「地図をいろどる」授業考 : 増淵恒吉「国語学習記録」から
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(2) 「地図をいろどる」授業考. 際に活用している。『増淵恒吉国語教室の実際』には、都立日. ── 増 淵恒吉「国語学習記録」から. 佐 野 比 呂 己 . 都立日比谷高等学校時代の国語学習記録(DVD─ROM) 』(山. 比谷高等学校での「国語学習記録」が学習者の手によって記さ. 一 鏑木清方の随筆「地図をいろどる」を教材として扱っ 本稿は、 た増淵恒吉の「国語学習記録」を検討、考察を加えようとする. できわめて貴重な資料である。そこには、「柳田高校教科書」. 本義美、世羅博昭編著 渓水社)が刊行された。増淵は「柳田 高校教科書」の編集者の一人であり、 「柳田高校教科書」を実. ものである。. を活用した授業における「国語学習記録」も残されているので. れている。当時の増淵の国語教室、国語科授業の実際を知る上. 稿者は、これまで柳田国男監修高等学校国語科教科書(以下 「柳田高校教科書」と略す)所収教材について研究を積み重ね. ある。. 「柳田高校教科書」は、柳田を監修者として、編集委員とし て大藤時彦、中島武雄(日本女子大学)、増淵恒吉(都立日比. 1. 教員が自身の国語教室において、実際にそれらの教材を活用し. てきた。加えて、稿者の研究をベースに多くの高等学校国語科 て授業を展開し、時代を経ても有効性のあることを検証してき 2. た。. 究所)が編集にあたっている。. 員である。. 編集委員のうち大藤は小学校用、中学校用教科書の編集委員 でもある。また、中島、増淵、鎗田は中学校用教科書の編集委. 谷高等学校)、鎗田亀次(旧第一高等学校)、林大(国立国語研. 一方で、教科書発行当時、柳田高校教科書を活用して、実際 にどのような国語教室が営まれてきたのか、どのような授業が 展開されてきたのかについては、資料収集が及ばず、考察、検 討できずにいた。 『増淵恒吉国語教室の実際 平成二十六年(二〇一四)七月、. - - 13.
(3) 小中学校用教科書と高等学校用教科書における編集の差異に ついて杉本仁は次のように述べる。. 版 東 京 書 籍 ) に 所 収 さ れ て い る。 「地図をいろどる」は、柳. 田高校教科書の「一 随筆・随想」に置かれた教材である。こ の単元の教材配列は次の通りである。. 陣頭指揮をとり、 「柳田は高校教科書の編集に異常な情熱. 三 地図をいろどる(鏑木清方). 二 大蛇・小蛇(片山広子). 一 浅春随筆(栃内吉彦). をもち、教科書の基本方針を述べるにとどまらず、教材に. この教科書づくりは、小中学校のそれが岩渕悦太郎を実 務的中心とした編集体制であったのに対し、柳田みずから. ついても具体的に指示し、自らも素材を積極的に委員会に. . 四 かみなりさま談義(東条操) 五 ろくをさばく(三淵忠彦) . 3. 筆者・鏑木清方について、原典『蘆の芽』について、 「地図 をいろどる」については、稿者が別稿において詳細に述べてい. 提出した」 小中学校用教科書が岩淵を中心とした編集であったのに対 し、高等学校用教科書は柳田が中心となって編集したものであ. るので、ご参照いただきたい。. 尚、これは、『増淵恒吉国語教室の実際 都立日比谷高等学 校時代の国語学習記録(DVD─ROM)』 (山本義美、世羅博. 増淵の「地図をいろどる」の「国語学習記録」をここに提示 する。. 二. 「教材「地図をいろどる」考⑴」 また、教材本文についても、 ( 『釧路論集』第四十二号 北海道教育大学釧路校 平成二十 二年(二〇一〇)十二月 一─一四頁)の稿末に附しているの で、ご参照いただきたい。. 5. るとしている。そういった意味では高等学校用教科書は柳田の 考えが最も反映していると考えられる。 「柳田中学校教科書」及び「柳田高校教科書」編集 増 淵 が、 にあたっていることに注目したい。当然、編集の際に柳田の生 の声を聞くわけであるから、国語教室の実践者としてある程度 は柳田の考えを自身の国語教室で具体化したことであろう。 、増淵の国語教室の実際についての考 「国語学習記録」から 4 察は、世羅博昭の研究があるが、本稿で取り上げる「地図をい ろどる」についての分析、検討はなされていない。 『国語 高等学校一年上(高等学校 「地図をいろどる」は、 第一学年前期用) 』 (柳田国男監修 昭和三十年度(一九五五). - - 14.
