Title
島嶼地域におけるバイオマスの農業への利活用の可能性
―宮古島におけるアンケート結果を中心に―
Author(s)
菊地, 香; 川満, 芳信; 上野, 正実
Citation
沖縄農業, 42(1): 37-46
Issue Date
2008-08
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/1537
Rights
沖縄農業研究会
島喚地域におけるバイオマスの農業への利活用の可能性
一宮古島市におけるアンケート結果を中心に- 菊地香・川満芳信・上野正実 (琉球大学農学部) KohKIKUCHI,YoshinobuKAWAMITSU,MasamiUENO: PossibilitiesfbrtheutilizationoftheagriculturalbiomassinOkinawareglon -QuestionnaireresultsfromMiyakOjimacity-要約 本稿は,宮古島市での廃棄物系バイオマスの 利活用に関したアンケートを実施した.宮古島 は化学肥料の過剰施肥と未熟堆肥や家畜糞尿の 野積みにより,地下水汚染が懸念される.本稿 は,畜産農家の糞尿処理の実態と旧平良市,旧 城辺町,旧伊良部町を除く宮古島市における廃 棄物系バイオマスの賦存量を明らかにした. アンケート結果によれば耕種農家は,廃棄物 系バイオマスを地力維持に今以上に利用したい と考えている.しかし屋根で囲われた堆肥盤と なる施設が理想的であるが,未だに農家は野積 みで堆肥を製造していることに問題がある. 耕種農家は地力不足が明確になっていながら も,遅効性である堆肥が不足するため,即効性 の化学肥料に依存せざるをえなくなっている. 化学肥料は単位当りの価格が堆肥より高額であ り,農家とすればいたずらにコストアップにつ ながっている. 耕種農家は,廃棄物系バイオマスの利用を地 力維持において肯定的にとらえている. しかし多くの畜産農家は,施設の未整備となっ ており,排出される家畜糞尿を有効に利活用す ることができていない. キーワード 炭素固定,地力収奪,バイオマス,家畜糞尿 Abstruct Thispaperreportstheresultsofaques‐ tionnairerelatedtotheutilizationofthe agriculturalwastebiomassinMiyakOjima citylnMiyakOjima,groundwatercontami‐ nationduetotheexcessiveapplicationof artificialfertilizer,theuseofunripecom postandtheopenairstorageofdomestic animalexcrementisofgreatconcernThis paperattemptstoclarifythecurrentsitua‐ tionwithregardtothedisposalofstock excrementfromfblrmsandquantifythe amountofagriculturalwastebiomassin existenceinMiyakOjimacity,excludingthe fbrmerHiraracity,andGusukubeand lrabutownships・ Accordingtotheresultsofthequestion‐ naire,family-ownedfHrmswanttousethe wastebiomassfbrthemaintenanceofsoil fbrtilitymorethantheydoatpresent・ However,whiletheconstructionofroofbd compostfacilitiesisideal,theproblems沖縄農業第42巻第1号(2008) 38 能な資源であるiLkI). バイオマス利用それ自体は,真新しいことでは ない.古くから家畜糞尿を堆肥化しそれを農地 に還元し,農産物を得ることでバイオマス利用 されていた.