油中交流沿面コロナ図形について
金丸春雄
牧尾雄亮
(昭和42年8月31口受理)
On the Lichtenberg's Figure of Surface Corona Discharge in Oil
HaruoKANEMARU YusukeMAKIO
Synopsis In・t・dyi・g the elect・i・d・・t・u・ti・n・f liq・id in・ul・t…th・・t…ture・f it・d・・t・uc・ ti。n diff。。, acc・・ding t・th・kind・f・upPlying v・lt・g・, P・1・1ity・・nd th・m・th・d・f th・・upPly・f・・lt・g・,・・m・ly th・tim・・f・upPly and th・a・cent・at・・f・・lt・ge・ 1。thi・p・per, w・h・v・・earch・d f・・th・i・fl・・nce・f th・tim・・f・upPly・n th・ breakd・wn v・lt・g・・n th・・u・face di・ch・・g・in・il wh・n w・・upPly・・lt・g・・f b・・iness cycle. And also we examined the difference between the figure of alternating current and positive figure of direct current in oil・ Then neither of them are twig−shaped figures, but both of them are mist−like and trunk−like figures. By the elect・i・di・ch・・g・figure, w・h・ve expl・i・・d th・t th・di・ect・urrent di・ch・・g・ on the surface is defensive against corona but the discharge figure in alternating current is a trunk_like figure with ring−like figure around it and this ring_1ike part developes, throws a bridge betwcen electrodes, and leads to the breakdown.1.緒
言 液体絶縁物の破壊理論は従来の諸説を要約して, 1)熱的破壊 2)衝突イオン化による破壊 であると言える。しかしながらいずれの場合にしろ液 体誘電体の局部破壊(partial breakdown)または 全路破壊(complete breakdown)への直接原因と なるべき誘電体の物性的諸要素の外にわれわれは高電 界の場それ自身の状態が破壊の可否あるいは難易を支 配することを知る。 また事実多くの実験結果がこれを示唆している。 この電界の場を支配する条件の一つとして仮りにこ れを電圧の印加方法と呼ぶならば被絶縁油の電気的絶 縁破壊を誘発すべき高電界,換言すれば電圧の印加法 について供与電界の種類以外に1)電位の時間的変化 と2)印加中時間の長短とが考えられる。 ノ 前者は電圧の周波数,上昇率,および電源の開閉動 作等を意味するものである。後者の場合は特定電圧の 印加保持時間を意味する。かような印加時間の長短に よる液体絶縁物の破壊現象はまた機械的にも別のもの であると同時に,実際的問題にもつながるものである と考えられる。 印加時間対破壊促進の関係を写真乾板を利用した油 中リヒテンベルグ図形 (lichtenberg’s fiqure) よ り求めた。前回1)報告した直流電圧印加による油中沿 面コロナ放電図形,主として直流正性図形の沿面伸展 特性に対し本稿は商用周波数の交流電圧印加を行ない 時間特性とかつ実験より得たる放電図形とにつき,両 者の比較を行ない,もって絶縁破壊への一卑見を述べ る。 2.油 中 図 形 一般に絶縁性ガスを含む気体または高い抵抗値を持 つ液体絶縁物の絶縁破壊の研究に,放電図形を利用す ることは一つの方法である。図形の撮り方は基本的に 一89−・一:・Table l Classification of discharge figure t) _ field
\\
