<論説>地方議会における議員定数の動向
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(2) 近畿大学法学. 第55巻第2号. で あ る とい わ れ て い る(2)。 本 稿 で は こ う した地 方議 員 の定 数 削減 と い っ た 昨今 の動 向 に対 して,主 と して 市 町 村 レベ ル の議 会 を念 頭 に置 き な が ら2つ の視 点 か ら検 討 を加 え る。 一 つ は こ う した議 員 定 数 の 削減 と い う主 張 が ど の よ う な背 景 と歴 史 的 経 緯 を持 って い る の か に つ い て の検 討 で あ る。 もう一 つ は実 際 の 自治 体 に お け る定 数 の 現 状 と,ど の よ うな 条 件 の 自治 体 に お い て 議 員 定 数 が 多 く (少 な く)設 定 され て い るの か に つ い て の 検 討 で あ る。 ま た 各 市 町 村 に お い て議 員 定 数 と関連 を持 つ 要 因 を検 討 す る こ とを 通 じて,議 員 定 数 を 削 減 す べ き と い った主 張 の意 図 が どの 程 度 現 実 と適 合 して い るか,あ. るい は ど. の程 度 そ う した主 張 が 妥 当性 を持 つ の か につ い て も検 討 した い。. 1。 地 方 議 会 の 定 数 に 関 わ る 制 度. 本 論 に入 る以 前 に地 方 議 会 の 定 数 につ い て の法 律 上 の 規定 を確 認 す る。 地 方 議 会 の 議 員 定 数 につ い て 定 め て い るの は,地 方 自治 法 第90条(都 県 議 会)第91条(市. 道府. 町 村 議 会)で あ る。 議 員 定 数 の定 め方 は,平 成11年 の. 地 方 自治 法 改 正 の 際 に大 き く変化 した③。 地 方 自治 法 の 制 定以 降平 成11年 の法 改 正 ま で は,地 方 議 会 の議 員 定 数 は 自治 体 の 人 口 に応 じて 同法90条(都. 道 府 県)・91条(市. 町 村)に 定 め られ. て い た。 また そ れ ぞ れ の 条文 に は条 例 に よ って定 数 を 削減 す る こ とが で き る と定 め られ て い た。 こ の た め に 自治 体 が 議 員 の定 数 を 変 更 す る場 合 に は,地 方 自 治 法 に 定 め られ る標 準(法 定 定 数)か. (2)加. ら議 席 を 削 減 す る 条 例. 藤 幸 雄 「最 近 の 市 議 会 の 議 員 定 数 の状 況 」 『地 方 財 務 』2006年11月 号,p.. 28. (3)た. だ し施 行 は統 一 地 方 選 挙 の年 に合 わ せ て 平 成15年1月1日 一66一. とな って い る。.
(3) 地方議会 における議員定数 の動 向 (減 数 条 例)を 制 定 し,自 治 体 ご と の定 数(条. 例 定 数)を 定 め る とい う方. 式 を と って いた。 これ に対 して 平 成11年 の 法 改正 以 降,地 方 自治 法90条 ・91条 で は議 員 定 数 を 条 例 で 定 め る よ う に規 定 して お り,人 口 に応 じた議 員 定 数 の上 限 の み を 示 す よ う に変 わ って い る。 各 自治 体 は条 例 に よ って法 律 に定 め られ た上 限 まで の 範 囲 内 で 任意 に議 員定 数 を設 定 す る。 この法 改 正 に よ って それ 以 前 の 法 定 定 数 ・減 数条 例 とい った概 念 は消 滅 した。 ま た法 改 正 に伴 って, 同 じ人 口規模 で も法 定 定 数 よ り も上 限数 の方 が少 な い数 に な って い る。 た だ しこの 法 改正 に伴 って 各 自治 体 の議 会 の議 員 定 数 が大 き く変 わ った と い う こ とは な く,す で に各 自治 体 が条 例 定 数 に よ って 定 数 を削 減 して い た状 況 を ふ まえ て上 限 を下 方 修 正 した とみ る の が妥 当 で あ ろ う。 ま た法 定 定 数 方 式 か らの変 更 に は,定 数 は条 例 で定 め,国 が定 数 を示 す 場 合 に も標 準 的 な もの に と どめ るべ き で あ る とい った議 長 会 三 団 体 か らの要 望 も反 映 され て い る と思 われ る(4)。 表1は 市 町村 議 会 の 人 口別 議 員 定 数 に つ い て の 新 旧 の 規 定 を対 照 した もの で あ る。 ま た直 接 に議 員 定 数 に つ い て定 め た規 定 で は な いが,定 数 に影 響 す る も の と して常 任 委 員 会 に つ い て の 規 定(地 方 自治 法109条)が. あ った 。 同 条. で は 「普 通 地 方 公 共 団体 の議 会 は,条 例 で 常 任 委員 会 を 置 くこ とが で き る」 と定 め て お り,議 員 の委 員 会 所 属 につ いて もか つ て は 「議 員 は,そ れ ぞ れ 一 箇 の常 任 委 員 とな る」 と規 定 して い た(109条2項). 。 こ の よ うな 規 定 の. 下 で は,議 員 の定 数 と常 任 委 員 会 の数 は相 互 に そ の規 模 の 制 約 とな る。 こ の た め地 方 議 会 が複 数 の常 任 委 員 会 を持 つ た め に は,そ れ に応 じた 議 員 数 が必 要 とな って い た。 この規 定 は平 成18年 の 法 改 正 に よ って 「議 員 は,少. (4)分 権 改 革 の 過程 で の 地 方 議 会 に 関 わ る議 論 に つ い て は,駒 林 良 則 『地 方 議 会 の法 構 造 』 成 文 堂,2006年,第4章,を 一67一. 参照。.
(4) 近畿大学法学. 第55巻第2号. る こ とを 提 言 す る と同 時 に,地 方 自治 体 の行 政 改革 の 指 針 とな る べ き 「地 方 行 革 大 綱 」 を 国 が 制 定 す る よ う求 め て い る(6)。この 答 申 に基 づ い て 昭和 60年1月. に作 成 され た 地 方 行 革 大 綱 に は7つ の重 点事 項 が あ り,地 方 議 会. の 合 理 化 も組 織 ・機 構 の 合 理 化 や給 与 の適 正 化 とな らん で重 点 事 項 の一 つ と され た 。 地 方 行 革 大 綱 に 基 づ い た 自治 体 レベ ル の行 政 改 革 に よ って,昭 和63年10月 時 点 で14府 県 ・958市町村 で議 員 定 数 の 削減 が行 わ れ,減 員 比 率 は22.7%と な って い る こ とが報 告 され て い る(7)。 地 方 制 度 調 査 会 は この後 も数 次 に わ た って組 織 さ れ て い るが,地 方 議 会 に つ い て 言 及 した 答 申 と して は,第22次. 地 方 制 度 調 査 会 が小 規 模 町 村 に お. け る町 村総 会 の 活用 を提 言 した もの と,第26次. 地方制度調査会が分権改革. 後 の地 方 制度 に つ い て答 申 した 中 に地 方 議 会 の機 能 強 化 が 提 言 され て い る もの の2つ だ け で あ る。 地 方 制 度 調 査 会 に お け る地 方 議 会 の 合 理 化 につ い て の論 議 は,主. と して 臨調 ・行 革 審 と い っ た行 政 改 革 に特 化 した諮 問 機 関. の 活動 が本 格 化 す る前 の期 間 に行 われ た もの で あ る。 そ こで は住 民 の 代 表 機 関 で あ って厳 密 に は行 政 組 織 に は含 まれ な い議 会 の 組 織 や 運 営 につ いて も,効 率 ・合 理 化 と い っ た観 点 か ら行 政 組 織 と同 一 視 した うえ で 同 種 の 改 革 が求 め られ て い る が,行 政 改 革 の 一 環 と して の 議 会 改 革 と い う枠 組 み は こ れ以 降 の地 方 議 会 改 革 に継 承 され て い く。. (2)第 二 臨 調 にお け る地 方 議 会 につ いて の 議 論 昭 和56年 に 総 理 府 の 附 属 機 関 と して 発 足 した 臨 時 行 政 調 査 会(第 二 臨 調)は,昭. 和58年 まで の2年 間 で 行 政 改 革 に関 す る5回 の 答 申 を 内 閣 総 理. (6)同. 上,p.648,p.654.. (7)臨. 時行政 改革推進審議 会事務室監修. 申 』 ぎ ょ う せ い,1990年,pp.152-154. 一70一. 『「地 方 の 時 代 」 の 新 展 開 一 新 行 革 審 答.
