フランシス・プーランクのピアノ音楽 : ピアノ教材論(VI-a)
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(2) . 平成 9 年 2月 Februa ry,1997 ‐. 7巻 第2号 北海道教育大学紀要 (第1部C) 第4 l i i i i fEduca t t i t fHokka doUn lo on (Sec onIC) Vo Journa ver s .2 yo .47 ,No. フ ラ ン シ ス ・ プ ー ラ ンク の ピ ア ノ 音 楽 (1) ピアノ 教材論 (W-a). 大. 塚. 夏. 生. L’oeuvres pour le piano de Francis. Poulenc(1). , ion de piano W ーa - sur1 【 lateriaux pour1educat en. は じめ に. 96 3) の作曲活動は20世紀の初期から中期にかけてなされ, 就中ピ フ ラ ンシス ・ プーラ ンク (1899 -1 アノ のジャ ンルが質量共に圧倒的である. これらは長年月にわたってかきつ づけられ, その性格が多岐に及 んでいるという点からみて彼自身にとっても極めて重要な意味をもっている. これらのうちのほとんどが小 規模な曲, 及びそれらの集合としての組曲または複合作品である‐ 例外といえるのは 「4手のための ピアノ 8及び19 53) のみである. 総体的にみてこれらには単純な形式, 明快 なひびき, 素朴 ・ソナタ」 2曲 (191 な曲想をもつ ものがかなりの部分を占めている‐ 更に歴史上の様々 な語法がみられ, フランス・サロン風の エ レガ ン トな様 式, ルネ ッ サ ンス 的 な旋 法, ナポリ 民謡, イ タリ ヤ 的カ プ リ ス, シ ュ ー マ ン, ソ ョ パ ン, エ ル ガー, ス トラ ヴィ ンス キー. プ ロ コ フィ エフe tc ‐数多 く の 先 達及 び同世 代 作 曲家 の影 響 が は っ きり して い. る‐ なかでも直接的関りをもつ エリック・サティ -との相互理解をうんだ諏刺の精神, 極めて個性的な比喉 性などは音楽史上の特記すべき事柄である. 更に プーランクにおいて特筆すべきはピアノ という楽器のもつ表現上の可能性の多角的追求であり, 就中 ペダリ ングの多様な効力への研究は注目に値する‐ そのほか楽譜の随所にかきこまれた表情用語には彼独自 の音楽的イ ディ オムのゆたかさを証明するものがある. また音楽それ自体が簡潔にして陽気であるのにもか かわらず, そこに時として虚しさ, または憂愁をかんじさせるものが顔をだす反語性がかんじられ, 曲題と 楽想にアイ ロニィ の関係を含ませる場合も稀ではない‐ ここには同時代の詩人の影響 とおもうべきl a t ・ r ・que 等 もよ み と れ, pensee sa. そ れ が単 純 様 式 にユ ニ ーク な 内容 を 注入 し, 譜 諺, 皮 肉, 誠刺e tc ‐という. 近代フランス的特性を与えた精神が宿っているのである. 明か に プ ーラ ンク はラ ハ マ ニノ フ や スク リ ャ ー ビ ンよ り はむ しろ バ ル トーク, ス トラ ヴィ ンスキィ そ して プ ロ コフィ エ フ の 路 線 に強 い 関 心 を もち, そ の う え でミ ョ ー, イ ベ ー ル, サ ティe t c ‐の 影 響 をう けた‐ この. ため一見してサロン風におもえる曲も単なる感傷ではなく, 更にひとひねりしたものであり, シューベルト 的素朴とは全く ことなっ ている. 和音の取扱いにおいては古典的明快 と同時に ドビッ シーの舞曲Dance fane” tpro sacr6e e ,1904 の 影 響 か ら発. した 高 品 質 の 不 協 和 音 お よ び そ の 他 の 合 成 和 音 で あ る‐ ま た パ ロ. ディ ーも時たまみられるが, これは先達の素材への関心と愛着の深さを示すものである‐ 近代フランス音楽といえば兎角フォーレ以後の有名な作曲家の作品のみに関心が傾いているのであるが, その他の作曲家の曲にも光をあてて教育の場に活かし, フランス・ ピアノ音楽への実情を深く認識させると 共に学習者の体験領域を拡げる必要があるとかんがえる‐. 361.
(3) . 大. 塚. 夏. 生. [1〕. 前期の ピアノ作品 常動 曲 Mouvement s perpetuels l918. 上記のような想念のもとにかかれたこの 「常動曲」 は単に ピアノの効果を狙ったものではなく, もっぱら 内容の特異性の故に評価されたのである‐ そこには決してビアニズムにおぼれることなく, 独自のイディ オ ムの開拓がみられる‐ 第1楽章では新古典的明快さのなかにも左手の音進行に9度音程を定期的に用いたり,. 右手にも短九度の不協音程をあ ら わ に用 い て い る‐ 速 度 記 号 はAssez modereす な わ ちben. moderato,. 2 4小節のみの規模であり, 左手は最終小節を除く全てが分散的8分音符のみによる同型反復 (B-dur )に 徹 し て い る. 左 手 に 対 す る 指 示 語 は 「全 体 を と お し て 一 様 に, ペ ダ ル を た っ ぷ り と」 En genera l ,sans nuance,beaucoup de pedale と な っ て お り, 調 性 は 右 手 がB-dur (1 - 4) F-d ur (5 ~ 7) Ges-dur ‐. (10 ~ 13)As-dur (14 ~19) で あ る. 音形 は単 純 で あり, 音 数 も少く て希 薄 にみえ る が, 斯様 にフラ ッ ト系 の 転調 が 多く, これ によ っ て 左右 の 複調 的 効 果 がT‐10 ~ 19 に生 じ て い る‐ T‐12 ~ 13 とT‐18 ~ 19 」 2 のdoucementt imbre (落 着 い た ひ びきで) の箇 所 にみ られる 右 手 はas」 b2 , des es とい う 短9 度 の堆. 積であり, これらにはさまれたT.1 4~17は装飾音と経過音の多い変奏部分であるが, ここには決して華 や ぎはなくinco l oreettoujoursp (淡白にそして常に弱奏で) の指示のとおり坦々とすぎゆくのである‐ 最後の小節ppは突如として全く様相をかえ左右共に音価は異るが上昇的跳躍音形を採り, 調性を脱して 1 2 2 3 ゆ っ く り とTreslent 天 上 に 消 え 去 る. こ こ に もges-a1 , ges - a , f -ges と い う 9度関係が生きており, l 様相 は変 っ て もひ びき に一 貫性 が あ る. そ の 前 の 2 小節 (22 ~ 3) の ア ル トと テ ナ ー に はg-cl , a-d, 1 g- c と い う 4度平行もあり,. 甘いひびきは既にここから超えられている. 総じて明快な形式, 単純な音形,. ±日々 と した 曲想 のう ち に浪漫 派 と は異 っ た 音 関係 を も つ 形相 は プ ロコ フィ エ フe tc ‐にも一 脈相 通 じる もの と いえ る.. 第2楽章は単純な2声の動機的, 古典的組成によっており, 静かで控え目なうごきのうちに反進行的対位 法が生きており, 希薄な書体ではあるが, 決してナイーヴなものではなく, 奥行の深さと余韻のゆたかさに おいて印象的である. 特に前楽章の最終小節の神秘的な天上のひびきの直後に始まる静議の楽想は只ならぬ 重味をもって迫ってくる‐ わずか1 4小節のこの曲の左手には音形反復がT‐1~6の各小節, 別の音形がT‐ 7~ 10の 各小節, 更 に第 3 の 音 形 がT.11~ 12 そ して最初 の 音 形がT.13 に用 い られて い る‐ 4/4拍子, 構成 は6+ 4 +2 + 1 + 1‐ 右 手 はT‐1 をT‐2 が 変奏 し. 更 にT‐3, T‐4, T.5‐ T‐6の 各小節 が 変奏 を. 重ねてゆく. T‐7~10は左の別素材と同じく右もまた別個の素材を呈示する. しかし, このフレーズは前 0で変奏を重ねる. T‐11~2は6/4と 楽節と原理的には同系の変奏法を採り, T.7素材はT.8, 9, 1 なり, 左右共に更に異った素材の反復部であり, T‐1 4は元の4/4拍子に戻る. T.11~2では左右 3~1 の間の斜進行が現れ, T.13にはT.1が再現し, 最終小節では前楽章のそれとは別様の上昇的終止によって 静かにきえてゆく. 曲想指 示 語 に はテム ポがTres modere erentp (全 てを 弱奏 で) とあ り, 地 味 に淡 々 と ひく ,冒 頭 にind達f ことが要求さ れて いる. 然 し, T.3~4 は対照 的 に mf , そ してT‐5 ~6 で再 びp にも どる‐ 次の フ レー ズT. 7 ~ 8 はtreschan la i i t e (旋 律 をよく 唱 っ て) mfとなり‐ T.9 ~ 10 に はc r ma sp (明快 に, 然 し弱 奏 で). とあり, 右手には長2度の重合と4度堆積が用いられ, 2度関係は前小節に存在するd音とe音によるもの imbre (軽 や かな ひ びき), 2Peda l である‐ 6/4拍 子 によるT.11~ 12 に はpplagerement esとあり, i i まさに玄妙なかんじが要求される. T.1 3 に はralent ‐ s r (ゆ る や か に) と あり, 次 の 最 終 小 節 に はpppgl sandoが加わってまさに絶妙な超越感をかもしだす. 短く, 充実した楽章であり, 上記の2度関係の露わな呈. ’Eauにおいて初めて試みた書法を想わせるものがある 示 はM‐ラ ヴェ ルが 「水のたわむれ」 Jeuxd . 362.
