• 検索結果がありません。

不妊症患者を対象とした看護研究の動向 - 心理面に焦点を当てて -

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "不妊症患者を対象とした看護研究の動向 - 心理面に焦点を当てて -"

Copied!
11
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

J.JpnAcadMid,Vo l , 6 ,No.1,pp.12-22,1992 原著

不妊症患者を対象とした看護研究の動向

-心理面に焦点を当てて-TheTrendoftheNurslngResearchforInfertility

-FocusingPsychologicalAspects

子(AkikoMOR

I)*

子(JuIlkoMURAMOTO)

**

要約 この研究は , 看護領域の不妊症に関する文献を検索し , 不妊症の人びとの心理的問題を取り扱う研究 の特徴を明らかにし , 今後の研究に必要な課題を検討することを目的とした 。 系統的文献検索を行い , 主橿別分類と年次別推移の傾向をみた 。 さらに , 心理面に焦点を当てた9文献について , 研究の焦点 , 対象 , 方法の観点から分類し , 比較検討した 。 その結果 , 心理に関する文献は 1980 年以降増加しており , 1990 年からは患者の体験・意味,対処を主題としたものの増加が著しいこと,本邦の文献数は全体的に 少ないことがわかった。そして

,9

文献の詳細な検討から , 対象とその体験している現象は何かという ことに研究の焦点が当てられていること , 不妊夫婦または不妊の女性が研究の対象に選ばれていること , 調査研究または質的研究が研究の方法として用いられていることがわかった。今後の研究の課題とし て , 対象の範囲を広げることや現象に関与している要因および要因間の関係を分析あるいは検証する研 究が必要であることが明らかになった。 Abstract Thepurposeofthisstudywastoclarifythecharacteristicsofthenursingstudiesrelatedtoa psychologicalaspectofthepatientswithinfertility,andtoidentifyforneedsofthefurtherstudy. Asystematicreviewoftheliteratureswereconductedinordertoanalyzetopicsclassificationand itstrendsbyyears.Theliteraturesrelatedtothepsychologicalaspectswereselectedandcompar-edwiththeirresearchquestions,subjec t s,andmethods. Asaresult,thenumberoftherelatedliteraturesincreasedsince1980S,andoftheliteratures focusingonthepatientsexperiences,meanings,andcopingbehaviorincreasedremarkablysince 1990S,howevertherewasafewnumberofJapaneseliteraturesgenerallywithinthewayof referenceusedonthisstudy

,

Itwasfoulldthatthefocusofthestudieswereonwhatthepatients hadexperiencd,andthecoupleorfemalepatientswithinfertilitywereselected,andqualitative reserachmethodswereused. *元聖母女 子短期大学 (FormerSeiboJuniorCollegeofNursing)

日東京女子医科大学看護短期大学 (TokyoWomen'sMedicalCollege,SchoolofNursing) 12 日本助産学会誌 第6巻第1号(1992) : I. I..: 'f.) 帖I: . .[ 仙;

i.・ 、(J .∴,f・ =]St'L :=' ii;I... .L.IJ..I・一1 : 朴… '; ii 人 の 脚 艶 か 引 こ 婦 ノ S -S で 判 る で た り 向 し 研 体 文 り 要 耕 す o 軸鯛 妊 に ト ビ 系 開 た 究 不 ド で ン に み 研 l ま コ

(2)

不妊症患者を対象とした看護研究の動向

Inconclusion,thestudieswerelimitedoncoupleorfemale,moresttldyneededonmale. Studies werelimitedsuperficiallyonphenomena,morestudyshallbeellCOuragedtoclarifythefactors relatedtothephenomena.

は じ め に

近年,生殖 医学 の進歩や新 しい生殖技術 の開発 に伴い, それ らの内容や適用対象 とな る不妊症 の 八び とに対 す る関心 が医療従 事者 のみ な らず一般 の人び との問で も高 ま りつつ あ る。 出産 ・育児 の 渦中にある家族 に対 す る支援 を提供 す るこ との意 義はい うまで もないが, 出産や育児の体験 を望 み なが らも生殖 を司 る身体 の器 官 ・機 能 に さまざま な問題 を有す るため にそのニ ー ドを容 易 に満 たす ことので きない対象 を支援 す るこ ともまた,助産 婦の重要 な役割 の1つである と考 える。 不妊 は生殖期 の人び とに とって大 きな 1ifecri -sisであ り,心 が傷 つ け られや す く痛 み を伴 う体験 である。 その支援 の あ り方 を考 え るため には, 医 学的 ・身体 的側面だ けでな く,不妊 を体験 してい おり, る人び との気持 ちや心理社会 的側面 の探求 が必要 的に であ る。 いう 欧米 においては, すでに不 妊症 患者 を対象 と し こと, た心理面 に焦点 を当て た看護 研究が増加 しつつ あ とし り, それ らの結果 を踏 まえて援 助 の視 点や その方 る研 向性 を論 じた著述1),2)もみ られ始 め て い る。 しか し, わが国 においてはい まだ,看護 の視 点 に よる 研究の数 は きわめて少 な く,対象 の心理 の状 況や 体験 の実態 もほ とん ど明 らか に されていない。 toa そ こで, この研究 は看護領域 の不妊症 に関 す る tudy. 文献 を検索 し,不妊症 の人び との心理的 問題 を取 nand り扱 う研究の特徴 を明 らか に し,今後 の研 究 に必 par一 要な課題 を検 討す るこ とを目的 とした。

研 究 方 法 sin ce 系統的文献検 索 を行 い,看護領域 にお け る不妊

a

yo f に関す る文献 を主題 別 に分類 し,年次別 に推 移 を tien ts みた。 さらに,不妊 の心理的側 面 に焦点 を当てた tativ e 研究論文 を分類 し,比較検 討 した。 不妊症 (infertility)と着護 (nursing)をキー ワ ー ドに用 い,MEDLINEに よ り1972年 か ら1991年 まで,JMEDICINEに よ り1981年 か ら1991年 まで コンピュータ検索 を行 い, それ ぞれ を主題 別 に分 類 し,年次 別の変化 の傾 向 をみ た (表1,表2)。 また,索 引語 "InternationalNursinglndex''に