しかし,現在では畜産と耕種はそ れぞれ特化して大量生産され,畜産では畜産廃 棄物が大量廃棄されることによる処理問題が, 耕種では大量消費に対応すべく大量牛産が地力 収奪的な農業の展開となり農地の地力低下問題 がそれぞれ顕在化している. 大小の島峨で構成された沖縄県では,それぞ れの島の中で資源の循環をして人々の営みがな されてきた.農家は,役畜として牛馬を飼育し, その糞尿はサトウキビや野菜の肥料として畑に 還元されていた.しかし近年の農業は,サトウ キビであればサトウキビに特化し,役畜として の牛馬は,その役割はなくなっている.その結 果,耕種では地力の低下,畜産では家畜糞尿の 問題が生じてきている.耕種と畜産の連携を密 にした農業の展開が望まれているこうした地 域内での循環は地域複合である. こうした耕畜連携のあり方は,循環型社会の 構築を目指すものである.このことはバイオマ ス・ニッポン総合戦略の理念に即した農業のあ り方でもある.本稿では循環型社会の構築が可 能であるのか宮古島市において実施したアンケー トを通じて,耕種農家と畜産農家の堆肥の利活 用を中心とした行動様式を明らかにしようとす るものである.さらにバイオマスを農村地域の 特性に応じて,適正かつ効果的な農地還元利用 等を促進するため,資源利用の推進を図ること を本稿の目的とする. remainsthatmostfarmsstillrelyonopen aircomposting Family-ownedfblrmstendtobecomede‐ pendentonartificialmanureasit1simme‐ diateeffbctsinimprovingsoilfbrtilityare moreadvantageousthantheslowereffbcts associatedwiththeuseofcompost, However,astheunitcostofartificialfbrtil‐ izerisgreaterthanthatofmanure,its continueduseisfinanciallycripplingfbr family-ownedfarms, Thoughfamily-ownedfarmsactivelyde‐ siretoutilizetheagriculturalwaste biomasstomaintainsoilfertility,farms withlargenumbersofstockareyettopro videsuitablearrangementsfbrthetreat‐ mentoftheexcrementand,therefbre,are unabletoeffbctivelyapplyittothemainte‐ nanceofsoilfbrtility、 Keywords Carbonfixation,Depletionofsoilfbrtility, Biomass,Animalexcrement 1.はじめに 自然の浄化能力を超えた大量生産,大量消費, 大量廃棄,それによる地球温暖化が進展してい る.そして廃棄物の処理などの生活環境悪化の 問題を解決すべく,2002年12月にバイオマス・ ニッポン総合戦略が閣議決定された.バイオマ スは「再生可能な,生物由来の有機性資源で化 石資源を除いたもの」と定義されている.した がって地球に降り注ぐ太陽のエネルギーを使っ て無機物である水とCO2から生物が光合成によ り生成した有機物が最も注目されているバイオ マスである.人間のライフサイクルの中で,生 命と太陽エネルギーがある限り持続的に再生可 2.研究方法 本稿では,バイオマスの適正で効果的な農地 還元利用等を図るためにどのようなことが必要
