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子育て支援の人類学的研究―仙台市の親たちの語りから

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著者

吉川 舞

雑誌名

東北人類学論壇

18

ページ

127-149

発行年

2019-03-31

URL

http://hdl.handle.net/10097/00126918

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子育て支援の人類学的研究―仙台市の親たちの語りから

吉川舞

1.はじめに

「子育ては大変だ」ということは、子どもを育てたことがない人でもなんとなく わかることだろう。しかしながら、「何がどのように大変だ」と具体的に理解してい る人はどれほどいるだろうか。本研究の目的は、子育てをしている人々が具体的に どのように困難を抱えているのかを明らかにし、その上でこれから必要となる子育 て支援を検討することである。 現代の日本では、未婚化や晩婚化、少子化の進行を背景として子育てに対する精 神的・身体的・経済的な負担を抱える家庭が増加しているという(内閣府 2018)。政 府は子育てを行う家庭を支援するために、様々な子育て支援施策を講じている(内閣 府 2016)。しかしながら、子育てや子育てと仕事、家事の両立に悩む親は依然とし て多数存在しており、新聞にも多くの悩める親たちの声が掲載されている (朝日新 聞 2018a, 2018b, 2018c)。 子育て支援に関する研究は、社会学、発達心理学、保育士養成課程など様々な分 野で行なわれている(阿部 2015; 柏木 2001; 松木 2015)。また、政府による子育て 支援施策の内容や効果についての検討、批判も盛んに行なわれている(早川 2018; 本田・伊藤 2017; 松島 2017)。しかし、子育て支援を人類学的に考察した研究は少 ない。 本研究では、子育て支援施設でのフィールドワークと現在子育てをしている人々 への聞き取りを通し、子育てを支援する側と支援される側双方の状況の事例を記述 していく。そして、その上で今後の子育て支援について検討していく。このように、 聞き取りとフィールドワークを通して人類学的に子育て支援について考えることに より、子育て支援研究と日本の子育て支援の拡充に寄与することを目指す。 筆者は本研究の中で2 種のフィールドワークを行なった。第 1 に、2017 年 7 月 から2017 年 11 月まで、仙台市内で運営されていた「ママカフェ」においてスタッ

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128 フとして働きながら行ったフィールドワークである。ママカフェとは、小さい子ど もを連れている人でも気軽に入ることができるようにという思いを込めて作られた 子育て支援カフェである。第2 に、仙台市内の K 保育園に通う園児の保護者 4 名に 対するインタビューである。K 保育園は東北大学が運営する保育園であり、通う園 児は東北大学に勤める人々の子どもに限られている。協力者の4 名は、筆者が K 保 育園の保護者全員に向けて行なった募集に対し、名乗り出てくれた人々である。 本研究では、ママカフェでのフィールドワークの結果から仙台市内で実際に行わ れている子育て支援の1 つを示し、子育てをする人々の語りを通しママカフェによ る子育て支援を見つめ直すことによって、今後どのような子育て支援を行うべきで あるか、考えていく。

2.子育て支援カフェ「ママカフェ」

ママカフェは、宮城県仙台市のある民間会社が企画・運営するカフェであり、仙 台駅近くに広がるアーケード街の端に位置している。通常営業では食事や飲み物、 デザートを提供し、月に1度のイベント日には食事の他にプロの演奏家を招いて楽 器演奏と絵本の読み聞かせを行っていた。 ママカフェが始まるきっかけは、実際に2 歳の子どもを育てている女性スタッフ による提案であった。そのスタッフは、子どもと街中に出かけた場合、食事をとる だけでも親は子どもが泣いたり走り回ったりしないようずっと神経を張っていなく てはならず、気が休まらないことが多いと感じていた。そして、子連れの人でも気 兼ねなく来て息抜きをできる場所を作りたいと思い、このカフェを提案したのだと いう。 2017 年 2 月、ママカフェは初開催された。そして、週 1~3 回程度の通常営業と、 月に1 回のイベント日の営業が行ってきた。 しかし、イベント日には客席がすべて 埋まることこそあれ、普段の来客数はあまり多くなかった。筆者がフィールドワー クを始めた7 月以降の様子を見ると、1 日に 1、2 組の来客がある日もあれば、全く 客が来ない日も多いという状況であった。9、10 月は特に来客が少なく、イベント 日を含めほとんどの営業日で来客が無かった。そして10 月下旬に、利用者が少ない

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129 ことを理由に11 月 17 日の営業をもって定期営業を終了することが筆者に告げられ た。その後は、予約が入ったときにのみ営業を行う不定期開催とすることになった。 以下、ママカフェでのフィールドワークに基づき、2 つのことに注目して述べる。 (1) ママカフェが提供していた支援 ママカフェは、実際に小さい子どもを育てているスタッフが、子どもを連れていて も気軽に出かけられる場所が欲しいという自身の悩みを考慮して提案し、営業内容 やイベントを決定したカフェであった。他のカフェにはあまりないママカフェの特 徴としては、広いキッズスペース、オムツ替え・授乳スペースの完備、ベビーカー での来店可能、飲食物の持ち込みが可能ということがある。ママカフェを行うホー ルの造りは図2-1 の通りである。オムツ替え・授乳スペースは、「赤ちゃんルーム」 と呼ばれる別室に用意されており、他の客の目を気にすることなくゆっくりとオム ツ替え・授乳を行うことができる。また、ママカフェは「子どもが泣いても、走り 回っても大丈夫」ということを広告チラシで宣伝している。実際に来店した子ども がホール内を走り回っても親やスタッフが注意することはほぼなく、親が子どもと 一緒に走って遊ぶこともある。子どもが泣いたり大声をあげたりした時にも、親が 泣き止ませよう、静かにさせようと焦る様子を見せることはなく、他の客もそれを 迷惑がることはなかった。むしろ、泣いたり騒いだりする子どもたちの様子を見て 親や他の客たちが笑い、ほのぼのとした雰囲気になることさえあった。

