、2008 年には 80%、2020 年には40~50%の戸数に誘導したいと考えている。 ゲルリッツ市は、図-2 に示すように郊外型団地取り壊し の具体的な案を持っている。市の計画通りに空家率が推移 するわけではないため、常に住民の動向を把握し、計画は 常にフレキシブルな状態にしてある。図-4 の計画案もあく まで一つの案であり、必ずしもそれを目指すわけではない。 また、取り壊し計画案は不動産価値への影響や住民の不安 をあおるため、あまり公表はされていない。 しかし、取り壊しは計画的に行わなくてはいけないと考 えられており、空家率だけを基準にして壊すわけではなく、 郊外型団地の住環境改善が図れるよう留意されている。 取り壊しに関しては、所有者と都市計画局との意見は異 なることが多いという。市に住民を追い出すような制度は なく、住民、所有者の同意があっての移住、取り壊しにな っている。 ケーニヒスヒュー ヘン地区については、 2002 年に問題の確 認が行われ、2003 年 取り壊しが開始され た。現在までに、取り壊された住棟は旧公益住宅企業であ る民間非営利組織の所有のみである。 今後の課題としては、取り壊しにより住環境は変化する が、住宅地の持っている地域性や個性まで壊さないように 取り壊しを考えなくてはいけないことである。また、取り 壊した後の土地(更地)の維持管理は所有者負担であるた め、多くが放置されている。これらの整備についても今後 の課題である。 表-3 これまでの主な支出概要 (2002~2007 年) 劇場施設の移転 50 万€ 市役所の移転 400 万€ センターの整備 100 万€ センターへの歩道の整備 50 万€ 住宅取り壊し後の公園の整備 100 万€ 合計 700 万€ 表-4 取り壊し前の所有状況(戸数)17) WBG(住宅会社(民間非営利組織))注4) 2,361 WGG(住宅組合(民間非営利組織))注5) 3,237 ehem.AUBIS(住宅組合) 644 個人所有 138 合計 6,380 図-2 2020 年までの取り壊し計画案 出典:ゲルリッツ市提供資料 StadtteilKonigshufen Wohnungsleerstand 2004 0 100 200(m) N

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継続的に残すゾーン 状況を見ながら縮小を進めるゾーン 優先的に縮小を進めるゾーン N 0 100 200 500(m) 4-3.ハレ市ノイシュタット地区19)20) 4-3-1.市・地区の概要 ハレ市では1970~80 年代の旧東ドイツ時代に、中心市街 地の人口が減少し、郊外型団地が拡大していった。市全体 の人口は、産業(化学工場)により増加していた。しかし、 1990 年の統一後から産業の衰退を主因とする人口減少が 始まった。それに伴い1990 年代から市内中心部の改修が進 められ、郊外から市内中心部へと人口が移動し始めた。郊 外型団地からは90 年代初めに市内中心部へより良い住宅 を求め、または市外へ職を求めて、更に90 年代半ばには戸 建て住宅を求めて人口が流出した。 ハレ市都市計画局の担当者は、まちの縮小を歴史的な中 心市街地から郊外地域の中心部まで、魅力的な生活空間と して発展を続けていくためのより良い状況を生み出す発展 のチャンスと捉えている。そのために、取り壊しや他の都 市計画的な視点(改修・近代化・用途変更・閉鎖など)が 検討され、今後の計画に含まれている。ただ、市内の全て の地域が都市改造プロセスの中で同じ比重を持つわけでは なく、市全体と、特に早急な対策を要する地域を対象とし た問題の分析(空き家率を含む)から、ノイシュタット地 区を含む 6 つ地区が最優先の構造改革地域と指定され、 2002 年 4 月 24 日に市議会において都市改造の重点援助地 域と決議された。 ノイシュタット地区では1990 年頃に 94,000 人いた住民 が現在では約47,000 人と半数に減少した。そのため高齢化 は進み、住民の構成が大きく変化している。 4-3-2.ノイシュタット地区の改造計画について ハレ市では、郊 外型団地の再生に ついて、取り壊し と同時に価値を高 める(まちの魅力 を高める)という ことを並行して進 めなければならな いと考え、縮小計 画は全体の都市計 画と整合性を持つ よう計画している。 そのために、イン フラ(ガス・上下 水道など)、交通 (トラムの停留所、 路線)の縮小を行 いながら、残すま ちをさらに充実さ せていく方策をと っている。 ノイシュタット 地区ではこれまで に3,000 戸の取り壊しが行われた。この地区の基本的なコ ンセプトは周辺から中心へ、というものであり、2001 年の まちづくりコンセプトでは、ハレ市東部と中心部の繋がり 強化と、周縁部の街区縮小が長期的な目標とされた。 縮小計画については地区を継続的に残すゾーン、状況を 見ながら縮小を進めるゾーン、優先的に縮小を進めるゾー ンの大きく3 つに分けている。縮小の具体的な取り組みは ①全体を取り壊す、②部分的に壊す、③部分的・全体的に 改修する、というように分類される。ノイシュタット地区 ではとりわけ周縁部分は住宅量の削減が不可欠となり、取 り壊しのパターンは住棟全体、上階部分のみ、住棟を間引 くなどいろいろなタイプが考えられ、取り組まれている。 取り壊しの順序はインフラの環境によって検討され、末端 から順番に閉鎖できるよう考慮されている。 計画に対し、都市計画局と所有者の合意は難しく、常に 話し合いをしながら計画を進めている。住宅はあくまで所 有者のものであるため、行政の計画通りに改造が進むわけ ではない。そのため、市としては補助金を唯一の間接的な コントロール手段として対応している。ノイシュタット地 区の場合、優先的に縮小を進めるゾーンでの住棟の取壊に は補助金が与えられるが、継続的に残すゾーンでの取壊に は補助は得られない。 また、取り壊し後はその空地をどうするのかが新たな問 題となっている。行政が買い上げて管理するのは現実的で はないが、市としては空いた土地を森、自然に戻したいと 考えている。しかし、一度森にしてしまうと再度住宅用地 にすることはできない上、この土地を森にすると 0.1€/ 図-3 ハレ市ノイシュタット地区 都市改造計画図(2006 年)19) ※各ゾーン内の白抜きは住棟を示す。 商業施設