(5) 地方議会 における議員定数 の動 向 大 臣 に提 出 して い る。 第二 臨調 の 目的 は 「増 税 な き財 政 再 建 」 の た め に行 政 全般 にお け る支 出 削 減 とス リム化 の方 策 を提 言 す る こ とで あ り,国 の行 政 活動 の み な らず地 方 自治 の領 域 を も改 革 の対 象 に含 め て い た。 第二 臨調 の答 申 の うち,行 政 改 革 全 般 につ いて 課 題 を示 した第1次 答 申 で は,地 方 の行 政 改 革 で は職 員 の定 員 ・給 与 の 管 理 を 強 調 して い るが,議 会 に つ い て の言 及 は な い。 地 方 議 会 につ いて 言 及 した の は,昭 和57年7月 30日 に提 出 され た 第3次 答 申 「基 本 提 言 」 で あ る。 基 本 提 言 の第4章. 「国. と地 方 の機 能 分 担 及 び地 方 行 財 政 に関 す る改 革 方 策 」 に 「地 方 行 政 の 減 量 化,効 率 化 」 と い う項 目が あ り,そ の 中 で 地 方 議 会 の 合 理 化 に つ い て の 言 及 が あ る。 その 内 容 は,地 方 自治 体 全 般 と同 様 に 地 方 議 会 に お い て も運 営 の 効 率 化 が 必 要 で あ り,① 議 員 定 数 に つ い て は 減 数 条例 に よ る削 減 を評 価 しつ つ も一 層 の 簡 素 化 を 要 望 し,さ らに 定数 削減 の状 況 を ふ ま え て法 定 定 数 の 見 直 し(減 少 の 方 向 で 修 正)を 行 う,② 議 員 報 酬 を適 正 な水 準 に抑 制 す る,と い う もの で あ る⑧。 この 二 点 につ いて は最 終 答 申 にお いて も地 方 行 政 の 徹 底 した 減量 化 と して繰 り返 さ れ て い る⑨。 国 の 財政 支 出 の 削減 の た め に は,国 か ら巨額 の財 源 の移 転 を受 け て い る 地 方 財政 に お け る支 出 削減 が必 要 で あ り,議 会 につ い て も行 政 機 関 と 同様 に財 政 上 の見 地 か ら効 率 化 と減 量 化 を求 め る と い う のが 第 二 臨 調 の 立 場 で あ った。 こ の よ うな考 え方 は臨 調 の後 身 と もいえ る行 革 審 に継 承 され る こ とに な る。. (8)臨 時 行 政 調 査 会 事 務 局 監 修 『臨 調. 基 本 提言 』 行政 管理 研 究 セ ンタ ー,1982. 年,P.93. (9)臨 時 行 政 調 査 会 事 務 局 監 修 『臨 調 年,p.112. 一71一. 最 終 提言 』 行 政 管理 研 究 セ ンタ ー,1983.
(6) 近畿大学法学. 第55巻第2号. (3)行 革 審 に お ける 地 方 議 会 に つ い て の論 議 臨 時 行 政 改 革 推 進 審 議 会(行 革 審)は,第 い う課 題 を 引 き継 い で 昭 和58年7月. 二 臨 調 か ら行政 改 革 の推 進 と. に 発 足 した。 行革 審 は 昭和58年 の 第1. 次 か ら平 成5年 に 解 散 した 第3次 ま で に わ た り,臨 調 答 申 に 基 づ く行 政 機 構 の 改 革 の 状 況 を 検 証 す る こ と と並 行 して,存 続 期 間 中 に 多数 の意 見 。答 申 を 首 相 に 提 言 して い る。 第1次 行 革 審(昭 和58年7月. ∼61年6月)は. 昭和59年7月. に 「当面 の行. 政 改 革推 進 方 策 に 関 す る意 見一 国 の行 財 政 改 革 と地 方 行 革 の推 進 」 に お い て,自 治 体 職 員 の定 員 ・給 与 の 適 正 化 や 業 務 の 民 間 委 託 な ど と並 ん で, 「地 方 議 会 の 合 理 化 」 と い う項 目を 設 け て い る。 そ こで は臨 調 基 本 答 申以 降 の定 数 削減 ・報 酬 の適 正 化 とい った各 自治 体 の合 理 化 の状 況 を評 価 しつ つ も,「 な お一 層 の 合 理 化 が 図 られ る よ う期 待 す る」 と され,ま た 「国 に お い て は,地 方 議 会 の議 員 の法 定 定 数 につ いて,地 方 自治 の本 旨 と議 会 の 機 能 に留 意 しつ つ,今 後 そ の見 直 しを 検 討 す る」 と も提 言 され て い る⑩。 第1次 行 革 審 は最 後 の答 申で あ る 「今 後 にお け る行 財 政 改 革 の 基 本 方 向 」 (昭和61年6月)に. お い て も,「 自主 的 に議 員 定 数 及 び議 員 報 酬 の 見 直 しが. 行 わ れ る よ う期 待 す る」 「国 に お い て も,今 後 の 課 題 と して 法 定 定 数 の 見 直 しを検 討 す る」 と,上 記 の 意 見 と同 様 の 主 張 が な され て い るω。 第2次. 行 革 審(昭. 和62年4月. ∼ 平 成2年4月)で. は,平 成1年12月. に. 「国 と地 方 の関 係 に 関 す る答 申」 が 出 され て い る。 この 答 申 の 「地 方 議 会 へ の 住 民 の 関 心 の 喚 起 等 」 とい う項 目で は,会 議 の 公 開 ・議 事録 の 公 開, 休 日 ・夜 間 の 議 会 開 催 な どの 方 策 で 議 会 活動 に 対 す る住民 の 関心 の 喚起 と. ω. 臨 調 ・行 革 審OB会. 監修. 『臨 調 行 革 審. 研 究 セ ン タ ー,1987年,p.440. aD同. 上,p.663. 一72一. 行 政 改 革2000日 の記 録 』 行 政 管 理.
(7) 地方議 会における議 員定数 の動 向 な らん で,「 臨 調 答 申 等 の 指 摘 に 沿 って,引 き続 き,議 員 定 数 及 び報 酬 の適 正 化 を 推 進 す る」 とい う記述 が あ り,依 然 と して議 会 の合 理 化 が 関心 事 と な って い る。 だ が 答 申 中 に は 「住 民 の参 加 と監 視 の機 能 の充 実 は,行 財 政 改革 推 進 の 見地 の み な らず,地 域 行 政 の活 性 化 に と って欠 かせ な い。 監 査 委 員 や議 会 の機 能 も,ど の 本 来 の役 割 にふ さわ し く発 揮 され るべ き で あ る」 とい った記 述 もあ り,臨 調 ・第 一 次 行 革 審 の答 申 と比 較 す る と合 理 化 と支 出 の 削減 ば か りを強 調 す る 内容 で は な くな って い る⑫。 行 革 審 に お け る地 方 自治 関 係 の 論 点 は,第3次 平 成5年10月)で. 行 革 審(平 成2年10月. ∼. は地 方 分 権 へ と変 化 して い く。 第3次 行 革 審 にお いて は. 答 申全 般 の力 点 は行 政 の ス リム化 よ り も規 制 緩 和 に置 か れ て いた 。 地 方 自 治 に関 す る論 議 も地 方 分 権 特 例 制 度(い わ ゆ るパ イ ロ ッ ト自治 体)に 集 中 して お り,こ の た め最 終 答 申や そ こ に至 る過 程 の 提 言 ・答 申 で は 自治 体 行 財 政 の 整 理 や 職 員 ・議 員 の 削 減 は 言 及 され て い な い⑱。 3次 にわ た って 行 革 審 が 活 動 した10年 間 で,地 方 自治 体 は 給 与 の 管 理 ・ 議 員 の 削 減 を 相 当 程 度 実 現 した 。 職 員 給 与 に つ い て は ラス パ イ レス 指 数 が 低 下 し,議 員 定 数 につ い て は 前 述 の よ うに 法 定 定 数 か ら2割 強 が 削 減 され る とい った 成 果 を 行 革 審 も認 め て お り,1970年. 代 後半 に 登場 して き た地 方. 議 員 の 削 減 とい う課 題 は1990年 代 に な る とそ れ ほ ど強 く主 張 され な くな っ た。. (4)地 方 分 権 推 進 委 員 会 に お け る論 議 地 方 分 権 推 進 委 員 会 は平 成7年7月. ⑫. に発 足 し,90年 代 末 の分 権 改 革 で実. 臨 時行 政 改 革 推 進 審 議 会 事 務 室 監 修 『行 革 審 ・全 仕 事 』 ぎ ょうせ い,1990年, pp.268-271.. ⑱. 臨 時行 政 改革 推 進 審議 会 事 務 室監 修 『第 三 次 行 革 審 提 言 集 革 指 針 』 行 政 管 理 研 究 セ ンタ ー,1994年 一73一. 。. 新時代の行政改.
