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プロポリスはどこから来るのか

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ミツパ テ科 学 19(2):73-80 HoneybeeScience(1998)

プ ロポ リスはど こか ら来 るのか

プロポ リスと人 との接点 の うち ミツバチが含 まれない場面での, しか し人間にとってよ り関 心 の高 い場面でのこの何年 かの研究の進展 には 目を見張 るものがある.本誌本号 の松番の記事 に もあるよ うに, プロポ リス研究の大半をその 成分 と効果 につ いての研究 が 占め る (Marc u-cci,1995;ChengandWong,1996).プロポ リスか らはつ ぎつ ぎに新 たな成分が単離 され, そのさまざまな生理活性 が確かめ られている. 少 し前 までは養蜂家 にとって も厄介者で しかな か ったプロポ リスに対す る世間の フィーバーぶ りは, ミツバチの研究をする私 たちにとって多 少面 はゆいような印象を与えることさえある. そんな私たちに一般 の消費者か らごく素直な 問 いか けが寄せ られ る.「プロポ リスってなん ですか

?

」 この問 いへ の回答 には多少苦慮 す る.ハチ ミツや ローヤルゼ リーと異 な り, プロ ポ リスは成分 も多岐にわたるので とらえどころ がないが, それ以上 にそ もそ もそれが ミツバチ にとってどうい うものなのか推測の域 を出ない 部分が多す ぎる.同時に消聖者がおぼろげにつ かんでいるプロポ リス像 には研究者が提供で き る情報 の少 なさが反映 しているに違 いない多 く の誤解 を兄いだせ る. ミツパテが ローヤルゼ リーのよ うにプロポ リ スを 「作 る」 と考 えている人が多 い.かつては ミツバ チの排植物 と考 え た人 もいたが (1907 年 に ドイツのKustenmacherが プ ロポ リスは 消化後 の花粉殻 由来 とす る説 を出 している), 分泌物であるとい う人 は未だに多 い (唾液を混 入 させ るという記述が誤解を招 くのか も知れな い).効果 の多様 さか ら- チ ミツとローヤルゼ リー と蜂 ろ うの混合物 だ と思 って いた人 もい

中村 鈍

る.あるいは広告 にあ ったのを字義通 りに解釈 したのか ミツバチその もののエキスだ と考えて いた人 さえいた. 大 きな市場規模 にな っているのに,そのもの 自体 を表現す る情報があまりうま く伝わ ってい ないのは問題があるといえ るだろう. そこで 「人 にとってプロポ リスとは何か」 と いうどち らか といえばすでに回答 の予想 された 問 いに対 してで はな く

,

「ミツバ チに とって何 であろうか」 という問いに答えることで,読者 のプロポ リスへの理解 を深 めることがで きると 考えた. 同様 の試 みはMorse(1996) もBee Culture誌で行 っているが, 最近 プロポ リスを 研究のテーマとしている立場か ら, より深 く, ミツバチとプロポ リスの関係 について, これま での様々な研究 に基づいてまとめてみ ることに した.

プロポ リスは何から作 られるか

まず, ミツバチの分泌物でないとすれば, プ ロポ リスは何 らかの原料 を もとに して作 られ る とい うことになる. これが植物由来であること は実 はかな り古 くか らわか っていたよ うだ.莱 際に ミツパチが植物の樹脂 (多 くの場合,落葉 広葉樹,特 に尾状花頬の芽の疹出物であ り,松 ヤこのような樹脂を想像 しない方が間違 いがな いが,本誌のMalaspinaandPalmaの記事中 の図のよ うに樹皮の裂 け目か ら出る樹液様 の樹 脂を集めることもある) を利用 しているとい う 記述がい くつかある.最初の詳細な観察 として 評価 されるのは ミツバチの観察では著名 な盲 目 のナチュラ リス ト,フランシス ・ユベールFra -ncis Huberの 「ミツバチについての新 しい観

