『読書と豊かな人間性』
におけるブックトーク演習の意義
鈴木 守,林 容子
Book talk and Reading for Developing Human Nature
Mamoru SUZUKI, Yoko HAYASHI
2018 年 11 月9日受理 抄 録 本稿では、学校における学習支援活動としてのブックトークの有効性および教員養 成課程におけるブックトーク演習の意義等について検討するために、司書教諭による 小学校3年生と6年生の国語の授業におけるブックトークの実践事例の検討を踏ま え、大学における司書教諭講習科目『読書と豊かな人間性』で行われるブックトーク を学習することについて考察を行った。第一に学習支援活動としてのブックトークに ついては、授業、ブックトークを通して、児童の世界が広がること、読書指導が授業 と一体化されたとき、児童の読書興味が喚起されることを明らかにした。ブックトー クの演習については、読書活動を支援するために必要な実践力を身に付けることがで きると共に、受講者の振り返りから、読書活動や教科学習等への支援におけるブック トークの有効性について学生が理解を深めることができることが明らかになった。 キーワード: 学校図書館 読書支援 読書指導 読書と豊かな人間性 ブックトーク 1.はじめに 2017(平成 29)年に改訂された新しい学習指導要領において、学習能力の基盤・ 資質となる言語能力の確実な育成が教育内容の改善事項の一つとして掲げられ、言語 活動の充実が謳われている。特に、読書活動は言語能力を向上させる重要な活動とし て位置付けられており、読書活動を充実させることが求められている。また、読書セ ンター、学習センター、情報センターとしての機能を持つ学校図書館は、読書活動や 学習活動の充実に資する役割を果たすことが期待されている。 また、2018(平成 30)年には「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画(第 四次)」が閣議決定された。子どもの読書に関する課題として“小中学生の不読率は、 中長期的には改善傾向にあるが、高校生の不読率は依然として高い”ことを課題とし、 “中学生までの読書習慣の形成が不十分”“高校生になり読書の関心度合いの低下”等
が指摘され、“読書習慣の形成に向けて、発達段階ごとの効果的な取組を推進”“友人 同士で本を薦め合うなど、読書への関心を高める取組を充実”等が計画のポイントと して挙げられている。1 子供の読書活動の推進方策の内、小学校、中学校、高等学校等の取り組みとしてブッ クトーク等が掲げられている。“子供が相互に図書を紹介し、様々な分野の図書に触 れる活動”が例示される。読書会、ペア読書、お話(ストーリーテリング)、アニマ シオン、書評合戦(ビブリオバトル)等と共にブックトークが挙げられており、2ブッ クトークとは“相手に本への興味が湧くような工夫を凝らしながら、あるテーマに沿っ て関連付けて、複数の本を紹介すること”、“テーマから様々なジャンルの本に触れる ことができる”3とされている。4 学校図書館におけるブックトークについては、学校図書館の専門誌である全国学校 図書館協議会の『学校図書館』誌にブックトークについて扱った記事が掲載されるこ とがある。5一方、教科教育、特に国語科教育に関する専門誌にもブックトークを扱っ た記事論文等が掲載されることがあり、国語科の授業におけるブックトークの実践事 例等を知ることができる。6また、折川は中等教育の読解指導におけるブックトーク の活用についての検証と考察を行い7、村上は高等専門学校におけるブックトークの 実践から読書の習慣化に必要となる力や読書力を養う読書指導の在り方と課題につい て考察を行っている。8 小学校、中学校、高等学校等における読書活動の充実や読書への関心を高めるため の具体的な方策が今後も求められていくことになる。そのため、司書教諭を含む教員 や学校司書が読書支援の実践力を十分に身に付けることができるように、教員や司書 教諭あるいは学校司書の養成や研修における学習内容や学習方法を改めて検討する必 要がある。また、授業や研修の内容には、読書に関する理論の講義と共に、読み聞か せやブックトーク等の読書支援の実践的な学習が含まれることになるであろう。筆者 らは、大学において司書教諭の養成を担当する教員として、教員を目指す学生が読書 支援の力を身に付けるための授業の在り方について検討することとした。 本稿では、小学校でのブックトーク実践事例や本大学における司書教諭資格取得科 目『読書と豊かな人間性』で行ったブックトーク演習から、学習支援活動としてのブッ クトークの有効性、ブックトーク演習の意義について考察を行った。 まず、学校におけるブックトークの実施状況について、文部科学省の「学校図書館 の現状に関する調査」の結果から明らかにする。また、司書教諭養成課程等における ブックトークの位置づけについて、学校図書館法等の法令や、司書教諭や学校司書の 養成に関する文部科学省からの通達等から確認する。次に司書教諭養成科目『読書と 豊かな人間性』に関する論文や実践報告等を文献調査し、特にブックトークの学習が どのように行われているか等について明らかにする。そして、筆者(林)が司書教諭 として小学校3年生と5年生の国語の授業において実践したブックトークによる授業 支援の事例を検討するとともに、同じく筆者(林)が大学教員として司書教諭科目に おいて行っているブックトークの演習の事例と受講者からの振り返りの内容を分析検
討することによって、学習支援活動としてのブックトークの有効性、ブックトーク演 習の意義について考察した。 (鈴木) 2.学校図書館とブックトーク 2.1.ブックトークの実施状況-文部科学省『学校図書館の現状に関する調査』から 小学校・中学校・高等学校等、学校においてブックトークはどの程度実施されてい るのか。 文部科学省の「学校図書館の現状に関する調査」では、2005(平成 17)年度、 2006(平成 18)年度、2007(平成 19)年度の3回の調査において、公立学校の読書 活動推進のための取り組み状況ついて調査結果を明らかにしている。読書活動推進の ための取組の内訳(複数回答可)として、図書の読み聞かせやブックトークの実施、 読書感想文コンクールの実施その他について、校種ごとに学校数と割合が明らかにさ れている。 2005(平成 17)年5月現在、読書活動推進の取り組みをしている学校の割合は小 学校 81.1%、中学校 57.6%、高等学校 56.0%。これらの内、図書の読み聞かせやブッ クトークを実施している学校の割合は小学校 70.7%、中学校 20.6%、高等学校 8.9% で あった9(表2. 1参照)。翌 2006(平成 18)年 5 月現在では、。読書活動推進の取り 組みをしている学校の割合は小学校 83.9%、中学校 60.6%、高等学校 59.8%。これら の内、図書の読み聞かせやブックトークを実施している学校の割合は小学校 74.1%、 中学校 21.3%、高等学校 8.5% となっており、小学校および中学校ではやや増加して いる10(表2. 2参照)。さらに 2007(平成 19)年度において読書活動推進の取り組 みをしている学校の割合は小学校 86.2%、中学校 63.2%、高等学校 60.1% である。こ れらの内、図書の読み聞かせやブックトークを実施している学校の割合は小学校 90.2%、中学校 36.6%、高等学校 15.2% と、前年と比較して大きく増加している11(表 2. 