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図2-1: ホールの造り 出所: 筆者作成

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131 イベント日のプロの演奏家による楽器演奏は、子どもたちのことももちろんだが、 子どもが生まれたことでコンサートに足を運びにくくなった親たちのことを考えて 企画されたものである。そして、イベントでは楽器の材木についてといった明らか に大人向けの説明や、クラシック曲といった大人向けの選曲がなされていた。イベ ント中、子どもたちは曲に合わせて歌い踊ったり、「となりのトトロ」の挿入歌「さ んぽ」の演奏の時にはキッズスペースの上で行進したりして楽しんでいた。親たち はイベント時には子どもと体を動かしながら楽しんだり、演奏者の説明に耳を傾け て関心を示したりしていた。イベントについても、子どものみならず親も楽しんで いる様子であった。 また、アピールポイントとして公開しているものや、イベントの企画内容の他に も、スタッフたちは様々な気づかいをし、ママカフェを子連れでも来やすく、子ど もだけでなく親も楽しめる空間にすることを目指していた。親が共に来店した他の 大人たちとの会話を楽しんでいる時や、親が食事を終える前に子どもが飽きてしま った時には、スタッフが代わりに子どもと遊んだり、子どもが危険な目に合わない よう後ろからついて歩いたりもしていた。 ママカフェに来た親たちは、子どもと遊ぶことや子どもを遊ばせておいて休息す ること、一緒に来た人との会話を楽しむこと、イベントを楽しむことなど、過ごし 方を自由に選択していた。親たちは、子どもを楽しませたり、子どもと一緒に楽し んだりすることもあれば、子どもから少し離れ1 人でゆっくりと過ごしたり、友人 との時間を楽しんだりすることもあったということである。 ママカフェスタッフたちのねらいと実際の客たちの過ごし方を比較すると、子ど もを連れた客が気兼ねなく過ごせる場所をつくるということと、大人も子どもも楽 しめる場所にすることというスタッフのねらいと、客の過ごし方はほぼ一致してい ることがわかる。これらのことを踏まえ、ママカフェが提供していた子育て支援と は、「街中に子どもと出かけやすい場所を増やす支援」と「親の子育て、家事、仕事 からの息抜きの支援」であるとまとめることができる。 (2) ママカフェで見られなかったもの、できなかったこと (1)で述べたことの一方で、ママカフェにはいくつか見られなかったもの、できな

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132 かったことが存在する。 第1 に、ママカフェではその場に居合わせた客同士で友達になる様子を見ること ができなかった。原因の1 つには、来客が少なく同時に 2 組以上の客が居合わせる ことが少なかったことがある。また、2 組の客が居合わせることもあったが、その 場合でも互いに挨拶をしたり子どもの様子を見て微笑んだりする程度であり、会話 をすることはなかった。そのため、ママカフェに来て客たちが新しい友達を作って 帰るということは一切なかった。 第2 に、客たちはママカフェに来ても悩みを相談することはできなかった。ママ カフェスタッフには、カウンセラーや子育て経験者といった悩みを相談できる人は いなかった。また、先にも述べた通り同時に2 組以上の客がいることは少なく、2 組以上いてもほぼ会話することはなかった。そのため、客は仮に悩みを抱えてママ カフェに来たとしても、居合わせたほかの客に相談したり、アドバイスを求めたり することはできなかった。 第3 に、ママカフェでは託児は行なっていなかった。保育士がいる施設ではない ため、親たちがママカフェに子どもを預けて買い物などに出かけることはできない。 スタッフが子どもと遊んでいる間に親がご飯を食べたり、リラックスしたりするこ とはできても、完全に預けるのではなく必ずホール内にいなくてはならなかった。 ママカフェが不定期開催となっているのは、(2)で述べたようにママカフェには提 供できないものがあり、支援として不完全であったからなのだろうか。もしくは、 ママカフェが提供する支援がさほど多くの人々に求められていなかったからだろう か。これらのことを検討するために、第3 章では仙台市で子育てをする親たちへの インタビューをもとに親たちがどのような悩みを抱えてどのように解決するのかを 記述し、家族と外部の支援との関係性について検討する。第4 章では、親たちの語 りのうち特にママカフェが提供していた支援と関連する、子どもと出かけることと 親の息抜きに関するものについて述べていく。

3.子育てをしている人々の語り

―何に困難を抱え、どう解決するのか

筆者がインタビューを行ったのは、仙台市内で現在子育てを行っている4 人の親 たちである。以後、彼/ 彼女らに A” さん、B” さん、C” さん、D” さんと仮名をつ

