Kobe Shoin Women’s University Repository
Title 追悼の辞
Author(s) 学長 黒澤一晃
Citation
キリスト教論藻(KIRISUTOKYO RONSO)Bulletin of the Institute for Research of Christian Culture,No.19: 1-2
Issue Date 1986
Resource Type Bulletin Paper / 紀要論文
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追
悼
の
辞
晃
学 長 黒 澤 キ リス ト教文化研究所所長 私 ど もの敬 愛 す る平 島 達 司 教 授 に は,昭 和61年3月11日 早 朝,脳 溢 血 の た め 急 逝 され ま した。 痛 恨 の 極 み で あ ります 。 享 年73歳 で あ りま し た。 先 生 は,昭 和11年3月 東 京 帝 国 大 学 理 学 部 化 学 科 を ご卒 業 後,三 菱 砿 業 研 究所 技 師 と して 当 時 最 先 端 に あ っ た石 炭 油 化 の 研 究 に従 事 さ れ た の ち,陸 軍 技術 将 校 と して 陸 軍 燃 料pに て 引 き続 きそ の 研 究 を続 け られ,終 戦 後 は 合 成 化 学 な らび に 医 薬 品 合 成 に 関 す る研 究 所 を経 営 され,自 ら も研 究 者 と して, 化 学 の 研 究 に 従事 され ま した 。 昭 和35年4月,家 政 科 設 立 に 際 して 松 蔭 短 期 大 学 に奉 職 され,そ の 後36年 の 長 きに わ た っ て,研 究 と教 育 を通 じて本 学 の 発 展 の た め に 献 身 され た の で あ り ます 。 その 間 つ ね に慈 父 の ご と く学 生 の 指 導 ・教 育 に専 念 され た先 生 は,短 期 大 学 学 生 部 長 ・同図 書 館 長 ・学 院理 事 な ど を歴 任 され,本 学 の 教 育 行 政 に参 加 され る と と も に,学 院 の 運 営 に も貢 献 され たの で あ り ます 。 学 者 と して の先 生 の 活 躍 は,大 き く2つ の分 野 に わ た って い ます 。1つ は, 化 学 者 と して の ご 活 躍 で あ り,い ま1つ は,音 響 学 の 研 究 家 と して の ご 活 躍 で あ ります 。 す な わ ち先 生 は,本 学 「研 究 紀 要 」第2号 に,「 触 媒 に 関 す る研 究(第1報)』 を発 表 さ れ て 以 来 引 き続 き数 々 の 化 学 論 文 を発 表 さ れ て い た の で あ ります が,突 如 と して 華 麗 な る転 身 を遂 げ られ,「 研 究 紀 要 」第10号 に掲 載 され た 『音 波 の 位 相 』 の 問 題 に は じま り,次 々 とパ イ プ ・オ ル ガ ン の 音 響 に 関 す る論 文 を発 表 さ れ る に い た っ た の で あ ります が,遂 に そ の 研 究 は 『オ ル ガ ン の 歴 史 とそ の 原 理 歴 史的 オ ル ガ ン再 現 の た め の 資 料 』 な ら び に 『ゼ ロ ・ビー トの 再 発 見(上 ・下)』 に昇 華 さ れ る の で あ り ます 。 1私 が,先 生 の こ著 述 の な か に常 に 感 じた もの は,科 学 者 と して の 緻 密 さで あ りま した 。 先 生 の 主著 で あ る上 記 『オル ガ ン の 歴 史 と そ の 原 理 』 は,オ ル ガ ンの 調 律 に お け る論 争 を科 学 者 の 目 を も っ て論 理 づ け ら れ た もの で あ り ま した 。 そ して そ の 原 理 は 本 学 チ ャペ ル に建 造 さ れ た パ イ プ ・オ ル ガ ン に見 事 に具 現 化 さ れ て い る の で す 。 先 生 の 主 張 され た 「古 典 調 律 」 は 決 して 先 生 だ け の理 論 で は あ りませ ん 。 しか し,そ の 主 張 の な か に見 られ る論 理 性 は 何 ぴ と とい え ど も追 随 で きな い もの で あ り ま した 。 そ して 今,私 た ち は 日々 の 礼 拝 に際 し て こ の オ ル ガ ン の 音 色 を聞 くた び に,科 学 者 と して の 平 島先 生 を懐 か し く想 起 い た して い ます 。 こ こ に先 生 の生 前 の 学 問的 ご功 績 を讃 え,本 号 を 「平 島達 司 先 生 追 悼 号 」 と して,故 平 島達 司 先 生 に捧 げ る次 第 で あ り ます 。 2