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特集にあたって -- 震災が変えた国際協力 (特集 東日本大震災と国際協力)

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Academic year: 2021

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特集にあたって -- 震災が変えた国際協力 (特集

東日本大震災と国際協力)

著者

山形 辰史

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

192

ページ

2-3

発行年

2011-09

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00004149

(2)

  今年三月一一日に発生した東日 本大地震は、今後の国際協力のあ り方に大きな影響を与えた。ひと つには、それまで開発途上国の支 援を目的にしていた国際協力政府 機関・NGOに対して、日本国内 の課題への対処が求められたこと である。緊急支援が国際協力のひ とつの象徴として認識されている 今日、日本で起こった災害に対し て、 国 際 協 力 政 府 機 関、 N G O、 大 学 も 支 援 を 行 う こ と が 要 請 さ れ、 かつその要請に応える度量が、 それら機関に備わっていた。これ は 阪 神・ 淡 路 大 震 災 と 比 較 し て、 今回特に際立った特徴であった。   いまひとつは、この震災が、日 本の今後の国際協力のあり方を大 きく変える可能性がある、という ことである。 震災によって日本は、 あ る 意 味 で は 被 援 助 国 に な っ た。 今年の援助受取額は世界一になる 見込みである。第二位がスーダン であることを考えれば、日本が後 発 開 発 途 上 国 や 脆 弱 国 の な か に 割って入ってしまった事実が理解 できよう。これに対して二つの際 立 っ た 見 方 が 示 さ れ た。 そ れ は、 「 自 分 の こ と は 自 分 で す る 」 と い う、いうなれば、自給自足原則と 「 他 人 か ら の 支 援 も 受 け る が、 他 人の支援もする」という開放原則 の二つである。

●自給自足原則と開放原則

  自給自足原則とは、日本に降り かかった災難への対処は、一義的 には日本人の責任であり、対照的 に、他国に降りかかった災難への 対処は、その国の人々の責任であ る、という見方を指している。こ の立場を取る外国人は、先進国日 本の災害への対処は日本に任せて おけばいい、と考え、この立場を 取る日本人は、日本人の一義的責 任 は、 日 本 人 を 守 る こ と で あ り、 それは他国の困難への対処に優先 する、と考える。したがって、こ の立場を取る外国人は「日本より もっと貧しい国を支援せよ」と主 張し、日本人は「こんな時に国際 協 力 な ど し な く て よ い 」 と し て、 ODAの削減を主張する。対照的 に開放原則は、支援を受け入れる ことを許容すると同時に、他国へ の 支 援 を 続 け る と い う 立 場 を 取 る。   阪神淡路大震災と比較すると東 日本大震災では、対処が開放原則 の 方 向 に 動 い た こ と が 見 い だ せ る。外国からの救助隊、医師、救 助犬の受け入れはより円滑だった し、開発途上国を含む数多くの国 から日本に支援が寄せられた。一 方、いったんはODAの二〇%削 減方針が示されるなど、開放性の 抑制の傾向も見られた。

 震

力機関

  このように東日本大震災は、今 後 の 国 際 協 力 の あ り 方 に 対 し て、 大きな問いを発したと言える。対 称的に、国際協力の側から震災へ の働きかけも行われた。今回の震 災で顕著だったのは、従来国際協 力 に 従 事 し て い た 機 関 や 団 体 が、 緊急支援を行ったことである。国 際協力機構(JICA)は、これ までの国内での災害の場合と比較 して、より大規模な緊急支援を実 施した。本特集では、坪池明日香 「 J I C A の 東 日 本 大 震 災 復 興 支 援」 が、JICAが実施した避難 住民の受け入れや、ボランティア 派遣の経緯を詳述している。 また、 NGOとタイアップした大学の医 療支援については、山本太郎 「大 学 の 東 日 本 大 震 災 緊 急 支 援 」 が、 被災地の医療支援の実態や、現地 の医師達との連携、およびそこか ら学び得たことについて、臨場感 豊かにまとめている。   従来日本のNGOは、開発途上 国の活動地域における、長期的か つ親密な関係に基づく協力を指向 しており、災害等に対する緊急支 援に参加するのは躊躇してきた歴 史がある。緊急支援は、短時間の うちに多額の資金や大量の人材を

特集

震災が変え

た国際協力

特集

東日本大震災と国際協力

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アジ研ワールド・トレンドNo.192 (2011. 9)