(8) '磁 岬. 一 、,.・. 周ti,`『... 近畿大学法学. 第55巻第2号. 現 され るべ き具 体 的 な 内 容 につ い て 審議 し,平 成8年. か ら13年 の 間 に5次. にわ た る勧 告 を 行 った 諮 問 機 関 で あ る。 地 方 分 権 推 進 委 員 会 の議 論 は地 方 自治 の あ ら ゆ る分 野 に及 ん で い るが,そ の 中 で議 会 に つ い て の議 論 は第1 次 勧 告 ・第2次 勧 告 の 中 に含 ま れ て い る。 第1次 勧 告(平 成8年12月)に. お い て は,第2章. 「新 た な地 方 自治 制 度. の 枠 組 み 」 の 中 で,地 方 公共 団体 の組 織 等 に 関す る規 定 の見 直 しの一環 と して,議 員 定 数 に関 わ る地 方 自治 法 の規 定 を今 後 の地 方 議 会 の あ り方 の検 討 と あ わせ て見 直 す こ とが 提 言 され て い るae。こ の提 言 は 合 理 化 の 文 脈 で は な く,規 制 を緩 和 して 自治 体 の 自主 性 を尊 重 す る,あ る い は地 方 の実 情 に合 わ せ て 組織 を柔 軟 に設 定 す る とい う文 脈 の 中 に位 置 す る。 だ が 第2次 勧 告(平 成9年7月)で は や や変 化 す る。 第2次 勧 告 の第6章. は,議 会 につ い て言 及 す る際 の文 脈 「地 方 公 共 団体 の行 政 体 制 の整 備 ・. 確 立 」 のIV「 地 方 議 会 の活 性 化 」 で は,議 会 の機 能 強 化,議 会 の組 織 ・構 成,議 会 の運 営 の3つ の項 目が検 討 さ れ て い るが,そ. こで は議 会 の 権 限 拡. 大 や議 会 の夜 間休 日開催 とい った柔 軟 化 の文 脈 か らの 提 言 と な らん で 合 理 化 の文 脈 か らの提 言 もな さ れ て い る。 一 つ は委 員 会 数 の抑 制 で あ り,も う 一 つ が議 員 定 数 につ い て の もの で あ る。 議 員 定 数 につ いて は,「国 は,議 員 定 数 に つ い て,地 域 の実 情 等 に応 じた組 織 ・構 成 の 見 直 しが 弾 力 的 に行 え るよ う,人 口段 階 を大 括 りにす るな ど,基 準 の一 層 の 弾力 化 を 図 る。 な お, この基 準 の見 直 しに 当 た って は,減 数 条 例 の 制 定 状 況 を 十 分 に勘 案 す る。」 と記 述 され て い る⑮。 こ こ で は 自治 体 が よ り柔 軟 に定 数 を設 定 可能 な よ う に制 度 を変 更 す る よ う主 張 され て い るが,実 際 に は減 数 条 例 に よ る定 数 の. Oの 地 方 分 権 推 進 委 員 会 事 務 局 編 『地 方 分 権 推 進 委 員 会 第1次 勧 告 』 ぎ ょ うせ い, 1997年,pp.36-37. ⑮. 地 方 分 権 推 進 委 員 会 事 務 局 編 『地 方 分 権 推 進 委 員 会 第2次 勧 告 』 ぎ ょ うせ い, 1997年,pp.121-124。 一74一.
(9) ㌦ヤ. 地方議会 における議員定数の動 向 減 少状 況 を考 慮 に 入 れ る こ とで,定 数 の基 準 は弾 力 化 さ れ る と同時 に下 方 修正 され る こ とに な る。 この よ うに,地 方 分 権 推 進 委 員 会 の提 言 は全 体 と して は 自治 体 の権 限拡 大 や 自治 体 行 政 の柔 軟 化 を志 向 して い る もの の,柔 軟 化 の 向 か う先 と して は ス リム化 ・合 理 化 もあ り うる こ とが 勧 告 内容 か ら は読 み取 れ る。. (5)三 位 一 体 改 革 と それ 以 降 の議 論 状 況 1990年 代 末 の地 方 分 権 改 革 に よ って 国 と地 方 の 役 割 分 担 が 変 化 した後 の 地 方 自治 の重 要 問題 は,権 限 ・財 源 の地 方 へ の 委 譲 と地 方 レベ ル で の 行 政 改 革 を 同 時進 行 で行 う こ とで あ った。 平 成13年7月. に地 方 分 権 改 革 推 進 会. 議 が総 理 大 臣 の諮 問機 関 と して設 置 され たが,そ の 答 申で は地 方 の 自 由度 の拡 大 ・権 限委 譲 と行 財 政 の ス リム化 が セ ッ トで 主 張 され て い る⑯。 議 会 につ い て の意 見 で は定 数 につ いて,人. 口減 少 や 財 政 事 情 を ふ まえ る. 必 要 が あ る と しつ つ も,同 時 に多 様 な住 民 意 思 の 反 映 や 専 門 性 の 確 保 の た め に は一 定 以 上 の規 模 が 必 要 で あ る と も述 べ られ て お り,自 治 体 は諸 事 情 を勘 案 しつ つ 適 正 な議 員 定 数 を設 定 す べ きで あ る と い うの が 答 申の 内 容 と い う こ とに な る。 こ う した玉 虫 色 の提 言 よ りも実 際 の 自治 体 の 定 数 設 定 に 影 響 して い るの は,財 政 制 度 の 改 革 に 関 わ る提 言 部 分 で あ った と思 わ れ る。2000年 代 前 半 に は いわ ゆ る三 位 一 体 改 革 と して 税 財 政 シ ステ ムの 見 直 しが 行 われ たが,そ れ に関 連 して 地 方 分 権 改 革 推 進 会 議 は 「三 位 一 体 の 改 革 に つ い て の意 見 」(平 成15年6月)に. お い て 地 方 歳 出 の 削 減 と交 付 税 総. 額 の抑 制 を提 言 した。 その 後 の 三 位 一 体 改 革 の 進 行 の 過 程 で,実 際 に小 泉. ⑯. 地 方 分 権 改 革 推 進 会 議 の 活 動 状 況 や 答 申 内 容 に つ い て は,内. 閣府 ホ ー ム ペ ー. ジ に あ る 議 事 録 や 意 見 書 な どを 参 照 。http://www8.cao.go.jp/bunken/index. html. 一75一. ..
(10) 近 畿大 学法学. 第55巻第2号. 内 閣 は 交 付 税 総 額 の 削減 と臨 時 財 政 対 策 債 の抑 制 を行 って お り⑰,国 か ら の 資金 移 転 が減 少 した こ とで 自治 体 は歳 出 削減 へ の取 り組 み を強 い られ る こ とに な った。 従 来 の諮 問機 関 の答 申 は地 方 行 革 を求 め る こ と は あ って も 交 付 税 の 削減 とい った措 置 ま で は踏 み 込 ん で い なか っ たの に対 し,地 方 分 権 改 革 推 進 会 議 の提 言 で は議 会 につ いて の 部 分 よ り も財 政 に関 わ る部 分 が 議 員 の 削減 な どを間 接 的 に規 定 した こ と にな る。 地 方 自治 関 係 の諮 問 機 関 と して は この 後 に地 方 分 権 改 革 推 進 委 員 会 が 平 成19年4月. に設 置 さ れ て い るが,ま. だ 勧 告 ・意 見 の 提 出 に は至 っ て い な. い。 これ まで の 委 員 会 の 審 議 の 過 程 で 地 方 の 行 財 政 改 革 は 重 要 問 題 と して しば しば言 及 され て お り,職 員 の 削 減 と並 ん で 議 会 の ス リム 化 に つ い て も 本 稿 冒頭 の 猪 瀬 委 員 の 発 言 や,夜 間 議 会 の 開 催 や 請 願 や 公 聴 会 に よ る議 会 機 能 の一 部 代 替 な どの 意 見 が 出 さ れ て い る⑱。 た だ し国 の機 関 が 自治 体 の 改 革 ・ス リム化 の た め の案 を作 成 しそれ を地 方 に実 行 させ る と い う図 式 は, 地 方 分 権 の 推 進 とい う意 図 とは 矛 盾 して お り,勧 告 ・提 言 を 作 成 す る 際 に 分 権 と改 革 の 推 進 を どの よ うに 矛 盾 な く構 成 す る の か は 注 目 され る。. 3.奈. 良 。大 阪 の 市 町 村 に お け る 議 員 定 数 の 動 向. 以 下 の 部 分 で は 奈 良 県 ・大 阪府 の市 町村 を事 例 と して,各 市 町村 の議 員 定 数 に 関 わ る動 向 と定 数 の 相 対 的 な 規 模 に 関 わ る 要 因 に つ い て 検 討 を 行 う。 奈 良 県 と大 阪府 の市 町村 を事 例 と して選 択 した理 由 は,両 府 県 で は市. ⑰. 北村亘. 「地 方 税 財 政 」 村 松 岐 夫 編. 『テ キ ス トブ ッ ク 地 方 自 治 』 東 洋 経 済 新 報. 社,2006年,pp.141-144. ⑱. 地 方 分 権 改革 推 進 委 員 会 に つ い て は 内 閣府 ホ ー ム ペ ー ジ にあ る委 員 会 開 催 状 況 や 議 事 録 な ど を 参 照 。http://www.cao.go.jp/bunken-kaikaku/iinkai/ iinkai-index。htm正. 一76一.