菊地・川満・上野:島喚地域におけるバイオマスの農業への利活用の可能性 39 であるのかを明らかにすることを目的として, 宮古島市の市民に対して農家・非農家を問わず アンケートを実施した.アンケート内容は,耕 種農家に対しては「使用肥料及び購入先」「堆 肥以外の肥料の使用量」「堆肥の年間10a当た り使用量」「家畜糞尿から作った堆肥」「集排汚 泥や生ゴミの堆肥化について」の5項目であり, 畜産農家に対しては「家畜糞尿を炭化して土壌 改良材として利用する方法について」「飼料の 栽培面積及び栽培している飼料作物」「飼料作 物の栽培において,JAのコントラクター事業 を活用しているか」「濃厚飼料について」「将来 計画について」「畜種を替える予定があるか. ある場合は,導入したい畜種は何か」「水源維 持保全の観点から,どのような対策強化が必要 か」の7項目であった.非農家に対しては「環 境保全,資源リサイクル等の活動について」 「生ゴミを堆肥化し農地に還元することについ て」「生ゴミを炭化して土壌改良材として利用 することについて」「生ゴミの収集について」 「家畜糞尿等のリサイクル堆肥があれば,一般 家庭でも園芸用に利用するか」「家畜糞尿堆肥, 生ゴミ堆肥等によって,有機野菜が栽培された ら購入するか」「水源維持保全の観点から,ど のような対策強化が必要か」の7項目であった. アンケートは,2004年11月に実施し,有効回答 は農家558通,非農家372通であった. 活用を図ることを検討している鯉).フェーズ lでは廃棄物系バイオマスの有効利用である. これは,廃棄される紙,家畜排泄物,食品廃棄 物,建設発生木材,下水汚泥などといった廃棄 物由来のバイオマスである.家畜排泄物の有効 利用で考えうるならば,農地への還元である. フェーズ2では未利用バイオマスの有効利用を 図ることである.農作物非食用部,林地残材と いった未利用バイオマスが,バイオマスの収集 システム技術の発展等によって低コストでの収 集が可能となることによってその利活用が進む ことが期待される.フェーズ3では資源作物の 利活用を図ることである.2020年頃までにエネ ルギー源や製品の原料とすることを目的として, いわゆる「資源作物」が栽培されるようになる ものと推測される.フェーズ4では新作物がバ イオマスとして利活用されるものと期待されて いる.現時点から半世紀後,すなわち2050年頃 には,海洋植物や遺伝子組換え植物といった新 作物による効率的なバイオマスの生産の可能性 を含め,飛躍的に生産量が増大していることが 期待される. こうした4つの段階を経てバイオマスを国民 生活に浸透させようとしている.この中で農業 において容易に応用が可能であるフェーズは, フェーズlの廃棄物系バイオマスである.これ は耕種と畜産が結合する複合経営もしくは,耕 種単一経営群と畜産農家群が地域内で資源循環 させる地域複合といった形態である.しかし, これらは日本において従来から行われており, 現実に従来行われていた農業形態が経済発展と ともに単一化しすぎ,専門化しすぎたことから それぞれの連係が必要となっている. 3.バイオマス・ニッポン総合戦略の進展 バイオマスは生物によって生産されるため, 「広く,薄く」存在するという特`性を持つ.し たがって,その収集に係るコスト及び収集量に よる変換効率が,利活用の容易さを大きく左右 することになる. バイオマス・ニッポン総合戦略の進展シナリ オによると,4つの段階を経てバイオマスの利
沖縄農業第42巻第1号(2008) 40 表1.アンケート結果の概要. 」- 0 耕種農一‐Z 387935137 27657
LLPJlj
229 143 61.6 38.4 387 27 93.5 6.5Ⅲ川一Ⅲ川加川川ⅢⅢ|ⅡⅢ卯Ⅱ川川
0733991 330062 11 1.7 8.5 21.3 29.5 26.1 121 1.0 8.1 9.9 27.7 27.7 18.5 7.8 0.3 7582804 38205 11 7別帆Ⅱ肥0一桁朽川朽旧Ⅲ 838086 542322 15.6 11.6 7.5 8.1 7.5 7.0 255555 444441 10.1 10.9 10.9 109 10.9 3.6 4.バイオマス利活用に対する意向 (1)アンケート結果の概要 アンケート結果は,表1に示すとおりである. 非農家は372名,耕種農家は414名,畜産農家は 144名であった.回答者の性別は男子が多い. 年齢では39歳以下の年齢が非農家・耕種農家と 畜産農家ともに少ない.