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133 け、使用していく。 A” さんは、夫、2 歳の娘、3 カ月の息子と共に生活している女性である。A” さ んは 大学の事務職員として働いており、現在は育児休業中である(以下、育児休業は 育休と記す)。夫も働いており、育休、産前・産後休業を取っていない時には共働き の状態である(以下、産前・産後休業は産休と記す)。育休明けの職場への復帰はす でに決まっている。現在2 歳の娘は K 保育園に預けており、A” さんが復職する時 には息子も保育園に預ける予定だという。 B” さんは夫、7 歳の娘、2 歳の息子と暮らす女性である。B” さんは歯科医師で あり、息子が生まれる前に自身の医院を開業して現在は院長を務めている。B” さん も夫もフルタイムで働いており、息子は保育園に預けている。自宅の近くにはB” さ んの実家があり、両親に時折家事や子どもの世話を手伝ってもらうことがある。ま た、和歌山に住む夫の両親にも助けを求めることがあるという。 C” さんは台湾出身で、日本で結婚、出産し、子育てをしている女性である。家族 構成は夫、5 歳の娘、2 歳の息子と C” さんの 4 人家族だが、夫が単身赴任中である ため現在はC” さん、娘、息子の 3 人で暮らしている。C” さんは大学の教員であり、 日中は娘と息子を保育園に預けて仕事をしている。夫は2 週間に 1 回程度、土日を 利用して自宅に帰ってくる。C” さんは台湾出身ではあるものの、大学生の時に日本 に留学して以来日本で過ごしており、日本語での会話にはほぼ不自由を感じていな い。また、台湾と日本の生活のギャップに苦しんでいるということも全くない。し たがって、本研究では C” さんを「日本で子育てをする外国人女性」ではなく「日 本で子育てをする女性の1 人」として扱うこととする。 D” さんは妻と 2 歳の息子と共に暮らす男性である。D” さんと妻はどちらも大学 の医学部に勤めており、平日の日中は息子を保育園に預けている。D” さんは育休 こそ取得しなかったものの、日常的な家事・子育てに毎日携わり、妻と協力しなが ら子どもを育てている。D” さんの両親は福井、妻の両親は東京に住んでおり、助 けを求めることは容易ではないという。 以下、インタビュー協力者たちの語りから、彼/ 彼女らがどのような困難を抱え ているのか、その困難をどのように解決しているのか、親たちと外部(家族以外)か らの支援との間にはどのような関係があるのかということに注目し、それぞれ述べ る。

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134 (1) インタビュー協力者たちが抱える困難 4 人のインタビュー協力者たちは、大きく分けて仕事と子育て、家事の両立、子 どもの言動や行動によりはかどらない家事、2 人の子どもを育てることについて困 難を抱えていた。 特に仕事と子育て、家事の両立には苦労が多いという。A” さん、B” さん、C” さ ん、D” さんは皆、子育てと仕事の両立について、「大変だ」という様に即答した。 A” さんは現在育休中だが、娘の育休明けから息子の産休に入るまでの間に仕事を フルタイムでしながらの子育てを経験している。A” さんは当時を振り返り、「思い のほか時間に、そしてそれ以上に気持ちに余裕がなくなっていましたね」と語る。 仕事を休んでいる現在は朝に娘がぐずってもそれに付き合ってあげられるが、仕事 をしていた時には「そんなこと言ってもママも仕事だから! 」と言って、「娘を無 理やり引きはがしてでも」車に乗せていたという。現在は娘と息子の2 人を育てて いるが、2 人育てるよりも仕事をしながら 1 人育てる方がよっぽど大変だと感じる ほどだという。 また、D” さんは現在、息子や妻が起きる前の朝 4 時に起床し、息子が起きるま での間に論文の執筆などを行って自分の時間を確保するようにしている。反対にD” さんの妻は、D” さんと息子が寝た後に深夜まで起きて自分の時間を確保している という。D” さん夫婦がこのように時間の分担をするようになったのは、息子が生 まれ保育園の送り迎えや家出の息子の世話をしなくてはならなくなり、職場にいら れる時間が最大4 時間減って、従来通りの生活をしていたら仕事をやりきれなくな ったからだという。息子を保育園に預けるようになってから1 年間ほど試行錯誤を 繰り返し、現在のスタイルを確立させたとD” さんは語る。C” さんもまた、子育て を始めたことによって以前と同じように働くことはできなくなったという。仕事の 重要な部分をやっていても、子どもを保育園へ迎えに行く時間が来れば途中でやめ なくてはならない、次の日の朝からまた再開することになるが、前の日と同じ状態 まで気持ちを戻すことは難しい、とC” さんは語った。C” さんはこの変化について、 「仕方ない」としながらも、「効率はほんとに悪くなるけど」と語る。そして、「こ の状態がいつまで続くんだろうな」と不安を感じることもあるという。D” さん、C” さんのように、子どもができたことによって仕事の仕方を変えざるを得ないことは 少なくないようだ。

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135 また、働きながら子どもを育てている場合、子どもが熱を出して保育園に預けら れない日には仕事を休んだり、早退したりしなくてはならない。病児保育を利用し たり、身近な人に子どもの世話を頼んだりすることもできるが、筆者がインタビュ ー協力者の4 名は基本的に夫婦の一方が仕事を切り上げて対処するようにしている という。仕事を休む時にはやりきれない仕事を同僚にわかりやすく頼んだり、限ら れた時間でどう仕事を片付けるか計画を一から立て直したりしなくてはならなくな り、そこに苦労を感じることが多いと協力者たちは皆語った。また、子どもの体調 は1 日で治らないことが多い上、子どもが 2 人いれば 1 人の体調が治ってももう 1 人が体調を崩すこともあり、何日も続けて仕事を休まなくてはならないこともある という。 インタビュー協力者たちは以上のように子育てをする上での困難を語ったが、彼/ 彼女らは子育てそのものに困難を感じているわけではないようだ。例えば子どもが 熱を出した時のことについては、4 人とも「子どもが熱を出すことは仕方ない」と いう旨の発言をしている。しかしながら、子どもが熱を出して仕事を休まなくては ならず、職場の人々に連絡をとって折り合いをつけなくてはならなくなると、面倒 さなどのマイナスの感情を抱くのだという。このように、彼/ 彼女らの抱えている 困難を俯瞰すると、子育てそのものというよりも子育てと仕事、子育てと家事、2 人の子どもの世話といったように何か2 つ以上のことが重なり、折り合いをつける ことが難しくなったことにより生じている困難であるとうかがえる。 (2) 困難の解決方法 A” 、B” 、C” 、D” さんの語りからは、親たちの子育てと家事は基本的に夫婦で 行なうものだという考えがうかがえる。 4 人のインタビュー協力者それぞれの 1 日の過ごし方を聞いても、家政婦、ベビ ーシッターといった言葉が出てくることはない。また、4 人の親たちは皆、基本的 に家事は夫婦で協力して行なっていると答えている。B” さんは両親や義理の両親に 家事と子育てを手伝ってもらうことも多いが、彼女はこれを両親による「家事サポ ート」と呼んでいる。ここから、B” さんにとって両親による家事と子育てはあくま で補助的なものであり、本来家事、子育てを行なうべきは B” さん夫婦であるとい う認識がうかがえる。また、4 人の親たちの困難の解決方法をみると、仕事と子育

