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大規模災害が住民の防災意識および防災対策に及ぼす影響に関する分析 2010年・2011年・2015年の3回の全国ウェブ調査の結果から

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(1)A-5-1. 第 11 回横幹連合コンファレンス 2020.10.8-9 統計数理研究所. 大規模災害が住民の防災意識および防災対策に 及ぼす影響に関する分析 -2010 年・2011 年・2015 年の3回の全国ウェブ調査の結果から- ○有馬 昌宏(兵庫県立大学) 川向 肇(兵庫県立大学) Are There Any Chronological Changes in Residents’ Disaster Mitigation Consciousness and Anti-disaster Activities? : An Analysis based on Nation-wide Web Survey Conducted in 2010, 2011 and 2015. * M. Arima (University of Hyogo), H. Kawamukai (University of Hyogo) Abstract- While the catastrophic results of East-Japan Great Disaster on March 11th 2011 remind us that selfhelp and mutual-help to disaster are as important as public-help, residents’ prevention consciousness and antidisaster activities against natural disasters such as earthquakes, landslides, floods and tsunamis are far from adequate. In this paper, based on three nationwide web surveys on self and mutual help consciousness and antidisaster activities conducted in 2010, 2011 and 2015 we analyze the results and verify whether there exist regional differences and temporal change in consciousness and anti-disaster activities against natural disasters. Index terms- Web survey, disaster mitigation Consciousness, anti-disaster activities, non-structural measure. 1. はじめに. 日本は,1959年に5,098名の死者・行方不明者を生ん だ伊勢湾台風を契機として1961年に災害対策基本法が 制定され,1962年以降は特に大規模な地震・津波や風水 害に見舞われなかったという幸運も一因となって行動経 済成長を実現してきた.そして,この高度経済成長が可能 にした公共事業としてのハード防災への注力により,自然 災害による死者・行方不明者は,1972年の587人を最大, 1992年の19人を最小に,100人から200人の間で推移1)し て,「水と安全はただ」(イザヤ・ベンダサン(山本七平))2) であると国民に思われるような安全神話が生まれ,個人や 家族による自助の防災対策やボランティア活動などの共 助による復興支援は遅れていたと言える. しかし,1995年1月の阪神淡路大震災により,自然災害 に対する安全神話は崩壊し,阪神淡路大震災を契機とし て,防災に対する自助と共助と公助のバランスのとれた対 応が必要であるとの認識が高まりつつあった.ところが, 2011年3月の東日本大震災,2014年に広島市の大規模 土砂災害をもたらした平成26年8月豪雨,2015年の鬼怒 川の氾濫などをもたらした平成27年9月関東・東北豪雨, 2016年4月の熊本地震,2017年の筑後川右岸支流域で 甚大な被害が発生した平成29年7月九州北部豪雨,2018 年の倉敷市真備町の水没をもたらした平成30年西日本豪 雨,2019年の令和元年8月九州北部豪雨と令和元年房総 半島台風と令和元年東日本台風の3つの大規模風水害, そして2020年の球磨川の氾濫などをもたらした令和2年7 月豪雨と,年を追うごとに豪雨や台風による広域の激甚災 害が頻発する傾向が強くなってきており,地震対策に加え て,風水害の被害軽減に向けての対策も重要になってき ている. ここで,防災あるいは減災(以降,防災として統一)への 対策は,誰が主体的に実践するかで住民自身や家族で 対応する自助,隣保共同の精神で対応する共助,自治体 や国による公助に分類される.一方,どのような対応を行 うかによって,ダムや堤防や耐震建物などの構造物による 被害軽減手法としての「ハード防災」(Structural Measures) と土地利用規制や保険制度やハザードマップなどの防災 関連情報の提供やそのための情報システムや防災教育 や防災訓練などの構造物によらない被害軽減手法として の「ソフト防災」(Non-structural Measures)に分類される.. 公助の典型であるハード防災は,多額の費用と長期の 時間を要し,ソフト防災における公助もハザードマップの 整備や指定緊急避難場所や指定避難所などの設置は進 んではいるが,避難所支援や復興住宅建設などの事後 的な対応が中心となっている. 防災における共助の重要性は強調されてはいるものの, 2013年6月の災害対策基本法の改正で基礎自治体に義 務付けられた高齢者,障害者,乳幼児等の防災施策にお いて特に配慮を要する要配慮者のうち,災害発生時の避 難等に特に支援を要する方々の名簿である避難行動要 支援者名簿の整備は進んではいるが,個人情報保護が 壁となって避難行動要支援者名簿の地域社会での共有 は進んでいないのが現状である.このような状況の中では, 防災の実効性を上げるために,自助への期待が大きくな るのは当然である. しかし,現状の自助への期待は,災害時に指定緊急避 難場所(一般には指定避難所を兼ねている施設が多く, 以降では単に避難所と言及)などの安全な場所への早め の避難を推奨することに重点が置かれている.ところが, 2020年の新型コロナウィルス感染症(coronavirus disease 2019,以降COVID-19と略称)の感染拡大が惹起したコロ ナ禍のもとで,感染拡大防止策としての3密(密集,密接, 密閉)を避けるために避難所においても避難者・避難世 帯間でスペースをとる必要が生じて避難所の収容定員が 3分の1程度の縮小せざるを得ない中,「早めに避難所へ 避難」の自治体や報道機関からの呼び掛けも,避難者を 収容しきれない可能性や感染を恐れて避難しない被災可 能者の増加などで,最早,有効ではない状況が生じようと している. 以上の現状を如何に改善するかについて,本稿では, 我々が過去3回にわたって実施してきた防災意識に関す るウェブ調査の分析結果も踏まえながら,特に自助での ハード防災とソフト防災に焦点を当てた研究の成果の一 部を紹介する.. 2. 自助によるハード防災とソフト防災. 防災に向けての対策は,誰が主体的に担うかで自助 と共助と公助に分類され,ダムや堤防や建築物などの 構造物に依存する対策かどうかでハード防災とソフト 防災に分類される..