(4) . フラ ンシス・ プー ラ ンクの ピアノ 音楽 (1) - ピアノ 教材論 (孤- a). 第3楽章は活発な楽節でもって始まるが, 後にコントラストのはっきりとした楽節がいくつか現れて内容 をみ た し て いる. ここ に 在る ナイ ー ヴな 旋 律 はあ る点 にお いて シ ァ ブリ エ に似 て いる が, ま た ドビッ シィ の 影 響 もか ん が え られ, 先 ず 想 起 さ れ る の が か の 有名 な 前 奏 曲 集 第 12 番 Mins l t re sで あ る‐ しか し全 体 と し. ては独自的楽想と構造をもっている‐ 56 小節 か らな る この 楽 章 は形 式 がA (T‐1 ~3 : 4/ 4→ 7 / 4) B (T.4 ~ 7 : 4 / 4) C (T‐8 ~ 36 : 3 / 8) A (T‐37 ~ 9) D (T‐40 ~ 56 : 4 / 4 → 5/ 4)‐ 指 示 語 を み る と 冒 頭 にA1 t fsansdure i e (鋭く な らず に, よ e-tresl t er e (ヴィ ヴ ァ ー チ ェ), B 楽 節 にf く つ な げ て) 及 びen s’apaisant un peuf(少しやわらげて). とある‐ この箇所ではA楽節の快活とB楽節. の 重々 しさ の コ ン トラ ス トが そ の音 域 と音 長 によ っ て か も しださ れる‐ C 楽節 (3 /8, mf , T‐8 ~ 36). は前楽節と同じテムポであるが, 完全な4小節単位 (8~35) 十1の軽快なワルツであり, ここにみられ る指示語l echanten dehorsはT‐8 ~ 11 とT‐16~ 19以 外の 全 て の箇 所の 旋 律部 分 に対す る もの といえ る‐ 組 成上 はT‐8 ~ 11, 16 ~ 18 と20 ~ 23 が 同 じで あり, T.12 ~ 15 と28 ~ 36 は右手に共通性をもちつつ. も左手は後者が分散和音形という軟らかい性質を有っ .ている‐ T‐23~26は橋渡しである. 和声はF:最を 中核としており, 他に格別の複雑さがみられない. C楽 節 に は前 楽節 と 同 じ早 さPrecedent i forme (イ タ リ ア 語 のs imi ) を経 l eの 指 示 が あ り, T‐20 のun e てT‐28 のaveccharme (楽 しむ升こ, 魅 惑 的 に) に至 る‐ こ こ で は軽 や か な レガー トの 4十 5の フ レー ズと な っ て い る が, こ れ は直 前 のT‐24 ~ 27 と の コ ン トラ ス トが 更 に拡 大 さ れ て い る の で あ る. D 楽 節 4 / 4 拍 子 は{ 7 )十4 + 4 十 2からなり, 右手は単純明快ながらも直前のA楽節とは対照的に憂愁を帯び, a音を核. とした反復と再出現が左手のF:m9- 酷という和声素材の反復的持続 (aは保続音ともかんがえうる) によ る 含 み の 多 い ひ びき によ っ て 独 特 の ア トモ ス フ ェ ア を か も しだ して い る (T‐40 ~ 54)‐ 上 記 の和 声 に 続 く の がT‐47~ 50 のF:V9で あり, T‐51 ~54 で は再 びT.40 ~ 46 の和 声 進 行 がそ のま ま 現 れる が右 手のen dehorsは交 叉croi sez奏 法 によ り, 活 発 な 低 声 部 と な る‐ 音 形 は第 1 楽 章 冒 頭B-durの 右 手 f2e s2d2c2. 1の厨豪忌ま音長が近似であり, 音程が相対的に同じであることから相似形の関係にあるとい b・およびT .5 える. 第工楽章の rrq蟹 行 P はまたT 7の右手 亘臣甘 じ目#及びT.4 0「「「qqn r の母体と ‐3 な っ て い る の で あ る. こ の 楽 節 の 指 示 語 と して はテ ム ポ に 関 る ものA peine noisv i t e(速度 を 落 とさ ず に) , 表 情 に 関 る ものgr i s (悲 し げに) , ペ ダル に 関 る も のl es deux pedal es (両 方 の ペ ダル) の 三 つ に気 が つ. く‐ これは希薄でさらりとしたなかにもたとへようのない悲哀感, そして最弱音ペダルと延音ペダルの同時 使用によるぼかしを含む絵画的空間暗示などの特質を示している‐ T‐47~5 0 に は二 つ の 指 示 語f l ou p (ぼ か しを つ けて,. 弱く), 及 びles deux pedales が あ り, 直 前 の フ レー ズ の 拡 大 反 復 によ る右 手 及 び分 散 的. 音域拡大による左手の変形によって, 猶一層の空間的ひろがりとぼかしの奥に多様さを暗示する印象主義的 手法 が み られ る‐ T‐55 ~ 6 は突如としてフォルテとなり右手が元気よく前掲のモティ ーフを交叉による低. 声部で弾くが, 直く 次 の小節 で はT‐45 ~46 と 同 じもの が 現 れる. T‐55 ~ 56 は 最 弱奏pppで も っ てrelen‐ f facant (ゆ っ く り と, 消 え て ゆく よう に) とあ り, 左右 の 単 音列 によ る2 声 の 極 め て 静 か な 反 進 t ・ rens’ e 行 レガー トが要 求さ れ, この 超 越 的な 大 空 間の 彼 方 に最 後 の和 絃 が かす か に き こえ る‐ ここ に はla i sserv・‐. br erという精神的な指 示語があり, 最終楽章の最後の和絃に総合的な万感の想いをこめ 〈感動にひたり続 ける〉 ことをイメージしたものといえよう‐ これは言葉のほかにa3とd2及び和絃の各音に付けられた非限 定的な弧線が示す無際辺性, そして更にこれらの音のもつ集合体としてのひびき, 即ち右手F:m, 左手F: W暑の合成的組成が総合された名状 しがたい神秘感をうみだしているの で ある‐ 以上のことから専門家 に よってとかく見逃されがちなこの小曲にも多種多様な状況の展 開をみてとることができるのである‐ この 曲 と 同 じ 年, 作 曲 者 が 〈戦 う 聖 マ ル タ ン軍〉 Sa int-Mar in-sur-l t e-Preに勤 務 し て い た と き に か い た の が 「2 台 の ピアノ の た めの ソ ナタ」 1918 であ る‐ これ は前 曲 と 共 に友 人 ス トラ ヴィ ンス キー の推 せ 363.
