ケアマネジャーからみた在宅ケア利用者の
自立支援・介護予防の条件
内
田
陽
子
要 旨 【背景・目的】 本研究の目的は,ケアマネジャーからみた自立支援,介護予防の条件を明らかにすることであ る. 【対象と方法】 対象は群馬県主催のリーダー研修に参加したケアマネジャー 67人に対して, 自立支援, 介護予防ができたと判断された事例の調査表の記入を依頼した. 析対象はそのなかで同意を得られた 35 事例とした. 方法は利用者背景条件, アウトカム, 利用サービス, ケアプランの内容から構成する調査表をも とにケアマネジャーに条件 析のグループワークを行った. 【結 果】 自立支援・介護予防できたとケアマ ネジャーが判断した事例は, 寝たきりになる前の認知症が軽度の者が多かった. また, 主疾患は筋骨格疾患が 多く, 主介護者の 康状態や本人との人間関係も良好なものが多かった. サービスは全員福祉用具を利用し, アウトカムの内容には本人の介護度,歩行,閉じこもり,入浴,意欲,在宅生活の継続,排泄,転倒の改善が記述 されていた. その条件の占める割合で高かったものは①ケア提供者, ②本人・家族, ③ケアマネジャーの条件 の順であった. ケア提供者の条件ではサービスの工夫, 状態に合わせた福祉用具の活用, スタッフの声かけ, 訪問介護やリハビリが適切であった. 本人・家族の条件には家族の協力, 本人の意欲があった. ケアマネ ジャーの条件には, 本人・家族及び事業所との連絡, 効果的なサービスの組み合わせ, 量の調整をした等が明 らかになった. 【結論】 今後, これらの条件を 慮したケアマネジメント, サービス提供を行う必要がある. (Kitakanto Med J 2006;56:105∼111) キーワード:自立支援, 介護予防, ケアマネジメント, 条件, ケアマネジャー は じ め に 介護保険制度の基本理念は自立支援である. 介護保険 制度が 2000年本格的に始動し, 5年が経過したが, サー ビスは軽度者の状態の改善, 悪化予防に少しもつながっ ていないという問題が明確にされた. これを受けて, 2005年 6月介護保険法の一部を改正する法律案が国会 で成立した. 本制度の課題には, 軽度要介護者が急増し ているなかで介護予防の効果が上がっていないこと, 高 齢者の状態像に応じた適切なアプローチが必要であるこ と等がある. 改正案には, 介護予防ケアマネジメントと 新予防給付の推進, それを担う地域包括支援センターの 設立等が盛り込まれている. 介護予防のエビデンスには 筋力向上訓練や転倒予防のための介入等がすでに検証さ れ, 今後これらの各事業が新予防給付として導入される ことになる. 在宅ケア利用者の自立促進に有効なケアとして, 内田 は自立を促す見守り部 介助, 在宅でのリハビリの工夫, 他者との 流, 服薬管理などの複合的なケアを明確にし ている. つまり, 単に機能訓練だけを組み入れれば介護 予防につながるというのではなく, 効果的な各サービス の組み合わせ, 調整が必要となる. 島内ら はケアマネ ジャーの職種によって利用者の改善率が異なること, ケ アマネジメント実施率が高いほど利用者改善率が高いこ と, 改善をもたらすために幅広いサービスを組み合わせ ることを明らかにした. 今後, 自立支援, 介護予防を図る ためには, 利用者のアウトカムを高めるケアの開発と同 時に, 効率的なケアマネジメント法の開発も求められる. しかしながら, ケアマネジャーに関する研究をみると, 困難事例 析はみられるものの, 自立支援, 介護予防で 1 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学医学部保 学科臨床看護学 平成18年1月6日 受付 論文別刷請求先 〒371-8514 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学医学部保 学科臨床看護学 内田陽子きた成功事例に対する条件 析の報告は少ない. 本研究の目的はケアマネジャーが受け持った自立支 援, 介護予防できた成功事例を 析することにより, そ の成功条件を明らかにすることである. これにより, 今 後, ケアマネジャーが自立支援, 介護予防を図るための 効果, 効率的なケアマネジメントにいかしたいと えた. 研 究 方 法 対 象 2005年 6月に開催された群馬県主催のケアマネジメ ントリーダー養成研修会に参加したケアマネジャー67 人に対して, 自立支援・介護予防ができたと判断した受 け持ち事例を持参してくるように依頼した. 析の対象 は研究に対する同意を得られた受け持ち事例とした. 研 修参加したケアマネジャーは各市町村から推薦された 者, または地域包括支援センターの設置を鑑み, 市町村 機関に所属する者であった. 