(11) 地 方議会 におけ る議員定数 の動 向 町 村 合 併 が 進 ん で い な い た め に,議 員 定 数 に 関連 ・影 響 す る要 因 に つ い て 考 え る際 に 合 併 の 影 響 を そ れ ほ ど考 え る必 要 が な く,同 時 に市 町村 数 が多 い た め に2府 県 で 一 定 程度 の ケ ー ス数 を確 保 で き る こ とで あ る。 まず 奈 良 に お け る直 接請 求 の動 き を み る こ とで現 在 の地 域 に お け る地 方 議 会 ・地 方 議 員 に 対 す る住 民 の意 識 を み た後 に,2府. 県 の市 町 村 の特 性 と議 員 定 数 の. 関係 を分 析 す る。. (1)奈 良 県 下 に お け る定 数 削 減 運 動 2007年 の統 一 地 方 選 挙 に先 だ って,各 地 で 地 方 議 会 の 定 数 を 減 らす よ う 条 例 を改 正 す る動 きが み られ た。 定 数 削 減 の 背 景 と して は 自治 体 財 政 の 悪 化,地 方 交 付 税 交 付 金 の 減 少 に よ る 自治 体 の 予 算 規 模 の 縮 小 が 存 在 す る。 予 算 規 模 が 縮 小 され る と,ほ とん どが 人 件 費 か ら構 成 され 固 定 的 な 支 出 で あ る議 会 費 が 予 算 全 体 に 占め る割 合 は相 対 的 に上 昇 す る こ とに な るが、 議 会 関 連 の 支 出を 削 減 す るた め に は議 員数 を減 らす か議 員 報 酬 を低 くす るか の ど ち らか を 行 う しか な く,そ の た め に議 会 選 挙 に先 だ って定 数 の 削減 を 行 う 自治 体 が 出 て く る こ とに な る。 だ が実 際 に は議 員 を 削減 す る こ とに よ る財 政 の改 善 は ほ とん ど期 待 で き な い⑲。 議 員 定 数 の 削 減 が意 味 を 持 つ の は,一 つ に は悪 化 す る 自治 体 財 政 に対 して改 善 の努 力 を して い る とい う象 徴 的 な次 元 に お いて で あ る。 もう 一 つ には. ,議 員 の 削 減 に よ って 改 善 で き る金 額 は 自治 体 予 算 のO.1%以 下. で あ った と して も,住 民 の一 般 的 な金 銭 感 覚 か らみ れ ば そ こで 節 約 で きた 数 百 万 円 の予 算 は大 金 で あ り,そ れ を 他 の 施 策 に使 うな り公 債 費 に充 て る な りす べ き とい う主 張 は 当然 あ りう る。 これ らの 点 に関 連 して,条 例 の 改. ⑲. 河 村 和 徳 「議 員 定 数 削 減 に関 す る計 量 分 析 」『法 学 政 治 学 論 究 』第29号,1996 年,pp.410-411. 一77一.
(12) 近畿大学法学. 第55巻第2号. 定 は議 会 内部 の イ ニ シア テ ィブ に よ る場 合 が 多 いが,自 治 体 に よ って は住 民 が議 員 定 数 の 削減 を求 め る直 接 請 求 を行 う場 合 も観 察 され る。 奈 良県 に お い て も,2007年. の統 一 地 方 選 挙 に際 して 多 くの 市 町 村 が 条 例. を改 正 して議 員 定 数 を 削減 した。 奈 良 県 内で は23市 町 村 で 議 会 が 改 選 され た が,そ の うち19市 町村 で条 例 を改 正 して合 計44議 席 を 削 減 して い る。 定 数 削減 の背 景 に は,奈 良 県 で は市 町 村 合 併 が ほ とん ど進 行 せ ず 小 規 模 な 自 治 体 が残 って い る こ と,そ れ らの 自治 体 が 三 位 一 体 改 革 に よ る交 付 税 の 減 少 の影 響 を大 き く受 け て い る こ と が あ る。 定 数 の 削 減 に関 して は議 会 が 自 主 的 に行 う場 合 が大 半 で あ る が,そ れ に加 え て 橿 原 市 と河 合 町 で 議 員 定 数 の 削減 を求 め る直 接 請 求 が住 民 に よ って 行 わ れ て い る⑫ ① 。 橿 原 市 に お い て は市 議 会 の定 数 を26か ら21に5議 席 減 らす よ う に求 め る 住 民 グ ル ー プ 「市 議 会 議 員 定 数 を減 らす 会 」 が 平 成18年7月. 末 か ら直 接 請. 求 の た め の署 名 活 動 を 開始 した。 市 選 管 に よ る署 名 簿 の 審 査 を経 て,同. グ. ル ー プ は10月 に6411名 分 の署 名 と と もに条 例 改 正 案 の直 接 請 求 を市 長 に対 して 行 った。 この 署 名 数 は直 接 請 求 に必 要 な住 民 の1/50と. い う数 の約3. 倍 で あ る。 同月 請 求 内容 につ い て審 議 す る た め に臨 時 議 会 が 開 か れ,橿 原 市 長 は定 数 に つ い て は議 会 の 自主 的 な判 断 に ゆ だね る 旨 の意 見 書 を添 え て 付議 した。 議 会 は請 求 内容 につ い て は10月 末 に継 続 審 査 を議 決 し,そ の後 の定 例 会 で も賛 否 を 明 らか に しな い議 員 が多 数 を 占 め,継 続 審 査 の状 態 が 続 い て い る⑳。 これ に対 して住 民 グル ー プ側 は県 内 の他 の 自治 体 の 定 数 や 給 与 の実 態 を調 査 す る の と並 行 して定 数 削減 を主 張 し続 け て い る。 河 合 町 で議 員 削減 の直 接 請 求 が提 出 さ れ た背 景 に は,河 合 町 を含 む地 域. ⑫① 以 下 の部 分 の記 述 は,朝 ⑳. 日新 聞 の地 方 版 お よ び奈 良 新 聞 の 記 事 に基 づ く。. 橿 原 市議 会 が 請求 に 対 して 事 実 上 の 先 送 りを 続 け る こ とが 可 能 な の は,議 会 の任 期 が平 成21年2月. ま で あ るた め に,早 急 に 結 論 を 出 す 必 要 が な い こ と に も. よ る。 一78一.
(13) 地方議会 における議員定数の動向 で市 町村 合 併 が実 現 しな か った こ とが あ る。 平 群 町 ・三 郷 町 ・斑 鳩 町 ・安 堵 町 ・上 牧 町 ・王 寺 町 ・河 合 町 の7町 は,平 成15年6月 置 し,平 成17年3月. に合 併 協 議 会 を 設. 末 の合 併 を 目標 とす る こ と,名 称 は 「西 和 市 」 と し現. 在 の王 寺 町役 場 を合 併 後 の市 役 所 所 在 地 とす る こ とな どを 決 め て い た 。 合 併 協 議 の過 程 で,合 併 推 進 派 の議 員 や 住 民 は小 規 模 な 自治 体 を 統 合 す る こ とで適 切 な規 模 の 自治 体 と な り,行 政 機 構 の 効 率 化 や 施 策 の 広 域 化 が 可 能 に な る こ とを強 調 した。 それ に対 して 合 併 反 対 派 は各 町 の 行 財 政 の 状 況 が か な り異 な って お り一 部 の 町 で 累 積 した 公 債 を 新 市 全 体 で 負 担 しな け れ ば な らな い,合 併 に よ って 行 政 サ ー ビスが 旧 町 の 中 で 最 も低 い 水 準 で 平 準 化 され る,あ る い は歴 史 あ る町 名 が 消 滅 す るな どの 理 由 を 挙 げ て 反 対 した。 平 成16年12月5日. に は合 併 の 是 非 を 問 う住 民 投 票 が 王 寺 ・斑 鳩 ・平 群 の3. 町 で 実 施 され,王 寺 町 ・斑 鳩 町 で は賛 成 を 反 対 が 大 幅 に 上 回 った。 住 民投 票 後 の12月21日 に王 寺 町 と斑 鳩 町 は 合 併 協 議 会 か らの 脱 退 を 表 明 し,合 併 '協議 会 自体 も平 成17年2月 末 に解 散 され た 。 合 併 の 失 敗 を 契 機 と して,7町 る。 そ の背 景 に は,7町 162)で. の 議 会 で は 定 数 の 削 減 が 議 題 に上 って く. の議 会 の 定 数 は合 計108(法. 律上 の上限の合計 は. あ るの に対 して,仮 に合 併 で 西和 市 が で きて いれ ば議 会 の定 数 は. 法 律 に よ る上 限 で も34で しか な い とい った事 情 が 存 在 した。 平 成18年 の う ち に5町. が 条 例 を改 正 して議 員 定 数 を 削 減 した 。 削 減 数 は 斑 鳩 町 が1議. 席,三 郷 町 ・安 堵 町 が2議 席,上 牧 町 は4議 席 で あ る。 事 例 の 河合 町 で は 平 成18年3月. か ら定 数 につ い て の 検 討 を 開 始 した が,11月. の 全 員協 議 会 で. の 採 決 で は現 状 維 持 が 過 半 数 を 占 め条 例 改 正 を 行 わ な い こ と が 一 度 は決 ま った 。 この 結 果 に不 満 を 持 つ 住 民 グル ー プ が,定 数 を3議 席 削減 す る条 例 改 正 案 を 町 長 が 提 出 す る こ とを 求 め る直 接請 求 を め ざ して署 名 活動 を 開 始 した 。 そ の 結 果 議 会 の 態 度 が 変 化 し,12月 議 会 で 急遽2議 席 削減 案 を議 員 提 案 に よ って 提 出 ・可 決 した。 だ が 条 例 改正 後 も住 民 グル ー プ は あ くま 一79一.