(2) 本研究で焦点を当てるのは,住民が個人や家族で主 体的に対応する自助の防災対策であり,この対策には ハード防災とソフト防災が含まれる. 自助のハード防災については,住宅の防災対策が中 心となるが,想定する災害によって対策が分かれる. 一方,ソフト防災は,基本的にハザードエリア(あ るいはハザードゾーン,被災危険区域)から安全な場 所に避難することで実現される.すなわち,自助によ るソフト防災は,ハザードエリアからの移転・転居に よる恒久的なソフト防災と,台風や豪雨や津波などの 自然災害を発生させる誘因の発生や接近の際に一時的 にハザードエリアから離れて安全な場所に避難(水平 避難)するとか,ハザードエリア内でも高層階などの 安全な場所に避難(垂直避難)するなどの一時的なソ フト防災に分類することができる. 2.1 地震・雷・火事・親爺への自助によるハード対策 江戸時代から怖いものの代表として,「地震・雷・ 火事・親爺」が慣用句として使われてきているが,こ れらの厄災の特徴は,いずれも場所を選ばないで発生 あるいは存在することであると言える.実際,代表的 な自然災害としては,洪水,津波,高潮,内水氾濫, 溜池決壊の水災害,がけ崩れ,土石流,地滑りなどの 土砂災害,火山噴火,地震,雷,火事,台風などの強 風や竜巻などの風害,雪崩や落雪などの雪害などが挙 げられるが,これらの中で,どこに住んでも免れるこ とができない自然災害は, 地震と雷と火事と風害の4つ である.なお,「地震・雷・火事・親爺」の最後の「親 爺」は台風を意味する山嵐(やまじ)に大がついた大 山嵐(おおやまじ)がなまったものとする通説がある が,根拠や出典はないものとされている. ここで,場所を選ばないで発生する上述の4つの自然 災害に対しては,これまでのハード対策と自助による ハード対策を進める施策の組み合わせによって,かな りの期間を要したものの,また完全なものとなっては いないものの,大きな効果が生まれてきている. 地震に対しては,建築基準法の1981年の法改正によ る耐震基準の強化で, 「中規模の地震動 (震度5強程度) でほとんど損傷しない」とともに「大規模の地震動(震 度6強~7に達する程度)で倒壊・崩壊しない」という 基準が設定され,さらに2000年の法改正では,木造住 宅に対する基準が強化されて現在に至っている3).こ れらの建築物に対する耐震性強化の対策の効果は阪神 淡路大震災や熊本地震においても示されており,2018 年の平成30年住宅・土地基本調査に基づく国土交通省 の推計結果4)によれば,総戸数約5,360万戸のうち,旧 耐震基準で建築されながら耐震対策を講じた住宅を含 めて耐震性がある住宅は約4,660万戸,耐震性が不足す る住宅は約700万戸と推計され,2018年の耐震化率は約 87%と推計されている.また,地震保険においても, 旧耐震基準の住宅と比較して,新耐震基準住宅は10%, 「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(以降,品 確法と略記)で定められる耐震等級が2(耐震基準強度 の1.25倍の強度)であれば30%,耐震等級が3(耐震基 準強度の1.5倍の強度)であれば50%の保険料率の割引 がされており,耐震構造化促進への一種のインセンテ ィブとなっている.以上から,地震に対しては,家具 等倒壊防止や物の落下防止などの対策を講じるなど, 屋内での付加的ハード対策が必要ではあるが,また. 2000年以前の木造住宅の耐震化の課題は残るが,近年 中に旧耐震基準の住宅は除却されて住宅の耐震化は達 成されていくものと期待できる. 住宅への落雷被害についての統計データは見つから ないが,住宅の落雷対策に関しては,避雷針ならびに 避雷器での対応が可能であり,高さが20mを超える建 物に対しては避雷針の設置が建築基準法によって義務 付けられている. 火事に関しては,都市計画法による防火地域ならび に準防火地域の指定があり,これらの防火・準防火地 域以外には建築基準法22条による指定地域(法22条指 定地域)や東京都による「新たな防火規制区域」のよ うに自治体が条例で防火の規制区域を指定することも ある.これらの地域・区域内では,住宅を含む建築物 は,階数や延床面積などによって建築基準法で定めら れた耐火建築物あるいは準耐火建築物での建築が求め られ,屋根を不燃素材で葺き、外壁の延焼のおそれの ある部分は準防火構造とするなどの制限がかけられる ことになるが,防災上の効果は大きくなる. また,既に老朽化した木造住宅等の建築物が密集し ていて,しかも十分な避難道路や避難公園,緑地など といった公共施設がないことから,その防災機能が確 保されていない市街地である密集市街地に対しては, 国土交通省5)により「地震時等に著しく危険な密集市 街地」が2012年3月1日時点で全国に197地区(5,745ha) が把握され,防火地区や準防火地区の指定がなされる とともに,「密集市街地における防災街区の整備の促 進に関する法律(密集法)」により,密集市街地整備 促進事業や防災街区整備事業などを推進することで, それぞれの密集市街地で最低限の安全性の確保が図ら れようとしているところである. 強風対策については,住宅性能の向上は見られるも のの,窓ガラスの破損対策としての雨戸や耐風シャッ ターの設置は有効であり,国土交通省6)は,2019年の令 和元年房総半島台風の住宅被害を踏まえて,建築基準 法の技術基準等で屋根ふき材(瓦)の緊結方法などに おいてガイドライン工法の採用と徹底を検討するなど, 対応が検討されているところである. 以上から,日本全国のどこに立地していても避ける ことができない自然災害である地震・雷・火事と風害 に対しては,住宅を強靭化することによる防災対策が 有効であり,法律が整備されて規制が強化され,時間 の進行とともに既存不適格の古い住宅は除却され,防 災面での安心・安全は今後さらに高まることが期待で きる状況にあると言える. 2.2 水災害への自助によるハード対策 水災害には,外水氾濫,内水氾濫,高潮という浸水 による災害に加えて,水に起因する土石流,地滑り, 急傾斜地の崩壊(がけ崩れ)などの土砂災害が含まれ る.本稿では,これらの災害の他に,一般には地震に 関連する災害で水災害には含まれない津波および雪崩 と落雪の雪害についても水災害に加えることとする. 以上のように水災害を構成する災害を規定すると, 水災害は,前述のどこでも発生しうる「地震・雷・火 事・親爺」とは異なり,地形や地質や標高や河川およ び海岸からの距離や土地利用の状況などから,事前に 水災害のリスクにさらされる地域をハザードエリアと して特定できるという特徴を有している..