よ り, 1987年 か ら1991年 までマニ ュアル検 索 を行 表1 年次別主題別文献件数 (MEDLINE:不妊症*看護) \ 年次 ー72 '75 '郎 '85 '90 病因 .診断 .治療 2 9 15 21 5 52 人工授精 .体外受精 1 3 4 6 1 15 心 免疫学 .通伝学

00

1 4 1 6 哩 外科学

1030

1 5 以 生理学

010

Z 1 4 外 公害 .害

0

0 1 2

0

3 その他 6

0

3 3 2 14 汁 (A) 川 13 27 38 ll 99 病因 .診断 .治療

01

1 7 5 14 人工授精 .体外受精

00

1 3 3 7 心 妊娠 .流産

000

2 2 4 体験 .意味

1

1 1 9 1 13 情緒

0

1 1 3 1 6 対処

000

1 4 5 理 倫理 .法律

00

2 3

0

∂ その他

与00

2 5

0

7 汁 (B) 1 3 8 33 16 61 表2 年次別主題別文献件数 (JMEDICINE:不妊症*看護) \ \ \ 年次 ■81∼ '8?5 '90? 計 主題 \ ●84 p89 病因 .診断 .治療 1 8

0

9 JLヽ 哩 人工授精 .体外受精

0

2 0 2 以 外 その他

0

1 0 1 汁 (A)

1

ll

0

12 心 哩 指 導

0

3

0

3 対 処

0

1

0

1 情 緒

1 0 0

1 その他

0

1 0 1 汁 (B) 1 5

0

6 日本助産学会誌 第6巻第1号(1992)

(3)

不妊症患者 を対象 とした看護研究の動向 表3 対象文献の No. 著者名(発表年 ) 対 象 数(人 ) 平均年齢 特 性 A HiHi(19rrs89scch,A.M.h,S.M.) , ・不妊夫婦妻のみ 28組((256)) 32 ・平均結婚年数・不妊 クリニ ックに通院中6.7 ・非不妊夫婦 17組(34) 26 ・女性不妊18組 B 01shansky,E.F.不妊夫婦 7組(14) ・中流階級以上 (1988) ・Ⅰ組よる排卵誘発を試みた 1組VF,AⅠを試みたDを試みた り、試みる予定2組 (1組妊娠)′AI2H組を試みた,hMGに2 C sandelowski,M,, 不妊女性 ((2226)) (21-45) ・女性不妊,男性不妊,原因不明 Pollock

.

C

.

(1986)・家庭医 ・家庭医 グル ー プは全員が白人, ク リニ ックグ D Sandelowski,M. ・ク リニ ックグループ ・治療期間は 1年以内ループは黒人20名,白人33%, 2- 42名で構成年40%,最長 (1987) グループ 17年 (1990) (31-47) 原因不明2組 妻 ・治療期間は4か月∼10年間 (平均4年間)治療 (28-40) ・ペ ッ トが い る・年収中ペ ッ トがいない2組,終結後21,000-1214821組 (,30組組00犬1ドル7,猫4,犬 と描 3), F Bl(1e9nn9Der,L.L. G DaVis,D.C., 不妊女性 (30) 30 ・女性不妊,男性不妊,原因不明 Dearman,C.

N.

(23-37) ・大病院の不妊専門医の下で治療中 (1991) ・8・白人・有職者組 による名は子 どもがいる (282名,黒人 1名,東洋人6名 (2名)専門職または技術職)出産による1名6名,養子縁 H Sandelowski,M..不妊夫婦 40組(80) 30代 ・すべて白人 et,(1989) ・出産 した夫婦・中流階級でに子 どもがいて,次の子 どもを得 る予定のない,かつて不妊だ った夫婦20組,養子縁組 した夫婦 13組 7組、す I Bernstein,∫.,et. ・不妊夫婦 32組 ・夫婦の互いの多因子 による不妊か,妻の排卵障 (1988) 夫 (20) 害 による不妊 妻 (30) ・平均5年半 (最短2年)の不 妊期 間 を経 て妊 日本助産学会誌 第6巻第1号(1992)

(4)