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136 てを両立できる環境を自分たちで整える、夫婦の一方が仕事を休んだり予定をあき らめたりする、そしてポジティブに考えるということを行なっており、まずは夫婦 で困難の解決を試みていると考えることができる。普段の家事、子育て、仕事以外 に子どもの発熱という緊急事態が発生したり土日に学会・仕事が入ったりしても、 「自分でできないことはないから」と言ってA” さん、C” さん、D” さんはベビー シッターや病時保育を利用しようとはしない。C” さんと D” さんは親に頼ることも あるが、それもどうしても外せない用事があり子どもの面倒を見られない時だけだ という。また、B” さんは両親が近所に住んでいることもあり、他の 3 人よりも親 を頼ることは多いものの、親が孫の世話によって体調を崩すことがないように、意 図的に頼りすぎないようにしているという。 以上のように、4 人の親たちの語りからは、彼らが子育てと家事は基本的に夫婦 の手によって行なわれるべきものだと考えており、夫婦でどうにかできることであ れば、多少無理をしてでも夫婦でやってしまうことがうかがえた。両親など家族以 外の人々を頼ることもあるが、それはほとんどが夫婦で解決しきれなかった時や夫 婦で子育てを行うなかで疑問が生じた時である。彼らは困難に直面した時でも最初 から外部をあてにするのではなく基本的に自分たちで解決しようとし、夫婦でやり きれなくなった部分のみ外部に頼っている。 (3) 外部への頼り方、家族と外部の支援の関係性 夫婦で解決できない事項に関する親たちの外部の頼り方をみると、用途により 様々な頼り先から1 つを選択していることがうかがえた。子どもと預けたり、家の 中の家事をしてもらったりするのは親、子育ての疑問や不安な点の解消には保育園 の先生(保育園に通い始める前には市営の施設や育児書)、多くの人の意見を知りた いときにはインターネットとSNS といったように、頼り先の用途は分かれているよ うだ。インタビュー協力者たちの中で、子育て上の疑問も親に尋ねる、あるいは土 日にどうしても子どもの世話を頼みたいときにも保育園の先生を頼るといったよう に、すべての物事を1 つの頼り先に頼むと言った人はいなかった。ここから、A” 、 B” 、C” 、D” さんが 1 つの頼り先に全ての困難の解決を求めるのではなく、その 目的によって頼る先を変えていることがうかがえる。 以上の(3)の記述と(2)で述べたことを総合して、4 人の親たちと外部の様々な支援

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137 の間には、親が困難に直面して家族で対応しきれない時にのみ外部に支援を求め、 頼るときには目的に応じて親たちが支援を求める先を選択するという関係性がある とみることができる。

4.ママカフェの支援と親たちの語り

ここでは、ママカフェが提供しようとしていた支援である「街中に子どもと出か けやすい場所を増やす支援」と「親の子育て、仕事、家事からの息抜きの支援」に 関連する親たちの語りの内容についてそれぞれ記述し、その特徴をまとめていく。 (1) 子どもと街中へ外出すること 親たちはママカフェを発案したスタッフの指摘通り、街中への出かけにくさを感 じていた。 行き先を選ぶ際には、子どもの体力面から時間、距離、場所を選択しなくてはな らないとD” さん、C” さんは語った。また、4 人のインタビュー協力者たちは、食 事場所を選ぶ時に子どもが食事をしやすい設備があることの他に子どもの存在によ って周囲に迷惑がかからないかどうかも考慮に入れている。あまりに狭い店や静か な店では子どもが泣いた時に目立ったり、対処しにくかったりするため、避けると いう。これらを考慮する結果、「子ども連れでも行きやすいところにしか行けなくな る」と4 人の親たちは語る。また、A” さん、C” さん、D” さんは出かける前には 出かけ先で困らないように多くの荷物を用意し、持ち歩かなくてはならないと語っ た。彼らはもしも店に準備されていない時のことを考えて子ども用のフォークやス プーンを用意したり、もしも子どもが泣いてしまった時に対処できるようにおもち ゃやおかしを用意したりしている。このように、「もしも」のことを想定し、街中で 何かが起こったときに自分たちで何とかできるようにしているのである。また、実 際に出かけた先では、子どもがどこかへ走っていってしまったり、食事を食べなか ったりと予期せぬ行動をし、困ることがあると親たちは語った。 また、A” さん、B” さん、C” さん、D” さんが共に出かけ先、特に食事場所で困 ることに挙げたのは、子どもが騒ぎ出すことと、泣き出すことであった。子どもが 泣き出した場合、4 人の親たちは皆周囲の人々に迷惑になると考え、子どもを静か

