【 特 集: 東京オリンピック・パラリンピック競技大会の持続可能性対策と資源管理 】
東京 2020 オリンピック・パラリンピック競技大会の
持続可能性と資源管理
荒 田 有 紀 *
【要 旨】 東京 2020 大会は,持続可能な開発目標をはじめとする世界共通の課題解決に貢献する。5 つの持続可能性の主要テーマを設定し,「持続可能性に配慮した運営計画」に基づく取り組みを進めて いる。資源管理分野においては,Zero Wasting を大目標に掲げ,資源を一切ムダにしない社会づくり に貢献する。紙製容器の使用等により世界的な課題である使い捨てプラスチックの使用削減を図る。調 達物品の 99 % の再使用・再生利用に向け,レンタル・リースの活用,財産管理・処分手続の整備,後 利用先の確保等を進めている。運営時廃棄物の 65 % の再使用・再生利用に向け,紙ごみや,従来は取 り組みが進んでいない事業系の混合廃プラスチックのマテリアルリサイクル等を進める。メダルや表彰 台等の物品に市民参加により集められた再生材を活用し,持続可能性への理解と行動を促進している。 これらが「持続可能な社会のショーケース」となり,国際社会の歩みの規範となるよう今後も取り組み を進めていく。 キーワード:持続可能性に配慮した運営計画,資源管理,Zero Wasting,使い捨てプラスチック,持続 可能な社会のショーケース1.東京 2020 オリンピック・パラリンピック競
技大会と持続可能性
1. 1 持続可能性に配慮した大会に向けての基本理念 東京 2020 オリンピック・パラリンピック競技大会 (以下「東京 2020 大会」という) は,1964 年大会開催 後に東京を再び開催都市として開催されるオリンピッ ク・パラリンピック競技大会となる。 この間,東京,日本,世界の状況は一変した。2050 年には 100 億人に近い人口となるとされる地球の社会に おいて,長寿化,都市化および物質的な飽和が進む中で, 今以上に社会の仕組みと人間が地球環境と調和し,他人 を尊重しながら共生する社会を実現させていかなければ ならない。 世界では,誰も取り残されない社会の実現を掲げる持 続可能な開発という共通の目的に向け,さまざまな主体 が連携しながら,これまでの社会経済活動のあり方を変 革しようとしている。 このような世界における取り組みの中で,オリンピッ ク・パラリンピックムーブメントへの持続可能性の統合 も 図 ら れ て き た。国 際 オ リ ン ピ ッ ク 委 員 会 (以 下 「IOC」という) は,2014 年に「オリンピック・アジェ ンダ 2020」において,オリンピック競技大会のすべて の側面と,オリンピック・ムーブメントの日常業務に持 続可能性を組み込むことを定めた。2015 年の国際連合 の「持続可能な開発のための 2030 アジェンダ (SDGs)」 では,スポーツが持続可能な開発を可能にするための重 要な役割を担うことが示されるとともに,2016 年の 「IOC 持続可能性戦略」において SDGs への貢献を具体 的に示した。この持続可能性に向けた大きな動きの中で, 東京 2020 大会には,世界中の関心が集まっている。 (公財)東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織 委員会 (以下「組織委員会」という) は,社会が東京 2020 大会に期待する役割を自覚し,東京 2020 大会を通 じて,環境・社会・経済の側面に日本・東京が統合的に 取り組む姿を世界に示すとともに,東京 2020 大会の取 り組みが,レガシーとしてパリ大会,ロサンゼルス大会 等の将来のオリンピック・パラリンピック競技大会やメ 原稿受付 2020. 3. 31 * (公財)東京オリンピック・パラリンピック競技大会 組織委員会 総務局 持続可能性部 連絡先:〒 104-6119 東京都中央区晴海一丁目 8 番 11 号 晴海アイランド トリトンスクエア オフィスタワー Y19 階ガスポーツイベントに,さらに広く日本・世界に継承さ れ,多様に発展されることを目指している。 1. 2 東京 2020 大会の持続可能性の主要テーマ 東京 2020 大会で取り組む持続可能性の体系について は,大会準備の早期段階である 2015 年から,外部有識 者が加わった「街づくり・持続可能性委員会」における 議論を元に,検討を重ねてきた。 検討の過程において,組織委員会は,SDGs の採択等 の持続可能性に関する世界的動向や,東京 2020 大会に 関連するさまざまな利害関係者からの期待,過去大会の 経験等を踏まえ,「気候変動」「資源管理」「大気・水・ 緑・生物多様性等」「人権・労働,公正な事業慣行等」 「参加・協働,情報発信 (エンゲージメント)」の 5 つを 持続可能性の主要テーマに設定した (図 1)。 