\\、 voltage figure \ Dust figure of surface discharge T−一’tt−一 AirD.C
A.C
Impulse Mist−1ike figure Mist−like figure Twig−like figure(+) +(PolbUschel) Liquid insulatorD.C
Leaf_like figureA,C
Impulse Twig−like figureぱ蕊。U。)
Lichtenbcrg’sトMist−like lMist−like ‘Twig−like Leaf−1ike figure in figure I figure figureもト) 1 figure鵠鷺h川 …認『}hel)一三・ke
figure l l Leaf_like l figure or ‘*Cloud_like figure Twig−like figure Twig−like figure (十),←)figure lSarne type IRemarks
Columm
十一PolbUschel, Radiated figure in other word * Name by author は気中または液中に針状電極(needle electrode)と 平板電極(plate electrode)とを板状の固体絶縁体を はさみ,針端に高い電位傾度を作り,加電による残留 電荷の状態を上記絶縁板上に捕足する一種の沿面放電 である。したがって電荷の捕足板として写真乾板を用 いた場合のリヒテンベルグ図形と絶縁板上にresinおよびredleadのpowdcrを振りかけて求める電荷図
(dust fiqure)とがある。両者にはそれぞれ得失が あり,その優劣は決めがたいが電荷図は正,負電荷の 分布状態が判然として区分されかつ複雑な放電状態を 識別し得る利点がある。しかし取扱上の不便と周囲条 件,主として湿度の影響を受け易い欠点がある。表面 電荷図については鳥山氏の研究が有名である2)。 筆者らが用いている写真乾板による方法は取扱いが 簡単で微細な放電軌跡が得られる利点がある。しかし その反面写真乾板そのものに対する均一化に難点があ り,また図形上正,負の判別が困難である。特に複雑 なafter dischargeや高周波沿面放電に起こる図形 の極性の識別であると言える。 数多の写真乾板によるリヒテンベルグ図形を取扱っ て知れることは,衝突イオン化の状態,すなわち樹枝 状コロナ図形(twig−like fiqure)の伸展状態を顕微 鏡拡大し得る利点がある。特に変圧器油等液体絶縁物 中のリヒテンベルグ図形は気中のそれに比して非常に 微少で,概して1∼5mmめlargest radiusであるか ら,油中リヒテンベルグ図形として写真乾板に依存す る理由でもある(気中の過電圧lichtenberg’s figure はpolbUschelより発達してgleitbUschelに移り沿 面破壊を起こすが,油中ではgleitbUschelを生じに くいのが普通である)。 Table 1は種々の図形の形式を示すものである。 就中油中図形を大別すると1)樹枝状図形(twig−like figure)2)木葉状図形(leaf−like figure)の二形 式に分けられ,その発生原因は絶縁油の化学的成分に よるものではなく,印加電圧のdV/dt,すなわち電 界の時間的変化で定まるものと言える。 本稿の交流電圧長時間印加の図形は樹枝状図形では なく,基本的には木葉状図形あるいは雲状図形と見ら れるべき図形である。また電極の配置状況によって は発生する上記の図形の外に幹図形(trunk−like fi・ gure),輪状図形(ring−like figure)およびスター 図形(鳥の足跡状)等がある。 3.実 験 装 置 油中誘電体,あるいは媒質たる絶縁油それ自身の絶 縁破壊現象および破壊前導電現象等の測定に当り,そ の電界の状態により相異を生ずる。すなわち絶縁油自 身に加電し,しゃへい物体のない純媒質の破壊をとる 場合と,油中誘電体に加電し,媒質は単に被試験誘電 体の電界漏洩を防ぐ役目にすぎない場合とがある。よ って誘電体に加わる電界の方向によって誘電体の貫通 破壊と,沿面破壊との二種類の形式に分けられる。単 位抵抗値が高く誘電率の低い理想的な液体絶縁物ほど この目的に添うことはもちろんのことである。沿面放 電は理論的には異種の誘電体が相接する境界面に沿っ て生ずる放電現象であって,液体絶縁物中の固体表面,油中交流沿面コロナ図形について