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138 にさせようと努めたり、子どもを連れて外へ連れ出したりしているという。 興味深いのは、4 人のうち誰 1 人として実際に周囲の人から注意を受けたり、に らまれたりしたことはこれまでにないということである。A” 、B” 、C” 、D” さん は「子どもの泣き声、騒ぎ声は周囲の人々にとって不快だろう」と考えて最初から 子どもの声が目立ちやすい場所は避けたり、泣かないよう対策を講じたり、店内で 泣いた場合には外に連れ出したりしている。しかし、出かけ先で周りの人に注意を 受けたり、嫌な顔で見られたりしている人は 1 人もいない。B” さんは、むしろ最 近では子どもをかわいがってくれる人が多いとも感じているが、それでも親として は周囲への配慮を怠ってはならないと考えている。このように、実際に子どもの騒 ぎ声、泣き声で失敗した経験があるわけではなくても、「周囲の人々にとって子ども の泣き声、騒ぎ声は不愉快なもの」、「子どもを静かにさせておくのは親の役割」と いうイメージを4 人とも持っていて、そのイメージのもと子どもが店内で泣いたり 騒いだりしないよう気を配っているのである。 (2)息抜きを積極的に求めない 親たちの息抜きの仕方や息抜きの捉え方をみると、彼らがあまり積極的に息抜き を求めていないことがわかる。 A” 、B” 、C” 、D” さんは皆、平日のほぼすべての時間を仕事と子育て、家事に 費やしているが、休みの日も自分たちの息抜きに使うということはなく、出かける とすれば子どもの喜ぶ場所を選んで出かける。しかし、そのことに精神的苦痛を感 じている様子は一切無かった。また、B” さんは仕事や子育て以外の自分の時間を持 てないとしても「仕事が自分の時間」と捉えるようにして解決しているという。ま た、C” さんは子育ても仕事も忙しく、「もう嫌」とまで感じることもあるとしなが ら、息抜きの方法を考えることも面倒になりひたすら耐えると語っている。A” さん も、子育て、家事を休みたいという気持ちをもつことも多いが、すぐに息抜きを求 めようとはせず、ある程度我慢すると語っている。このように、親たちは息抜きを あまり積極的にしようとはしない。息抜きをするとすれば、隙間時間を見つけて短 い時間でできることをする、夫婦交代でするといったようにできる範囲で行なって いる。 しかし、4 人のインタビュー協力者たちは皆、息抜きをできない状況についてい

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139 らいらとしたり、うんざりとしたりすることはなく、「しょうがない」と捉えている ことがうかがえる。仕事や子育ての方が優先すべきことだと考えて、自らの選択で 息抜きを後回しにしている。彼らにとっては仕事や子どもの世話、家族で過ごす時 間、子どもの喜ぶ姿の方が優先順位は高く、自分の趣味や息抜きはかなり下の方の 位置づけとなっている。

5.考察

本章では、仙台市で子育てを行う4 人の親たちの特徴の考察、親たちの語りを基 としたママカフェによる支援の再検討、そして今後行うべき子育て支援の検討をそ れぞれ行う。 (1) 仙台で子育てをしている 4 人の親たちが持つ特徴 (a) 子育て私事論の浸透 子育て私事論とは、「子育ての責任を家族に帰属する」(松木 2015: 219)という 考え方である。社会学者の松木は、子育て支援を提供する人々に注目して子育て私 事論について論じている。子育ての社会化によって子育てをしている人々を社会全 体で支援しようという考えが浸透している中、その実践者である支援提供者たちが、 子育ては本来家庭によって行なわれるべきものという考えを持ちながら支援を家庭 に提供しているというのが松木の主張である(松木 2015: 218-220)。 筆者は仙台の親たちの語りから、この子育て私事論が実際に家庭の親たちにも浸 透していると考える。すなわち、親たちが「子育ては家族によって行なわれるべき もの」と考えているということである。筆者がインタビューを行なった4 人の親た ちは、誰1 人として家政婦やベビーシッターを利用してはいなかった。子どもが熱 を出すなどの緊急事態が起こった時でも、できる限り親自身が仕事を休んで子ども と一緒にいると彼/ 彼女らは語っている。仕事と子育て、家事を両立することは決 して容易ではないが、それでも親たちは子育てと仕事を両立できる環境を自ら整備 したり、本当に必要な予定以外は諦めたりすることによって対応していた。自分が 無理をすれば何とかなるのであれば、多少の無理はいとわないような様子であった。 また、インタビュー協力者のB” さんは両親に日常の家事や子育てを頼むことが多

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140 いが、彼女はこれを「家事サポート」と呼んでいる。ここから、B” さんが両親(子 どもから見た祖父母)による家事や子育てはあくまでも「サポート」すなわち「補助 的なもの」であり、家事と子育てを中心に行なうべきはあくまでB” さんやその家 族であると考えていることがうかがえる。 松木は、子育て支援の提供者たちは子どもは本来家族の手によって育てられるべ きだという考えをもち、自分たちが子育て支援を行なってもよいのかというジレン マを時に抱えながら、支援を行なっていると述べている(松木 2015: 219-220)。そ して彼らは、自分たちが行なう支援を家族が行なうべき子育ての代替ではなく、家 族関係への支援であると解釈したり、提供する支援を「家庭的な」やり方に近づけ たりすることによって、そのジレンマの解決を図っているという(松木 2015: 142, 223)。ジレンマを解決するにあたり、「子育ては必ずしも家族によって行なわれな くてもよい」と考えることはない(松木 2015: 142)。このように、松木は子育ての 社会化を実践しているはずの子育て支援の提供者たちの間に子育て私事論が浸透し ていると主張している。 そして、本研究における子育てをしている人々へのインタビューからわかったの は、松木が日本の子育て支援の前提にあると主張する子育て私事論が、支援を受け る側である家庭にも浸透しているということである。支援を受ける子育て家庭もま た、家事や子育ては基本的に家族で行なうべきであり、極力支援を求めるべきでは ないという考えを持つことが親たちの語りには現れていた。 親たちへの子育て私事論の浸透は相当に根深いものだと筆者は考える。第5 章で 筆者は、周囲の人々から子どもの泣き声や咎められたことがなくても親たちが「子 どもの泣き声、騒ぎ声は騒音であるから親として子どもを静かにさせておかなくて はならない」というイメージをもち、出かけ先で対応を行なっていると述べた。子 育て私事論が「子育ての責任を家族に帰属する」(松木 2015: 219)という考え方で あるということは、繰り返し述べている通りである。松木の主張からは、この「子 育ての責任」を子育て支援者たちは「子どもの世話をし、育てていくこと」と捉え ていることがわかる(松木 2015: 105-246)。一方で、親たちは「子育ての責任」を 単に外部に頼らずに自分たちで子どもを育てるだけではなく、周囲に迷惑をかけず に育てなくてはならないと考えていることが、出かけ先での子どもが泣いた時の対 応などからうかがえる。親たちは「子育ての責任」を松木が取りあげた子育て支援