調査内容と方法 調査は 2005年 5月初旬に上記の条件を満たすケアマ ネジャーに対して研修前に事前に調査表を配布した. 調 査表はケアマネジャーの受け持ち事例のなかで, 彼らが 自立支援, 介護予防ができたと判断した代表的な一事例 を選択してもらい, その事例に関する情報をケアマネ ジャーが記入するものとした.調査項目は,自立支援・介 護予防のアウトカム内容 (例:介護度が上がった, 本人 の自立度, 状態が改善した等), 利用者の背景 (年齢, 厚生 省の痴呆性老人の日常生活自立度, 以下痴呆度と略す, 家族構成, 主介護者の続柄と 康状態, 本人との人間関 係, 主疾患, 麻痺や障害の有無), ケアプランの内容とし た. これらの調査表を記載した後, 各ケアマネジャーに対 して 2005年 6月 21日に開催される研修時に持参するよ う依頼した.当日,自立支援・介護予防を図るケアマネジ メントの基礎学習として, 研修生 7から 8人を一グルー プに編成し, グループワークを行った. グループワーク は持参した事例に対して, 自立支援・介護予防の具体的 なアウトカム内容,それをもたらした各条件 (①本人・家 族条件, ②ケア提供者条件, ③ケアマネジメント条件, ④ その他) の内容をワークシートにしたがって記述しても らった. 析方法 今回は調査表とワークシートに記述された情報を 析 した. 自立支援・介護予防できた事例の背景やアウトカ ム内容, 各条件の内容等についてはカテゴリー 類を 行った. 倫理的配慮 まずケアマネジャーに調査目的と内容を示す文章で説 明・同 意 を 得 た. 受 け 持 ち 事 例 に 対 し て は ケ ア マ ネ ジャーから説明を依頼し, 同意の有無を文章に記載して もらった. 文章には目的, 内容, 同意の有無の他, 個人名 が特定される氏名, 住所, 連絡先は記載せず, 匿名で扱い プライバシーは配慮すること, 調査の協力によってサー ビスに不利益は生じないこと, 拒否してもよいこと, 情 報結果は研修会や研究に 用され発表されること, 調査 の責任者の氏名や連絡先を記述した. 結 果 研修に参加したケアマネジャー67人のうち, 43人が 事例を持参し, その中で研究 析として同意を得られた 事例は 36事例であった. そのうち利用者の背景の情報 が無記入であった一事例を除く 35人を最終的な 析対 象とした. 自立支援・介護予防できた事例の背景と利用サービス (表 1) 35人のうち年齢においては 70・80歳台がそれぞれ 11 人占め, 痴呆 (現名称:認知症) はなしが 16人, Ⅰ度 13 人であった. 主介護者の 康状態は良好, 関係も良好で あった者は 30人であった.主疾患では筋骨格・結合組織 疾患が 8人で, 脳血管性疾患は 2人であった. 呼吸器障 害や医療処置のある事例はいなかった. サービス利用で 一番多かったものは福祉用具貸与で 35人全員が利用し, 次いで通所介護, 訪問介護, 通所リハであった. 表1 自立支援・介護予防できた事例の背景と利用サービス n=35 内訳 n 年齢 50歳台 1 60歳台 4 70歳台 11 80歳台 11 90歳台 8 痴呆度 なし 16 Ⅰ 13 それ以上 6 家族との同居の有無 独居 10 同居 25 主介護者の属性 配偶者 9 娘 8 息子 5 その他 13 主介護者の 康状態 良好 30 不良 3 NA 2 本人と家族の関係 良好 30 不良 3 NA 2
事例の具体的なアウトカム (表 2) 自立支援・介護予防できた事例のアウトカムの内容を カテゴリー 類した結果, 本人の介護度が改善した事例 12人, 歩行が改善した事例 12人, 閉じこもりや外出の改 善者 8人,入浴ができるようになった 7人,意欲,気持ち, 発語の改善者 7人, 在宅生活の継続者 7人, 排泄の改善 者 5人, 転倒回数の減少者 2人, その他 7人であった. アウトカムを高める条件 (表 3) アウトカムを高めた条件の内容をカテゴリー 類した 結果, ケア提供者」の条件をもつ事例が 42人あり,その 内訳は, サービスが本人の意向にあわせて工夫」9 人, 状態にあわせた福祉用具, 住宅改修」8人, スタッフの 声かけ, 意欲的な関わり」8人, 訪問介護のケアが適切」 6人, リハビリが効果的」6人であった.ついで, 本人・ 家族」の条件が 39 人みられ,その内訳で多かったものは, 家族が協力的」16人, 本人の意欲が高い」14人であっ た. ケアマネジャー」の条件は 36人であり, 本人・家 族の連絡を密にした」15人, 効果的なサービスの組み合 わせケア内容, 量の調節」12人, サービス事業所との連 携を密にした」5人, タイミングのよいマネジメントを した」4人等があった. 