9
AC 50(/s 100V 1 9=−3.6mm, ト 下 日 一 后 _ ゥ⊥ 、」興…叫
Fig.2 Necdle alld sqriare electrodes AR:Automatic regulator T :Main trans.50/0.1kV SV:Static voltmeter 20/10kV
R
rB
Fig・1 :R.esistance 400kΩ : 〃 200kΩ :Bushing Connection diagram tage supply) J :Oil pot O:Trans. ojl H:Electrodes supPortor N:Needle electrode P:Plate electrode D:Photographic dry plate Sy:Synchroscope of arrangement (A.C. vol一 たとえば本稿の写真乾板膜面に生ずる沿面放電のごとくでFlaεhoverとTrackingの二つの現象に分け
られる3)。 Flashoverは本質的には誘電体の変質ま たは破壊を伴わず,放電図形としては gleitbaschel として表われる。またtrackingは本稿のごとく商用 周波電圧を印加した場合に生ずる炭化焼損の現象であ って,特に誘電体が繊推物質である場合にこの現象が 起こり易いと言われる。油中のリヒテンベルグ図形は 気中と同様にpolbUschelの形式をとり印加時間につ れtrackingの経過をたどる。 polbUschelそれ自身 は放電形式からはglow dischargeに相当するもの であることは気・液を問わず広く言えることである。 故に液体絶縁物中に清浄された写真乾板を浸し,そ の表面上の沿面放電をとることによってその境界面に 接する絶縁油薄層の放電を知ることが可能であるとも 言える。またかような実験的現象は実際的にも変圧器, しゃ断器等の油中絶縁電線が高電界によって絶縁破壊 を起こす場合もあり得ると考える。 Fig.1は本稿に必要な交流電圧印加による油中破 壊装置の結線図である。図中写真乾板をはさむ電極支 持台Hはべ一クライト製で金属針等電界を乱す物質は 使用していない。針状,平板の一対の電極寸法はFig. 2に示すように針状電極(needle type electrode) と正方形平板電極(square plate electrode)とより なり,沿面上3.6mmを隔てて写真乾板膜面上に対岐 させ支持台に固定する。これを油ポット Jに浸して高圧ガラスBを経て両極に電 圧を印加するようになっている。実験上 個々の取扱いは慎重になされるべきは当 然ながら油槽内のコロナ防止にはポリビ ニールパイプ等使用して効果を挙げた。 一般に高電界を得るための針状一平板 電極配置にあっては電界の状態が相当複雑し,数値計 算を行なうことがはなはだ困難であるので,筆者らは この電極配置に対し特に背後電極(電荷分布が異な る)を使用しなかった。 4.油中交流電圧図形 4.1交流印加時間と破壊電圧 油中絶縁破壊電圧は電圧の印加中の時間(印加時間 と呼ぶ)に影響されることNikuradse4)の示すごと く周知のとおりである。しかしてその破壊電圧値の急 変する印加時間は鉱油について約300秒程度と考えら れる。 よって筆者らはgap 3.6mmにおいてこの程度で 破壊すべき供給電圧を求め所定の実験電圧とした。 Table 2, Table 3は印加時間対破壊電圧(実効値) との関係を示す筆者らの実験値でありFig.3はこれ らの関係曲線を示すものである。就中Table 2は印加電圧(実効値)5.5kVより9kVの間6段階の特
定印加電圧に対し各5回の破壊までの時間を測定し, かつ平均値,標準誤差等を求めた表である。Table 3 にこの印加時間の平均値と前回実験の直流正性電圧印 加の結果とを併記してある。Fig・4はかような印加 電圧対破壊時間との静特性の比較のために示した直流 破壊電圧対印加時間との関係曲線である。電圧印加の 操作上の注意点はdV/dtを高くとらないことである。91一