(5) . 大. 塚. 夏. 生. んにより英国のチェスター社から出版された‐ このソナタは常動曲との共通点をもっているが, 当時の大衆 の 人 気 を余り 得 な か っ た とい わ れ る‐ しか し, エ ルネ ス ト・ア ンセ ルメ ほかの 専 門家 か らの 反 応があ り, 作. 曲者自身も1 93 9年には改訂版をだす程の力のいれようであった‐ 各楽章に題がつくというユニークなもの lude は一般的な前奏曲とは異っ て小 規模ながらもソナタ形式をとっ ており, 両主題 で あ る. 第 一 楽 章Pre. は簡潔ながらも個性的な音程関係と動機組成によっている. 展開部は第2主題の変形及び装飾の反復に終止 し, 再現部では両主題の簡潔な取扱いの後に最後部になって新奇な不協和音が用いられる. 然し斯様な手法 fe ique, Nal tl t は プ ー ラ ンク の 場 合 決 して 珍 しい もの と はい え な い‐ 第 2 楽 章Rus ent (田 園 風 か つ 素 朴 i t resv e (終 曲 で ゆ る や か に) は2 つ の テ ー マ を もつ 3 部 形 式 で あ り, 第 3 楽 章Final e ,t. 大 変 速く) も. また2つの主題が幾度か再現をくり返 しつつ展開をも混入するが, 自由な思い付きの多いフォームをとって おり, 最後に烈しい不協和音を用いる書法はいかにもプーラ ンクらしいアイロニイをかんじさせるものとい え る. 1920 年 作 のSui t j e Pour Piano en ut ma eurピアノ組曲ハ長調は前曲より多くの賛同者を得た‐ プーラ ンク がサ ティ によ っ て ひろ め られた非 ビアニ ス ティ ク な 書法 に こころ 魅 か れて いた ころ の作 品で あ る‐ ここ. には新古典主義の理念への共鳴の姿勢が充分に開陳されており, 当時ジァ ン・コクトーとその信奉者達もま たこのような明快で新鮮な書法を真底から肯定していた. プーランクは兵役を終えて後, ドビッシーが主唱 析で無駄がなく, かつ活性ゆた した柔軟な快楽的思想に鋭く対立する新しい美学をうちたてた‐ ここでは明日 かであることが主たるモッ トーなのである. 若きプーランクは斯様な精神をピアノ作品のなかで主張してお 8世紀の り, その例証といえるのがこの組曲及び 「5つの即興曲である‐ この両作品に共通しているのは1 古典派様式と書法の再評価という姿勢である‐ 組曲の各曲には速度記号と同じ題名がつけられており, 第1. 楽章Presto第2 楽 章Andante第 3 楽 章Vifと いう 極めて即 物 的 な 態度 もま た 曲の 書法 と同 じく ロマ ン主 義, 印象主義への批判がこめられているのである. 第1楽章は新古典主義的句節法によっており, 形式および曲 想の両面において極めて明快である‐ 転調が少く, 和声進行が単純であり, 変化和音, 臨時記号もほとん ど :き寺とい平行5度も目 ぎ なく, かつ旋律素材と伴奏形が共に平易に終止する. 但し, 主要主題の右と左に [ 1. 1. 1. 1. 1. 1. につく. 楽節 構 造と小節 規 模の 関係 をみ る と10十10十 8 + 8 + 7 十 9 + 9 + 6 十10十10十 8 十 8 十 9 1 1 1 1 1 1 ’+a ’ ’“+c ’+d’ ’ ’+b’十 e +a ’ ’ ’+b’ ’十 c + d 十a 112 小 節 と な り, 素 材 形相 の 点 か ら考 え る と a 十 b 十a. 即ち3部形式であるが, 中間部にもその後の部分にも展開的動機労作がみられず, むしろ羅列的である. し かし, 中間部は同主短調のため, やや色調の変化があるのみといえる‐ 指示語は冒頭にmftresagal (極 めて平坦に) , a’の 後 半 にtreschantedにaveccharm (魅力 的 に) souple (しな や か に), decide (決 ’に 入 っ て 急 に subi 然 と) が あ り, a’ tに変 る. こ の 意 味 に お い て d とa“に や や 変調 が 求 め られ, p. 更に e. l 楽節に入っ てpsubi tと2peda esによ る コ ン トラ ス トがつ け られ る. こ の よ う に単 純 な 組 成 にた い し て 演 奏上の変節がもとめられているのである‐ 第2楽章・変ロ長調は自由形式によっており, 句節法は全く不分. 明であり, いくつかの素材が替るがわるランダムに現れ, 経過的な流れのなかで臨時記号も少なからず用い られてはいるが, 明瞭な転調はみられない. 全体としては2声書法を基調とした素朴で静的な曲想をもっ て iにの冒頭指示語の しめすごとく極めて単純快活な素 fかつ陽気Ga いる. 第3楽章はC:鴎から始まる活発Vi 材が連続する. 強弱両ペダルの指示がT.9と46にあり, 全体として音域が狭く音形もステレオ・タイ プ化 しているが, フレーズ毎の音量の変化および多種の指示語が奏法上の変化を要求しているため結果としてコ ントラストがうまれる. これはハイ ドンのソナタの終楽章とある点で共通する楽天的な書法ともいえる‐ 自 9 8) A’(1 由形式であって, 気紛れな素材も多いが, 敢えて楽節約構造をみるとA (1~8) B (9~1 tc ~30) B’ (31~41), C (42 ~49) D (50 ~ 55) C’ (56 ~ 63) , A (64~ 67) E (68~e ,と. いう具合に強引にかきあらわすこともできるのである. 364. ,.
(6) . フラ ンシス・ プーラ ンクの ピアノ 音楽 (1). ピアノ 教材論 (虹- a). 1921 年 に か か れ た 「5 つ の 即 興 曲」 Cinqlmpromtusは 39 年 に 改 作 出 版 さ れ, マ ル セ ル ・ メ イ ア ー le Me Marcel yerに献呈された‐題名の示すように形式は極めて自由であるが乱雑さはなく,各曲共にユニー. クな書法をもっており, 更に演奏上の指示語などがここにおいてもまた曲想形成への重要な条件となってい i l r ent る の で あ る‐ 例 え ば終 止 の と ころ で テ ム ポ が お そく な らな い た め のsansra , 急 激 な 差迫 る 感 じを 求 l め るbrusque e 等々 はす べて厳 格 に守 らね ばな らな い もの であ る. こ , 歯切 れの よさ を もと めるsanspeda. れは明快なタッチと濁りのない音質への作曲者の愛着そして何よりも曲想それ自体の確立のための必須条件 eはわ ず か 19 小節 の短 い 曲である‐ t と して 重視 す るべ き もの なの で ある. 第 1番 ハ 長 調 4/ 8拍 子Tresagi. 全体が16分音符を主体とし, 内声部・外声部共に上昇性・下降性の両者に及びクロマティ シズム 書法を軸 としており, 上下の関係をみると不協音程が影しい. しかしここには音形と音程の使用における類似性が充 満 して おり, 右 手 はT.2 と 7, 左 手 はT‐3 - 4, 14 ~ 19 が 同 類, T.2, 5 ~ 6, 9 ~ 11 が 同類 で ある. T.12 ~ 15のBrusqueはこの 曲の ク ライ マ ッ ク ス であり, T‐14以 降 コー ダの 最後 ま で 中軸 と な っ て いる の がes-dの 半 音, そ して 左 手のas~ g の 半 音 であ る. C:1 か ら発 して 同 じ和 音 で終 る この 曲 はT.12 ~ 13以. 外の全小節がなめらかな進行を要求され, 数多い不協和関係も決して鋭くひびくことがなく, エレガントな 幻想をよびおこすところに特徴がある‐ 3小節からなら小品である.即興的自由形式を採っ 第2番ハ長調3/4拍子は明るく,ユーモアに満ちた7 てはいるが, 荒唐無稽な旋律のばらまきなどではなく, 上昇性素材と下降性素材が適宜に配置され, また一 2) B (13~1 8) 般には気付かれることの少い声部にも配慮がなされているのである. 形式はA (1~1 C (19~ 23) D (24~ 41) じ (42 ~ 46) D (47 ~ 59) A’ (60 ~ 67) B (68 ~ 73) と い う 明 瞭. さをもっている‐ AとA’は左手が全く同じであり, 右手はAを半音ずつ低く したのがA’である. A楽節の 右 手 の 素 材 はT‐1 ~ 2 が 階梯 的上 昇, T‐3 ~ 4 はそ の 逆 行 形, T‐5 ~ 6 と 7 ~8 は同 一, T‐9 ~ 10 と 11 ~ 12 も 同 じと いう よ う に単 純 な 主 調 の フ レー ズ で あ る. T‐5 ~ 12 は上 昇 性 で あ り, こ の 傾 向 はB 楽 節 の f f (急 激 な切 迫 感 を も っ て) によ っ て 分 T.13 ~ 16 に も 影 響 して おり, こ こ で は 更 にBrusque-Presserf. 厚い和絃による鋭い平行5度が連続する‐ 左手の保続音と右手の和絃にはひとつひとつに音量記号が付いて 8の単旋律5/4 おり, 斯様な細かい配慮は曲全体にゆきとどいているのである‐ これにつ づくT.17~1 ’ ’ ’ c→ d ~ 6 / 4 は前4 小 節 との 見事 な コ ン トラ ス トを な して いる. C楽節 に も右 手 にd’→e , g →a とい , う 上 昇 性 が あ り, 左 手 に はC → d → e → D → C と い う 凸 形 (T‐2 ~ 3 の 上 声 と 同 形) が み られ る‐. D楽節. 5 のT‐27 ~29 は右手のスタッカート下降形に対して左手がレガートの上昇形を以て対位し, 左は更にT ‐3 ま で及 びT‐38 ~ 9 と つ づ く. これ に対 して 右 手の 下 降性は更 にT‐35ま で及 びT.38~ 9 と つ づ く‐ 但 しT‐ 36 ~ 7 と 40 ~ 41 はこ の 傾 向 が 左 右 交 替 して いる. T‐42 ~ 46 はC’楽 節 であ り, こ こ で は右 手の 長 さ が 変. 9~21の場合と同様である. D’楽節にもD楽 化し, アルトの 国1 は ト」 となる. 左右の9度跳躍はT‐1 2 0~5 節と同様に対位法的関係が存在 し, また動機素材の上昇・下降関係もより一層繊密となり, 特にT‐5 で はソ プラノ, ア ル ト, テノ ー ル の3 声 部 にポリ フ ォ ニィ 的密 度 が た かま っ て 次 にク ライ マ ッ ク ス を生 みだ す.T‐56 ~ 59 は平行5 度をあ らわ に した和絃 が 下降性反復 形 によ っ て用 い られる.T‐60 ~ 67 は冒頭 フ レー ズ の移 置 的再 現 であ り, つ づ くT.68以 降 はB フ レー ズ の再 現であ る が, T‐73 に はPres toが加 筆さ れ, ま た i 音量 も増大 してf f f fの 豪快さ が加 わり, 更にsansre l ent rの指示によ っ て鋭利 な もの とな っ ている‐ 第 3 番 ・ ト長 調 3 / 4拍 子Tres mod eは概ね8分音符の単純な伴奏にのっ て, 右手は半音音階法を駆 er 使 した 軽 や かでク ー ルな ジ ャ ズ 的, フ ォッ ク ス・ トロ ッ ト風の 性 格をあ らわ している‐ 左 手 はスタ ッ カ ー ト l で ほ と ん ど ペ ダルな しPresque sans peda e で ひ か れ, 右 は 付点 音 素 材 を レガー トでつ づ け, この 両 手の l コ ン トラ ス トが ブル レスクbur roniqueな もの をち らつ かせ て いるよう に esque的で あ る と 同時 にイ ロニ クi lか ら発 して 上 行 す る 半 音 音 階の 同素 材 の 反 復 で あ り 更 にT 6 ~ 11 に おい て も き こ え る. 冒 頭 小 節 はc i s , . 365.