(14) 近畿大学法学. 第55巻第2号. で も3議 席 減 を 求 め て 署 名 活 動 を 続 け,平 成19年1月. に 全 住民 の27%に. あ. た る5,222名 分 の 署 名 を 集 め て 町 長 に直 接 請 求 を 行 った 。 直 接 請 求 に よ る 条 例 改 正 案 は 同 月 の 町 議 会 臨 時 会 で 審議 さ れ た が賛 成 少 数 で 否決 さ れ,議 会 が12月 に 決 定 した2議 席 減 の定 数 で4月 に 町議 会 選 挙 を行 った。 橿 原 市 に お け る直 接請 求 で は,議 員 の 削減 の理 由 と して経 費 の節 減 と財 政 改 革 が挙 げ られ,議 員 を5人 減 らす こ とで年 間5,000万 円 の 歳 出 減 と な る と主 張 され て い た。 ま た議 会 の総 人 件 費 が類 似 規 模 の 自治 体 中 で全 国 に 3番 目に 高 い な ど も理 由 に挙 げ られ て い た。 河 合 町 の場 合 に も,7町. 合併. が 失敗 した こ とで,合 併 に代 わ る経 費 節 減 の方 策 と して議 員 定 数 の 削減 が 主 張 され て い る。 そ こで は議 会 ・議 員 が 住 民 の代 表 機 関 で あ り,議 員 数 の 減 少 は住 民 か らの 多様 な意 見 や利 害 を 自治 体 に反 映 させ る機 会 の減 少 で も あ る とい った考 え方 は み られ な い。 む しろ 自治 体 の行 財 政 の改 善 の 一 環 と して地 方 議 会 も合 理 化 す べ き で あ る と い っ た,か つ て の 臨 調 と類 似 した発 想 が,「 議 員 ら も町 民 同 様 の痛 み を 分 か つ べ き」⑳ と い った 昨 今 の 「構 造 改 革 」 的 な レ トリ ック で表 現 され て い る こ とが 注 目 され る。 こ れ ら2つ の直 接 請 求 の 事 例 は,議 会 を 住 民 の 代 表 機 関 と して で はな く 単 に 自治 体 を構 成 す る一 組 織 と して と らえ,財 政 上 の 観 点 か らそ の 合 理 化 を求 め る と い っ た考 え 方 が,現 在 で は住 民 の 間 に も定 着 しつ つ あ る こ とを 示 して い る と思 わ れ る⑳。. ⑳. 河 合 町 で の 住 民 グル ー プ の主 張。 『奈良 新 聞』2006年12月14日. ㈱. た だ し地 方 自治 体 を 主 と して 行 政 サ ー ビ スの 側 面 か ら の み と らえ る よ う な 見 方 が 一 般 的 な 日本 人 の 感 覚 か も しれ ず,そ. 。. う した 感 覚 か らは行 政 組 織 ・議 会 を. 問 わ ず 行 財 政 の 改 革 を 中心 とす る視 点 を持 つ こ と は 当 然 の こ と と も考 え ら れ る。 一80一.
(15) 地方議会 における議員定数 の動 向 (2)議 員 定 数 の 概 観 と定数 設 定 に 関 わ る要 因 以 下 の 部 分 で は 大 阪 府 内 ・奈 良 県 内 の市 町村 議 会 の議 員 定 数 そ の他 の現 況 と,議 員 定 数 に 影 響 を与 え て い る と思 わ れ る要 因 に つ い て検 討 す る。 表2は 奈 良 県 内 の,表3は. 大 阪府 内 の市 町村 別 の議 員 定 数,法 律 上 の定. 数 の 上 限,実 際 の 定 数 と法 律 上 の上 限 の比 率(以 下 「定 数 上 限 比 」 と呼 ぶ) の 一 覧 で あ る。 上 限 と同 じだ け の定 数 を設 定 して い る 自治 体 は存 在 せ ず, どの 自治 体 も程度 は異 な る もの の上 限 よ り少 な い定 数 を定 め て い る。 以 下 の 部 分 で は主 と して定 数 上 限比 を用 い て,議 員 定 数 と 自治 体 の様 々 な要 因 の 間 の 関係 に つ い て考 察 す る。 そ れ ぞ れ の 自治 体 が ど の よ う に定 数 を 設 定 して い るか に 関 係 す る要 因 と,そ れ が定 数 に及 ぼす 影 響 と して は,以 下 の よ う な もの を想 定 す る こ と が で き る⑳。 ①人 口. 市 町村 の人 口 が定 数 に与 え る影 響 につ いて は,相 反 す る2つ の. 場 合 が考 え られ る。 一つ に は,市 町 村 の人 口が 多 くなれ ば それ だ け議 員 数 も増 加 す る の で,単 純 に数 か らみて 議 員 が 多 す ぎ る とみ な され る場 合 が 考 え られ る。 こ の場 合 に は人 口が 増 加 す る ほ ど定 数 上 限 比 は低 下 す るで あ ろ う。 も う一 つ の可 能 性 と して は,人 口が 少 な い市 町 村 ほ ど議 員 一 人 あ た り の有 権 者 数 も少 な くな り,自 治 体 の 規 模 に比 較 して 議 員 数 が 相 対 的 に多 い と見 な さ れ る場 合 が あ る。 この 場 合 に は人 口が 少 な い ほ ど議 員 の 削 減 が 行 わ れ,定 数 上 限比 は低 下 す る こ と にな る。. ⑳. 定 数 に影 響 す る要 因 につ い て は,河 村 前 掲 論 文,井. 田正 道 「 市 議 会議 員 定 数. に関 す る分 析 」 『政 経 論 叢 』 第74巻 第1・2号,2005年,を. 参 照。 な お 井 田論 文. で は定 数 を 説 明 変 数 と して い る が,定 数 は 自治 体 の人 口規 模 に規 定 さ れ る た め 削 減 の 程 度 を調 べ る と い う本 稿 の 目的 に は適 して い な い の で定 数 上 限比 とい う 指 標 を 用 い る こ と と した。 河 村 論 文 で は 同様 の数 値 に 「削減 率 」 とい う用語 を 用 いて い るが,法 定 定 数 制 度 で は な い現 状 で は こ の用 語 は不 適 当 で あ る の で使 用 しな か った 。 一81一.
(16) 近畿大学法学. 第55巻第2号 表2奈. 良県 内市 町村 の議員定数 条例による 議 員定数. 奈良市 橿原市 生駒 市 大和郡山市 香芝市 天理 市 大和高田市 桜井市 宇陀市 五條 市 葛城 市 御所 市 広陵町 田原本町 斑鳩町 上牧町 三郷町 王寺町 平群町 大淀町 河合町 吉野町 川西町 安堵町 高取町 三宅町 下市町 明 日香村 山添村 十津川村 東吉野村 御杖村 曽爾村 川上村 天川村 下北山村 黒滝村 上北山村 野迫川村. 法定上 限. 定数上 限比. 44. 46. 0,957. 26. 34. 0,764. 24. 34. 0,706. 24. 30. 0.8. 20. 30. 20 18. 30 30. 0,667 0,667. 16. 30. 0,533. 22. 26. 0,846. 18. 26. 0,692. 18. 26. 0,692. 15. 26. 16. 26 26. 0,577 0,615. 16 15. 0.6. 0,615. 26. 0,577. 12. 26. 0,462. 13. 26. 0.5. 14. 26. 0,538. 14. 26. 0,538. 12. 22. 13. 22 18. 0,545 0,591. 14. 0,778. 12 12. 18. 0,667. 18. 0,667. 12. 18. 0,667. 10. 18. 10. 18 18. 0,556 0,556. 10 10. 0,556. 14. 0,714. 12. 14. 0,857. 8. 14. 0,571. 8. 14. 0,571. 8. 14. 0,571. 8. 12. 0,667. 10. 12. 8. 0,834 0,833. 7. 12 12. 7. 12. 0,583. 7. 12. 0,583. 一82一. 0,583.
(17) 地方議会におけ る議員定数の動 向 表3大. 阪府 内市町村 の議員定数 条例による 議 員定 数. 大阪市 堺市 東大阪市 枚方市 豊中市 高槻市 吹田市 八尾市 茨木市 寝屋川市 岸和田市 和泉市 守 口市 門真市 箕面市 大東市 松原市 富田林市 羽曳野市 河内長野市 池田市 泉佐野市 貝塚市 摂津市 泉大津市 交野市 柏原市 藤井寺市 泉南市 高石市 大阪狭山市 阪南市 四條畷市 熊取町 島本町 豊能町 岬町 忠岡町 河南町 太子町 能勢町 田尻町 千早赤阪村. 法定上 限. 定数上限比. 89. 96. 52 46 34 36 36 36 32. 56. 0,927 0,929. 56. 0,821. 46 46 46. 0,739 0,783. 46. 0,783 0,842. 0,783. 32. 38 38. 32. 38. 28. 38. 0,842 0,737. 26. 34. 0,765. 22. 34. 0,647. 22. 34. 0,647. 25. 34. 17. 34 34. 0,735 0.5. 20 20. 0,842. 0,588. 20. 34. 0,588 0,588. 20. 34. 0,588. 24. 34. 21. 30 30 30 30. 0,706 0.7. 22 23 18. 18 18 18. 34. 30. 0,733 0,767 0.6. 0.6 0.6. 16. 30 30 30 30 30. 0,667 0,567 0,533. 20. 30. 0,667. 17. 18. 30 26. 0,567 0,692. 16. 26. 0,692. 18. 26. 16. 22. 14. 22. 14. 22. 14. 22. 0,692 0,727 0,636 0,636 0,636. 14. 22. 0,636. 13. 18. 0,722. 10. 18. 0,556. 20 17. 一83一. 0.6.