3参照)。 「学校図書館の現状に関する調査」において図書の読み書かせやブックトークの実 施について調査された 2005 年から 2007 年は、第一次子供の読書推進基本計画が閣議 決定され全国の自治体で読書推進計画が策定、実施された時期にあたる。2008(平成 20)年に閣議決定された第二次子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画におい ても、全校一斉の読書活動を行う学校の増加と共に、読み聞かせやブックトークを行 う学校も増加したことが、第一次基本計画期間における成果として挙げられている。12 その後 2014(平成 26)年に実施された平成 26 年度「学校図書館の現状に関する調 査」では、全校一斉読書以外の読書活動推進のための取組の状況が明らかにされてい る。当年度の調査では、以前の調査で同一の項目であった図書の読み聞かせとブック トークが別々の項目に分かれており、ブックトークの実施率が明確となっている。平
成 26 年5月現在、全校一斉の読書活動以外の取組を実施している学校は、小学校 98.1%、中学校 77.6%、高等学校 74.0% である。この内、ブックトークを実施する学 校の割合は、小学校 38.3%、中学校 25.6%、高等学校 17.1% であった。なお、図書の 読み聞かせについては小学校 97.4%、中学校 37.3.%、高等学校 14.2% である(表2. 4参照)13。このように、図書の読み聞かせと比較すると、ブックトークを実施する 学校の割合は低いことが低いことが明らかになっている。この結果からは、ブックトー クは読書活動の推進のための取組としてまだ十分に普及しているとは言い難い。 表2. 1 読書活動推進のための取組の状況 2005(平成 17)年 読書活動推 進のための 取組を実施 している学 校 割合 内訳(複数回答可) 必読書・推 薦図書を定 めている学 校数 割合 図書の読み 聞 か せ や ブックトー クを実施 割合 読書感想文 コンクール を実施 割合 その他 割合 小学校(22,230 校) 180,19 81.1% 15,727 70.7% 8,417 37.9% 3,704 16.7% 5,740 25.8% 中学校(10,078 校) 5,806 57.6% 2,075 20.6% 3,742 37.1% 1,683 16.7% 2,044 20.3% 高等学校(3,905 校) 2,188 56.0% 346 8.9% 1,712 43.8% 866 22.2% 1,118 28.6% 盲学校 小学部(63 校) 45 71.4% 36 57.1% 14 22.2% 9 14.3% 10 15.9% 中学部(61 校) 38 62.3% 27 44.3% 13 21.3% 10 16.4% 10 16.4% 高等部(56 校) 35 62.5% 16 28.6% 14 25.0% 12 21.4% 9 16.1% 聾学校 小学部(89 校) 71 79.8% 60 67.4% 24 27.0% 25 28.1% 14 15.7% 中学部(85 校) 53 62.4% 23 27.1% 19 22.4% 29 34.1% 13 15.3% 高等部(67 校) 36 53.7% 9 13.4% 19 28.4% 19 28.4% 10 14.9% 養護学校 小学部 (642 校) 224 34.9% 169 26.3% 49 7.6% 71 11.1% 36 5.6% 中学部 (642 校) 212 33.0% 151 23.5% 39 6.1% 68 10.6% 35 5.5% 高等部 (607 校) 188 31.0% 126 20.8% 43 7.1% 68 11.2% 32 5.3% 中等教育 学校/併 設型中・ 高等学校 前期課程/併 設型中学校 (46 校) 29 63.0% 11 23.9% 24 52.2% 11 23.9% 15 32.6% 後期課程/併 設型高等学校 (36 校) 25 69.4% 4 11.1% 21 58.3% 9 25.0% 17 47.2% 注)割合は、校種別、学部別、課程別の全学校数に対する数値を示す。 また、複数回答のため、内訳の学校数の合計が、全学校数に一致しないものがある。 出典:文部科学省。学校図書館の現状に関する調査結果について(平成 17 年度調査;平 成 18 年4月発表)
表2. 2 読書活動推進のための取組の状況 2006(平成 18)年 読書活動推 進のための 取組をして いる学校数 割合 内訳(複数回答可) 必読書・推 薦図書を定 めている学 校数 割合 図書の読み 聞 か せ や ブックトー クを実施 割合 読書感想文 コンクール を実施 割合 その他 割合 小学校(22,028 校) 18,481 83.9% 16,324 74.1% 8,619 39.1% 3,630 16.5% 5,538 25.1% 中学校(10,062 校) 6,097 60.6% 2,143 21.3% 3,940 39.2% 1,723 17.1% 1,945 19.3% 高等学校(3,901 校) 2,334 59.8% 332 8.5% 1,840 47.2% 910 23.3% 1,132 29.0% 盲学校 小学部(62 校) 43 69.4% 35 56.5% 16 25.8% 14 22.6% 8 12.9% 中学部(60 校) 36 60.0% 24 40.0% 13 21.7% 16 26.7% 8 13.3% 高等部(55 校) 29 52.7% 15 27.3% 13 23.6% 13 23.6% 4 7.3% 聾学校 小学部(85 校) 66 77.6% 52 61.2% 25 29.4% 28 32.9% 13 15.3% 中学部(84 校) 56 66.7% 20 23.8% 27 32.1% 29 34.5% 15 17.9% 高等部(67 校) 45 67.2% 13 19.4% 24 35.8% 22 32.8% 13 19.4% 養護学校 小学部(642 校) 220 34.3% 171 26.6% 41 6.4% 73 11.4% 24 3.7% 中学部(642 校) 204 31.8% 150 23.4% 40 6.2% 67 10.4% 20 3.1% 高等部(615 校) 188 30.6% 121 19.7% 48 7.8% 69 11.2% 21 3.4% 中等教育 学校 前期課程(15 校) 9 60.0% 3 20.0% 8 53.3% 3 20.0% 6 40.0% 後期課程(8 校) 5 62.5% 3 37.5% 4 50.0% 3 37.5% 3 37.5% 注)割合は、校種別、学部別、課程別の全学校数に対する数値を示す。 また、複数回答のため、内訳の学校数の合計が、全学校数に一致しないものがある。 出典:文部科学省。学校図書館の現状に関する調査結果について(平成 18 年度調査; 平成 19 年 4 月発表) 表2. 