Table 2 Relation data of breakdown voltage to time length on alternate voltage Table 3 Breakdown voltage to giving time レニ5.5kV t v=t_t v2 4321 408i 430 i 448 452 一26 _20
2
20 24 675 400. 4 1400 5761 ΣZ=2,140, Σv2=2,055 t=ΣZ/5=420, S==∼/Σv2/5=20・3 V−−6.5kV t v=’−t V2 V−−6kVA.CVoltage supPly
t v=二t__彦 263 2951 300 328 334‘ _41 _9 _4 _24 30 02 t sec 1,68181
16
576 900 ll引 lil ・4ア[ 一9 _1 0 4 6 420 304 140 72 22 10 2Yt=二1,520, Σv2=3,254 t=Σ6/5==304, S=∼/Σ㌃『75=25.5V kV
5.5 6.0 6.5 7.0 8.0 9.0 Vmax−15.8kV ID・CV・1・・g・・upPly t 450 300 250 200 150 100 50 E kV 15.5 18.0 19.5 21.2 23.0 25.5 28.4V−7kV
1ゾ__effective value E_Positive mean value t v=t−t 81 1…… 0‘ ・6c
36… Στ=700, 2’v2 ..134 彦=ΣZ/5=140, ぷ=∼/Σv2/5==5・2 67 68i 70 741 81 V2_5… 25
−41 16−21 4
21 4
9 81 ΣZ=360, Xv2=130 t=ΣZ/5==72, S=へ/Σ02/5=5.1 10 V−−8kV 彦 o=t−t v2 ≧9 .三 曇8 : 亘6 考R5
pq 彦 V−_9kV 19 22 22 23 24 一3 0 0 12
9 0 0 1 4. 8 9 10 11; 12 1 v=t−t V2 一2 −1 0 1 2 4 1 0 1 4 0 50 100 150 Fig・3 30 > 二 ’s 浮 る ξ820
毒 貞 200 250 300 350 400 Time in sec., 450 500 Relation curve of breakdown voltage to giving time in A. C. voltage Σt=110, Ev2=14 t=:Σ彦/5==22, S=へ/Σv2/5=1・68 Σ『t=50, Σv2=10 t=Xt/5==10, S=へ/Σv2/5=1・43 where:V−−supPly voltage 彦一time length on voltage 文献によれば電圧上昇速度は鉱油中で0.1kV/s以下 にすれば著しく破壊電圧は低下し,0.8∼1kV/sにて ほとんど一定値となるが,衝撃電圧波のごとく10−6s の波頭長に対しては非常にその値は上昇すると言われ る。したがって本実験のごとき50c/sの商用周波電圧 の波頭長は正,負にかかわらずその立上り波形より見 て443Eef kV/sとなり, E,f=6kVにて2.7×103 50 100 200 300 400 500 Time in sec Fig・4 Relation curve of breakdown voltage to giving time in D. C. voltage kV/sなり (樹枝状図形の発生可能),また加電速度 および停止速度を1kV/sとし,電源をcut−offしな い。なお油の純度,油温等も影響する問題なればこの 点この条件を一定に保った(油温9°C,RH 68%, 760mmHg)。もとより油中沿面放電は複雑な放電機油中交流沿面コロナ図形について Table 4 Ratio of electric strength Time of length (sec) 25 50 75 100 150 200 250 300 350 400 450 Breakdown voltage(kV) D.C Voltage 31 28.4 26.4 25.5 23.0 21.2 19.5 18.0 16.7 16.4 15.5 A.C Voltage 11.3 10.4 10.1 9,7 9.4 9.1 8.8 8.5 8.4 8.1 7.8 Ratio of electric strength A.CVoltage is max. value 2.74 2.78 2.61 2.63 2.45 2.33 2.22 2.12 2.00 2.02 2、00 数は非常に短縮され,特に印加電圧10kV以上の値 に対して破壊までの時数は10s以内となる。しかる
