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[研究室だより] 建築力学研究室

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Academic year: 2021

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2 0 1 6 年 4 月 よ り、 近 畿 大 学 産 業 理 工 学 部 建 築・ デ ザ イ ン 学 科 に 着 任 し ま し た 小 野 聡 子 と 申 し ま す。 私 は、 大 学 院 博 士 後 期 課 程 を 単 位 取 得 後 退 学 し た の ち、 前 職 場 で あ る 有 明 工 業 高 等 専 門 学 校 建 築 学 科 に 着 任 し ま し た。 有 明 工 業 高 等 専 門 学 校 に は 21年 間 在 職 し ま し た が、 在 職 中 は 耐 震 評 価 な ど の 学 外 の 仕 事 に も 携 わ ら せ て い た だ き ま し た (現在、継続中) 。 私 が 学 生 の 頃 は、 理 系 学 部 に 進 学 す る 女 子 が 大 変 少 な い 状 況 で し た の で、 学 部 時 代 は 学 科 に 女 性 が私だけ、 大学院修士課程 (のちに博士前期課程) 時 代 は 学 年 に 女 性 が 私 だ け、 大 学 院 博 士 後 期 課 程 時 代 は 専 攻 に 日 本 人 が 私 だ け で し た。 女 性 が ほ ぼ い な い 状 況 で 大 学・ 大 学 院 の 9 年 間 を 過 ご し ま し たが、 先生や仲間に恵まれ、 いわゆる 『理系の女 (おんな) 』(←今流行の理女 (リケジョ) ではありません!)として、のびのびと学生生活を送りました。高校時代もクラスメイ トに女性が 6 名程度しかいない状況でしたので、 『私は男子校出身!』 とよく冗談で言っ ています。就職してからも、大学や高専における女性教員の比率向上が掲げられるまで は、所属学科に女性は私だけという状況は何度もありました。しかし、私自身はそのよ う な こ と を あ ま り 意 識 し て お り ま せ ん で、 『 人 間 同 士 と し て の お つ き あ い 』 と 思 い な が ら、いろいろな方々と交流しました。今後もそのスタンスはかわりませんで、いろいろ なことにお声かけ願います。 さ て、 大 学 4 年 生 で 研 究 室 を 決 め る 際、 私 は 大 変 悩 み ま し た。 当 時 は、 建 築 構 造 学 お よび建築計画学や意匠設計に興味があり、建築構造学に関する研究室と建築計画学・都 市計画学研究室のどちらに所属しようか決めかねていた次第です。つまり、エンジニア になるのか、それともデザイナーになるのか、ということです。迷いに迷った末、建築 構造学に関する研究室を選択して、そして現在に至りました。 私の専門は、建築力学および建築構造学です。現在は、どちらかといいますと建築力 学 に 関 す る 研 究 が メ イ ン と な っ て い ま す。 卒 業 論 文 お よ び 修 士 論 文 で は、 鉄 筋 コ ン ク リートを鋼管で補強した耐震要素についてまとめました。試験体や加力装置は私自身で 設計 ・ 製作しなければなりませんでしたので、 大学に着いたらすぐに作業服に着替えて、 骨材(砂利など)を洗浄して乾かしたり、鉄筋を所定の長さにカットしてベンダーとい

[研究室だより]

