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小学校の家庭科教育に関する研究
辻 田 ア イA study of Homemaking Education in Elementary Schools Ai Tsujita Ⅰ.研 究 目 的 小学校の家庭科は,昭和22年新教育制度によって新しく誕生してより20年を経過して,よラや く軌道にのってきたと思われる。 この教育は児童の現在の家庭生活をよりよきものにするための学習であり,それがまた,将来の 生活にも役立つように意図されている学習である。はたして,この意図するものが実現されている かを確かめることは,この教育にとって,また,今後の家庭科教育をすすめる上にも重要な問題で あると思い,今回その学習成果を検討してみた。 ⅠⅠ.研究方法及び調査対象 (1)児童を対象として 児童の現在の生活にどのように役立っているかを検討する方法として, 「私の家庭」, 「家庭科で学 習した事で家庭で実行している事や家庭生活に役立っている事」という二つのテーマで作文を書か せて,その内容を分析した。 作文「私の家庭」は,附属小学校の5年(193名), 6年(195名)の男女児童に, 4月始め,節 学期が始まった最初の家庭科の授業時間中に書かせた。 作文「家庭科で学習した事で家庭で実行している事や,家庭生活に役立っている事」は, 6年の 男女児童に,第二学期の始まった9月始めの家庭科の授業時間中に書かせた。この作文を書いた児 童は,附属小学校40各 鹿児島市田上小学校83名,原艮小学校60名,枕崎市枕崎小学校44名, 合計227名である。 (2)母を対象として 児童が学校で学習したことを家庭で実行しているか,また,家庭生活改善に役立っているかを確 かめるために, 「あなたのお子さんが,小学校の家庭科で学習したことの中で,どんなことが家庭 で実行され,役立っていますか」という質問によって,母の意見を調査した。この調査は,県下全 域にわたり20校を選び約100名ずつ依栢したが,回答を得たのは次の19校1,346名であった。 鹿 児 島 市 附 属 小 学 校 81名 〝 田 上 〝 95
イ ア 田 辻 〔研究紀要 第20巻〕 123 Hu r h H H u 市 水 〃 出 阿 大 川 串 加 枕 鹿 薩 揖 根 野 田 口 内 久 木 世 崎 屋 摩 宿 市 市 市 市 市 市 市 郡 郡 良 竜 水 巣 川 原 大 出 鷹 大 ■ 1 日 u J H u r n H H u ■ J H u J H u / / 大 口 〝 永 利 〝 串木野 〝 益 山 〝 枕 崎 〝 寿 〝 田 尻 鶴 川 〝 松 原 〝 鵬 吹 郡 末 吉 〝 肝 付 郡 田 代 〝 大 島 郡 笠 利 〝 100 62 38 70 153 55 77 88 65 69 23 49 54 17 97 100 53 (3)大学生を対象として 小学校の家庭科で学習したことが,その後の生活にも役立っているかをたしかめるために,大学 生123名(鹿大教育学部小学課程の学生,男90名,女33名)を対象として, 「あなたが小学生の時 に家庭科で学習した事の中で,どんな事が,現在の生活において役立っていますか」という質問に よって調査票に記入させた。 この大学生が小学校5・6年生の時は昭和31.32.33年であって,その当時は,昭和31年度改訂 の指導要領で学習したので家庭科の学習内容は,家族関係。生活管理。被服・食物・住居の5分野 に分けられていたのである。 また,その当時は,家庭科廃止論もあり,軽視されていて,不振の状態にあった。したがって, 家庭科を課さない学校や女子のみに学習させ,男子には課さなかった学校もあった。このことは今 回の調査にも現われている。
III.調査の集計と考察
(1)児富め作文「私の家庭」について この作文の内容を分析して集計した。第1 ・2表参照。 5年生は男女ともに家族のこと(45%),父母のことのみ(19%)を問題にしている者が多く,令 わせて64%が家族関係のみを問題にしている。家族と仕事に関することを問題にしている者は19%124 小学枚の家庭科教育に関する研究 第 1 表 調 査 全員 男 女 5年生の作文「私の家庭」 193ig 家族のこと 父母のことのみ 家族と仕事のこと 日常の家庭生活のようす すまいに関する事 食事に関する事 衣に関すること D- CD h- OO O LO O O O C O C O v H t H ID O) O) Q LD CO O 4 1 1 第 2 表 LO CO Cft LO LD O 4 2 1 F- ^ Cft LO LO O O 4 2 1 vH CO OO CO LO LO O " t f x -[ H t H oo ^ ai ¥P in in o x H v H v H v H 調査全員 t 男 女 6年生の作文「私の家庭」 195名 96」 食事に関する事 すまいに関する事 日常の家庭生活のようす 家族と仕事のこと 衣に関すること 家族のこと 父母のことのみ h - C D ! > C M O v H O CD ^ OO 00 H C^ li) 05 CD ID H O O N H H C M O O l > - t - H t H O CO Od vH H 0 0 0 ) 0 0 0 0 H H O C O ( M H H L O t -H O L O O 5 O O
