ミツバ チ科学23(3) 121-122 HoneybeeScience(2002)
ニホンミツバチ分蜂群がデポニアヌム,ミス・
ムフェットにも集結する
菅原
道夫
こ れ ま で キ ン リ ョ ウ へ ン(Cymbidium floribundum)だ けで な くデ ポ ニ ア ヌ ム (C. devonianum)やキ ン リョウへ ンを交配親 に し た シソビジュウムの花か らもニホ ンミツパテの 集結を誘 う花香が放出されていることを明 らか に した (菅原,2001a;2001b). しか し,人為 的に巣板か ら落 とされた蜂が花 に誘引され るこ とと,分蜂 した群れが花 に集結す ることの間に は距離があると考え られ る.分蜂群が集結 して こそこの現象の生態学的な意味が論議で きる. 巣 を飛 び出 した分蜂群 がキ ンリョウへ ンの花 に集結 して しまう現象 は福田(1988)や佐 々木 (1992) によって報告 され,伝統的な方法でニ ホ ンミツバチの養蜂を行 う養蜂者 は, この現象 を蜂群の確保 に利用 して いる. これまで分蜂群が花 に集結す ることが確認 さ れているのは, キ ンリョウへ ンと交配種のオオ イソ (菅原,2001a)だけであっ.た.この レポー トでは, デポニアヌムと交配種の ミス ・ムフェ ッ トの花への集結を報告 する.方法 と結果
デポニアヌムは高木農園の小島勝也氏の ご好 図1 ミス ・ムフェットの花と鉢に集結 した分蜂群 意 で2001年 に入手 した株 と清水洋蘭 の清水秀 明氏の ご好意で2001年 に入手 した株 の 2株を シンビジュウムの栽培法 に従 って育てた.両者 とも2002年 4月
10日には開花 した. ミス ・ムフェッ トは同 じく高木農園の小島勝 也氏の ご好意 で2001年 に入手 した株 が 4月
1 日に開花 した. 両種の株 は室内で管理 し,蜂 に訪花を させな か った. 枚方市 で捕獲 し,セイ ヨウ ミツパテ用の巣箱 を用 いて守 口市で飼育す るニホ ンミツバチの分 蜂 を待 った.2002年 の気候 は例年 にな く早 く 推移 した.ソメイ ヨシノの開花が例年 より2週 間 も早 くみ られた. ニホ ンミツバチの分蜂 も例 年 にな く早 くみ られた.4月
2日午前10時, 最初の分蜂が始 まった.早速,室内か ら開花 し た ミス ・ムフェッ トを出 し,巣箱か ら3m 離れ た木の机 の上 に置 いた.空 に舞 い上が った分蜂 図2 分蜂群の集結によって萎れた ミス ・ムフェッ トの花22 図 3 デポ二7ヌムの花と鉢に集結 した分蜂群 群 は 20分後 に は ミス ・ム フェ ッ トの花 と鉢 に 蜂球 を作 った (図1).1時 間後,分蜂群 を巣箱 に落 と しこみ,群 れを捕獲 した. ミス ・ムフェ ッ トの花 はキ ン リョウへ ンの時 と同様 に蜂 の熱 によ って変色 し萎 れて いた (図2). 4
月
23日午前 10時 30分, この年三 度 目の 分蜂 が起 った.巣箱 か ら5m離 れ た室外 の コ ン ク リー トのたた きにキ ン リョウへ ン, デポニア ヌ ムを注水 のために出 して いた.分蜂群 は空 に 舞 い上 が り花 に向か って移動 を は じめた.急 い で デポニア ヌムだ けを残 し他 の花 を室 内 に移 し た.分蜂群 は2株 の デポニ アヌムの うち,小 さ い株 の3つ の花茎 に群 が った (図3).ミス ・ム フェ ッ トの時 と同様 に分蜂群 を巣箱 に回収 し花 の状態 を観察 した. キ ン リョウへ ンと ミス ・ム フ ェ ッ トと同様 デポ二アヌムの花 も熟 で萎 れて いた (図4). これ らの蜂 の集結 を受 けた二種 の花茎 は, そ の後枯 れ ることな く種子 の形成過程 にあ る.考 察
原種 デポニア ヌムの花 が ニ ホ ン ミツバ チの群 れ を誘 引す る能力が あ ることがわか った とき, この現象 は生態学 的 に意義 のあ る現象 に違 いな い と論 じた (菅原,2001b).今回,分 蜂群 が実 際 に花 に集結 す ることを確認 して, その仮説 が い っそ う真実味 を帯 びて きた と考 え る.蜂 の群 れ が集 結 す る とその熟 の た め花 は萎 れ て しま う. しか し,花 は枯 れて しま うわ けで はな く種 子 の形成 が進 む.種子 の形 成 に とって蜂 が もた らす熟 が プ ラスに働 いて い ると した ら,蘭 に と 図4 分蜂群の集結によって萎れたデポニアヌムの花 って蜂 の群 れを誘 引す る ことが蘭 の生 き残 り戦 略上 たいへん有意義 な ことにな る. 自然環境 の 中で,蘭 は蜂 の群 れを誘 うことで その種 の存続 を はか って い るので はないか と思 われ る. 謝辞 デポニアヌム と ミス ・ム フェ ッ トをお譲 りい ただ いた小 島勝也氏,清水秀 明氏 に感謝 を申 し 上 げ る.本研究 の一部 は,藤原 ナチ ュ ラル ヒス トリー振興 財団学術研究助 成 による. (〒573-1187 枚方市磯 島本町20-1 大阪府立磯 島高校) 参考文献 福 田道弘.1988.ミツバチ科学 9(3):127-130. 佐々木正己 1992.ミツバチ科学 13(4)i167-172. 菅原道夫.2001a. ミツバチ科学 22(2):79-82. 菅 原道夫 2001b. ミツバチ科学 22(3):139-140.MICm O SUcAl・tARA Swarmi ng coloniesoEJ
apa-nese honeybee, Apis cerana japonica are attracted byCymbldium devonianum and Its hybrid,MissMuFfet.HoneybeeScience(2002)23 (3): 12ト122. Tsoshima ‖ight School, 20-1, Isoshima-motomachi,Hirakata,Osaka,573-1187 Japan.
IndividualattractlOn OfA♪isceranajaponica
to theorlentalorchids,Cymbidium Bonbundum