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イベントディスプレイ制作 : 教員-学生協働による作品制作プロジェクト実施報告

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Academic year: 2021

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イベントディスプレイ制作

13

デザイン学科・助手

Department of Design • Research Associate

井垣 理史

Masashi IGAKI

イベントディスプレイ制作

<教員 - 学生協働による

作品制作プロジェクト実施報告>

Design-work of event display

The report of Project its coraborated with Lectulor and

students for new education method

1 はじめに

通 常、 学 生 が 制 作 し た 作 品 が 実 際 に 社 会 に 出 て、 客 観 的 な 目 に 晒 さ れ る 機 会 は 決 し て 多 く な い。 特 に 1、2 年生など若い学年の学生やプロダクトや建築・空間を学 ぶ 学 生 達 に と っ て は、 ア イ デ ア や 試 作 で 終 わ っ た り、 せ っ か く 制 作 し た 作 品 も 発 表 す る 機 会 が 乏 し く な り が ち で あ る。 そ う い っ た 状 況 に 対 し て 教 員 側 は、 積 極 的 に 各 種 コ ン ペ テ ィ シ ョ ン へ の 応 募 や 展 覧 会 へ の 出 展 を 奨 励 し て い く が、 本 件 で は 新 し い 試 み と し て、 教 育 効 果 の 向 上 を 目 的 と し、 教 員 が リ ー ド し な が ら も、 教 員 を 含 め プ ロ ジ ェ ク ト 参 加 者 全 員 が 主 体 的 に 関 わ り な が ら 一つの作品を制作し発表した事例をノートした。

2 制作

2.1 依頼 本 研 究 は 本 学 ヒ ュ ー マ ン ケ ア 学 部 子 ど も ケ ア 学 科 子 ど も ケ ア セ ン タ ー の 主 催 す る 下 記 定 例 イ ベ ン ト の た め に 筆 者 の 所 属 す る デ ザ イ ン 学 科 が デ ィ ス プ レ イ 制 作 の 依頼を受けて制作されたものである。 イベント実施日 ・「クリスマスを遊ぼう」:2006年 12月 12日(月) 対象者:0 ∼ 3歳児 (主な保護者年齢層:20代∼ 30代中盤) ・「伝承遊び」 :2007年 01月 14日(日) 対象者:4 ∼ 10歳児 (主な保護者年齢層:30代∼ 40歳代) 2.2 プロジェクトチーム構成 プロジェクトチームは教職員(筆者、子どもケア学科 林 助 手、 長 谷 川 保 育 士( 現 助 手 ))と メ デ ィ ア 造 形 学 部 デ ザ イ ン 学 科 4名、映 像 メ デ ィ ア 学 科 2名、ヒ ュ ー マ ン ケア学部子どもケア学科 8名の 2年生を中心とした、そ れぞれ所属、学年など立場の違う者で構成された。 デ ザ イ ン 学 科 の 学 生 だ け で は、 作 り 手 側 主 体 の 作 品 になったり、対象調査 が不十分になるというマイナス