年齢層で多いところは 非農家において40~59歳,耕種農家において50 ~69歳,畜産農家において40~59歳であり,耕 種農家の年齢層が非農家及び畜産農家に比べ高 い.地域別にみると,宮古島から離れた多良間 村の回答は少ないものの,それ以外では非農家, 耕種農家,畜産農家において回答者が偏ってい ない. (2)農家におけるバイオマス利用意向 耕種農家において現時点において使用してい る肥料とその購入先を整理した表2によると, 化学肥料を使用している農家の割合が高い」日 伊良部町や多良間村においては化学肥料を全回 答者が使用している一方で有機肥料(堆肥) は宮古島では回答者の半数が使用しているが, 旧伊良部町や多良間村では30%以下である.堆 肥以外の有機肥料の使用状況についてみると, 表2.使用肥料および購入先. (単位:戸,%) 十艮碧 lⅡ 資料:アンケート結果より作成.菊地・川満・上野:島喚地域におけるバイオマスの農業への利活用の可能性 41 旧伊良部町では0%となり,多良間村でも10% 以下である.宮古島においても堆肥以外の有機 肥料の使用は旧下地町で14戸であるが,それ以 外では5戸以下であり,|日上野村にいたっては 0戸であった」日上野村では堆肥由来の有機肥 料の使用は他に比べ多いにもかかわらず,堆肥 以外では0戸となる.つまり,バイオマス利活 用が進んでいないものとみられる.肥料の購入 先をみると,化学肥料はほぼJAから購入して いる.しかし宮古島には様々なホームセンター があり,そこから化学肥料の購入が可能となっ ている.堆肥由来の有機肥料の購入先はJAか ら購入する農家は,宮古島で約半数の449%で あるが,旧伊良部町では27.3%と少なく,多良 間村にいたっては0戸である.これらの地域で は,堆肥由来の有機肥料をJA以外から購入し ている場合が多いi'13). 表3に用途別にみた肥料の使用量を示す.こ れによるとサトウキビでは施肥に化学肥料に依 存している状況にある.しかし,施肥量が本来 ならばha当たり夏植で1.5tを必要としている. しかし旧伊良部町と多良間村では有機肥料とそ の他を足しても1.5tに満たない.野菜につい てみると,宮古島市では有機肥料の使用が多 いル'1.実際の有機肥料の施肥をみると,サト ウキビに有機肥料は使用されず,地力を消耗し やすい野菜に多く使用されている.表4は家畜 由来の堆肥の利用状況を示すものである.家畜 由来の堆肥を利用したい農家が80%を超えてい る.島喚では,容易に外から有機質が入ってこ ないので,島内で資源を循環させて地力を高め ていかなければならない.したがって地力低下 表3.用途別肥料の使用量. (単位:t) その他 一 1.4 宮古島 旧伊良部町 多良間村 5.2 1.3 0.7 0.9 400 ●●● 000 資料:アンケート結果より作成. 注)旧伊良部町と多良間村では野菜での使用実績がない. 表4.家畜糞尿由来の堆肥利用農家数. (単位:戸,%)
使用する使用しない欝簾無回答
旧平良市 旧城辺町 1日下地町 l日上野村 旧伊良部町 多良間村 322363 30600 392061 333431 345230 回答数 5.1 5.1 0.0 宮古島 1日伊良部町 多良間村 7.9 7.9 6.7 5.6 5.6 13.3 81.4 81.4 80.0 割合 8.04.2 計 80672 資料:アンケート結果より作成.沖縄農業第42巻第1号(2008) 42 に対して農家は対策を立て,地力を今以上に下 げないような努力を図っている.その結果が, 島内にある家畜由来の堆肥を利用したいとする 農家が多く存在していることを示している.し かし,宮古島のサトウキビは,島外から化学肥 料や有機肥料が移入され,それらが農地に投入 されている.本来であれば島内の資源が循環す べきところ,家畜由来の家畜糞尿や島内で排出 される有機物が適切な処理を受けて堆肥となら
ず,農家は堆肥を使用したくともそれができず,