研 究 の 特 徴 不妊症患者 を対象 とした看護研究の動向 方 法 雀 占 上 結 果 ・質問航法 ;郵 送法 不妊 がidentity .不妊夫婦 では非不妊夫婦 よ り,男性性 が高 く, 性 的満 足 が低 ・研究者作成質問項 目 や結婚生活 に及 い ・Hudson臨床 測定尺度 ぽす影 響 .不妊夫婦 の,夫 よ り妻 の一 般的満足 が低 い ・Bem性役割調査表 ・妊娠 への投 資が増 す と、妻 の 自己尊重 は低下 す るが、夫 のそ ・multifactorANOVA れ は上昇 す る ・Grounded theory方法論 先端不妊治療 を .6テーマが兄 いだ された ・自由回答式面接方法 続 けて い る夫婦 ; 1.追 い詰 め られ ている状態 2.うま く生 活 して い きに くい状 7組共夫婦別席 での面 接 の不妊 や治療 に 態 3.夫婦関係 、性的関係 の崩壊 4.各配 偶者 の個 人的意味 5組 は同席 で も面接 対 す る認識 に よる個別的反応 5.財政 上 の ス トレス 6,希 望 と失望 が周 ・比較分析 期 的 につの らされ る状態 ・現 象学的方法論 女 性 の認 識 して ・3要素 が兄 いだ された ・自由回答式面接 法調査者 は不妊歴 あ る既 婚女1年4か月間 に2回の面接 不妊体験 の 「い る不妊 休験両 ・両義性 の内容1.両義性 -噴昧 さ、 不確 か さ 2.時間性 3.他 者性 性 と子 の ない独身女性 毒 性」 不妊 の原因 .診 断 .治療 につ いて ・VanKaamの現象学的分析 人生 の コ ン トロールにつ いて ・Grounded theory方 法論 不妊 や治療 に対 ・8段階が兄 いだ された ・自由回答式面接法 す る知覚 の プロ 1.気づ さ始 め る 2.新現実 に直面 す る 3.希望 と決心 を抱 く ・夫婦 同席 での面接 セス *4.治療 に気持 ちが集 中す る 5.螺旋状 に落 ち込 む 6.解 き ・調査 者 は男女,2名 の チ- 放つ 7.関心 を移 す 8,焦点 を転換 す る ム ・比較分析 *4が最 も長 い 不妊 や治療 の休 ・25組 中22組 の夫婦 でペ ッ トは役立 って いた 験上 にペ ッ トが ・夫婦 の性別 による反応 の差 はない 果 たす機能 ・ペ ッ トの果 たす機能 は ス トレス緩和 ・半構成式面接法 女性 の不妊 に対 ・6つの行動 に分類 された ・内容分析 す る対処行動 1.不妊 を思 い出 させ るもの と自分 との間 の空間 を広 げ る 2. コ ン トロー ルを取 り戻す 3.最善 にな るよ うに努 力 す る 4. 不妊 の隠 され た意味 を探 す 5.感情 に従 う 6.他者 と苦 しみ を分 け合 う ・Grounded theory方法論 不妊夫婦 の親 に ・親 になるまでの移 行過程 は回帰 的,反 復的 な 「混迷 」 の過程 ・自由回答式面接法 なるまでの移行 であ った 出産夫婦5回 (妊 娠 中3回, の プロセ ス ・4つ の資源 を もとに意思決定 す るo 出産後2回) 1.利 用可能 な もの 2.投 資 をす る ことで要求 され る もの 3. 養子縁組夫婦 (子 ど もが来 進 んで投資 したい もの 4.選択 しなか った場 合 に予 測 され る るまでの3-4か月 ごと, 無念 さ 子 どもが来 てか ら2回) ・6つの追求 パ ター ンが兄 いだ された ・比較分析 1.連続 2.後戻 り 3.夢 中に繰 り返 す 4.並 行 5.休憩 を と る 6.-線 を画 す る ・質問紙 法 ;郵送法 不妊 の経験 が妊 ・妊娠前 と出産後の比較 をす ると,非不妊女性 の それ よ りも,

・HopkinsSymptom Check 娠 .出産成功後 不妊女性 の 「抑哲 」 の上昇率が高 い

List(SCL-90)

・妊娠 す る前 お よび出産後 の2回測定 の心理 に及 ぼす影響 ・不妊原因,不妊期 間 によ るdistressの差 な し

(5)

不妊症 患者 を対象 と した看護研究の動 向 い,不妊症 の心理 に関す る文献 を抽 出 した。一次 資料 として入手可能で あった ものの うち, キーワ ー ドに心理的 ス トレス,心理的適応,生活様 式変 更事項,情垂加 悲嘆,自己概念のいずれか を含 み, 原著論文 またはその研究の一部 を取 り上 げて論 じ られている7文献 と,マニ ュアル検索 に よ り得 ら れた

2

文献 を加 えた

9

文献 を対象 に研究の特徴 を 分析,検討 した (表3)3ト11)。 研究者 は総数13人であった。看護 を専門領域 と す る研究者 は

1

0

人で, 9文献 (7研究) すべ てに 含 まれた0 9文献 の うち, 2人の同一著者 に よる ものが 合計5文献 〔それぞれ3文献 (2研究) と 2文献 (1研究)〕が含 まれ た。看護以外 の領域 を 専門 とす る研究者 は,産婦 人科学

1

人,精神医学

1

人,心理学 1人であった。職種 は

,Ph.

D 6

人, 看護学博士3人,看護学修士1人,登録看護婦1 人,医師 2人。所属機 関 は,大学

1

0

人, メデ ィカ ル セ ンター 1人,病 院 1人,その他

1

人であった。 なお,調査地域 は, 7研究すべ てがアメ リカであ った。

Ⅰ 結

1.文献件 数 および主題 と年次推移

MEDLI

NE

に よる総検 出件数 は

1

6

0

件 で, その うち心理 (キー ワー ドに

ps

yc

ho

l

o

g

y

を含む もの)

6

1

件,心理以外

9

9

件 であった。年次別 に合計件数 を比較す ると

,8

0

年代前半か ら前年代のお よそ

2

倍 の割合で増加 してお り,特 に心理の件 数の増加 は著 しい。 心理 の主題 は,病 因 ・診断 ・治療 と関連 す るも のが最 も多 く, これに次 いで不妊の体験 ・意味 に 関す る ものが多か った

。8

0

年代前半か ら人工授精 ・体外受精や倫理 ・法律 に関す る ものが, 同年代 後半か らは不妊経験後の妊娠 ・流産や不妊への対 処 に関す る ものが現れた。体験 ・意味 は

8

0

年代後 半か ら,対処 は90年代 に入 ってか ら急激 に増加 し ていた。 なお

,

MEDLI

NE

に よ り検 出 された心理

6

1

件中 には,本邦の文献 は含 まれていなかった。

J

MEDI

CI

NE

による総検 出件数 は

1

8

件で,その うち心理6件,心理以外12件であった。年次別に 合計件数 を比較 す ると

,8

0

年代前半に比べ,同年 代後半 には著 しい増加がみ られ る

MEDLI

NE

に よる

8

0

年代以降の検 出件数 と比較 す ると, きわめ て少 な く,主題 の項 目も限 られていた。 2.不妊症 患者の心理 に関 す る研 究の特徴

(

1

)