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察」(1792,1814)である.彼 は妻やめい,そ し て とりわけ助手 の フランシス ・ブルネ ンFr an-cisBurnensの目を通 じて ミツバチをあ らゆる 角度でつぶさに観察 し,私たち健常者のRがい かにただの節穴であるかを思 い知lらせ るほどに 詳細な記録 を残 している.その第2巻 (1814) に, もともとは巣 の色がなぜ黄色 くなるのかを 知 るために, ポプラの芽を巣箱 の前 に置 き,そ こに来て芽の鯵出物 (ねばねば した分泌物)杏 集 めて持ち帰 り,巣の中でそれを使 う ミツパテ の行動 を細 か に観察 した くだ りが あ る.ただ し, ここですでにポプラが プロポ リスの原料 と なることを彼が知 っていた ことには注意 してお きたい.彼 は 「ポプラの漆山物 を花粉 か ごにつ けて帰 った蜂が巣板の上方 にとまり,他の働 き 蜂がプロポ リス塊 をか じりとり,巣枠 の上や巣 箱 の内壁 に付着 させ るが,一部 は巣房の

L

Pに も 持 ち込 まれる.他 の蜂が巣房の中に入 り戻 りな が ら大顎で これを糸状 に引 きのばす. これを繰 り返す うちに巣房壁が, そ して最終的には巣房 口がプロポ リスで覆われ る. また,新 しい巣板 が完成す るとす ぐに最上段 の巣房を壊 して代わ りに蜂 ろうとプロポ リスを混合 して杵 を作 る」 などと記述 している.残念 なが ら彼が期待 した 巣の着色 は花粉 由来 であることがわか ったが, この実験 を通 じて,彼 は ミツパテによるプロポ リスの植物原料 の利用の実態を的確 に捉えるこ とに成功 している. 前半 の部分の, ミツバチが疹出物を花粉か ご につけて持 ち帰 ること,それを自分ではな く, 他の働 き蜂 によってはず して もらうのは確かに そ の よ うに観 察 で き る.Mayer(1956)や Kanig (1985)も同様 の観察を している.季節 に もよるが,巣箱の蓋を開 けたまま観察 してい ると,黄色 い,あるいは褐色の鯵出物 の塊 を花 粉か ごにつけて帰 って来 る働 き蜂が巣枠の上 に 現れるのを見つ けることもそれほど難 しくはな い (図 1). ミツバチは,植物 の芽 の疹出物を巣 に持ち帰 る. これは明 らかである. 芽の漆出物 とは何か ここで,持 ち帰 られる疹出物 とは何 ものなの 図1 ポプラの芽の疹出物 (上)と その疹出物を持ち帰った働き蜂 かに触れてお きたい. ポプラがプロポ リスの原 料 となっているという記述 は,Rosch(1927) やLavie(1960;1973)に も見 られる.植物柘 とい う点では,Crane(1990)が 67種 の植物 を リス トに しているが,中で もポプラの属す る - コヤナギ属, カバ ノキ属, ニ レ属,ハ ンノキ 局, ブナ属 が 中心 で あ る と報 告 され て い る (Cizmarik eta1.,1972;Ghisalberti,1979; Greenaway eta1.,1988;Bankova eta1., 1991). ヨーロッパでは特 に- コヤナギ属 とカ バ ノ キ 属 の 利 用 が 一 般 的 で あ る (Crane, 1990). 実際に ミツバチが木の芽で疹出物を集 めている写真 もかな り撮影 されているし, ヨー ロッパではポプラの芽の疹出物の軟官 さえ販売 されているので (Hausen and Wollenweber, 1988), 順序がどち らが先かは定かではないが ポプラ自体への認識 も高 く,巣箱のlJ」のプロポ

リスの匂 いか らその もとが ポプラであるとい う こともわかるらしい.