にこれに反し7kV以下5kVの範囲内の印加時間は
ほぼ反比例し,60∼80sの間直線的傾向を持つ,すな わち約330s/kVの耐圧特性を持つ(耐コロナ性)と 考えられる。Fig.5はFig.3の実測値より求めた 平均値を半対数で示したものであり。印加電圧5.5∼ 8kVの範囲の印加時間との相関関係は直線的変化を あらわし, 500 S00 R00 200 100 T0 S0 R0 Q0 P0 T=砲一βγ (1) なる関係を意味する。 ここに T一印加時間(秒) メー誘電体表面の状態で定まる定数 β一(log T/ V)を表す定数 ρ一底数・10, Fig・5 訂 .ε≡ .§ ; :三 助2345678910
Breakdown voltuge in kV Showing curve of giving time to breakdown voltage in semi_logarithm 構を持ち,その値も非常なぱらつきをとると言われ, その原因は未だ十分なる説明がなされていない。故に 筆者らはこのような不整に対しては,油中沿面放電特 有なものとしてここでは触れないこととした。 交流電圧印加の場合の印加時間対破壊電圧の特性は, ある電圧値までは印加時間の量変化が存在するが,こ の限界値以下の電圧に対しては,破壊までの所要時間 値(印加時間)は無限大となり特性の範囲外となる (約4∼4.5kV)。また印加電圧7kV以上より瞬間 破壊電圧15.8kVまではその破壊に要する印加時間 gap 3.6mmの本装置による変圧器油中の場合,上式 は下記のごとくなる。すなわち logloT=109/4一βV F’9’ 5よ煤F二lllV
の条件を②式に代入して β=lo91020/2.5=0.521 (3)を(2)の数値式に代入して logioA=5.521 /4=3.32>く105 .・. 71=∠1 ● 10一βγ T==20s { V=8.1kV (2) (3) =3.32><105>〈(100◆521)−V =二3・32><105>く3.32 V (4) となる。(4)式の示すがごとき現象上の特性はgap 3.6 mmの短間隙についての所見であるが, gap lengthが 著しく大ならざる限り定性的には同一の性質があり, かつ定量的にA,β の定数を異にするのみと推定さ れる。特に同一絶縁油中にてはgapの変化に応じA は変化するがβはほとんど限られた値をとるもののご とく考えられる。また同一状態に置かれた沿面破壊に 対して印加時間の大小,すなわち沿面上の液体薄層の 耐コロナ性は直流電圧印加(正性)と交流電圧印加の 場合とでは現象的にもまた放電図形的にも相異がある と同時にFig・3, Fig・4の特性図から,各印加時間に対 する絶縁耐力比なるものを仮りに考えたとしてFig,4 のごとくなる。この結果の図表がFig.6である。 ここに,絶縁耐力比=直流破壊電圧/交流破壊電圧 一般に絶縁耐力比は1以上の値であり,特に油中の層 状絶縁物程その値は大きい。 これを絶縁物の厚さの方向とせず沿面上の破壊とし一93一
;25
三2
ξ・5 一 一 高?≠氏@value 235 一 0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 91VlnS’t}me ln se(. Fig.6 Ratio of dlelectric strength (a) D.Cposltive voltage 16.8kV supply鍵
藻脳講鎌鑛烈獺㎜
P.難欝鷲…難鱗簗欝 (b)A.Cvoltage 6kV (c)Impulse voltage supply 24.8kV supply (positive flgure) Photo.1 Typical figures of surface discharge ln trans. oil て考えると非常に高い値をとり,Table 4のごとく 最大2.78,最小2.0,平均2.35なる総じて2以上の 値をとる。これは液体絶縁物中の固体誘電体に沿った 破壊は,印加時間にあまり関係なく時間変化を持つ交 流電圧に弱いということを知る。この原因は沿面上の1)glow放電,2)brush放電,3)Space charge