研究の焦点 どの ような側面 に研究の焦点が 当て られている か によって,対象文献 を分類 した (図1)。 まず,経験 の過程 として2区分 した。不妊 と向 き合 い, その間題 を克服 しようと試みている期間 に焦点 を置いた もの と,不妊経験 を経 て親 になっ てか らの期間 に焦点 を置 いた もの とに分 けた。 前者の区分 は,不妊 であることに対す る認知 ・ 反応,反応 に影響 を及ぼす要因,不妊 に対す る取 り組 み行動,不妊か らの脱却 を試み る取 り組み行 妊娠 ・出産

(6)

謬野 不妊症患者 を対象 とした看護研究の動向 動の4つの要素 に分類 した〇 皇するも 後者の区分 は,妊娠 ・出産 を経 て親 になってか ・意味に らの心理的な反応 の1つの要素 に分頬 した。 し工授精 これは,不妊の心理的問題 が不妊期間中のみ に 同年代 とどまる もので はか 、可能性 を示 唆 して い る点 壬への対 で,当事者 に とって も援助提供者側 に とって も重 iO年代後 要であると考 えるo こ増加 し 以下,各要素ご とに該 当す る文献 とその検 討 を 加え,説明す る。

里6

1

件中

1

)

不妊 に対す る認知 ・反応 この項 目に分類 されたの は,文献

A,B,C

, 肯,その D,Eの 5文献 であった。 次別に 文献Aは,不妊 の問題 とはまだ無縁で あ るとい うことと不妊であ るとい うこ ととは, アイデ ンテ ィティや結婚生活 に及ぼす影響 において, どの よ うな反応の差 を生み出すのかに焦点 を当てた研究 である。不妊であ るこ とは, 自己同一性や,性, 結婚の心理面 に影響が あるのか どうか をみ ようと している。女性性,男性性, 自己尊重,一般的 な 満足,結婚の満足,性 的満足の6つの従属変数 を 設定 し,独 自に開発 した9項 目か らな る質問紙 と, Hudson臨床測定尺度 お よびBem 性 役割 調 査表 を用い,不妊夫婦 と不妊の問題 とは まだ無縁 であ る非不妊夫婦 (対照群) との反応の比較 が行 われ た。 その結果,非不妊夫婦 (対照群) に比べ,不妊 夫婦では,男性性 が高 く,性的満足 が低 か った。 また,不妊夫婦間の比較 では,夫 よ ワ,妻 の一般 的満足が低 く,妊娠のための投資が増す と,妻 の 自己尊重 は減少す るが,夫 のそれは増加す る とい うものだ った。不妊 とい う状況 にあ るこ とは, そ れとはまだ無線 に生活 している夫婦 に比べ, 自己 概念や夫婦の関係 にnegativeな影響 を受 け る傾 向がある。特 に夫 に比べ,妻-の影響が大 きいこ とがわか った。 この研究では,不妊であ る対象 と調査の時点で は少な くとも不妊 でない対象 を比較 す るこ とに よ って,不妊夫婦の心理的な反応 をみ ようとした。 また,不妊の夫婦間の反応の違 いをみ ようとした。 文献Bは,先端技術 による不妊治蝶 を受 けてい る患者の不妊や治寮 に対す る認識 はいかな る もの であるか とい うこ とに焦 点 を当てた研究で あ る。 先端技術 による不妊治療 を受 ける人び との反応の 特徴 は何 か をみ ようとしてい る。先端技術 に よる 不妊治療 として,体 外受精法(ⅠVF)とそれ に伴 う 治療 的処置,配偶子卵管 内移植法 (GIFT), 人工 授精が含 まれていた。 それ らの治療法 を受 けてい る不妊夫婦 の面接 デー タか ら,比較分析 が行われ た。 その結果

,6

つの テーマが兄 いだ された。妊娠 す るまで何 で も試み ざるをえない,追 い詰め られ た状態 (Drivenness)や,希望 と失望 が周期的 に つの らされ る状態 (Exacerbatedcycleofhope anddespair),治療 のために 自分 たちの生活が妨 げ られ, うま く生活 して い きに くい状 態 (Diffi -cultygetting ollWith life),財政上のス トレス

(Financial stress),夫 婦 関係 や性 関係 の 崩 壊 (Maritalandsexualdisruption),各配偶者の個 別的 な意 味 に よる別 々の 反 応 (Uniqueness of responses)が明 らか になった。 この研究では,不 妊である対象 (かつ, ある特 定範 囲の治療法 を受 けている対象)のみの反応 に視点 を当てて, その 特徴 をとらえようと したO 研究結果 として文献Aと一致 してい るのは,夫 や妻 らは,同 じ反応 を示す とは限 らず,む しろ, 個別 に反応す るこ とが示 され てい るこ とであ る。 文献Bの研究者 らは, その要因 として,不妊の原 因や結婚後,問題 に直面す るまでの期間,生物学 的 な性 に よる違 いを示唆 している。一方,結婚 に 関 しては一致がみ られず,文献

A

では結婚の満足 に対照群 との差 はな く,文献Bでは夫婦関係 の崩 壊 が示 されている。不妊であ ることが問題 であ る のか,先端技術 に よる治療 を受 けてい るこ とが問 題 の要 因 となってい るのか, あ るいは不妊以前の 夫婦の問題 に よるのか, この2つの結果 のみで は 結論 で きない。個 々の夫婦 あるいは夫婦間の反応 の違 いが どの ような要 因 との関連 において生 じて いるのか を分析 す る研究 に発展 させ るこ とが必要 であろ う。 文献Cは,不妊 を体験 してい る女性側 の認識 は いかなる ものであ るか とい うこ とに焦点 を当てた 研究であ る。不妊 であるこ とが,女性 の認識 に生 じさせ る特徴 は何 か をみ ようとしている。女性 に のみ,面接 し,VanKaam の現象学的分析が行わ れた。 その結果

,3

つの要素が兄 いだ された。不妊の 日本助産学会誌 第6巻第1号(1992)

(7)