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この疹出物が確かにプロポ リスの原料 とな っ ているのか どうかは,多 くの研究者 によって化 学的に証明されている.Lavie(1960)はポプ ラとプロポ リスの双方 に共通の成分を兄 いだ し た. プロポ リスの成分が調べ られ,大半が フェ ノール化合物であり (Ghisalberti,1979),特 に特徴的に含 まれ るフラボノイ ドが植物由来で あるに もかかわ らず糖鎖 を持たないアグ リコン であることがわか って きた(Jaubert,1926;滝 野 ・持田, 1982).一般 に植物 はフラボノイ ド 類を細胞質中に含んでお り, そのため通常 は水 溶性の高 い配糖体 になっている. プロポ リス中 の フラボノイ ドがアグ リコ ンなのは, ミツバチ が酵素 によって糖鎖 をはずすか らという仮説 も あったが,実際には,配糖体 にはな らない成分 も多 く,植物 の中で そ う した ア グ リコ ンを生 産 ・分泌す る器官があることもわか り,それを ミツバ チが集 め て い る こ とが確 か め られ た (Lavie,1975). い くつかの特異的な成分がプ ロポ リスと植物 の芽 の惨出物 の双方 に兄いださ れ (Rosch,1926;Lavie,1960).さらに,化学 的な分析手法の発達 によ り,双方 に見 られ る成 分比 (プロファイル)が相似的であることなど が決め手 とな ってい くっかの植物がプロポ リス の原料植物 とな っていることが確認 されている (Marinescu and Tamas, 1980;Marletto,

1983;Bankova et al.,1989;1992;1994, Greenawayeta1.,1987;1988;1990). こう した成分の分泌器官 は特定 されてお り (Curtis and Lersten,1974;Fahn,1979;1986), シ ラカンパの若 い葉 にあるデ ィスク状の分泌腺が プ ロポ リス中に見つか ることもあ る (Warak一 〇mskaandMaciejewicz,1992).っま りミツ バチが こうした組織 の分泌物 を集 めていること はその点か らも確認できて いる. ところで植物 に してみれば, こうしたフラボ ノイ ドなどフェノール化合物 を何 のために作 っ ているのであろうか. ポプラでは,芽 の内側の 托葉が分泌部位で,その疹出物 にはク リシン, ガランギ ン, ピノセ ンブ リンなどプロポ リス中 に含 まれる成分があ り, これ らはその抗菌性か ら越冬中の芽を微生物か ら守 ると推測 されてい 75 る (Eggerand Tissut,1968;Wollenweber andEgger,1971).一般 にフラボノイ ド類 は, テルペノイ ドや他のフェノール化合物同様,動 物 による芽や葉の食害を防 ぐのに役立 ち (Har -borne, 1977; Wollenweber and Dietz,

1981), また紫外線の影響 を軽減 した りと,植 物の芽 にとっての防御物質 とい う位置付 けにな

っている.

植 物 の種 に よ って 疹 出物 の成 分 は異 な り (WollenweberandEgger,1971), この疹出 物中の成分 プロファイルは植物 の化学分類 のた めに利用す ることさえで きる (Greenaway et a1.,1991).またシラカ ンパの一種では季節 (あ るいは生長 ステージ)によって成分 に変動があ る (Poprakov,1976).っま りプロポ リスの原 料が植物資源であるということは,産地や採集 時期 によってプロポ リスの成分が変わるという ことである (Ghisalberti,1979;Greenaway, 1987;Bankovaeta1.,1992,Konig,1985). Johnsonetal.(1994)は成分の地域間差 は大 きいが,季節や巣箱間の差 は小 さか ったとして いる. しか し,大滞 (1997)の 3年間の研究で は,季節変動 も巣箱間の変動 も明確 に現 れてい る. これはその ミツバチの置かれた環境,特 に 周囲の植生が大 きく影響 を及ぼす ものと考え ら れ る. ミツバ チは原料を どう扱 うのか ミツバチが花粉か ごにつ けて持ち帰 ったプロ ポ リス原料の塊 は,仲間の働 き蜂,特 にここで はプロポ リスを必要 な場所 に運ぶ働 き蜂 によっ て花粉 か ごの上 か らか じりと られ る (Mayer, 1956). もちろんすべてがす ぐに必要 な場所 に 運ばれるわけではないよ うで巣房の縁や中にと りあ え ず 置 い て あ る こ と もあ る (Marletto andOlivero,1981).どのように使われている かには, い くつかの観察 とそれに基づ く種々の 推論があるが,実質的には持ち込 まれた ものが そのまま使われていると考 えて差 し支えないよ うだ (McGregor,1952).原料 に対 して ミツパ テは唾液を混入 させ るが (Donadieu,1987), これについてははっきりした証拠 はまだ提示 さ