察 自立支援・介護予防しやすい利用者の特徴 自立支援, 介護予防できた事例 35人のうち要介護 2 主疾患 筋骨格, 結合組織疾患 8 大 骨骨折 3 脳血管性疾患 2 その他 10 言語障害 あり 5 なし 20 呼吸器障害 あり 0 なし 35 医療処置 あり 0 なし 35 サービス利用 福祉用具貸与 35 通所介護 23 訪問介護 14 通所リハ 8 短期入所 3 訪問看護 1 訪問リハ 1 NA:Not Answered *複数回答 表2 事例の具体的なアウトカム n=35 大カテゴリー n 小カテゴリー n 本人の介護度が改善した 12 要介護 2からそれ以上に改善した 5 要介護 4からそれ以上に改善した 3 要介護 3からそれ以上に改善した 2 要介護 1から要支援となる 1 要介護 5が 2になった 1 歩行の改善 12 車椅子から歩行できるまでに改善した 4 寝たきりから歩行できるまでに改善した 3 介助・杖歩行から自力歩行までに改善した 3 シルバーカー歩行から自力歩行までに改善した 2 閉じこもり・外出の改善 8 閉じこもりの改善 5 他者との 流・外出できるようになった 3 入浴できるようになる 7 自宅での入浴ができるようになった 5 特浴から一般浴が利用できるまでになった 2 意欲, 気持ち, 発語の改善 7 意欲の向上 3 表情が明るくなった 2 笑顔, 発語できるようになった 2 在宅生活の継続 7 独居生活が継続できている 4 重度でも自宅生活できている 3 排泄の改善 5 トイレ動作の自立 3 失禁がなくなった 2 転倒回数の減少 2 転倒回数が減少した 2 その他の症状の改善 7 褥瘡が完治した 1 寝起きが自 でできるようになる 1 寝たきりから立位ができるようになった 1 台所に立ち食事が作れるようになった 1 飲酒がなくなった 1 訪問看護の回数が減少した 1 経管栄養から経口摂取できるようになった 1 注:複数回答あり
表3 アウトカムを高める条件 n=35 大カテゴリー n 中カテゴリー n 小カテゴリー n ケア提供者の条件 42 サービスが本人の意向にあわせて工夫 9 本人の意向を尊重したサービスの工夫がなされていた 4 ディサービスのプログラムがよかった 1 骨盤底筋の運動の紹介され提供された 1 外出したいという意欲を高めるディサービスの工夫があった 1 ディサービスがあまり手を出さず見守りを多くした 1 トイレ誘導を強化した 1 状態にあわせた福祉用具, 住宅改修 8 ウォシュレット, ポータブルの福祉用具の選択がよかった 1 ベッド, 車椅子, ポータブルトイレ用手すりの有効利用 1 本人の身体機能にあった低床ベッドの提供ができた 1 理学療法士による診断のもと住宅改修が行われた 1 状態に合わせたベッド, 手すり, オーバーテーブルの福祉用具 1 昇降座椅子が効果的に利用できた 1 住宅改修をし入浴環境が整った 1 住宅改修をし自 でもリハビリができる環境になった 1 スタッフ声かけ, 意欲的な関わり 8 ディサービスの有償ボランティアが本人の話をよく聴いた 1 ヘルパー, ディサービス職員の定期的な声かけ 1 老 スタッフのリハビリの動機付け励ましが有効的であった 1 本人とディケア職員との関わりが良好であった 1 ディサービスでの浴槽の出入り, 歩行時の言葉かけがよかった 1 トイレ誘導の声かけの工夫 1 特養スタッフの「回復させたい」という気持ちが強かった 1 スタッフ同士で勉強会を実施し技術の向上を行っている 1 訪問介護のケアが適切 6 足元の整理整 ができた 1 ケアマネと同行し訪問し話をきき信頼関係につなげた 1 ヘルパーによる服薬管理の徹底 1 ヘルパーによる移乗介助がよかった 1 ヘルパーさんの対応が適切であった 1 ヘルパー同士の連携, ヘルパーと家族の連携がよくとれていた 1 リハビリが効果的 6 パワーリハビリが本人にあっていた 1 自宅環境に適したリハビリが提供できた 1 訪問リハ, 通所リハを導入 1 通所リハを毎日導入よい刺激となった 1 2ヶ月に 1回理学療法士によるプログラム見直しと評価を行った 1 見守りの中で歩行訓練ができた 1 サービス間の連携ができていた 3 デイサービス, ヘルパーの協力ができていた 1 スタッフ間 (医師, 看護師, 介護職員) の意志が統一できた 1 サービス提供者の連携のもと精神的サポートができた 1 その他の特定のサービス 2 訪問看護師がきてくれ本人・家族に安心感があった 1 主治医が本人の意向を組み入れ協力体制ができていた 1 本人・家族の条件 39 家族が協力的 16 家族が協力的である 6 家族の働きかけが積極的である 6 家族間の協調性がある 2 家族の理解がある 1 家族の意欲がみられる 1 本人の意欲が高い 14 本人のよくなりたいという意欲がある 11 本人がリハビリが好きである 1 退院と同時に本人が一生懸命リハビリを行った 1 自宅ですごしたいという強い意思があった 1 本人の状態がよい 3 本人の 康状態が良かった 1 病状の改善がみられた 