149 異文化間教育 44 号 2016:149-150 文献・図書紹介 那須妙子 『異文化への旅路―心をつなぐことば―』 『異文化への旅路Ⅱ―夢のカリフォルニ アへ 犬づれの記―』 那須妙子著/銀の鈴社 各 1,000 円+税 2009・2011 年発行 児童図書、教育・学術書で知られる銀 の鈴社が、「未来に向かう若い人や、第 二・第三の人生のターニングポイントに ある方々への生き方のための水先案内 人」として、「銀鈴叢書・ライフデザイ ン・シリーズ」を企画した。本書はその シリーズに属する自分史とその続編であ る。 「言語は文化の乗り物」といわれるが、 筆者は「心をつなぐことば」といいかえ る。 異文化へのあこがれから、英語・ドイ ツ語を学び、語学教師・通訳・翻訳者に なった筆者の自分史とエッセイである。 著書のことば「海外の文化に関わりた い方々へ」の中で、「日本の若い人に伝 えたいこと――英語・ドイツ語を必死で 勉強したことで、すばらしく充実した年 月を過ごせたこと。今となると自分でも 感心するぐらい、体当りで新境地に踏み 込んで行ったこと。そして、どこへ行っ ても自分の分身、あるいは第三の心開く 家族にめぐり会えたこと。たった一つの 人生を豊かに行動して、みなが生き生き と己の道を歩んでほしいと願ってペンを とりました」と記した。 自分史は、戦後 1 年に始まり、それか ら 60 年にわたる筆者の成長を追う形で 語った。戦後の日本人がアメリカ文化に 影響されていく様子を具体的に描写した が、偶然始めたドイツ語がきっかけで、 旧西ドイツへ留学することになる。そこ で生涯の伴侶、腹心の友人たちにめぐり 会 い、日 本 人 と し て の ア イ デ ン テ ィ ティーに目覚め、日本語教師を目指すよ うになる。 抽象画家としてドイツで活路を見出し た亡夫・那須弘一と励まし合いながら、 異文化圏で自分らしい生き方を貫いて いったいきさつを、率直に語った。 続編のサブタイトルは、「夢のカリ フォルニアへ 犬づれの記」で、2001~ 2002 年にカリフォルニア大学リヴァー サイド校へ長期出張した体験をエッセイ 風にまとめたものである。 16 年もドイツで過ごした日本人がア メリカ文化(少女時代に憧れた)をどう とらえたか、複眼的な比較文化論にも なっている。 また、種という異文化間で心を通い合 わせるようになった愛犬に、ことばを超 えたコミュニケーションの力を学んだこ とも述べた(ドイツから日本への帰国子 女の問題に直面した一人息子のために飼 い始めた犬である)。 本書では、アメリカの地名・人名など を英語で表記し、できるだけそれに近い カタカナをあてることを試みている。英 語上達を願ってやまない日本人が多い が、和製英語によってさらに英語習得が 困難になっているのではないか、という 疑問を呈するためである。 アメリカには、自分史を研究対象とする 学会が生まれ、新しい学問領域として注目 されている(International Auto/Biography Association)。筆者の歩みを辿りながら 時代背景などについて具体的に研究でき
150 るためだが、本書(自分史)では、戦後 日本の欧米文化受容と旧西ドイツでの生 活をわかりやすく描いた。 読みやすさを心がけて書いたので、中 高校生にも勧められる(全国学校図書館 協議会選定・神奈川県児童福祉審議会推 薦)。 (なす たえこ 城西国際大学 准教授 ドイツ語教育)