島外で製造された堆肥が農地に還元されている ケースが多い. 一方で,家畜糞尿由来ではない堆肥の利用に ついて耕種農家の意向を整理した表5によれば, 宮古島の中ではI日上野村を除くと半数以上の農 家が利用を検討している.農家は,利用できる 有機物であればどのようなものであっても活用 したい意向をもっている.しかし,|日上野村で は集排汚泥や生ゴミ由来の堆肥を圃場に還元す ることに対し,抵抗を感じている農家が多い. 表5.集排汚泥や生ゴミの堆肥化された場合の利用意向. (単位:戸,%) ヨ斗乙辰 「’ L」 且l lB下I1hll ▲● 段|上 lIJ= コイ戟巳田BⅢTI66 ] D[ 資料:アンケート結果より作成. この理由は,現状の肥料で支障がないため,多 くの農家はこれらの堆肥の利用を考えない. 宮古島,伊良部島及び多良間島は森林資源に 乏しく,河川がない.生活用水は天水もしくは 地下水に依存しており,農業用水も地下水に依 存している.過度に化学肥料に依存した農業は 地下水を汚染する可能性がある.このことに関 して農家はどのような意識を持っているのかを 整理したものが表6である.旧平良市,|日城辺 町及び旧上野村では,化学肥料の減量が水質汚 表6.水源の維持保全としての必要な対策 0鐘
堆肥の使用による水質汚家畜糞尿の適正な処理に 燭の防止よる水質汚濁の防止鑿翼:些禦:津:i
l8312241030 133728517 1601121218 15.831.110.921.920020.5 1488.39.819.727.824.4 114839.324.613.9227-+;-:奇;÷;-1器一猯弓器一釜‐;
生活排水の処理施設整備 による水質汚濁の防止辮禦腱畜豐腱非農蒙
20240 23928 21713 281419 17.54.425.6 18925.0228 18.419.417.3 23.74122a2 19.721.2229 その他 畜産農 家 6 4 11 5 13.3 11J 30.6 14.7 17.2 耕種農 。=2コP 非農家 21 25 18 15 135 203 240 183 181 刈配釦西 6332 4161 2222菊地・川満・上野:島喚地域におけるバイオマスの農業への利活用の可能性 43 燭の防止につながると考えている農家が多い. サトウキビに限って考えてみれば化学肥料に依 存した栽培である.それがゆえにサトウキビ の場合は入念な肥培管理計画を立てて,無駄の ない施肥を心がけることが地下水汚染の軽減に 必要である.また,施肥量を抑えることにつな がりコストを削減する効果をもっている.そし て家畜糞尿の適正な処理も水質汚濁防止につな がる.これについては旧平良市及び旧下地町の 多くの農家は水質汚濁防止に家畜糞尿の適正処 理が必要であると考えている. 宮古島,旧伊良部町及び多良間島における畜 産農家は,乳用牛1戸,豚2戸,山羊8戸,採 卵鶏1戸であり,肉用牛79戸であった.そのう ち肉用牛は,宮古島で57戸,伊良部島で12戸, 多良間島で10戸である.圧倒的に肉用牛を飼育 する農家が多い. 表7は家畜の敷料,ポロ出し,糞尿の処理場 所を示したものである.家畜敷料の使用状況を みると,|日上野村では使用している全ての農家 が敷料を使用しているが,他の宮古島での敷料 使用状況をみると半数以上が使用していない. 表7.家畜の敷料,ポロ出し,糞尿の処理場所. (単位:戸) 家畜の敷料 ポロ出し方法 糞尿処理場所 全還自家処理一部自家処理全量外部処理 1410 1401 1202 1311 1050 1100
底二幸実充シヤボその他
使用不使用 旧平良市 旧城辺町 旧下地町 |日上野村 旧伊良部町 多良間村 034400 1 528028 11 1 468394 1 1 123054 資料:アンケート結果より作成. とくに宮古島で一番の市街地を抱える旧平良市 では敷料を使用してない.宮古島のポロ出しに ついてみるとレーキまたはシャベルでポロを出 している農家が大半を占めている.一方で多良 間島ではレーキまたはシャベルとシャボでのポ ロ出しをしている農家が同数であり,シャボの 普及は進んでいない.糞尿処理場所をみると多 くの農家が全量自家処理となっており,外部で の処理委託をしている農家が少ない. 糞尿の保管,処理方法について表8に示す. 