ルドルフ・シュタイナーと四次元
著者
向山 毅
雑誌名
研究論集
巻
76
ページ
87-102
発行年
2002-08
URL
http://doi.org/10.18956/00006334
ル ドル フ ・シ ュ タ イ ナ ー と 四 次 元
向 山毅
1.は じ め に ル ドル フ ・シ ュ タ イ ナ ー(RudolfSteinerl861-1925)は オ ー ス ト リア 生 ま れ の 哲 学 者 、 神 智 学 者 、 教 育 思 想 家 で 多 く の 著 書 を 残 して お り、 ま た シ ュ タ イ ナ ー 教 育 で も 有 名 で あ る 。 そ の 彼 が 「四 次 元 」 に 興 味 を 持 っ て い た こ と は あ ま り知 ら れ て い な い[1]。 四 次 元 の 研 究 の 歴 史 を 述 べ て い る マ ニン グ[2]や ヤン マ ー[3]の 本 に シ ュ タ イ ナ ー の 名 前 は な い し、 最 近 の 四 次 元 に 関 す る 概 説 書[4,5]に も取 り上 げ ら れ て い な い 。 ま た 四 次 元 空 間 の 芸 術 に 対 す る 影 響 を 詳 細 に 調 べ た ヘン ダ ーソン の 著 書 『現 代 芸 術 に お け る 四 次 元 と 非 ユ ー ク リ ッ ド幾 何 学 』[6]に お い て も 、 シ ュ タ イ ナ ー の 名 前 は 画 家 モン ド リ アン に 影 響 を 与 え た 神 智 学 者 と して 現 れ る だ け で あ る 。 も っ と も 彼 女 は 後 の 論 文 の 注 釈 欄 で 「シ ュ タ イ ナ ー は 四 次 元 に つ い て1905年 に 講 演 して い る が 、 そ の 後 の 著 作 で は 深 く言 及 し て い な い 」 と 書 い て い る[7]。 これ は ほ ぼ 同 時 代 の 神 秘 学 者 ウ ス ペン ス キ ー と そ の 著 書[8]に つ い て の 多 く の 記 述 が あ る の と対 照 的 で あ る 。 そ の 理 由 は シ ュ タ イ ナ ー が 四 次 元 に 関 す る 著 作 を 残 さ な か っ た こ と に よ る も の と 考 え ら れ る 。 シ ュ タ イ ナ ー の 生 涯 に つ い て は 死 の 直 前 ま で 書 き 綴 られ て い た 自 伝[9]を は じ め 、 彼 に 関 す る 多 く の 本 で 詳 し く述 べ ら れ て い る 。 ル ドル フ ・シ ュ タ イ ナ ー は1861年 オ ー ス ト リ ー ・ハン ガ リ ー 帝 国 の ク ラ リエ ベ ッ クに 駅 長 の 息 子 と して 生 ま れ 、 ウ ィ ーン 工 科 大 学 で 物 理 学 を 学 ん だ 。 しか し こ こ で カ ー ル ・シ ュ レ ー ア ー 教 授 に 出 会 っ て ゲ ー テ の 著 作 と 思 想 に 興 味 を 覚 え る 。rゲ ー テ 自 然 科 学 論 文 集 』 の 校 訂 に 参 加 、 ワイ マ ー ル に ゲ ー テ 文 庫 が 設 立 さ れ た の に 伴 い 非 常 勤 職 員 と な る 。 そ の 後 ベ ル リン に 移 住 し、1900年 頃 か ら 神 智 学 協 会 の メン バ ー と 交 流 、 ドイ ツ 支 部 事 務 総 長 に 就 任 す る 。 協 会 内 部 の 路 線 対 立 か ら 除 名 さ れ 、1913年 に 人 智 学 協 会 を 設 立 、 ス イ ス の バ ー ゼ ル 郊 外 の ドル ナ ッ ハ に ゲ ー テ ア ヌ ム を 建 設 し、 そ こを 拠 点 と して 多 くの著 書 を 出版 す る と と も に 、 精 力 的 に 数 多 く の 講 演 活 動 を 行 っ た 。1925年 に64歳 で ドル ナ ッ ハ で 死 亡 して い る 。 シ ュ タ イ ナ ー の 著 書 、 論 文 集 、6000回 に も 及 ぶ 講 演 の 記 録 は 夫 人 の マ リ ー ・シ ュ タ イ ナ ー が ド ル ナ ッ ハ に 設 立 し た 出 版 社 か ら全354巻 の 『ル ドル フ ・シ ュ タ イ ナ ー 全 集 』 と し て 刊 行 さ れ てい る。 『四次 元 』 は そ の うち のNo.324aに 相 当 して い る。 シ ュタイ ナ ーは 四 次 元 に つ い て1905年 に ベ ル リンで6回 の連 続 講 義 を 行 って お り、 引 続 き四 次 元 空 間 と高 次 元 空 間 に 関 す る講 演 も して い る。 これ ら の講 義 は 出席 した 弟 子 た ちに よ って 記 録 され て い た が 、 講 義 録 と して 出版 され た のは 最 近 で あ り、 そ の英 語 訳 は 昨 年 に な って か らで あ る。 シ ュタ イ ナ ーが 少 年 時 代 か ら幾 何 学 に強 い 関 心 を 持 って い た こ とは彼 の 自伝 に 、 「思 う に 私 は 、 幾 何 学 に 接 す る こ とに よ って 初 め て 幸 福 とい うも のを 知 った のだ 」 と書 い て い る こ と か ら も判 る1)。また 、 「幾 何 学 との 出会 い を 契 機 と して[不 可 視 の世 界]に つ い て も語 り得 る こ とを 知 る に至 った 」 と も述 べ て い る2)。こ の よ うに して幾 何 学 は 彼 の精 神 的 世 界 と感 覚 的 世 界 を 橋 渡 しす る重 要 な役 割 を 果 た して い た と言 え る。 した が って 幾 何 学 が 彼 の後 年 の思 想 に 大 き な影 響 を 及 ぼ して い る こ とが 想 像 で き る。 シ ュタイ ナ ーは ギ ム ナ ジ ュウ ムで は な く実 科 学 校 に 進 む こ とに な るが 、 そ こで 画 法 幾 何 学 を 学 び 幾 何 作 図 に 熱 中 す る。 また 次 に 進 学 した ウ ィーン 工 科 大 学 で は 自然 科 学 よ りも哲 学 や ドイ ツ文 学 に興 味 を 持 った が 、 射 影 幾 何 学 に は 強 く引 かれ た よ うで あ る。 「当 時 の私 に と って 決 定 的 な経 験 は 、 ま さ し く、 数 学 の方 面 か らや って きた 。 私 に と って は 空 間 の概 念 が 最 大 の難 問 だ った 。._右 側 の無 限 に遠 い所 に あ る点 は、 左 側 の無 限 に遠 い所 に あ る点 と同一 な の で あ る。」 こ の よ うに して 彼 は 「円 の よ うに 、 自己 自身 に 向か って 回 帰 して くる 曲線 」 とい う啓 示 を 得 た こ と に よ り、 「幼 年 時 代 に もそ うだ った よ うに 、 今 度 も ま た 、幸 福 を もた らす もの は幾 何 学 か らや って 来 た のだ 」3)。 彼 は大 学 で は熱 力学 に つ い て卒 業 論 文 を書 くの だ が 、 これ とは 別 に 幾 何 学 は 彼 の思 想 の形 成 に あ た って そ の根 底 に あ った と言 え る。 シ ュタイ ナ ーが そ の生 涯 に お い て 試 み た こ とは 精 神 世 界 に 自然 科 学 的 な手 法 を 適 用 しよ うと した こ とで あ る。 そ の際 に 彼 が 具 体 的 に 心 に 描 い て い た のは 幾 何 学 で あ り、 そ れ に よ る空 間 の認 識 で あ った と言 って よい 。 した が って シ ュタイ ナ ーが 四 次 元 あ るい は よ り高 次 元 の空 間 に つ い て ど の よ うに 考 え て い た か を 知 る こ とは 、 彼 の思 想 を 理 解 す る上 で 大 変 に 重 要 で あ る。 こ の論 文 で は シ ュタイ ナ ー の講 義 録 『四 次 元 』 を も とに 、 彼 の四 次 元 空 間 に つ い て の考 え を 調 べ る も の とす る。 こ の本 に は1905年 の連 続 講 義 だ け で は な く、 そ の後1922年 まで に 行 わ れ た 講 演 で の質 疑 応 答 の うち四 次 元 に 関 係 す る部 分 も含 まれ て い るが 、 こ こで は 講 義 の部 分 のみ に 限 って 議 論 す る も の とす る。 まず 、 こ の講 義 が 行 わ れ る よ うに な った 背 景 を 理 解 す るた め に 、 当 時 まで の四 次 元 思 想 の流 れ を 述 べ る。 2.四 次 元 思 想 の歴 史 シ ュタイ ナ ー の講 義 が 行 わ れ た1905年 の時 点 で 四 次 元 に つ い て ど の よ うな こ とが 判 って い た で あ ろ うか 。 こ の こ とを は っ き りさせ るた め に 、 四 次 元 に つ い て の考 え 方 が 歴 史 的 に ど の よ う
