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単分子配線法の開発に成功

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平成23年5月6日 独立行政法人 物質・材料研究機構

― 究極の微小デバイス、単分子デバイスの実現へ道 ―

独立行政法人物質・材料研究機構(理事長:潮田 資勝)国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の大川祐司 研究者、青野正和拠点長らの研究チームは、独立行政法人科学技術振興機構、バーゼル大学(スイス)、ユー リヒ総合研究機構(ドイツ)およびカリフォルニア大学ロサンゼルス校(アメリカ)と共同で、個々の有機分 子に導電性高分子注1を一本ずつ配線できる画期的な方法を開発した。化学的ハンダづけと名付けたこの方法 により、究極の微小デバイスである、有機単分子をエレクトロニクス素子として用いる単分子デバイス回路の 実現に道が開かれた。 現在のコンピューターや携帯電話に使われているシリコンを基本とした電子デバイスは、微小化・高集積化 することにより、性能を飛躍的に向上させ、現代の高度情報化社会を支えている。しかし、微小化による性能 向上も、遠からず限界に達することは明らかである。したがって、情報処理デバイスの発展を維持するには、 さらなる微小化・省電力化を可能にする革新的なデバイスの開発が必要である。次世代デバイスの有力候補の 一つとして、一つ一つの有機分子に整流やスイッチング等の電子デバイス機能を持たせる、単分子デバイスの アイデアがある。単分子デバイスサイズは一分子のサイズ(1から数ナノメートル)であり、現在のシリコン デバイスの数十分の一程度の大きさしかない、究極の微小デバイスと言えよう。単分子デバイスの研究の歴史 は古く注2、これまで非常に多くの研究がなされてきたが、未だに実現には至っていない。その大きな理由の 一つとして、デバイス機能を持った有機単分子に電線を配線するための適切な方法がなかったことにある。金 属線を分子サイズまで細くすることは極めて困難で あることから、金属線の代わりに電気を流す分子(導 電性高分子)を用い、機能を持った個々の有機分子 に対して一本ずつ接続して配線する技術が求められ ていた。 本研究では、我々が開発した連鎖重合反応注3のナ ノスケール制御法を発展させて、単分子の化学反応 を制御できる新しい現象を見いだし、個々の有機分 子に導電性高分子を一本ずつ配線する技術を開発し た。まず、適切な分子(具体的にはジアセチレン化 合物分子)が秩序正しく並んだ平坦な膜を作製し、 その上に機能を持った有機分子を配置する。次に、 走査トンネル顕微鏡(STM)注4の探針を分子膜上 に配置し、適切な電圧パルスを加えると、連鎖重合 反応が始まり、導電性高分子である分子の鎖(ポリ ジアセチレン)が自発的に成長していく。連鎖重合 反応が進行している時の末端は、化学的に極めて活性 な状態になるため、配置した有機分子に到達すると、 自発的な反応が起こり、有機分子と導電性高分子とが 結合した構造が自動的にできることを見いだした。 我々はこの新しい単分子化学結合作成方法を、化学的 ハンダづけと名付けた(図1)。 図1:化学的ハンダづけ法の模式図。分子膜の上に機能を持 った有機分子を配置し、走査トンネル顕微鏡の探針を用いて 連鎖重合反応をスタートさせる。連鎖重合反応の末端にある 反応活性な部位が機能性有機分子に到達すると、化学反応が 起きて自動的に接続ができる。

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図2には、機能を持った有機分子としてフタロシ アニンを用いて行った、化学的ハンダづけのデモン ストレーションを示す。 本研究成果は、単分子デバイス回路の実現に向け て、大きな一歩となるものである。単分子デバイス が実用化されれば、より小型、軽量で高性能、低消 費電力、環境にも優しい情報処理装置ができる可能 性があり、ユビキタス情報化社会注5の実現にも貢献 できると期待される。 本 研 究 成果 は 、米 国の 科学 雑 誌 Journal of the American Chemical Society のオンライン版で5月6 日に公開される。 <脚注> 注 1 導電性高分子:電気を流す高分子で、2000 年に白川英樹筑波大学名誉教授らがノーベル化学賞を受賞し たことで有名なポリアセチレンが代表的。本研究ではポリジアセチレンを用いた。 注 2 単分子デバイス研究の歴史:1974 年に Aviram と Ratner が分子整流器を提案して以来、三十数年が経過 した。 注 3 連鎖重合反応:多数の分子がドミノ倒しのように次々と反応してつながっていき、長い分子の鎖(高分 子)ができる化学反応。 注 4 走査トンネル顕微鏡(STM):原子レベルで先鋭な針(探針)を試料に 1 ナノメートル程度の距離ま で近づけ、電圧をかけると、探針と試料の間にトンネル電流とよばれる微小な電流が流れる。トンネル電 流が一定となるように探針を上下に動かしながら試料をなぞることにより、試料の形状を原子レベルで観 察することができる。 注 5 ユビキタス情報化社会:パソコンだけでなく、身の回りのあらゆるものの中にコンピューターが入り込 み、それらが全てネットワークで接続されることによって実現される情報化社会。いつでもどこでも必要 な情報にアクセス•利用することができ、生活の隅々に情報が浸透することによって、より安全で便利な 社会の実現が可能になる。 <謝辞> 本研究は科学研究費補助金(基盤研究(B)21310078)ならびに JST 戦略的創造研究推進事業(さきがけ)の支援 を受けて行われた。 <掲載論文>

Chemical Wiring and Soldering toward All-Molecule Electronic Circuitry

Yuji Okawa, Swapan K. Mandal, Chunping Hu, Yoshitaka Tateyama, Stefan Goedecker, Shigeru Tsukamoto, Tsuyoshi Hasegawa, James K. Gimzewski, and Masakazu Aono

Journal of the American Chemical Society (2011)

<本件に関するお問い合わせ先> 独立行政法人物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 大川 祐司(おおかわ ゆうじ)

E-mail: [email protected] TEL: 029-860-4739 URL: http://www.nims.go.jp/mana/

図2:機能性有機分子(フタロシアニン)への化学的ハンダ づけを行ったデモンストレーション。分子膜にフタロシアニ ンをのせた初期状態(図左)、一つのフタロシアニン分子に 導電性高分子を一本(図中)および二本(図右)接続した後 の状態をそれぞれ走査トンネル顕微鏡で観察した。生成した 導電性高分子は明るい線として像に現れる。 報道担当 独立行政法人物質・材料研究機構 企画部門 広報室 TEL:029-859-2026 FAX:029-859-2017

参照

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