また,組織委員会は,「持続可能性に配慮した運営計 画」を策定 (第一版 2017 年 1 月,第二版 2018 年 6 月) し,大 会 の 持 続 可 能 性 の コ ン セ プ ト を「Be better, together /より良い未来へ,ともに進もう。」に定める とともに,上記の主要テーマにおける具体的な目標とそ れに向けた施策を取りまとめ,具体的な取り組みを進め ている1,2)。 さらに,東京 2020 大会の準備・運営段階の調達プロ セスにおける持続可能性の配慮を行うため,組織委員会 が調達する物品・サービスおよびライセンス商品を対象 とする「持続可能性に配慮した調達コード」を 2017 年 3 月に策定し,運用するとともに,2018 年 4 月からは, その不遵守に関する通報受付窓口も運用している。 これらの取り組みの結果の報告については,進捗状況 報告書 (2019 年 3 月) や,大会前報告書 (2020 年 4 月) および大会後に公表される持続可能性報告書等により行 う3,4)。 1. 3 持続可能性マネジメントシステム 1.3.1 ISO20121 の導入 東京 2020 大会を持続可能性に配慮した大会にしてい くための取り組みを効果的に進めるためには,PDCA (Plan:計 画,Do:実 行,Check:評 価,Act:改 善) サ イクルにより運用状況を継続的に改善していくことが重 要である。そのため,組織委員会では,イベントの持続 可能性に関するマネジメントシステムである ISO20121 に則したマネジメントシステムを導入している。 2019 年 10 月には,組織委員会のマネジメントシステ ムが ISO20121 の規格に則して有効に運用されているこ とが確認され,第三者認証を取得した。 1.3.2 ISO20121 導入の意義 ISO20121 の導入の効果として,ISO20121 に従った帳 票の整備により,大会準備・運営における法的義務に対 する対応漏れ等の潜在的リスクの低減があげられる。次 に,ISO20121 導入を宣言することにより,持続可能性 の取り組みに関する組織内への浸透が進んだ。また,組 織委員会が構築した ISO20121 マネジメントシステムが 第三者認証を受けたことにより,大会の持続可能性に関 する対外的な発信力の向上にも寄与している。 出典:文献 4) 図 1 5 つの主要テーマとその大目標
組織委員会による ISO20121 の第三者認証の取得は, イベントにおける持続可能性の取り組みについての認知 向上にも繋がっていると思われる。今後,国内外で開催 される国際的なスポーツイベントをはじめとするさまざ まなイベントにおける持続可能性への取り組みが定着し ていくことを期待している。
2.東京 2020 大会の資源管理
2. 1 概要 東京 2020 大会では,Zero Wasting (資源を一切ムダ にしない) を大目標と定め,サプライチェーン全体で資 源をムダなく活用し,資源採取による森林破壊・土地の 荒廃等と,廃棄による環境負荷をゼロにすることを目指 して,全員で取り組んでいる。大会では,図 2 に示すよ うに資源の循環・環境への負荷低減を意識した概念のも と,使用する物 (インプット面) と大会後の後利用 (ア ウトプット面) について優先順位の考え方を定めている。 インプットの面では,資源の有効な利用等,持続可能性 に配慮した物品の調達を進めており,資源循環を促進す るさまざまなプロジェクトに取り組んでいるところであ る。アウトプットの面では,大会後を見据え,大会で 使用した物品等の再使用・再生利用に取り組んでいる (図 3)。 資源分野の専門家と行政機関で構成した資源管理ワー キンググループでの議論を経て,大会では 10 の個別目 標を設定し,大会に向けて準備を進めているところであ る (表 1)。 2. 2 使い捨てプラスチック対策 一度使用して廃棄されるワンウェイのプラスチック容 器包装・製品については,海洋ごみによる生態系への影 響等が懸念され,世界的にも対策が進んでいる。東京 2020 大会では,観客への食事の提供において,レジ袋 の配布抑制や紙袋への代替,紙製容器の使用等により, 出典:文献 4) 図 2 資源管理分野の重要な要素の概念図 出典:文献 4) 図 3 資源管理分野における優先順位の考え方使い捨てプラスチックの使用削減を計画している。使い 捨てプラスチックの代替品である紙製容器等も,使用後 はリサイクルを計画している。レジ袋対策として,オ フィシャルショップでは,リサイクル可能な紙袋を利用 することで,レジ袋削減に取り組む予定である。選手村 の飲食提供においては可能な限りのリユース食器の導入 を計画しているが,リユース食器の使用ができない場合 も,リサイクル可能な紙製等の食器を使用し,使用後は 再び紙資源等としてリサイクルするなど,使い捨てプラ スチックの使用削減と代替で使用した物品のリサイクル により,3R を推進する。