に 発 展 して きた か に つ い て 簡 単 に 述 べ よ う4)。 空 間 の次 元 に つ い て 最 初 に 述 べ た のは ア リス トテ レスだ と考 え られ て い る。 彼 は 『天 体 論 』 の中 で、 「直 線 は一 つ の 方 向 の 大 き さ を持 って お り、 平 面 は二 つ 、 立 体 は 三 つ で あ る。 これ を 越 え る他 の大 き さは ない 。 なぜ な ら三 は 全 て で あ るか ら」 と書 い て い る。 また6世 紀 に シン プ リキ オ スは プ トレマイ オ スがr次 元 論 』 で 三 次 元 以 上 の空 間 は 存 在 しない こ とを 証 明 した 」 と 述 べ て い る が 、 この 本 は 現 存 して い な い 。 ガ リ レオ は 『天 文 対 話 』(1630)で 三 が 完全 な 数 で あ る とい うア リス トテ レス の説 は 否 定 して い るが 、 空 間 の次 元 に つ い て は 特 別 な記 述 は ない 。 ニ ュー トンや ライ プ ニ ッツ も空 間 の次 元 に つ い て は 特 に 注 意 を 払 って い ない 。 こ う して 空 間 は 長 い 間 ユ ー ク リ ッ ド幾 何 学 で 取 り扱 わ れ て い る よ うに 、 三 次 元 で 平 ら な も の と考 え られ て きた 。 三 次 元 以 上 の空 間 は 「自然 に お け る怪 物 で 、 キ マイ ラや ケン タ ウ ロス よ り も存 在 す る可 能 性 は 小 さ い」 とい うも の も い た ほ どで あ る(JohnWallisl685)。 も っ と も英 国 の哲 学 者 ヘン リー ・ム ー ア(HenryMore)は 『形 而 上 学 』(1671)で 心 霊 は 四 次 元 現 象 で あ る と述 べ て い る し、 カン トは 三 次 元 以 上 の空 間 が 存 在 す る可 能 性 を 指 摘 して い る。 更 に 「神 は そ の よ うな領 域 に 存 在 す る のだ ろ う」 と も言 って い るが 、 力 の強 さが 距 離 の二 乗 に 逆 比 例 し て い る こ と よ り私 達 の空 間 は 三 次 元 で あ る と結 論 して い る。 しか しこれ らは 例 外 で あ り、19世 紀 の始 め まで 三 次 元 以 上 の空 間 に つ い て の研 究 は ほ とん ど行 わ れ て こ なか った 。 四 次 元 空 間 の歴 史 の上 で1827年 とい うのは 特 別 な年 で あ る。 こ の年 メ ビウ ス の輪 で 有 名 な ド イ ツ の数 学 者 メ ビ ウス(A.F.M6bius)は 右 手 と左 手 の よ うに三 次元 空 間 で 対 称 な 図形 は 四 次 元 空 間 を 通 過 させ る こ とに よ って 重 ね る こ とが で き る こ とを 指 摘 した 。 これ を 契 機 と して 四 次 元 図 形 や 四 次 元 空 間 に つ い て の興 味 が 数 学 者 の間 で 広 が って い った 。 や が て 、 よ り一 般 化 さ れ たn次 元 の幾 何 学 の体 系 化 がCayley(1843)やGrassmann(1844)に よ って 行 わ れ た 。 こ の よ うな四 次 元 に 対 す る関 心 は 平 ら な三 次 元 空 間 とい うユ ー ク リ ッ ド幾 何 学 に お け る二 つ の基 本概 念 の うち の一 つ に 対 す る挑 戦 で あ る と考 え られ るが 、 も う一 つ の概 念 で あ る平 ら な面 に つ い て もほ ぼ 同時 期 に 挑 戦 が 始 ま った こ とは 興 味 深 い 。 直 線 外 の一 点 を 通 って そ の直 線 に 平 行 な直 線 は だ た 一 本 だ け しか 存 在 しない とい うユ ー ク リ ッ ドの公 理 に つ い て は 以 前 か ら疑 い が 持 た れ て 来 た 。 ガ ウ スは 既 に ユ ー ク リ ッ ド幾 何 学 とは 異 な った 幾 何 学 の存 在 を 確 認 して い た よ うで あ るが 、 慎 重 な彼 は そ の 結 果 を 発 表 しなか った 。Lobachevsky(1829)とBolyai(1832) は そ れ ぞ れ 独 立 に 非 ユ ー ク リ ッ ド幾 何 学 を 公 表 した 。 上 の よ うな平 行 線 が 無 限 に 存 在 す る とい う彼 ら の幾 何 学 は 「曲が った 」 空 間 に 対 応 して お り、 双 曲線 平 面 を 呼 ば れ て い る。 1854年 に リーマン(B.Riemann)は ゲ ッチン ・ゲン大 学 の セ ミナ ーで 「幾 何 学 の基 礎 を なす 仮 定 に つ い て 」 とい うタイ トル の有 名 な講 演 を 行 った 。 そ の講 演 録 は1867年 に 出版 され た が 、 そ こ で リー マン はn次 元 空 間 に お け る も う一 つ の 形 の非 ユ ー ク リッ ド幾 何 学 を 提 案 した 。 彼 の幾 何 学 に お い て 二 次 元 空 間 で あ る楕 円面 で は 平 行 線 は 存 在 しない 、 す なわ ち二 つ の 曲線 は 必
ず ど こか で 交 わ って しま う。 こ の リー マ ソ の仕 事 に よ り、 三 次 元 の平 ら な空 間 とい うユ ー ク リ ッ ド幾 何 学 の秩 序 あ る世 界 は 完 全 に 崩 壊 して しま った ので あ る。 新 しい 幾 何 学 は 始 め の うちは 数 学 者 の間 で しか 関 心 を 持 た れ なか った が 、19世 紀 の後 半 に な る と高 次 元 空 間 の可 能 性 は 一 般 の人 々 の興 味 を 引 きつ け た 。 数 学 者Dodgsonは 保 守 的 で 四 次元 空 間 の 存在 を 認 め て い なか っ た が 、 彼 が ル イ ス ・キ ャ ロル の名 前 で 書 い た 『鏡 の 国 の ア リス 』(1872)は 三 次 元 空 間 に お け る鏡 映 と対 称 性 の問 題 に 注 意 を 向け た 。 また 神 秘 主 義 者 た ちは 心 霊 現 象 を 四 次 元 に よ って 説 明 しよ うと して い た 。 そ ん な と きに1877年 に ロソ ドソで 行 わ れ た ヘ ソ リー ・ス レイ ド裁 判 に よ り、 四 次 元 は 一 躍 脚 光 を 浴 び た 。 こ の事 件 は 米 国 の超 能 力 者 と称 す る ス レイ ドが ロソ ドソで 有 名 人 を 集 め て 交 霊 会 を 開 催 し、 い ろん な不 思 議 な現 象 を 行 って い た が 、 超 能 力 と称 して 人 を だ ま し た と して 詐 欺 罪 で 逮 捕 され た も ので あ る。 しか し当 時 の高 名 な物 理 学 者 た ちが 「霊 媒 能 力 に よ って 四 次 元 か ら霊 を 呼 び 出せ ば 可 能 で あ る」 と して ス レー ドを 弁 護 した た め に 当 時 の社 会 に 大 き な議 論 を 喚 び 起 こ した 。 そ の うち の一 人 で あ る物 理 学 者 で あ り天 文 学 者 と して も有 名 な ライ プ チ ッ ヒ大 学 の ツ ェル ナ ー(J.C.F.Z611ner)は 四 次 元 空 間 で物 体 を動 か す 能 力 を科 学 的 に テ ス トす るた め のい くつ か の実 験 を 提 案 して い る[10]。 こ う して19世 紀 末 か ら20世 紀 の初 頭 に か け て 四 次 元 は 一 種 の知 的 ブ ー ム と な った が 、 そ れ に 応 え るか の よ うに 四 次 元 空 間 に 関 す る解 説 書 や 文 学 作 品 が 発 表 され た 。 シ ェイ クス ピア学 者 で あ り、 聖 職 者 で あ り、 学 校 長 で もあ った ア ボ ッ ト(E.A.Abott)は1884年 に 「フ ラ ッ トラ ソ ド」 とい う小 説 を 発 表 した[ll]。 