(4) 昭 編 著 渓 水 社 平 成 二 十 六 年( 二 〇 一 四 ) 七 月 ) 〈 17-S31 〉からダウンロードしテキスト化したものである。 13room.pdf 【 】内の数字はページ番号を示す。 東京都立日比谷高等学校・昭和三十一年度(一九五六)一年 三組の「国語学習記録」である。一年一組、四組の「国語学習 記録」もあるが、 「地図をいろどる」については記録が見られ ない。 単元最後に配置された「ろくをさばく」に附された「問題」. 7. に「三 ここに掲げられた五編の、文章上の特徴をそれぞれ述 6 べ、比較してみよ。 」とある。この「問題」については一年一組、. 【1】. ろどる」を学習した形跡がうかがえる。. 四組ともに「国語学習記録」にその記録が見られ、「地図をい. . 出しなさい。」. (ママ). ──十分経過──先生は黒板に助詞についての問題を書 いていた──. 林「十六頁の五行目の静脈と動脈とこもごも通えるにも似. T「じゃあ文語的表現の所を一つづつ出して下さい。」 たという所」. T「この通えるは、文語になると通へると書くんです。し. かし口語になると「通っている」となりますから、いい ですね!」. 秋山「同じ行の下の方にある(ごとき)なんかそうじゃな いですか」. T「うんこれもそうだね、ごときというのを口語で言った らどうなるか」. 4. 4. 4. 4. 4. 4. 4. 4. 4. 4. 皆「~のような」 T「他には」 石田「十七頁一〇~一一行目にある、 低きについて流るる」 4. T「流れるが口語だからね」 久保田「へん舟にさいて」. 河村「おさなげ」→十六頁七行目. 石丸「十七頁の一〇行目の低きは」 T「口語でいうと」. 五月一日 第三時限 (火) . 皆「低い所」. (ママ). 記録者 川口 ・最初に先生が先週休んだのでどこまで進んだかを聞いた。 (ママ). ・「地図を色取る」の所を担当したはんが自習時間にも、 普通通りに発表を進めたのでほめられた。. 4. T「これは口語だよ」 4. 「受業内容」. 井出「十九頁八行目のあしのいおり」. (ママ). T「地図をいろどるの所で文語的表現と思われる所をぬき. - - 15.
(5) (ママ). 4. 4. 4. 4. 4. 4. 4. 4. T「特に文語的表現とは、いえないが、口語では、余り使 (ママ). われないな」 根本「二十 頁 行目 危うし」 T「うん たしかにそうだね」. 【2】 (ママ). T 「十七頁十三行目 宇宙のおのずからにして──」 T「そうだ」 4. 4. 4. 秋山「二十一頁の四行目のさのみ──」 (ママ). 4. 4. 4. 4. 4. 4. 北沢「二〇頁の五行目 もう少しのせば」 T「ちょっとちがう、これは、もう少し足をのばせば、と (ママ). いう事ですよ」 4. 4. 4. 4. 4. 久原「十八頁の十二行目の青あしのびて」. 4. 4. 4. T「いいね、あしとのびての間に助詞がないんだよ」 今田「うかべる」 4. T「これは、 ちがうよ、 文語になるとうかぶるとなります」 T「では黒板の問題に行きましょう」 (黒板の問題とは) ・次の助詞の「の」は、どういう助詞か. (ママ). 迂. 1 「わずかに水のある所を明かにしただけで」 2 宇宙のおのずからにしてなるものは. 3 ──美しさをたたえるの 4 小梅だの 亀井戸だの. もある 以上. (ママ). 5 江戸のいわゆる遊民 ない 6 滞りだのの. 「主格を表します」. (ママ). 7 鳥のように見える の T「誰か?」. 4. 4. T「うん、主語を表す格助詞ですね。 」「次は」 す」. 森「宇宙の──ものとなりものを修飾する連体修飾語を表. T「その他に意見はありませんか」 か」. 【7】 4. 4. 4. 4. 4. 4. 4. 4. 4. 4. 4. 4. 秋山「宇宙のといって、限定をするものでは、ありません. . 4. 「これは意味をくわしくして限定するとおぼえなさい」. (ママ). 4. 4. 4. 4. 4. 4. 4. 4. 4. 4. T「たとえば、先生という語がある時、先生といえば色々な. 所の先生がある。しかし、これを学校の先生 日比谷の先. - - 16. 15.