(3) 実際, これらの水災害のハザードエリアに関しては, 各自治体からハザードマップとして災害リスクが存在 する地域が示された地図が提供され,国土交通省は各 自治体のハザードマップにアクセスできる「わがまち ハザードマップ」ならびに指定地点のハザードの有無 とハザードの内容を知ることができる「重ねるハザー ドマップ」から構成される「ハザードマップポータル サイト」(https://disaportal.gsi.go.jp/)を構築・運用して 広く一般利用が可能であり,筆者の研究グループが開 発した「ハザードチェッカー」(http://urx3.nu/zk2F)な ど,「正確で,分かりやすく,役に立ち,すぐに使え る」という情報品質の向上を目指した防災用のスマー トフォン用アプリケーション(以降,防災アプリと略 記)も多く公開されている7)8). したがって,水災害のリスクのあるハザードエリア では,事前のハード対策が可能であるはずではあるが, 国土交通省9)で詳しく検証されているように,様々な 対策が講じられているものの,地震や火災延焼への対 策と比較して,法整備と支援策が遅れているのが現状 である. 水水害への自助によるハード対策としては,浸水被 害に対しては,土地の嵩上げ,ピロティ方式などによ る居室の床高の確保,止水版の設置,家屋の耐水化, 高層化で想定浸水深よりも上の高さに居室を設置など が考えられる. 一方,雪崩を含む土砂災害に対しては, 擁壁設置や外壁補強が考えられる.しかし,水災害に 対して法的な立地制限や構造耐力などに建築制限が課 せられるのは,「土砂災害警戒区域等における土砂災 害防止対策の推進に関する法律」(以降,土砂災害防 止法と略記)による土砂災害特別警戒区域,「津波防 災地域づくりに関する法律」(以降,津波防災法と略 記)における津波災害特別警戒区域,建築基準法の第 39条に基づき自治体の条例で指定される災害危険区域, 都市計画法の規定により告示された地区計画における 地区整備計画区域,あるいは「滋賀県流域治水の推進 に関する条例」(以降,滋賀県流域治水条例と略記) のように自治体の条例で指定された浸水警戒区域に限 定され,既存不適格の住宅に対する住宅補強や移転に 対する助成もされてはいるが十分とは言えず,いわゆ るレッドゾーンと呼ばれる区域における自助のハード 対策は,期待されるほどは進んではいないのが実情と 言える. 2.3 自助による恒久的なソフト防災 ハザードエリアが既知で,有効な自助や公助による ハード防災の実現が難しい場合,残された防災の方策 は,ソフト防災となる. 最も効果的な防災対策は,水災害のハザードエリア を避けて立地し,建築物には耐震と耐火の対策を講じ ることである.なお,地震に対しては,国立研究開発 法人防災科学技術研究所の5次メッシュ(250mメッシ ュ)で提供される「地震ハザードカルテ」10)を参照し て,微地形や表層地盤および深部地盤に関する情報か ら揺れやすい場所かどうかなどを判断し,より揺れに くい場所へ移転するとか,旧耐震基準の住宅はもとよ り新耐震基準でも木造住宅で2000年以前の建築であれ ば耐震診断を受け,必要であれば耐震補強をして,全 ての住宅で住宅内の家具倒壊防止や物の落下防止など の対策を講じることが重要である.. ハザードエリアは,現時点では全国の自治体で作成 され,各戸に配布され,自治体のホームページ上で公 開されている各災害種別のハザードマップを通じて誰 でもが確認できる状況となっている.しかし,ハザー ドマップの作成・公表は1990年代になってからと比較 的に新しく,国土交通省の 「わがまちハザードマップ」 での公開データを調べた有馬他11)と国土交通省12)13)に よれば,洪水ハザードマップの公表は,1995年に12市 町村であったが,2000年は101市町村,2005年は439市 町村,2010年は1,291市町村であり,2020年8月29日時点 で確認できる数値では,1,741市区町村のうちで作成対 象となる河川が存在する1,340の市区町村に対して 98.8%の1,324市区町村が印刷物の配布等で公表してい るとともにインターネットでも公開しているのが現状 である. ところで,宅地建物取引業法では,2001年施行の土 砂災害防止法を受けて土砂災害警戒区域と土砂災害特 別警戒区域については重要事項説明項目とされ,2015 年からは都道府県が公開する土砂災害に関する基礎調 査の結果に基づいて土砂災害警戒区域等に相当する範 囲にある場合には土砂災害警戒区域等に指定される可 能性を説明することとされている.また,砂防3法指定 区域と呼ばれる「砂防法」による砂防指定地,「地す べり等防止法」による地すべり防止区域とぼた山崩壊 防止区域,「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関す る法律」による急傾斜地崩壊危険区域についても,重 要事項説明項目とされている14). 津波浸水被害の可能性に対しては,津波防災法の施 行により宅地建物取引業法施行規則が改正されて, 2010年より宅地建物の取引においては相手方に津波災 害警戒区域(津波災害特別警戒区域はこの区域内に包 含される)であることを重要事項として説明すること が必要とされている.また,津波浸水想定区域の設定 や津波災害警戒区域の指定にあたっては,2011年の津 波防災地域づくりに関する法律により,最大クラスの 津波を想定して作成することとされている. しかし,津波被害を除く水害の浸水想定区域につい ては,宅地建物取引業法施行規則の一部改正が2020年 7月17日に公布され,2020年8月28日に施行されたこと により,他の災害から遅れはしたものの,「水害(洪 水・雨水出水(以下「内水」という.)・高潮)ハザ ードマップ(以下「水害ハザードマップ」という.) 上のどこに所在するかについて消費者に確認せしめる ものであり,取引の対象となる宅地又は建物の位置を 含む水害ハザードマップを,洪水・内水・高潮のそれ ぞれについて提示し,当該宅地又は建物の概ねの位置 を示すことにより行う」とされ,さらに「水害ハザー ドマップに記載されている内容の説明まで宅地建物取 引業者に義務付けるものではないが,水害ハザードマ ップが地域の水害リスクと水害時の避難に関する情報 を住民等に提供するものであることに鑑み,水害ハザ ードマップ上に記載された避難所について,併せてそ の位置を示すことが望ましい.また,水害ハザードマ ップに記載された浸水想定区域に該当しないことをも って,水害リスクがないと相手方が誤認することのな いよう配慮するとともに,水害ハザードマップに記載 されている内容については今後変更される場合がある ことを補足することが望ましい」とされ,水害のリス クの周知が不動産の取得や賃借時に徹底されるように.