こ の物 語 は 上 下 方 向 の ない 二 次 元 の世 界 の住 人 が 三 次 元 空 間 を 体 験 す る話 で あ るが 、 高 次 元 空 間 に 対 す る興 味 や そ れ を 経 験 す る こ とに よ る神 秘 体 験 の他 に 二 次 元 世 界 の描 写 に 当 時 の ビ ク トリヤ朝 の英 国 社 会 に 対 す る風 刺 を 含 ん で お り、 現 代 で も世 界 の多 くの国 で 読 まれ て い る。 二 次 元 の世 界 を 描 くこ とに よ り高 次 元 空 間 に つ い て 考 え る とい う 手 法 は そ の 後 多 くの人 に よ っ て用 い られ て い る 。 ヒ ソ トソ(C.H.Hinton)は 四 次 元 空 間 に つ い て い くつ か の 解 説 を 書 い て い るが 、 作 品 集 『科 学 的 ロマ ソス 集 』(1886)の 中 の 「平 面 世 界 」 で は 薄 い 円盤 の 円周 の上 に 垂 直 に 立 って い る二 次 元 世 界 人 を 考 え て い る[12]。 こ の アイ デ アは 後 に 『平 面 国 のエ ピー ソー ド』 とい う小 説 で も用 い られ い る[13]。 また 彼 は 『思 考 の新 紀 元 』[14]や 『四 次 元 空 間 』[15]と い う著 書 で 四 次 元 空 間 を 視 覚 化 しよ うと試 み て い る。 一 方 、1895年 に は ウエ ル ズ(H.G.Wells)が 時 間 を 第 四 番・目の次 元 と考 え た 小説rタ イ ム マ シ ソ』 を 発 表 して い る[16]。 既 に18世 紀 に ダ ラ ソベ ール や ラ グ ラ ソ ジ ュは 時 間 を 四 番 目の次 元 と考 え る こ とを 指 摘 して い た 。 ウエ ル ズ の 『タイ ム マ シ ソ』 で は 時 間 は 空 間 と 同様 で あ る と 仮 定 され て い る。 しか しこ こで 注 意 しなけ れ ば な ら ない こ とは 、 三 次 元 の空 間 と一 次 元 の時 間 に よ る四 次 元 空 間 は これ まで 扱 って きた 四 次 元 空 間 とは 異 な って い る こ とで あ る。 時 間 は 他 の 空 間 軸 とは 違 って 過 去 か ら未 来 へ と一 方 方 向に しか 流 れ ない し、 時 間 軸 に 沿 って 自 由に 移 動 す る こ とは 出来 ない 。 した が って 時 間 と空 間 か ら作 られ る四 次 元 空 間 は 「四 次 元 時 空 」 と呼 ば れ
て お り、 通 常 の四 次 元 空 間 とは 区 別 しなけ れ ば な ら ない 。 シ ュタイ ナ ー の講 義 が 行 わ れ た1905年 は アイン シ ュタイン の特 殊 相 対 性 理 論 に 関 す る論 文 が 出版 され た 年 で もあ る。 こ の論 文 の タイ トル は 「運 動 して い る物 体 の電 気 力 学 に つ い て 」 で あ り、 最 初 は 文 字 どお り運 動 物 体 の電 気 力 学 に つ い て の理 論 で あ る と考 え られ て い た 。 相 対 性 理 論 は 始 め か ら物 理 学 者 の間 で 受 け 入 れ られ た 訳 で は ない 。 こ の理 論 が そ れ まで の時 間 と空 間 の 概 念 に 革 命 的 な 変 化 を もた ら す も の で あ る こ とを 指 摘 した の は 、1907年 の ミン コ ウ ス キ ー (H.Minkowski)のG6ttingen大 学 で の 講 演 で あ った(論 文 は1908)5)。 シ ュタ イ ナ ーは 大 学 で 物 理 学 を 専 攻 した が 、1905年 に 出版 され た アイン シ ュタイン の原 論 文 を 読 ん で い た とは 考 え られ ない 。 した が って 彼 の講 義 は 四 次 元 空 間 に 関 す る も ので あ り、 相 対 性 理 論 に つ い て は ま った く触 れ られ て い ない 。しか し1920代 の質 疑 応答 の部 分 で は 相対 性 理論 につ い て 言及 して い る。 3.シ ュ タ イ ナ ー の 四 次 元 に つ い て の 講 義 3.1.「 四次 元 」 の本 に つ い て シ ュタイ ナ ー のr四 次 元 』 は 高 次 元 空 間 に 関 す る講 義 ノ ー トで あ る第 一 部 と数 学 の問 題 に つ い て の質 疑 応 答 を 集 め た 第 二 部 か ら な る。 第 一 部 に は1905年 の3月24日 か ら6月7日 まで の6 回 に わ た って ベ ル リンで 行 わ れ た 四 次 元 に つ い て の連 続 講 義 と 同 じ年 これ もベ ル リンで の 「四 次 元 空 間 」(ll月7日)及 び 「高 次 元 空 間 につ い て」(10月22日)と 題 す る講 演 が 含 まれ て い る。 シ ュタイ ナ ーは 後 者 の中 で こ の講 義 は これ まで に 行 わ れ た シ リー ズ の一 つ と考 え られ る と述 べ て い る。 した が って か な り重 複 す る部 分 は あ るが 、 これ ら二 つ の講 演 も四 次 元 に 関 す る講 義 の 一 連 の も の と考 え られ る。 一 方 、 第 二 部 は1904年 か ら1922年 まで の間 ドイ ツ、 スイ ス、 オ ラン ダで 行 わ れ た 講 演 で の質 疑 応 答 の うち数 学 に 関 連 す る も のを 集 め て い る。 これ ら の講 演 や 質 疑 応 答 は 出席 者 の ノ ー トを も とに 再 現 され た も ので 、 シ ュタイ ナ ー 自身 の原 稿 に よ る も ので は な い 。 こ こで ドイ ツ語 の原 本 と英 訳 本 の相 違 点 に つ い て 述 べ て お く。タイ トル は い ず れ も 『四次 元 』 で あ る が、 ドイ ツ語 版 に は 「数 学 と現 実 」、 英 語 版 に は 「神 聖 幾 何 学 、 錬 金 術 及 び数 学 」 とい う副 題 が つ い て い る。 講 義 の部 分 は 同 じで あ るが 、 英 訳 本 で は 第 二 部 で1904年 ベ ル リンで の最 初 の質 疑 応 答 が 省 略 され て い る。 原 本 に は 「シ ュタ イ ナ ー講 演 記 録 の公 刊 に つ い て 」、 人 名 に よ る索 引 、「講 演 記 録 に 関 して 」 とい う 自伝 の第35章 か らの抜 粋 、「シ ュタ イ ナ ー全 集 の リス ト」 が あ るが 、 英 語 版 に は 含 まれ て い ない 。 また 参 考 文 献 の うち ドル ナ ッハに あ るル ドル フ ・シ ュ タイ ナ ー遺 稿 管 理 局 のル ドル フ ・シ ュタイ ナ ー文 庫 に あ る本 に は ドイ ツ語 原 本 で は 印が 付 け ら れ て い るが 、 英 訳 本 に は な い 。 そ の 代 わ り英 語 版 に は 巻 頭 にDavidBoothに よ る序文 が あ り、 最 後 に 数 学 用 語 の解 説 が 付 い て い る。