(6) 4. 生という風にもって行けば、意味が限定され、又くわしく (ママ). 」 なるでしょう。こうゆう時にこの助詞を使うのです。 4. 4. T「三番目の問題は、これはちょっとむずかしいかな」 か 、. (ママ). 安 井「 こ の の は、 事 と お き か え る 事 が 出 来 る の で は な い. に準ずる働きをする助詞を準体助詞といいます」. T「この場合はちがう、七の問題がそうで、この様に体言 T「次は、五をやりましょう」. 「感想」1今日は六十分授業であった事もあるが、脱線を 随分したので時間が短い様な気がした。. 【8】. でもそうですが、大体において、 五~七分位おくれます。. 2僕がいつも思っている事をここでいいます。どんな先生. そして、最後にサイレンが鳴ってからも数分間授業の終. 加藤「これは、 江戸の遊民となり、 連体修飾語を表します」 T「このいわゆるとは、 」. 4. 4. 4. 4. 終り. (注)名前の判らない時は(皆)ということにしました 4今日の風は、随分授業の妨げとなった。. 記録する時名前が判らないからです。. 上 げて立ってから発表して下さい。それは、こちらで. (ママ). 3 そ れ か ら、 生 徒 に 願 い た い 事 は、 発 表 の 時 は 必 ず 手 を. に終りにすれば、それでも大いに喜びます。. らいたいと思います。生徒は、サイレンの鳴る前十秒前. です。ですから、なるべくだったらサイレンと同時に来. りがおくれます。生徒は、この数分間がとてもいやなの. (ママ). 4. 河村「いっぱんにいうという意味」. 4. て数分前に終らせなくても良いから、ぴったり終っても. 4. T「六は 何 んだい」 皆「一と同じです」 (ママ) T「四は 何 んですか」. (ママ). 4. 今田「これは、小梅だの亀井戸だのという風に並べて並列 を表す」 T「では、三番目の問は何だろう」. 4. (皆余り手を上げないので、先生が答えた。」 T「これは、連体修飾語を表す格助詞なんだが迂とたたえ 意味をせまくしてくわしくする役目をしています」. るが同格でたたえるというばからしさという意味になり. (ママ). 「終り」 さま 「HW」1「かみなり様談義」と「ろくをさばく」の所の 文を解釈出来る様にして来る事 (ただし 個 有名詞を除く). - - 17.
(7) 手賀沼(てがぬま). する。 【3】. 千葉県東葛飾郡、印旛郡にまたがってある東西に長く 横たわっている沼。東西 ㎞南北一㎞余、湖岸延長三十. 種の展覧会に出して名声が上ったがさし絵や版画の研究. 日本画家、名は健一、東京神田に生まれ浮世絵派の水 野年方について、風俗画美人画を得意とした。文展や各. 増すので、遊りょう家が多く集まる。秋の利根川増水期. 育して、ナマズ、フナ、ウナギが多くいて冬期水かさが. 東端より流れ出し木下川となり利根川に注ぐモがよく生. 五㎞、面積十二、二㎢、深度三m、水温夏. ℃冬2℃土. 国語研究資料. も積んでおり、 随筆等でも有名である。現在芸術院会員、. には水が逆流して氾らんするので湖岸には人家が少な (ママ). 「我孫子」千葉県の北端(下総東葛飾郡)の町。手賀沼の. 道の一宿駅である。この付近は藤花の名所である。. 「粕壁」埼玉県東部の古利根川右岸低地にある町。陸奥街. 国語研究資料⑶. 【6】. 地の沈降と利根川の沖積作用により形成された沼。水は. 絵はどれも人物を主とした情趣豊かなさわやかなもの. い。近頃水 間 が出来て氾らんを防いでいる。. 鏑木清方(一八七八~). で、代表作には『築地明石町』や『三遊亭円朝』などが ある. 【5】. 牛久沼(うしくぬま). 国語研究資料(二) . 北にあり常磐線、成田線の分岐点。. 「向島」東京の西部隅田川と荒川放水路に北を限られる三. 茨城県南部の湖沼。稲敷、筑後の郡界に横たわり、南 北八㎞東西 ~1㎞、北方原野の水これに注ぎ、湖の西 南に徳右衛門新田附近の沢沼地を伴い南方小具川に排. 角地帯をなし、西北は隅田川を隔てて荒川区に対し東北. - - 18. 30. 13. 水、東南龍ヶ崎町方面の新田は此湖沼の水を引いて灌漑. 0.5.
