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群馬大学医学部附属病院における女性専用外来の現状と課題

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群馬大学医学部附属病院における女性専用外来の現状と課題

裕 子, 佐 藤 浩 子, 星 野 綾 美

田 村 遵 一

要 旨 【背景・目的】 群馬大学医学部附属病院では,2005年春より女性専用外来を開設した.当外来の現状および課 題を検討するため, 受診者を対象に受診背景・患者満足度に関し調査を行った. 【対象と方法】 対象は 2006年 6月 14日から 2008年 2月 29 日の間に当外来を初診した女性患者 42名で あった. 担当医師および対象患者に対するアンケートをデータとして解析した. 【結 果】 受診者の年齢は 40代 (26%),50代 (26%)が多く,疾患は婦人科系疾患 (56%),内科系疾患 (40%) が多かった. 他院受診歴のある者が多かった (84%). 初診時, 漢方薬処方率が高かった (53%). 患者の満足度 は高かった. 【結 語】 当院女性専用外来を受診する症例の背景として, 女性医師の診察を求めて受診する症例や多彩な 症状・疾患に対する余裕を持った診療体制を望んで受診する症例が多かった. そのような症例の多くに女性 専用外来の満足度は高かった.(Kitakanto Med J 2008;58:297∼301) キーワード:女性専用外来, 性差医療, 大学病院, アンケート調査 背 景 1990年代より米国を中心に gender-specific medicine (性差医療) という概念が広まった. 1990年 National Institutes of Health (NIH) に女性における疾病の予防・ 診断・治療の向上と, 関連する基礎研究を支援する目的 で「Office of Research on Womens Health(ORWH)」が 設 立 さ れ, 1996年 に は ア メ リ カ 保 社 会 福 祉 省 が National Centers of Excellence in Women s Health を設 立, 現在大学を中心にセンターが設置され, 女性に特化 した臨床・研究・地域啓発活動などが行われるようになっ た. 我が国でもこのような流れを受けて, 2001年鹿児島大 学医学部附属病院に「女性専用外来」が初めて開設され, 2006年 1月末には 47都道府県に女性患者を対象とする 女性外来 (ここでは 女性専用外来 , 女性専門外来 , 女性外来 などの 称として 用する) が開設された. 千葉県では県の支援の下, 県立病院を中心として女性外 来が設立されており, 臨床およびデータファイリングシ ステムに基づく調査研究が行われている. 性差医療情報 ネットワークのホームページ情報を参照すると, 全国で 女性外来を担当している診療科は産婦人科, 内科, 精神 科, 乳腺外科,消化器科,循環器科,神経内科,泌尿器科な ど非常に多岐にわたる. また, 複数の診療科で女性外来 を行っている医療機関も少なくない. 群馬大学医学部附 属病院女性専用外来は 2004年に開設され, 開設時は産 婦人科および乳腺外科に属する女性医師が診療を担当し ていたが, 2005年 4月より 合診療部の内科女性医師が 診療を担当している. 内科医師が担当する女性外来の患 者特性や診療内容を把握するために, 今回当院女性外来 を初診した患者に対して調査を行ったため報告する. 対 象 と 方 法 対象は 2006年 6月 14日から 2007年 2月 29 日の間に 群馬大学医学部附属病院女性専用外来をはじめて受診 し, 調査に対し同意した女性患者 42名である. 明らかな 乳腺疾患 (乳房のしこりなど)や婦人科疾患 (不正性器出 血など) の患者には, 問い合わせの際に担当医師が内科 1 群馬県前橋市昭和町3-39-15 群馬大学医学部附属病院 合診療部 2 群馬県前橋市昭和町3-39-15 群馬大学医学部統合和漢 診療学講座 3 群馬県高崎市乗附町1526-2 五百山クリニック 平成20年5月16日 受付 論文別刷請求先 〒371-8511 群馬県前橋市昭和町3-39-15 群馬大学医学部附属病院 合診療部 田村遵一