このような取り組みを通じ, 社会への啓発に貢献したいと考えている。 2. 3 調達物品の再使用・再生利用 調達物品については,定めた数値目標の達成に向け, 再使用・再生利用に向けた取り組みを進めている。物 品・サービス等の調達については,可能な限りレンタル やリースを活用し,シェアリングを推進している。また, 購入した物品は,再販等の実施,国,自治体,スポン サー等と連携しながら後利用先を確保するなどして再使 用・再生利用を追求している。 仕組みの面では,組織委員会では,持続可能性の観点 も含め,適切な財産の管理と処分を実施するための基本 的事項を定めた「財産管理処分規程」を策定した。この 規程のもと,調達物品の管理および処分の具体的な事務 手続を示した「財産管理処分マニュアル」を策定し,ア セットトラッキングシステム (ATS) を用いた調達物 品の管理および円滑な処分に関して総合的な方法を示し, 運用している (図 4)。加えて,組織委員会における調 達物品の管理および処分に関する方針,ならびに処分方 法および処分先等の重要な事案を審議する財産管理処分 委員会を設置し,調達が決定してから早期に処分先も決 定することとし,調達物品の適切な管理および円滑な処 分の実現に努めている。これら調達物品の処分に関する 組織体制および ISO20121 (イベントの持続可能性に関 するマネジメントシステム) に沿って構築した仕組み等 表 1 資源管理分野の目標 出典:文献 4) 目 標 インプット側 アウトプット側 人 間 ・ 社 会 活 動 の 側 面 リデュース 1 . 食品ロス削減 (食品廃棄物の発生抑制)2 . 容器包装等削減 3 . 調達物品のレンタル等活用による新規物品製造削減 リユース 3 .調達物品の再使用 (レンタル・リースの活用,使用後の再使用)・再生利用(目標値:調達物品の再使用 (レンタル・リース含む)・再生利用率:99 %) リサイクル 4 . 再生材の利用 5 . 入賞メダルへの再生金属利用 6 . 運営時廃棄物等の再使用・再生利用(目標値:運営時廃棄物の再使用・再生利用率:65 %) 7 . 食品廃棄物の再生利用 8 . 建設廃棄物等の再使用・再生利用 (目標値:新設会場の建設廃棄物の再資源化・縮減率 99 % 以上,建設発生土の有効利用率 99 % 以上) 地球環境保全の側面 9 . 再生可能資源の持続可能な利用 (木材等) 10. 環境中への排出の削減(埋立処分量,廃棄物由来 CO 2の削減) 出典:文献 4) 図 4 アセットトラッキングシステム (ATS) による物品の管理業務フロー
により法令等のコンプライアンスを確実に担保し,持続 可能な資源管理を進めている (図 5)。 なお,行政機関との共同実施事業により調達する物品 については,東京都と連携し,できるだけリユースが進 むよう,実施に向けた調査を行っている。 2. 4 運営時廃棄物の再使用・再生利用 組織委員会において「運営時廃棄物の適切な分別及び 再資源化に関する方針」を策定している。競技会場,選 手村,IBC/MPC (国際放送センター/メインプレスセン ター) 等から排出されるごみ・資源は,本方針を基本と して,適切に分別および再資源化することで,再使用・ 再生利用率 65 % の目標達成を目指している。再資源化 しないものについても,熱回収を行うなど,資源循環に 寄与する方法で適正処理を行う。日本全体の産業廃棄物 の再生利用率は約 53 % (環境省,2016 年度実績。RPF 化は再生利用に含まれ,焼却は再生利用には含まれてい ない) であり,東京 2020 大会ではそれよりも高いレベ ルの目標を設定し,取り組んでいる。 東京 2020 大会では,従来競技会場等で使用されてき た使い捨てプラスチックの代わりに,紙製等の容器等を 積極的に使用する予定である。多くの競技会場ではこれ まで,観客等から排出される紙ごみは焼却されてきたが, 東京 2020 大会では,紙ごみがトイレットペーパーとし て生まれ変わるよう,難再生紙リサイクル施設における リサイクルに取り組む。 食品関連では,飲食提供事業者と協力し,ポーション コントロール等の食品ロスの抑制に効果的かつ実効可能 な取り組みの推進,ICT 技術も活用した飲食提供数の 予測・在庫の適正化・調理数のコントロール等に最大限 取り組む計画である。その上で排出される食品廃棄物に ついても,食品循環資源の再生利用等の促進に関する法 律 (食品リサイクル法) の考え方に沿って,再生利用を 行う。 廃プラスチックについては,分別排出を確保し,その 上で都内の会場においては,東京都と連携し,マテリア ルリサイクルに取り組み,資源として再生する。