3 読書活動推進のための取組の状況 2007(平成 19)年 19 年 5 月 現在の学年 数 読書活動推進 のための取組 を実施してい る学校数 割合 内訳 ※複数回答可 必 読 書・ 推 薦図書を定 めている学 校数 割合 図 書 の 読 み 聞 か せ や ブ ッ ク ト ー クを実施 割合 読書感想文 コンクール を実施 割合 その他 割合 小学校 21,858 18,831 86.2% 16,992 90.2% 8,516 45.2% 3,830 20.3% 5,451 24.9% 中学校 10,020 6,336 63.2% 2,319 36.6% 4,048 63.9% 2,002 31.6% 1,871 18.7% 高等学校 3,845 2,309 60.1% 350 15.2% 1,767 76.5% 969 42.0% 1,049 27.3% 特別支援学校 小学部 792 357 45.1% 271 75.9% 92 25.8% 113 31.7% 38 4.8% 中学部 791 323 40.8% 213 65.9% 81 25.1% 118 36.5% 36 4.6% 高等部 746 268 35.9% 155 57.8% 87 32.5% 110 41.0% 31 4.2% 中等教育学校前期課程 17 10 58.8% 1 10.0% 8 80.0% 4 40.0% 5 29.4% 後期課程 12 8 66.7% 1 12.5% 6 75.0% 3 37.5% 5 41.7% 出典:文部科学省。平成 19 年度「学校図書館の現状に関する調査」結果について
表2. 4 読書活動推進のための取組の状況 2014( 平成 26) 年 ⑵全校一斉読書以外の読書活動推進のための取組の状況 学校数 (A) 全校一斉の読 書活動以外の 取組を実施し ている学校数 (B) 割合 (B / A) 具体的取組(複数回答可) 図書の 読み聞かせ (C) 割合 (C/B) ブックトー クを実施 (D) 割合 (D / B) 必 読 書 コ ー ナー・推薦図 書 コ ー ナ ー を設置(E) 割合 (E/B) 目標とする 読書量の設 定(F) 割合 (F/B) 小学校 20,147 19,772 98.1% 19,260 97.4% 7,566 38.3% 15,075 76.2% 10,011 50.6% 中学校 9,558 7,415 77.6% 2,767 37.3% 1,898 25.6% 6,435 86.8% 2,088 28.2% 高等学校 3,563 2,638 74.0% 374 14.2% 450 17.1% 2,452 92.9% 451 17.1% 特別支援学校 小学部 825 625 75.8% 574 91.8% 75 12.0% 279 44.6% 39 6.2% 中学部 826 569 68.9% 450 79.1% 68 12.0% 288 50.6% 35 6.2% 高等部 840 516 61.4% 368 71.3% 76 14.7% 296 57.4% 34 6.6% 中等教育学校前期課程 30 25 83.3% 0 0.0% 6 24.0% 23 92.0% 10 40.0% 後期課程 29 23 79.3% 0 0.0% 4 17.4% 22 95.7% 7 30.4% 出典:文部科学省 平成 26 年度「学校図書館の現状に関する調査」結果について 2. 2. 司書教諭・学校司書養成の科目とブックトーク ブックトークは、学校図書館の専門的職務を掌る司書教諭や学校司書の養成におい て、どのように位置づけられているのか。 学校図書館法(昭和 28 年法律第 185 号)は、学校には、学校図書館の専門的職務 を掌らせるため、司書教諭を置かなければならない(第5条第1項)とし、司書教諭 は、主幹教諭、指導教諭又は教諭をもって充てる。この場合において、当該主幹教諭 等は、司書教諭の講習を修了した者でなければならない(第5条第2項)と定めてい る。また、文部科学省令により司書教諭の資格を得ようとする者が修得しなければな らない科目として、5つの科目が定められている(学校図書館司書教諭講習規程(昭 和 29 年文部省令第 21 号 第3条)14(表2. 5 参照)。 表2. 5 学校図書館司書教諭講習科目とねらい 科目名 ねらい 学校経営と学校図書館 学校図書館の教育的意義や経営など全般的事項についての理解を図る 学校図書館メディアの構成 学校図書館メディアの構成に関する理解及び実務能力の育成を図る 学習指導と学校図書館 学習指導における学校図書館メディア活用についての理解を図る 読書と豊かな人間性 児童生徒の発達段階に応じた読書教育の理念と方法の理解を図る 情報メディアの活用 学校図書館における多様な情報メディアの特性と活用方法の理解を図る 学校図書館司書教諭講習規程の一部を改正する省令について(通知)文初小第 80 号 平成 10 年 3 月 18 日(別紙 2)司書教諭の講習科目のねらいと内容 2014(平成 26)年には学校図書館法が一部改正され、学校司書が法制化された。 改正された学校図書館法においては、学校には学校図書館の運営の改善及び向上を図 り、児童又は生徒及び教員による学校図書館の利用の一層の促進に資するため、専ら 学校図書館の職務に従事する職員(学校司書)を置くよう努めなければならない(第 6 条第 1 項)とされ、国及び地方公共団体は、学校司書の資質の向上を図るため、研
修の実施その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない(第 6 条第 2 項)と 定められた。さらに、附則において国は学校司書の職務の内容が専門的知識及び技能 を必要とするものであることに鑑み、この法律の施行後速やかに、新法の施行の状況 等を勘案し、学校司書としての資格の在り方、その養成の在り方等について検討を行 い、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする(附則第 2 項)としている。 2016(平成 28)年には、学校図書館の整備充実に関する調査研究協力者会議が設 置され、「これからの学校図書館の整備充実について(報告)」を取りまとめた。文部 科学省は、本報告を受けて、学校司書の職務から求められる専門的な知識・技能を整 理し、それらの知識・技能を習得できる科目から構成される学校司書のモデルカリキュ ラムを定めている。学校司書のモデルカリキュラムは、学校司書に求められる知識・ 技能の習得のために必要な科目で構成され、これらの科目は2つの科目群に分けられ ている。一つは、学校図書館の運営・管理・サービスに関する科目であり、もう一つ は、児童生徒に対する教育支援に関する科目である。学校司書のモデルカリキュラム には、司書教諭の科目、司書資格の科目が一部含まれており、司書教諭科目「学習指 導と学校図書館」「読書と豊かな人間性」等が該当する。また、“「学校図書館概論」は、 司書教諭の科目「学校経営と学校図書館」を履修した場合には、「学校図書館概論」 を履修したものと読み替えることも可能”とされている。(表 2.6 参照) 表2. 6 学校司書の養成科目とねらい 科目 ねらい 学校図書館の運営・管理・サービスに関する科目 学校図書館概論 学校図書館の教育的意義や学校司書の職務などの基本的事項についての理解を図る。 図書館情報技術論 図書館業務に必要な基礎的な情報技術を修得するために、コンピュータ等の基 礎、図書館業務システム、データベース、検索エンジン、電子資料、コンピュー タシステム等について解説し、必要に応じて演習を行う。 図書館情報資源概論 印刷資料・非印刷資料・電子資料とネットワーク情報資源からなる図書館情報 資源について、類型と特質、歴史、生産、流通、選択、収集、保存、図書館業 務に必要な情報資源に関する知識等の基本を解説する。 