(8) 【6】の「国語研究資料」は使わ また、本時では【3】【5】 れた形跡がない。前時に使われたものであると推測できる。筆. は荒川放水路を隔てて葛飾区に対し、南は江戸川区に接 している。京成電車、東武電車が通過しており、紡績、. 料である。どのような形で資料を活用したかは不明である。. さて、本時の授業内容は、次の二点に集約できる。. 者・鏑木清方について、本文中にある地名について調査した資. モスリン、車輪、製鉄 電線、ゴムなどの大工場を始め 多数の工場が密集している。 「亀井戸」東京都郊外の町。東は荒川支流を隔てて江戸川. ① 本文中の文語的表現の抜き出し、確認。. 区の一部に、北は向島に、西は本所に接している。中川 及び荒川の三角州上に発展した工場地帯で、日立製作所. ② 助詞「の」の意味・用法についての確認。. (ママ). ① 本文中の文語的表現の抜き出し、確認。. いずれについても、稿者の「教材「地図をいろどる」考」で 9 は、十分に考察、検討を加えていない内容である。. その他の工場が多い。西北部に藤の名所亀井戸天神があ る。総武本線、東武鉄 通 、亀井戸線が通過している。. 三 8. 増淵は学習者に次のように指示する。. 国語科の授業は週一─二回行われていた。 、 「大蛇・小 「地図をいろどる」に取り組む前に「浅春随筆」 蛇」に取り組んでいることを考え合わせれば、「地図をいろどる」. 「地図をいろどるの所で文語的表現と思われる所をぬき出 しなさい。」 【1】. また、文語的表現に着目させることによって、文語的表現の. うかがえる。. そして、学習者に十分間の時間を与えるのである。文語的表 現を意識するとともに、自然と本文を通読させるという意図が. の授業は二─三単位時間分を要したと考えられる。 にあたる。 本時は、その最終時 (ママ) (ママ) 「 「地図を色取る」の所を担当したはんが自習時間に 前時は、 も、普通通りに発表を進めたのでほめられた。 」 【1】にある通 り、班によるレポーター形式で授業が進んだことがわかる。 【7】であり、本来の百分授業 また、本時は「六十分授業」 より四十分短縮した形で授業は行われた。. - - 19.
(9) リズム感、語感、効果、口語的表現との相違を理解、確認させ. 六 いくつかの段落から出来ている長い文章の構想の展開 を把握し、その要旨を把握する能力. . 問題解決のために、読まれた思想を組織し役だたせる 七 能力. ることができるであろう。 『天草版平家物語』 、 『浮世床』 、 『い 「柳田高校教科書」には、 ぶきおろし』 、 『鳩翁道話』 、 『醒睡笑』 、 『おあん物語』など古典. 八 読まれたものを識別し批判する能力. この八つの能力の中で、「ことばを発音したり、その意味を とらえたりする能力」について、次のように述べている。. . 教材として口語資料が多く所収されている。古典から口語的表 現に着目させようというねらいがここにある。 現代文では文語的表現に、古典では口語的表現にそれぞれ着 目させることは日本語そのものを考える意味がある。加えて、. 文章のだいたいの意味を、おおざっぱに把握しようとす とするならともかく、 文章を正確に読みとろうとするには、. 現代文におけるそれは、筆者の表現の巧みさを知ること、効果 について意識することにつながるものである。. 文章の中の難読文字や難解文字を解決しておかなければな. らない。これは語い能力とみることができるであろうが、. ② 助詞「の」の意味・用法についての確認。 増淵は「読解力の分析」の中で、自身の国語教室において実 践している読解力の指導から、読解力の要素を述べている。大 きく次の八つの能力を示している。. この能力は、さらにつぎの諸要素に分析できよう。. 三 文の組立てを理解する能力. 二 ことばを発音したり、その意味をとらえたりする能力. b 辞書を引く能力. a 自己の経験とことばとを結びつける能力. 文章を正確に読み取るためには語彙能力が必要であり、語彙 能力は、さらに七つの要素に分類できるとしている。. 指示することばが文中の何をさしているのか指摘でき 四 る能力 五 段落の文章を要約する能力. c ことばの意味を文中に定着させる能力 d ことばの構造や漢字の構造より新語を類推する能力 e 助詞・助動詞の文中における職能・意味を理解する . 一 文章の内容のだいたいを把握する能力. 11. - - 20. 10.