シ ュタイ ナ ー の講 演 記 録 が 公 表 され る よ うに な った 理 由に つ い て は 「講 演 記 録 の公 刊 に つ い て 」 で説 明 され て い る。 ま た 「講 演 記 録 に 関 して」 に よれ ば 、 「講 演 記 録 は 最 初 、 私 家 版 と し て 印刷 され 、 神智 学 協 会(の ち に人 智 学 協 会)の 会 員 に だ け 配 布 され た」 が 、 「時 間 的 な 余 裕 が な い た め に一 一 私 自身 の 手 で 校 正 す る こ とは で きな か った 」 とあ る6)。ま た こ うした 講 習 会 は 、 協 会 員 の要 望 に よ って 開 か れ 、 参 加 者 は 協 会 員 に 限 られ お り、 人 智 学 の基 礎 的 な知 識 を 理 解 して い た。 した が って 一 般 の読 者 を 対 象 と した著 書 とは 異 な っ て、 「そ れ を 文 字 通 り人 智 学 の教 義 で あ る と理 解 して よい 」 と述 べ て い る7)。 編 集 者 は こ の 『四 次 元 』 の連 続 講 演 が ど の よ うな状 況 の も とで 行 わ れ た か は よ く判 って い な い と書 い て い る。 原 本 に あ る解 説 と英 語 版 の序 文 か ら推 測 す る と次 の よ うな こ とが 考 え られ る。 上 に 述 べ た よ うに19世 紀 の半 ば 頃 か ら交 霊 術 や 透 視 能 力 な ど の心 霊 現 象 と四 次 元 と の関 係 が 注 目され る よ うに な った 。 こ の傾 向は ス レイ ド裁 判 へ の ツ ェル ナ ー な ど の科 学 者 た ち の弁 護 に よ って 加 速 され 、20世 紀 の初 頭 に は 一 般 の人 々が 関 心 を 持 つ 大 き な問 題 で あ った 。 一 方 、 シ ュタ イ ナ ーは こ の と き神 智 学 協 会 の会 員 で あ り、1904年 に はr神 智 学 』 を 出版 して い る[17]。 神 智 学 協 会 の設 立 者 ブ ラ・㍉ キ ー夫 人(H.Blavatsky)は 既 に1891年 に 死 亡 して い た が 、 も と も とは10代 に 霊 媒 を して い た 経 歴 が あ る。 シ ュタイ ナ ーは 一 貫 して 交 霊 術 に は 強 い 警 戒 心 を 持 ち、 関 係 す る の を避 け て きた 。 しか し彼 の 著 書r神 智 学 』 に は 「霊 的 知 覚 能 力」 や 「高 次 の感 覚 」、 「高 次 の世 界 」 な ど の用 語 が 多 く現 わ れ る。 ま た1904-5年 に雑 誌 に 連 載 され 、 後 に単 行 本 と して 出版 され た 『い か に して 超 感 覚 的 世 界 の認 識 を 獲 得 す るか 』 で の 「超 感 覚 的 世 界 」 に あ た る部 分 の ドイ ツ語 の題 名 は 「高 次 の世 界 」 で あ る[18]。 こ う した 状 況 を 考 え る と シ ュタイ ナ ー は 神 智 学 協 会 の会 員 か ら、 四 次 元 に つ い て ど う考 え るか 、 高 次 元 とい う言 葉 で 何 を 意 味 しよ う と して い る のか を 尋 ね られ た も の と思 わ れ る。 そ れ に 応 え るた め に 行 わ れ た のが 『四 次 元 』 に あ る連 続 講 演 で あ った ので あ ろ う。 こ の連 続 講 義 の聴 衆 が どん な人 た ちで あ った か も よ く知 られ て い ない 。 編 集 者 は 講 義 ノ ー ト の提 供 者 を 数 名 記 して い るが 、 そ の うち の一 人 に 後 の シ ュタイ ナ ー夫 人 マ リー ・フ ォン ・ジ ー フ ェル ス の名 前 が あ る。 上 の 「講 演 記 録 に 関 して 」 の記 述 の とお りだ とす れ ば 、 出席 者 は 全 員 神 智 学 協 会 の会 員 で あ った と考 え られ る。 した が って 神 智 学 に つ い て は 基 礎 知 識 を 持 って い る が 、 数 学 に 関 して は ほ とん ど予 備 知 識 の ない 人 た ちを 対 象 に した も ので あ ろ う。 シ ュタイ ナ ー の6回 の連 続 講 義 は 一 週 間 また は そ れ 以 上 の間 隔 で 行 わ れ た ので 、 前 回 の講 義 内容 の確 認 や 同 じ内容 を 別 の表 現 で 述 べ る な ど重 複 が 多 い 。 また 聴 衆 は 神 智 学 の知 識 が あ る と 仮 定 して い る ので 、 神 智 学 の用 語 が 多 く用 い られ て い る。 こ こで は 神 智 学 に 深 く立 ち入 る こ と を 避 け て 、 で き るだ け 四 次 元 に 話 を 限 定 して 講 義 の 内容 を 要 約 す る8)。
3.2.第 一 講(1905年3月24日) 四 次 元 空 間 は 私 た ち の 日常 的 な感 覚 に よ る知 覚 を 超 え た 存 在 で あ り、 そ の世 界 を 理 解 しよ う とす れ ば 数 学 的 な知 識 が 必 要 で あ る。 点 は 大 き さが ない ので ゼ ロ次 元 で あ り、 線 は 長 さを 持 っ て い る ので 一 次 元 で あ る。 太 さ の ない 線 を 動 か せ ば 面 が で き る。 面 に は 長 さ と幅 が あ る ので 二 次 元 で あ る。 面 を 動 か す と、 長 さ、 幅 、 高 さ のあ る立 体 が 得 られ る。 こ の よ うに 運 動 が 新 しい 次 元 を 作 り出 して 行 く。 あ る長 さ の直 線 を考 え て 、 そ の両 端 をAとBと す る。AとBを 合 わ せ よ う とす る と、 直 線 の外 に 出 る必 要 が あ り、 そ の結 果 は 二 次 元 図 形 で あ る 円 と な る。 同 じ操 作 を 二 次 元 の長 方 形 に つ い て 行 う。 そ のた め に は 二 次 元 を 出て 第 三 番 目の次 元 に 入 ら なけ れ ば な らず 、 三 次 元 図 形 の 円筒 が 得 られ る。 三 次 元 空 間 で 対 称 な左 手 と右 手 の手 袋 を 重 ね るた め に は、 線 分ABの と き と 同様 に 四 次 元 空 間 を 通 過 しなけ れ な な ら ない 。 円 とそ の外 側 に あ る一 点 とい うツ ェル ナ ー の本 に あ る例 で は 、 点 を 円周 を 横 切 ら ない で 円 の 内部 に 入 れ るた め に は 、 二 次 元 か らい った ん 三 次 元 に 出て 、 再 び 二 次 元 に 戻 る必 要 が あ る。 三 次 元 の球 の場 合 に つ い て も、 外 側 に あ る点 を 内部 に 移 す に は 三 次 元 を 超 え なけ れ ば な ら ない 。 線 分ABで 左 の端Aを 右 の端Bに 重 ね る と き、 線 分 の 長 さが 短 い と円 は 小 さ い。 円 を 大 き く して行 く と、AとBが 出会 う点 は 線 分 か らます ます 離 れ 、 円 の 曲 率 は どん どん小 さ くな っ て 円周 は 直 線 と区 別 で き な くな る。 した が って 直 線 は 直 径 が 無 限 に 大 きい 円 と考 え る こ とが で き る。 こ の と き 円周 上 の一 点 を 出発 した 点 は 直 線 の両 端 で あ った 点 を 通 過 して 再 び 元 の位 置 に 戻 っ て くる。 こ の過 程 は 円が ど の よ うに 大 き くて も成 立 す る。 した が って 無 限 に 伸 び て い る直 線 で あ る方 向に 向か って 動 く点 は 、 他 の方 向か ら戻 って くる。 これ は 私 た ちが 世 界 に 生 命 の運 動 を 生 じさせ る こ とに よ り、 世 界 を 高 次 の感 覚 で 理 解 で き る例 で あ る。 感 覚 的 な観 測 で は 、 右 の方 へ 動 くとい う過 程 は 左 か ら戻 って 来 る過 程 とは 何 の関 係 も ない が 、 これ ら二 つ は 互 い に 依 存 し て い る。 私 た ちが 感 覚 を 通 して 物 を 認 識 す る こ とを 考 え る と き、 外 部 世 界 を 自 らを 主 体 と して そ の 内 部 に 受 け 入 れ る こ とに よ り知 覚 が 生 ず る。 外 的 世 界 を 私 た ち の 内に 移 す こ とに よ り内的 知 覚 と な る。 外 部 世 界 と 内的 知 覚 は 感 覚 で 知 覚 で き る も のを 通 して は 直 接 に は 結 び 付 い て い ない に も か か わ らず 、 相 互 関 係 に あ り相 互 依 存 して い る。 外 的 世 界 と 内的 知 覚 の関 係 を こ の よ うに 考 え る と、 空 間 に お け る幾 何 学 的 な鏡 像 で あ る左 手 と右 手 の手 袋 の間 の関 係 と似 て い る。 これ らを 一 致 させ るた め に は 空 間 の新 しい 次 元 を 使 わ ね ば な ら ない 。 三 次 元 空 間 で あ る外 的 世 界 と 内的 知 覚 を 関 係 づ け るた め に は 、 第 四 の次 元 を 通 ら なけ れ ば な ら ない 。 そ のた め に は 私 た ち の空 間 の概 念 に 生 命 を 与 え る必 要 が あ る。 四 次 元 空 間 は 鏡 映 像 に あ る図 形 また は 対 称 関 係 を 用 い て 容 易 に 認 識 で き る。