情報資源組織論 印刷資料・非印刷資料・電子資料とネットワーク情報資源からなる図書館情報 資源の組織化の理論と技術について、書誌コントロール、書誌記述法、主題分析、 メタデータ、書誌データの活用法等を解説する。 情報資源組織演習 多様な情報資源に関する書誌データの作成、主題分析、分類作業、統制語彙の適用、メ タデータの作成等の演習を通して、情報資源組織業務について実践的な能力を養成する。 学校図書館サービス論 学校図書館における児童生徒及び教職員へのサービスの考え方や各種サービス 活動についての理解を図る。 学校図書館 情報サービス論 情報サービスの種類や各種情報源の特性の理解を図るとともに、必要に応じて 演習を行い、児童生徒に資料・情報を適切に提供できる能力の育成を図る。 児童生徒に対する教育支援に関する科目 学校教育概論 学校教育や児童生徒の心身の発達などの基本的事項についての理解を図る。 学習指導と学校図書館 学習指導における学校図書館メディア活用についての理解を図る。 読書と豊かな人間性 児童生徒の発達段階に応じた読書教育の理念と方法の理解を図る。 「学校司書のモデルカリキュラム」について(通知)28 文科初第 1172 号平成 28 年 11 月 29 日 (別添)
このように、『学習指導と学校図書館』および『読書と豊かな人間性』は、司書教 諭の資格を得るための科目であり、学校司書の養成のための科目でもある。学校図書 館司書教諭講習科目としての『学習指導と学校図書館』および『読書と豊かな人間性』 と、「学校図書館モデルカリキュラム」の科目としての『学習指導と学校図書館』お よび『読書と豊かな人間性』については、それぞれ同じねらいと内容が文部科学省か ら示されている。 ブックトークについては、学校図書館司書教諭講習科目や学校司書のモデルカリ キュラムに含まれる科目の内、『読書と豊かな人間性』の内容として示されている。 文部科学省が示している『読書と豊かな人間性』の科目のねらいは、児童生徒の発達 段階に応じた読書教育の理念と方法の理解を図ることとされている。また、『読書と 豊かな人間性』の内容は、“1)読書の意義と目的、2)読書と心の教育(読書の習 慣形成を含む)、3)発達段階に応じた読書の指導と計画、4)児童・生徒向け図書 の種類と活用(漫画等の利用方法を含む)、5)読書の指導方法(読み聞かせ、ストー リーテリング、ブックトーク等)、6)家庭、地域、公共図書館等との連携”となっ ている(表 2.7 参照)。15これらの『読書と豊かな人間性』の内容項目において、ブッ クトークは、読み聞かせやストーリーテリングと共に、読書の指導方法の一つとして 位置づけられている。 (鈴木) 表2. 7 『読書と豊かな人間性』のねらいと内容 ねらい 内容 児童生徒の発達段階に応じた読 書教育の理念と方法の理解を図 る 1.読書の意義と目的 2.読書と心の教育(読書の習慣形成を含 3. む) 4.発達段階に応じた読書の指導と計画 5.児童・生徒向け図書の種類と活用(漫画等の利用方法を含む) 6.読書の指導方法(読み聞かせ、ストーリーテリング、ブックトーク等) 7.家庭、地域、公共図書館等との連携 学校図書館司書教諭講習規程の一部を改正する省令について(通知)文初小第 80 号 平成 10 年 3 月 18 日(別紙 2)司書教諭の講習科目のねらいと内容 「学校司書のモデルカリキュラム」について(通知)28 文科初第 1172 号平成 28 年 11 月 29 日 (別添) 「学校司書のモデルカリキュラム」 3.『読書と豊かな人間性』とブックトーク 3. 1.『読書と豊かな人間性』の実践報告とブックトーク 『読書と豊かな人間性』において、ブックトークはどのように学習されているのか。 『読書と豊かな人間性』に関する論文や報告の中から、特にブックトークの実践につ いて述べる。 内藤は、2001(平成 13)年 8 月に実施した画国図書館司書教諭講習における『読 書と豊かな人間性』の交互の実践報告を行っており、実技を中心とした演習課題に多
くの時間を割いたとしている。読み聞かせ、ブックトーク、ストーリーテリングなど 読書指導の方法として重視されている活動の指導を大きな課題と捉え“これらはまさ しく活動であるので、実際に行ってみることが必要である”として、6-7名の小グ ループに分かれてのブックトーク実技およびグループ代表によるブックトーク発表を 実施するなど、授業全体の約半分を実技演習に充てたとしている。しかし、読書へ誘 う実技は児童図書に対する豊富な知識が前提であるとして、授業内容としてのバラン スを課題とした。16 輿・生野・下田は、ポートフォリオの再構成に関する研究において『読書と豊かな 人間性』の授業を調査対象としている。読み聞かせ、アニマシオンと共にブックトー クの講義と演習(①ビデオ視聴・講義・学習材・テーマの決定②図書の選定・流れの 決定③展開案の作成④⑤小道具の作成・練習⑥⑦発表)を含めた講義内容とそれに対 する受講者の見解や感想を合わせてポートフォリオを再構成させることで、受講者の メタ認知能力を促した。17 2006 年に開催された日本図書館研究会の図書館学教育研究グループ研究例会にお いて、梓は『読書と豊かな人間性』の講義についての報告を行っている。実践的講義 として子どもを知ると同時に本を直接的に手渡す技術を学ばせるために実際に子供の 前で読み語り、ブックトーク、紙芝居を行わせる等、実践的な活動を試みたとしてい る。また、集中講義においてブックトークなどの実践的な指導は困難であること、通 信教育においては、スクーリングがない場合ブックトーク等の技術的なものは教える ことができないが、テキストでは不十分等の問題を指摘している。18 また、同じ例会において、深井は『読書と豊かな人間性』において、学生自身に読 書体験させるために展示とブックトークを実習させることを試みている。そして講義 形式では分からない学生の読書意欲や読書力を発見して刺激を受けたこと、奥行きの ある読書を必修で体験させることが必要であるとした。19 瀬田・牧は、『読書と豊かな人間性』の授業にプロジェクト型の学習形態を組み込 む授業実践について報告している。大学のイベントにおいて、受講生がグループで図 書の読み聞かせやブックトーク等の企画の運営や実演を実際に行っている。『読書と 豊かな人間性』にプロジェクト型の学習形態を採用することによって、読書指導に関 する知識や技能を応用が利く力として身に付けさせる効果があったとしている。20 松戸は、『読書と豊かな人間性』においてアクティブラーニングを導入し、受講生 の捉えを質的分析により明らかにしている。ブックトークの実践としては、グループ によるブックトーク等を実演させている。受講者はブックトークやアニマシオンをた だ単に読書への誘いの手段、文書読解の手だての手段だけではなく、他者への関りと いう観点にも注目していた”と分析し、このような視点から『読書と豊かな人間性』 の授業デザインを検討する必要性を指摘している。21 野口は、学校図書館司書教諭課程におけるブックトーク課題の内容と実践の推移を 紹介している。22また、立教大学で開催された司書教諭科目に関するシンポジウムに おいて、野口は『読書と豊かな人間性』の授業実践について報告を行っている。ブッ