1 本人の栄養状態改善 1 住環境が整備されていた 3 住環境が整備されていた 2 住宅環境がバリアフリーで良かった 1 友人づくり 2 ディサービスに知り合いがいた 1 自 の条件に近い友人をつくった 1 介護者のゆとり 1 サービス利用により主介護者の休憩時間ができた 1 ケアマネの条件 36 本人・家族の連絡を密にした 15 頻回の訪問で本人・家族と話し合った 9 声かけを盛んに行った 2 連絡調整に時間をとった 1 家族との話し合いを多く持てた 1 家族と本人の話し合い 1 サービス事業所の見学を家族と一緒にしてすすめた 1 効果的なサービスの組み合わせ, ケア内容, 量の調整 12 本人にあわせて適切な施設や居宅サービスを組み立て提供された 6 本人の意向や能力に合わせてサービスを組み立てた 2 本人の状態に合わせてサービス調整した 2 福祉サービスの導入 1 排泄方法の細かい手順について打ち合わせをして方法を えた 1 サービス事業者との連携を密にした 5 サービス提供者から毎日情報を得た 1 民生委員との連携ができた 1 サービス提供者と家族の話し合い 1 スタッフミーティングを頻回に実施した 1 支援センターと居宅介護支援事業所の連携が良好であった 1 タイミングのよいマネジメントをした 4 退院直後からリハビリが行われた 1 調査時からプランの相談を行いタイミングよく介護者と関われた 1 退院に向けて病院でカンファレンスを行ったこと 1 退院前に外泊し各職種との打ち合わせにより福祉用具の準備ができた 1 その他 近所の協力 1 近所の人の協力で独居生活を継続できた 1 注:複数回答あり
が 1になった者が 5人, 認知症なし, Ⅰ度までが 8割を 占めた. 寝たきりになる前段階で, かつ認知症も軽度な 高齢者が自立しやすいといえる. すでに過去の研究では 介護度が軽度の者は改善しやすいといわれている. 本研 究でも同様の結果となったが, 加えて要介護 2の者も改 善が期待できるといえる. 新予防給付の対象に要支援, 要介護 1とされているので, それより重い者に対しては 介護給付のなかで予防, 改善を図っていく必要がある. また, 本研究では家族と同居している割合も高く, 主介 護者の 康状態や本人との人間関係も良好な事例が多 かったことから, 家族の協力やサポートが直接得ること ができる者は改善しやすいといえる. さらに, 本人の意 欲や家族の協力が自立支援の大きな条件として明確に なった. 本人の意思の働きこそが介護予防リハビリテー ションの基本といわれている. よくなりたいという本人 の意思, さらにそれを支える家族の協力は重要な条件と いえる. そのためにケアマネジャーは自立支援にむけて 本人や家族の力量を引き出し活用することで効率的なケ アマネジメントにつなげる必要がある.また,自立支援・ 介護予防できた事例の主疾患は筋骨格・結合組織疾患が 多く, 脳血管性疾患は少なかった. 増加する要支援, 要介 護 1者の原疾患は筋骨格系の疾患が多いといわれてい る. 複雑な障害をもつ脳血管性疾患より筋骨格系の疾患 による廃用症候群モデル者が介護予防しやすい対象とい える. アウトカムをあげるサービスの向上 自立支援・介護予防の具体的なアウトカムの内容の結 果から, サービスにより歩行の改善が期待できる. 足か ら年をとるといわれるように 康な高齢者であっても歩 行は老化の影響を受けやすいといわれている. 歩行能力 は IADL (Instrumental Activities of Daily Living),ADL (Activities of Daily Living), 介護度にも大きな影響を与 えることから早期に段階から改善のアプローチをしてい くことが求められる. 本研究では寝たきりや車椅子から 歩行ができるようになった事例がみられた. 転倒するか ら, 介護しやすいからといって車椅子のままでいると歩 行能力は確実に低下する. 歩行機能を高めるためには装 具や杖をうまく うこと,自宅では「もたれる」, 伝え歩 き」しながらも歩行できるように手すりや家具などの設 置など住環境を整える必要がある. また, 閉じこもりについても改善された事例が報告さ れた. 介護予防においては, 本人が人の集まる周辺に出 向くことがポイントになる. サービス提供者はタイミン グをつかみ, 外出したいと思わせるサービスの提供を行 う必要がある. しかし, 単に外部に出るために通所施設 に通えばよいのではなく, 逆に職員に依存する危険性が あることも知っておく, サービス提供者は本人のできる こと, したいことを見極め, 本人ができるように見守り, 誘導をする必要がある. それと同時に, 結果に示された ように本人のやる気を高めるスタッフの声かけ, 意欲的 な関わりも重要となる. その他, 本人の意欲が高まる, 入浴ができるようにな る, 在宅生活の継続, 排泄の改善, 転倒回数の減少などが 具体的なアウトカムとして明確になった. 