(7) . 大. 塚. 夏. 生. こ の 素 材 が 中 軸 を な して い る. 形 式 はA (1 ~ 13) B (14 ~ 19) A’ (20 ~ 24) Coda (25 ~ 26).. 中間部の右手ではT.1 5~6, 1 7には上昇的半音々 階法があからさまに用 8~9に下降的半音々階法, T.1 いられている. 即ちA楽段がシャー プ系であるのに対してB楽段は主としてフラッ ト系によるコントラスト がはっ きりとしている.更にこの曲では拍子の変化が頻繁であり,3/4 (1~11) 4/4 (13~4) 2/ 4 (1 5) 4/4 (1 6~7) 7/4 (1 8) 6/4 (1 9~20) 3/4 (21) 2/4 (22) 3/4 (23~ 5) 6/4 (26~7) という多様さが特徴の一つとなっている. 結尾部における左右の対照も際立ってお り, 最後の小節で突如として両ペダルの指示がなされ, 更に最終和絃ではG1h a1c3と い う 4つの音が同時 ’の4 音 と 同値の 関係 にあ る 総 じて この 曲 に はク ロマ ティ シ ズム 的 に ひ びく が, これ は 冒頭 左手 のGhAc . ,. 主題素材による統一とリズム変化によるコントラス ト, そして譜面の各所にみられる奏法の指示, 例えば T.12 のtressechement (荒 々 しく) とtreschantき,T.14 のstacc‐とtreslie,T.16 のtres detach6な ど. の語が作曲者の繊細な心使いを表している‐ 第 4番Violent (激 烈 に) は3 / 4, 4 / 4, 5 / 4, 2 / 4 の4つの拍子が各幾度か現れる変化に富んだ曲であり, 形式が自由なために裁然と区分けすることはできな い. しかし動機的素材として若干変形しながら用いられている. 冒頭の 「「 「山宮寡 はT‐5~ 御こおいて 7, 1 2~4, 16~1 9~20etc.数多 く の 箇 所 に用 い られる. ま たT‐7 ~ 8 1ロ ニ ヱ汀 となり, 更にT‐1 「 宵「 の Pn rp はT‐11 ~ 2, 45 ~ 6, 50 ~ 1, 52 ~ 3etc.に 変 形 し て 現 れ る. 即 ち 第 1, 第 2 の動 機 が 共 に. 変容しながら自由に展開してゆく. 冒頭動機は両手による分厚な和絃であり, ここには平行5度が少なから ず含まれ, T.7~10の左手には平行7度による対旋律, T.11~14にはアルトに平行4度による対旋律, T.28~33に平行9度の伴奏が存在する. 全体的にみて対位法が数多く駆使されているなかで半音階的進 行 が 目立 ち, 特 にT‐50 ~ 64 に は 継 時的 に連 な っ て い る. 更 に 注 目 す べ き はT‐44 第 1拍 以 降T.49 第 3拍 1e1f 1 1albic2des2es2e2fis2 2a2b2という短2度と長2度の交互する ソ プラノに内声 に至 る 迄 のdi i s s g g. 部が平行付随するかたちで かつてFr .リストが用いた交互性2度音階 (移調の限られた旋法=メシアン) が あらわに用いられていることである. その他数多くの個性的旋律が充満しており, 華やいだビアニズムがな いだけに充実している‐ また上下の不協音程もかなりの度合いにのぼる計算を伴っていて, それがモティ ー フの幾多の変形による出現に直接各々個性的影響を与えているのである. 組成構造上は大変渋くかかれてい るが, 数多くの音量記号や表情指示語が記入されており, それが強烈な音楽となって響く が, 特に暗さはな いためにユーモアをかんじさせると ころもあって プーランクの面目躍如たる作品である. 第5番 (終曲) Andant 4小節からなるこの曲のなかでバス声部が単なる伴 eはハ 短 調 3 / 4拍 子 の素 朴 な 無言 歌 で あ る‐ 4 奏 に な っ て い る の はT.19 ~ 22 の み で あ り, 他 の 全 て に お い て バ ス は 対 旋 律 ま た は 旋 律 的 グラ ン ド・ モ ティ ー フ に な っ て い る. 中声 部 に も 旋 律 が 用 い られ て い る の はT‐11~ 4, 33 ~ 4 の み で あ り, こ の 箇 所. では3声対位法が使用されているが, その他は全て2声対位法によるものとみてもよい. しかしT工 ~1 0 の 左 手 は各小 節 が 同一 素 材の 反復 とな っ て おり, T‐15 ~ 6 と 17~ 8の 左手 は同 じ で あ る‐ ま たT‐23 ~4, 25 ~ 6, 27 ~ 8, 29 ~ 30, 31 ~ 32 も バ ス が 同 一 素 材 の 反 復 で あ る‐ 形 式 はA (1 ~ 14) A’ (15 ~ 34) A“ (35 ~ 44), ソ プ ラノ はT‐1 ~ 4 と 15 ~ 18 と 35 ~ 38 が 同 じで あ り, ア ル トのT.13 ~ 14 と. 33~34が同じであること, 及びその他の部分も大きな変化のない類形であって, 更に演奏のための指示記 号も少いこと等々のために全体が地味な形態, 渋いひびきを保っている. 以上5曲の即興曲は各々が独自の 楽想を有ち, 作曲者の精神世界の多面′性をごく短かい規模において開示しているのである. 「プ ロ ム ナ ー ド」 Promenades (1921) は 全 10 曲 か らな る 小 品 の 集ま り で あ る ア ル ベ リク ・ マ ナ ー . ルA1 ber i c Magnardの 影響 か と お もわ れる タイ トルを も つ この曲 集 は若 い 頃の プー ラ ンク の 野心 作であり,. その入念な和声構造は当時の先進国の人々を魅きつ けた機械分明およびプーランクの諸先達の豊富な新しい 366.