等に関係するものであると言える。 4.2油中交流リヒテンベルグ図形と破壊現象 写真乾板上のリヒテンヘルク図形(lichtenberg’s figure)の形式はその印加電圧の種類,すなわち直流, 交流,衝撃および高周波等により異なることTable 1 のとおりである。また同一種類の電圧でも印加時間, および電圧上昇率によって相異する。筆者らの実験資 料によればPhoto・1のごとく顕著に図形上の相異を 認める。すなわち(a)は直流正性電圧16.8kVを300s 印加した図形,(b)は50c/s交流電圧6kVを100s印 加した図形および(C)は1×40μs標準衝撃電圧24.8kV を50回多重印加した図形である。長時間電圧印加の特 徴として直流および交流の図形は樹枝状ではなく前者 は気中の霞状図形(mist−likc figure)に似ているが 筆者らは特に雲状図形(cloud−like figure)と仮称 している。後者の交流図形は直流の(a)とこれまたその 趣を異にし,針状電極を中心に拡散する図形でこれを 幹図形(trunk−like figure)および輪状図形(ring− like figure)と呼ぶことにした。(C)の衝撃電圧の場 合は正,負を問わず代表的なt輔g−like figureで, 印加回数によってその形状は変わることがない。 Photo・2は交流電圧を印加時間300秒にて沿面破 壊を起こすべき安定電圧6kVをFig・3より求め, この電圧を印加して破壊までの各時間における放電図 形の変化の状態を撮った一連のリヒテンベルク図形で ある(この図形は数多の資料より統計的に信頼し得る ものの中より選択したものである)。すなわち電圧印 加後(a)は10秒,(b)は30秒,(c)は50秒,(d)は60秒,◎は 100秒,(f)は180秒,および(9)は300秒経過したときの 放電図形である。特に(9)は破壊直前の図形として沿面 ストリーマ(surface streamer)が現われている。 また同図(h)は時間300秒経過後の乾板資料を現像せず 定着のみ行なって,treemgの状態を探知する目的に 供したもので,streamerの軌跡はわずかに認められ るが焼痕は認められない。これは未だ完全なる全路破 壊の状態ではなかったことを示すものと言える。本稿 におけるこれらの油中リヒテンベルク図形は,すべて 顕微鏡拡大写真であることをお断りする。(a)→(9)まで の図形を見るに,最初発生する図形は電位傾度の高い 針端を中心に対極たる平板に向って幹図形が発生す る。しかし時間と共に,幹図形はその大きさ(半径) を増しつつあると同時に,30∼40秒を経過する頃から 幹図形を包む外側に針端を中心にして同心円上に点在 するコロナ痕跡を認めるようになる。これは油中不純 物の高い電位傾度によるもののみとは考えられない。 60秒でこれらの痕跡が集束して輪状図形となること(d) (e)のごとくである。なお時間と共にこの輪状図形の半 径は増し,300秒に達し瞬間沿面放電に突入し,沿面 は火花によって短絡される。(9)の破壊直前の図形はす でに発生成長してきた輪状図形の対極に近い一部分が油中交流沿面コロナ図形について でa) τ=10s (b)30s ㌶. ミぶゴ 、・ :∴二’1 ’㍉・ ’ ぐ 嚢鶯慾:㍍ へ
羨藷≡:磨1,
(C) 50s (d)60s ’噸ぽ只ぷ灘欝難
■.・ (e) 100s (f) 180 s (9) 300 s (h) 300 s (fixing only) where;N−needle, P−plate type electrode gap length is 3.6mm. magnification−12 Photo.2 Expansion of surface corona in trans. oil(A. C. voltage 6kV) 伸展し,対極に向って沿面ストリーマとなって両極間 を橋絡している。この橋絡は直流印加の場合と異な り,対コロナ性を図形上に持たず直ちに破壊放電に入 る。(a)より(9)までの一連の図形から知れるごとく平板 電極側には何らコロナ図形を発生していないことが認 められる。