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である。日常の家庭生活のようすや衣食住などの具体的な面に目をむけている者は少ない。これ は, 1年生から4年生までほ道徳教育やその他の教科での学習において,家庭といえば家族関係の ことが児童の頭の中に一番強く刻み込まれてきたものと思われる。 6年生の作文を見ると,食事に関すること(34%),すまいに関すること(25%),日常の家庭生 活のようす などを問題にしている者が多く,家族関係のことのみを問題にしている者は少 ない。 これは, 5年生の1年間家庭科を学習したことにより,家庭生活の内容を具体的に見る目ができ て,衣食住などの生活は家庭生活の中で大切な面であることに気がついたものと考えられる。そし て,これらの作文を読むと,衣食住の生活を通して家庭生活をよりよきものにしようとする意欲と 態度が養成されていることが推案される。食事に関することは男女ともに一番関心をよせている。 すまいに関することは男児に多く,衣に関することは女児に多い。精神的発達段階より考えると, 興味・関心に性的差異の現われる時期であるためであろう。 (2)児童の作文「家庭科で学習した事で家庭で実行している事や家庭生活に役立っている事」 について この作文の内容を被服・食物・すまい・家庭の4領域に分類して集計した。 (第3表参照) まず,一番多いのは「食物」の領域で,合計すると82%である。その中で調理実習が73%で大部
辻 田 ア イ 〔研究紀要 第20巻〕 125 第 3 表 児美事 被 食 初 童の作文「家庭科で学習した事で家庭で ている事や家庭生活に役立っている ボタンやスナップをつける ほころびをつくろう せんたく・アイロンかけ 台ふき・ぞうきんをつくる LLゅうをして袋をつくる ごほんとみそ汁をつくる 野菜サラダをつくる ゆで卵をつくる 青菜の池いためをつくる 目玉焼をつくる 栄養を考えて食事をする 食器を洗う 調査全員 0 3 1 1 CO H l> OO l> N 00 4LO CO OO ^ 00 IO ^ 1 男 女 CO 00 O LO O 3 1 1 (M CO H IO CO 00 H 6 1 1 oo m oo ^ 0 2 1 < M O < J 2 ^ C O t - r H 5 1 O t H C O C D t > (M W (M H h oo (D o: ¥P ^ t> 4 1 O i O i H L f ; vH tH C¥] tH 分をしめている。そして,ごほんとみそ汁をつくるのは男児の方が多い。 次は, 「被服」の領域で,合計して67%である。その中では,ボタンつけ・つくろい・せんたく・ アイロンかけなどの身なりをととのえる技能の学習が役立っていると思われる。ボタンつけは男児 の方が多い。何れも自分のことは自分でする態度が蓉成されていることが推察される。 「すまい」の領域は12%で少ないが,これは男児の方が多い。その中で,涼しいすまい方のくふ うをする・のれんを作るというのが多いのは,この作文を書かせたのは, 9月始めであったので, 多分夏休み中にこのくふうをして涼しく暮したので印象的であったのか,記憶が新しかったためで あろう。 「家庭」の領域は僅か5%ではあるが,応接や訪問の際の作法やあいさつができるようになった り,小づかい帳をつけるようになったという者もあり,これらは男児に多い。この領域は表面には 現われていないが, 「被服」。「食物」・「すまい」などの学習において常にその根底となっているの で,それらの学習とともにその成果がみとめられると考えるO (3)母の意見について 第4表参照。お母さん1,346名の中で,男の子を持つお母さんは572名,女の子を持つお母さん は774名であった。 「あなたのお子さんが小学校の家庭科で学習したことの中で,どんな事が家庭で実行され役立っ ていますか」という質問に対し, 「家庭で実行され役立っている」と答えた者は9Q96, 「実行できな
126 小学校の家庭科教育に関する研究 第 4 表 あなたのお子さんが小学枚の家庭科で学習した事が 家庭で実行され役立っていますか 調査 全員 男 の 子 女 の 子 134珂 「 00# 572名目 00% 774名目 00% 実行され 役立っている 1292 96 534 93 758 98 実行できない 役立っていない 54 4 38 7 16 2 第 5 表 食 物 い・役立っていない」と答えた者は4%である。 この実行できない・役に立たないという理由として次の事柄があげられている。 子どもがすると時間がかかる。時間的に余裕がないので家庭では実行できない。子どもの動作が のろいのですぐ自分がやってしまう。 子どもがすると無駄になることが多い。材料が不経済になる。経済的に学校で習ったことはお金 がかかる。材料費が高いので家庭での実行は無理である。 子どもが学校で学習したことを家庭で話してくれない。子どもにやろうという意欲がない。子ど もに自信ができていない。この程度の教育では実行できない。おぼつかなくて子どもにまかせきれ ない。 祖母や姉がいるので手がたりているから子どもにはさせない。 男の子には何もさせない。 次に,家庭で実行し,役立っているというものについて,その内容を分析して集計した。多種多 様の意見があったがそのおもだったものだけ取り上げた。 (第5表参照) 「被服」の領域が一番多く77%である。その大部分は自分で身なりをととのえることができるよ うになった。すなわち,ボタンがとれた時は自分でつける。時には家族のものもつけてくれる。自