オ ス カ ー ・シ モ ニ ーは こ の生 きた 空 間 形 成 を 描 くのに 、 結 び 目のあ る 曲線 や ね じれ た 二 次 元 の帯 の モ デル を 用 い て い る。 こ の よ うなね じれ は 自然 に もあ る。 例 え ば 月 は 地 球 の 円軌 道 の ま わ りを 螺 旋 運 動 して お り、 更 に 太 陽 の まわ りを も う一 つ の複 雑 な螺 旋 運 動 を して い る。 3.3.第 二 講(1905年3月31日) 外 的 空 間 と 内的 知 覚 の関 係 を 考 え る と、 私 の外 部 に あ る立 方 体 は 私 の 内部 に 知 覚 と して 現 わ れ る。 立 方 体 に つ い て の私 の概 念 は 元 の立 方 体 に 対 す る鏡 像 に な って い る。 こ の像 を 元 の立 方 体 と一 致 させ よ うとす れ ば 、 四 次 元 空 間 を 通 過 しなけ れ ば な ら ない 。 私 た ち の感 覚 器 官 は 精 神 的 な像 と外 部 の物 体 を 直 接 に 結 び 付 け て い る とす れ ば 、 四 次 元 的 で なけ れ ば な ら ない 。 私 た ちは 感 覚 器 官 の独 特 な構 造 に よ って 、 精 神 的 表 象 を 外 部 の物 体 と重 ね る こ とが で き る。 こ の とき に 四次 元 空 間 を 通 って い る。 ア ス トラル 界 そ れ 自身 は四 次 元 の世 界 で は な い9)。 しか しそ の物 理 的 世 界 へ の反 射 と と もに 考 え る と、 四 次 元 的 で あ る。 全 て の方 向に 光 を 放 出 して い る点 が あ る とす る。 こ の点 の逆 は 巨大 な球 、 全 て の側 か ら 内部 に む け て 暗 闇 を 放 出 して い る無 限 に 大 き な球 で あ る。 無 限 に 消 え る直 線 が 反 対 側 か ら 同 じ点 へ と戻 って 来 る よ うに 、 点 が あ らゆ る方 向に 光 を 放 出す る と き、 光 は 無 限 遠 か らそ の反 対 の も の、 す なわ ち暗 闇 と して 戻 って 来 る。 逆 の場 合 、 す なわ ち点 を 暗 闇 の源 で あ る とす る。 そ の逆 は あ らゆ る方 向か ら 内側 に 向か って 光 を 放 出 して い る無 限 に 大 き な球 と な る。 前 の講 義 で 言 った よ うに 、 直 線 上 を 動 く点 は 無 限 遠 で 消 え て しま うので は な くて 、 別 の側 か ら戻 って 来 る。 これ と 同様 に 、 膨 張 して い るか 光 を 放 出 して い る点 は 無 限 遠 で 消 え る ので は な くて 、 無 限 遠 か ら球 と して 戻 って 来 る。 球 は 点 の逆 な ので あ る。 空 間 は 点 の 内部 に 存 在 して い る。 点 は 空 間 の逆 で あ る。 立 方 体 の逆 は そ れ で 切 り取 られ た 部 分 を 引 い た 残 りの空 間 全 体 と な る。 立 方 体 全 体 を 無 限 の 空 間 とそ の逆 を 加 え た も の と して 想 像 しなけ れ ば な ら ない 。 3.4.第 三 講(1905年5月17日) 四 次 元 空 間 を 研 究 しよ うとす る 目的 は ア ス トラル 界 や も っ と高 次 の世 界 に つ い て の理 解 を 得 る こ とで あ る。 ア ス トラル 界 で は 数 字 や 時 間 の順 序 、 道 徳 な どが 物 理 的 世 界 の完 全 な鏡 像 と な って い る。 ア ス トラル 界 で 私 た ちに 近 づ い て い る よ うに 見 え るあ らゆ る も のは 、 私 た ち 自身 か ら外 へ 放 出 され る も の と して 解 釈 され ね ば な ら ない 。 周 辺 か らあ るい は 無 限 の空 間 か らあ た か も私 た ち の方 に 戻 って 来 る よ うに 見 え る も のは 、 実 際 に は 私 た ち 自身 の ア ス トラル 体 が 送 り出 して い る も の な ので あ る。 神 智 学 の考 え 方 に よれ ば 、 あ なた の外 的 生 命 と物 理 的 肉体 は 反 対 方 向か ら一 点 に 集 ま る二 つ
の流 れ が 交 わ った 結 果 に 他 な ら ない 。 過 去 か ら来 る一 つ の流 れ と未 来 か ら来 る も う一 つ の流 れ が 出会 った 点 に 生 じた 境 界 面 で あ る。 物 理 的 世 界 で の正 方 形 に 相 当 す る精 神 的 世 界 の図 形 は 十 字 形 す なわ ち直 角 に 交 わ る二 つ の直 線 で あ る。 物 理 的 世 界 に お け る正 方 形 は 、 精 神 界 で は 正 方 形 の中 心 か ら二 つ の軸 に 沿 って 外 に 向 う流 れ と外 部 か ら正 方 形 の 内部 に 流 れ 込 む 流 れ が 出会 い 、 停 止 した と き の境 界 と して 現 わ れ る。 境 界 は 二 つ の流 れ が 停 止 した と こ ろで 生 じる。 立 方 体 は 三 つ の相 互 作 用 して い る流 れ の断 面 で あ る。 そ の相 互 作 用 の全 体 を 考 え る と前 後 、 左 右 、 上 下 の6ケ の方 向が あ る。 更 に 二 種 類 の流 れ 、 点 か ら流 れ 出す も の と無 限 遠 か ら流 れ 込 む も のが あ る。 空 間 の方 向は い ず れ も二 つ の反 対 向 き の流 れ と して 解 釈 され 、 物 理 的 な形 状 は そ の結 果 と な る。 3.5.第 四講(1905年5月24日) 三 次 元 図 形 で あ る立 方 体 を 平 面 上 に 拡 げ る と、 側 面 で あ る6ケ の正 方 形 が 十 字 の形 に な る。 四 次 元 を 三 次 元 空 間 に 描 くに は 、 ヒン トンの よ うに 色 を 使 うこ とが 必 要 で あ る。6ケ の正 方 形 を 異 な った 色 で 塗 り分 け るが 、 向か い 合 った 正 方 形 の辺 が 同 じ色 に な る よ うに す る。 一 つ の正 方 形 の縦 方 向 の一 対 の辺 を 赤 、 水 平 方 向 の も う一 対 を 青 に す る。 全 て の縦 方 向 の辺 は 赤 に す る こ とに し、 そ れ 以 外 の正 方 形 の水 平 方 向 の辺 を 緑 に す る。 赤 は 立 方 体 の高 さ、 青 は 奥 行 き、 緑 は 幅 を 表 して い る。 これ ら三 つ の色 は 空 間 の三 つ の次 元 を 表 して い る。 第 三 番 目の次 元 を 加 え た こ とは 青 と赤 の 正 方 形 が 緑 を 通 り抜 け た と言 うこ とが で き る。 緑 を 通 り抜 け る こ とは 、 また は 第 三 番 目の色 の 次 元 に 消 え る こ とは 、 三 次 元 を 通 過 す る移 動 を 表 して い る。 緑 色 の霧 が 赤 青 の正 方 形 を 染 め て 、 青 緑 と暗 い 赤 色 に な り、 緑 色 が な くな った と こ ろで 元 の色 に 戻 る。 色 のつ い た 直 線 の代 わ りに 、 色 のつ い た 正 方 形 を 考 え よ う。 他 の正 方 形 が そ れ を 通 り抜 け て 行 く。 正 方 形 の色 を 青 と し、 通 り抜 け る正 方 形(移 動 の前 後)の 辺 が 赤 と緑 で あ る とす る。 別 に 赤 、 緑 の正 方 形 に つ い て も 同様 な こ とを 考 え る。9つ の正 方 形 の うち、 立 方 体 の表 面 と なれ る のは6ケ だ け で あ る。 他 の一 色 の正 方 形 の三 つ は 移 動 を 表 して い る。 移 動 の動 きは 二 次 元 で あ る。 二 色 の辺 を 持 った 正 方 形 は そ れ とは 異 な る色 の正 方 形 の中 に 見 え な くな り、 再 び 現 わ れ る。 こ の よ うに して 二 次 元(二 色)の 正 方 形 が 三 次 元(三 番 目の色)を 通 過 す る。 次 に 表 面 が 三 色 の立 方 体 を 考 え よ う。 三 色 は 三 次 元 空 間 に 対 応 して い た ので 、4番 目の色 を 加 え て 青 、 白、 緑 、 赤 とす る。 こ こで は 立 方 体 が 立 方 体 を 通 り抜 け る も の とす る。 白 ・赤 ・緑 の立 方 体 は 残 りの色 の立 方 体(青)を 通 り抜 け る。 した が って 一 度 四 番 目の色 に 入 った 後 に 元 の色 で 再 び 現 わ れ る。 他 の色 の場 合 も 同様 で あ る。 立 方 体 を 展 開 して 平 面 に 並 べ て 、 一 番 下 の正 方 形 を 取 り除 くと5ケ の正 方 形 が あ る。 二 次 元