(8) . J W- a) フラ ンシス・ プー ラ ンク の ピアノ 音楽 (1) - ピアノ 教材論 (. イ ディ オ ム によ っ て燭 発 さ れた もの で あ る‐ こ の傾 向 は彼の ほか ダリ ウ ス・ミ ョ ー. ア ルテ ュ ー ル・オ ネ ッ. 6と い う 旧来 の 伝 統 か らの 離 脱 ゲ ル 等々 の 作 曲 家 と も一 脈相 通 ず る も の であ り, 旧 き 佳 き 旋 律bi en-chant. 0曲には人間の移動手段 と同時に新しい音関係の追求がこの作品において急激に深められたといえる. 各1 に関わ る題名が付けられ第1番A Pi ed徒 歩 で, 第 2 番En Auto自動 車 で, 第 3 番A Cheva1馬にの っ て, ture客 ion飛 行 機 で, 第 6 番En Autobusバ ス で, 第 7 番 Bn Voi 第 4 番Bn Bat eau小 舟 で, 第 5 番En Av. l igence駅 馬車で, l t t 車で, 第 8 番Bn Chemin De Fer鉄道 で, 第 9 番A Bi cyc e e自転 車で, 第 10番En Di lant (のん びり と) の 冒 頭指 示 が つ い て お り, 総 体 的 に みてノ ク タ ー ン と な っ て い る‐ 第 1 曲 に はNoncha. 〕 暑 的夢幻性を特質とするが, 組成は拍子と音程において多様である‐ 先ず拍子は 者【 、 菅三割. 割引, がわずか33小節のみじかいなかで用いられ, それらが各々 2 重の 狙い を も っ て い る と ころ に特徴 があ る‐ 形 式 はA (1 ~ 12) B (13 ~ 17) C (18 ~ 24) A’ (25 ~ 33), A フ レー ズ に はdoucement (静 か. に) の指示があり譜面は希薄なイ長調のゆったりした流れがみられ, 主旋律が下降的な前半と大らかな波の うねりをもつ後半, そして半音下降的なテノール (1~10) 声部などもこのおだやかさの要因といえる. T‐10 ~ 12 は ソ プ ラ ノ, テノ ー ル が 共 に 上 昇 的 か つ ク レ ッ シ ェ ン ドを 伴 う 動 き を みせ る. B フ レー ズ で は. ibrement (自 由 に) の指 示 も あ り, 下 降 的主 旋 上 声 トリ ル にserre (きち ん と) と あ る が, 全 体 と し て はl 2へ と半 音 々 階 的 に下 降 し ア ル ペ ッ ジ ョ に達 す る 2か らes 律 の も つ 装 飾 性 をた っ ぷ り と き かせ な が らgi s ‐ , 2の 4箇 の 4度が 堆積 して おり 更 に 下段 にDes-As 1-fl es l- al f L b1 bl-es こ こで は上 段 がces , , ‐ , , 4 は突 如 と して調 性 があ いま い - f - が あ っ て, 更 に 次 の ア ル ト声部 e 」 g1- h - dlが つ づ く た め にT‐1. になる. この形がくり返されてB楽節はおわる. C楽節はf - a -cis-(e)-gis- h と いう 11 の和 音で 始 i i ま り, 次 にH -di sと s- e -gi s- h -(d)-f s-f - a -cisと い う 9 の 和 音 に c が 付加 さ れ, 更 に次 はc. 9では左手が長3の平行による半音々階下降をなす‐ いう11の和音が各々転回形によって連続する‐ T‐1 i T.20以 降 は再 び11 の 和 音 と 9 の 和 音 がく り か え さ れ, T.22 ~ 3tr t s e (悲 し げに) に お い て は増 8 度,. 短9などを含む不協和音の連続するなかで, アルトが半音進行のメ ロ ディ ーを弱音で奏でる‐ A’楽節では メ ロ ディ ーがアルトに流れ, 再び希薄な譜面にもどり, ゆったりとした楽想をとりもどす. この曲では中間 部に激しい不協和音が連続し, 若きプーランクの意気込みが存分に横溢しているといえるのである. 第 2 番t t eは ト ッ カ ー タ 風 の 華 麗 な 3 部 形 式 の 30 小 節 の 小 品 で あ る‐ A (a 十b + c 十 d + a’) resagi ’+a“’ ) codaの 規 模 はA (1 ~ 12) B (13 ~ 19) A’ (20 ~29) B (e 十e’十 f 十 g) A’ (a”十b’十c. cod a (30) であり, aフレー ズは右手に短2度上行関係を規則的に含みながら炎の如く上昇し, bフレー ‐ ズは右手が爆発的音量を保ちながら下降するのに対して, バスはGi i sから階梯的に上昇してd sまで達した のちEとFに跳躍するが, 理論的には1オクターヴの順次進行と同値である. ここまではメロディ らしいも の が な く, 次 の C と d の両 フ レー ズ で よ う やく 右 手 に 現れ る. Cフ レー ズ で は ソ プラ ノ と テノ ー ルがク ロマ チ シ ズ を 含 み和 声 はa:V7-h:V7-f i fによ る 豪 快 な もの であ る. d フ レー ズ は音 域 をさ げ, s :V 「 F:孤7 ,f. 漸次d im‐となるなかで, 左手の16分音符は前楽節とはうって変って中の狭い進行のうちに下降傾向をたど り, 右手の和絃も同方向に進む‐ 左手はT.8の前半を短2度のみで進み, 後半からT.9のおわりまでは長 2度上行と短3度 (又は増2度) 下行を交互にくり返しつつ次第に下行してゆく‐ これは明らかに計算行為 の典型である‐ 右手はコー ドが連続するなかで不協音程が意識的に用いられ, 減8度, 長7度, 減8度, 減 8度のほか長2度のぶつかりも図式的に混在しており, 現代的実験 生が 顕著 であ る‐ a’ (10 ~ 12) は右 手 のクロマ ティ シズム は変らないが全体に低い音域を上昇してゆく. B楽段にCHOPINと記入されており, 音形及び楽想において将にショパ ン的であり, 下降的ソプラノに対するバスの主要 (第1拍と第3拍の頭) 音 間 に半 音 の 関係 を お き つ つ 左 右 共 にな め らか に し て 情 熱 的 に展 開 す る. こ こ に はメ ロ ディ ー でdetach6 ,. 367.
(9) . 大. 塚. 夏. 生. 全 体 にbi fが 添 え られ燃焼 の様相 が 著 しい‐ f iそ してf en en dehors及 びtresga ‐フ レー ズ (17 ~ 18) は左. 右共に3連音上行形をとっているが, 各拍の頭音をみると右手がg1からb2に至る半音々階進行をしている の に 対 し て, 左 手 はH か らc islに至る全音々階進行をなしている‐ この組み合わせもまた純意 図的なもの で あ り, 更 に 和 声 進 行 もま たc :Vムーas :Vる-b:Vる-c :VA-d:Vきと い う よ う に 全 :VA-d:Vる-e :Vる-ges. 2音以前の完壁な調性 音々階的にのぼる調性の各属9の和音の第1転位を並列している‐ この書法は将に1 回避 法 であ る が, 属 9 の連続 につ い て言 え ばこ れ は既 にT‐13 ~ 16 に お いてas :Vる-ges :V - V9 :Vき-des - (as ) -b:Vi-es :VAとい う 進 行 があり, そ の 連 続 と して の 次 の フ レー ズ の届 9 なの で あ る. T‐ :-des :. 9に入っ て急に短6度関係によるカデンツァ的な両手による半音々階的下降になり, ロマン派の手法に逆 1 もどりする‐ a”フレー ズにつ づくb’フレー ズは概ね半音下降の連続 であるが, 左手には平行5度があらわ である. C’フレー ズに入っ てからは右手が和絃による半音下降, 左手は音階による半音下降という組合せ が生じ, 右手のみをみると7度と9度の平行が各和絃間に現れるという大胆な姿がみられる‐ 和声進行は A:mg-As :mg-C:mg-H:m3と いう 概ね 半 音 下 行 的調 性 :皿3-D:膿 -Des :mg-G:mg-F:昭 一E:mg-BS を た どっ た 膿 の 連続 という モ ダ ン な もの である‐ Coda (Pres to) は右 手 が 嬰 ニ長調, 左 はイ 短調 の 音 階 と. いう平行増4度の上昇音階をつづけるが, 最後の4音だけは左手がタイで止まることから異った関係が生じ ている‐ 総じてこの曲は大胆で機械的に企図された音組成を以て現代に挑戦したものといえるのである‐ 第3番は馬にのって爽やかな野道をゆくたのしさを素朴にあらわした無言歌風の小曲である. 比較的中の 狭 い音 域 を な だ らか にう ごく 部 分 が多 く, 全 34 小節 の うち のT‐1~ 8, 13 ~ 16, 25 ~ 33 は ソ プ ラノ と. 左手の対位法的関係が目立っている‐ 即ちホモフォニィ 書法をとっている箇所のほうがすくないが, この2 声対位法もバッハ的なものではなく, かなりの程度和声的書法に近いのである. 形式はa (1~4) b (5 ~ 8) c (9 ~ 12) d (13 ~ 16) e (17 ~ 24) f (25 ~ 33) coda (34). d 楽 節 は2 声 の み の 対. 位法によっているが, 右手はニ調旋律的短音階で上昇し, 降るときも同じ音をたどっており, 左手はロ短調 に似てはいるが, 肝腎の ドミナンテが半音下っているために調性があいまいである‐ この左右が同時にひか れるため, はなはだユニークなとり合わせとなり, しかも左の音符 (主として8分音符) に対応する右手の 3 - 5) というよ 音をみると両者の音程は短2度, 増4度, 減8度, 短9度, 長7度, 減8度, 短9度 (1 うに不協音程が見事に連続しており, 計算の跡があきらかである‐ つ づく e楽節のT‐17~8は左右共に上 6分音符, 左は8分音符であり, 両者の音の重なる所の左右の音程 昇的半音々階であるが, ここでは右が1 は減5度, 増5度,‐減5度, 長6度, 増4度, 短6度, 短7度, 増8度である. 即ち八つのうちの六つが不 協 音 程という, 計 算 が ゆき と どい て いる. つ ぎのT‐19 ~24で はT‐19 ~20 とT.22 の 内声 部 に 平 行5 度 の. 和音進行が充満し, T‐23~4には平行9度の関係 もみられる‐ 即ち右手の四拍子からFi s :1g-F:1g-E: 13一g :W琶 , ここではソ プラノが半音下降, 内声の平行5度はなくなるが, ソ プラノと内声の最下音のみを 2では左 たどると, そこには平行9度の連続もみられ, それが別なかたちで次につ づく. 経過的性格のT‐2 手 に はB:V, ,の変化 形が右 手のC:の パ ッ セ ー ジをささ え て いる. つ ぎの f 楽節 (T.25 ~ 33) はメ ロ ディ ー が 単 純 素 朴 にも どり, ソ プ ラノ とテノ ー ルに 流 麗 な 線 が み られる. T‐25 ~ 6 とT.29 ~30 の ソ プ ラノ は共 V 3- V にT‐20 の ソ プ ラノ の 2 倍 の 音価 拡 大 で あ る‐ 和 声 はC:Vg- Wg-I 7一 顧 を.3 回反 復 した の ち に V9-I g-Vgと いう 企 図さ れた 形相 を も っ て い る‐ 総 じて この 短 い, ナイ ー ヴな 印象 を 与え V9- W3-Vg-V9-I V. る曲にも繊密な現代的計算が数多くなされ, 時代に鋭敏な作曲者の態度がうかがえるのである. 第 4 番 「小 舟 で」 Bn Ba t eauはフ ォ ー レ, ドビッ シー 的 バ ルカ ロ ー レと は 異 っ て 極 め て 烈 しい怒涛と雷 fs identに は激烈さ を表 す意 味があり, ま 冒頭のAgi io l t t eとfv r ent , T.2 のf farracheも 「極 め て 強く, た 同箇 所 のt t は極 め て 鮮 明 な ひ びきを 求 める 気 持 が こ も っ てい る. T‐4のf resne. 光のような 衝 撃を もた らす‐. 全力をふるって」 というものである. そのほか譜面に横溢するあらゆるものが強烈にして鋭利な楽想なので 368.