家畜排泄物処理法が2004年10月に制定されて, 家畜糞尿の野積みが禁止されたにもかかわらず, 依然として野積みしている農家が多い.表7で みたように,自家で家畜糞尿を処理するため堆 肥盤を設置して自ら堆肥を製造している農家が 多い.ただ,多良間島では野積みしている農家 表8.糞尿の保管,処理方法. 0 野積み堆肥盤:蝿施設 2000204 旧平良市 旧城辺町 旧下地町 旧上野村 旧伊良部町 名自問村 000300 ●●■●●● 000300 14 531573 33.3 21.4 7.7 33.3 46.7 30.0 091883 11 66.7 64.3 84.6 53.3 53.3 30.0 021000 037000 ●●●●巴■ 047000 1 資料:アンケート結果より作沖縄農業第42巻第1号(2008) 44 もあるそして堆肥盤での家畜糞尿処理が少な く,しかも処理施設に糞尿処理を委託している こともない.しかし,宮古島では生活用水から 農業用水まで地下水に依存していることから, 家畜糞尿の土壌浸透は水資源の汚染の原因につ ながる.先に示した表6において,畜産農家の 考える水源の維持保全としての必要な対策は, 化学肥料の減量による水質汚濁の防止に効果が あるとしている.畜産農家は過剰な化学肥料投 入が土壌を汚染し,その結果地下水を汚染する と考えており,次に生活排水の処理施設整備に よる水質汚濁の防止の効果があるとしている. 生活排水を簡易尿尿処理施設や尿尿処理場で適 切に処理された後に海洋へ流出させることや, 土壌に浸透させることは問題ない.しかし未処 理の生活廃水をそのまま海洋へ流出させること は違法であり,土壌に浸透させることは,海洋 汚染や地下水汚染につながる肱5).47,029人が 居住する宮古島(2005年6月1日現在)におい て,畜産農家は生活廃水の適正な処理によって 水資源の保全が左右されるものと考えている. これに対して自ら経営している畜舎における家 畜糞尿の適正な処理による水質汚濁の防止に対 しては関心が薄く,17.2%であった.堆肥盤の 設置が宮古島全体では66.7%にとどまり,33.3 %の農家が未設置である.しかも野積みが24.6 %である状態を考慮すると,家畜糞尿の適正な 処理の徹底を農家自ら課していくことが望まし い、 宮古島では,家畜糞尿処理に対する認識が低 い.農家からすればコストの問題があるが,長 期的視野に立った場合,地下水汚染を招き水 資源の利用が困難となる.外部に処理を委託し ないならば,自家で処理すべきであるが,農家 はコストの問題から適正な処理をできずにいる. 現状のまま推移することは水資源を安全に次世 代につなげることができず,長期的にはマイナ スとなる. 5.バイオマス家畜糞尿の賦存量と施設設置状況 宮古島市|日上野村及び旧下地町の畜産農家が どの程度分布し,その家畜糞尿の賦存量がどの 程度あるのか調査した結果を表9に整理し た花6).調査した農家は95戸であった.調査で は堆肥盤の有無,堆肥化施設の屋根有無から農 家を分類した.堆肥盤有・屋根有の農家は27 戸,堆肥盤有・屋根無の農家は16戸,堆肥盤無・ 屋根有の農家は4戸,堆肥盤無・屋根無の農家 は42戸,施設無それ自体をもっていない農家は 6戸であった.調査対象となった農家から排出 される家畜糞尿は,推計すると年間8,315.4t である.広く薄く存在しているこの家畜糞尿を 有効に利活用する必要性がある. また,農家の堆肥化施設の現状をみていると, 堆肥化施設は本来家畜糞尿を直接地面に置くこ とは法律で禁止されており,また屋根のない施 表9.調査農家の年間排出量計測結果. _し t 該当戸数 堆肥化施設 堆肥盤有・屋根有 堆肥盤有・屋根無 堆肥盤無・屋根有 堆肥盤無・屋根無 施設無
誓蟇睾驫襄蒋菓王