クトークについては、学生が本に触れることを重要と考え、読書材について知ること、 図書館に足を運ぶことを実践させるためにブックトークの課題を課していること、個 人による 15 分間のブックトークの実演やグループワークによるブックトークのプラ ンの作成とプレゼンテーションを課していること、ブックトークを課す理由として教 科に読書指導を取り入れる可能性を考えさせること、教科で活用可能な本を図書館で 探して知ってもらうこと、探求学習のプロセスを体験できることを挙げている。 『読書と豊かな人間性』の論文や実践報告からは、授業担当者がブックトークに関 する学習において講義による理論の修得だけではなく、受講者に実践させることを重 視していること、また、ブックトークの実践的学習には実演、プレゼンテーションか ら、ポートフォリオの活用、プロジェクト型学習、グループワーク、アクティブラー ニング等の様々な学習方法が試みられていることが明らかになっている。このような 実践的な学習には、ともすれば比較的大規模なクラスサイズ、授業の内容の配分にお いて講義や理論の修得とのバランス等の困難が伴うことがあるが、学生が実践的に学 習できるように、教員が様々な工夫をされていることが見えてくる。 3. 2.T 大学における『読書と豊かな人間性』 本稿で取り上げる T 大学は教職課程が設置されており、本学の教育学部および外 国語学部が「教科または教職に関する科目」として『学校経営と学校図書館』(3年次)、 『学校図書館メディアの構成』(2年次)、『学習指導と学校図書館』(3年次)、『読書 と豊かな人間性』(2年次)『情報メディアの活用』(1年次)の司書教諭に関する科 目を開講している。なお T 大学では学校図書館モデルカリキュラムの科目は開講さ れていない。司書教諭科目の受講者は教職課程に属し、受講者により小学校、中学校・ 高等学校(国語・社会・数学・理科・音楽・保健体育・外国語(英語))および特別 支援学校の免許課程の科目を履修している。2018 年度に『読書と豊かな人間性』を 受講した学生は、100 名程度である。 T大学における『読書と豊かな人間性』の目的は、次の通りである。1)読書の意 義を理解し児童生徒の発達段階に応じた読書指導の方法を学ぶ、2)児童生徒が本を 読むことの楽しさを知り、豊かな心を培う読書指導のあり方について考察する、3) 児童生徒の読書能力と読書習慣の育成の支援、読書環境整備などを行う司書教諭の役 割について理解を深めることである。また、1)読書が教育課程全般に関わる重要な 要素であることを知り、読書活動を推進するために求められている司書教諭の役割に ついて理解することができる2)学生は、司書教諭として児童生徒や同僚職員に適切 な読書活動支援をするために必要な知識や手法を身に付けることができることを到達 目標として設定している(表3. 1参照)。 T大学における『読書と豊かな人間性』の授業の内容には、講義とともにブックトー クの演習が含まれている。演習内容については次章で詳細を述べる。 (鈴木)
表3.1 『読書と豊かな人間性』のシラバス 授業の概要 人間形成に深い関わりをもつ読書や教育課程全般に関わる読書指導について、総合的に考察していき たい。児童生徒の読書環境や多様な読書資料に関する学習をもとに、読書生活の向上のための手立てを 探っていく。またブックトークや読み聞かせをはじめとする子どもと本を結ぶための様々な手法を学び、 児童生徒の言語環境をより豊かにするために司書教諭として必要とされる基礎的な力を育成する。 授業の目的及び到達目標 <授業の目的> 読書の意義を理解し児童生徒の発達段階に応じた読書指導の方法を学ぶ。児童生徒が本を読むことの 楽しさを知り、豊かな心を培う読書指導のあり方について考察する。また、児童生徒の読書能力と読書 習慣の育成の支援、読書環境整備などを行う司書教諭の役割について理解を深める。 <授業の到達目標> ・学生は、読書が教育課程全般に関わる重要な要素であることを知り、読書活動を推進するために求め られている司書教諭の役割について理解することができる。 ・学生は、司書教諭として児童生徒や同僚職員に適切な読書活動支援をするために必要な知識や手法を 身に付けることができる。 授業の計画と内容 第 1回 第Ⅰ章 読書と読書指導の意義と目的 第 2回 第Ⅰ章 読書指導と学校図書館 第 3回 第Ⅴ章 ブックトークの実践方法 第 4回 第Ⅱ章 子どもの読書環境と読書実態 第 5回 第Ⅲ章 読書資料の種類と特性①絵本 フィクション 第 6回 第Ⅲ章 読書資料の種類と特性②ノンフィクション 知識の本 レファレンスブック 第 7回 第Ⅳ章 発達段階に応じた読書指導① 読書能力・読書興味の発達から 第 8回 第Ⅳ章 発達段階に応じた読書指導② 小学校期・中学高校期 第 9回 第Ⅴ章 子どもと本を結ぶための方法① 読書環境の整備 図書の紹介方法 第10回 第Ⅴ章 子どもと本を結ぶための方法② 読書指導の方法 読書体験の表現と交流 第11回 第Ⅴ章 ブックトークのシナリオづくりと実践 第12回 第Ⅵ章 読書指導の実際 集団的指導・個別的指導 第13回 第Ⅶ章 読書活動の推進と司書教諭① 読書活動推進計画と司書教諭の役割 第14回 第Ⅶ章 読書活動の推進と司書教諭② 学級担任・教科担任との連携 第15回 第Ⅷ章 地域社会との連携 公共図書館・学校図書館支援センターとの連携を中心に 教科書 読書と豊かな人間性」シリーズ学校図書館学第 4 巻シリーズ学校図書館学編集委員会 著 2 T 大学『読書と豊かな人間性』のシラバス(2018 年度)より抜粋 4.「ブックトーク」の実践について 4. 1.はじめに 学校図書館が学習センター、読書センター、情報センターとして機能し、教育課程 の展開に寄与するために、司書教諭は、「本と授業をつなぐ人」231)として学習活 動を支える図書館教育を推進し、積極的に授業支援していくことが求められる。授業
支援には、図書や資料(学習情報)の紹介、T・T(ティームティーチング)、ブッ クトーク等があげられる。 本稿では、小学校でのブックトーク実践事例や大学における司書教諭資格取得科目 「読書と豊かな人間性」で行ったブックトーク演習から、学習支援活動としてのブッ クトークの有効性、教員養成課程におけるブックトーク演習の意義について考察して いきたい。 4. 2.ブックトークについて ブックトークとは、あるテーマのもとに、何冊かの本を選び、シナリオにそって関 連させながら順に紹介すること。聞き手が紹介された本に関心をもち、手にするきっ かけをつくり、読書意欲を喚起することを目的として行われる。 読み聞かせから一人読みへといざなう優れた読書指導の方法の一つであり24、読書 の幅を広げ、読書の質を深めることができる。 日本の学校図書館・学校教育現場におけるブックトークは、岡山県学校図書館問題 研究会による「ブックトーク入門」(教育史料出版会、1986 年)の出版、全国学校図 書館協議会による「ブックトーク理論と実践」を出版、1990 年)、を機に実践が行わ れるようになってきた。 蔵元和子は、教室でのブックトークのねらいについて、以下のように述べている。25 ①本のおもしろさ、楽しさを伝える(読書指導、読書生活の充実・国語科) ②学習の展開をよりおもしろく、より広く、深くする(各教科・総合的な学習) ・学習課題に対する興味、関心を導く ・学習課題に対する豊かで共通のイメージを持たせる ・集団及び個人が学習課題を把握し、課題を明確にする支援をする ・調べ学習や教科学習を支援する資料提供をする ③生活上の問題について考えを深める(道徳・学級指導) 学習活動としてのブックトークには二つの面がある。一つは、学習内容、学習活動 にそったブックトークを行い、授業をより豊かなものにすることであり、もう一つは 本そのもののよさを伝え、授業を通して本好きな児童生徒を育てていくことである。 これらは相対するものではなく、二つを関連させることにより、ブックトークはより 意義のあるものになると考える。 ブックトークを行う際、司書教諭・学校司書は担任と話し合い、児童生徒の実態を 知り、単元のねらい、本時のねらい、ブックトークのねらいを明確にすることが重要 である。