(10) 能力 それぞれの学年に応じて相当数の語いを所有する能 f 力 g ことばを文に使用できる能力 それぞれの能力について、解説を加えているが、特に詳細に 述べている項目が「e 助詞・助動詞の文中における職能・意 味を理解する能力」である。読解力との関連について次のよう に述べている。 助詞・助動詞の意味・用法に熟達することは、いわゆる 文法力を身につけることなのであろうが、 文法といっても、 助詞・助動詞というのは、語論に関することである。だか. いて着目し、その意味、職能を本文から学習者に考えさせてい る。. 増淵は、格助詞「の」を含む連体修飾に関して強い関心を示 す。 「連体修飾論序説」(『専修国文』第五号 専修大学国語国. 文学会 三六─六〇頁 昭和四十四年一月)では連体修飾につ いて詳細に分析・考察を加えている。. 増淵は、連体修飾の中でも、格助詞「の」については強い関 心を示している。. ( 『 増 淵 恒 吉 国 語 教 育 論 集 下 巻 例 え ば、「 現 代 語 法 の 指 導 」. 文法指導論・表現指導論』有精堂 昭和五十六年(一九八一) 三月)では、「語彙」の項の中で、助詞・助動詞の文中におけ. の中で、特に筆者が重く見ているもののみについて以下、. 文法書で取り扱われる助詞・助動詞のすべてが「現代国 語」における読解学習に生かされるわけではない。それら. る用法を挙げ、次のように述べている。. を増すことになると考えてよい。文章中に助詞や助動詞の. ら、助詞や助動詞について違いを深めることは、語いの力 用いられる頻度数は極めて高く、その意味や用法を知って. 述べてみよう。. 読解学習に生かされる六つの助詞・助動詞を取り上げ、その 最初に「1 連体修飾格を表す格助詞 の 」 について解説を加. いることが、経済的に読解力をつけることになり、また表 現力を高めることにもなる。. 文章中に助詞・助動詞の用いられる頻度数は極めて高い。そ の意味や用法の特質を知ることは読解力を高めることにもなる というのである。. えている。. また、「読解指導における文法的取扱い」( 『増淵恒吉国語教 育論集下巻 文法指導論・表現指導論』有精堂 昭和五十六年. - - 21. 14. 12. 「地図をいろどる」の授業の中で格助詞「の」につ 増 淵 は、. 15. 13.
(11) 師側で、知っておいてよいのではないか、というものばか. れらは児童・生徒に覚え込ませるというものではない。教. 確かな国語科教育を目ざすための、読解指導における文法 的取り扱いについて、実例をあげながら述べてみよう。こ. (一九八一)三月)では、冒頭に次のような記述がある。. は、更なる検討が必要である。. 入する場合にはどのような配慮が必要かという点について. 高等学校段階ゆえに、これらの文法的考察を比較的容易 に導入できたかもしれないが、それを小・中学校段階に導. いて次のように述べている。. 高等学校では容易に導入できたとしている。 しかし、 「3 ─美しさをたたえるの迂」の設問について、 増淵は学習者に対し「三番目の問題は、これはちょっとむずか. りである。 (一)格助詞「の」 」に 文法的事項を六つあげ、その第一に「 ついて解説を加えている。. 一方で、授業の中で「地図をいろどる」の読解と取り上げた 表現、事項と関連させながら学習させたかについては「国語学. 文語的表現や助詞「の」を取り上げ、その意味、文章におけ る効果等を考えさせる授業であったと言えよう。. 以上、「地図をいろどる」を教材として扱った増淵恒吉の「国 語学習記録」について検討、考察を加えてきた。. 四. 難しさを感じずにはいられないものである。. を混乱させてしまう」ものであった。文法的事項の取り扱いの. とあり、東京都立日比谷高等学校の学習者をもってしても「頭. しいかな」【7】との発言も見られる。結局は学習者の反応も. 芳しくなく「皆余り手を上げないので、先生が答えた。 」 【7】. 18. 増淵は、 こういった学習の留意事項について、「読解力の分析」 の中で次のように述べている。 もちろんこのような意味・用法を、子どもたちに教える 必要はない。いや、教えることによってかえって、子ども たちの頭を混乱させてしまうであろう。しかし、読解力と いうものは、こうした点にまでの理解が進めば進むほど向 上するものであることを、自然に子どもの心に植えつけて. 山室和也は増淵の高等学校における文法教育の取り組みにつ. 文章の読解にとって、文法的事項の理解がその向上につなが るものであることを意識させることの重要性を述べている。. おきたいと思う。. 17. - - 22. 16.