(10) . フラ ンシス・ プーラ ンクの ピアノ 音楽 (1) - ピアノ 教材論 (虹- a). ある‐ 左手は波の荒れ狂うさま, 右手は稲妻と強風そして大波に翻弄される小舟の恐怖感を表わしているか fなどは回数多く現れてくる‐ わずか31小節の小品ながら音形, f fの指示も稀ではなく,f のようでもある. f 音量, 律動などの変化が多く, この表情の多様さが一般の華やいだピアノ音楽と異って作品の充実に寄与し 1 て い る の で あ る‐ 伴 奏 のT.1 ~ 4 は 各 々 同 音 同 形 で あ り, こ こ に はges→ F, as→ g , as→ G, b → a,. 即 ち 短9度, 長 7 度, 長 9 度, 長 7度 が ひ と つ の小 節 内 に 存在 し, そ の ほか に はges→as , as→b という 長. 2度が1つずつある‐ 即ち 左のみでも既に無調的でり, 更にT‐2の場合右手のうちの7つ の音を平均律的 に 異名 同音 をま と め て み る と c, des , f, as , g, b, a ‐を加え , h と な る‐ こ れ と 左 手 のges , d, es 2の音の中に実に11が配置され, ドデカフォニィ ると僅かひとつの小節の数少ない音の中に1オクター ヴ1 にかなり近い‐ T‐3もまったく音素材は同じであるが, T‐4は右手の音素材と音形に若干の変化が生ずる‐ T‐2 ~ 3 に欠 けて い る の が ホ 音 の みで ある の に 対 して, T.4 の そ れ はイ 音 であ る. T‐5, 7, 8 の 左手 は. 前半のみが前楽節のそれと近似であり, 後半は各々別の形をとる‐ 左右の全ての音を上記のように総合する 2 箇 の す べ て, T‐7 と 8 に は各々 9箇等々が極めて無 と, T‐5 に はニ 音 と 変 ホ 音 を 除く 10 箇, T‐6 に は 1 調 的 に 配置 さ れて いる. T.10 の 音 型 と音 関係 は前 小節ま で と は全く 異 る が, T‐11 と 12 にお いて はT.8等. 0には4度と5度の音程がよく計算配置され, 右の分散和音の各々第1音をた どると と近似している‐ T‐1 3 2 l l c - eis f h - f,. 2 2- al-esl 第 4 音 第 2 音 を た どる と e3-a1g- e2-b2 s , , 第 3 音 を だ どろ とh -di. を た どる と dl-gi sL dl-a sとなっている. また4度上行と5度連続下行が第2~4拍にみられ, 左手に. は4度下行が第1~3拍に多 い‐ 上下の同時的対応音の関係に不協性が多く, 6/8拍中の前半4拍のみを みて も eLeis, h2-cis, d2-gis, eis2 e, ais2- h, h L a, e2-eis, dl-gis, fl- e, 更 に 第 5 1 l 2 l d2- es ~ 6拍 に も c2-ges g , f -ges と いう 音 程 が あ っ て こ の 小 節 もま た 無調 的 で あ る‐ T.11~ 12 , はT.5, 8 と近 似 して いる が, T.13 以 降 は音 形 と組 成 が 一 変 す る‐ T‐13 ~ 19 を 中 間部 と みる ことが で き る‐ T‐13 は自由な分散音形 (単音) であり, 4度と5度の跳躍が多く, はじめは4↑5↓5 ↓ 4↑4↓2 t ↑, つ づ い て 4↓2 ↑3 ↑4↑5↓5↓7↑4↓5↑ 4b↓6 ↓4↑5 ↓e c .と 連 な っ て ゆく‐ T.14 と 15 ‐ は同 じ型 で あり, T‐14 はDes , T‐15 はCes:V9-B:孤字の 共 に音 階→ 分 散和 音 とい う順 序 を と っ .V9-C:Vg. 9は同じ型であり, 共に前楽節とは全く対照的性格, 即ち和絃の連続を主と て い る. T‐16 一 17 と 18 -1 する. T‐16, 18共に右手の和声に平行5度の連続がみられ, 左手は単音の下降性をもつが, 細部をみる b. b. i と 波 形 の 長 2 度 的 素 材 の 連 続 形 と な っ て い る.T.16 の 右 手 和 声 はas:V,b:V 以 下g:a: c e :ges : s : es :の 各 々 f f V を た ど っ て T‐17 のf :の 各 々 V を た ど っ て T‐19 のes: :g:ces: :V7に 達 し, T‐18 の そ れ はces:des:as:b: b. V7に達する‐ 但し第4番はV, 第3と第7はV7である. このように属和音系の連続であるため, 各々左手 との関係をみると必ずしも調性書法とは言い切れないが, かなりの程度ロマン派にもどっているとかんがえ られ る‐ T‐20 ~ 26 はA 楽節 の 書 法 に も どる‐ T‐24 ~ 25 の 和 声 は A:泣き-C:m9- H:mムー B:ms-C:V?- 十 十 十 十 V9- D:mg-cis:mg :m -c:m , 即 ち 前 者 は 9 の 和 音 の 連 鎖, , T.26 の そ れ はEs:1 -es: m -b:m -f. 4か ら e2に 後 者 は増 3和 音の 連 鎖 という 大 胆 な 企 図 によ っ て い る. T‐27 ~31 はcodaで あ り, 最上 声 部 がes 2 1 いた る半 音 下 降で あ り, ア ル トは e3か ら g2 , e か ら g へ の ディ ア トニ ッ ク 下 降形 で ある‐ 左 手 に は長 9度. 上行と増8度下行が規則的に用いられている‐ 最終小節には短2度音程のほか, 左手には増4度下行のほか 完全5度下行の連続, そして分散的ではあるが明らかなハ長調主和音で結ばれる. しかし, T‐27以降の和 声 の 中軸 はあく ま で も, C2で あ り, そ れ にEsと e が 密 着 して お り, C -dur終 止 の 形 は固 め られ て き た の であ る‐ 形 式 はA (1~ 12) B (13 ~ 19) C (20 ~26) coda (27~ 31), 調 性 は概ね 無調 的で あり,. ソエーンベルクを意識したもののように思える‐ 拍子の変化も多く, わずか31小節の小品のなかで2/4, 2 / 8, 6 / 8, 2 / 4, 2 /2, 3 / 4, 4/ 4, 2 / 4, 4 /4, 2 / 4, 3 / 8, 4/ 8, 3 /8,. 2/4, 5/8, 2/8, 3/8というように余りにもはげしく変化 している‐ 楽想のきわめてユニークな 369.