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141 者の提供者たちよりもより重く、広く考えているということではないだろうか。そ の結果、周囲に言われずとも子どもが周囲に及ぼす迷惑を懸念し、気を緩められな い状況になっているのではないだろうか。 (b) 抱える困難と外部の頼り方 筆者がインタビューをした4 人の親たちは、仕事と子育て、家事の両立、子ども の言動や行動に妨げられて家事がはかどらないこと、子どもが2 人いれば 1 人の場 合の倍以上手がかかってしまうことに困難をかかえていた。4 人の親たちは日本で 問題視されている子育て不安を抱えている様子はなかったものの、仕事と子育ての 両立を中心に多くの困難をかかえていたのである。(a)で述べたように、4 人の親た ちには子育て私事論の浸透が見られ、基本的にはこれらの困難をともに暮らす家族、 とりわけ夫婦のみで解決しようとしている。親たちは最初から外部を頼ろうとする のではなく、夫婦で解決を試みた上で、どうしても解決できない時にのみ外部を頼 る。 親たちの外部への頼り方を見ると、1 つの頼り先に全ての支援を求めるのではな く、用途により様々な頼り先から適切なものを1 つ選択していると考えられる。例 えば子どもを預ける時には親、子育て上の疑問の解消には保育園の先生、広く意見 を知りたい時にはSNS を選択している。親に子育て上の疑問の解消を求めることも なければ、保育園の先生に休日に子どもを預かるよう頼むこともない。頼り先によ って、親たちが求める支援は異なっているのである。 以上から、親たちには 困難に直面して家族で対応しきれない時にのみ外部に支援 を求め、頼るときには目的に応じて支援を求める先を選択するという特徴があると 筆者は考える。また、「家族で対応しきれない時にのみ頼る」ということから支援 を求めるタイミングを決めるのは家族であり、支援の選択の主体が家族にあるとい える。これも、親たちと外部の支援の関係の特徴の1 つといえるだろう。 (c) 息抜きの優先順位が低い 最後に、息抜きをあまり優先的に行なわないという特徴があるということができ る。先にも述べた通り、インタビュー協力者たちは息抜きを積極的に求めていなか った。彼/ 彼女らは仕事や子育て、家族で過ごす時間を確保するために、自ら選択 をして諦めたり、後回しにしたりしているのである。

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142 親たちが息抜きを求めないのは、(b)で述べた親たちの外部への頼り方も関係して いると筆者は考える。(b)では、親たちが基本的には夫婦で問題の解決を図り、どう しても自分たちでは問題を解決できない場合にのみ外部を頼るという特徴をもつと 述べた。例えば「土日に夫婦ともどうしても外せない仕事があり、子どもの世話を する人がいない」という問題であれば、緊急性があり、自分たちではどうにもでき ず外部を頼る必要があるとすぐにわかる。しかしながら、「仕事、家事、子育てば かりで疲れている」という問題は、我慢をしたり、他にもっと重要なことがあると 考えて自分を納得させたりすることができる。疲れているといった問題は、自分の 我慢や解釈である程度解決することができるため、「息抜き」を親たちは簡単に後 回しにしてしまうのではないだろうか。 また、息抜きを行なわないことは、日本人の「まじめさ」にも関わりがあると筆 者は考える。まじめで勤勉であることは、日本人の特徴の1 つであるとされている (山中 2011)。とりわけ労働について、日本人はまじめである。仕事に対する勤勉さ を大半の日本人はプラスのイメージで捉えており、日本では一生懸命に仕事をする ことが良いこと、規範的だとされる(武田 2008: 55; 山中 2011: 23)。戦後における 日本の急激な経済成長も日本人の仕事に対するまじめさが大きく関わっているとい う(武田 2008: 55)。また、日本ではしばしば、家事や子育ても親(特に女性)にとっ ては仕事と見なされる(中谷・宇田川 2016: 2)。実際に筆者がインタビューを行なっ た4 人の親たちも、家事や子どもの世話を今自分がやるべきこと、親の役割という 旨の発言をしている。ここから、彼/ 彼女らが家事と子育てに義務感をもっている ことがうかがえる。このように家事や子育てを仕事として扱うため、仕事にまじめ に取り組むべきだと考える日本人は、家事と子育てにも一生懸命取り組まなくては ならないと考えるのではないだろうか。加えて、給与労働とは違い子育てには明確 な休日がもうけられていない。給与労働が休みとなることが多い土曜日と日曜日で あっても、子育てという仕事は続く。したがって、「まじめな」日本人の親たちに は「子育てを休んで息抜きをしよう」、もしくは「息抜きをしてもよい」と感じる タイミングが少ないのではないかと筆者は考える。