日本人は入浴 が好きな人種であるが, できるだけ自宅で入浴できるよ うに訪問介護, 看護が支援していく必要がある. 今回は 特に訪問介護のケアが適切であることが自立支援の条件 にあげられた. 軽度者の利用度にとって訪問介護は利用 者の一番近くで, 頻回に関わるサービスである. 本人の 言われるままの「お任せ介護」をするのではなく,本人の 残存能力や潜在能力を引き出す援助を頻回に行っていく ことが自立支援につながる. 転倒回数の減少をもたら すためには, 転倒リスクマネジメントが必要となる. そ もそも自立支援にはリスクが伴う. リスクを事前に予測 し, その回避策を 慮しながら, 自立に向けた援助が求 められる. 転倒リスクマネジメント表の多くは病院や施 設用のものであるため, 今後, 居宅でのリスクマネジメ ント体制を整えていく必要があるといえる. ADL 悪化 予防をはかるケアのなかで最も有効なものは, 排泄自立 へのケアといわれる. 腹圧性尿失禁においては骨盤底の 運動が有効なように, 失禁ケアも自立支援に有効なケア であるといえる. 今回, 自立支援できた事例は認知症をもたないもの, Ⅰのレベルと軽度の者が多かった. 認知症の初期には脳 活性化リハが有効であるといわれている. 今後, 認知症 をもつ事例に対しては, 悪化予防をもたらす専門家のア プローチが必要といえる. 自立支援・介護予防をはかるケアマネジメント 本人や家族, サービス事業者との連携を密にすること はケアマネジメントの基本である. これまでのケアマネ ジメントの問題では, チームアプローチの欠如や医療と 介護システムの連携ができていないことが報告されてい る. 本研究結果にもあったように退院前から早期に在 宅まで一貫してマネジメントできる体制が求められる. さらにこれに加えて, 効果的なサービスの組み合わせ, ケア内容, 量の調整, タイミングのよいマネジメントが 必要となる. また, 早期にリハビリを開始できる体制を つくる, 介護保 険 制 度 以 外 の サービ ス も 組 み 入 れ る, サービスの組み合わせだけに注目するのでなく具体的な ケア内容も一緒に検討するなどの工夫も求められる. 中 谷ら は利用者アウトカムを高めるためにはケアマネ ジャーが必要なサービス量を見極めてプランを立てるこ
とや, モニタリング, 評価を行うことが重要であると述 べている. 今後, ケアマネジャーに対して自立支援, 介護 予防をはかるケアマネジメントプロセスの力量を高めて いくことが急務である. 本研究の限界性と今後の課題 本研究はケアマネジャーが自立支援, 介護予防できた と判断した事例を対象にした. 今後は判断基準を明確に して, 事例数を増やし, 統計解析による要因 析が課題 である. 謝 辞 調査にあたりご協力いただいたケアマネジャー, 要介 護者の方々に感謝いたします. 引 用 文 献 1. 厚生統計協会:国民衛生の動向 51.東京:厚生統計協会, 2004: 221. 2. 三浦 嗣. 介護予防と老人保 事業の見直し. 衆衛生 2005; 69 : 620-624. 3. 一郎, 大森 芳. 介護予防のエビデンス. 衆衛生 2005; 69 : 626-629. 4. 内田陽子. 在宅ケア利用者の自立促進に有効なケアに関 する研究, 日本看護管理学会誌 2004; 7: 31-40. 5. 島内 節, 森田久美子, 友安直子. 在宅ケア利用者のアウ トカム要因―ケアマネジャーの職種間別比較を通じて ―. 日本地域看護学会誌 2005; 7: 21-26. 6. 内田陽子, 在宅ケア利用者の要介護レベル別 ADL 変化 からみた費用の効率的な 用法. お茶の水医学雑誌 2002; 50: 145-156. 7. 藤原 茂:介護予防リハビテーション. 東京:青海社 2005: 70,83-84. 8. 鈴木みずえ, 浜砂貴美子, 満尾恵美子:高齢者の転倒ケ ア. 東京:医学書院, 2002: 5. 9. 大川弥生:新しいリハビリテーション. 東京:講談社現 代新書 2004: 109-123. 10. 森田靖久, 二宮佐和子:ホームヘルパーのための訪問介 護計画作成ガイド. 東京:日 研出版 2004: 30. 11. 山口晴保,左土根朗, 沼記代ら:認知症の正しい理解と 包括的医療・ケアのポイント. 東京:協同医書出版社 2005: 52. 12. 加藤裕子.在宅ケア先進国におけるチームアプローチ.日 本在宅ケア学会誌 2005; 9 : 5-9.
13. Nakatani H,Setsu S.Factors in care management affect-ing client outcomes in home care. Nursaffect-ing and health Sciences Journal. 2004; 6: 239-246.