(4) なった15). 以上のように,「宅地又は建物の購入者等に不測の 損害が生じることを防止するため,(中略)契約を締 結するかどうかの判断に多大な影響を及ぼす重要な事 項」14)として宅地建物取引業者に説明が義務づけられ る重要事項説明の対象項目として,火山災害とため池 決壊災害を除く水災害の被災リスクの可能性が含まれ ることとなったが,これらの措置により,実際に被災 リスクの高い区域での住宅取得や住宅賃借に影響が生 じるかどうかは不明である. なお,恒久的なソフト防災のためには,住民に被災 リスクのある区域に立地するかどうかの判断をまかせ るのではなく,被災リスクのある区域への新規立地は 規制するか建築制限を課し,既存立地に対しては移転 を促進する助成策をとるとともに,災害が予想される 場合には後述の一時的避難を実行させることが有効で ある. しかしながら,都市計画法による住宅や事業用施設 の立地や建築の規制は,建築基準法第38条の災害危険 区域,津波防災特別警戒区域内の市町村の条例で定め る区域,土砂災害特別警戒区域,地すべり防止区域, 急傾斜地崩壊危険区域などに限定されており,洪水被 害に関しては,立地制限や建築制限は課せられてはい ないものの,浸水想定区域を都市再生特別措置法の立 地適正化計画の居住誘導区域に含めている都市が2019 年12月時点で立地適正化区域を公表している275都市 中,88.0%の242都市にも上っているという問題が国土 交通省16)では認識され,指摘されていた.なお,国土 交通省16)によれば,居住誘導区域に特定都市河川浸水 被害対策法に基づく都市洪水想定区域あるいは都市浸 水想定区域を含めていた都市は6.9%の19都市,土砂災 害警戒区域を含めていた都市は33.8%の93都市,津波 浸水想定区域を含めていた都市は26.9%の74都市であ った.このような住宅等の立地制限をすべきハザード エリアに立地誘導をするという誤った施策の問題は, 2020年6月3日の都市再生特別措置法の改正と9月7日か らの施行17)によって是正される方向に向かうことにな るものの,既存不適格などの問題の解消には時間がか かるものと懸念されるところである. 2.4 自助による一時的なソフト防災 自助による一時的なソフト防災は,自然災害の発生 が予測される場合に,事前にハザードエリアからハザ ードエリア外の安全な場所に,あるいはハザードエリ ア内であっても安全が確保できる場所に避難すること で実現できる. したがって,自然災害の種別に応じて, ハザードエリア内であるかどうかを認識しておくこと と,自然災害の発生の予測を認識することがソフト防 災を有効に機能させるための肝となる. 自然災害の発生の予測に関しては, 地震は2つの地震 波の到達時間差を利用して大きな揺れが来る数秒前か ら数十秒前までの間で緊急地震速報が気象庁から発表 される.地震以外の自然災害に対しては,2010年5月か らは市町村単位で気象庁から現象別の図表形式で時間 の進行とともにわかりやすく発表される特別警報・警 報・注意報等の防災情報が有用である. 雷に関しては,雷注意報とレーダー・ナウキャスト (雷)で確認可能である.火事に関しては予測は無理 であるが,乾燥注意報が参考になる.. 強風については,気象庁からの台風情報,竜巻注意 情報,暴風特別警報,暴風警報,強風注意報,暴風早 期注意情報,暴風雪特別警報,暴風雪警報,暴風雪早 期注意報で事前に備えることが可能であり,これらの 情報は火災の延焼拡大の判断にも関係するものである. 津波に関しては,地震が発生してから約3分(一部の 地震については約2分)を目標に,大津波警報,津波警 報,津波注意報が発表され,避難の判断に資すること ができる. 津波を除く水災害に関しては,大雨特別警報(土砂 災害あるいは浸水害またはその両方の特に警戒すべき 事項を明示),大雨警報(同前),大雨注意報,洪水 警報,洪水注意報,高潮特別警報,高潮警報,高潮注 意報,大雪特別警報,大雪警報,大雪注意報,大雪早 期注意情報,なだれ注意報,融雪注意報が発表され, 水災害の発生に備えることが可能である. 自然災害は,低地,海や河川や急傾斜地への近接, 軟弱な地盤,木造住宅の密集といった,地点や区域が 有する自然災害に対する脆弱性である素因に,大雨や 地震や津波や台風といった自然災害を誘発する自然現 象である誘因が作用して発生する.したがって,素因 の存在を認識していれば,平時から対策を検討して自 然災害の発生に備え,自宅に留まると危険で安全な場 所への避難が必要であると判断されるのであれば,誘 因の発生や接近に注意を集中して,適切な判断と避難 行動をとることで,少なくとも人命への被害は避けら れるはずである. なお,国土交通省18)は,自然災害を,本稿で定義す る水災害を進行型災害に,地震などを突発型災害に分 類し,進行型災害に対しては「事前に起こりうる状況 を想定し共有した上で,防災行動をタイムラインとし て策定」することを推奨しており,具体的には,住民 に対してはマイ・タイムライン19)の作成を推奨してい る.また,東京都20)などの自治体も,避難に向けてマ イ・タイムラインの作成を推奨している. また,マイ・タイムラインで避難などの行動をとる タイミングとしては, 気象庁が5つの事業者の協力のも とに, 速やかに避難が必要とされる警戒レベル4に相当 する「非常に危険(うす紫)」などへの危険度の高ま りを知らせる「大雨・洪水警報の危険度分布」のプッ シュ型通知サービス21)の利用が考えられる.. 3 全国ウェブ調査から探るソフト防災の阻害要因 前章で概観してきたように,本稿の提出期限である 2020年8月29日時点では,自助による恒久的なソフト防 災と自助による一時的なソフト防災のいずれに対して も,これらのソフト防災の実現を支援する法律ならび に科学的方法論に基づく各種ツールや情報提供手段は, 過去の災害を踏まえて段階的ではあるものの着実に整 備され,完全とは言えないまでも, 各住民にとっては, 実行しようとする意思さえあれば実行のための意思決 定に必要な情報の提供や支援策は用意されている状況 にあると言える. しかしながら,近年は大規模な進行型災害が頻発し, 気象庁や報道機関からは,都度,「早めの避難」や「命 を守る行動」が叫ばれているにも関わらず,物的被害 はもちろんのこと,人的被害を無くすことが実現でき ていないのが現状である. 本章では,ソフト防災の実現を阻む要因について,.