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医師であることを説明し, 専門診療科の受診を勧めた. 受診患者特性については,年齢・疾患 類・病悩通院数に ついて担当医師が問診による調査を行った. 同時に問 診・診察に要した時間を担当医師が計測した. 女性専用 外来を受診した理由については, 患者アンケートを行っ た. また, 診察終了時, ①診察時間②診察内容③女性医師 の対応④診察を受けて良かったかの 4項目について, そ れぞれ 5段階評価による患者満足度調査を行った. 倫 理 的 配 慮 対象となる患者に研究目的および調査項目について説 明し文書による同意を得た. 結 果 .患者背景因子の 析結果 1.患者属性 患者属性に関して, 患者の年代は∼20代 (17%), 30代 (19%),40代 (26%),50代 (26%),60代 (7%),70代以上 (5%) であった. 年期周辺の 40代, 50代が多い傾向に あった (図 1). 2.疾患 類 年期症候群や月経前症候群などの婦人科系疾患が 56%と最も多く, 次に内科系疾患が 40%と多かった. 内 科系疾患では, 頭痛などの神経系疾患, 下痢などの消化 器系疾患が多く認められた. うつなどの精神的疾患 (21%), 乳腺疾患などの外科系疾患 (12%) の受診例も認 められた. また, 複数の疾患を抱えて受診する例が 29% 認められた (図 2). 初診時の主訴を表 1に示す. 3.病悩通院数 受診者が主訴の治療を希望してこれまでに通院した病 院・医院数としては, 女性専用外来がはじめてという者 は, 16%と少なかった. 1カ所の通院者が 56%と最も多 く, 2カ所以上通院している者も 28%認められた. 4.治療および転帰 初診時の処方は,西洋薬 2%,漢方薬 53%,無投薬 45% であり, 漢方薬の適応症例が過半数を占めた. 転帰とし 図2 疾患別受診患者比率 図1 年齢別受診患者比率

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ては, 再診率が 58%と最も多かった. 他科へ紹介率は 16%で, 他科との併診率は 7%だった. また, 初診時の診 察のみで終診となったものは 9%認められた. .受診動機などについてのアンケート調査結果 1.女性専用外来を受診した理由 受診動機としては, 女性医師に診察してもらいたい , 時間をかけた診察が受けられる および 受診すべき 診療科がわからない が多く, それぞれ 56%, 47%およ び 47%であった. 2.医療機関を知った方法 最も多かったのが インターネット (49%)であった. その他, 知人・友人から (33%), 他院からの紹介 (9%), 雑誌 (16%), 院内パンフレット (7%) であっ た. 3.診療に対する満足度 図 3に示すように,診療時間・診察内容・女性医師の対 応について行った 5段階評価アンケートでは, いずれも 非常に高い満足度が得られた. 女性専用外来の診察を受 けて良かったかという質問には, 88%および 12%が と ても良かった あるいは 良かった と回答した. また, 再度女性医師の診察をうけたいかという質問には, 93% が ぜひ受けたい ,7%が 機会があれば受けたい と回 答した. 察 2001年の鹿児島大学医学部附属病院に「女性専用外 来」が開設されて以降, 全国で多くの女性外来が開設さ れた. 2004年 8月に日本産婦人科医会が行ったアンケー ト調査によると, 女性外来を開設している診療科では, 婦人科が 31.9%と最も多く, 次いで内科 19.8%, 合診 図3a 診察時間の満足度 図3b 診察内容の満足度 図3c 女性医師の対応 図3d 診察を受けて良かったか 表1 初診時の症状 症 状 全 身 冷え・のぼせ・発汗過多・全身 怠感・発熱・肥満・無気力 頭 頸 部 頭痛・咽頭痛・咽喉頭違和感 胸 腹 部 胸部不快感・胸痛・動悸・乳房腫瘤・下痢・腹痛 泌尿・生殖器 無月経・帯下・下腹部痛・月経痛・月経不順・不妊・頻尿・尿道痛・排尿困難・肛門痛・陰部掻痒感 四 肢 ・ 関 節 肩こり・肩関節痛・背部痛・腰痛・多関節痛・下肢浮腫 精 神 ・ 神 経 うつ・不眠・めまい・術後不安感・四肢のしびれ・いらいら・眠気 皮 膚 脱毛 そ の 他 血圧上昇・肝機能異常