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面 を 補 う た め に、 イ ベ ン ト の 対 象 で あ る 子 ど も 側 の 立 場 に い る 教 職 員 お よ び 学 生 を 加 え、 学 科 を 超 え た メ ン バ ー を 構 成 し、 制 作 プ ロ セ ス に お い て よ り リ ア リ テ ィ のある活発な意見交換を期待した。 2.3 議論  約一ヶ月という短い期間での制作だったが、2年生が 主 な メ ン バ ー で あ っ た こ と と、 子 ど も ケ ア 学 科 の 学 生 に と っ て は 初 め て も の つ く り に 携 わ る と い う こ と で あ っ た こ と か ら、 出 来 る だ け 多 く 議 論 す る 場 を 設 け、 学 生 の 緊 張 感 を ほ ぐ す と と も に、 チ ー ム と し て の 一 体 感 が形成されるよう配慮した。 議 論 は 主 に 昼 休 み や 放 課 後 に、 現 場 の 空 気 を 感 じ る た め 出 来 る だ け 作 品 設 置 会 場 付 近 で 行 っ た。 ま た 議 論 は メ ー リ ン グ リ ス ト 上 で も 継 続 し て 行 わ れ、 会 場 で の 議 論 に 参 加 出 来 な か っ た ス タ ッ フ も 情 報 を 共 有 す る こ とが出来るようにした。 メ ー リ ン グ リ ス ト の 活 用 は、 時 間 や 場 所 の 制 約 を 受 け ず、 意 見 を ま と め な が ら 発 言 出 来 る と い う 利 点 が あ り、 今 回 の ケ ー ス の よ う に 限 ら れ た 時 間 で の 制 作 に お いては有効な手段であった。 ま た、 デ ザ イ ン ワ ー ク を 幾 つ か の 段 階 に 分 け、 今 何 を し て い る の か を 明 確 に し な が ら 議 論 を 進 め る 事 を 提 案 し、 そ れ に よ り 煩 雑 に な り が ち な 議 論 の 方 向 性 を ま とめる事が出来た。 第一段階<問題提起> 今回の依頼に関係する「子ども」「クリスマス」「正月」 「 デ ィ ス プ レ イ 」の 4つ の キ ー ワ ー ド に 対 し て 自 由 に 意 見 を 出 し 合 う 事 か ら 始 め、 そ の 結 果 下 記 の よ う な 意 見 や問題があげられた。 ・子どもが本当に感じているものとは ? ・ 大 人 の 視 点 と 子 ど も の 視 点 の 差 異、 身 体 的、 年 齢 的な特徴 ・作り手側の満足度と依頼者のニーズ ・慣習によるクリスマスらしさの刷り込み 第二段階<デザイン案の発想> 第 一 段 階 で の 問 題 提 起 を 受 け デ ザ イ ン 案 を 発 想 す る た め に、「 実 現 可 能 性 や 妥 当 性 な ど 設 置 会 場 以 外( 写 真 1,2)の 諸 条 件 に と ら わ れ な い 」「 相 手 の 意 見 を 否 定 し な い」というルールを設定し、互いにイメージを刺激し合 いながら自由な意見交換を行った。 ・天井が高い事から高さを利用。 ・子どもがわくわくするもの。 ・日用品等を利用し意外性のある演出。 ・ 会 場 空 間 は 冷 た く 無 機 質 な 印 象 を 受 け る た め、 温 かく柔らかいイメージを演出。 ・有機的で流れを感じるもの。 ・視覚だけでなく、触覚など五感に訴えかけるもの。   な ど、 抽 象 的 だ が 多 く の イ メ ー ジ を 膨 ら ま す 事 が で き、 そ れ ら を 受 け て 主 に 下 記 の よ う な デ ザ イ ン 案 が 発 想された。 a. 土 を 敷 き つ め た り 花 壇 状 に 固 め、 種 子 を 植 え て、 大地(母)と種子(子)を連想させる。 b. 階 段 か ら ド ラ イ ア イ ス な ど で カ ー テ ン を 作 っ て 空 気の動きを見せる。 c. 光 る 雪 の よ う な も の を 降 ら せ、 そ れ が 子 ど も の 身 体 に 付 着 す る。 会 場 を 暗 く し て 子 ど も 達 が 光 っ て いる。 d. イ ベ ン ト 会 場 ま で の 通 路 と し て 迷 路 を 作 り、 導 入 [写真 .02]会場風景 [写真 .01]会場風景

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137 イベントディスプレイ制作 的な役割を強調する。 e. カ ラ フ ル な 服 を 大 量 に 積 み 上 げ た り、 整 頓 し て 並 べたりする。 f. 木 の オ ブ ジ ェ を 作 り 沢 山 の シ ャ ツ が ハ ン ガ ー に か けらている。 第三段階<デザイン案の絞り込み> 第二段階で発想したデザイン案を、実現性、機能性、 コ ス ト、 安 全 性、 テ ー マ 性 な ど を 考 慮 し な が ら 具 体 的 な デ ザ イ ン 案 へ と 発 展 さ せ、 さ ら に 主 催 者 側 へ の プ レ ゼンや協議、子どもの年齢的な特徴等の考慮を重ねて、 最終的に下記 2案にデザインを絞り込んだ。 A案: 大 き さ、 高 さ の 異 な る、 た い 肥 で 作 っ た 塊 に、 成長の早い種子を植え双葉を発芽させる。土は 母なる大地、双葉は生まれたての子どもをイメ ージし、それを柔らかく包み込むように宇宙を イメージした布に幾つか穴をあけ、上空に張る。 (写真 3) B案: 木 材 で 自 然 木 を イ メ ー ジ し た オ ブ ジ ェ を つ く り、 カ ラ フ ル な 服 や 布 を 巻 き 付 け る。 見 慣 れ た 木 を お と ぎ 話 の よ う な カ ラ フ ル な 色 彩 に す る こ と で、 イ ベ ン ト 会 場 へ 向 か う ま で の 日 常 か ら 非 日 常 へ 移 行 す る 空 間 感 を 強 調 す る。 (写真 4) さ ら に、 作 業 性 お よ び テ ー マ 性 な ど を 考 慮 し、 最 終 [写真 .03]A 案アイディアスケッチ [写真 .04]B 案アイディアスケッチ [写真 .05]完成写真