(12) 習記録」からは稿者は見出せなかった。復習等で意識した学習 者もいることであろうが、多くの人数ではないだろう。 しかし、単元全体にわたる学習、一年間にわたる学習を大き くとらえた上でなければ、その関連については述べることはで きない。 今後、「国語学習記録」から増淵の授業を追いながら、増淵 の読解指導をトータルにとらえていきたいと考える次第である。. 注 1 「教材「浅春随筆」考」 ( 『釧路論集』第三十九号 北海道 教育大学釧路校 平成十九年(二〇〇七)十一月) 一─一 三頁 『北海道教育大学紀要』 (教 「教材「ろくをさばく」考⑴」 育科学編)第五十九巻第一号 平成二十年(二〇〇八)八月 一─一六頁 『釧路論集』第四十号 北海 「教材「大蛇・小蛇」考⑴」 道教育大学釧路校 平成二十年(二〇〇八)十一月 一─一 一頁 「教材「大蛇・小蛇」考⑵」 『北海道教育大学紀要』 (教育 科学編)第五十九巻第二号 平成二十一年(二〇〇九)二月 一─一六頁 『北海道教育大学紀要』 (教 「教材「ろくをさばく」考⑵」 育科学編)第六十巻第一号 平成二十一年(二〇〇九)八月 . 一─一六頁. 「 教 材「 ろ く を さ ば く 」 考 ⑶ 」『 釧 路 論 集 』 第 四 十 一 号 北 海 道 教 育 大 学 釧 路 校 平 成 二 十 一 年( 二 〇 〇 九 ) 十 二 月 一─一一頁. (教 「教材「ろくをさばく」考⑷」『北海道教育大学紀要』 育科学編)第六十巻第二号 平成二十二年(二〇一〇)二月 一─一四頁. 「教材「ろくをさばく」をめぐって」『国語論集7』北海 道教育大学釧路校国語科教育研究室 平成二十二年(二〇一 〇)三月 六─三五頁. (教 「教材「ろくをさばく」考⑸」『北海道教育大学紀要』 育科学編)第六十一巻第一号 平成二十二年(二〇一〇)八 月 一─一五頁. 『釧路論集』第四十二号 「教材「地図をいろどる」考⑴」 北 海 道 教 育 大 学 釧 路 校 平 成 二 十 二 年( 二 〇 一 〇 ) 十 二 月 一─一四頁. 一─一六頁 . 『北海道教育大学紀要』(教 「教材「ろくをさばく」考⑹」 育科学編)第六十一巻第二号 平成二十三年(二〇一一)二 月. 「浅春随筆」をめぐって」 『国語論集8』北海道教育大学 「 釧 路 校 国 語 科 教 育 研 究 室 平 成 二 十 三 年( 二 〇 一 一 ) 三 月 一九七─二二七頁. 『北海道教育大学紀要』(教 「教材「ろくをさばく」考⑺」. - - 23.
(13) 育科学編)第六十二巻第一号 平成二十三年(二〇一一)八 月 一─一四頁. 『国語論集 』北海道 「教材「かみなりさま談義」考⑶」 教育大学釧路校国語科教育研究室 平成二十六年(二〇一四). 『釧路論集』第四十六 「教材「かみなりさま談義」考⑷」 号 北海道教育大学釧路校 平成二十六年(二〇一四)十二. 三月 六七─七六頁. 号 北海道教育大学釧路校 平成二十三年(二〇一一)十二 月 一─一四頁. 月 一─一〇頁 2 花坂歩「古典における探求活動及び評価の実践」『国語論. 『釧路論集』第四十三 「教材「かみなりさま談義」考⑴」. 『北海道教育大学紀要』 (教 「教材「ろくをさばく」考⑻」 育科学編)第六十二巻第二号 平成二十四年(二〇一二)二. . 月 一─一三頁 「教材「地図をいろどる」考⑵」 『北海道教育大学紀要』 (教 育科学編)第六十三巻第一号 平成二十四年(二〇一二)八 . 三月. 『国 大村勅夫「読解の深化に向けた「大蛇・小蛇」の授業」 語論集9』北海道教育大学釧路校国語科教育研究室 平成二. . 十四年(二〇一二)三月 三四四─三四九頁 谷口守「授業「大蛇・小蛇」実践と考察」『国語論集 』 北海道教育大学釧路校国語科教育研究室 平成二十五年(二 二七三─二七八頁 〇一三)三月. 『国語論 増子優二「「浅春随筆」に於ける表現指導の研究」 集 』北海道教育大学釧路校国語科教育研究室 平成二十五. 