764265 2149 454014 316 2,612.9 1,380.2 173.6 2,178.8 191.0 6.536.5 96.8 86.3 43.4 51.9 31.8 68.8 710.4 310.4 17.9 680.5 59.7 1.778.9 26.3 19.4 4.5 16.2 9.9 18.7 026769 ●●●□●⑪ 910206 1 7322 ●●●● 1000 0.8菊地・川満・上野:島喚地域におけるバイオマスの農業への利活用の可能性 45 設も違法建築となる.しかし,調査した農家で 適切な施設となっている農家は27戸だけであっ た.それ以外の68戸の農家は,家畜糞尿の適切 な保管がなされていない.これらの農家の中で, 飼育頭数'0頭以下となっている農家の中で,堆 肥化施設を適切に建設した農家は14戸であり, 適切に施設が作られていない状況にある.法で は10頭以下は施設を作らなくて良いこととなっ ている.実際,10頭以上の農家で施設を,整備し ていない農家をみると,堆肥盤有・屋根無の農 家は11戸,堆肥盤無・屋根無の農家は13戸,施 設そのものをもっていない農家は1戸であった. 年間の家畜糞尿の賦存量が8,315.4tありなが ら,そのうち適切に処理されていない家畜糞尿 があることは,資源の有効な利活用となってい ない.施設が不完全となっている農家の堆肥化 施設は,0.5aに満たないこれらの施設は家 畜の運動場に併設もしくは畜舎の一部としてあ り,堆肥化施設として独立したものとなってい ないケースが散見された. 沖縄県全体でみて耕畜連携のシステムは完成し ている状態にない.宮古島において廃棄物系バ イオマスの利活用は,畜産農家の自家の草地に 還元されることが多く,他農家の耕種農家の畑 に還元されることが少ない. 以上のことから今後のバイオマスを利活用さ せるための課題としては,次のようにまとめら れる.耕種農家では地力不足が明確になってい ながらも,遅効,性である堆肥が不足するため, 即効'性の化学肥料に依存せざるをえなくなって いるしかも化学肥料は単位当りの価格が堆肥
より高額であり,農家とすればいたずらなコス
トアップにつながっている.なお,堆肥の絶対 量が不足していることもあって,堆肥は島外か ら移入されているのが現状である.家畜由来の 堆肥だけではなく,生ゴミの堆肥化を推進して 少しでも島内の資源循環を図ることが望まれる. また化学肥料は適量であれば問題ないが,基準 施肥量を超えた場合は土壌汚染につながり,ひ いては地下水汚染にもつながる.農業による士 壌・水資源の汚染を防止することが重要である. 畜産農家においては,自家で排出される家畜 糞尿の処理に対する認識が低い.施設が未整備 となっている農家が多く,早急に対策をとらな いと排出される家畜糞尿を有効に利活用するこ とができない.畜産農家は,糞尿処理のコスト を問題とするが,コストをかけず現状のままで あるとするならば,家畜糞尿がもとで土壌汚染 につながる.そして地下水を汚染するのである ならば,生活がたちまち立ち行かなくなる.永 続的な畜産や耕種のためにも糞尿処理の適切化 と施肥量を守ることが必要である. 6.おわりに バイオマスの利活用に関したアンケートを実 施し,耕種農家,畜産農家それぞれ意向の特色 を整理した.耕種農家では廃棄物系バイオマス を地力維持の観点から今以上に利用したいと考 えている.宮古島における堆肥は,畜産農家に よって製造されているが,その方法に問題とな る点がみられた.屋根があり,堆肥盤をもつ施 設が理想的である.しかし多くの農家は,依然 として野積みで堆肥を製造している.バイオマ ス・ニッポン総合戦略では2005年度に達成可能 とみられるバイオマスは廃棄物系バイオマスで あり,これはまさに家畜糞尿を中心とした耕畜 連携的なシステムの構築が達成できると考えら れたものである.しかし,宮古島だけではなく (注) 1)このことについては農林水産省にあるバイ オマス・ニッポン総合戦略沖縄農業第42巻第1号(2008) 46 投棄することは禁止されている. 6)なお,乳牛飼養農家と養鶏農家は各1戸該 当したが,個人を特定できてしまう事から分 析対象から除いた. http:"wwwmaff,go・jp/biomass/indexht、 http://www・maffgojp/biomass/senryaku-20060331.pdf を参照のこと. 2)このことについては小宮山宏他(2003)を 参照. 3)他の地域で堆肥由来の有機肥料の購入につ