辻 田 ア イ 〔研究紀要 第20巻〕 127 分の下着類はせんたくをする。ほころびもつくろうことができるようになった。また,ぞうきん を作ってくれる。手縫でしたり,ミシンで縫えるようになった。これは男の子も女の子も同様で ある。 「食物」の領域も多く60%である。その中では,調理が多く,男の子も調理をよろこんでする。 また,食事の準備やあとかたづけの手伝いをする。学校で洗剤の使い方を習ったので,家庭でも洗 剤を使い衛生的にするようになった。栄養について学習したので,食事を栄養的にするようになっ た。偏食が少なくなった。食事の際の作法がよくなった。食前食後のあいさつができるようになっ た。 「すまい」の領域では,自分の勉強部屋の整理。せいとんをよくするようになった。整理箱や塞 理袋を作って使用している。そうじの仕方がよくなった。すまいについてくふうするようになっ た.部屋を明るくするためのくふうや涼しくするためにカ-テンをかけたり,水まきをしたり,仕 事が能率的にできるように台所や戸棚・押入れなどの物の置き方をくふうするなどがあげられてい る。 「家庭」の領域では,仕事を分担して責任を持ってするようになった。積極的に協力するように なった。来客の接待の手伝いができるようになった。お客様にお茶を出したり,あいさつができる ようになった。計画的に生活ができるようになった。生活時間を定めて日課表をつくって生活をし ている。時間を守るようになったなどがあげられている。 その他,お母さんの意見や感想として次のことがあげられている。 週に1-2回夕食後話し合いの会を持つようになった。 生活のくふうについて子どもはよき相談相手になってくれるようになった。 週に1回位は子どもに食事をつくらせるようにしている。 栄養についての学習をきいて家庭の食事を栄養的にするよう献立をつくるようになった。 これらにより学校の家庭科教育が家庭の生活改善に役立っていると推察される。 また,男の子の家庭科学習が家庭生活に役立っている例として,お母さんの手記の中より2例を あげる。 例1 5年男児童の母。47才・農業 子供が学校で牛乳の栄養について習ってきたので無駄使いをやめるから毎朝牛乳1本を飲 ませてほしいと申し出た。そこで家族に相談して家族全員(6人)が毎朝1本ずつ飲むこと にした。次いで,果物にビタミンCが多く含まれていると習ってきたので食事の時に果物を 添えてはしいとの申し出があった。できるだけ経費をやりくりして子供の意見にそうように したいと考えている。 ● 例2 6年男児童の母。33才・主婦(夫は公務員) 自分は編物をしていてその日に仕上げなれけばならなかったので手がはなせなかった。そ れで, 6年の長男に夕食の用意を栢んだ。家庭科のノートを見て献立をつくり,買物から調
128 小学校の家庭科教育に関する研究 理や後かたづけまで全部1人で完全にやってくれた。献立は学校で習ったとうふとねぎのみ そ汁・目玉焼とほうれん草の油いためであった。学校の学習がこんなに役に立つとは思わな かった。男の子でもこんなによくできるものかと長男を見なおすとともに小学校の家庭科を 見なおした。 (4)大学生の意見について 第6表参照。 「あなたが小学校の家庭科で学習した事の中でどんな事が現在の生活に役立ってい ますか」という質問に対し,役立っていると答えた者は67%,役立っていないと答えた者は33%で ある。 第 6 表
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悪 霊窪蒜望苧造幣 する, 分担を定めて手伝う 関 訪問●応接のあいさつ 35 42 17 31 18 64 係 家庭内においても家族間のあいさつをする 重 層 華窪箕孟習慣 25 30 15 27 10 36 役に立っていないという理由として次のことがあげられている。 小学校では家庭科を全然学習しなかった。 小学校で何を習ったのか全然忘れてしまった。 習った時だけ実行したがその後は全然しない。 次に,役立っていると答えた者について,その内容をみると,その全員が「被服」の基礎的な技 ■ 能をあげている。身なりをととのえるために,ボタンをつけたり,ほころびをつくろったり,せん たくやアイロンかけ等である。 次に多いのは「食物」で,調理については,男学生の中にも自炊生活をしている者もあり,母の辻 田 ア イ 〔研究紀要 第20巻〕 129 留守の時は自分で食事をつくる者もあり,また,キャンプの時などで調理の機会が多く,小学校で は基礎的な調理だけ習ったが,調理に自信が出来て,今ではいろいろ変った調理もできるという者 もある。栄養を考えて食事をするようになった。小学校で偏食はよくないと習ったので矯正しよう と努力してきたので現在では殆んど偏食しなくなったという者もある0 学生の中には,寮に居る者,間借りして自炊している者,下宿している者,自宅より通学の者な どあるが,何れの場合も, 「住居」・「家族関係」・「生活管理」などの学習が役に立っている。女学 生は中・高学校で家庭科を学習するが,男学生は小学校での学習だけである。大学生ともなれば相 当応用能力が発達しているから,小学校で初歩的。基礎的なものだけ学習してもそれを発展させて 役立たせることができるものと思われる。 ⅠⅤ.紘 袷 児童・母・大学生を対象としての調査の結果を総合してみるに,小学校の家庭科教育は児童の現 在の生活をよりよきものにすると同時に,父母の理解を得てその家庭生活をも改善している。更 に,大学生になってからの生活にも小学校での学習が基礎となって役立っていることを確認した。 小学校の家庭科教育は,今回の調査の如くその成果をあげ,その意図するところが実現されてい ると考える。 終りにこの研究調査に御協力下さった小学校の先生方や児童たち及びお母さん方に深く感謝いた します。 Summary ●