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れていない.一般 に唾液 を混ぜて プロポ リスを 作 るという表現がなされ るが,それが 「加工

と呼べる程 かどうかは定 かでない.唾液腺 とプ ロポ リスか ら同 じと思われる成分が クロマ トグ ラム上 に見 られ るので, 口器を使 うか じりとり や隙間への充填作業を通 じての唾液の混合 はほ ぼ間違 いないが,その働 きは不明である.前述 したよ うにかつては配糖体の フラボノイ ドか ら 糖鎖をはずす働 きがあると想像 されていたが, 原料の状態ですでにフラボノイ ドが配糖体でな いことが明 らかにな ったので, この作用の必然 性 はない.酵素的な機能 よりも可塑剤的な機能 の方がよ り重要か と考 え られる. 一方,成分的に多 く入 る蜂 ろうは, プロポ リ スの増量剤 と考えて もよ く,原料が少 ないとき には混合比率が大 きくな る(Mayer,1956).ま たその比率 はプロポ リスの見かけに大 きく影響 していて,蜂 ろ うの混入率が高 いとざ らざ らし た感触 にな り,低 いと植物の疹出物そのままの ねばねば した ものか, アメ状 に固 まった ものに なる. ミツパ テ はプ ロポ リスを何 に使 うのか さてその実際の用途であるが,巣材 としての 利用 と防御 に関係 していると考え られている. 性質的には物理的な もの と化学的な ものとに大 別 され る. 物理的な用途 として, Mayer and Ulrich(1952)は嫡用の蓋 と違 い気密であるこ とが重要な蜜蓋 に塗 り込 む としている.巣 の中 の隙間や小 さな穴をふさいだ り,巣の木枠や天 井 への接合部位 を補強す るとか, あるいは巣箱 の巣門を小 さく閉 じるといった用途 に使 うのは 多 くの人々の目に触 れて いる (Haydak,1954; Ghisalberti,1979;Ruttner,1986;Tribeand Fletcher,1977はか). オオ ミツバチで も巣の 接合部 をプロポ リス様の植物樹脂で補強す ると 報告 されている (Akratanakul,1986).ジン バ ブェで はま るで スズメバ チの巣 のよ うな形 に, プロポ リスの外皮 に覆われた ミツバチの巣 が 見 つ か って い る (Papadopoul0,1987). Chauvin (1992)は作 りか けの巣板 の縁 に塗 ってそれ以降の造巣を中断 させ る働 きがあると している. 化学 的用途 は成分 の性質 か ら類推 されて い る.含 まれるフラボノイ ドの抗 カ ビ効果 (Lyr, 1961)や,抗菌性 (Marcucci,1995),アメ リ カ腐岨病菌やカ ビに対す る成長抑制効果 (Li n-denfelser,1967)など,各成分の生理活性がか な り広 く確認 されている. こうした効果 に基づ いて,Akopyan(1970)など多 くの研究者が, 巣房や巣全体 に塗 り込 め られたプロポ リスが腐 姐病菌やそれ以外の微生物 に対す る静菌 ・殺菌 効果があ り,細菌の繁殖 に適 した環境であるは ずの ミツバチの巣の中が清潔に保たれているの だ としている.ただ, ここでや っかいなのはア メ リカ腐姐病である. プロポ リスで巣内を抗菌 的に保てるはずのセイ ヨウ ミツバチにとって こ の病気 は最 も重大 な災厄である.それは, アメ リカ腐姐病菌がプロポ リスのバ リアを破 って ミ ツバチを冒す ことがで きるようにな ったか らだ といえな くはない. しか し, プロポ リスを集め ない トウヨウ ミツバチにこの病気 はない (両種 を同所で飼育す るようにな ってい くつかの病気 の相互感染が知 られてきたがアメ リカ腐姐病 は 今 の ところセイ ヨウ ミツバ チに限定 されて い る). またセイ ヨウ ミツバ チの中で もカーニオ ラン種