(18) 砿. 拙. る、):己魑9・'}.・'.・. ゴ・ な ゼ.、. 近畿大 学法学. 第55巻第2号. ま た人 口 の規 模 だ け で は な く,市 町 村 の 面 積 や 人 口密 度 も議 員 定 数 と関 係 が あ る可 能 性 が あ る。 地 方 議 員 が 事 実 上 自治 体 内 部 の 特 定 の 地 域 を 代 表 す る存 在 で あ る こ と を考 え る と,同. じ人 口規 模 で も面 積 が 広 く人 口密 度 が. 低 い市 町 村 の方 が よ り多 くの 議 員 が 必 要 と され る と も考 え られ る。 逆 に 人 口密 度 の高 い市 町 村 は地 域 の 代 表 と い う観 点 か らは,相 対 的 に少 な い議 員 で も問題 は な い と考 え られ る。 ② 自治 体 の財 政 状 況. 議 員 を 削 減 す る理 由 と して主 張 され るの が 自治 体. 財 政 の 厳 しさで あ る。 た だ しこれ まで に み た よ うに そ の よ うな主 張 は主 観 的 な側 面 が 強 い し,実 際 には 議会 関連 の支 出 が 自治 体 予算 に 占 め る比 率 は きわ め て 小 さい た め に,客 観 的 に み る と定 数 の 削減 は 自治 体 財 政 の改 善 に きわ め て わ ず か しか 貢献 しな い。 この よ うに定 数 削減 の財 政 上 の効 果 は 限 定 的 で あ るが,そ れ で も財 政 状 況 が厳 しい市 町 村 ほ ど議 員 につ い て も削減 圧 力 が 強 く,そ の た め に定 数 が よ り少 な くな って い る可 能 性 が あ る。 ③ 議 会 関係 の 支 出. 前 項 の財 政 状 況 と も関 連 す る が,議 会 に関 す る支 出. 自体 が議 員 定 数 に影 響 を与 え て い る可 能 性 が あ る。 議 会 関 係 の支 出 と して 検 討 対 象 とな る もの は,予 算 の 中 の議 会 費 と議 員 報 酬 で あ る。 財 政 の 改 善 とい う観 点 か らは,議 会 費 が一 般 会 計 予 算 に 占 め る比 率 が 高 い 自治 体 ほ ど 議 員 を 削減 す る動 機 を持 ち,議 員 定 数 を少 な め に設 定 す る と思 わ れ る。 議 員 報 酬 と定 数 の 関係 につ いて は2通. りの 可 能 性 が 考 え られ る。 考 え ら. れ る一 つ の場 合 は,議 員 報 酬 が 高 い 自治 体 ほ ど議 会 関 係 の 総 支 出を 抑 制 す る た め に定 数 を減 らす とい う可 能 性 で あ る。 また これ と は逆 に議 員 報 酬 が 高 い 自治 体 は支 出削 減 の手 段 と して 報 酬 カ ッ トな どの 手 段 も可 能 で あ るの に対 して,報 酬 が 低 い 自治 体 は報 酬 額 を 現 状 よ りも引 き下 げ る こ とが 難 し い た め に,議 員 報 酬 の低 い 自治 体 の 方 が 歳 出 削 減 の 手 段 と して 定 数 削 減 を 行 う傾 向が あ る と考 え る こ と も可 能 で あ る。 ④ 合 併 の有 無. 合 併 に よ って で きた 市 や 他 の 自治 体 を 編 入 した 市 は,合 一84一.
(19) 地方議会 における議員定数の動向 併 を経 験 して い な い市 町村 に比 べ て相 対 的 に議 員 定 数 が 大 き くな る こ とが 予想 され る。 そ の原 因 の一 つ は議 員 定 数 に合 併 特 例 が 認 め られ る こ とで あ る が,現 行 の合 併 特 例 法 で は最 大 で 法 定 上 限 の2倍 の 定 数 を 合 併 か ら4年 間設 定 す る こ と が可 能 で あ る。 定 数 の 上 限 が 緩 和 され る期 間 が 終 了 して 通 常 の定 数 で の選 挙 と な っ た場 合 に も,過 大 な 定 数 の 状 態 か ら一 気 に 法 定 上 限 を下 回 る定 数 を設 定 す る こ と は政 治 的 に難 しい の で 考 え に くい。 この た め に合 併 を経 験 した 市 は法 定 上 限 に近 い 定 数 を 定 め る傾 向 が あ る と考 え ら れ る。 ま た 合 併 の 中 で も特 に小 規 模 な 町村 が 隣 接 の 市 に 編 入 さ れ る場 合 に,数 的 に少 数 派 で あ る旧 町 村 の 住 民 の 間 で 自 らの地 域 か ら も議 員 を選 出 した い とい う欲 求 が 往 々に して 存 在 す る が,そ の た め に は議 員 の定 数 を あ る程 度 多 め に 設 定 す る必 要 が あ る。 ⑤ 近 隣 自治 体 の 動 向. 自治 体 の施 策 に お い て横 並 び の傾 向 が み られ る こ. とは よ く観 察 さ れ て い るOS。 自治 体 の 種 々の 施 策 に み られ るの と同 様 に, 定 数 の設 定 に つ い て も地 理 的 に近 接 す る 自治 体 や 同程 度 の規 模 の 自治 体 の 状 況 が,自 治 体 が 旧制 度 の下 で減 数 条 例 を制 定 した り,現 在 の 定 数 条 例 を 作 成 した りす る 際 に影 響 して い る こ とが 考 え られ る。. (3)諸 要 因 と議 員 定 数 の 関 係 以 下 で は まず 数 量 的 に把 握 で き る要 因 と議 員 定 数 との 関 係 を検 討 す る。 議 員 定 数 の状 況 を表 す 指 標 と して 用 い る もの は 定 数上 限 比 で あ る。 人 口に 関 わ る変 数 と して は,平 成18年10月1日. 現 在 の 自治 体 人 口 と人 口密 度 を使. 用 す る。 財 政 状 況 につ いて の 変 数 と して は,自 治 体 の全 般 的 な財 政 状 況 を 示 す もの と して 各 市 町 村 の 財 政 力 指 数(平 成17年 度),財 政 の逼 迫 度 を示 す もの と して 経 常 収 支 比 率(平 成18年 度)と 公 債 費 比 率(平 成18年 度)を 使. ㈱. 村 松 岐 夫 『地方 自治 』 東 京大 学 出版 会,1988年,pp.73-74. 一85一.
(20) 近畿大学法学. 第55巻第2号. 用 す る。 議 会 関 連 支 出 の 指 標 と して は,各 市 町村 の一 般 会 計歳 出 に 占 め る 議 会 費 の 比 率(平 成18年 度)と 条 例 に 定 め る議 員 報 酬 の 月額(条 例 の金 額 か ら減 額 され て い る場 合 に は 減額 され た額)を 使 用 す る。 これ らの 変 数 と定 数 上 限 比 の 相 関 を み た もの が 表4で あ る。1%水 有 意 な 変 数 が 人 口,議 会 費 比率,議. 員報 酬 で あ り,5%水. 準で. 準 で有 意 な変 数. が 人 口密 度 と財 政 力 指 数 で あ る。 ①人 口. 人 口 と定 数 上 限 比 に は正 の相 関 が あ り,人 口 が増 加 す る と定 数. 上 限 比 も大 き くな る とい った 関係 が観 察 さ れ た。 だ が市 町村 合 併 を行 うと 人 口 と定 数 が と もに増 え る の で,分 析 の結 果 に は合 併 の効 果 も合 成 さ れ て い る こ とが 予 想 され る。 しか しな が ら合 併 に よ って発 足 した2市 と他 の 自 治 体 を編 入 した2市 を 除外 した場 合 に も,人 口 と定 数 上 限比 の相 関 係 数 は 0.446(1%水. 準 で 有 意)で. あ り,合 併 の 効 果 を 除 外 して も人 口 と定 数 の. 間 に は 相 関 が あ る こ とが わ か る㈱。 自治 体 の 議 員 数 につ い て 人 口別 に考 え. 表4定. 数上 限比 と諸変数 の相関 関係. 変数. 相 関係数. 人口 人 口密度 財政 力指数 経常収 支比率 実質 公債費比率 議会 費比率 議員報酬. 0。474** 0.222* 0.267* -0. .131. -0. .191. -0. .423** 0。416**. *5%水 **1%水. ㈱. 準 で有 意 準 で有 意. 加 藤 幸 雄 に よ る全 市 議 会 の定 数 の分 析 で も同様 の傾 向 が観 察 され て い る。 加 藤 前 掲 論 文,p.85. 一86一.