不妊症患者を対象とした看護研究の動向 原因や治療 とその成果,行 く末な どについての不 確 か さである「両義性」(Ambiguity),月経周期 に よる時 間設定や生殖期 の時 間制 隈の存在 な どの 「時間性」(Temporality),他者か らの疎外感や理 解 しては もらえない とい う感情,妊娠で きる人 と 不妊の人 とのタイプ分 けに よる他者 との区別 と比 較 などの 「他者性」(Otherness)が明 らかにされ た。

この研究では,家庭医 (privatephysician)で 治療 を受 けている比較的社会 階層の高い白人女性 と,不妊 ク リニ ック (infertilityclinic)で治療 を 受 けてい る比較的社会階層の低 い,大部分が黒人 女性 との認識 の違 い に言及 して い る点 で意 義深 く, これ らの3つの要素が強 く出現 していたのは 白人女性であった。社会階級 あるいは人種の違い が不妊体験 に対す る認識 に違 った反応 を生 じさせ る要因 となる可能性が示唆 されている。 文献Dは,文献Cの研究で得 られた結果か ら, さらに 「両義性」(Ambiguity)の内容について論 及 されている。両義性 の内容には,何が含 まれ る かに焦点が 当て られている。女性が認識す る不確 かさ,暖味 さは,お もに不妊の原因や診断,治療 についてであ り, 自分の生活や人生の どっちつか ずの宙ぶ らりん さ, コン トロールの難 しさであっ た。 文献

E

は,不妊夫婦の,不妊であることやその 治療 に対す る知覚 はいかなる ものであるか とい う ことに焦点が当て られている。不妊で あることや その治療 を体験す る人び との知覚の特徴 は何か を み ようとしているo不妊夫婦の面接データか ら, 比較分析 が行われた。 その結果,知覚 には過程 があ り, 8つの段階が 兄いだ された。医学的な診断以前 に気づ き始め る 段階 (Stage1:Dawningofawareness)があ り, 診断 を受けて事実 に直面す る段階(Sta ge2:Fac-inganewreality),治療 に対 して希望 と決心 を抱

く段階 (Stage3:Havinghopeanddetermi na-tion),治療 に気持 ちが集中す る段階 (Stage4: Intensifyingtreatment),エネル ギーが枯渇 し, 情緒的に痛 々 しく,螺旋 を描 くように気持 ちが下 降す る段階 (Stage5:Spirallingdown),不妊の 問題 を解 き放 ってい く段 階 (Stage 6:Letting go),治療 を中止 し,他の こ とに関心 を移す段 階

18

(Stage7:Quittingandmovingout),焦点 を転 換す る段階 (Stage8:Shiftingthefocus)があ ることがわかった。 これ らの段階の うち,最 も長 いのは治療 に気持 ちが集中 し,妊娠す るための努 力に没頭す る段階であった。 この研究か ら,不妊夫婦が診断 され,治療 を受 けるプ ロセスには,段階的な心理の変化が認めら れ ることが明 らかにされ,時期 に応 じた適切 な援 助の必要性が示唆 され る。特 に,医学的な診断の 前に疑 い始め る過程があることか ら,看護上のニ ーズは, この時点か ら存在す ると考えねはなるま

い。

2

)

不妊 に対す る反応 に影響 を及ぼす要因 この項 目に分類 されたのは,文献

F

であった。 文献

F

は,文献

E

の研究で得 られた結果から, 対象夫婦25組 中の24組が犬や猫のペ ッ トを飼 って いた事実に注 目し,論及 されている。ペ ッ トを飼 っているこ とは,心理面 にどの ような影響 を及ぼ す要 因 となっているの か に焦点が 当て られてい る。 88%の夫婦 にとって,ペ ッ トは,不妊であるこ とや治療 に よるス トレスに対処す るうえで,ス ト レスを緩和す る治療的機能 を果た していることが わかった。具体的には,喪失の置 き換 えとしての 機能,情緒 を癒す機能,他者や社会 と彼 らとを橋 渡 しして結び付ける機能があることが明 らかにな った。 不妊 に対す る反応 に影響 を及ぼす要因 として, この結果 か ら,negativeな反応 を緩和す るposi・ tiveな要因 として作用す るものの存在があること を示 してい る。援助の一視点 としてはユニークな 観点 を提供 す るものである。

3

)

不妊 に対す る取 り組み行動 この項 目に分類 されたのは,文献Gであった。 文献Gは,不妊 を体験 している女性側の取 り組 みの行垂加まいかなるものであるか ということに焦 点 を当てた研究である。不妊である女性の対処行 垂加こは どんな種類 が あ るのか をみ ようとしてい る。女性 にのみ,面接 し,内容分析が行われた。 その結果, 6つの対処方略が兄いだ された。不 妊 を思 い出 させ る状況 か ら距離 を置 く(Increas -ingspace),知識 を増や した り,時間制限を設定 し てコン トロール を取 り戻す(Regainingcontrol), 日本助産学会誌 第6巻第 1号(1992)

(8)

不妊症患者 を対象 とした看護研究の動向

を転 生活のさまざまな側面で最善 になるように努 力す があ る (Beingthebest),不妊であることの隠 された も長 意味 を探す (Lookingforhiddenmeaning),泣

の努 いた りわが ままな行動 を とった りと感情 に従 う (Givingintofeelings),夫や他の不妊女性 と苦 し を受 みを分け合 う (Sharingtheburden)などが明 ら めら かになった。 な援 研究者 らは,不妊の問題 を抱 えた女性 たちが上 断の 手に対処方略 を使えるように,励 ました り,示唆 の二 を与えた り,一緒 に探すなどの看護援助が重要で るま あると述べている。 この結果 は, まさに, より実 践的な援 助の あ り方 を検討す るうえで有用 で あ る。 た。

4

)