(5) Table 1 過去3回のウェブ調査の概要 調査年月 サンプル・サイズ 性 男性 別 女性 30歳未満 30歳代 年 40歳代 齢 50歳代 60歳代 70歳以上 会社員・団体職員 公務員 自営業 パート・アルバイト 職 学生 業 家事専業 退職後年金生活 その他 無職 リ 地震の被害懸念 ス ク 風水害の被害懸念 1.家財の地震保険に加入 2.建物の地震保険・共済に加入 3.家財の火災保険に加入 防 4.建物の火災保険に加入 災 5.家具などを固定して転倒防止を実施 対 6.棚などから物が落下しないように工夫 策 7.非常用食品・飲料を常備 実 8.建物の耐震診断を受診 施 9.建物の耐震工事を実施 率 10.懐中電灯・ローソクの準備 11.携帯ラジオの常備 12.住宅用火災報知機の設置 13.普段から家族で防災について話しあう. 2010年 2011年 2015年 1~2月 1~2月 2~3月 9,356 51.0% 49.0% 21.6% 35.0% 23.7% 13.6% 5.1% 1.0% 43.1% 4.7% 7.0% 12.4% 3.5% 20.1% 2.2% 1.3% 5.7% 80.8% 23.9% 18.4% 28.5% 33.2% 47.4% 25.1% 21.7% 30.1% 3.3% 3.9% 53.5% 34.7% 30.2% 11.9%. 7,133 54.5% 45.5% 15.0% 30.7% 27.0% 17.7% 7.7% 1.8% 37.1% 4.6% 7.1% 13.8% 2.9% 23.8% 3.3% 1.2% 6.1% 80.5% 29.2% 25.1% 32.8% 39.6% 52.1% 24.9% 19.5% 28.0% 3.5% 3.9% 51.3% 35.2% 32.7% 6.7%. 4,455 48.7% 51.3% 9.1% 20.4% 27.5% 24.7% 14.0% 4.2% 37.5% 4.2% 8.2% 15.7% 1.4% 17.9% 5.8% 1.9% 7.5% 78.2% 37.8% 29.0% 35.8% 41.4% 53.0% 28.7% 24.3% 41.2% 4.3% 3.9% 62.0% 44.8% 34.4% 12.0%. 筆者の一人である有馬が主宰していた研究室が科学研 究費補助金の助成を受けて,2010年,2011年,2015年 の3回にわたって実施してきた防災意識と防災行動等 に関する全国ウェブ調査の結果を踏まえながら検討を 行う. 3回の全国ウェブ調査の概要については,Table 1にま とめてあるが,3回の全国ウェブ調査は,2010年調査が 「防災・災害避難意識と感染症拡大防止のための学級 閉鎖情報提供」 (科学研究費課題番号20310097),2011 年調査が「防災意識と自主防災組織の活動状況」(科 学研究費課題番号20310097),2015年調査が「防災意 識と自主防災組織の状況と防災アプリへの期待」(科 学研究費課題番号24530417)をテーマとする調査で, それぞれで調査テーマが異なるため,完全に同一の質 問と回答選択肢で設問した調査ではないことに留意さ れたい.なお,各調査は,サンプルサイズと性別,年 代別,47都道府県別のサンプル構成に条件を設けての 一般競争入札で調査実施会社を決定し,いずれの調査 も西宮市の株式会社データーサービスに委託して,応 募型のウェブ調査で実施したものである. 3.1 災害リスクの認識の欠如 大規模な水災害が発生するたびに事後の検証報告書 等が作成され,ハザードマップ等を参照して居住地が 水災害のハザードエリアに入っていて,水災害リスク が存在していることをきちんと認識していなかった住 民の多いことが指摘されている.. 例えば,調査結果をまとめた国土交通省の資料22)に よれば,2015年の平成27年関東・東北豪雨で鬼怒川の 氾濫で約4,300名の逃げ遅れが発生した茨城県常総市 で中央大学理工学部河川・水文研究室が512名を対象に 実施したヒアリング調査では,床上浸水44.2%,床下浸 水23.8%,浸水被害なし・未回答32.0%の被災状況のも と,避難状況は,「避難所への避難」は28.6%,「自宅 以外の安全な場所への避難」が29.9%,「自宅にいた」 が41.5%であり,災害発生時に「ハザードマップを見て 確認した」が5.4%,「見ていない」が93.6%,ハザード マップの認知度は「ハザードマップを知らない・見た ことがない」が61.0%となっていた.また,2018年の平 成30年7月豪雨での岡山県倉敷市真備町の100名の被災 者等を対象とした調査では,「ハザードマップの内容 を理解していた」のは24%,「ハザードマップを見た ことがある」は51%,「ハザードマップを知らなかっ た」は25%であった.以上から,ハザードマップを見 て,居住地が水災害のリスクがあるかどうかをきちん と理解していなかった可能性が避難を阻害する要因で あると推察することができる. しかし,浸水リスクの認識の有無が避難行動や浸水 被害対策に影響を及ぼすと考えられるが,ハザードマ ップの内容を理解して自宅の浸水被害リスクを認識し ていた住人とそうでない住人の間で避難行動の選択に 差があったかどうかについてのクロス集計結果やχ2 検定結果を示した調査報告書は見られない. 有馬研究室で2015年に実施した全国ウェブ調査では, 回答者の居住地域の災害リスクの認識状況とその判断 の根拠を設問しているが,リスク認識をもたらす判断 根拠は,その判断が正しいかどうかは不明であるもの の,「自分自身の経験や知識」がトップで63.6%,続い て「ハザードマップ」が41.4%,「新聞やテレビなどの 報道」が35.1%,「市・区役所や町・村役場からのチラ シなどの情報」が24.8%,「家族との会話」が23.3%, 「近所の人との会話」が12.2%,「その他」が3.9%であ り,災害リスクの客観的な判断資料であるハザードマ ップが災害リスクの有無の判断に使われる割合は4割 にとどまっていた状況が示されている. なお,洪水(外水氾濫),雨水出水(内水氾濫), 高潮の水水害のリスクについては,2015年の水防法の 改正により,想定しうる最大規模の洪水,内水,高潮 に対しての浸水想定区域に拡充して公表することとな り,洪水の浸水想定区域の策定の前提となる降雨は, 年超過確率1/100(100年に1回程度)の計画規模の降雨 から年超過確率が1/1000(1,000年に1回程度)の想定最 大規模の降雨に切り替えられ,現在は計画規模による 浸水想定区域図と想定最大規模による浸水想定区域図 が混在する状況である.2020年の令和2年7月豪雨で水 没して14名の犠牲者が出た熊本県球磨村の特別養護老 人ホーム「千寿園」は,想定最大規模の浸水想定区域 図では浸水深10m以上20m未満の浸水想定区域に立地 していたにもかかわらず,計画規模の浸水想定区域図 では浸水想定区域外であったため,2017年の水防法の 改正で要配慮者利用施設に義務づけられることとなっ た避難確保計画と避難訓練の実施も計画規模の浸水想 定区域図に基づいた計画が採用され,災害リスクの認 識が欠如していたために大きな被害が発生することと なったとされている23)..