(

A.

m.carnic

a:

東南 ヨーロッノ<,旧ユ ーゴか らオース トリアまでに分布) はプロポ リ スをどち らか とい うと集 めない種類だが,一方 でアメ リカ腐姐病への抵抗性が比較的ある方だ といわれる(Ruttner,1988).この差 は何であ ろうか. さらに,網室に閉 じこめた ミツパテにプロポ リスを集 めさせずにおいて も何 ら病気の問題 は なか ったということでMcGregor(1952)はプ ロポ リスの巣の抗菌性 における必然性には首 を 傾 げている. もっともすべての対微生物防衛戦 をプロポ リスに頼 るとい うのは,それが外部資 源である以上 ミツパテにとってあまりに リスク が大 きい.資源の変動が巣の抗菌性 の レベルを 左右 して しまうか らである.吉垣 (1997)は ミ ツバチの様 々な対微生物防衛戦術か らなる総合 的な防衛戦略の中に, ひとつの手段 としてのプ ロポ リスの位置づ けがあるとしている.

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もちろん,だか らといってプロポ リス自体の 抗菌性が劣 るということで は決 してない.植物 の疹出物 と同様, プロポ リスが抗菌 スペク トル の広 い,碓かな抗菌 (静菌 ・殺菌)作用を示す こ と は紛 れ もな い事 実 で あ る (Marcucci, 1995). それ以外 の効果 として, スムシ類 の食害を防 ぐといわ れて い る (Nicolas,1947;Eischen andDietz,1987).もっとも実験 によっては明 確な効果が得 られなか った り(Johnsoneta1., 1994),実際, プロポ リスの原塊か らスムシが 出て くるのを見た人 も多 いにちがいない.ただ しこれに関 しては実験上の問題 もあ り, また殺 虫効果が期待で きるほどの毒物ではないが,成 長や増殖 に何 らかの影響 を及 ぼ している可能性 は否定できないので現在研究を進 めているとこ ろである. SpanglerandTaber(1970)はプロポ リス にア リ除けの効果があるとしている. コ ミツパ テは枝 に 1枚巣 を掛 ける種類で,巣 か ら2-3 cmの ところに植物 の樹脂 をっ けてア リ除 けと す る. この場合 には樹脂 の粘着性で,巣に近づ いたア リが足を取 られて動 けな くなる. これに 対 して, アフ リカ蜂化 ミツバチでは, プロポ リ スを塗 ってできた滑面が,這 い上が って くるア リを羽ばたきで吹 き飛ばすのに好都合だ という ミツパテの種類 は関係するのか アメ リカ腐岨病 に関 して も触れたが,セイ ヨ ウ ミツバチな らどの種類 で もよ くプロポ リスを 集めるというものではない.セイ ヨウ ミツバチ の中では亜種間でプロポ リスを集 める性質 に比 較的明瞭な差があ り(Starostenk0,1968),コ -カシア ン (A.m.caucasica:コーカサス地 方 に分布)とインター ミッサ (A.mel