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的に A案を採用し制作準備を開始した。

3 作品概要

3.1 デザインコンセプト ・ 本 作 品 は 大 学 内 で 行 わ れ る イ ベ ン ト で あ る こ と か ら、公共の場に置かれるようなディスプレイの条件 に縛られない実験的な作品を試みる。 ・ 子どもが「触ってみたい」「覗いてみたい」など行動 を伴う興味の対象となるような作品を目標とする。 ・ 「大人から見る『らしさ』だけではなく、違った視座 からの発見」というテーマの一つを、引率する保護 者へのメッセージとする。 ・ 会場の無機質な白い空間をあたたかく柔らかいイメ ージに変容させる。 ・ クリスマスと伝承遊びの 2つのイベントでの変化が 分かるようにする。 ・ 作 品 を 通 し て 親 と 子、 学 生 と 子 ど も と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が 生 ま れ る よ う に 実 際 に 触 れ ら れ る も のにする。 3.2 オブジェクトの構成(写真5) オブジェクトは子どもの目線の高さなど身体的特徴、 会 場 空 間 の 体 積 に 占 め る 割 合、 色 彩 バ ラ ン ス 等 を 考 慮 し て デ ザ イ ン し た。 特 に 土 の オ ブ ジ ェ ク ト は、 乳 幼 児 が 誤 っ て 口 に 入 れ た り、 触 っ た り 乗 っ た り し て 怪 我 を し な い 事 を 第 一 に 考 え、 土 の 加 工 方 法 な ど は、 幾 度 も 実験を行い検証した。 3.2.1 オブジェクト概要 土:木材で構造を作り、その表面にたい肥を盛りつけ 成 型 し た。 子 ど も が 触 れ る 可 能 性 の あ る 部 分 は、 た い 肥 約 10kg に 対 し て 木 工 用 ボ ン ド 約 700g の 割 合 で 混 合 し た も の を 使 用 し、 種 子 を 植 え る 上 面 は 無 加 工 の た い 肥 を 使 用 し た。 木 工 用 ボ ン ド と 混 合 し た た い 肥 は、 完 全 乾 燥 さ せ る こ と で、 軽 く 堅 い 素 材 と な り、 新 し い 表 現素材としても利用出来る可能性がある。 たい肥は 20kg 入りの袋を約 50体使用し、発芽させた

[写真 .06]土オブジェクト [写真 .07]イベント当日風景 [写真 .08]イベント当日風景

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139 イベントディスプレイ制作 2月 10日 : オブジェクトの制作と種まき 9日に引き続きオブジェクトの制作を行っ た。また発芽を早めるために水に浸して おいた種子を蒔いた。