建築力学

研究室

建築・デザイン学科

小野 聡子

う機械で曲げたり、鉄筋を組んだり、鉄骨を加工したり、型枠を設計・製作したり、コ ンクリートを調合・打設したりしました。ここから、私の作業服人生が始まったと言っ ても過言ではありません。大学院博士後期課程時代は、摩擦面をアルミニウムで溶射し た 摩 擦 ダ ン パ ー に つ い て 研 究 し ま し た。 そ れ ま で の 研 究 も 企 業 と の 共 同 研 究 で し た が、 この摩擦ダンパーは大手建設会社および大手鉄鋼会社との共同研究でしたので大変刺激 となる研究でした。その後、研究テーマを変更しまして、建築構造物における損傷同定 に関する研究で博士を取得しました。 こ れ ら の 研 究 が 現 在 の 研 究 の 原 点 と な り、 現 在 は 次 の 4 テ ー マ に つ い て 研 究 し て い ま す。 ( 1)滑り型免震支承に関する研究 免震装置にはいろいろな種類がありますが、滑り型免震支承は地面および柱脚部分に ステンレス板をそれぞれ設置して、地震発生時に滑らすことにより、建物にゆれを伝わ らせない装置です。本研究では、ステンレスのかわりに、一般的な鋼材の表面にステン レスを溶射することにより、設置環境による滑り面の劣化および微震による磨耗を防止 することを考えています。また、コストダウンをはかることにより、住宅への適用も考 え て い ま す。 本 研 究 で は、 表 面 加 工 処 理 技 術 の ひ と つ で あ る 溶 射 を 利 用 し て い ま す が、 溶射は機械工学の分野などで利用されている技術です。建築学以外の技術を建築物に適 用している点は、本研究の特徴かと思います。 ( 2)形態創生に関する研究 建築物の『かたち』を創生する際に、生物や植物の形態をモチーフにすることがあり ま す。 す で に 自 然 界 に 存 在 し て い る 生 物 や 植 物 は 力 学 的 に 合 理 な 形 態 と な っ て い ま す が、それらの形態をモチーフにすることは、建築物の『かたち』として限界があると考 えています。 本研究では、 生物や植物を構成している細胞の特性を応用することにより、 力学的に合理な形態であり、自由かつユニークに建築物の『かたち』を創生することを 考えています。前述( 1)同様、建築学以外の内容を建築物に適用している点は、本研 究の特徴かと思います。 ( 3)木質製摩擦ダンパーに関する研究 木質住宅の耐震性能を確保するため、壁(耐震壁)や筋かいなどを適切に配置してい ます。しかし、適切に配置した壁や筋かいなども地震発生時に損傷してしまう可能性が  近畿大学産業理工学部かやのもり 24(2016) 三 (59)

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あり、ひいては木質住宅全体の損壊につながります。本研究では、筋かいを工夫するこ とにより、地震エネルギーを吸収できる木質住宅用摩擦ダンパーの開発を目指していま す。木質住宅を対象としているため、金属製摩擦ダンパーではなく、木材を材料とした 摩擦ダンパー(木質製摩擦ダンパー)を考えています。一方、本研究で考えている摩擦 ダンパーには、鉄骨構造における高力ボルトによる高摩擦接合の考え方を取り入れてい ます。 ( 4)建築物の損傷同定に関する研究 本研究は、建築物における損傷部分をできるだけ簡易に同定できる手法の確立を目的 としています。既存建築物を簡便な方法でゆらして得られた波形(観測波)を利用する ことにより、その既存建築物の損傷部分を同定します。損傷同定には、非線形計画法の ひとつであるニュートン法を利用しています。 以上が、私の研究内容です。今後は、前述の研究を進めながら、新たな研究にもチャ レンジする予定です。また、研究以外では、私自身がかかわっています形態創生コンテ ストで、本学の学生たちを入賞させたいと考えています。そして、研究内容をいかした 学生指導にも努めたいと思っている次第です。 一方、建築学以外の技術などで建築学に適用可能な技術や理論などは、まだ多数ある と考えています。是非ご紹介いただければ幸いです。ご指導およびご助言のほど、よろ しくお願い申し上げます。 1 9 9 5 年 1 月、 私 は 箕 面 市 で 兵 庫 県 南 部 地 震 を 経 験 し ま し た。 そ し て、 2 0 1 6 年 4 月 に 発 生 し ま し た 2 0 1 6 年 熊 本 地 震 で は、 熊 本 県 や 大 分 県 な ど で 甚 大 な 被 害 が 発 生 しています。研究とは直接関係ありませんが、被害調査を含めまして、お役に立てるこ とがあれば…と思っています。 図1 タワー表面のトラス構造における形態創生結 果の一例 図2 摩擦係数測定実験の状況 四 [研究室だより]  (60)

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