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㎡と不動産価値も下がるため、所有者が応じることは少な い。そのため、地区内の土地で必要なところは1.5€/㎡(統 一後、国が売却した値段)で市が買い取ることもある。し かしながら、現状では野原として放っておくか、当面の使 い方としてクラインガルテンなどになっている。 表-5 ノイシュタット地区の所有について(2005 年) *:社名にe.G.と付くため公的な住宅組合(民間非営利組織)である 5.まとめ 本研究では都市改造に取り組んでいるドイツの3 都市の 事例を把握した。ドイツでの都市改造政策の現状を踏まえ、 今後我が国が都市の適正規模化に取り組む際の示唆となり 得る点を以下にまとめる。 ①ドイツの都市計画は、開発への規制は厳しくできてい るが、縮小に関してはまだ試験的な段階であり、取り組み の結果がでるにはまだ時間がかかりそうである。ドイツに おいても我が国と同様にこれまでの都市政策は成長を前提 として規定されてきた。そのため、都市の縮小は難しく行 政の意向に沿わないことも起きている。今回の調査ではこ れまでの取り組みにおいて「点」としての住棟の取り壊し はある程度進んでいることが明らかになった。しかし、今 後の都市計画では「点」での取り壊しだけではなく、「面的 な住宅撤去」へ向け取り組んでいる。 ②東の都市改造計画には、個々の都市の状況を踏まえ、 その現状を改善するために、国や州・市などによって補助 金が用意されている。補助金の支給という方法は、所有者 の意向を誘導することが可能であり、行政のコントロール 手段としても活用されている。しかし、補助金を受けずに 所有者が独自に取壊や改修、また売却などを行うことは可 能であり、このような場合はコントロールできない。補助 金でのコントロールにも限界がある。ドイツのような補助 金制度を我が国で導入する際はその有効性と限界を踏まえ、 検討すべきである。 ③改造計画では、郊外型団地の住棟の取壊を進め環境改 善を行うことを計画している。行政は改造対象地区内にお いて住宅所有者・所有形態に関わらず地域の将来を考慮し て計画図を示している。しかし現状では都市改造地域内に 大量の住戸を所有する企業・組織が、空家率の高いものか ら取り壊すというのがほとんどである。個人所有や所有住 戸数の少ない民間企業の住戸の取り壊しは非常に難しく、 現在のところではどのようにして取り組むべきかの展望も 明らかになっていない。我が国においても個人所有や所有 住戸数の少ない民間企業の住戸の取り壊しを伴う計画は現 状では困難である。しかし、UR や公団などのような地域 内に大量の住戸を所有する企業・組織であればドイツのよ うな取り組みは可能であると思われる。 ④郊外型団地の縮小を進めるためには住戸数を減らすだ けの安易な計画ではなく、取り壊しによって発生した空地 利用を検討しておくことも重要である。都市の魅力の再生、 環境改善を並行して進めることが都市改造の目的の一つで もある。 注釈 注1:原語は「Senatsverwaltung für Stadtentwicklung」。この部署の役割は 非常に幅広く、訳語としては「都市発展、まちづくり」なども用いられる。 注2:Uta HOUN 氏(ルール・ボッフム大学教授)も「ドイツにおける衰