(6) Tabel 2 3回のウェブ調査のプーリングデータに対する自助防災対策の名義ロジスティック回帰分析の結果. 性 別. 建物の 地震保険. 建物の 火災保険. 家具固定・ 転倒防止. 非常用 食品・飲料 常備. 携帯ラジオ 常備. 懐中電灯・ 蝋燭の 準備. 家族で 防災の 話し合い. 2010年実施率. 28.5%. 47.5%. 25.1%. 30.1%. 34.7%. 53.5%. 11.9%. 2011年実施率. 32.8%. 52.1%. 24.9%. 28.0%. 35.2%. 51.3%. 6.7%. 2015年実施率. 35.8%. 53.0%. 28.7%. 41.2%. 44.8%. 62.0%. 12.0%. 22.0%. 15.2%. 疑似決定係数. 0.0347. 0.0534. 0.0312. 0.0511. 0.0483. 0.033. 0.0434. 0.0455. 0.0232. サンプルサイズ. 20,694. 切片. -1.234. 20,694 ***. -0.500. 20,694 ***. -1.395. 20,694 ***. 20,694. -0.902. ***. 20,694. -1.259. ***. ***. ***. 地域災害 リスクの 情報収集. 16.4%. 20,694. -0.315. 家族との 連絡方法 決定・確認. 11,480. -2.180. ***. -0.251. ***. 4,385. -1.592. ***. -2.308. -0.574. ***. -0.184. 0.061. -0.236. 0.134. ***. -0.198. ***. 30歳代. 0.218. ***. 0.394. ***. 0.015. 0.116. **. 0.320. ***. 0.286. ***. -0.036. -0.043. -0.179. 年 40歳代 齢 50歳代. 0.329. ***. 0.682. ***. 0.175. ***. 0.282. ***. 0.669. ***. 0.502. ***. -0.046. 0.115. -0.081. 0.421. ***. 0.970. ***. 0.230. ***. 0.203. ***. 0.832. ***. 0.654. ***. -0.158. 0.143. 0.016. 60歳以上. 0.628. ***. 1.370. ***. 0.297. ***. 0.346. ***. 1.264. ***. 1.016. ***. 0.180. 0.136. 0.157. 公務員. 0.077. 0.164. **. 0.222. ***. 0.105. 0.095. 0.023. -0.007. 0.012. 自営業. -0.235. ***. -0.007. 0.047. 0.282. ***. -0.088. 0.264. 0.150. *. -0.088. -0.117. 0.158. **. -0.058. 男性. -0.241. ***. -0.140. ***. -0.299. ***. 0.020. -0.453. ***. -0.371. 退職後年金生活. -0.240. **. -0.072. 学生. -0.109. その他職業. -0.274. **. -0.052. -1.156. ***. -0.563. ***. -0.370. -0.370. ***. -0.575. ***. -0.002. 0.294. ***. 0.282. ***. 0.056. 0.153. ***. 0.203. ***. 0.082. 住 木造集合住宅 居 鉄筋・鉄骨集合住宅 乳幼児. 家 小中学生・高校生 族 単身世帯 性. 0.154. ***. 0.027. -0.034. -0.130. 0.072. -0.052. -0.073. -0.225. **. ***. -0.008. 0.006. 0.057. 0.112. 0.014. -0.049. -0.047. -0.424. -0.053. 0.066. 0.300. 0.121. 0.170. 0.205. *. 0.099. 0.320. ***. 0.217. 0.263. *. 0.173. 0.133. -0.140. -0.283. 0.051. ***. **. 0.027 **. **. 0.192. *. 0.143. 0.299. ***. 0.319. ***. 0.305. **. 0.272. **. 0.551. ***. ***. -0.206. **. -0.148. ***. -0.146. -0.172. ***. -0.143. 0.009. -0.005 ***. -0.187. -0.019. 0.321. -0.137. -0.102. -0.095. ***. 0.047. 0.160. ***. 0.064. 0.034. 0.057. *. ***. 0.074 0.159. 0.221. ***. 0.288. ***. 0.133. ***. -0.362. ***. -0.842. ***. -0.552. ***. -0.559. ***. -0.505. ***. -1.540. ***. -1.151. ***. 0.050. 地震被害. 0.326. ***. 0.163. ***. 0.397. ***. 0.395. ***. 0.331. ***. 0.348. ***. 0.430. ***. 0.370. ***. 0.468. ***. 水災害被害. 0.156. ***. 0.131. ***. 0.105. ***. 0.219. ***. 0.240. ***. 0.205. ***. 0.225. ***. 0.155. ***. 0.501. ***. -0.172. 0.013. -0.387. ***. -0.748. ***. -0.109. -0.067. -0.172. -0.342. ***. 東北. 0.027. 0.062. -0.212. ***. -0.580. ***. -0.011. 0.080. -0.247. ***. -0.314. ***. 0.034. 関東(内陸). 0.035. 0.180. -0.413. ***. -0.496. ***. -0.197. ***. -0.051. -0.248. **. -0.190. ***. -0.100. -0.811. ***. -0.906. ***. -0.281. ***. -0.266. -0.348. **. -0.282. 0.156. ***. -0.012. -0.197. ***. -0.122. 北陸 居 東海 住 近畿(内陸) 地 近畿(臨海) 域 山陰. 査 年. -0.416. ***. 0.075. *. -0.496. 北海道. 調. 0.184 *. パート・アルバイト. 能. -0.034. -0.098. 職 家事専業 業 無職. 可. -0.057. ***. -0.201. **. -0.129 0.219. ***. 0.094 ***. -0.156. -0.021. 0.050. -0.043. -0.075. 0.178. -0.433. ***. ***. 0.126. **. ***. 0.023. 0.063. -0.474. ***. -0.615. ***. -0.507. ***. -0.285. ***. -0.317. ***. -0.482. ***. 0.040. -0.258. ***. -0.557. ***. -0.217. ***. -0.172. ***. -0.265. ***. -0.304. ***. 0.135. -0.412. **. -0.774. ***. -0.433. **. -0.098. -0.420. ***. -1.063. ***. -0.374. ***. -0.126. -0.377. ***. -0.597. ***. -0.312. ***. -0.147. -0.143. -0.341. ***. -0.052. -0.660. 