不妊か らの脱却 を試み る取 り組み行動 ・ら, この項 目に分類 されたのは,文献Hであった。 って 文献Hは,不妊夫婦が不妊体験か ら脱却 し,戟 を飼 になるまでの過程 はいかな るものであるか とい う 及ぼ ことに焦点 を当てた研究である。不妊か ら脱却 し てい ようと試みる,親 になるまでの間の人び との行動 の特徴 は何かをみ ようとしている。かつて不妊で, るこ 親になった夫婦の面接 データか ら,比較分析 が行 スト われた。 とが その結果,親 になるまでの移行過程 は,回帰的, ての 反復的な「混迷」(Mazing)のプ ロセスであ り,多 を橋 大な時間的,精神的,身体的エネル ギーお よび経 ・にな 済的資源の出費が要求 され ることがわかった。 自 分たちが利用で きるものは何か(Available),投資

て,

することで要求 され るものは何 か(Required),進

p

o

s

i

-

んで投資 したい ものは何か (Willingtoinvest), こと 選ばなか ったことで残 る無念な気持 ちの程度 はど クな れほどか(Regret),という4つの資源 をもとに意 思決定 を繰 り返 したCそ して,連続 して続 け る (Sequentialtracking),後戻 りす る(Backtra ck-た。 ing),夢中になって繰 り返 し反復 す る (Getting り組 StuCk),複数の選択肢 を もちつつ並行す る(Para1 -に焦 Ieling),休憩をとって一時中止す る (Taking a 処行 break), ここまで という一線 を画す る(Drawing てい theline), という6つの追求の行動パ ター ンが明 た。 らかにされた。 不 この研究か ら, どの ように して不妊の夫婦が不 姓の問題か ら脱却 しようとす るのか,その意思決 定のあ り方や,進み方 を判断 し,促進す ることで 夫婦の問題解決過程 を支援す ることの必要性が示 唆 されている。

5

)

不妊経験 を経 て妊娠 ・出産 に成功 し,親 にな った後の反応 この項 目に分類 されたのは,文献 Ⅰであった。 文献 Ⅰは,不妊の問題 とはまった く無縁であっ た とい うこ とと不妊であった ということとは,出 産後の心理 に及ぼす影響 において, どの ような反 応 の差 を生 み出すのか に焦点 を当てた研 究 で あ る。不妊 を経験 したことは, 出産後の心理面 に影 響があるのか どうか をみ ようとしてい る。敵意, 不安,抑哲,精神病性,人間関係の感受性,身体 化,パ ラノイ ド観念形成,妄想的 一強迫性,恐怖 症 的不安の9つのサブ スケール か らな る,Ho p-kinsSymptom CheckListを用い,不妊であった 夫婦 と不妊の問題 とはまった く無縁であった非不 妊夫婦 (対照群) との反応の比較が行 われた。 その結果,非不妊夫婦 (対照帯)の妻 に比べ, 不妊であった夫婦の妻 では,妊娠前 と出産後の2 度の測定結果 を比較 した とき,抑哲の上昇率が高 かった。夫の反応の有意差 お よび不妊の原因や不 妊期 間の違 いに よる心 理 的 なdistressの差 は認 め られなかった。 出産後の心理 に影響す る因子 は さまざまあると思 われ, この反応が どの ような因 子によって生 じているものなのか,真 に不妊経験 によるものなのか,特定す るための詳細 な情報 に 欠けている点がこの研究の限界である。 しか し, 不妊 を経験 したことによる出産後の心理面-の影 響 を残 しうる可能性 を示唆 している点や文献Aや 文献Bと同様,夫婦の間で異なった反応が認め ら れた点で重要である。 (2)研究の対象 9文献の うち,文献Aと文献 Ⅰは,対象 を不妊 夫婦だけでな く,非不妊夫婦 も加 え,その比較 を 通 して不妊夫婦の反応 をみ ようとしていた。 これ に対 し,文献B,文献Eお よびF,文献Hでは不 妊夫婦だけを対象 として, その反応や行動の特徴 をとらえようとした。文献Cお よびD,文献Gは, 不妊の女性 を対象 として, その反応や行動の特徴 をとらえようとした。不妊の男性 を対象 とした研 究は,今回検討 した9文献 には含 まれなかった。 また,その研究の焦点に よって,文献

A

,文献

B

,文献

C

お よび

D

,文献

G

は,不妊 とその治療 の渦中にある段階の人び とを対象 に選んでいた。 日本助産学会誌 第6巻第 1号(1992)

(9)

不妊症 患者 を対象 とした看護研究の動向 i lt 文献Eお よびF, 文献H,文献 Ⅰは,大部分がす で に治療 を終結 した り,子 ど もを得た段階 にあ る 人び とを対象 に選 んでいた。 9文献 の研究対象すべ て (対照群 を除 く)が, 不妊であ ることを医学的 な診断,治療 を通 して, 認識 してい る人び とであったC正式 に診断 した り, 治療 す るこ とを選 んでいない, あるいはそ う した 行動 を選ぶ こ とので きない不妊の人び とを対象 に した研究 は含 まれていない。 (3)研究の方法 9文献 中,文献 A と文献 Ⅰは,調査研究であっ た。 いずれ も郵送法 に よる質 問紙法 で,データの 回収率 は,文献Aの場合,不妊夫婦 (妻 のみ含む) 63%,対照夫婦42%,文献 Ⅰでは,不妊夫婦の夫 500/.,妻75%,対象夫婦の夫55%,妻70%となっ ていた。文献Aと文献 Ⅰ,どち らの研究 も妥 当性, 信頼性 が確 かめ られ てい る測 定用具が用い られて いた。 文献B,文献 Cお よびD,文献 Eお よび F,文 献G,文献 Hは質的研究であった。質的研究法 が とられたなかで も, 文献Gを除 く4つの研究 は, 現 象学的アプ ローチや

Gr

o

un

d

e

dt

ho

r

y

アプ ロー チ による ものであった。これ らのいずれの研究 も, 自由回答式 の面接法 に よってデータ収集 され,覗 象学 的分析 や比較分析 に よってデ ー タ分析 され た。文献Eお よびF,文献 Hは,調査者 が家庭 に 出向いて面接が行 われた こ とが明記 されていた。 文献Cお よびDの面接 は,数年 間の不妊経験 のあ る女性