で は 真 中 の正 方 形 は 見 え ない 。 また 四 次 元 図 形 の超 立 方 体 の境 界 に な って い る8ケ の立 方 体 の うち7ケ に つ い て 同様 な こ とを す る と、7番 目の立 方 体 は 三 次 元 で は 見 る こ とが で き ない 。 こ の よ うに して 私 た ち人 間 は 三 次 元 しか 知 覚 で き ない に もか か わ らず 、 四 次 元 空 間 を 見 え る よ うに す る こ とが で き る。 3.6.第 五 講(1905年5月31日) 立 方 体 を 二 次 元 に 展 開 す る の と 同様 に 、 超 立 方 体(tessaract)を 三 次 元 空 間 へ と展 開 す る と 8ケ の立 方 体 か らで きて い る。 これ ら8ケ の立 方 体 を 用 い て 一 つ の超 立 方 体 を 作 る と きに 、 そ れ ぞ れ の立 方 体 が 四 次 元 を 通 過 す る。 四 次 元 の物 体 を 三 次 元 で 表 す も う一 つ の方 法 が あ る。 こ こに8ケ の三 角 形 の面 が 鈍 角 で 集 ま って い る八 面 体 が あ る。 辺 は 二 つ の表 面 が 交 わ って い る と こ ろで あ る。 八 面 体 と立 方 体 の相 違 は 表 面 の交 わ って い る角 で あ る。 角 度 が 直 角 の と きに 立 方 体 と な る。 次 に 一 つ の三 角 形 の各 辺 を 延 長 す る。 これ に 向か い 合 って い る三 角 形 及 び 下 側 で 向か い 合 っ て い る二 つ の三 角 形 に つ い て も 同様 に す る と、 これ ら の延 長 され た 三 角 形 は 互 い に 交 わ る。 元 の八 面 体 の他 の四 つ の表 面 は 消 え て しま うので 四 面 体 と な る。 も し立 方 体 で 同 じこ とを す れ ば 、 また 立 方 体 が 得 られ る。 逆 に 四 面 体 の頂 点 を だ ん だ ん 切 って 行 くとそ の辺 の大 き さ と 同 じと こ ろで 、 八 面 体 に な る。 こ の こ とを 立 方 体 に つ い て 行 って も また 立 方 体 と な る。 四 面 体 と八 面 体 は 組 を 作 って い るが 、 立 方 体 は 全 空 間 と組 を 作 る。 四 つ の交 差 す る 円(二 次 元 図 形)で 囲 まれ た 二 次 元 の空 間 で 、 円が どん どん 大 き くな る、 す なわ ち半 径 が だ ん だ ん 大 き くな り、 中 心 が どん どん 離 れ る と 円は 直 線 へ と変 化 す る。 こ の と き 四 つ の 円に 囲 まれ た スペ ー スは 、 四 つ の相 交 わ る直 線 を 境 界 とす る正 方 形 と な る。 円 の代 わ りに 、 三 次 元 空 間 で6ケ の球 に 囲 まれ た 空 間 を 考 え る。 球 が どん どん 大 き くな る と、 立 方 体 と な り、 そ れ らに 囲 まれ た 空 間 も立 方 体 と な る。 した が って 立 方 体 は6ケ の交 差 す る球 が 平 らに な った 結 果 で あ る。 立 方 体 を 定 義 して い る平 面(二 次 元)は6ケ の球(三 次 元)の そ れ ぞ れ か ら一 つ の次 元 が 除 か れ た も ので あ る。 こ の表 面 は 三 次 元 か ら二 次 元 へ と次 元 を 減 少 させ る、 す なわ ち次 元 を 犠 牲 に す る こ とに よ り生 じた 。 した が って 空 間 の次 元 は そ れ ぞ れ 次 の高 次 元 を 犠 牲 に す る こ とに よ って 生 ず る と言 え る。 こ の よ うに して そ の三 つ の軸 方 向 のそ れ ぞ れ を 直 線 化 す る こ とに よ って 、 三 次 元 空 間 が 完 成 され た 。 こ の過 程 を 逆 に す れ ば 、 空 間 の各 要 素 を も う一 度 曲げ る こ とに よ り、 一 つ 高 い 次 元 が 作 られ る。 した が って 四 次 元 空 間 は 曲が った 三 次 元 空 間 と考 え る こ とが で き る。
3.7.第 六 講(1905年6月7日) 立 方 体 に 光 を 当 て て 影 を 作 り、 二 次 元 の像 を 作 る と六 角 形 が 得 られ る。 こ の射 影 で は 辺 は 短 くな り、 角 度 も変 わ って い る ので 、 立 方 体 の6ケ の正 方 形 面 は 菱 形 の よ うに 見 え る。 同様 に し て 四 次 元 図 形 を 三 次 元 空 間 へ と射 影 す る と、 菱 形12面 体 と な る。 立 方 体 が 射 影 され た 六 角 形 に は 三 つ の軸 が 残 って い る よ うに 、 超 立 方 体 の三 次 元 空 間 へ の射 影 で あ る菱 形 平 行12面 体 は 三 次 元 で の立 方 体 よ りも一 つ 多 い 軸 を も って い る。 プ ラ トンは 洞 窟 に 鎖 で 繋 が れ た 囚 人 の比 喩 を 用 い て 世 界 に お け る私 た ち の状 況 を 表 した 。 こ れ と 同様 に 私 た ち 自身 は 四 次 元 的 で あ るが 、 私 た ちが 見 る も のは 全 て 三 次 元 空 間 に お け る像 の 形 と して 現 わ れ て い る。 私 た ちは 物 事 の真 実 の代 わ りに 、 そ の三 次 元 で の影 像 のみ を 見 て い る。 私 た ちが 壁 の上 に 現 わ れ た 像 か ら三 次 元 空 間 で の存 在 を 認 識 で き る のは 、 影 が 動 き始 め た と きで あ る。 壁 の上 の像 は 二 次 元 を 離 れ る こ と な しに 互 い に 通 り過 ぎ る こ とは で き ない 。 した が って 像 の変 化 は 三 次 元 が 存 在 す る こ とを 示 して い る。 世 界 は 三 次 元 的 で は あ るが 、 時 間 と と もに 変 化 して い る。 運 動 、 変 化 、 時 間 が 四 次 元 のそ し て 生 命 の表 現 で あ り、 証 拠 で あ る。 円 の表 面 を 曲げ る とお わ ん 型 に な り、 最 後 に は 球 と な る。 曲が った 曲線 は 二 次 元 、 曲が った 平 面 は 三 次 元 、 立 方 体 を 曲 げ る こ とが で き た ら四 次 元 と な り、 そ の 結 果 は 超 球(spherical tessaract)で あ る。 球 の表 面 は 曲 が った 二 次 元 図 形 と考 え られ る。 自然 に お い て は 細 胞 す なわ ち最 小 の生 命 体 は こ の形 に な る。 細 胞 の境 界 は 球 状 で あ る。 鉱 物 の結 晶 形 で は 常 に 面 、 す なわ ち平 ら な表 面 が 境 界 で あ る。 一 方 、 生 命 体 は 細 胞 か ら 出来 て お り、 そ の境 界 は 球 状 の表 面 で あ る。 生 命 体 と非 生 命 体 の相 違 は そ の境 界 の性 質 に あ る。 私 た ちが 植 物 を 三 次 元 空 間 の中 で のみ 見 て い て は 本 当 に 認 識 して い る とは 言 え ない 。 植 物 は 絶 え ず 変 化 して い る。 変 化 は 植 物 の本 質 的 な様 相 で あ り、 よ り高 次 元 の形 の存 在 の証 拠 で あ る。 生 命 体 に は そ れ が 存 在 して い る空 間 よ りも高 次 元 の要 素 が あ り、 時 間 が こ の要 素 の表 現 で あ る。 言 い 換 え る と時 間 が 本 来 意 味 のあ る存 在 は 全 て 四 次 元 存 在 の像 で あ る。 時 間 は 有 機 的 な生 命 の 四 次 元 空 間 か ら三 次 元 空 間 で あ る物 理 的 世 界 へ の像 あ るい は 射 影 で あ る。 