l

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rai n-termisa:北 アフ I)カのア トラス山脈以北∼地 中海沿岸 までに分布)がよ く集 めるといわれて いる(Ruttner,1988).特 にコ-カシア ンは冬 前 に巣門をプロポ リスで閉 じて,換気用や外 に 出るための小孔だけを残す ことが知 られている (Phillips,1949). 太古 の ミイラ造 りでのプロポ リスの利用を考 77 えると意外な ことだが, エジプ トに分布す るエ ジプ ト蜂 (A.m.lamarckii)はプロポ リスを集 めないよ うである(Ruttner,1988).それ以外 のアフ リカ産の ミツバチが どの程度集めるのか は個 々には情報がないが, いずれにせよこうし た亜種間の差が何 を意味す るのかは,分布地 の 条件 (気候,天敵,病害 など)やその蜂の性質 (防衛行動,耐病性など)との共通項 を丹念 に調 べてい く以外 には手がない.残念なが らそのよ うな研究 は今のところなされていないようであ る. なお, ブラジル産のプロポ リスの成分的な特 徴 を蜂の種板 によると説明す る傾向がある. ち ともとヨーロッパか ら導入 されていたセイヨウ ミツバチはハチ ミツ生産用であ り,当時 プロポ リスはほとん ど生産 されていなか ったが,その 後 (1957年以降) 分布拡大 したアフ リカ蜂化 ミツパテで は大量 にプロポ リスの生産がで きた ことも, こう した傾 向 に拍車 をか けて い る. KooandPark (1997)は ミツバチの種類 によ ってプロポ リスの成分 に違 いが見 られたとして いるが,前述のよ うに, プロポ リスの成分 の差 は植物原料 の差 で あ り, ミツバ チ依存 の違 い は, ミツバチのプロポ リスを集 める傾向の差 や プロポ リス原料 として好む植物の差 によるもの と考 える方 が無理 はない. なぜプ ロポ リスの成分 は変動するのか 植物原料 の段階で成分 に変動があれば ミツパ テの巣 の中の プロポ リスの成分 も当然変動す る.巣の中での加工 は成分 の変動 に影響 しない のであろうか.他 の外部資源の利用を考 えに合 わせて説明を加えてみたい.花蜜 は,花 によっ て水分含量がずいぶん異 なるが,要 はその中の 糖質が ミツパテにとって必要 な ものである. ミ ツバチの体内外での加工 を受 けて-チ ミツにな ると,成分 の80%近 くは糖質で,残 りのほとん どが水分,残 る成分 はごく微量 となる.糖の酵 素分解や有機酸 の生成,水分濃縮 など比較的加 工の程度 は高 いものの, このよ うな微量成分 は それほど動かない.ハチ ミツの色や味は含 まれ る ミネラルやア ミノ酸 などの微量成分 に依存 し

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て変動す るが,それがつ まり植物 に依存 した変 動 とい うことにな る.花粉 は タ ンパ ク質 や脂 質, ビタ ミンなどを得 るために様 々な植物か ら 集 め られる.巣の中では防腐処理 をされるだけ でほとん ど加工 されないので,その栄養価など 質的な変動 は植物種 に大 きく依存す る. しか し これが ローヤルゼ リーの形 にまで加工 され る と,変動 はほとんどな くなる. そ う考えると, プロポ リスの質的な変動 は,やはり加工程度が 低 いので,植物種 に依存す るということになる のだろう.つまり, ミツパテは,求めている成 分 (群)が含 まれ る原料 であれば何で もよ く, 各成分の比率や,副成分 については問題 としな いとい うことになる. 実際に ミツバチが何 を探索 しているのかはま だ調べ切れていない.ペ ンキや絵の具, アスフ ァル トなどを集 めたとい う記録 もあり(Dujar -din, 1852; Freudenstein, 1932; Lowe, 1980), そ うしたものに も含 まれ る成分である 可能性 は高 い.植物の側ではそ うした成分を も っているものがあるグループに限 られている. 植物 フラボノイ ドの研究者 にとってプロポ リス 中のフラボノイ ドの リス トはある植物群が持っ フラボノイ ドの リス トのよ うだ とい う (岩科 , 私信). もともとヨーロッパにいたセイ ヨウ ミツバチ が本来の生息地以外で もプロポ リスの原料 を集 めて くるので, ヨーロッパで一般的な植物の他 に も利用で きる植物を探す能力があるとい うこ とで もある.その場合にいったい何を目印に探 しているのかは興味深 い点である. もっとも, 植物の方 も海外 に導入 されているために, まず ミツパテはポプラや シラカ ンパのよ うな ものを 探 して利用 し, それがないとそれに代わ る植物 を利用す るようになるといわれている(Gree n-away,1990). ミツパ テ はプ ロポ リス に何 を