(

4

0

代前半,既婚,子 ど も一人あ り)が主 とな り, 自由意思 で子 どもを もたない生活 を選 ん でい る女性

(

3

0

代後半,未婚,子 どもな し)が共 同 して行われ た。彼 らはいずれ も白人で, 中流 階 級 に属 していた。文献Eお よびFの面接 は,夫婦 同席 の条件 と した こ とか ら性 別 を同 じに し,気楽 に反応 しやす い ように と,女性 の調査者 と男性 の 研究助手がペ アになって行われ た。分析 結果 の信 頼性 ,妥 当性 については, いずれの研究 も,デー タ提供者 にみて もらって保証 を得 る,他 の研究や 出版物 との比較 をす る,調査者 間で再分析 す る, あるいは調査 に加わ らなか った看護者 に分析 して もらう, な ど, この種 の研究法 では重要 な手順が 踏 まれていた。 20

1.文献の動 向につ いて 看護領域 にお け る不妊症 の心 理 に関す る文献 は,1980年代前半か ら著 しく増加 している。特 に 最近 では,不妊の人び とがその体験 をどの ように 受 け止 めているか. あ るいはその間堰 にどの よう に対応 してい るか を主題 とした論文が著 しく増加 しているO これは,1970年代終末か ら1980年代初 頭 にかけ,新 しい生殖技法 が導入 されたことによ る影響が大 きい と思 われ る。不妊症患者の存在が クローズア 、ソ7Dされ,新 たな心理社会的問題が指 摘 され るようになったことに看護研究者 たちの関 心が増大 したこ との表 れ とみ ることがで きよう。 生命倫理や法 的な問題 とともに不妊治療 とそれを 受 け る人び との こころの問題や生活の質 も問われ なければな らないこ とに気づ き始めた もの と思わ れ るC 欧米 と本邦の看護研究の比較 においては,今回 の検 索方法 で は,本邦の文献 が索引 されに くく, また,網羅 されていない可能性 を考慮す る必要が ある

MEDLI

NE

I

NI

に掲載 され る論文は欧文 抄録 を有 し,原著 の形式 を踏 んだ ものが多いと思 われ, そ うした形式 を もたない研究論文 について は索引 され に くいこ とが考 え られ るO本邦の不妊 の心理 に関す る看護研究論文は,欧文抄録 をもた ず,原著の形式 を踏 まない ものが多いのではない か と も考 え られ る

。J

MEDI

CI

NE

につ いては, 「不妊症」 と 「看護」の2つの キ- ワー ドに他のキ ー ワー ドを組み合 わせ るこ とで検 出され る論文数 が増 え るのではないか と思われ る。 したが って, 本邦の この種 の研究論文全体の数や主題 としては 今回検索 された数,種類 よ り多い可能性がある。 そこで,本邦の研究論文の動向をより正確 に把握 す るためには,今 回の検索方法のほかに工夫が必 要ではないか と考 える。 2.研 究の焦点 について 今回検討 した文献 は,対象 に認め られる現象は 何 か とい うことに焦点が 当て られている研究で 占 め られてい る。対象 に焦点が当て られ,そこに起 こっている現象 を記述 し,命名 した り,説明す る こ とが 目的 とされてい る。不妊 とい う状況な り, 問題 が どんなふ うに体験 されているのか, どんな 日本助産学会誌 第6巻第1号(1992)

(10)

不妊症患者を対象とした看護研究の動向 影響が及んでい るの か につ いて知 ろ う と してい る。系統的ではな くて も,体験や反応 とともに, それ らに影響 を及ぼ している要 因がい くつか指摘 献 されている研究 も認め られ る。今後 は,看護の視 に 点か らの援助の探索 を深 め るために,分類 された に 反応 と関連 し合 う要因 を分析す る研究や要 因間の り 関係を検証す る研究,援肋 に焦点が当て られた研 加 究などが必要であると思 われ る。 また, 今回検討 初 した文献 はすべてアメ リカにおける研究で あ り, よ これ らの現象が社会 ・文化的,歴 史的背景の異 な が る本邦の対象 において もみ られ るのか どうか を確 指 かめることも必要であろ う。 開 3.研究の対象 について 今回検討 した文献 は,不妊の夫婦 または不妊の を 女性 を対象に した研究で 占め られてい る。不妊 は れ 女性側だけでな く,男性側 に とって も何 らかの意 わ 味や特徴 をもつ体験で あると思 われ,今後 は,輿 性を対象に した詳細 な研究 も必要である。 回 研究結果か ら,不妊の心理の特徴 として, それ , はプロセスであ り,変化 してい くこ とが明 らかに が なっている。研究の 目的 に よって,適切 な時期の 文 対象を選択す る必要が あるだろ う。 思 また,不妊の人び とに対す る支援 の あ り方 を考 、て 察するためには,医学的 には不妊 であ るとして も, 旺 それを診断 して明 らか に した り治療 す るこ とを望 た まない人や,望んで もそ うで きない人 を対象 に し い た研究 も必要 である。 なぜ望 まないのか,望みな , がらなぜで きないのか,追求が必要であ るO治療 キ を受けている不妊の人び とだけ を対象 としていて 数 は偏 った見解 を導 く恐れが ある と思 われ る。 対象の選択 については