(21) 地方議会 にお ける議員定数の動向 る と,人 口 の多 い 自治 体 は議 員 の 絶 対 数 が 多 い の に対 し,人 口の 少 な い 自 治 体 は住 民 数 との 関 連 で み た 相 対 的 な 議 員 数(あ. るい は議 員 一 人 あ た り有. 権 者 数)が 多 い。 人 口の 少 な い 自治体 で議 員 の 削 減 が よ り進 ん で い る とい う こ と は,規 模 の わ りに議 員 が 相 対 的 に 多 い と感 じ られ る場 合 の方 が議 員 の 絶 対 数 が 多 い場 合 よ り も削 減 につ な が りや す い とい う こ とに な る。 ま た 人 口密 度 につ い て は,人. 口密度 が 高 くな る に つ れ て定 数 上 限比 も上 昇 す る. とい った 予 想 とは逆 の 関係 が観 察 され るが,相 関係 数 の値 ・有 意 水 準 は と もに 高 くは な い。 ② 自治 体 の財 政 状 況. 自治 体 の財 政 状 況 に関 わ る変 数 は,財 政 力 指 数 以. 外 は定 数 上 限比 との 関係 が認 め られ な い し,財 政 力 指 数 と定 数 上 限比 の相 関 もそ れ ほ ど強 くは な い。 概 して財 政 の悪 化 と い う現 象 と議 員 の削 減 と い う現 象 の 間 の相 関 は弱 く,財 政 状 況 が 悪 くな る ほ ど よ り多 くの定 数 を削 減 す る とい った現 象 は み られ な い。 た だ し特 定 時 点 で の 多 数 の 市 町 村 の 財 政 状 況 を み る の で は な く,個 々 の 自治 体 の 財 政 状 況 の 時 系 列 的 な 変 化 を み た 場 合 に,財 政 の時 系 列 的 な 悪 化 が 議 員 の 削 減 につ な が って い る可 能 性 は あ る と思 わ れ るが,そ. の妥 当 性 は 分 析 で 用 い た変 数 か ら は 明 らか に しえ な. い。 ま た財 政 デ ー タで 表 され る各 自治 体 の 状 況 と は別 に,そ れ ぞ れ の 自治 体 の 議 員 や 住 民 が 自治 体 の 財 政 状 況 が 厳 しい と主 観 的 に判 断 し,定 数 の 削 減 を 実 行 す る と い う可 能 性 もあ る。 い ず れ に して も,議 員 の 削 減 が 主 と し て 財 政 事 情 と関 連 づ け られ て 主 張 され て い るに もか か わ らず,財 政 と定 数 の 間 に は弱 い関 係 しか 認 め られ な い。 ③議会関係の支出. 議 会 に関 わ る支 出 の うち,議 会 費 比 率 と定 数上 限 比. は 負 の 相 関 関 係 に あ る。 つ ま り予 算 に 占 め る議 会 費 の 比 率 が 高 い ほ ど議 員 の 削 減 が 進 む 傾 向 が あ る とい うの は,両 者 の 関係 に つ い て の 予想 に合 致 し て い る。 ま た 議 員 報 酬 と定 数上 限 比 は正 の相 関 関係 に あ り,議 員 報 酬 が高 い 自治 体 ほ ど議 員 の 削 減 を行 って い な い傾 向 が あ る とい え る。 これ は本 節 一87一.
(22) 近畿大学法学. 第55巻第2号. の最 初 に予 想 した よ うに,議 員 報 酬 が 相 対 的 に高 い 自治 体 は議 会 関 係 の 支 出 を 削減 す る手 段 と して報 酬 の抑 制 とい う手 段 を 取 れ る こ と に関 係 して い る か も しれ な い。 あ る い は議 員 報 酬 が 高 い 自治 体 は 財 政 的 に ま だ余 裕 が あ って議 員 数 を減 ら して ま で歳 出 を削 減 す る状 況 に至 って いな い と い う解 釈 も可 能 で あ る よ うに思 われ る⑳。 議 会 費 。議 員 報 酬 と議 員 定 数 の 関 係 を 考 え る際 に留 意 す る必 要 が あ るの が,自 治 体 の人 口規 模 で あ る。 概 して 自治 体 の 規 模 が 大 き くな る ほ ど,予 算 に 占 め る議 会 費 の 比 率 は低 下 し,議 員 報 酬 は 高 くな る傾 向 が あ る。 逆 に 小 規 模 な 自治 体 は議 会 費 比率 が 高 く,議 員 報 酬 は 低 い 傾 向 が あ る。 自治 体 の 人 口 と議 会 費 比 率 の 相 関 係 数 は 一〇.471(1%水 と議 員 報 酬 の 相 関 係 数 は0.624(1%水. 準 で 有意)で あ り,人 口. 準 で 有意)と,と. もに 高 い 相 関 関 係. が あ る。 議 会 関 係 の 支 出 と議 員 定 数 の 間 に は 高 い 相 関 関 係 が み られ るが, 両 者 の 関 係 を 考 え る際 に は 自治 体 の 人 口規 模 が 議 会 費 や 議 員 報 酬 を 規 定 し て い る可 能 性 を 考 慮 に入 れ る必 要 が あ る。 ④合併の有無. 奈 良 ・大 阪 の全 市 町 村 の定 数 上 限 比 の 平 均 が0.670,つ. ま. り実 際 の議 員 定 数 は概 して法 定 上 限 の2/3程. 度 で あ るの に対 し,合 併 を. 経 験 した 市 の定 数 上 限 比 の 平 均 は0.856と,平. 均 よ り も高 くな って い る。. 事 例 の 中 で は 合 併 を 経 験 した 自治 体 は4市. しか な い の で事 例 と して十 分 と. は い い 難 い が,合 併 を 経験 した 市 町村 は相 対 的 に 多 め の議 員 定 数 を設 定 す る こ とが 観 察 され る。 ⑤ 他 の 自治 体 の 動 向. 自治体 が 定数 を設 定 す る 際 に どの程 度 他 の 自治 体. の 状 況 か ら影 響 を 受 け て い るか は,各. ⑳. 自治 体 を対 象 と した事 例 研 究 に よ ら. 事 例 の 自 治体 に お け る議 員 報 酬 と財 政 力 指 数 の 相 関係 数 は0.537(1%水 有意)で. 準で. あ り,財 政 状 況 が 比 較 的 良 好 な 自治 体 で は 議 員 報 酬 も高 い 傾 向 が み ら. れ る。 一88一.
(23) 地 方議会 における議員定数 の動 向 な けれ ば 明 らか にで きな い が,多 数 の 自治体 の 条 例 制 定 過 程 を観 察 す る こ と は本 稿 の 範 囲 を 超 え て い る。 代 わ りに 本稿 で は 類 似 した 条件 を持 つ 自治 体 の 間 で どの 程 度 定 数 に ば らつ きが あ るか,言 い換 え れ ば結 果 と して の横 並 び 状 況 を 概 観 す る。 表5は 事 例 の 自治 体 を人 口 に よ って分 け,人 口 区分 ご と に定 数 上 限比 の平 均 値 と標 準 偏 差 を示 した もの で あ る⑳。 人 口 区分 ご とに 定 数 上 限 比 の 平 均 は 相 当 程度 異 な って い る が,そ の一 方 で 区分 内 の各 自治 体 の 定 数 上 限 比 の ば らつ き は 大 き くは な い。 標 準 偏 差 の 数 値 を み る と,小 規 模 な 町 村 で は 定数 の ば らつ き が大 き くな る こ と,大 阪 の市 町 村 の 方 が ば らつ き が 小 さい こ とな どが観 察 で き る が,明 確 な傾 向 は観 察 で き な いo. 4.考. 察. 本 稿 で は地 方 議 会 の定 数 につ い て の これ まで の 議 論 の 動 向 を 概 観 し,市 町村 に お け る実 際 の議 員 定 数 の状 況 と それ に関 連 す る要 因 を 検 討 した 。 地 方 議 会 の定 数 を 削減 す る方 向 で議 論 が 始 ま った 契 機 と して は臨 調 答 申が 重 視 さ れ て い るが ㈱,政 府 審 議 会 に お け る議 会 の 合 理 化 の 議 論 は そ れ よ り も 少 し前 の大 平 内閣 期 に始 ま っ て い た。 大 平 内 閣 が ア ジ ェ ン ダを 設 定 して 鈴 木 ・中 曽根 内閣 期 に本 格 的 に検 討 され る と い う推 移 は,行 政 改 革 関 連 の 他 の多 くの 問題 と共 通 して い る。 議 員 定 数 の 削 減 は地 方 自治 体 の 行 政 改 革 の 一 環 と して,主 に歳 出 の削 減 と い う観 点 か ら主 張 され た 。 定 数 削 減 につ い. ㈱. 定 数 の 標 準 偏 差 を計 算 す る と,規 模 が 大 き く定 数 が 多 い 自治 体 の 区分 ほ ど標 準 偏 差 の 値 が 大 き くな っ て しま う の で,自 治 体 規 模 の影 響 が な い定 数 上 限比 に よ って ば らつ きを み る こ とに した 。. ⑳. 河 村 前 掲 論 文,pp。400-403,加 て 」 『地 方 財 務 』1999年6月. 藤幸雄 「 地 方議 会 の 議 員定 数 の 改正 案 に つ い. 号,pp.150-151。 一89一.