4. 3.ブックトーク実践例 (論者が司書教諭として行ったもの) ⑴.3年 国語科「アリの行列」 ブックトークテーマ「生き物のふしぎ発見 ちえ発見」 国語科教材「アリの行列」の学習を通して、児童は、生き物がもつ不思議なちえや 力に興味をもった。担任は、この興味関心を生かして子どもたちが生き物の本を進ん で読み、ちえや力を文章にまとめていく授業構想を立てた。そこで、司書教諭は学習 が後半に入った頃、ブックトラックに関連図書、100 冊を教室に届けた。 学習の終末に行うブックトークでは、選書の基準として、生き物の生きていくため のちえ、身をまもるためのちえ(擬態、卵や幼虫を守る、警告色やにおい、場所に合 わせる力など)が鮮明なものと考え、以下の本を紹介した。「森の小さなアーティスト」 (今森光彦 福音館書店)、「つくったのだれ?」(山口進 福音館書店)、「オトシブミ 昆虫の本能のひみつをさぐる」(千石安之助 偕成社)、「虫たちの身をまもる力」、 「ファーブル昆虫記」(小林清之助 小峰書店) ブックトークのシナリオは、導入で担任が児童から生き物のちえや不思議な力につ いて発言を引き出し、それらを司書教諭がブックトークを通してまとめ、整理してい くという形で構成を考えていった。 また、不思議さがより子どもたちに伝わるように、写真を拡大カラーコピーしたも のを準備し、ブックトークに合わせて、担任が黒板に掲示していった。掲示物や小物 の提示はブックトークをより魅力的なものにする。 ブックトークの終末には「ファーブル昆虫記」を紹介し、「ファーブルは子どもの ころからたくさんの虫を追いかけた人です。皆さんと同じように目を輝かせて昆虫の ちえや不思議を発見したのでしょう。今、皆さんは本を通して虫の不思議やちえと出 会っていますが、本物と出会って不思議やちえが発見できたらすばらしいですね。」と、 図書だけではなく、実際の観察につながるようはたらきかけた。 児童は見つけた知恵や不思議を「ミニブック」にまとめ、お互いに紹介し合った。 授業後担任から、「これまで虫に興味を示さなかった子どもが、ウスバカゲロウの卵 が美しい糸でつながっているのを見つけたり、シャクトリムシを見て喜んだりしてい ます。」「ファーブル昆虫記をシリーズで読み始めた子どももいます。」との報告があっ た。授業、ブックトークを通して、児童の世界が広がること、読書指導が授業と一体 化されたとき、児童の読書興味が喚起されることを実感した。 ⑵.6年 国語科「やまなし」「イーハトーヴの夢」 ブックトークテーマ「賢治の世界を旅しよう」 本単元は、物語「やまなし」と伝記「イーハトーヴの夢」(畑山博著)で構成され
ている。授業者は、ブックトークを聴いたり、作品を比べて読んだりすることにより、 作者の思いを感じとらせるとともに、授業の中での読書を日常の読書につなげたいと 考えた。そこで、「やまなし」の学習のまとめの段階で、宮澤賢治の生涯とからめな がら代表作品を紹介するブックトークを行った。6年生の児童が賢治の世界を身近に 感じ、印象深く味わえるよう、絵本を中心に選書し、以下のようにシナリオを構成し た。 ① 賢治の故郷、岩手山の写真を提示し、石を集めるのが好きで「石こ賢さん」 とあだ名がつくほどだったこと、植物や鉱石や宝石、星や星座にも興味をも ちながら成長したこと。 →動物や植物が出てくる作品 「どんぐりと山ねこ」(講談社 宮澤賢治童話えほん) 「なめとこ山の熊」(偕成社 日本の童話名作選) ② 恵まれた生活の中で、災害、飢饉等で、苦労する農民への思いをもち、次第 に自分の生き方にめざめていく賢治の様子、妹のとしさんとの心のふれあい とその死。 →賢治の悲しみを象徴する詩「永訣の朝」 →としさんを失った悲しみのなかで生まれた「銀河鉄道の夜」(講談社) ③ みんなの幸せを願った賢治が農学校の先生、そして本当の農民になろうとし たこと。やまなしにも出てくる不思議な言葉や「羅須地人協会」「イーハトー ヴ」など、の言葉は、世界じゅうの人が同じ言葉で話せばもっと分かり合え ると、賢治が習っていた「エスペラント語」の影響があったことを伝える。 →「注文の多い料理店」(三木商工 「ミキハウスの絵本」) →「セロひきのゴーシュ」(偕成社 「日本の童話名作選」) ④ 賢治もとしさんのように病気になり、若くして亡くなってしまい、たくさん の原稿と黒い手帳が残され、手帳に書かれた言葉は、賢治の有名な「雨にも 負けず」の詩になった。たくましい農民になって生きたかった賢治の心が伝 わってくる。 →「雨にも負けず」(パロル社) ⑤ 「虔十公園林」の主人公虔十の生き方は、賢治の願った生き方と重なる。
→「虔十公園林」(偕成社 日本の童話名作選) ⑥ 「注文の多い料理店 序文」を、賢治から、読者へのメッセージとして紹介 する。) ブックトーク後の、賢治の生き方、考え方をふまえながら「やまなし」の主題を読 み取っていく学習に児童は意欲的に取り組み、話し合いを深めることができた。 また、賢治の作品や詳しい伝記がよく読まれ、ブックトークを行うことで読書意欲 を喚起することが確認できた。 4. 4.司書教諭養成科目「読書と豊かな人間性」におけるブックトーク演習からの考察 ⑶.ブックトーク演習の目的 平成 26 年度「学校図書館の現状に関する調査」( 文部科学省 ) 3)26での読書活動 の状況調査では、ブックトーク実施の学校の割合は、小学校 38.3%、中学校 25.6%、 高等学校 17.1% となっている。この数値から児童生徒と本をつなぐブックトークは教 育現場にはまだ十分根づいていないことがうかがわれる。教員養成課程の学生にも ブックトークの経験者は多くはない。そこで「読書と豊かな人間性」では、読書活動 を支援するために必要な実践力を身に付けるためにブックトークの演習を実施してい る。 また、演習は、児童生徒がブックトークを行う際の指導にも活かされていくと考える。 ⑷.⑵演習の流れ ①ブックトークを体験し、理解を深める。 (実演「賢治の世界を旅しよう」を聞く。実践DVDを視聴する。) ②ブックトークの基本的な考え方・作成手順を知る。 ⑴ ブックトークのテーマを決める ⑵ テーマにそって本を選ぶ ⑶ 中心となる本を決めるとともに、聴き手の実態、本の難易度、フィクション、 ノンフィクションの別、絵本、写真集、物語などのジャンルを考えながら、紹 介する本を絞っていく (4) 本と本をつなぐキーワードやエピソードをつかみながら、本の紹介の順序や つなぎの言葉(文章)を考える ⑸ ブックトークのシナリオを考える ⑹ ブックトークに関係のある小道具や実物、写真などを準備する ⑺ ブックトークをする。紹介した本は、表紙が見えるように順に並べ、終了後、