マテリ アルリサイクルでは,リサイクル施設において,破砕, 洗浄され,ポリエチレン,ポリプロピレン等のプラス チック材料ごとに自動選別された上で,再生プラスチッ ク製品に生まれ変わる。都外の会場においても,可能な 限り焼却による熱回収を進め,埋立処分を回避する。日 本では廃プラスチックを選別・資源化する技術が確立さ れているにもかかわらず,これまで事業系の未分別混合 廃プラスチックについて,国内でマテリアルリサイクル されることは限られていた。東京 2020 大会で,ここに チャレンジしていくことは,日本のプラスチックリサイ クルの発展においても意義があると考えている。 2. 5 大会の施設・物品における再生材の活用と市民参加 東京 2020 大会では,建設資材や調達物品等において, 再生材の活用を進めている。大会における持続可能性に ついて,多くの人々が参加できるプロジェクトを推進し, 参加と体験の共有ができる機会を設けることで,国内外 における大会への結びつきと,持続可能性への理解を深 め,持続可能な社会の構築に向けた自発的な行動が根づ くよう取り組んでいる。 2.5.1 「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェ クト」 金属資源の供給に関しては,途上国における不適正な 天然資源の採掘や廃棄物からの有用金属の抽出等に伴う 環境破壊等の懸念もあり,資源の持続可能な利用という 観点から,使用済み製品に含まれる有用金属については, 回収,リサイクルし,循環的に利用することが重要であ る。そのため,組織委員会では,日本全国で参画し,東 京 2020 大会で選手に贈られるメダルを製作する「都市 鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」を実施 した (図 6)。 本事業は,(株)NTT ドコモ,(一財)日本環境衛生センター, 環境省,東京都とともにプロジェクトを推進し,使用済 み携帯電話等の小型家電等から抽出したリサイクル金属 から,オリンピック・パラリンピック合わせて約 5,000 個のメダルを製作するものである。市民から回収したリ サイクル金属ですべてのメダルを製造することは,オリ ンピック・パラリンピック競技大会史上初の試みである。 2017 年 4 月から 2019 年 3 月までを回収期間とし,参 加事業者,大会パートナー,各省庁,全国の自治体,郵 便局,商工会等の 18,000 カ所以上で回収を実施した。 多くの方々に参画いただいた結果,以下のとおりメダル 製作に必要な金属量を確保することができた。プロジェ クトへの参加市区町村は全国の 9 割を越えるなど,使用 出典:文献 4) 図 5 財産の管理および処分の実施体制
済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律 (小型 家電リサイクル法) の定着にも貢献した。 環境省では,本プロジェクトのレガシーとして,2019 年 4 月から自治体,小型家電リサイクル認定事業者等と 連携し,「アフターメダルプロジェクト」を開始した。 小型家電等を回収する自治体の支援や,普及・回収促進 イベントの開催等を行うことで,都市鉱山の活用,そし て循環型社会の推進を図っている。組織委員会としても 東京 2020 大会のレガシーとして引きつづき取り組みが 定着するよう,広く発信していく。 2.5.2 「日本の木材活用リレー 〜みんなで作る選手村 ビレッジプラザ〜」 「日本の木材活用リレー 〜みんなで作る選手村ビ レッジプラザ〜」は,全国 63 自治体から無償で借り受 けた国産木材を使用して選手村ビレッジプラザを建築し, 大会後に解体された木材を各自治体の公共施設等でレガ シーとして活用していただくものである。 選手村ビレッジプラザは,チーム歓迎式典が行われる ほか,店舗,カフェ,メディアセンター等が配置される 選手村の代表的な施設である。各地域の木材を建物のさ まざまな箇所に使用することで,多様性と調和を表現す るとともに,環境負荷の低減を図っている。 2.5.3 「使い捨てプラスチックを再生利用した表彰台プ ロジェクト 〜みんなの表彰台プロジェクト〜」 東京 2020 大会では,国内から集める使用済プラス チックの再生利用を基本に,海洋プラスチックも一部活 用して表彰台を製作する「使い捨てプラスチックを再生 利用した表彰台プロジェクト 〜みんなの表彰台プロ ジェクト〜」を P&G 社の協力のもと,実施している。 市民が参画して使用済みプラスチックを回収し,表彰 台を製作するプロジェクトは,オリンピック・パラリン ピック史上,東京 2020 大会が初めてとなる。このプロ ジェクトは,2019 年 6 月から 2020 年 2 月まで,家庭等 で使用済みとなったプラスチックの空き容器を,全国の 小売店舗や学校等で回収した。また,大会後の活用につ いても検討を進めている。 