(24) 1 81 0.083976 0.052500 0.084900. 70,630 140,623 170,639 120,652 40,815 50,805 30,892. 1万 以 上2万 未 満. 2万 以 上5万 未 満. 5万 以 上10万 未 満. 10万 以 上20万 未 満. 20万 以 上30万 未 満. 30万 以 上50万 未 満. 50万 以 上 0,670. 0.078438. 90,636. 5千 以 上1万 未 満. 全市町村. 0.101296. 50,657. 0.109598. 0.061785. 0.055223. 0.083698. 0.127903. 60,680. 2千 以 上5千 未 満. 0.122898. 定数上 限 標準偏差 比 の平均. 奈良+大 阪. 0. 1. 0,649. 0,957. 0,735. 2 0. 0,653. 0,605. 11 5. 0,568. 0,635. 7 2. 0,657. 0,680. 5. 6. 自治体数. 良. 定数上限 比の平均. 奈. 治体規模別 の定数設定 の状況. 2千 未満. (自 治 体 規模). 自治体数. 表5自. 0.113855. 0. 0.041012. 0.099007. 0.107442. 0.032527. 0.083908. 0.127903. 0.122898. 標準偏差. 3. 4. 4. 10. 12. 3. 5. 2. 0. 0. 自治体数. 大. 阪. 0,689. 0,892. 0,770. 0,816. 0,635. 0,633. 0,692. 0,654. 0,639. 0.103258. 0.061785. 0.022000. 0.052500. 0.077000. 0.072503. 0. 0.040696. 0.117358. 定数上 限 標準偏差 比 の平均 ㎝窃麟 糠 卜。如.
(25) 地方 議会におけ る議 員定 数の動 向 て の 議 論 の 特 徴 の 一 つ と して,本 来 は地 方 自治 体 に 関 わ る問 題 で あ るに も か か わ らず 中 央 政 府 の 財 政 状 況 が 悪 化 して い る 時期 に論 議 され て い る こ と が 指 摘 で き る。 も う一 つ の 特 徴 は,住 民 を代 表 す る機 関 で あ る議 会 に対 し て 行 政 機 関 と同 様 の 観 点 か ら合理 化 ・ス リム化 を 求 め て い る 点 で あ り,現 在 で は こ う した 考 え 方 が政 府 審議 会 の み な らず一 般 市 民 の 間 に も浸 透 して い る こ とは 各地 で の 定 数 削 減 の直 接 請 求 な どか らみ て とる こ とが で き る。 議 員 数 を 減 らす こ とに よ って合 議 体 と して の議 会 の意 思 が 明確 に な り,首 長 に 対 抗 しう る機 関 へ と発 展 す る と い う考 え方 もあ る が⑳,こ う した観 点 は現 在 の議 論 の 中 で は み うけ られ な い。 一 方 で 奈 良 ・大 阪 の82市 町 村 を 対 象 と した定 数 の状 況 に つ い て の 概 観 と,定 数 と関連 す る各 市 町村 の特 徴 の検 討 結 果 は,定 数 削減 につ い て の議 論 の主 張 とは適 合 しに くい もの で あ った。 各 市 町 村 が設 定 した議 員 定 数 が どの程 度 法 定 上 限 に近 い(ま た は法 定 上 限 よ り も少 な い)の か は,自 治 体 の規 模 と強 い 関連 を持 って い る が財 政 状 況 と は それ ほ ど関 連 が な い。 財 政 に 関 わ る要 因 と して は議 会 費 比 率 と議 員 報 酬 が 議 員 定 数 と相 関 が あ るが, こ の2つ の要 因 は人 口規 模 と も相 関 が 高 く自治 体 規 模 か ら影 響 を受 けて い る と考 え られ る。 つ ま り議 員 の削 減 状 況 と最 も関 係 が 深 い要 因 は 自治 体 の 人 口規 模 と い う こ と に な る。 地 方 自治 法 が 定 め る定 数 の 上 限 は小 規 模 な 自 治 体 に な る ほ ど相 対 的 に大 き く設 定 され て い る。 議 員1人. 当た り人 口を み. る と,人 口5万 の市 で は1,667人 で あ る の に対 して 人 口50万 の 市 で は8,929 人,人. 口5千 人 の 町 で は278人 で あ る。 この た め に小 規 模 な 自治 体 ほ ど議. 員 の数 につ いて 過 剰 感 が あ り,削 減 が 進 行 す る と考 え られ る。 以 上 の よ う に財 政 上 の 理 由か ら議 員 削 減 が 主 張 され る に もか か わ らず,. ⑳. 村 松 岐 夫 ・伊 藤 光 利 『地 方 議 員 の 研 究 』 日本経 済新 聞 社,1987年,pp.177181. 一91一.
(26) 近畿大学法学. 第55巻第2号. 削減 状 況 と 自治 体 の財 政 状 況 の間 に は弱 い関 係 しか な い。 議 員 の 削 減 状 況 に相 関 が あ っ た要 因 は 自治 体 の財 政 力 指 数 の み で あ り,し か も相 関 は 強 く な い。 公 債 依 存 度 や 財 政 の 硬 直 化 と い った,財 政 上 は問 題 視 され 合 理 化 に つ なが る よ う な要 因 は,定 数 の 削 減 に は影 響 を 与 え て い な い。 この よ うに 今 回 使 用 した デ ー タか らは,議 員 定 数 削 減 の 根拠 と して 主 張 され て い る こ と と実 際 の 削 減 状 況 の 間 に は ズ レが 存 在 す る よ うに思 わ れ る。 そ の 原 因 は 一 部 前 述 した よ う に,① そ もそ もデ ー タ と して 用 い た 全 て の市 町村 の 財政 状 況 が 多 か れ 少 な か れ 悪 い,② そ れ ぞ れ の市 町 村 の 財政 に は特 定 の 時点 を み るだ けで はわ か らな い時 系 列 的 な 悪 化 傾 向 が あ る,③ 市 町村 関係 者 の主 観 で は財 政 状 況 は厳 しい とい う認 識 が あ る,と い った よ うな場 合 が考 え ら れ る。 た だ しい ず れ にせ よ,議 員 定 数 の 削 減 に よ って生 じ る財政 上 の 改善 は わ ず か で しか な い。 自治 体 の 一 般 会 計 歳 出 に 占 め る議 会 費 の比 率 は,市 で 1%弱,町. 村 で2%前. 後 で あ る。 議 員 を減 らせ ば義 務 的 な支 出 で あ る人 件. 費 が 多 少 は 減 少 す る と い った メ リ ッ トは あ る もの の,そ れ は歳 出 の0.1% か ら0.4%程 度 を 削 減 で き る に す ぎ な い。 ま た 削 減 が進 ん で い る 自治 体 ほ ど議 員報 酬 も低 い傾 向 が あ り,町 村 議 員 の報 酬 は20代 の職 員 の給 与 とほ ぼ 同 程 度 で あ る。 そ の意 味 で財 政 を 改善 す る た め の手 段 と して の効 果 は乏 し い とい え るが,そ れ に よ って 削減 で き る歳 出額 は一 般 的 な住 民 の金 銭 感 覚 か らみ れ ば相 当 の もの で あ る こ と も確 か で あ る。 この よ うな こ とか らは, 議 員 定数 の 削減 は そ れ が求 め られ る 目的 で あ る財 政 の改 善 に は実 質 的 な効 果 が な い が,住 民 の視 点 か らは相 応 の効 果 が あ る方 策 に み え る とい うこ と が で き る。 この た め に実 際 の効 果 は別 と して 自治 体 の改 革 を行 って い る と い う象徴 的 な行 為 と して の意 味 を強 く持 って い る とい え る。 だが 議 員 定 数 を そ の 費用 と便 益 か ら考 え た場 合 に,議 員 を削 減 した こ とに よ る財 政 上 の 効 果 は 明確 で あ って も,議 員 に よ って代 表 され る住 民 の意 思 と い う便 益 の 一92一.
(27) 地方議会にお ける議員定数の動向 部 分 が どの程 度 あ る のか は は っ き りと した 形 で 表 せ るわ けで は な い 。 この た め に現 在 は議 員 活 動 の 低 調 さ と関 連 付 けて 議 員 を 減 らす 財 政 上 の メ リ ッ トだ けが 強 調 され る傾 向 が あ るが,定 数 削 減 の 議 論 を す る際 に は 議 員 の 代 表 機 能 は どの 程 度 の 価 値 を 持 つ の か につ い て の 評 価 を 何 らか の 形 で 行 う こ とが 必 要 な よ う に思 わ れ る。. 一93一.
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