期待するのか

ミツバチがプロポ リスを集 めるのはどういう 理由によるのであろう. ミツバチが花粉か ごに つけたプロポ リス原料の塊 を自分では取 り外せ ず,巣の仲間にはず して もらうことに着 目す る と, プロポ リスを集めるという作業が,極 めて 社会性の高 い集団でなければ成 り立 たないもの であることがわか る.同 じ花粉か ごで花粉 も運 ぶが, その場合 は自分 の足を使 って巣房の中に 落 と し込 む.その段階で は特 に社会分業 もな い. しか しプロポ リスの持 ち込みにはすでに分 業が前提 と■な っている.つまり,逆 に言えば, プロポ リスの必要性 は,働 き蜂間の分業 によっ て ミツバチの社会が高度 に組み上が っているこ とと関係 している可能性 を示 している. 一般 に集団社会 における問題 は, そのための 住空間 (-営巣空間)の確保,多数の個体を維 持す るための食糧 の調達 と貯蔵,そ して結果的 に巨大化す る巣の防衛 となる. プロポ リスの用 途 は明 らかにこの住空間に関係す る効果 に結 び ついていそ うである.巣材 としての蜂 ろうに強 度を追加す るという意味づ けもプロポ リスはも っている.巣門を狭 くす るのは寒地適応のひと つであろう.対微生物, あるいはア リやスムシ などの昆虫 に対抗す るための手段 としてのプロ ポ リスの位置付 けも大 きい.食料 に関 して も, 貯蜜の品質維持 に貯蜜の蓋 に塗 り込め られたプ ロポ リスが有効 と考えることはで きる. また外 気や外敵の侵入を防 ぐこと自体が,貯蔵食糧 を 守 るとい う意味づ けを も持 ち合わせ る. 実際に ミツパテがプロポ リスを用 いる場合 に は,蜂 ろうと混合 され ることが多 い.その混合 比 は大 きく変動す るが, これは資源の入手の し やす さによ る.蜂 ろ うの混合比率 が高 くな る と,隙間をふ さぐなどの物理的な目的のために はその増量効果が期待で きるが,一方で抗菌性 など化学成分 の効果が重要 な場合 には, その効 果 は希釈 されて しまう. そのため,混合比率の 高 くな りやすい使われ方 と,そ うでない使われ 方 があるのか どうか,植物原料 の混合比率の低 下 によって巣 の防衛 という場面で何 らかの損失 が起 こりうるのか とい う点 を調べ る必要がある だろう. 巣の外での採集 と,巣の中での利用の2段階 の分業があるとい うことは,原料 その ものが含 む成分を基準 とした 「プロポ リス原料 の認識」

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79 という 「質」の認識過程 を2回経 るとい うこと にな る (図2).採集 蜂 が植物 の惨 出物 を評価 し,利用蜂 が採集蜂 の持 ち帰 った花粉 か ご上 の 原料塊 を評価す るか らである. これは原料 と し ての植物資源 に変動 が大 きい場合 に, ミツバチ が 目的 にかな った物質 (群) を持 ち込 む上で重 要 な役割 を持っ ことにな る. この ことは資源が 少 なければ,場合 によ って は蜂 ろ うを完全 に代 用す る (Gontarski,1955) ともいわれ る ミツ パ テが,実 はプロポ リスの質 に対す るこだわ り を示 してい ることとも考え られ,化学成分 の機 能 に期待 しているひ とつの状況証拠 ともな りう る.実際, 自家生産可能 な煙 ろ うにすべてを頼 らず,後発的で外界依存 的 なプロポ リス原料 の 採集 をその コス トをか けて まで行 うのは何 らか の化学成分 が巣 の中で何 らかの機能 を果た して いると考 え るべ きであろ う. ただその場合, プ ロポ リスの機能 は, ミツバ チにとって全的な も ので はな く, あるシステム, おそ らく巣 の防衛 システム (それ もおそ らく対微生物 的な) にお けるひとつのアイテムと してのそれ とい うこと にな るだろう. それ は残念 なが らプロポ リスの 資源が餌資源 に較べて限定 的で, その種 の機能 すべてを外界 に しかない ものに頗 るのは結局不 利 にな るか らだろ う. トウヨウミツパ テはなぜ集めな