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療科 7.7%, 外科 5.5%, 複数科 4.4%, 精神科 3.3%, その 他 38.5%であり, 扱う疾患は 年期症候群が最多である と報告されている. 当外来では内科医師が外来担当しそ の旨を明示しているが, 上記の報告と同様に受診患者数 は 年期周辺の 40代, 50代が多く, 疾患としても 年期 症候群や月経前症候群などの婦人科疾患を有する患者が 半数近くを占めた. 内科系疾患では, 従来女性に多い頭 痛などの神経系疾患が多かった. また, 初診時の症状は 表 2に示すように多彩であり, 複数の症状・疾患を有し 受診する患者が多く認められた. アンケート調査でも受 診理由として 受診すべき診療科がわからない 患者が 多く, 症状や疾患の多彩性を反映していると えられる. 今回の調査では, 他院に通院した後に女性専用外来を 受診する患者が大多数をしめた. 他の医療機関では解決 できなかった患者が女性外来の受診者の中心であると えられた. 転帰としては, データには示さないが, 当外来 を初診した患者の 58%は担当した女性医師の外来を再 診しており, 内科医師で対応可能な患者が過半数であっ た. しかし一方で, 受診者の 21%を占める精神科系疾患 の患者の対応は不十 となることが多かった. また, 予 約の時点で明らかな乳腺疾患 (乳房のしこりなど) や婦 人科疾患 (不正性器出血など) の場合は当外来の受診を 受けられないことなどの問題点が浮き彫りとなった. 以 上のことから, 内科医師のみでは対応できない精神科・ 外科・婦人科領域の病態を有する症例への対応が, 当院 女性専用外来における重要な課題であると えられた. 鹿児島大学では開設当初内科医師のみが女性外来を担当 していたが, 2004年 6月よりほぼ全科の女性医師が協力 して診療を行う形に女性外来が再構築され運営されてい る. 当院においてもそのような対策が望まれる. 治療は, 漢方薬の投与が 53%と最も多かった. 年期 症候群や月経前症候群などの症例では, ほぼ全例に 用 されていた. 平山らの報告では, 千葉県立東金病院女性 専用外来における漢方薬の投与は 39.3%, 女性ホルモン 補充療法 (HRT) 施行例は 14.1%であった. 当外来では, 女性内科医師が担当であることを明示してある為か, 婦人科にて HRT を勧められたがホルモン療法に抵抗 がある との意見があり, 漢方薬の 用がより多くなっ ていた一因と えられる. 当院の女性専用外来において は漢方薬が必須であり, かつ有用であると思われた. 受診動機については, 女性医師に診察してもらいた い と共に 時間をかけた診察が受けられる および 受診すべき診療科がわからない が多かった. 女性専用 外来では,担当が女性医師であること,多彩な症状・疾患 に対する余裕を持った診療体制が望まれていると えら れる. 女性専用外来をどのような情報媒体で知ったかについ ては, 今回の調査ではインターネットがもっとも多く 49%を占め, ホームページが活用されていることが示さ れた. しかしながらまだ受診患者数は少なく, 認知度が 低いと えられる. アンケート結果が示すように, 受診 者の満足度は診察全般にわたって高く, 再診の希望も多 い. 女性にとってとても有り難い診療科である との意 見もあり, 女性外来へのニーズは高いと思われる. 千葉 県における女性外来の運営状況では,新聞・雑誌・テレビ を通じた広報活動の行われている医療機関は受診者が圧 倒的に多く, また遠方からの受診者も認められた. 千葉 県立東金病院では, 女性外来の予約は数ヶ月待ちという 状態と報告されている. 当院においても女性の 康維持 および早期疾病発見のため, 複数の媒体を通した広報活 動により, 認知度を上げていくことが今後の重要な課題 であると える. 文 献 1. 貴邑冨久子 (監): 性差医学入門. 東京 : じほう, 2003. 2. 安達知子 :【女性外来診療マニュアル】外来における女性 診療 アンケート調査からみた女性外来. 産婦人科治療 2007; 94増刊 : 479-483. 3. 福留美代子,池田優子, 忠和 : 大学病院における女性 専用外来の歩み. 綜合臨床 2006; 55: 223-227. 4. 平山愛山, 竹尾愛理, 天野恵子 : 女性専用外来と漢方. 産 婦人科治療 2003; 86: 944-951. 5. 近藤正晃, 天野恵子 : 性差を加味した女性 康支援のた めの科学的根拠の構築と女性外来の確立. こども家 合研究事業報告書 2006; 43-61. 6. 天野恵子 :【女性外来診療マニュアル】外来における女性 診療 女性外来の現状と課題. 産婦人科治療 2007; 94 増刊 : 471-478.

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Trends and Issues of the Women s Health Clinic

in Gunma University Hospital

Yuko Ohyama-Oku,

Hiroko Sato,

Ayami Hoshino

and Jun ichi Tamura

1 The Department of General Medicine, Gunma University Hospital

2 The Department of Integrated Japanese Oriental Medicine, Gunma University School of Medicine 3 Gohyakuyama clinic

Background and Aims: A Women s Health Clinic, which is a new type of outpatient care and service specifically for women, was set up in Gunma University Hospital in April of 2005. This study was conducted to explore both the trends and issues of the clinic.

M ethods: We gathered information from 42 women who had visited the clinic between June 2006 and February 2008, and who had agreed to answer the questionnaires designated for this study. The questionnaires were administered by female doctors of the clinic who then analyzed the statistics of the results.

Results: Many of the participants were in their forties(26%)or fifties(26%)who visited the clinic with either gynecological (56%)or internal (40%)medical problems. Eighty-four% of the participants had consulted another doctor before coming to the clinic. Kampo treatment was prescribed for 53% of the participants at the first visit. Satisfactory results were achieved among participants.

Conclusion : Female patients, who visited the Women s Health Clinic, wanted consulting a female doctor, had multiple complaints and were left undiagnosed.(Kitakanto Med J 2008;58:297∼301)

Key Words: Women s health clinic,gender specific medicine,university hospital,question-naires

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