近年,プラスチックの処理や海洋プラスチック汚染が 大きな課題となる中,本プロジェクトに取り組むことに より,資源をムダにしない持続可能な社会の実現に向け た,使用済みプラスチック活用の新しいモデルを国内外 に発信していく。 2.5.4 その他の大会で使用する物品における再生材の 活用 (1) トーチ (聖火リレー) オリンピックトーチ・パラリンピックトーチには,復 興への想いと持続可能性への配慮を込めている。トーチ の素材の一部には,東日本大震災の復興仮設住宅のアル ミ建築廃材を再生利用し,約 30 % の再生アルミを含有 している。人々の生活を見守ってきた仮設住宅が,平和 のシンボルとしてオリンピックトーチに,人と人の新た な出会いが生まれるパラリンピック聖火リレーのトーチ に姿を変え,一歩ずつ復興に向けて進む被災地の姿を世 界に伝えたいと考えている。 (2) ユニフォーム 東京 2020 オリンピック聖火ランナーのユニフォーム には,コカ・コーラ社の協力により,同社内で回収した ペットボトルをリサイクルした素材を用いている。また, 東京 2020 大会のユニフォームは,さまざまな年代,性 別,国籍の方々が快適に活動できるよう,「暑さ対策・ 持続可能性・多様性」の 3 つの観点から開発した。この ユニフォームが,大会期間中キャスト†としての一体感 を醸成するとともに,大会全体の雰囲気を盛り上げてい くことを期待している。 ユニフォームの各種アイテムは,再生ポリエステル材 や植物由来材を多く取り入れており,また,一部のアイ テムの包装材には焼却時に CO2を吸収する素材を使用 するなど,さまざまな観点から環境への配慮を取り入れ ている。 †キャスト:フィールドキャスト (大会スタッフ) およびシ ティキャスト (都市ボランティア) 出典:文献 4) 図 6 みんなのメダルプロジェクトを通 じて製作される東京 2020 オリン ピックメダル (上) と東京 2020 パ ラリンピックメダル (下)
3.持続可能な大会の実現とそのレガシー
3 月 24 日,まさに大会 4 カ月前に,2020 年夏の開催 が延期となった。今回の延期は,観戦を楽しみにしてい た方々,また今夏の開催に向け多大なるご協力をいただ いていた市民・企業の方々に不安と負担をおかけした。 3 月末現在も新型コロナウイルスによる被害が世界で拡 大している中で,この決定はやむを得ず,ご理解いただ ければ幸いである。 東京 2020 大会は,社会の持続可能性の重要さの認識 を高め,持続可能な社会構築への行動を後押しする機会 となる。これまで述べてきたとおり,大会では持続可能 な社会の実現に向けてさまざまな取り組みを進めてきた。 資源管理の側面では,リユース・リサイクル率等に高い 目標を掲げるとともに,都市鉱山から製作するメダルや 使い捨てプラスチックを活用した表彰台等,日本独自の 市民参画型の取り組みも進めてきた。2021 年への延期 は,“持続可能な社会のショーケース”となるこれらの 取り組みを着実に進め,将来に向けた歩みの規範として 国内外に知っていただく期間を得たと前向きに捉えたい。 全人類が直面している新型コロナウイルスの問題を乗り 越えた先に,新しい希望の聖火を灯し,持続可能なス ポーツの祭典が実施できることを期待する。 【謝辞】 大会の持続可能性および資源管理の取り組みにあ たり,多大なご協力をいただいた東京 2020 大会の 街づくり・持続可能性委員会関係者および資源管理 ワーキンググループ関係者の皆様に,この場を借り て深く感謝申し上げたい。 参 考 文 献 1 ) (公財)東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委 員会:持続可能性に配慮した運営計画第一版 (2017) https : //gtimg.tokyo2020.org/image/upload/producti on/djxrizvwyaczc8mr7njn.pdf (閲覧日 2020 年 3 月 31 日) 2 ) (公財)東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委 員会:持続可能性に配慮した運営計画第二版 (2018) https : //gtimg.tokyo2020.org/image/upload/producti on/hbjzzcqpag0pjlykgx0z.pdf (閲覧日 2020 年 3 月 31 日) 3 ) (公財)東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委 員会:持続可能性進捗状況報告書 (2019) https : //gtimg.tokyo2020.org/image/upload/producti