時 間 が 意 味 を 持 つ 二 つ の存 在 が 出会 うと き、 結 果 は 五 次 元 に な る。 五 次 元 は 極 性 のあ る力 の 交 換 また は 中 性 化 に よ る結 果 で あ る。 そ の際 に 二 つ の生 命 を 持 った も のは 互 い に 影 響 し合 い 、 通 常 の三 次 元 空 間 や 時 間 に つ い て の四 次 元 空 間 で は 共 通 な も の と して は 持 って い なか った 何 も のか を 作 り出す 。 こ の新 しい 要 素 は これ ら の次 元 の外 側 に 境 界 を 持 って い る。 これ が 私 た ちが 知 覚 作 用 と呼 ん で い る も ので あ り、 あ る存 在 に 対 して そ の他 の存 在 に つ い て 知 らせ る能 力 で あ る。 知 覚 作 用 は 物 理 的 世 界 へ の五 次 元 の射 影 また は 表 現 と して 理 解 で き る。 こ の よ うに して 三 次 元 空 間 で は 植 物 の よ うな生 命 を 持 った 存 在 を 理 解 す る こ とは で き ない 。 四 次 元 へ 、 ア ス トラル 界 へ と上 が らね ば な ら ない 。 同 じよ うに して 知 覚 能 力 を 持 って い る存 在
を 理 解 した い の な ら五 次 元 に 、 自己 意 識 を 持 った 存 在 で あ る人 間 を 理 解 す るた め に は 六 次 元 ま で 上 が らね ば な ら ない 。 現 在 私 た ちが 出会 う人 間 は 実 に 六 次 元 的 の存 在 で あ る。 知 覚 能 力 お よび 自我 と呼 ば れ て い る も のは そ れ ぞ れ 五 次 元 と六 次 元 の通 常 の三 次 元 空 間 へ の射 影 で あ る。 3.8.四 次 元 空 間(1905年11月5日) 円 の半 径 を 大 き く して 行 くと直 線 に 近 付 く。 光 を 運 び なが ら直 線 上 を 右 へ 向か って 無 限 大 ま で 進 む こ とは 、 円周 を 一 周 して 左 か ら戻 って 来 る こ とに 相 当 して い る。 右 へ 行 くに つ れ て だ ん だ ん 光 が 弱 くな り(正)、 左 か ら戻 る と きに は光 が強 くな る(負)。 こ の よ うに して 空 間 で 正 負 の反 対 の極 性 を も った 力 を 考 え る こ とが で き る。 長 方 形 の紙 を 二 回 捻 って 端 を 貼 り合 わ せ る。 長 さ方 向に 沿 って 二 つ に 切 る と絡 み 合 った 二 つ の輪 に な り、 四 次 元 空 間 に 入 らね ば 切 り離 す こ とは で き ない 。 太 陽 、 地 球 、 月 の軌 道 も 同 じよ うな形 を して い る。 立 方 体 を 平 面 上 に 展 開 す る と6ケ の正 方 形 、 超 立 方 体 を 三 次 元 空 間 に 展 開 す る と8ケ の立 方 体 と な る。 立 方 体 の二 次 元 へ の射 影 は 六 角 形 で あ り、 超 立 方 体 を 三 次 元 空 間 へ と射 影 す る と菱 形12面 体 が 得 られ る。 植 物 に お い て は 時 間 、 運 動 、 成 長 が 第 四 の次 元 で あ る。 時 間 が 動 物 の中 で 生 命 を 与 え られ た と きに 、 感 覚 能 力 が 生 じる。 これ は5番 目の次 元 で あ る。 人 間 は 自我 を 持 って い る ので 、6次 元 の存 在 で あ る。 3.9.高 次 元 空 間 に つ い て(1905年10月22日) 数 学 者 は 高 次 元 の可 能 性 を 議 論 して い る。 彼 らは 数 字 を 用 い て 計 算 で き るが 、 高 次 元 空 間 が 実 際 に 存 在 す る こ とを 証 明で き ない 。 あ る も のが 定 期 的 に 目に 見 え な くな って 、 また 再 び 現 わ れ る も の とす れ ば 、 四 次 元 が あ る と 言 え る。 これ に つ い て は 唯 物 論 の立 場 か ら の予 想 され る反 論 に 対 して 、 答 え る こ とが で き る。 四 次 元 図 形 の影 像 が 三 次 元 図 形 で あ るか ら、 こ の こ とを 用 い て 四 次 元 の物 体 を 観 測 で き る。 また4本 の直 線 か ら正 方 形 、6ケ の正 方 形 が 組 み 立 て られ る よ うに 、8ケ の立 方 体 か ら超 立 方 体 を 構 成 す る こ とが で き る。 4.シ ュ タ イ ナ ー の 四 次 元 観 シ ュタイ ナ ー の思 想 の 出発 点 は 私 た ち の五 感 で 理 解 で き る物 理 的 な世 界 の背 後 に 超 感 覚 的 な 精 神 世 界 が 存 在 して お り、 誰 で も訓 練 に よ って こ の霊 的 世 界 を 見 る こ と ので き る高 次 の感 覚 を
開 発 で き る とい うこ とで あ る。 日常 的 な物 質 世 界 と高 次 の精 神 世 界 を 関 連 付 け るに あ た って 、 彼 は 自然 科 学 的 な方 法 を 適 用 して い る。 そ ん な彼 に と って 四 次 元 お よび 高 次 元 の空 間 とい うの は 、 自分 の手 法 に 具 体 的 なイ メ ー ジを 得 るた め の恰 好 の材 料 で あ った と思 わ れ る。 実 際 に ドル ナ ッハ に残 され た 蔵 書 リス トに は、Bonolaの 非 ユ ー ク リ ッ ド幾 何 学 、 ア イン シ ュ タイン の相 対 性 理 論 な ど の教 科 書 と と もに 、ヒン トンの 『科 学 的 ロマン ス集 』、『思 考 の 新 紀 元 』、オ ス カ ー ・ シ モ ニ ー の メ ー ビウ ス の輪 に 関 す る本 、 ツ ェル ナ ー の本 な どが 含 まれ て い る。 こ の こ とは シ ュ タイ ナ ーが 一 貫 して 四 次 元 の問 題 に 興 味 を 抱 き続 け て い た こ とを 示 して い る。 四 次 元 お よび 高 次 元 空 間 に つ い て 考 え る際 に 、 シ ュタイ ナ ー の空 間 認 識 に は 大 き な特 徴 が あ る。 そ れ は 空 間 を 静 止 した も の と見 る ので は な くて 、 ダイ ナ ミ ッ クな視 点 で 眺 め て い る こ とで あ る。 そ の基 礎 と な って い る のは 二 つ の重 要 な点 、 射 影 幾 何 学 と ゲ ー テ の 自然 科 学 方 法 論 特 に 色 彩 論 で あ る。 シ ュタイ ナ ー の講 義 に は 円 の半 径 が 無 限 に 大 き くな る と直 線 と な り、 球 の半 径 が 大 き くな る と正 方 形 に近 付 くとい うこ とが よ く出 て くる。 これ は射 影 幾 何 学 の考 え方 で あ る[19]。 「四 次 元 空 間 」 の講 義 の中 で 、 シ ュタイ ナ ーは 「射 影 幾 何 学 を 勉 強 して 円を 直 線 に 変 換 す る意 義 を 理 解 した と きに 、 空 間 の性 質 を 始 め て 把 握 した の で した 」 と述 べ て い る10)。直 線 上 を あ る方 向に 無 限 に 運 動 す る こ とは 、他 の方 向か ら出発 点 へ と戻 って来 る こ とで あ る。こ う して シ ュタイ ナ ー は 一 次 元 の直 線 と二 次 元 図 形 の 円を 関 連 付 け て い るが 、 こ の考 え 方 は さ らに 高 い 次 元 へ と拡 張 で き る。 また 運 動 に は 方 向が あ る ので 、 そ れ に 関 連 した 極 性 が 存 在 す る こ とに な る。 シ ュタイ ナ ーは 図 形 の境 界 は 、 異 な った 極 性 を 持 った 流 れ が 出会 って 停 止 す る と こ ろに 生 じ る と して い る。 これ は ゲ ー テ の色 彩 に つ い て の考 え と よ く似 て い る[20]。 ゲ ー テは 色 は 光 と影 、 明 と暗 が ぶ つ か る境 界 の と こ ろで 生 じる と考 え た 。 彼 は ニ ュー トンが 『光 学 』 で 示 した よ うな 光 を プ リズ ムを 通 過 させ る こ とに よ りスペ ク トル 線 に 分 解 す る分 析 的 方 法 に 強 く反 発 し、 綜 合 的 な方 法 の重 要 性 を 指 摘 した 。 