直流正電圧印加の場合の印加時間に対する コロナ図形の伸展状況は,すでに筆者らの研究1)によ り発表したるごとく雲状図形 (cloud−1ike figure) となって発達し,両極間を橋絡するもなお全破壊を生 じない,いわゆる耐コロナ性の強いことは一種の沿面 上の空間電荷効果(space charge)に起因するもの と考えられる。 非対称電極に交番電圧を印加する場合,その電圧値 の人小にかかわらず極性効果の存在することが知られ ている。交番電圧印加は当然給与周波数により正,負 放電の繰返しが行なわれると同時に直流に見られる極 性効果がサイクルごとに変化し,結果的には交流空間 電荷効果となって現われる。輪状図形はこの結果発生 するものと考えられる。 印加電圧7kVについても同様な図形の得られるこ とPhoto.3のとおりである。Photo.4は6kV,100 sおよび8kV,20 s印加
のときの拡大写真で,顕微鏡倍率は12である。 Photo.5は異なったcannelをとる破壊放電であ る。 Photo・3で注意すべき点は平板電極面に部分的な コロナ図形を発見することである。これは印加電圧が ある限界値以上を与えた場合にのみ発生すべき問題か, あるいは別の理由によるものかなお検討を要する。 一般に高誘電体面上に発生するtwig−like figure が気中において見られるpolbUschelの範囲において 印加電圧と図形半径(radius of flgure)との間にあ る比例関係がある5)。これによって油中の輪状図形に ついて考察すれば,一定電圧下の印加時間対図形半径一95一
(a)T=10s 鑛灘灘灘騰難鍵灘懸難 離灘灘蘂灘状徽 (b)50s (C)breakdown Photo.3 Expansion of surface corona in t「ans, oil(A. C. voltage 7kV)
(a)A.C6kV
㎜曲欝鵬灘
(b) A.C8kV 獄 Photo.4 Enlarging surface discharge figure magnification−12×1.7 (a) A.C7kV (b) A. C 6kV Photo・5 Breakdown flgure 1.3 : 巳 ‖1.1 ぎ 1.0 睾 工 E kO8 甘 ‖ 言 Fig・7 0.5 ノ 一一 一 一 一 ’ , ’ @メ . R/’=35% . 一一R/1=31% 「rX−6kV
│o−7kV
│△−8kV 5 0 50 100 150 200 250 300350400450500
glVlng tlme ln SeC. Curve of maximun radius of ring_like figure to giving time との関係,要するに図形の成長速度は前Photo.2お よび3よりFig・7の関係を知る。この関係の実測範 囲は非常に限られていて,破壊放電の特性上実際的に は6∼8kV程度であるが現象の上からは上記の関係は 印加電圧の広い範囲にわたって関係付けられるもので, ただ(半径/時間)の値に大小があるだけである。Fig.7によれば印加電圧6kVの場合,電圧印加よ
り75秒程度までは図形半径の成長率はほとんど印加時 間に比例して一定速度である。これはspaceの上か ら見れば全放電間隙3.6mmの針端から約31%程度ま で続き,31∼35%でその成長は押えられ緩慢になる。 また印加時間から見ると印加後75∼120秒付近と言え る。この時間を過ぎ破壊までの時間内はほとんど図形 の半径はその成長を止め飽和の状態となる。すなわち油中交流沿面コロナ図形について 400 300 2F° 200 150 §・88 ・E98 §60 = 50 曽40 :E bρ R0 20 10 0.4 0.5’ 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 1.1 1.2 1.3 .1.4 Radius of ring−like figure in m.m. Fig.8 Showing curve of radius of figure to giving time in semi−logarithm 要約すれば印加直後の半径の成長率に非常に高くざん 次減少の領域をすぎ飽和するものと思われる。この Fig.7の関係をFig.8のごとき半対数グラフにと り,印加時間対図形半径との関係,いうなれば図形の 成長率の状態を見るに特定電圧に対しcrltα2なる二 区分に大別できるものと思える。