年(二〇一三)三月 二七九─二九〇頁 花坂歩「読みにおける「転移」と「想起」 」『国語論集 』 北海道教育大学釧路校国語科教育研究室 平成二十五年(二. - - 24. 11. 集9』北海道教育大学釧路校国語科教育研究室 平成二十四 年(二〇一二)三月 三二三─三三五頁 太田幸夫「 「大蛇・小蛇」授業実践」 『国語論集9』北海道 教育大学釧路校国語科教育研究室 平成二十四年(二〇一二) 三三六─三四三頁. 月 九─二一頁 『北海道教育大学紀要』 (教 「教材「地図をいろどる」考⑶」 育科学編)第六十三巻第二号 平成二十五年(二〇一三)二 月 一─一六頁 『国語論集 』北海道教 「教材「地図をいろどる」考⑷」 育大学釧路校国語科教育研究室 平成二十五年(二〇一三) 三月 七九─九七頁 『釧路論集』第四十五号 「教材「地図をいろどる」考⑸」 北 海 道 教 育 大 学 釧 路 校 平 成 二 十 五 年( 二 〇 一 三 ) 十 二 月 . 10. 10. 一─九頁 「教材「かみなりさま談義」考⑵」 『北海道教育大学紀要』 (教育科学編) 第六十四巻第二号 平成二十六年 (二〇一四) 二月 一─一五頁 . 10. 10.
(14) 〇一三)三月 二九一─二九九頁. 』北海道教育大学釧路校国語科教育研究室 平成二十六年. 』北海道教育大学釧路校国語科教育研究室 平成二十六年. 谷 口 守「 授 業「 ろ く を さ ば く 」 実 践 と 考 察 」『 国 語 論 集. (二〇一四)三月 二三五─二四二頁. 11. 大村勅夫「文章構成に着目させる単元の提案」『国語論集 』北海道教育大学釧路校国語科教育研究室 平成二十六年. (二〇一四)三月 二四三─二五三頁. 11. 「浅春随筆」の授業」 『国語論集 』北海道教育 菅原利晃「 大学釧路校国語科教育研究室 平成二十五年(二〇一三)三 月 三〇〇─三一四頁 『浅春随筆』の教材としての可能性」 『国語論集 太田幸夫「 』北海道教育大学釧路校国語科教育研究室 平成二十五年. 十六年(二〇一四)三月 二〇五─二一八頁 『国語論集 花坂歩「間テクスト性に着目した学習材開発」. (二〇一四)三月 二五四─二五九頁 菅原利晃「栃内吉彦「浅春随筆」と小島烏水『日本山水論』 」 『国語論集 』北海道教育大学釧路校国語科教育研究室 平 成二十六年(二〇一四)三月 二六〇─二六五頁 杉本仁『柳田国男と学校教育』梟社 平成二十三年(二〇 . 3. 一一)一月 二六三頁. 4 「都立日比谷高校時代における増淵恒吉国語科授業記録の 研究」 (『全国大学国語教育学会発表要旨集』全国大学国語教. 育学会 第一二五集 平成二十五年(二〇一三)十月 五五 五八頁)など。. 月 九─二一頁. 「教材「地図をいろどる」考⑵」 『北海道教育大学紀要』 (教 育科学編)第六十三巻第一号 平成二十四年(二〇一二)八. 一─一四頁. 5 「教材「地図をいろどる」考⑴」 『釧路論集』第四十二号 北 海 道 教 育 大 学 釧 路 校 平 成 二 十 二 年( 二 〇 一 〇 ) 十 二 月 . -. 』北海道教育大学釧路校国語科教育研究室 平成二十六年 (二〇一四)三月 二一九─二二七頁 太田幸夫「教材「ろくをさばく」実践に関する考察」 『国 語論集 』北海道教育大学釧路校国語科教育研究室 平成二 十六年(二〇一四)三月 二二八─二三四頁 井 口 貴 美 子「 『ろくをさばく』授業実践報告」 『国語論集. . - - 25. 11. (二〇一三)三月 三一五─三二〇頁. 『国 菅原利晃「教材「大蛇・小蛇」を用いたグループ学習」 語論集 』北海道教育大学釧路校国語科教育研究室 平成二. 一三)三月 三二六─三三五頁. 10. 11. 11. 11. 10. 『国 大村勅夫「豊かな読解の力の育成に向けた単元の提案」 語論集 』北海道教育大学釧路校国語科教育研究室 平成二 十五年(二〇一三)三月 三二一─三二五頁 谷口守「授業「浅春随筆」実践と考察」 『国語論集 』北 海道教育大学釧路校国語科教育研究室 平成二十五年(二〇 10. 10. 11.