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143 (2) ママカフェの支援の再検討 ここでは、ママカフェによる支援の意義について子育てをする4 人の親たちへの 語りから再検討していく。ママカフェの支援とは、「街中に出かけやすい場所を増 やす支援」と「親の子育て、家事、仕事からの息抜きの支援」であった。また、筆 者はママカフェには友だちづくり、悩み相談、託児というできないことが存在して いたということも指摘した。そして第2 章の最後には、ママカフェの客足が延びず 2017 年 11 月をもって不定期開催となったことについて、その原因はママカフェに はできないことがあり、支援として不完全であったからなのか、もしくは提供して いた2 つの支援があまり多くの親に求められていなかったのかという疑問を提起し た。ここでは、親たちの語りを基に、この疑問に答える形でママカフェの支援につ いて再検討を行なっていく。 (a) ママカフェの支援は不完全であったのか 筆者は、ママカフェの支援は不完全であったわけではないと考える。第3 章の記 述をもとに、筆者は子育てをする人々と外部の支援との関係性について検討した。 その関係性とは、本章(1)(b)でも述べたとおり、「親の外部の頼り方には 親が困難 に直面して家族で対応しきれない時にのみ外部に支援を求め、頼るときには目的に 応じて親たちが支援を求める先を選択する」というものである。このように、親た ちの語りから子育てをする人々は1 つの頼り先にすべての支援を求めるわけではな いということがわかった。したがって、ママカフェにできないことがあったからと いってそれだけでママカフェの支援は不完全だったということはできず、欠けてい るものがあっても 「街中に出かけやすい場所をつくる支援」、「子育て、家事、仕 事からの息抜きの支援」として1 つの完全な支援であったということができると筆 者は考える。したがって、ママカフェが友だちづくり、悩み相談、託児という機能 に欠けていたために定着しなかったのかという疑問は否定できよう。 (b) ママカフェが提供する支援の妥当性 続いて、ママカフェが提供していた「街中に子どもと出かけやすい場所を増やす 支援」と「親の子育て、家事、仕事からの息抜きの支援」の妥当性について検討を 行なう。 第1 に、「街中に子どもと出かけやすい場所を増やす支援」に関しては、確かに 親たちに求められていたものだったということができる。第3 章の記述より、筆者

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144 がインタビューを行なった親たちの多くは子どもと街中へ出かけることに困難を感 じていた。彼/ 彼女らが出かける時に考慮していることは、子ども用のメニューが あるかどうか、子どもに食事を食べさせやすい設備が整っているか、使いやすいト イレやオムツ替えのスペースがあるかどうかといったことであった。また、親たち は子どもの泣き声、騒ぎ声が周囲に与える不快感を大変気にしていた。ママカフェ は子ども用のメニュー、キッズスペース、オムツ替え・授乳スペースの完備、子ど もが泣いても走り回っても大丈夫であることを売りにしており、街中に出かける際 の親たちの困難を解決できるものが揃っている。親たちは子どもがいると「出かけ やすいところにしかでかけられなくなる」ということも語っている。そこで、ママ カフェが街中に子どもと出かけやすい場所をつくる支援を行い出かけやすい場所を 増やしたことは、親たちにとって実際に有益なことであったといえよう。 第2 に、「親の子育て、家事、仕事からの息抜きの支援」の妥当性について検討 を行なう。この支援は、必ずしも親たちの求めるものではなかったといえるだろう。 (1)(c)でも述べたとおり、筆者がインタビューを行なった親たちには自分の楽しみな 時間、息抜きをあまり積極的に求めないという特徴があった。なぜなら息抜きより も、仕事、家事、子どもの世話や子どもを喜ばせることの方が自分たちにとって優 先するべきことだと考えているからである。そのため、出かけ先を選択する時にも 親の希望で行き先を選ぶことはなく、子どものことを第一に考えていた。したがっ て、この支援は多くの親が求めているものとはいい難く、ママカフェが流行らなか った1 つの原因であるということができるかもしれない。 (3) 今後行なうべき子育て支援 ここでは以上で述べてきたことを踏まえ、今後行なうべき子育て支援の提言を行 なう。筆者は2 つのことを今後行なっていくべき子育て支援として提案する。 (a) 小さい子どもを連れた親が出かけやすい場所を街中に増やす支援 第1 に、「小さい子どもを連れた親が出かけやすい場所を街中に増やす支援」で ある。これはママカフェが提供していた支援の1 つでもある。先でも言及したとお り、筆者がインタビューを行なった親たちは実際に子どもと街中へ出かける際に困 難を感じており、ママカフェが提供していたこの支援は親たちのニーズと合致して いた。したがって、「小さい子どもを連れた親が出かけやすい場所を街中につくる

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145 支援」は親たちに求められているものであり、かつ拡充の余地が十分にある支援だ といえると筆者は考える。 インタビューをしていると、「子ども連れだと行きにくい場所」とは、親のイメ ージのみによってつくられている場合も多いのではないかと感じる。そこで、小さ い子どもを連れていても出かけやすい場所、入りやすい店である場合には「子連れ 歓迎」であることを大きくアピールすべきである。親たちは周囲からの注意を受け たことがなくても、自分の子どもが泣いたり騒いだりして周りに迷惑をかけること に敏感になっている。周囲から言われなくても気にしてしまうということは、周囲 が「大丈夫」といわなければ親たちは安心できないということである。したがって、 子どもを連れていても気軽に入ることができる店である場合には、そのことを店側 が親たちに伝えようとする必要があると筆者は考える。筆者がインタビューを行っ た4 人の親たちは、子どもといると「出かけやすい場所」にしか出かけられなくな ると語っている。「子連れ歓迎」という表示を増やすことによって、「ここも子ど もと行っても良い場所である」、「ここも出かけやすい場所である」と親が認識す る場所を増やすことができ、親が子どもと出かけるときの選択肢は広がるだろう。 また表示をすることで、親たちがこれまで避けていたような店であっても、店側 はあまり子どもの声を気にしておらず、子どもと一緒に入っても良かったのだと親 が気づくこともあるだろう。こうした気づきを繰り返すことによって、「子どもの 声が周囲にとって迷惑になる」という親の先入観を崩し、親が街中でもう少し楽に 過ごすことができるようになる可能性もあると筆者は考える。 (b) 息抜きの必要性に気づかせる支援 第2 に、「息抜きの必要性に気づかせる支援」があると筆者は考える。子育てをし ている親たちが子育て、家事、仕事以外の息抜きを積極的に求めず、後回しにして いることはこれまで述べてきた通りである。もちろん、第4 章で述べたように親た ちは息抜きができないことを「しょうがない」と捉えて受け入れていることも、で きる範囲での息抜きは行なっていることもあり、全ての人に息抜きの必要性を気づ かせる必要があるわけではないと考えられる。しかしながら、インタビュー協力者 のC” さんは、仕事と子育て、家事ばかりの毎日に「もう嫌」とまで感じながら、 リフレッシュする時間をもったいないと感じ「ひたすら耐える」と語っている。こ のように、息抜きをできないことに納得できなくなってもただ耐え続けるというこ