いか

そ う した質的な機能 を持 っな らば,すべての ミツパテが プロポ リスを利 用 して もよさそ うで ある. 日本 で はセイ ヨウ ミツバチがプ ロポ リス を集 め るのに足 る資源があ るのに, ニホ ン ミツ バチはまった く集 め る性質 を持 っていない. な ぜだろ うか. ひ とつ は, トウヨウ ミツパ テをは じめ とす る 多 くのアジアの ミツバチが移住型 であるとい う 点である. プロポ リスの機能が巣 の防衛 とい う ことは,貯蔵定住型 のセイ ヨウ ミツバチに とっ て欠 くべか らざる機能であ るが,移住型 の ミツ /ヾチに とって,移住 の コス トの上 に巣 の防衛 コ ス トを払 うのは2重 の コス トとな って しま う. 冬が厳 しく,移住 コス トが大 きくなる地域 で は 一般 に ミツパテは定住型 であ り,逆 の場合 には すきま 採集蜂 加工蜂 プロポリスの完成 図2 プロポリス成分の認識の重層化 植物原料からプロポ リスまでの間には撮低でも2回 の認識が必要 となる.充填作業には複数の働 き蜂が 関与するので,実際にはそれ以上の回数の成分認識 が行われている. 移住型 とな る. また定住型 の場合,巣 の大 きさ が問題 とな りその強度 を上 げ る必要 が 出て く る.越冬 のために貯蜜量 を増やす ことは,巣板 にかか る加重 の増加 を招 くので天井 との接合面 の強度 をあげることは必須 となる. また巣板 そ の ものの耐用年数 を増加 させ る必要 もある. ト ウヨウ ミツバチは巣板 が古 くな るとか じりとっ て新 たに作 り直す. この作業 自体 はスム シ類へ の適応で はないか と考え られ るが, そのため巣 板 の耐用年数 は必然的に短 くな り, コス トをか けて まで丈夫 にす る必要 がな くなる. この説明 は, しか しブラジルで プロポ リスを 生産 しているアフ リカ蜂化 ミツバチが,本来 の 性質 か らすれば移住型 であ る点 に反す る.移住 型 といえ ども,外敵 の多 い地域で はその仮住 ま いにそれな りの投資が必要 とい う見方 もある. 多 くの天敵類 が いる環境,営巣期間の気候 な ど が実際 ど うなのか は調 べてみなければな らない が,巣 の耐用年数 が実際 どの程度 か,移動 の程 度 によってプロポ リスの量 が変 わ るのかなどに ついて情報 があれば, トウヨウ ミツパテ との比 較 もで きるか も知 れない. 今後の研究 プロポ リスの研究 の主体 は,相変 わ らずその 成分 とそれぞれの成分 の効果, あるいはプロポ

(8)

80 リスとい う総体での臨床報告 などにな ってい く だ ろ う. しか し, ミツパテの研究者 と しては,期待 さ れ る品質 の問題,つ まり何 を プロポ リスと呼ぶ のか とい う問題 に答 える必要 があ る. そのため には上記 にあげたよ うな問題点 を再考 し,種 々 の実験 を組 んで調べてい くことになるだろ う. いろいろな ミツバチの比較 も必要 だ し, ミツバ チが期待す る効果 につ いて もその程度 を測定 し てみ るのがいいか も知 れない. そ うした基礎的 な情報 を集 め ることによ って,一般か ら研究者 までが納得で きる 「ミツバ チに とってのプロポ リスとは何であ るか」 とい う疑問 に答えが出せ ることを願 いたい. (〒194-8610 町田市玉川学園 6-1-1 玉J廿大学 ミツパテ科学研究施設) 主な引用文献

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参照

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