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必要とする一方、関わりは一時的 であるため、かつての日本のNG Oの方針や特長とは相容れなかっ た。しかしながら、国際NGOの 緊急支援における活躍が目立つよ うになり、日本でもジャパン・プ ラ ッ ト フ ォ ー ム が 設 立 さ れ る と、 経常活動を重視する従来型のNG Oが緊急支援にも従事することが 一般的になっていった。このよう な歴史を顧みると、今回日本の国 際協力NGOが、国内の緊急支援 に も 携 わ る よ う に な っ た こ と は、 大きな変化と言える。

●震災対応から得られる教訓

  震 災 か ら 約 半 年 が 経 過 し た 現 在、この震災への対応からいくつ か教訓が得られている。豊田利久 「 災 害 対 応 に お け る 国 際 協 力 の 新 展開」 は、 これまでの震災対応を 評価し、改善すべき点を指摘する と共に、災害からの復興や防災に ついての国際協力の取り組みの実 例を紹介している。特に義援金給 付のスピード、現物支給の内容や タイミングについて、より迅速か つ柔軟な対応を求めている。   さらに森壮也 「自然災害と障害 者」 は、 災害発生時および復興期 の対応に関する障害者への配慮や 障害者の参加という観点から、国 際 社 会 で ど の よ う な 議 論 が な さ れ、制度的枠組が形成されている かを紹介し、その視点から、日本 政府の震災対応の課題を指摘して いる。具体的には、復興プロセス を議論する会議に、障害者の声を 代表するメンバーを加えることを 提案している。   東日本大震災は、地震被害、津 波被害および福島第一原子力発電 所からの放射能汚染という三つの 異なった側面を持っている。なか でも放射能汚染は、開発や経済発 展のあり方を問う、大きな課題で ある。 この課題を論じるためには、 生 産 活 動 を 支 え る エ ネ ル ギ ー を、 今後どのようにして調達すべきか を 深 く 検 討 せ ざ る を 得 な い た め、 月を改め、本誌一二月号で扱う予 定である。

 日

のか

  今 回 の 震 災 へ の 対 処 に 際 し て、 国内外の人々が、前述の自給自足 原 則 と 開 放 原 則 の 間 で 揺 れ 動 い た。 国内では、 「ODA二〇%削減」 に象徴されるように、対外活動に 対する体内活動の優先が当然視さ れた時期があった。しかしこの見 方は、低所得国を含む多くの国々 が日本に人的・物的支援を行った ことで、変化を見せている。筆者 は、今回の震災を機に、先進国同 士、そして先進国と開発途上国の 間の水平的な国際協力が増えるこ と、そして開発途上国が先進国へ のキャッチアップが進む未来にお い て は、 こ の よ う な 水 平 協 力 が、 国際協力の主流になるという予測 を展開している。   また海外でも、今回の震災対応 に関し、日本に対して自給自足原 則を迫る論調があった。 佐藤寛 「外 国から見た震災:なぜ日本に援助 するのか」 は、震災直後にイギリ スのサセックス大学において、日 本人留学生達が被災者のための募 金を行ったところ、ある教授から 「 日 本 は 先 進 国 だ か ら 募 金 を す る 必 要 は な く、 む し ろ そ の 資 源 は、 よ り 貧 し い 国 に 向 け ら れ る べ き だ」 と意見された経験を元にして、 チャリティーの役割について論じ ている。

●素朴な助け合いの力

  阪神・淡路大震災と同様に、東 日本大震災は、ごく普通の日本人 が 素 朴 な 感 情 と し て 持 っ て い る 「 困 っ て い る 人 が い た ら、 相 手 の 気持ちになって支援しよう」とい う助け合いの精神を喚起した。し かし、岩手県に生を受けたものと して今回強く感じたことは、この 助け合い精神は、東北、日本だけ の も の で は な く、 開 発 途 上 国 の 人々も同様に有しているものだっ た、ということである。この助け 合い精神こそ国際協力の原点であ り、国際協力という仕組みは、国 連安全保障理事会の常任理事国に なるとか、捕鯨が続けられるとか い う 理 由 の み に よ っ て で は な く、 一般の人々の素直な助け合い精神 に支えられている。それは、数多 くの同胞の犠牲や 艱 かん 難 なん 辛 しん 苦 く をテレ ビで呆然と眺めながら、自分がす がるようにして見いだした、一条 の光であった。 ( や ま が た   た つ ふ み / ア ジ ア 経 済 研究所   開発研究センター)

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特集にあたって ─ 震災が変えた国際協力

アジ研ワールド・トレンドNo.192 (2011. 9)

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