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146 とをしていれば、育児ノイローゼといった症状を発症する可能性も否めないと筆者 は考える。そのため、「息抜きを積極的に求めない」ということを親が持つ1 つの特 徴と認めて終わってはならず、息抜きの必要性を気づかせて息抜きを促がすことも 今後求められる1 つの重要な子育て支援だと筆者は考える。 政府は現在、仕事と子育ての両立支援に力を入れている(内閣府他 2016)。仕事と 子育てだけではなく、そこに「子育て以外の息抜き」も入れ、時にはリフレッシュ が必要だということへの認知を広めていくべきではないだろうか。また、インタビ ュー協力者たちのようにできる範囲での息抜きを行なっている人々の息抜きの仕方 を集約して発信し、子育てや仕事が忙しい中でも多少の息抜きは行なうことができ るということを、息抜きができないことにただ耐え続けている人々に伝えていくこ とも筆者は有効だと考える。 また、先にも述べたように、親たちが息抜きを積極的に求めないことは、日本人 の「まじめさ」とも関係していると考えられる。そのため、子育てのみならず、仕 事やその他の活動に従事する全ての人々に息抜きの必要性を説いていく必要がある と筆者は考える。社会全体に息抜きを大切にする風潮が生まれることによって、親 たちも今よりも当たり前のように息抜きを求められるようになるのではないだろう か。

6.おわりに

ここまで、インタビューを行った4 人の親たちの特徴を検討するとともに、ママ カフェの支援を見直してこれから必要な子育て支援の提言を行った。この研究を目 にした人々が、子育てをするということについて少しでも考えを深められたのであ れば幸いである。 しかしながら、本研究は仙台市で子育てをする4 人の親たちの声のみに基づいて 行っている。インタビュー協力者たちは皆、フルタイムの安定した職業についてお り、保育園にも子どもを預けられている。また、夫婦ともに家事、子育てに理解を 示し、協力し合っている。社会には彼/ 彼女らと異なり、休みが定まらない不安定 な職についていたり、復職したくても保育園を見つけられなかったり、パートナー の理解を得られずに1 人で仕事、子育て、家事を行っていたりする人も多数いる。

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147 そうした人々に話を聞いた場合、同じ子育てをする人々でもまた違った特徴が浮か び上がってくるはずである。そうすると、本研究で挙げたものの他に今後充実させ るべき子育て支援が見つかるだろう。 本研究の今後の展望としては、より多くの親たち、それも家族形態、職業、保育 園の利用状況、夫婦関係などが異なる様々な状況にある親たちの声を集め、親たち が必要とする子育て支援とは何か検討を重ね続けるべきである。「小さい子どもがい る」という共通点はあれども、他の抱える状況は家庭によってそれぞれであり、「今 後必要となる子育て支援」とはより多くの家庭に焦点をあて、考え続けなくてはな らない問題であろう。 子育てをしている人々がよりのびのびと過ごせる社会になることを願い、本研究 の結びとする。

引用文献

阿部和子 2015 『家庭支援論―子どもが子どもの生活をするために』東京: 萌文書林。 朝日新聞 2018a 「夫の家事育児 モヤッ」『朝日新聞』、2018 年 10 月 1 日。 2018b 「寝られぬママ つぶやく 700 人」『朝日新聞』、2018 年 12 月 16 日。 2018c 「ワンオペ育児 救うスマホ」『朝日新聞』、2018 年 12 月 16 日。 早川タダノリ 2018 『まぼろしの「日本的家族」』東京: 青弓社。 本田由紀・伊藤公雄 2017 『国家がなぜ家族に干渉するのか』東京: 青弓社。

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148 柏木惠子 2001 『子育て支援を考える―変わる家族の時代に』東京: 岩波書店。 松木洋人 2015 『子育て支援の社会学―社会化のジレンマと家族の変容』東京: 新泉社。 松島京 2017 「子育て支援―誰のための支援?何のための支援?」由井秀樹(編)2017『少 子化社会と妊娠・出産・子育て』pp.16-31、東京: 北樹出版。 内閣府 2016 「平成 28 年版 少子化社会対策白書 概要版」内閣府ホームページ <http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2 016/28pdfgaiyoh/28gaiyoh.html>より、2018 年 11 月 23 日取得。 2018 『平成 29 年度版 少子化社会対策白書(全体版)』内閣府ホームページ <https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-20 17/29webhonpen/index.html>より、2019 年 1 月 6 日取得。 内閣府、文部科学省、厚生労働省 2016 「子ども・子育て支援新制度 なるほど BOOK」 <http://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/event/publicity/pdf/naruhodo _book_2804/a4_print.pdf>より、2017 年 12 月 5 日取得。 中谷文美・宇田川妙子(編) 2016 『仕事の人類学―労働中心主義の向こうへ』京都: 世界思想社。 武田晴人 2008 『仕事と日本人』東京: 筑摩書房。

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山中信彦

図 2-1:  ホールの造り 出所 :  筆者作成

参照

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