4 まとめ

本 件 の よ う な 学 科 を 横 断 し た 作 品 制 作 を 通 し た 実 践 経 験 は、 他 分 野 に 対 す る 知 識 を 学 び、 物 事 の 新 し い 捉 え 方 や 価 値 観 を 見 い だ す た め に 大 き な 役 割 を 担 う と 考 え て い る。 本 研 究 の 目 的 の 一 つ で あ っ た、 教 員 - 学 生 協 働 で の 作 品 制 作 に よ る 教 育 効 果 の 向 上 に つ い て は、 参 加 し た 学 生 の 様 子 か ら も 一 通 り の 成 果 が あ っ た と 言 え る。 ま た 制 作 を 進 め て い く 過 程 で、 コ ア メ ン バ ー と サ ブ メ ン バ ー に 分 か れ る こ と で、 学 生 そ れ ぞ れ の モ チ ベ ー シ ョ ン に 応 じ た プ ロ ジ ェ ク ト と の 関 係 性 を 築 く 事 が で き、 前 者 は よ り 積 極 的 に 制 作 に 取 り 組 み、 後 者 は 状況に応じて参加する事が出来た。 作 品 の 機 能 面 か ら 考 え て も、 参 加 し た 子 ど も と 親 た ちから「こんなディスプレイは初めてみた。感動した。」

双 葉 は、 貝 割 れ 大 根 や ラ デ ィ ッ シ ュ、 ソ バ な ど 発 育 の 早い品種を使用した。 サ イ ズ( 最 大 直 径× 高 さ ):2500×450、1400×1200、 900×1000、300×600(単位 mm) 布:パワーチュールと言われる、伸縮性が高く透過性 のある布地を使用。幅 1.2メートル長さ 25メートルを 4 枚縫い合わせ、高さ 3.5メートル付近に設置した。 3.3 オブジェクト制作 オブジェクトの制作は 12月 7日(木)∼ 10日(日)の 4 日間で主に中心となるメンバーで実施された。 2月 7日 :布の縫製 2月 8 日 : 布の穴開け、設営 土のオブジェクトの位置を想定しなが ら、布に穴を開け、既設の柱や照明等に 細いロープを用いて設営。 2月 9 日 : 土のオブジェクトの制作 木材での構造制作、たい肥と木工用ボン ドの混合、など作業を分担して行った。

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や「 マ マ ー、 芽 が 出 て る !」と い っ た 声 を 聞 く こ と が 出 来 た り、 親 子 で 発 芽 し た 双 葉 や 土 の 表 情 を 覗 き 込 む と い う よ う な デ ィ ス プ レ イ を 介 し て の 親 子 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 場 面 に 制 作 メ ン バ ー が 立 ち 会 え た こ と は、 学 内 で 実 施 し た デ ィ ス プ レ イ デ ザ イ ン と し て の 目 的 の 一 つ を 達 成 す る こ と が 出 来 た と 考 え る。 そ の 反 面、 子 ど もが土に触れようとすると「汚いから触っちゃだめ」と 嗜めた親もおり、考えさせられる事象でもあった。 本 件 が 教 育 シ ス テ ム の 一 環 と し て 構 築 さ れ て い る か と い う 視 点 か ら 見 れ ば、 今 回 の 手 法 が 他 の 構 成 メ ン バ ー で あ っ た 場 合 に は 必 ず し も 適 用 出 来 る と は 限 ら な い 点 も あ り、 ま だ ま だ 課 題 が 多 い 事 は 否 め な い。 教 員 個 人 と し て は、 個 々 の 学 生 の 特 性 を 素 早 く 見 抜 き、 適 切 な 助 言 を 行 い、 チ ー ム 全 体 の 調 和 を 整 え る 必 要 が あ る し、 組 織 と し て は、 学 科 間 の 連 携 や 更 な る 機 会 の 創 出 な ど 授 業 内 外 で の サ ポ ー ト も 将 来 的 に は 必 要 に な っ て くるだろう。 こ う い っ た 意 味 で も 本 研 究 を 通 し て 多 く の 経 験 と 課 題 を 得 る 事 が 出 来 た 事 は、 大 変 有 意 義 で あ っ た と 考 え る。

謝辞

本 研 究 の 機 会 を 与 え て 下 さ っ た 釜 賀 子 ど も ケ ア 学 科 長、 斎 藤 デ ザ イ ン 学 科 長、 あ た た か く 見 守 っ て 下 さ っ た 坂 准 教 授、 そ し て 本 研 究 に 参 加 し て く れ た デ ザ イ ン 学 科、 映 像 メ デ ィ ア 学 科、 子 ど も ケ ア 学 科 の 学 生 の 皆 さ ん、 そ の 他 関 係 各 位 に 大 変 お 世 話 に な り ま し た。 こ の場を借りてお礼を述べさせていただきます。

参照

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