0.052 *. 山陽. -0.097. -0.014. 四国. 0.099. -0.163. 北九州. 0.086. 0.032. -0.635. ***. -1.021. ***. 南九州. -0.148. -0.122. -0.742. ***. -1.021. ***. 0.032. 2011年. 0.091. **. -0.053. -0.064. *. -0.130. ***. -0.118. ***. -0.223. ***. -0.664. 2015年. 0.291. ***. -0.016. 0.136. 0.487. ***. 0.193. ***. 0.182. ***. 0.025. *. -0.729. ***. 0.014. -0.516. -0.293 ***. 0.754 ***. 0.130. -0.620. ***. -0.277. -0.412. **. -0.583 -0.010. ***. -0.111. *. **. 0.128 0.130. ***. 0.393. ***. 注1)表中の***は1%有意水準で,**は5%有意水準で,*は10%有意水準で有意であることを示す. 注2)推定値は,(対策あり/対策なし)の対数オッズに対するものである. 注3)説明変数で基準とした水準は,性別は「女性」,年齢は「30歳未満」,住居は「一戸建て」,職業は「会社員・団体職員」,地域は「関東(臨海)」,調査年は 「2010年」である.ただし,家族との連絡方法決定・確認は調査年の基準は「2011年」である.. 3.2 災害リスク認識と行動との間のキャズム 住民によって災害リスクが認識されたからといって, その認識がソフト防災の実現へと直接的につながるわ けではない. Table 1には,自助のソフト防災の対策として,対策 をとっているかとっていないかの2項選択方式で回答 されている「建物の地震保険加入」,「建物の火災保 険加入」,「家具の固定・転倒防止策の実施」,「非 常用食品・飲料の常備」,「携帯ラジオの常備」,「懐 中電灯・ロウソクの準備」,「家族での防災について の話し合いの実施」,「家族との緊急連絡方法の決定・ 確認」(2011年と2015年調査のみ),「地域の災害リ. スクに関する情報収集」(2015年調査のみ)の9の防災 対策について,性別,年齢,職業,居住形態,家族構 成,災害リスクの認識,居住地域,調査年を説明変数 として,名義ロジスティック回帰分析を適用した結果 を表形式に要約して示している. 分析結果の詳細については,本分析とほぼ同様の分 析を有馬8)で行っているので省略するが,いずれの防 災対策においても,疑似決定係数の値は低いものの, ダミー変数として説明変数に加えている「地震被害リ スク」と「水水害リスク」 (洪水と土砂災害のリスク) の係数はプラスであるとともに1%有意水準で高度に 有意であるという結果となっている.すなわち,地震.

(7) Table 3 非常用食品・飲料の常備率と リスク認知の有無の関係 地震被害 リスク有り 2010年 2011年 2015年. 32.5% 29.7% 43.6%. 地震被害リス ク無し 20.3% 20.8% 32.7%. 風水害被害 リスク有り 32.8% 32.1% 43.2%. 風水害被害 リスク無し 29.3% 26.2% 40.0%. 被害のリスクを認識している回答者ならびに水災害の リスクを認識している回答者は,これらのリスクを認 識していない回答者よりも防災対策を講じる可能性が 高いことが示されていると言える. しかし,「非常用食品・飲料の常備」を例にTable 3 に示したように,地震や風水害へのリスクを認識して いたとしても,そのリスク認識が直ぐにリスクを軽減 するための対策の実施に結び付くわけではない.すな わち,リスクの認識とリスク軽減策の実施という行動 との間にギャップあるいはキャズムが存在することが 示唆されていると考えられる.ただし,Table 3の非常 用食品・飲料の常備率については,2010年,2011年, 2015年の各調査年で,χ2検定とFisherの右片側正確検 定のいずれにおいても,地震被害および風水害被害の リスク認識の有無によって常備率に高度に有意な差が 生じることは示されている. この意識と行動との間のギャップあるいはキャズム の原因は,内閣府の2013年の「防災に関する世論調査 (平成25年12月調査)」24)と2016年の「水害に対する 備えに関する世論調査(平成28年1月調査)」25)によれ ば,地震保険や火災保険に加入しない理由は,「保険 料が高いと思うから」,「勧誘を進められなかったか ら」,「地震や水害は起こらないと思うから」,「地 震や水害が発生しても建物に被害は生じないと思うか ら」,「十分な補償がされないと思うから」などの回 答が上がっている.また,耐震補強工事をしない理由 としては,「お金がかかるから」や「必要性を実感し ないから」などが上がっている.しかし,これらの世 論調査の報告書では,地震や水害のリスクの認識程度 や住宅の耐震基準とのクロス集計が示されていないな どの限界があり,ギャップあるいはキャズムの原因と 解消策を探るには,詳しい調査が必要であると思われ る. 4 おわりに 本研究では,我々が過去 3 回にわたって実施してき た防災意識に関するウェブ調査の分析結果も踏まえな がら,特に自助でのハード防災とソフト防災に焦点を 当て,いかに自助による防災を進めるかについての検 討を行った.その結果,水災害に対しては恒久的なソ フト防災が最も有効であり,都市再生特別措置法の改 正などでハザードエリアへの立地制限やハザードエリ アからの移転支援などが進められようとしており,不 動産取引時の重要事項の説明項目にハザードエリアで あるかないかの説明が含まれるようになるなど,今後 に期待できる法律や制度の改正が行われていることは 確認できた. しかし,既にハザードエリア内に立地している既存 不適格の住宅に居住している住民に対しては,避難と いう一時的なソフト防災がとりうる対策となるが,コ ロナ禍のもとでは,収容定員に制限が設けられるよう. になった避難所への避難では,3 密を避ける対応がさ れるとはいうものの COVID-19 の感染を恐れる住民や 収容定員オーバーで避難できない住民が安全な場所で 避難できないという問題が生じる可能性がある. 一時的なソフト防災では,自宅がどのような災害に 対してどのようなリスクを有しているか,あるいは有 していないかを正しく認識する必要がある.しかし, 国や自治体や報道機関はハザードマップでリスクの有 無の確認を求めているが,現行の紙や pdf ファイルに よるハザードマップの抱える情報品質の低さでは,住 民が正しく的確にリスクを認識できているかは疑わし い.「重ねるハザードマップ」では,高潮や内水氾濫 などの災害リスクは表示されない. 住民に災害リスクを正しく分かりやすく認識しても らうためには, 有馬 26)が指摘しているように, 例えば, 毎年 4 月に自治体から登記簿上の土地・家屋の所有者 に郵送される固定資産税納税通知書の土地および家屋 の課税明細書に当該資産の被災危険性を表示する方策, 津波浸水深を電信柱に表示する方法を洪水や内水氾濫 や高潮の浸水想定区域にも適用する方策,土砂災害警 戒区域や危険箇所には標識や掲示板を設置する方策な どの実施が考えられる. 住民が自宅の災害リスクの有無とリスクがある場合 の具体的内容をきちんと把握したとしても,そこから 具体的対策が講じられることに結び付けるためには, 情報面での支援,金銭面での支援, 作業面の支援など, 継続的で手厚い支援が必要になると考えられる. 現時点では,コロナ禍のもとでの 3 密を避けるため の新しい防災のあり方が求められているが,その肝は 以下のようにまとめられると考えられる. 