退都市・地域への取組:戦略、手法、プロジェクト」(IBS Annual Report、 2006 年)において指摘している。

注3:2007 年5 月のベルリン市まちづくり局担当者による 注4:原語は WBG(Wohnungsbaugesellschaft Görtlitz mbH) 注5:原語は WGG(Wohnungsgenossenschaft Görtlitz eG)

注6:原語は GWG mbH(Gesellschaft für Wohnund Gewerbeimmobilien Halle-Neustadt mbH) 注7:原語は WG Leuna e.G. 注8:原語は WG Halle-Neustadt e.G. 注9:原語は BWG Halle-merseburg e.G. 注10:原語は EWG Hansel WG KG ※WG=Wohnungsgenossenschaft(住宅(協同)組合) ※e.G.=Eingetragene Genossenschaft(公的な組合であることを示す記号) 参考文献 1.有田智一・大村謙二郎:「需要縮小時代の既成市街地再生に関する研究」,平 成15 年度土地関係研究者育成支援事業最終報告書、2003 年

2.フィリップ・オズワルト:「Shrinking cities vol.1:Internationalreserch」, HATJE CANTZ、2006 年 3.国土交通政策研究所(坂本英之):「EU における都市政策の方向とイタリア・ド イツにおける都市政策の展開」,国土交通政策研究 第16 号、2002 年 4.坂本英之:「創造的縮小都市政策―シュリンクするドイツの都市」㈶日本地域 開発センター『地域開発』2005年4月号 5.阿部成治:「大型店とドイツのまちづくり」学生出版社、2001年 「人口減少時代における土地利用計画の運用と展望」日本建築学会 都市計画委員会研究協議会資料、2008年

6.Bundesministerium für Verkehr, Bau und Stadtentwicklung 「Erster_Statusbericht_Stadtumbau_Ost」2006 年 7.Bundesministerium für Verkehr, Bau und Stadtentwicklung

「Zweiter_Statusbericht_Stadtumbau_Ost」2007 年 8.Bundesministerium für Verkehr, Bau und Stadtentwicklung

「Dritter-Statusbericht-Stadumbau-Ost」2008 年 9.Bundesministerium für Verkehr, Bau undWohnungswesen 「AUSWERTUNG DES BUNDESWETTBEWERBS

„STADTUMBAU OST ”」2003 年

10.Bundesministerium für Verkehr, Bau und Stadtentwicklung 「GUTACHTEN Evaluierung des Bund-Länder-Programms

„Stadtumbau Ost“」 2008 年 11.水原渉:「西ドイツの国土・都市の計画と住宅政策」,ドメス出版、1985 年 12.海老塚良吉:「民間非営利組織による住宅事業の研究 日本の実態と欧米と の比較」,法政大学大学院人間社会研究科 博士論文、2007 年 「英米独仏における社会住宅の供給組織の動向」,都市住宅学会 都市住宅 学23 号、1998 年 13.「Stadtumbau Ost」Bundeswettbewerb2002 BMVBW 14. 魚住明代:「ドイツにおける出生率と家族政策」(安藤誠編:『先進諸国の人 口問題』)東京大学出版会、1996 年 15.グリューナウ地区センター:LEIPZIG-GRÜNAU2006Komme e.V.、2007 年 16.グリューナウ地区センター:GRÜN-AS Komme e.V、2006 年 17.ゲルリッツ市提供資料:Stadt Görlitz INSEK-Feinkonzept

18.ゲルリッツ市提供資料:Vorentwurf_SEKo Gesamtstäd tische Situation 19.ハレ市:Integriertes Stadtenwicklungskonzept、2007 年 20.ハレ市:Wohnungsmarktbericht Halle(Saale)2007、2008 年 住宅所有者 土地所有面積 土地所有割合 住宅数 住宅割合 ハレ市(ザーレ) 391.284 ha 58.7 % 92 戸 0.3 % 連邦政府(国) 3.616 ha 0.5 % 2 戸 0.006 % ザクセン-アンハルト州 7.531 ha 1.1 % 7 戸 0.02 % GWG 社注6) 66.928 ha 10.0 % 11,891 戸 35.6 % Leuna 住宅組合*、注7) 21.817 ha 3.3 % 3,858 戸 11.6 % Halle-Neustadt 住宅組合*、注8) 18.614 ha 2.8 % 3,719 戸 11.1 % Halle-Merseberg 住宅組合*、注9) 15.235 ha 2.3 % 2,800 戸 8.4 % Hansel 住宅社注10) 5.548 ha 0.8 % 2,690 戸 8.1 % 倒産した住宅事業者 23.915 ha 3.6 % 4,653 戸 13.9 % 部分所有(賃貸) 17.647 ha 2.7 % その他 94.594 ha 14.2 % 3,657 戸 11.0 % 合計 666.729 ha 100.0 % 33,369 戸 100.0 %

参照

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