すなわち印加時間の 経過に伴い短間隙内のspace chargeの位置が移動 すると解釈する。極性効果を考慮に入れた沿面の放電 現象を一種のイオン化現象として考えれば,針状一平 板の不平等電界はその針端が高い電位傾度となり,活 発な電離を行ない(油中の平均自由行程は強く押えら れるが)多量の陽イオンを集積する。かような沿面コ ロナの状態は最初空間電荷の場に拡がりを持つ膜状 (glOW)コロナより発達し,線状コロナの出現とな り,空間電荷の場は移動し,かつ密集する。これが図 形的には幹図形に加えて輪状図形の発生する原因であ る。輪状図形の一たび発生した部分は十分なる電離の 値にまでなり,多量の電子がこの部分にとびこんでく ることによりさらに電離を繰返し対極に向ってコロナ の伸展となるわけである。この反復電離作用により, その伸展コロナの尖端は強い空間電荷の場となり,そ の結果陽極側の電界は弱まり,陰極側(平板側)の電 界を強めるものである。交流電圧印加の場合の伸展コ ロナは,極性効果による正性コロナ放電により決定さ れるものと推定する。すなわち移動度の小なるイオン により,間隙の電界分布は定まるものと言える。この 点筆者らは交流図形のうち,針端を中心として初期に ’ o Fig・9 s rlng−like flgure runk−like figure center of needle plate electrode R−radius of ring like figure Form of alternate voltage figure in photographic dry plate 発生する幹図形は空間電荷のため,そのコロナ電界が 弱められ,電極周縁部の強電界部分に抑制されている 状態であり,幹図形をとりまく同心状の輪状図形は電 離電圧が十分の値に達し,線状コロナの状態で正極空 間電荷の電界を利用し,末電離部分に伸展している状 態と考える。液体絶縁物内の誘電体面に沿う破壊現象 は,複雑な機構から構成され,単純な素因に帰着する ことは困難である。すなわち上述のごとく可級的水 分,ガス,繊維質および塵埃等異物質を含まない純液 体絶縁物内においてもその破壊への進展状態は電源の 種類ならびにその電界の給与状態だけについて見ても 多岐であることを認めざるを得ない。しかしながら電 圧印加時間を関数とするその破壊への発展機構はある 意味において油中リヒテンベルグ図形より洞察するこ とは可能である。
5.結
言 変圧器油のような液体絶縁物の薄層の絶縁破壊ない し油中誘電体面の沿面破壊は,瞬間破壊電圧以下の印 加電圧に対してもある程度印加時間を与えることによ って完全破壊にまで発達し得ることは以上のとおりで あり,かつその印加電圧の種類によりそれぞれの油中 リヒテンベルグ図形の形式は異なる。また放電特性も 自ら異なることを知る。よってこれら交流印加電圧について要約すれば一
1)誘電体面上の油中短間隙沿面放電における同一印 加時間に対し破壊電圧比,すなわち絶縁耐力比は2 以上平均2.35の値をとる。これはかような電界構成 下の破壊が直流正性電圧印加より非常に低い交流電 圧印加により行なわれることを明らかにした。一97一
2) 交流電圧印加による沿面の伸展コロナは,極性効 果による強い正性コロナによるものにして,その対 極側のコロナ尖端は強いイオン化力を持ち進展して 破壊に導く。 3) 電圧印加より破壊誘発の時間,すなわち印加時間 は印加電圧値によって指数的に変化し,一般にT= APz3Vにて示される。たとえばgap 3・6mmにて T=3.32×105×3.32一γで示されることを知る。 4)交流電圧印加の油中リヒテンベルグ図形は極性効 果による正イオンの強い電子集束の図形となって表 われ,空間電荷効果と共に図形的には特異な輪状図 形を形成する。 5) リヒテンベルグ図形から見た破壊前現象は,輪状 図形の部分より発達した橋絡ストリーマにより破壊 に突入するものと推測される。 以上油中リヒテンベルグ図形を主体として,油中沿 面破壊現象を検討した結果であるが,実験上の巧拙は もとよりのこと,なお研究未了と思える点多々あるを 痛感しつつ報告を終る。 本研究に当り終始御支援揚った本学工学部中村元和 教授に謝意を表すると共に,実験全般にわたり御協力 願った電気工学科,博多哲郎助手ならびに石川多俊君 に感謝致します。