,7

研究すべ てが,研究 への同意が得 られ,協 力の意志のあ る人び とを対 象に行われてお り,研究の倫理的側面が配慮 され 握 ていたことは重要 な点である。 しか し, 同意 と協 ゞ必 力が得 られず,研究対象 とな りえなかった人び と にこそ,その研究 に必要 な情報 が所有 されている かもしれない とい う問題が, この種 の研究の方法 は の間堪点 として指摘 されている12)。また,特 に文献 占 数の少ないわが国においては,不妊症患者 に対す こ起 る看護 に関す る知識が得 られ に くい,臨床現場 で る 看護者が体験す る現象 を整理 しに くい といった現 状を生み出 しているのではないか と推測 され る。 看護者側 はどの ような反応 を示 し, どの ような体 験 を しているのか,看護者 を対象 に した研究が行 われ るこ とも意義深 い と考 える。 4.研 究の方法 につ いて 今回検討 した文献 は,調査研究 または質的研究 法 が とられてい る。 デー タの収集 に関 して,調査研究で用い られた 測完用具 は, その信頼性 ,妥 当性 が確 かめ られて い るが, それ を選択 した理 由の記述 はな く,不妊 の 八を対象 に した ときに適 した ものであ るのか ど うかの検討や注意深 い変数の設定が必要であ る。 質的研究では,面接 の方法 にい くつか工夫 がみ ら れ る。夫婦 を対象 に同席 で面接 す る場合,調査者 側 も男女 を組み合わせ てセ ッテ ィング した り,不 妊の体験者 と子 どもはいないが 自由意志で そ う し てい る者 との両者 を調査者 にす るな ど,デー タの 質 を高め るうえで役立 ってい ると思 われ る。 今後 は,現象 に関与す る要因 を深 く分析 す るよ うな質的研究や,要 因間 あるいは概 念間の関係 を 検証 す る研究デザ インが求め られ る。

1

9

7

2

年 か ら

1

9

9

1

年 まで看護領域 の不妊症 に関す る系統 的文献検索 を行 い, さらにその中か ら心理 に関す る9文献 の検 討 を行 った結果,以下 の事柄 が明 らか になった。 1.看護領域 における不妊症患者 の心理 に関す る 文献 は

,1

9

8

0

年以降増加傾 向 を示 し,特 に

1

9

9

0

年 か らは患者の体験や意味,対処 を主題 と した 論 文の増加が著 しい。本邦の文献数 は,今回の 検 索 方法 で は 全体 的 に少 な い傾 向が み られ た が,検索 され なか った論文 もあ ると思 われ, よ り正確 な動向 を把握 す るためには検索方法の工 夫 が必要であ る。

2.

研究の焦点 は,すべ て対象 に当て られていた。 対象の経験 の過程 は不妊の問題 に取 り組 む渦中 にある段階 と, その過程 を経 て親 になってか ら の段階 とに2区分 され, いずれかの過程 にあ る 対象 に焦点が 当て られていた。 また,対象の体 験 している現象 は何 か,反応や認識 は何 か とい うこ とに焦点が置かれた因子探索 レベル で あっ た。 3.研究の対象 は,不妊夫婦 または不妊女性 で 占 め られ,不妊男性 のみ を対象 とした研究 お よび 日本助産学会誌 第 6巻第 1号 (1992)

(11)

不妊症 患者 を対 象 とした看護研究 の動 向

看 護 者 を対 象 と した研 究 は含 まれ な か っ た。

4.研 究 の 方法 は, 調 査 研 究 また は質 的 研 究法 が

と られ て い た 。

引用 文献

i)Unruh,A.M.,McGrath,P.J.,ThePsychologyof

Female lllfertility:Toward a New Perspective,

HealthCareforWomenInternational,6(5-6),369

-381,1985.

2)Woods,N.F,,01shansky,E F,Draye,M.A.,Infer

-tility二Women's ExperierlCeS, Healtll Care for

WomenInternational,12(2),179-190,1991.

3)Hirsch,A.M.,Hirsch,S.MリTheEffectoflnfer

-tilityonMarrlageandSelトConcept,JObstetGyne

-choINeonatalNurs,18(1),13-20,1989.

4)01shansky,E.F,ResponsestoHighTechllOlogy

lnfertilityTreatment,ImageJNursSch,20(3),128

-131,1988.

5)Sandelowski,M.,Pollock,C.,Women'sExperiences

ofInfertility,ImageJNursSch,18(4),140-144,1986.

6)Sandeiowski、M,,TheColorGray.IAmbiguityand

22

Ⅰnfertility,Image∫NursSch,19(2),70-74,1987.

7)Blenner,L.LリPassageThroughInfertilityTreat

-ment.lAStageTheory,Image∫NursSch,22(3),153

-158,1990.

8)Blennel・,L L,TheTherapeuticFunctionso

fCom-panionAnimalsininfertility,HolistNursPract,5

(2),6-10,1991.

9)Davis,D.C.,Dearman,C.N.,CopingStrategiesof

lnfertileWomen,JObstetGynechoINeonatalNurs,

20(3),221-228,1991.

10)Sandelowski.M ,Harris,B.G.,Ho]ditch-Davis,D.,

Mazing:InfertileCouplesandtheQuestforChild,

ImageJNursSch,21(4),220-226,1989.

ll)Bernstein.I"Mattox,IH.,Kellner,R.,Psychologl

-CalStatusofPreviouslyinfertileCouplesAftera

SuccessfulPregnancy,JObstetGynecoINeonatal

Nurs,17(6),404-408,1988.

12)Carr,E.K.,Friedman,T.,Lannon,B,Sharp,P.C,

The Study ofpsychologicalFactorsln Couples

ReceivingArtificialinseminationbyDonorニaDis

-cussionofMethodoJogicalDifficulties,Journalof

AdvancedNursing,15(8),906-910,1990.

参照

関連したドキュメント

氏は,まずこの研究をするに至った動機を「綴

第 1 項において Amazon ギフト券への交換の申請があったときは、当社は、対象

 リスク研究の分野では、 「リスク」 を検証する際にその対になる言葉と して 「ベネフ ィッ ト」

では,訪問看護認定看護師が在宅ケアの推進・質の高い看護の実践に対して,どのような活動

経済学研究科は、経済学の高等教育機関として研究者を

次のいずれかによって算定いたします。ただし,協定の対象となる期間または過去