Conditions to Support Independent Living
and Care Prevention for Home Care Clients
from Care M anagers Perspectives
Yoko Uchida
1 School of Health Sciences Faculty of Medicine Gunma University
Background and Aims: The purpose of this study was to identify conditions to support independent living and care prevention for home care clients from care managers perspectives. M ethods: We asked 67 care managers attending training for leaders in Gunma prefecture to fill in the questionnaire about cases with successful support of independent living and care prevention. The subjects for analysis were 35 of those cases whom we obtained their consent. The questionnaire included client background, outcomes,services the clients used and contents of the care plan. The care managers did a group work on the factor analysis. Result : Most of the clients with successful support of independent living and care prevention were clients with mild dementia before being bedridden. Musculoskeletal disorders were the most common primary diseases. Also,the primary caregivers health and relationship with the client were good in many cases with better outcomes. All the clients used welfare aids. Outcomes included care level,walking,withdrawal,bathing,willingness,continuous living at home,excretion and improve-ment of fall. The care providers conditions was a major followed by care managers. The care provider s conditions included improvement of the services, utilization of the welfare aids based on the client condition, staff calling to clients, home visit care and appropriate rehabilitation.The client and family conditions cooperation among family and clients willingness. Communication between the client/ family and home care agency, combination of effective services and adjustment of the volume were revealed to be the care managers conditions. Conclusion : It is necessary to perform care management and to provide services considering these conditions.(Kitakanto Med J 2005;55:105∼111)
Key Words: support of independent living, care prevention,care management,condition, care manager