on/rrjiabxddvwiucm2ie9o.pdf (閲覧日 2020 年 3 月 31 日) 4 ) (公財)東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委 員会:持続可能性大会前報告書 (2020) https : //gtimg.tokyo2020.org/image/upload/producti on/g3luun9rmscgrxmlnadr.pdf https : //gtimg.tokyo2020.org/image/upload/producti on/hmdliqgxhxh5nghtl3ge.pdf (閲覧日 2020 年 4 月 30 日)Sustainability and Resource Management in Olympic and Paralympic Games Tokyo 2020
Yuki Arata
Sustainability Department, Administration Bureau, The Tokyo Organising Committee of the Olympic and Paralympic Games (Harumi Island Triton Square, 1-8-11 Harumi, Chuo-ku, Tokyo 104-6119 Japan)
Abstract
We have pledged to make the 2020 Games a positive force for developing solutions to humanityʼs universal challenges, including SDGs. We have identified five main themes for prioritising sustainability at the Games and for carrying out initiatives under the Games Sustainability Plan. “Zero Wasting” is one of the goals set for resource management at the Games, helping pave the way toward creation of a society where resources are fully utilised through their entire lifecycle. We are also undertaking initiatives to increase use of recyclable paper containers to reduce single-use plastics, a menacing global issue. We aim for a 99 % target rate for reuse/recycling of procured items by establishing a set of rules for management and disposal that will enable further reuse and recycling after the Games. In order to achieve the 65 % target rate for waste recycling during operation, we will promote material recycling of paper waste and mixed-plastic waste from businesses, for which domestic material recycling has been limited until now. We actively used recycled materials collected through civic participation actions for medals, award podiums, etc. to raise awareness among the public about sustainability. By carrying out such initiatives, aimed at showcasing a sustainable society, we hope to present a shining example that identifies a new way forward.
Keywords : Tokyo 2020 Games Sustainability Plan, resource management, Zero Wasting, single-use plastics, showcasing a sustainable society