光 学 は ゲ ー テ の主 張 とは 逆 に ニ ュー トン的 な方 法 に よ って 進 歩 して 行 った が 、 シ ュタイ ナ ーは 『自然 科 学 論 文 集 』 の編 纂 を 通 じて ゲ ー テ の科 学 的 手 法 に 強 く 影 響 を 受 け た 。 こ の よ うな空 間 に 対 す る考 え 方 に 基 づ い て 、 シ ュタイ ナ ーは 私 た ちが 物 体 を 知 覚 す る とい う こ とは 物 質 界 で 感 覚 的 に 得 られ た 情 報 が 精 神 界 へ と射 影 され 、 内的 知 覚 と な る も の と考 え る。 こ の過 程 で い った ん は 三 次 元 空 間 の外 に 出て 、 高 次 の空 間 を 通 過 す る。 こ う して 物 理 的 世 界 と 精 神 的 世 界 は 関 連 付 け られ る のだ が 、 そ れ を 引 き起 こす も のは 物 体 の運 動 、 時 間 、 生 命 で あ る と考 え られ る。 こ の よ うに 高 次 元 空 間 に よ り、 物 体 の持 って い る本 質 的 な も のが 精 神 世 界 の高 い レベ ル へ と射 影 され る。 当 時 の神 秘 学 者 は 交 霊 術 や 透 視 能 力 な ど の心 霊 現 象 を 四 次 元 に よ って 説 明 しよ うと した 。 こ れ は 三 次 元 の物 質 世 界 に お け る現 象 を 説 明す る こ と のみ に 四 次 元 とい う概 念 を 用 い て い る こ と
に な る。 これ に 対 して シ ュタイ ナ ーは 感 覚 に よ って 得 られ た 物 理 的 世 界 を 精 神 的 世 界 で の 内部 知 覚 に 結 び 付 け る過 程 を 四 次 元 空 間 で 表 して い る。 彼 の 目指 して い る のは 物 質 世 界 を 越 え た 高 次 の知 覚 で あ り、 人 間 の精 神 世 界 に お け る よ り高 い レベ ル で の空 間 の認 識 で あ る。 こ の点 に シ ュタイ ナ ー の高 次 元 に 対 す る考 え 方 の大 き な特 徴 が あ る。 こ の一 連 の講 義 のあ と、 シ ュタイ ナ ーは 四 次 元 に つ い て は ま と ま った 講 演 や 記 録 を 残 して い ない 。 これ に は 二 つ の理 由が 考 え られ る。 まず そ の後 しば ら く して 四 次 元 は 一 般 の知 識 人 に と って 知 的 興 味 の中 心 で は な くな って しま った こ とで あ る。 第 二 の理 由は アイン シ ュタイン の相 対 性 理 論 の普 及 で あ ろ う。 シ ュタイ ナ ー の講 義 で は 時 間 は 厳 密 な意 味 で 四 番 目の次 元 と して 取 り扱 わ れ て い る ので は な く、 三 次 元 空 間 に 運 動 あ るい は 生 命 に 関 連 して 高 次 の空 間 を 生 じさせ る も の と考 え られ て い る。 した が って 相 対 論 に お け る よ うな両 者 が 一 体 と な った 四 次 元 時 空 で は ない 。 しか しも しか した ら案 外 忙 し過 ぎて 時 間 が なか った だ け とい うのが 真 相 か も しれ ない 。 射 影 幾 何 学 に つ い て も シ ュタイ ナ ー 自身 に よ る著 書 は ない 。 5.お わ り に シ ュタイ ナ ー の講 義 を 通 して 、 彼 が 四 次 元 に つ い て ど の よ うなイ メ ー ジを 持 って い た か 、 ま た そ れ が 彼 の思 想 に ど の よ うな影 響 を 与 え て い るか を 検 討 した 。 シ ュタイ ナ ー の文 章 は 彼 の哲 学 と と もに 難 解 な こ とで 有 名 で あ る。 しか もr四 次 元 』 とい う本 は 彼 の著 書 で は な く、 講 義 の 受 講 者 の ノ ー トに 基 づ い た も ので あ り、 シ ュタイ ナ ー本 人 は 原 稿 に 目を 通 して い ない 。 した が って 繰 り返 しや 必 ず しも一 貫 した 表 現 と な って い ない 箇 所 も多 い 。 しか し空 間 に お け る幾 何 学 的 図 形 を 用 い る とい う方 法 は 、 彼 の思 想 や 多 くの著 書 を 理 解 す る のに 有 効 で あ る。 こ の論 文 で は 第 一 部 の講 義 の部 分 のみ に 限 定 した 。 第 二 部 の質 疑 応 答 は これ ら の講 義 以 降 の シ ュタイ ナ ー の考 え 方 、 特 に 相 対 性 理 論 へ の言 及 な どを 知 る上 で 重 要 で あ る。 また こ こで は 四 次 元 そ の も のに 対 す る考 え 方 に 重 点 を お き、 神 智 学 と の関 連 に つ い て は 簡 単 に 述 べ るに と どめ た 。 しか しも と も と の こ の講 義 の 目的 か ら考 え て 、 神 智 学 と四 次 元 の関 係 に つ い て も っ と詳 し い 議 論 が 必 要 で あ ろ う。 四 次 元 お よび 高 次 元 とい う概 念 は シ ュタイ ナ ー の思 想 を 理 解 す る上 で 重 要 で あ る と思 わ れ る ので 、 今 後 こ う した 研 究 が 盛 ん に 行 わ れ る こ とを 期 待 して い る。 また シ ュタイ ナ ーが 引 用 して い る ヒン トン、 同時 代 に そ れ ぞ れ 独 自 の四 次 元 論 を 展 開 して い る ウ スペン スキ ーや ブ ラ グ トンな ど の神 秘 学 者 と の比 較 研 究 も興 味 深 い で あ ろ う。
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16.H.G.Wells,丁 励6ル 働s雇 鰍 且%伽6漉o%(Heinemann,London,1895);『 タ イ ム マ シ ン 』 宇 野 利 泰 訳(早 川 書 房 、1978).
17.R.Steiner,7物60s砂1診 なE∫ 癩 〃 鰯g∫%勲6短 槻1∫01診6恥1婬 舵%雇 溺s襯4醜%s61診6励6s'∫ 辮 辮 鰯g(Rudolf SteinerVerlag,Dornach,1993);『 神 智 学 』 高 橋 巌 訳(筑 摩 書 房 、2000).
18.R.Steiner,砺 飽67Zα%8≠。物%E娩6槻 魏 廊s646〃 診δ1診6名甜Welter?(RudolfSteinerVerlag,Dornach,1993); 『い か に し て 超 感 覚 的 世 界 の 認 識 を 獲 得 す る か 』 高 橋 巌 訳(筑 摩 書 房 、2001). 19.丹 羽 敏 雄 『射 影 幾 何 学 入 門 』(実 教 出 版 、2001). 20.ゲ ー テ 『色 彩 学 』 木 村 直 司 訳(筑 摩 書 房 、2001);ゲ ー テ 『自 然 と 象 徴 一 自然 科 学 論 集 一 』 高 橋 義 人 編 訳(富 山 房 、1982). 注 1)文 献9の22ペ ー ジ 。 2)文 献9の23ペ ー ジ 。 3)文 献9の63ペ ー ジ 。 4)詳 し くは 文 献2,3,6を 参 照 さ れ た い 。 5)こ の あ た りの 事 情 に つ い て は 、 広 重 徹 『相 対 論 の 形 成 』(み す ず 書 房 、1980)とA.Pais,Subtleisth, Lori…(OxfordUniversityPress,Oxford,1982);『 神 は 老 猫 に し て 』金 子 務 他 訳(産 業 図 書 、1987) に 詳 し く述 べ ら れ て い る 。 6)文 献1のS.301お よ び 文 献9の233-234ペ ー ジ 。 7)文 献1のS.302お よ び 文 献9の235ペ ー ジ 。 8)神 智 学 や そ の 用 語 に つ い て の 詳 し い こ と は 文 献17を 参 照 さ れ た い 。 9)シ ュ タ イ ナ ー に よ れ ば 、 人 間 は 肉 体 、 生 命 が 働 くエ ー テ ル 体 、 精 神 力 の 作 用 す る ア ス ト ラ ル 体 お よ び 自 我 の 四 つ の 部 分 よ り構 成 さ れ て い る(文 献17の68ペ ー ジ 参 照)。 10)文 献1のS.91お よ び 英 語 版p.68.