1. コロナ禍での防災では,避難所での三密を避ける ため, 在宅避難や広域避難が重要になる. その結果, 在宅避難や広域避難をした住民,避難所への避難を 余儀なくされた住民,避難所の運営・管理者のいず れにとっても便益が生じる. 2. そもそも,避難所へ避難しなくてもすむように, 地震に対しては自宅の耐震化と家具の倒壊防止など の対策を,水災害に対しては住宅のピロティ化や擁 壁設置などの対策を講じておく必要がある. 3. 水災害に対しては,ハザードエリア内にあれば, ハザードエリア外への移転が最も確実な防災対策 (恒久的なソフト防災)である. 4. 水災害に対しては,自宅・事業所・学校がハザード エリア内にあるかどうか,ハザードエリア内であれ ば想定浸水深などのハザードの内容を具体的に事前 に確認しておき,どのタイミングでどのような行動 をとるか,マイ・タイムラインを作成しておく必要 がある. 5. 水災害に関して,ハザードエリア内にあれば,行 政からの避難勧告や避難指示などの避難情報を待っ て避難所へ避難するのではなく,自らも気象庁や国 土交通省などが提供する防災情報を積極的に収集し, ハザードの内容と予測される災害の大きさに応じて, 事前の広域避難を含めて,適切な避難を考えること も必要である. 6. 住宅の強靭化を行った上での在宅避難の場合や, ハザードエリア外での住宅にあっても,停電や断水 の可能性があり,光源や生活用水の確保やカセット コンロなどの準備などをしておく必要がある.物流.

(8) も麻痺する可能性があるが,現代では遅くとも 3 日 もすれば救援物資は届くので,最低限,3 日間をし のぐための非常用飲料・食料の準備をしておくとと もに断水時のトイレ対策を講じておく必要がある.. 謝辞 本研究は令和 2 年度科学研究費補助金(C) 20K05031, 「ソフト防災に資する防災情報の情報品質の向上と自 主防災組織の活性化に関する研究」の支援を受けた研 究成果の一部である.また,過去 3 回の全国ウェブ調 査に回答して下さった方々のご協力に感謝いたします.. 参考文献 1) http://www.bousai.go.jp/kaigirep/hakusho/pdf/R2_fuzokusiryo.pdf の附‐6(2020) 2) イザヤ・ベンダサン, 日本人とユダヤ人, 山本書店 (1970) 3) https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr_000043.html 4) https://www.mlit.go.jp/common/001345338.pdf 5) https://www.mlit.go.jp/report/press/house06_hh_000102.html 6) https://www.mlit.go.jp/common/001354162.pdf 7) 有馬昌宏, ソフト防災に果たす防災アプリの可能 性と課題, 横幹, Vol.11, No.2, pp.145-155(https:// www.jstage.jst.go.jp/article/trafst/11/2/11_145/_pdf/char/ja)(2017) 8) 有馬昌宏, 防災アプリはソフト防災にどこまで貢 献できるか? -防災アプリの可能性と課題-, 第 8 回横幹連合コンファレンス論文集 , C-26(https://www.jstage.jst.go.jp/article/oukan/2017/0/2017_C-2-6/_pdf/-char/ja)(2017) 9) https://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/shaseishi n/kasenbunkakai/shouiinkai/kikouhendou_suigai/2/pdf/ 08_matidukuri.pdf 10) http://www.j-shis.bosai.go.jp/labs/karte/ 11) 有馬昌宏, 蘇日娜, 上野卓哉, 情報品質の視点か ら考察したハザードマップの現状と課題, 情報経 営 第 68 回全国大会予稿集【春号】, pp.21-24(2014) 12) https://disaportal.gsi.go.jp/hazardmap/publicate/index. html?code=1 13) http://www.bousai.go.jp/fusuigai/suigai_dosyaworking/pdf/dai2kai/sankosiryo3.pdf 14) https://www.hosyo.or.jp/realpartner/0612kensyu.pdf 15) https://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo16_ hh_000205.html 16) https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001326007.pdf 17) https://www.mlit.go.jp/report/press/toshi05_hh_000 302.html 18) https://www.mlit.go.jp/river/bousai/timeline/ 19) https://www.ktr.mlit.go.jp/river/bousai/index00000043.html 20) https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/mytimeline/try/index.html 21) https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/ame_pu sh.html. 22) https://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/timline/ pdf/dai01kai_siryou.pdf 23) https://www.nishinippon.co.jp/item/n/632650/ 24) https://survey.gov-online.go.jp/h25/h25-bousai/index. html 25) https://survey.gov-online.go.jp/tokubetu/h27/h27-suigai.pdf 26) 有馬昌宏, 防災情報が必要な避難行動を惹起する ための条件と支援ツールの開発, 情報経営 第 79 回全国大会予稿集【春号】 (2019).

(9)

Table 1   過去 3 回のウェブ調査の概要 筆者の一人である有馬が主宰していた研究室が科学研 究費補助金の助成を受けて,2010年,2011年,2015年 の3回にわたって実施してきた防災意識と防災行動等 に関する全国ウェブ調査の結果を踏まえながら検討を 行う.  3回の全国ウェブ調査の概要については, Table 1にま とめてあるが, 3回の全国ウェブ調査は, 2010年調査が 「防災・災害避難意識と感染症拡大防止のための学級 閉鎖情報提供」 (科学研究費課題番号20310097), 2011
Tabel 2 3 回のウェブ調査のプーリングデータに対する自助防災対策の名義ロジスティック回帰分析の結果 3.2  災害リスク認識と行動との間のキャズム  住民によって災害リスクが認識されたからといって, その認識がソフト防災の実現へと直接的につながるわ けではない.  Table 1には,自助のソフト防災の対策として,対策 をとっているかとっていないかの2項選択方式で回答 されている「建物の地震保険加入」,「建物の火災保 険加入」,「家具の固定・転倒防止策の実施」,「非 常用食品・飲料の常備」,「携帯ラ

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