(15) 『北海道教育大学紀要』 (教 「教材「地図をいろどる」考⑶」 育科学編)第六十三巻第二号 平成二十五年(二〇一三)二 月 一─一六頁 『国語論集 』北海道教 「教材「地図をいろどる」考⑷」 育大学釧路校国語科教育研究室 平成二十五年(二〇一三) 三月 七九─九七頁 『釧路論集』第四十五号 「教材「地図をいろどる」考⑸」 北 海 道 教 育 大 学 釧 路 校 平 成 二 十 五 年( 二 〇 一 三 ) 十 二 月 . 〉 【7】 pdf 8 「国語学習記録」における授業日の記載から推測できる。. 『国語論集. 』北海道教育大学釧路校国語科教育研究. 佐野比呂己「柳田国男監修高等学校国語科教科書 「国 語学習記録」目録 ─『増淵恒吉国語教室の実際』から」. 月. 「読解力の分析」 「読解力の分析」 「読解力の分析」 . . . 一〇四─一一八頁) 注 注. . . 注. . . . 一〇七頁. 一〇七頁. 一〇九頁. 「国語教育史の人びと 増淵恒吉②古典教育・文法教育. 「戦後文法教育史における増淵恒吉の文法教育論─文法 研究との関わりと文法教育論の分析を中心に─」 ( 『国語. における業績」( 『月刊国語教育』第四巻第五号 東京法 令出版 昭和五十九年(一九八四)八月 二一─二二頁) また、山室和也も増淵の文法教育論の特徴の一つとして、 「連体修飾の分析」をあげている。. . 「国語学界に 長 尾 高 明 は 連 体 修 飾 に 関 す る 論 考 に つ い て、 おいてもこの種の研究では最も詳細な論である。 」 としている。. . . 〈国語 増淵恒吉「読解力の分析」(『読むことの学習指導』 教育実践講座第二巻〉牧書店 昭和二十八年(一九五三)七 . 9 注5. 室 平成二十七年(二〇一五)三月 四三─四八頁). 12. 科教育』第七十集 全国大学国語教育学会 平成二十三. - - 26. 一─九頁 6 『国語 高等学校一年上(高等学校第一学年前期用) 』 (柳 田国男監修 昭和三十年度(一九五五)版 東京書籍 三三 頁). 17-S31 11room.. 7 『増淵恒吉国語教室の実際 都立日比谷高等学校時代の国 語 学 習 記 録( D V D ─ R O M ) 』 ( 山 本 義 美、 世 羅 博 昭 編 著 渓 水 社 平 成 二 十 六 年( 二 〇 一 四 ) 七 月 ) 〈 〉【4】 pdf. 17-S31 13room.. 『増淵恒吉国語教室の実際 都立日比谷高等学校時代の国 語 学 習 記 録( D V D ─ R O M ) 』 ( 山 本 義 美、 世 羅 博 昭 編 著 渓 水 社 平 成 二 十 六 年( 二 〇 一 四 ) 七 月 ) 〈 . 17-S31 14room.. 10 10 10. 10. 14 13 12 11. 10. 〉【 ─ 】 pdf 『増淵恒吉国語教室の実際 都立日比谷高等学校時代の国 語 学 習 記 録( D V D ─ R O M ) 』 ( 山 本 義 美、 世 羅 博 昭 編 著 31. 渓 水 社 平 成 二 十 六 年( 二 〇 一 四 ) 七 月 ) 〈. 30.
(16) 年(二〇一一)九月 九五─九六頁 ( 『増淵恒吉国語教育論集下巻 文法指 「現代語法の指導」 導論・表現指導論』有精堂 昭和五十六年(一九八一)三月). 二九頁 ( 『増淵恒吉国語教育論 「読解指導における文法的取扱い」. 集下巻 文法指導論・表現指導論』 有精堂 昭和五十六年(一 九八一)三月)七六─七七頁 注 「読解力の分析」 一〇九頁 注 山室論文 九八頁 . . 究成果の一部である。. 15K04470の研. ※本稿は、引用に際し、適宜旧字を新字に改めた。. 附 記. 14 10. ※本稿は、JSPS科研費・基盤研究. - - 27. 15 16 18 17. C.
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