(11) . 大. 塚. 夏. 生. かがやきは作曲者の非凡な能力を証明するものと言えるのである‐ 第 5番. ionは前 曲 と は対照 的 で非 常 に 内 向性 が濃く, 響き が ユ ニ ー ク であ る‐ こ こに は 飛 行 機 でEn Av. 計算を徹底的に推進して配分した音素材のシェ ーマが存在し, それがLentのはやさと大まかなきざみで もって厳然 と心に迫ってくる. その重量感と深巌性は20世紀初期の科学技術への畏敬の念および天空の不 可測的無限性への深い想ひに沈潜する心境がよみとれるのである. 即ち, 空を糊ぶぐ恰好よさには目もくれず, むしろ宇宙への思念およびサイエンスと人間存在への哲学的考察を深化した結果うまれた音楽といっても過 言 で な い と お もわ れ る. テ ム ポ の 指 示 は 「ゆ る や か に」 「曲 全 体 に亘 っ て 均 一 の 速 さ を 厳 格 に 守 っ て」, Lent,Strictment au meme mouvementduranttoutle mor ceauとな っ て おり, 作 曲家 自身 が 演 奏者 に. たいして極めて厳密な思考と精度の高い読譜を要求していたことは, 更に譜面上みられる他の指示語と記号 によっても明らかなのである. 拍子についてみるならば冒頭小節には7/4拍子の指示がある. このため譜 面に一般の楽譜のような小節番号を記入することは不可能であり, 敢てそれを付記するならば左右別々の数 字を用いなければならない.わずか2ページの小曲ではあるが数多くの拍子記号があり,右手は7/4, 4/ 4, 2/ 4, 4/ 4, 3 /4, 4 / 4, 3 / 3, 5 /4, 7 /4, 5 /4, 4 / 4, 6/ 4, 8/ 4,. 4/. 4, 3 / 4, 8 / 4 が 全 32小 節 内 に 現 れ る. こ れ を 左 手の 段 に みる な ら ば7 / 4, 4 / 4, 5 /4, 3 / 4, 7/ 4, 5 /4, 4 / 4, 5/ 4, 7/ 4, 5 / 4, 4 / 4, 6 /4, 8 / 4, 4 /4, 3 /4,. 8/. 4となり, 全25/ J 、節となるが拍数を総合すると左右は全く同じであり, 拍節と律動において前衛性が非常 に顕著である. そのため形式分析は可能であっても, それを小節数によって論述するのは真に厄介であるが, 便宜上右手の段に用いた数字に依拠して述べればA(1~5)B (6~10) C (11~21) A’(22~3) B’ (24 ~ 7) A” (28 ~ 31) coda (32) と な る. 音 構 造 を み る な ら ばT‐1 ~ 3 の 左 手 の 4 分 符 は バ ス. がニ長調であるのに対してテノールは変ホ長調であり, 両声部には平行短9度という関係がある. T‐4~ 5ではテノ ール, バス共に変ホ長になるが, 両声部間平行9度 (短と長) の関係は続く‐ T.2~3の右手 にも4度堆積による平行9度が和絃連続形の中に含まれている. T‐2~5は明らかに主題素材であり, B 群左の声部ではハ長調によって旋律が現れ, 右手は和絃伴奏となる. ここにおいても右は変ニ長調, 即ち左 右が短2度ずれた複調の関係をなしている. C群の底声部は長9度平行と短3度平行からなる4分音符和絃 の連続による半音下降音階をたどる. これに対応する右手はハ長調による和絃的旋律素材となるが, ここに もまた平行9度が連なっている‐ B群のハ長調はD群の底声部の進行に用いられ, それと重なるD群右手の 0度の連続であるのにた 進行は変ニ長調, 即ち左手とは半音異る調性によって進行 している‐ 左手が平行1 いして, 右手は4度堆積, 平行4度, 平行5度, 7度のぶつかり等が現れ, 多彩さが目につく‐ ここにおい てもまた前フ レーズと同じく, 右と左の関りにおいて多くの不協音程が生ずる‐ 次の2小節は平行8, 5, 4, 2度の連続であり, 前小節を長2度下げたのが後小節である‐ 次のA’群はT.2~3の要約形であり, 2-h1- 右手中声部には増4度平行, 左手には1 0度平行と7度平行の同時進行もあり, 左右間にはd2-des - bl- g1とdes- c-H-B-Aの平行関係もあっ て緊張がつ づく‐. 次は左手がC群の中間部と同じである. が, 右手がeslから始まる変ホ長調音階とbから始まる変ロ長調音階の平行であるため, 左右あわせて考 2から始まっ えるとハ長調を加えた3つの調による上行的平行音階である. B’群の左手による主要素材はes ており, B群のそれより短3度高く, やや変形しているが, 左右の対位法的形相はここにも現れており, 左 の変ホ長調に対する右のハ長調は4度堆積和絃の連続であるため, 平行9度がまたもうけつがれる. 次の2 つの小節はpppの右手が2度の平行をなめらかに奏でると同時に左手は長9度平行の半音下降音階をつ づけ てゆく‐ A”群はA群と変るところがなく, Codaも冒頭小節を1オクターヴ高くあげたものである. 但し, ここ に はA’群の後 半 と 同 じ右 手, 即 ち 変 ロ長調 によ る 中声部 が 平 行的に 添加 さ れ, D-dur , B-dur , Es 1 l いてはB 」 E S, 同 じく ソ プラ ノ に おい て はd -esと な っ -durの三つの調が並行し, 低声部の末尾にお・ 370.
(12) . フラ ンシス・ プーラ ンクの ピアノ 音楽 (1) - ピアノ 教材論 (虹- a). て変ホ長調の完全終止形をなすと同時にアルト声部は変ロ長調, テノール声部は二長調の各々導音~主音に 解決している. この曲は以上の如くに全てが計算された不協音程および複調書法によるという, 20世紀初 期に青春を迎えた若き プーランクの秀れた頭脳による撤密な計算に依拠したものであることが明らかである. 更に総体的にみて単なる飛行機搭乗の気分の描写をなすことなく, 深く文明への心象をほりさげたところに 偉大さがあるものといわねばならないのである‐ (譜例1参照) fconfuoco (燃 え る よう に) とあり, 第 6番 「バ ス でEn Autobus」 は冒 頭 にTrepidant (急い で) 及 びf fec latant (輝 か しく) の 指 示 もあ る‐ 更 に 音 量 に 関 して はT.9, 24, 25, 27, 36 に はf f f T.3 に はf , T‐26 にはf f f fが記されており, 曲全体に常に3連符の分厚な和音が凝っている‐ そのため華麗よりは重厚. の感がつよく, 第2時大戦以前の乗合自動車の朴諭なひびきをおもわせるものがある‐ 全体をとおして和絃 は半音々階的上行と下行をくり返すのみの単調さのなかで並行5度進行が頻繁に用いられているため, 甘さ と美しさはなく, もっ ぱら迫力に満ちた楽想がつ づく‐ 前曲と同じくリ ズムの変化が多く, わずか37小節 の な か で20 回 もの 変化 があ る‐ こ のう ち 4 / 4 ~ 3 / 4 が3 回, 4 / 4 ~2 / 4 ~ 3 / 4 も3 回, 4 / 4 ~2 / 4 が2 回, 1/4 ~ 7/ 8 は1 回, そ し て これ らの 連継が 6 回あ り, き わ め て 頻繁 で ある が, 最初の グル ー プの 順を追 っ てW, ×, Y, Z と して並べ て みる とW- W-W - × -× -Y -Z -× -Y となり, 全 く ラ ンダム と はいえ ない. 形式 を みる と a -b -a’-a - c -b’-a“’で あり, 主題 とその 変 容 か らなる. ’ (5 - 7) a” (8 - 11) a“’ (12 - 16) c (17 一 24) b’ (25 一 27) co‐ a (1 - 2) b (3 - 4) a. da (28~37) という大変小規模なものの集積である‐ a とb は性 格 が似 て い る た め, c 群 以 外 に コ ン ト ラストを強くかんじさせる素材はない. 組成は全てが旋律と伴奏というものであり, 旋律が左手に現れるの 8, 11, 28~9, その他は概ね右手旋律である. 両手があきらかに反進行をなす の はT‐2, 7, 12 ~ 16, 24, 即 ち 左右 共 に和 絃 が 連 続す る 9小節のみである‐ 旋律の形状をみるとa群 は完全5度上行, 増4度下行, 完全5度上行, 増5度上行, 以後半音下行連続, b群は全て順次進行であり, が T‐1 ~ 2, 5 ~ 6,. 短2度下行が圧倒的である. a群の伴奏が短2度上昇的和絃連鎖であるのに対して, b群のそれは短2度下 ’ 降的和絃連鎖であって, 共にイ音とニ音を含む和絃から始まっている. 