すぐ手にすることができるようにしておく。リストも配布するとよい。 ③1か月の準備期間を設け、個人で、作成手順 (1) ~ (6) に沿って準備・練習する。 ④3人グループを作り、ブックトークを発表し合う。 ⑸.学生の振り返り(感想)からの、ブックトークの有効性に関する考察 【ブックトークは読書意欲を喚起する】 ・ 本との出会いが広がり、今まで読んでこなかったジャンルにも手をのばしてみ ようという思いになることができました。 ・ 紹介された本の世界にすっと入っていくことができた。重要な部分を取り上げ て分かりやすく簡潔に紹介してくれたからです。 【ブックトークは、読書の世界を共有する場として有効である】 ・ 好きな本を他の人に伝えることは、共有する場、コミュニケーションする場と して大切だと実感しました。親、先生から子どもへと本を紹介する機会を増や す取り組みがもっと広がってほしいと思いました。 【ブックトークを作成することで精読の力が育つ】 ・ シナリオを作成するとき、聞き手に本の深みを伝えるために読み直していくこ とで、自分自身もより本に親しむことができるようになったと感じた。 ・ ブックトークをするために、本を何度か読み込んだが、読む度に、新しい発見 があり、本の良さを知ることができた。 【ブックトークは教科学習に活かすことができる】 ・ 友人は「水の循環」という理科の内容を扱っており、ブックトークは国語以外 の教科でも利用できることを実感した。 ・ 高校生を対象とし、数学を扱ったテーマとした。苦手意識をもっている子も多 いと考え、難しい内容を扱いながらも面白くなるような工夫のある本を選んだ。 (林) 5.まとめ 本稿では、学習支援活動としてのブックトークの有効性、教員養成課程におけるブッ クトーク演習の意義等について考察するために、小学校における司書教諭によるブッ クトークの実践と、大学における司書教諭講習科目『読書と豊かな人間性』で行って いるブックトークの演習について述べた。 文部科学省の「学校図書館の現状に関する調査」の結果から、ブックトークは読書
活動の推進のための取組としてまだ十分に普及しているとは言えないことが明らかに なった。司書教諭養成課程や学校司書の養成科目においては、『読書と豊かな人間性』 において読書の指導方法(読み聞かせ、ストーリーテリング、ブックトーク等)とし てブックトークを学習するが、『読書と豊かな人間性』に関する論文や実践報告等を 文献調査からは、ブックトークに関する学習において、受講者に実践させることを重 視しプレゼンテーションやポートフォリオの活用、プロジェクト型学習、グループワー ク、アクティブラーニング等の様々な学習方法が試みられていることが明らかになっ た。 そして、筆者(林)が司書教諭として実践したブックトークによる授業支援の事例 から、授業、ブックトークを通して児童の世界が広がること、読書指導が授業と一体 化されたとき、児童の読書興味が喚起された。また、主題を読み取っていく学習に児 童は意欲的に取り組み、話し合いを深めることができること、ブックトークを行うこ とで読書意欲を喚起することなど、学習支援活動としてのブックトークの有効性が確 認された。また、司書教諭科目において行っているブックトーク演習については、読 書活動を支援するために必要な実践力が身に付けることができると共に、読書活動や 教科学習等への支援におけるブックトークの有効性について学生が理解を深めること ができることが『読書と豊かな人間性』の受講者の振り返りから明らかになった。 今後の課題は、教員が読書支援に対する理解を深め実践力を一層身につけるために 大学等の養成課程においてどのような学習が行うことができるかを検討することであ る。ブックトークは教育現場にはまだ十分定着しておらず教員養成課程の学生にも ブックトークの経験者は少ない。『読書と豊かな人間性』だけではなく、『学習指導と 学校図書館』等を含めた司書教諭課程、さらには教員養成課程の内容を読書支援の実 践力の修得の観点から検討し、読書支援の理論や実践力を身に付けられるような方策 を検討する必要があると思われる。 (鈴木) 6.参考文献 1.岡山市学校図書館問題研究会編 . ブックトーク入門 . 教育史料出版会 , 1986. 222p 2.全国 SLA ブックトーク委員会編 . ブックトーク . 全国学校図書館協議会 , 1990. 180p 3.村上淳子編著 . だれでもできるブックトーク . 国土社 , 2008.3. 175p 4.笠原良郎 編著 . 読書の楽しさを伝えよう ポプラ社 , 2005.3. 190p
7.註 1第四次「子供の読書活動の推進に関する基本的な計画」(概要)(平成 30 年4月 20 日) URL: http://www.kodomodokusyo.go.jp/happyou/hourei_download_data. asp?id=29 2子供の読書活動の推進に関する基本的な計画 . 平成 30 年4月 . p.22. URL: http: / / w w w . m e x t . g o . j p / b _ m e n u / h o u d o u / 3 0 / 0 4 / _ _ i c s F i l e s / a f i e l d f i l e /2018/04/20/1403863_002_1.pdf) 3子供の読書活動の推進に関する基本的な計画 . 平成 30 年4月 . p.30. URL: http:// w w w . m e x t . g o . j p / b _ m e n u / h o u d o u / 3 0 / 0 4 / _ _ i c s F i l e s / a f i e l d f i le/2018/04/20/1403863_002_1.pdf 4日本図書館情報学会用語辞典編集委員会編 . 図書館情報学用語辞典 . 第 4 版 . 丸善 出版 , 2013. 284p ブックトークは“教師や図書館員などが,子どもたちあるいは図 書館の一般利用者を対象に,特定のテーマに関する一連の本を,エピソードや,主 な登場人物,著作者の紹介,あらすじも含めて,批評や解説を加えながら一つの流 れができるように順序よく紹介したもので,図書の利用を促進しようという目的を 持って行う教育活動”とされる。 5『学校図書館』誌においては 1974 年 9 月号(ブックトーク ( 特集 ). 学校図書館 (287), 9-48, 1974-09. 1984 年 7 月号(ブック・ト - クをやってみませんか < 特集 >. 学校図 書館 (405), p9-39, 1984-07)と 2 度の特集にとどまるものの、ブックトークをタイト ルに含む記事(連載含む)については 1959 年以降 50 本程度掲載されており、近年 (2010 年代 ) では次のようなブックトークに関する記事が見られる : 横田久仁子 . 図書館 との連携からの読書指導 --「ブックトーク」の取組みを通して ( 特集 教科指導 ( 国 語科 ) と学校図書館 ). 学校図書館 (719), 31-33, 2010 ; 渡邉光輝 . ブックトークを授 業に活 ( い ) かす : 「ブックトークを聞く会」の学びから . 学校図書館 (746), 81-83, 2012-12 ; 阿部悦子 . 読書支援のためのブックトークにテクノロジーの応用 : コン ピュータ・インターネットの活用 . 学校図書館 (758), 81-84, 2013-12 ; 大澤弥生 . 読書感想文を楽しく書くために : ブックトークと読書感想文達人への道 ( 特集 読書 感想文指導の取組み ). 