〈書評〉
首我謙悟著
『現代日本の官僚制』
東京大学出版会,
2
0
1
6
年
大 山 耕 輔
本書は,今年度本学会の著作賞を受賞した。著
者は,以前にも著作賞を受賞しており,さらなる
活躍が楽しみである。本書の書評会があちこち聞
かれたそうで,評者も2つほど参加させてもらっ
た。著者と直接意見交換できて,本書をよりよく
理解できるようになづたように思う。
本書の特徴は少なくとも
3
つある。
第 Aは,
I
現代日本の官僚制(国の官庁)
J
の現
状について,前半部の国際比較と後半部の日本の
統計分析により,すべて公開されたデータを用い
て明らかにしている点である。国際比較という点
では比較政治学(行政学)的な関心を呼ぶだろう
し,統計分析という点では因果推論の強力な方法
論を縦横に駆使している。分析の結果,現代日本
の官僚制の特徴を「統治の質は高いが代表性は低
い官僚制j と表現する。その表現は鋭く的確なの
だが,もう少し踏み込んで、,多元主義における官
僚制の役割についても議論してほしかったように
思う。
第二に,政治学・行政学二分論への批判である。
行政学を政治学と異なるものと捉えず,むしろ行
政(官僚制)に与える政治(選挙制度と執政制
度)の影響を積極的に捉えようとしている。 2章
「官僚制の政治学
J
あるいは3章「理論で捉える:
政治的産物としての官僚制jは,村松岐夫『行政
学教科書』の英語タイトルPoliticalAnalysis
i
f
Modern Public Administrationを初練とさせる。
政治学的に行政を捉えようとする京都大学の行政
学の伝統を引き継ごうという意欲を感じさせる。
ただし,批判された二分論に立つ行政学からは,
行政学のアイデンティティや行政のプロフエツ
ショナリズム(自律的責任論)が弱いのではない
か等の反論があるかもしれない。
第二に,モデルと分析枠組みがしっかりしてい
る。官僚制を,分立と統合の組織編成,および,
権限委譲の程度・人事への政治介入といった政治
統制と官僚制自身の技能形成の2つの柱で捉え
る。さらに,官僚制の規定要因(独立変数)であ
る政治制度を執政制度と選挙制度の2つの柱で,
また,官僚制の帰結・効果(従属変数)を統治の
質と代表性の2つの柱で捉えようする。
さらに,変数の測定や分類の工夫が見られる。
執政制度は議院内閣制と大統領制,選挙制度は,
多数代表制と比例代表制(拘束・非拘束)に分類
する。分立の程度は大臣数と省庁数を,統合の程
度は, OECDデータを参考にして,行政中枢の
機能の大きさ,規制・予算改革の程度を測る(た
だし相互の相聞は弱い)。権限の広さと技能・能
力の高さを「官僚制の質
J
と呼び,
2
つの専門家
サーベイ調査からの合成指標に基づいて測る。政
治任用については,上級管理職における政治任用
の程度を示す2つの指標と中級職以下も含む自由
任用の程度についての指標を用いる。いずれも
Web上の公開データを選択して使っている。
ただし,実際データにアクセスしたが,どの
データをどう合成して使ったのかよくわからない
ものもあった。できれば付録などでデータの合成
方法等を記録してもらえると再現性が高まるだろ
う。また,
I
官僚制の質」と「統治の質」が近い
印象がある。「統治の質」は 11の指標を因子分析
で抽出した第1因子とされ,第 2因子は代表性だ
が,どのような因果経路を辿って官僚制の質は統
治の質を高めているのか,より説明がほしかっ
た。このままだと,官僚制も統治の質も高いのに,
官僚制に対する市民の信頼は国際比較的に高くな
い理由がよくわからない。
官僚制と市民(社会)の関係が次作の課題だそ
うだが,どのような作品になるのか楽しみであ
る。著者の今後ますますの活躍と発展を期待して
いる。
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