即ち両者は反進行の関係にある‐ a ’群の旋律の後半 (T 6) は前半の完全5度 群は前半がa群と同じ, 後半は左右共に若干の相違がある. a ‐ ” ’ v a 上の移置形 (音長に変化) である‐ a 群の旋律a 群の後半と同じ音高である (8 basso) が, 伴奏 はイ 音 から半音的に下降する和絃連鎖である. b’群もイ音から左右が始まり, a”群も同じであるが, c群はソ プ ラノ の み がイ 音 で 始ま る. b’群 は a 群, b 群 と 同 じく ニ 音 で 始ま り, Codaの バ スの 開始 お よ び曲 の 最 終 音. ’群と最終がd- f - a で あ り b 群 とb’群 はd -f ’群 とa” もニ音である. 和音は曲頭とa i s- a で 始 ま りa , 群 が a - c - e, c群はe :弾 で始まっ ている. 即ち全 ての群の開始和音にイ音が含まれているのである. T‐1~3, 5~6, 26, 36は平行5度を含む和絃の連鎖, T‐4は平行9度を含む和絃の連鎖的半音移動, 9度を含む和絃はT.1 0の第2拍にもみられる‐ 9度関係はc群の左手T‐20~3 (1/4拍4小節という 忘;ぞ にも用いられている T 30以後では各和絃の音程的緊張が益々 に冠 d 特殊なリズム)≦三石蚕 F;彊c ‐‐ 増 大 し, 伴 奏 の み を み て もT‐30 に は短 9度, T.31と32 に は増 8度, T‐33 ~4 に は長 9~増 9度, T‐35. には長9, 増9, 短9度, T.36には右の和音と左のそれとの間に増8度の 間隔があり, 左右両手が各々に 平 行 5 度 の 連 鎖 的 下 行 形 を含 ん で い る‐ そ の ほ かcodaの 開 始T‐28 ~ 29 の和 絃 が 長 2 度, 増 5度 ・ 4 度,. 増8度,長9度という関係を含み,この曲の結尾句では不協音程が増加することにより, 益々緊張がたかまっ てゆく‐ これらの不協和音と旋律との間にも不協音程が影しく生じており, プーランクの音構造への新しい 着想が生んだ厳しい音楽性は真に注目に価するものといえる. 第 7番. 客 車でBn voi tureは非 常 に 夢幻 的 性 格 を もつ 曲で あ り, テ ム ポ はTres Lent, 表 情 はca lmeと. いう 指 示 で ある‐ 譜 面 は一 件 はなや か で はあ る が, 曲想 はフ ァ ンタ ジー に みち あ ふ れ て い る. わ ず か22 小 371.
(13) . 大. 塚. 夏. 生. /1 6, 3/8, 三表 ≦ き 節の小曲ではあるが拍子の変化が多く, 2/4, 5/8, 5/ , 4/8, 3/8, 4/ 8, 2/4, 2/8, 2/4, 3/4というように目まぐるしく変ってゆく. 自由形式ではあるがA (1~ 4) B (5 ~ 9) C (9 ~ 13) C’ (14 ~ 18) A’ (19~ 21) に 区分 しう る‐ A群はリ ズムと音形はごく 普通のものであるが, 横の流れは前半が全音々階, 後半は半音々階を主軸としている. T.1~2をみると ‐l l 2 l i 2 i l ソ プラノ の g2- f2-dis2-cis2 sl- e , , メ ッ ツ オ ・ ソ プ ラ ノ のes -des - h - a , ア ル ト の b -as -f is- e, バ ス のes-des- H - A な ど全 声 部 が 下 降 的 テ ノ ー ル のes1-des」 h - a, バ リ ト ン の b - as-f. 全音々階からなっている. これに対して後半は下降的半音階がメ ッツォ・ソプラノにあり, 左手伴奏のなか l as- hlお よ び -cis as- の跳躍もあり に b - a1 is e g , g -f , , ,. 更に上下声部間の不協音程も同居して. いて無調性が明らかである‐ A 群 の 2 /4 拍 子 と はう っ て 変 っ て B 群 で は5 / 8 ÷ 5/16 - 3/8と拍子 4分音符と32分音符群が主となっており, が奇数系になる. 音形もまた左右共に一変し, 前半は分散形の6 更に後半では16分音符による近隣音進行が主となっている. 右手のT.5は増4↑ -完 5↓-減 5 ↓, 完 4 ↑ -減 5↓-完5 ↓, 減 8↑-長 2↑-増 8↓-短 9 ↓~中略~長9↓ と いう ユ ニーク な横 の 流 れ があ り, 左手は5連音符, 7連音符などを含み, 進行は右手と8度ずれたユニゾンから始まって長7↓- 短2 ↑-長 7↓ - 減5 ↑~中略~増6↑-増 4 ↓ -短 7 ↓などの音程によっている. ここでは左右が2声対位法に徹 し て おり, T‐6 ~8 も横 の 流 れ が 主 と な っ て い る‐ こ の 後 半, 特 にT‐7 ~ 8 は半 音 下 降の 流 れ が 主 で あ り, 2 詰り l 同時 に鳴る 右 手 はd2- e1-b1-es 和 絃 に は不協 音 程の重 積 が多 い. T‐7の 左 手 はAs-des-ced , ,. 両者共不協和音であり, 更に両者の同時的重合による複合したひ びきの鋭さが際立っており, 次のT‐8も l 1 がT‐ ま た類 似 した和 絃Ges-ces-asと d ‐- c -des の重 積, そ し て 横 へ流 れ る 半音々 階, さ らにT.9 前 半. 7の再現したところでB群は結ばれる. C群はT‐9の後半から始まり, 短2度下降音列を主軸として進む. 2, 15, 17等にも現れるが音関係は1回毎に異っており, またそれに付随する小節 0の づ婦 はT.1 T‐1 も各々個性的である. この楽節もまた不協音程の連続的縦関係とクロマチックな横関係のテクスチュアがよ 2 2- 2 f2- e2-es 」 isL f f み と れ る の で あ る‐ T.10 の 横 関 係 は a2ー as s一 G と い う 各々 半 音 g, , g f , i. 2 2 2 第 2 拍 は C fl es l e2 as 1 l l i 進 行 で あ り, 縦 関係 は最 初 がf i s s , g, T‐ , , , , , , g, f, a, 次 は G, f. 2は前小節 1 1に下降的半音々階が全声部に行き亘っており, 更に装飾音の半音々階的進行も目につく‐ T.1 と形相 は異 っ て い る が, ク ロ マ チ ッ ク な 状 況の 点 で 同様 であ る. C’群 も この 傾 向 は変 る こ とが なく, T‐14. の形状はT‐5にやや似ている. 右手64分音符による分散和音の なかにも半音下降が潜んでおり, f2- e2 2と a 」 asL 1が 不 連続 に 存在 す る その ほかこ の 音 群 に はb h c desが 順不 同に あ っ て 1オ ーes , g , , , ‐. 0音が極めて短い4/8拍子1拍半の間に現れる‐ しかも音程進行が増4 ↑ → 完 5 ↓→完 クター ブの中の1 5 ↓→ 短2 ↑→完 4 ↑→完5 ↓→ 完5 ↓→増4↑→完4↑即ち5度連続下降が2回, 4度連続上昇が1回現. れる‐ これに左のモチーフを加味してみると不協音程による衝撃は烈しい‐ T.15はT.10の変奏であり, T.16 ~ 17 は C群 開 始 のT.9 ~ 10 の 拡 大 的 変奏 形 な の で あ る‐ A’群 のT.19 ~ 20 はT.3 ~ 4 の再 現 であ. り, T.21 3/4拍子のうちの2拍はT‐1の再現である. T‐21の最終拍がC:1で終るのは曲全体からみると 何とも皮肉なことである. 音量配分においては特に激しい対比をおこなう箇処が少く, 全体に安定感がみな ぎっている. (譜例2参照) 第8番. 鉄 道 でBn Chemin de Fe rはハ長調~変ホ長調~ハ長調, アルベ ルティ ・ バスの上に素朴な 田. 舎を走る, 明快で古典的な曲である. i ions 第9番 自転車でA Bicyclet t s eもま た題名 と はか かわり なく 大 変ノ ク タ ー ン風 で あり, lav ◆ obsedant es つ きま とう幻 影 の 音楽 と もいえ そう な 曲想 を かん じさ せ る という 点 に お い て第 1, 4, 5, 6, 7番 と類 似 し て い る. 形式 はA (1 ~ 4) B (5 ~ 8) C (9~ 13) A’ (14 ~ 18) coda (19). 拍 子. 372.
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