Elementary school homemaking education is aimed at improving* the present home life of each pupil and contributing to his or her future home life. But is this objective being- ful丘Iied? This is a question of great importance that must be decided first of all if homemaking education is to be conducted in the future as it should be. In order to appraise the extent to which the studying of home-making can be put to use in daily life, the following- measures were taken:
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1. Fifth grade (N-193) and sixth grade (N-195) boys and girls were asked to write a composition titled H My Family ", and theresults were analyzed.
2. Boys and girls in sixth grade (N-227) were asked to write a composition under the title "The things that I have learned in homemaking that is useful to me in my home life", and the results were analyzed.
3. A questionnaire was sent to mothers throughout Kagoshima prefecture,
asking them what was useful in the knowledge gained by chil正en in homemak・●
ing- in elementary schools. Respondents (N-1346) and their opinions were studied. 4. College students (male and female N-123) were asked how, in their present life, they could make use of what they had learned in homemaking in their
ele-130 小学校の家庭科教育に関する研究
mentary school days.
The results of the above investigations indicate that the study of Foods helps the boys and girls improve their eating hapits, makes them nutrition-minded and leads them to help their mothers with cooking. The study of Clothing proves to be useful in their acquiring such everyday skills as will keep themselves neat and
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tidy (ie。 sewing on buttons, sewing up rents, washing and ironing), thus helping them form the habits of taking care of themselves. Besides, much has been lear-ned in the五elds of Housing, Family Relationships, Home Management, etc. In conclusion, it has been clarified that homemaking education in elementary schools
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