学校図書館 (775), 47-49, 2015 ; 山本みづほ . 中 学 校 で の 図書館実践 (2) 国語の授業における単元の導入・発展のためのブックトーク : 学校司 書との協働 (2). 学校図書館 (787), 67-69, 2016 ; 山本みづほ . 中学校での図書館実践 (3) 生徒によるブックトーク : 司書教諭一人ぼっちの実践 (1). ; 学校図書館 (788), 81-83, 2016-06 ; 柴田陵子 . 図書館活用術 ( 第 10 回 )「ブックトーク」で読書を深める ! : 読書の変革を生み出す読書の学習 . 学校図書館 (795), 39-43, 2017 6国語科とブックトークについて扱った論文としては以下のものが挙げられる : 西一 夫 . 読書指導の一方法 : 小説教材「山月記」でのブックトーク . 国語指導研究 4, 13-26, 1991 ; 三船 芳明 . 「生涯学習を見据えた読書教育の研究」. 全国大学国語教育学 会発表要旨集 102, 86-89, 2002 ; 中原秀樹 . コミュニケーション学習におけるメタ認
知的活動の効果 --「ブックトーク」制作時の話し合い活動から . 上越教育大学国語 研究 (18), 28-47, 2004 ; 牛頭哲宏 . 「言葉の学びを振り返る力」を育てる学習指導 : 小 学校 6 年間に学んだ 44 編の物語教材を読む . 全国大学国語教育学会発表要旨集 109, 11-14, 2005 ; 三木惠子. 提案 3 年間を通して「つけたい力」と「つけた力」を意識 させる国語科授業作り : 「ミニブックトーク」言語活動における多様な評価 ( 国語科 授業づくりと言語活動のあり方 - 言語活動をどのように評価するか- , 春期学会 第 128 回 兵庫大会 ). 国語科教育 78(0), 10-12, 2015 ; 春期学会 第 128 回 兵庫大会 ). 国語科教育 78(0), 10-12, 2015 ; 三木惠子 . 年間を通し て「つけたい力」と「つけた力」を意識させる国語科授業づくり : 「ミニブックトー ク」言語活動における多様な評価 ( 国語科授業づくりと言語活動のあり方 - 言語活 動をどのように評価するか -, シンポジウム ). 全国大学国語教育学会発表要旨集 128, 173-176, 2015 ; 中学校国語科教育におけるブックトークを活用した読書教育の可能 性 及川 彩香 , 新藤 透 図書館綜合研究 (16), 36-50, 2016 ; リーディング・ワーク ショップによる優れた読み手の育成―1 時間の授業過程の分析―勝田光 , 澤田英 輔 . 国語科教育 84(0), 58-66, 2018 7折川司 . 中等教育の読解指導におけるブックトークの活用 教育実践研究 (41), 1-12, 2015 8村上真理 . 読書実態と読書意欲を育む試み 沼津工業高等専門学校研究報告 50, 91-94, 2016 9学校図書館の現状に関する調査結果について(平成 17 年度調査;平成 18 年 4 月発表) URL: http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/286184/www.mext.go.jp/b_ menu/houdou/18/04/06042518.htm 2018/11/09 アクセス 10学校図書館の現状に関する調査結果について(平成 18 年度調査;平成 19 年 4 月発 表) URL: http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/286184/www.mext.go.jp/b_ menu/houdou/19/04/07050110.htm 2018/11/09 アクセス 11平成 19 年度「学校図書館の現状に関する調査」結果について URL: http:// www.mext.go.jp/b_menu/houdou/20/04/08041814.htm 2018/11/09 アクセス 12子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画(第二次)(平成 20 年 3 月 11 日) http://www.kodomodokusyo.go.jp/happyou/hourei.html?page=3 13平成 26 年度「学校図書館の現状に関する調査」結果について URL: http:// www.mext.go.jp/a_menu/shotou/dokusho/link/1358454.htm 2018/11/09 アクセ ス 14学校図書館司書教諭講習規程の一部を改正する省令について(通知)文初小第 80 号 平成 10 年 3 月 18 日(別紙 2)司書教諭の講習科目のねらいと内容 15学校図書館司書教諭講習規程の一部を改正する省令について(通知)文初小第 80 号 平成 10 年 3 月 18 日(別紙 2)司書教諭の講習科目のねらいと内容. URL: http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/dokusho/link/1327211.htm 2018//11/09 アクセス
16内藤一志 . 学校図書館司書教諭講習科目の運営 : 「読書と豊かな人間性」を通して 北海道教育大学教育実践総合センター紀要 3, 121-124, 2002 17輿幸雄 , 生野金三 , 下田好行 . 学習者のメタ認知能力を促すポートフォリオの再構 成についての研究 : 「読書と豊かな人間性」の授業を手がかりとして 教育実践研究 : 信州大学教育学部附属教育実践総合センター紀要 4, 1-8, 2003 18梓加依 . 1. 司書教諭課程科目「読書と豊かな人間性」の講義について ((1) 授業実践「読 書と豊かな人間性」: 発表とディスカッション , 第 110 回研究例会報告 , 図書館学教 育研究グループ研究例会報告 ) 図書館界 58(3), 192, 2006 19深井耀子 .2. 司書教諭科目「読書と豊かな人間性」について ((1) 授業実践「読書と 豊かな人間性」: 発表とディスカッション , 第 110 回研究例会報告 , 図書館学教育研 究グループ研究例会報告 ) 図書館界 58(3), 192-193, 2006 20瀬田祐輔 , 牧恵子 . プロジェクト法を用いた「読書と豊かな人間性」の実践 愛知 教育大学教育実践総合センター紀要 (13), 91-100, 2010-02 21松戸 宏予 . アクティブラーニングを用いた授業デザインの検討 --「読書と豊かな人 間性」における実践を通して . 学校図書館学研究 13, 19-29, 2011 22野口久美子 . 学校図書館司書教諭課程におけるブックトークの実践 --2 年間の試行 錯誤から得られた成果と課題 . 図書館綜合研究 / 図書館綜合研究会 編 .. (10) 2010. p.30 ~ 40 23林容子 著 . 司書教諭はじめの一歩 . 図書館流通センター , 2002. 49p 24東京都小学校図書館研究会・ブックトーク研究会 .『教室でのブックトーク4』 東 京都小学校図書館研究会 p.3-6 25林容子 前掲書 . 49p 26前掲.文部科学省『平成 26 年度 学校図書館の現状における調査』